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( `-ω-) ようこそid睡眠スレへ!
/ ∽ | vipでばかりやってたけど、こっちでも立てようかと
しー-j
ここはsageずに書き込み、出たidの数字の時間だけ睡眠をするという、
どんな状態でも寝れるためのトレーニングスレです。
例1 id:wwh7km12 の場合 7+12=19 なので19時間寝ましょう。
例2 id:bicycle. の場合 数字がないので今日はオールしてください
さあ!存分に睡眠するがよい!(`-ω-´) ↓
なにを噛むのかだけおしえろ
>>4
首とか・・・?
男「え? 誰?」
少女「噛んでいい? いいよね? 噛んじゃうね?」
男「なにを噛むかだけ教えろ」
少女「手当たり次第。口当たり次第。歯当たり次第」
男「目をギラギラさせるの怖いんでやめてください」
少女「がうっ」
男「おわっ?! 待て待て待て! だから誰だよお前は!」
少女「誰って僕だよ。僕のこと知ってるでしょ? がうっ」
男「のんっ?! ええい! 噛むのをやめろ! まともに会話できないだろ!」
少女「なんで避けるさ! いつもは鈍間なくせに今日だけ機敏に逃げ回って……っ!」
男「知るか! 我が家の番犬はつくづく仕事しねえな! ポチ太ぁっ!! さっさとこいつを追い払え!」
少女「……ん?」
男「ヘイ! かもーん! ポチ太!」
少女「……わん」
男「ポォチィタァッ! ハリィ! ハリィアップ!!」
少女「御主人」
男「誰がキサマの御主人か! 我が家に奴隷制度も雇用制度もない! ポオォチィィタアァ! カモーン! カミングスーン!」
少女「御主人。ワン」
男「何がワンだこの不審者が! あの役立たずめ! また呑気に日向ぼっこしてやがんな!」
少女「御主人。これ首輪。ポチ太の首輪だよ」
男「……っ!! お前……ポチ太に何をした……」
少女「なにって……、僕がポチ太だよ?」
男「お前、俺を馬鹿にしてるだろ? 見知らぬ人の家に首輪つけて上り込んで、しかも首輪強奪の従者プレイってなんだよ!」
少女「落ち着いて御主人。それじゃ僕がただの変態さんだ」
男「お前は紛うことなき変態だ! そんなに我が家の猛獣とまぐわりたいか獣姦魔め!」
少女「御主人、1度深呼吸しよう。御主人は大きな勘違いを2つしている」
男「ああ、もうちくしょう! 専属奴隷志望の雌犬に宥められるほど落ちぶれちゃいない!」
少女「……御主人の趣味は着ぐるみ褐色幼女」
男「取り乱して悪かった。話を聞こう」
少女「と、いうことです」
男「……そういう設定の撮影会?」
少女「がうっ」
男「いてぇ!」
少女「今の噛みつきが痛ければ現実です」
男「痛かった。噛みちぎられたかと思った」
少女「ちなみにさっきのはリハーサルです。がうっ」
男「いてぇ!」
少女「痛ければ現実です」
男「痛かった。噛みちぎられたかと思った」
少女「これで受け入れられましたか?」
男「こんなにも歪んだ現実があるものなんだな」
少女「御主人。僕はお腹が空きました」
男「ドッグフードでいい?」
少女「てんこ盛りで」
男「待ってろ。すぐに準備してやる」
少女「……そういえばまだ朝の散歩してないよね」
男「そうだな。今日はしなくてもいいだろ」
少女「日課だよ? 僕はお散歩楽しいよ?」
男「だって犬じゃないし」
少女「あー……」
男「なんで犬が人間になったんだ?」
少女「分かんない」
男「ほい、お待たせ。リクエスト通りの山盛り大サービスだ」
少女「……いらない」
男「なんと。人に飯を頼んでおいてその裏切りはないだろ」
少女「なんかこの丸い粒々に嫌悪感しか湧かない」
男「なんでだよ。今まで美味そうにがっついてたじゃん」
少女「だって犬じゃないし」
男「あー…」
男「食パンを食わせた」
少女「もさもさしてたし薄味だし。口の中が変な感じ」
男「水飲むか?」
少女「うん。咽喉潤したい」
男「しっかり五本指だしコップでいいよな。ほら、水」
少女「……嫌がらせ?」
男「人間らしく平等に扱ったつもりだった」
少女「……ちろちろ」
男「これは直視できない」
少女「舐めにくい」
男「ストロー持ってくるから待ってるんだ。お前は俺の為に犬らしさを捨てなければいけない」
少女「御主人。僕は人間だけどまだ雌犬でいいよ。御主人だけのワンちゃんです」
男「その魅力的な発言は聞かなかったことにしてあげよう。はい、ストロー」
少女「ありがとう。これで僕は人類に近付いた」
男「飛躍的な進化を遂げたぞ」
少女「まぜまぜ」
男「かき回してどうするの?」
少女「よし。ちろちろ」
男「ストローについた水滴を舐めるな。どこに向かって進化してんだよ」
少女「人間でいることは難しいね」
男「まるでチンパンジーだった」
少女「事前に使い方を説明してもらわなければ、ああなります」
男「少女はまだ人間には早いな」
少女「人間じゃないの?」
男「犬以上かつ、チンパンジー寄りの人間」
少女「チノパンだ」
男「なんだそれ」
少女「知能を持ったチンパンジー。省略してチノパン」
男「それだけ頭が回るのに、なんでストローの使い方が分からないんだよ」
少女「人間って不思議だね」
また少し書き溜めたら書く
少女「お散歩! 御主人と朝の散策をしたいです!」
男「今日は家でごろごろしよう。お散歩は犬に戻ってからでも間に合う」
少女「継続は力なりだよ。せっかくのお天道様が勿体無いよ御主人」
男「犬出身なのに随分語彙豊富だな。それよりも改名について考えないか? お前がまさか雌だと思わなかったんだ」
少女「僕はポチ太だよ。ポチ太はポチ太ですよ」
男「駄目だ。女の子に『太』は似合わない。親戚からお前を貰った時にちゃんと確認しておけばよかった」
少女「回避できたヒューマンエラーですね」
男「お、おう。そんな言葉どこで覚えるんだよ。しかし、俺が確認を怠ったばかりに」
少女「調べてみますか?」
男「可愛いポチ太は女の子。それが全ての証明」
少女「ありがとうございます。名前変えちゃうの?」
男「『ポチ太』をやめて『少女』にしよう。そうしよう」
少女「なんか違和感あるよ。絶対に変えないと駄目?」
男「上目遣いで覗きこまれても変えます。呼ぶ度に名付け親として罪悪感を感じるから」
少女「うーん。御主人がいいならいっか……」
男「さて、名前も決めたところで」
少女「お散歩だ! やっほー!」
男「ちょっと待て。そのまま外に出るのはナシだぞ」
少女「どうして? 外に行かないと御主人とお散歩できないよ?」
男「まず身嗜みを整える必要がある。お前はタオルケットを一枚巻いたその恰好が散歩に適切だと思ってるのか?」
少女「そうだった。いつも首輪だけでしたね。えい!」
男「それ違う。超違う。すぐに取り払ったタオルケットを体に捲け。人間は服を着るんだ」
少女「そういえば犬じゃなかった」
男「テキトーに見繕ってくるからじっとして待ってろ」
少女「御主人の仰せのままに」
>>16
男「少女はまだ人間には早いな」→男「ポチ太はまだ人間には早いな」
男「持ってきた」
少女「どれも大きいよ?」
男「体のサイズが全然違うから二回りくらい大きいはず。ズボンはベルトでしっかり固定すること」
少女「御主人の服……」
男「メンズだけでごめんな。少女が人間を始めると事前に教えてくれていれば下着くらいは準備できたんだが」
少女「僕は御主人の香りがする服ならなんでも着たいです」
男「つくづく俺の心ををときめかせてくれるな。純粋無垢が恨めしい」
少女「御主人。なんか白色とか黄色はしっくりこないです」
男「とは言われてもなぁ。似たような色しか持ってなかったんだよ」
少女「御主人の服にもアースカラーがあればよかったのに……」
男「え? なんて言った?」
少女「あー! このアウターのアニマルモチーフ可愛いよ! インナーは人目につかないからホワイトでも……ネイビーがいいかな?」
男「……」
少女「ねえ御主人。ニットはもうシーズンじゃないよね。このルックスに似合う異素材のネクタイとか持ってませんか? ボーイッシュに決めたいです」
男「お前本当に犬だったんだよな?」
少女「1時間遅れだけど御主人とお散歩」
男「少女のファッション熱が異常だった。今まで体毛尽くしの全裸生活だったはずなのに」
少女「御主人。首輪いらないの? リード無くて大丈夫?」
男「犬と人間の組み合わせならリードも必要だけど、人間と人間のペアだと凄まじい誤解を周囲に与えるからな。無い方がいい」
少女「首元が落ち着かない。すーすーして変な感じ」
男「体毛と首輪で風が入る隙間なんてなかったから新鮮な感覚だろ」
少女「御主人。なんかそわそわする。服もそわそわする」
男「そこは風入らないだろ?」
少女「肌に布が擦れて新感覚で、ほわぁー」
男「すっごいぷるぷる震えて悶えてる」
少女「ご、御主人」
男「どうした?」
少女「僕の体変だよぉ……、こんなの初めてでっ僕おかしくなっちゃうよぉっ!」
男「アウト」
男「今から家帰るか? まだ半分も歩いてないから引き返せるぞ」
少女「あえぅ……、頑張る」
男「辛かったら無理すんなよ。主に俺の為に」
少女「御主人とのお散歩だから頑張る」
男「雑談で服から意識を逸らせばマシになるかもしれない」
少女「はぁはぁ……、うん。そうする」
男「弱りすぎだろ」
少女「あの……御主人の腕借りてもいいですか?」
男「涙目上目遣いの敬語は反則だと思う。ほい」
少女「ありがとうございます。ぎゅーってする」
男「……この感触は『ポチ太』」
少女「がうっ」
男「いてぇ!」
少女「御主人。そわそわする」
男「まだ中間少し越えたところだ。辛抱ならないならおぶってやってもいいが」
少女「そうじゃなくてね。えっとね……」
男「周り眺めてもなにもないぞ」
少女「誰もいないね。よいしょ」
男「待てよ。どうしてベルトに手をかける」
少女「だって私の臭いつけないと」
男「それは犬だからこそ見逃してもらえたが、人の姿でのマーキング行為はれっきとした犯罪です」
少女「でもですよ御主人。ここは私だけに許されてきた絶対不可侵のテリトリーです」
男「人間の女の子はそんなはしたないことしない。そして、人間のお前に与えられたテリトリーは我が家の敷地だけだ」
少女「論理的にお庭で我慢します」
男「倫理的に庭も駄目」
少女「御主人。今の私ならボタン押せそう」
男「散歩ルートから外れてる公園の自動販売機を見つけるとは目ざといな」
少女「咽喉と舌が乾いてきたので飲料水が欲しいです」
男「ペットボトルを使っての水分補給方法でも練習するか」
少女「ありがとうございます、ご主人」
男「少女の人間デビューを祝って150円も奮発してやろう」
少女「御主人ブルジョワジー」
男「好きなのを選べ」
少女「コーヒーが気になったので挑戦します」
男「おや? 30円のキャッシュバック」
少女「御主人。完全に密封されています」
男「初自販機でプルタブ式を選ぶとはいいセンスだ」
少女「どうすれば飲めるようになりますか?」
男「爪が引っ掛けられそうな楕円形の摘まみがあるだろ?」
少女「これですね」
男「そう。それの下に爪を潜り込ませて上へあげてやるんだ」
少女「えい。御主人! 開きました!」
男「よくやった。ちゃんと開封できたご褒美にコーヒーを一口だけ嗜める権利をやろう」
少女「一口だけ?」
男「飲めばわかる」
少女「御主人! スポーツドリンクが爽やかで美味しい!」
男「まあ、そうなるよな」
少女「飲めない物買ってすみませんでした」
男「俺が飲めるからいいよ。ブラックだったら責任飲みさせてたけど」
少女「御主人はそんな苦い飲み物平気なんですか?」
男「慣れてるからな。大人味を楽しめる男は勇ましい雄としての箔がつく」
少女「でも御主人は孤高の雄ですよね」
男「俺は雄度に多少の難があってな」
少女「雄度?」
男「雄度はその数値を高くしていくことによって、色んな雌から興味を持ってもらえる。これなしに種族の繁栄は語れない」
少女「友達すら数えるほどしかいない御主人は……」
男「高すぎて多くの雄は俺をライバル視し、雌はその感知可能領域を突破した」
少女「不遇だよ、御主人……」
男「全部飲んだか?」
少女「あと半分くらい、けぷっ」
男「余ってるなら家に帰ってから飲めばいいさ」
少女「これは持ち帰ってもいいの?」
男「それはもう少女の物だ。いらなくなっても道端に捨てると怒られるから注意な」
少女「雄が気に入った雌と番いになって添い遂げるのと同じ」
男「ではないから気を付けろよ。似て非なるものだから、決して他人の前では言わないように」
少女「物と人の関係は難しい」
男「ちなみにそのペットボトルは空になった途端に、即座に捨てられる運命にある」
少女「御主人。似ても似つかない関係です」
男「休憩終了。服の感触には慣れたか?」
少女「まだ少しそわそわします。でも、これくらいなら大丈夫です」
男「じゃあ、いつも通りのコースを歩いて帰るか」
少女「御主人。腕を貸してください」
男「また? もうしっかり歩けるみたいだし不要じゃないか」
少女「首輪に繋げるリードの代わりです」
男「これだとまるで俺がペットだな」
少女「首元がすーすーそわそわして変な気分」
男「今度マフラー買ってやる」
少女「マフラー? それはどんな物ですか?」
男「ネクタイの異種素材とか知ってるくせにマフラーは初耳なんだな。犬の少女みたいにふもふももふもふしてる帯だ」
少女「御主人。すごく欲しいです」
男「今度の休みに買ってやろう」
少女「約束?」
男「約束。春先の商品棚に並んでいればな」
少女「ただいま」
男「おかえりただいま」
少女「おかえりなさい御主人」
男「朝の運動も終わったし、朝食でも食うかな」
少女「朝のご飯は食べたよ?」
男「お前はな。俺の朝ごはんはまだだ。昨日の味噌汁がまだ余ってたはずだから、鮭でも焼いて和食にでもしてみるか」
少女「……」
男「少女。冷蔵庫の中に魚の切り身があるはずだから、出しておいてくれ」
少女「御主人。ずるい」
男「なにが?」
少女「僕のご飯は薄いパン一切れだった」
男「散歩前の俺は無慈悲な下衆野郎だな。少女の分も作ってやる」
少女「御主人。食欲を増進させる芳醇な生臭さがするよ」
男「最後の表現で俺の食欲は猛烈に減退した。美味しい鮭を焼いてるぞ」
少女「御主人はお魚が好き?」
男「魚は好きだぞ。肉ほど美味しいとは感じないけど、ハラミの脂身は格別だ。あれをお茶漬けに入れた途端に世界が広がる」
少女「御主人。シャケさんすごいね」
男「鮭はすごいぞ。安いのに高級感と安心感を与えてくれる不思議な食べ物だ。生鮮食品の筆頭だな」
少女「だから御主人はお魚をたくさん食べるんだね」
男「おう。今を生きる有難味を実感しながら食べてるぞ」
少女「シャケさんも御主人に食べてもらうのが一番嬉しいって」
男「でも俺が一番食べたいのはa-5の国産牛肉だ。その肉は口に含むだけで次元を越える」
少女「御主人。シャケさんが泣いてる」
男「千切りにしたキャベツを丸皿に盛りつけて」
少女「全部?」
男「おう。大きい皿に全部どんと」
少女「どん」
男「おーい。皿の外側に盛大に散らばってるぞ」
少女「御主人がどんって言うから」
男「キャベツに本気になるのは良くない。零れ落ちたのを拾ってゴミ箱で供養してやれ」
少女「御主人。勿体無い」
男「掃除してたら拾い食いも出来たんだが、お世辞にも綺麗とは言えない散らかり具合だ。情と共に捨ててやれ」
少女「このぼっこが。ぽい」
男「ぼっこ?」
少女「ぼろ屑とかぼろきれって意味だよ。御主人」
男「容赦もなくなったな」
少女「御主人。ご飯盛ったよ」
男「ちゃぶ台の上に運んでおいて。味噌汁をよそいたいから、棚からお椀を出してくれ」
少女「御主人。見て見て」
男「お、おう。後でな。それよりもお椀を」
少女「ごーしゅーじーんー」
男「あーもう、見てやるわ。なにを見てほ――」
少女「アルペンルート雪の大谷」
男「……余計に盛った米は炊飯器に戻せ。それとお前の鮭は半分だけな」
少女「ご、ごめんなさい……」
男「お前はチノパンか」
少女「御主人。ごめんなさい」
男「その愚行を身をもって反省しろ。ほら、お椀」
少女「ごめんなさい……」
男「ほい。半分の鮭と味噌汁」
少女「シャケさん半分……、シャケさんごめんね……」
少女「……」
男「どうした。箸が進んでないぞ」
少女「……」
男「鮭食わないのか? 半分にしたんだから残すなよ」
少女「……」
男「味噌汁にも手を付けろよ。冷めたら不味くなるぞ」
少女「御主人、ごめんなさい。シャケさんごめんなさい」
男「……はぁ。反省したか?」
少女「……」
男「ほらよ。俺の鮭食え。お前の鮭は俺がもらう」
少女「いいです、御主人……これが僕のシャケさんだから……」
男「俺の鮭が半分になった鮭に悲しめる人間に食べてもらいたいとさ。鮭優しいな」
少女「御主人……」
男「不格好な鮭は俺が食うよ」
少女「御主人。ありがとうございます」
男「これに懲りたらもう食べ物で遊ぶんじゃねえぞ」
少女「もうシャケさんでは遊びません。約束します」
男「鮭限定じゃなくて食べ物全般な。そして、俺が怒ったのは米で遊んでたからだ」
少女「御主人の鮭美味しいです」
男「それが反省の先にある感謝の味だ。良く噛み締めて味わえ」
少女「……」
男「どうした? 箸が止まったぞ」
少女「御主人。ごめんなさい」
男「怒られたから俺に謝るのは間違いだ。食べてもらえる期待を裏切られた米と半分に裂かれた鮭に『ごめんなさい』。鮭を譲った俺には『ありがとう』、だろ」
少女「……ありがとうございます」
男「ん」
少女「御主人。シャケさん美味しいです」
男「鮭も嬉しいってよ」
少女「もしゃもしゃもしゅもしゅ」
男「もさもさもそもそ」
少女「……ごくん」
男「ごくん」
少女「ぱく。むしゃむしゃしゃむしゃむ」
男「ぱく。もさもさもそもそ」
少女「……ごくん」
男「ごくん」
少女「御主人。ドレッシングが欲しい」
男「鮭様の塩味で食べれるだろ」
少女「シャケさんの食感はキャベツに合わないです」
男「なら諦めろ。ドレッシングもマヨネーズも昨晩に切れた」
少女「分かりました御主人」
男「ん」
少女「ぱく。もしゃもしゃもしゅもしゅ」
少女「御馳走様でした。けぷっ」
男「ごちそうさまでした。お粗末さまでした」
少女「御主人は料理上手ですね」
男「伊達に放置されて育っててないからな」
少女「御主人の飼い主さんはお料理してくれないの?」
男「飼い主と呼ぶな。両親と言え」
少女「飼い主さんの両親?」
男「どんどん世代を遡っていく。お前の言う俺の飼い主が俺の両親だ」
少女「血筋ってややこしいですね」
男「お前の知識の源がどこなのか気になって仕方ない」
少女「最近、御主人のご両親を見てません。御主人……」
男「憐れむような目で見るな。捨てられたわけじゃないわ」
少女「そうなんですか?」
男「一昨年の結婚記念日に海外旅行に出たと思ったら。俺の知らない土地を第二の故郷にしたって手紙が、な……」
少女「御主人……」
男「食べ終わったら食器を流し場に出せ。食器を洗浄するまでが食事だ」
少女「そーっと、そーっと……っとと! ……セーフ」
男「ただ積み重ねた皿を運ぶだけだと甘く見てると足元を救われるぞ」
少女「いつも御主人の動きをローアングルから観察してたから……よっと、ふぅ」
男「ご苦労様。俺が洗うから少女はすすぐ係りな。濡れた皿は非常に滑りやすい。細心の注意を払って臨むように」
少女「了解です」
男「すすぎ終わった皿は横の水切り籠に並べるんだぞ。意外とこれも舐めてかかると痛い目見るからな」
少女「む、難しそうだよ御主人」
男「空間把握能力を養えば、雄度が大幅に上昇するぞ。頑張れ」
少女「御主人……僕は雄じゃないよ……」
男「少女は同性から慕われるのが嫌か?」
少女「慕われるのは嫌じゃないですけど」
男「俺は女子にモテる少女を見てみたいな。きっと悪くない光景だぞ」
少女「……がうっ」
男「いてぇ!? 洗ってる最中は噛むな!」
また書き溜めたら書く
少女「御主人。今日は平日ですね」
男「おう。日曜からカウントすると週の真ん中だな」
少女「学校に行かないの?」
男「少女を1人おいて学校に行けるわけないだろ」
少女「御主人」
男「せっかく人間になったんだ。最初の日くらい楽しい思いさせてやらないとな」
少女「でも御主人」
男「気にするなって。欠席日数はまだ余裕だから、少女も一緒にくつろぐとしようぜ」
少女「その言葉はテレビに向かって言う台詞じゃないですよ。えい」
男「っ!? 最大連鎖の自己新記録が生まれる勢いだったのに何たる仕打ち!」
少女「僕はテレビゲームじゃないよ! 僕に構ってくれないなら御主人は学校に行かなきゃいけないんだよ」
男「だって散歩したからもう外出たくないしさぁ、家ですることなんて漫画読むとかそんなもんだぜ」
少女「僕は御主人としたいこと沢山あります。御主人はそれに付き合ってください」
男「新婚さんごっこ?」
少女「御主人とお昼寝」
なぜsageが外れた……
少女「んえへへー」
男「にっこにこだな」
少女「御主人御主人。お日様あったかいですね」
男「そうだな。あったかいな」
少女「ぽかぽか陽気で気持ちいいです……」
男「少女は前から昼寝が好きだったもんな」
少女「御主人もお昼寝好きそうですよね」
男「保育施設を卒園していらい昼寝なんてしたことないぞ」
少女「ペットは飼い主に似るんです。僕のお昼寝好きは御主人の影響で、ふわぁ……」
男「だから昼寝には興味ないと」
少女「御主人の腕は枕にちょうどいい……かも……」
男「勝手に俺の腕を寝具にするでない」
少女「……」
男「……」
少女「すぅ……すぅ……」
男「ポチ太だった頃は日中ずっと窓際で寝てたよなぁ」
少女「すぅすぅ」
男「座布団に座って読書していれば猫みたいに膝の上に乗っかってきて」
少女「すぅすぅ」
男「休憩するなとは言わんから、番犬らしい働きを見せてからにしてくれよな。うりうり」
少女「えうぅ……んー……」
男「しかめっ面になるだけで起きないか。さすがは眠りの申し子」
少女「んんー……、すぅすぅ……」
男「……」
少女「すぅすぅ」
男「さながら上空を流れる雲を眺めているような気分だな」
少女「ご……じん……」
男「ん?」
少女「だ……き……です」
男「ダスキン?」
少女「ふくぅー、んー……ふぅ。あ、御主人もしかしてずっと腕枕にしてくれてた?」
男「……」
少女「御主人?」
男「んんー……」
少女「……御主人まだ寝てた。お寝坊さんだ」
男「……」
少女「御主人の寝顔、可愛いなぁ……」
男「……ふが」
少女「お鼻を摘まむ悪戯」
男「……」
少女「御主人。起きないともっと悪戯するよ」
男「……」
少女「しちゃうぞー」
男「……」
少女「……しちゃおう」
男「ふっく、んー……はぁ。もう夕方か」
男「あれ? 少女がいない? どこいった?」
少女「あ、御主人起きた? 貴重な午後が消える前に軽食なんていかがですか?」
男「二度寝三度寝してるかと思いきや。俺のエプロンつけて何してんだ」
少女「いつも御主人が僕にお料理してくれてるので、たまには僕が御主人に恩返しをと」
男「……え?」
少女「だから、御主人のためにお料理を作ってるんだって」
男「少女が?」
少女「うん」
男「俺の為に?」
少女「うん」
男「野草とか砂利を煮詰めたりしてないだろうな?」
少女「御主人。それは恩返しというよりも仇討ちだよ」
男「貴重な食料を生ごみに変えてたら玄関先で吊るすぞ」
少女「御主人。僕は温かい応援メッセージみたいなのが欲しかった」
男「ちょっと作ってるの確認させてくれ」
少女「だ、ダメだよ?! 完成してからのお楽しみなんだから!」
男「数日間の献立も計算して購入した食材をダークマターに変えられたら堪ったもんじゃない」
少女「大丈夫だかよ。あとはしっかり溶けるまで待てば美味しく」
男「溶ける?! 何が溶けんの?! そんな食材しらないんだけど?!」
少女「御主人! 落ち着いて! 簡単な料理で失敗しないから!」
男「手を離せ小娘! どんなダークマターを生成してやがんだ!」
少女「ごーしゅーじーんーっ!! 僕の初めてを乱暴に奪わないでー!!」
男「妙な言い方するんじゃねえ!」
少女「はぁはぁ……っ。たとえ御主人でも絶対に台所へは行かせないよ!」
男「どうしても道を譲る気はないみたいだな……」
少女「ぼ、僕だって御主人にちゃんと出来る子って認めてもらいんだもん! 御主人と寝るのが好きなだけの雌犬じゃないって体で証明するんだもん!」
男「狙ってるんだよな? そういう言葉をわざと使ってるんだよな?」
少女「御主人にどう言われようともここはどかないからね!」
男「どれだけ自分の腕に自信があるんだこいつ……、ん? この臭い……」
少女「失敗のしようがない料理だからだよ!」
男「あー……、少女」
少女「なんですか。力ずくでも通さないんだから」
男「うん。そうだな。少女が頑張って作ってるんだもんな。それを邪魔しちゃ悪いよな」
少女「……御主人? 油断させる作戦?」
男「少女が日頃の恩を俺に返すって言ってくれてるんだから、それを邪魔するのは無粋だよなと思ってな」
少女「う、うん。そうだよ御主人」
男「縁側で横になってるから出来上がったら呼んでくれ。少女の料理が終わったら、今度は俺が少し早い夕飯を作るからさ」
少女「えっと、分かりまし……た?」
少女「御主人! 出来ました!」
男「俺の番だな」
少女「僕のお鍋の蓋は開けちゃ駄目ですよ!」
男「開けない開けない」
少女「御主人、嘘言わない?」
男「俺は嘘が嫌いだ。故に真実しか口にしない」
少女「その台詞は凄く胡散臭いですよ、御主人」
男「時に少女さん」
少女「はい」
男「料理を作る際には、絶対にしておかなければいけない作業が1つだけあります」
少女「はい……なんですか?」
男「調理をすると臭いが家中に籠るので必ず換気扇を回しておきましょう」
少女「はい」
男「はい」
少女「はい……ああっ!!」
少女「御主人! 酷い! 僕、そんなの教えてもらってないよ!」
男「知らんがな。勝手に少女がしたことまで俺に責任を求めるな」
少女「駄目だよ! ずるいよ御主人! 嗅ぐなあ!」
男「流し場の窓開けてくれ。夕飯出来るまで椅子に座ってテレビでも見てろよ」
少女「こ、こんなはずじゃなかったのに……ぐすん」
男「初めのうちは失敗なんてよくあることだ。これで1つ賢くなったな」
少女「御主人の慰めが心に刺さるよ。あえぅー……」
男「でも、少女のおかげで俺の夕飯づくりが楽になるんだし。感謝してるぞ」
少女「むすぅ」
男「美味しい味噌汁期待してるな」
少女「……むすぅ」
少女「ごくごくごく……けぷっ」
男「またキャベツの千切りでいいか。そういや、少女に玉ねぎって食わせてもいいのかな?」
少女「御主人。呼んだ?」
男「あ、呼んだわけじゃないんだけども……、少女って玉ねぎ食っても平気か?」
少女「平気じゃないの?」
男「アリルプロなんとかってのが犬にとって有毒らしいんだ。うろ覚えだからどんな症状が起きるかまでは記憶してないけどな」
少女「そうなんだ。御主人に分からないなら僕は分からないよ」
男「そうだよなぁ。とりあえず避けておくか」
少女「ぱくぱく、けぷっ。御主人の作ってる料理は玉ねぎを入れたらもっと美味しくなるの?」
男「なるんだけども、食のために少女の健康を犠牲するわけにいかないから、今回はやめておくわ」
少女「ごくごく」
男「さっきから何を飲み食いしてんの?」
少女「ぴりぴりする茶色いジュースとチョコレート。御主人も欲しい?」
男「……玉ねぎ入れるか」
少女「入れちゃうの?」
書き溜めたらまた書く
訂正
>>25
l7
私の臭いつけないと → 僕の臭いつけないと
l9
ここは私だけに許されて → ここは僕だけに許されて
>>26
l1
今の私ならボタン押せそう → 今の僕ならボタン押せそう
l5
ご主人 → 御主人
>>39
l4
育っててないからな → 育ってきてないからな
>>42
l12
外出たくないしさぁ、 → 外出たくないしさぁ。
>>44
l8
卒園していらい → 卒園して以来
男「うわっちぃ?!」
少女「ごくごく。御主人、どうしたの?」
男「野菜を炒めてたら油が跳ねた」
少女「ぱくぱく。気を付けてね、御主人。火傷は熱いよ」
男「そうだな。借りるぞ」
少女「ああっ! 僕のコーラ!」
男「野菜と炒めてやる。甘み加えるのにちょうどいいだろ」
少女「僕のコーラ……」
男「チョコも借りるぞ」
少女「ああっ!」
男「ぱくり。うまいわ」
少女「僕のチョコぉ……ぐすん」
男「御馳走様。今日だけで随分な量の糖を取ってるから、数日間控えろよ。ほい、返す」
少女「……御主人のチョコ」
男「少女のだろ?」
男「二人分の小皿を出してくれ。野菜炒めを盛り付ける」
少女「了解。御主人とお揃いにしよー」
男「ご飯は食べられる量を盛れよ」
少女「もう悪戯しないってシャケさんと誓ったもん」
男「鮭と誓ったのか」
少女「ご主人は大盛り?」
男「昼飯食ってなかったからな。山盛で」
少女「御主人、これくらい?」
男「それくらい」
少女「次は僕の分だね」
男「食える分だけにしろよ」
少女「えへへ、御主人とお揃いー」
男「おい」
少女「いただきまーす」
男「いただきます」
少女「御主人、玉ねぎどれ?」
男「三日月を茹ですぎて伸びたような形をした野菜だ。これだな」
少女「これが玉ねぎ。ぱくん」
男「コーラにチョコレートに玉ねぎ。少女が犬の状態じゃなかったらからよかったものの……」
少女「御主人、玉ねぎ甘くておいしい」
男「なんだろうな。この不思議な罪悪感は」
少女「野菜炒めがご飯に合う。もぐもぐ」
男「少女が病気になったらどっちの病院に駆け込めばいいんだ? 動物病院?」
少女「もぐもぐ?」
男「テレビ点けるか」
少女「もぐもぐ」
男「チャンネル回してもいい番組ないな」
少女「もぐもぐ」
男「消すか」
少女「んー!」
男「ん?」
少女「んーん」
男「……この番組?」
少女「んーん」
男「これ?」
少女「んーん」
男「これか」
少女「ん」
男「アニメやバラエティじゃなくてニュースだと……」
『野良猫の被害を抑えようと、自治体で雌の野良猫の不妊治療にかかる費用の一部を助成する――』
少女「じー」
男「食い入るように見るな……」
少女「……」
男「こら、口が止まってるぞ」
少女「っ! もぐもぐ」
男「食事中は目でテレビを見るんじゃなくて、耳で聞くのがマナーだ」
少女「ごくん。御主人」
男「なんだ?」
少女「猫さんがどうなるお話だった?」
男「野良猫を治療しようってニュースだな。それにはお金が沢山必要になるから、県がそのお金をお手伝いしてくれるんだ」
少女「そうなんだ。野良猫さん頑張ってね」
男「嘘はついてない……」
少女「御主人」
男「ん?」
少女「御主人は野良猫さんが何を食べて暮らしてるか知ってる?」
男「それは前に調べたことあったな。……この場では言えないが」
少女「言えないの?」
男「食事の場には相応しくない物を食べてる。後で教えてやるよ」
少女「なんだろう……」
男「少なくとも俺らみたいに立派な物は食べちゃいないよ。生きることで必至だからな」
少女「でも、野良猫さんはお医者さんに看てもらえるようになるんですよね?」
男「ま、まあな。さっきキャスターはそんなこと言ってたな」
少女「御主人。僕は動物が好きな人がいて嬉しいです」
男「少女。ごめん」
少女「なにがですか? 御主人」
男「人間を代表して、ごめん」
少女「?」
少女「御馳走様でした」
男「お粗末様」
少女「御主人のお皿も流し場に出しておきますね」
男「ありがと。後で俺が洗うから出しておくだけでいいぞ」
少女「了解です、御主人」
男「着替え持ってくるかな」
少女「御主人はもうパジャマに着替えるんですか?」
男「風呂だよ。縁側で昼寝したから汗かいてるかもしれないだろ」
少女「あー……はいはい。お風呂ですね。お風呂かぁ……」
男「少女も俺の次に入れよ。汗はしっかり毎日流さないとな」
少女「……」
男「返事」
少女「……僕は今まで2週間に1回だった」
男「一緒に入ろうか」
少女「御主人と一緒でもお風呂はやだ! シャワーやだー!!」
男「玉ねぎが食えた。チョコも食えた。コーラが飲めた。これが何を意味するか、分かるか?」
少女「僕の世界が広がった」
男「臓器からなにから人間の仕様になってるってことだ。少女はもう犬じゃない。だから一般生活においては俺準拠で暮らしてもらう」
少女「……ごくり」
男「昼寝は少々。手伝いは頻繁。風呂は毎日」
少女「お風呂は月2回」
男「禿るぞ」
少女「御主人。僕、実はお風呂大好きだったかもしれない」
男「そうだな。お前は潔癖症の鏡だもんな。その言葉、犬に戻っても忘れんなよ」
少女「っ!!」
男「少女の着替えどうすっかなぁ」
少女「御主人。僕はできるだけそわそわしない服だといいな」
男「そわそわしない服と言われても。どうせ何を着ても落ち着かないんだろ?」
少女「たぶん。まだ慣れてないから」
男「あまり刺激の少ない物を選んだ方がいいからニットかなぁ……」
少女「御主人。僕タオルケットだけでもいいよ」
男「それは服じゃないから却下だ」
少女「そんな……」
男「明日も学校休んで服でも買いに行くか」
少女「御主人。2日も続けて休むと先生が心配を」
男「その担任教師が無断欠勤の常習犯だから恐れることはない」
少女「学校は自由な場所なんですね、御主人……」
男「ほら、服脱げ! さっさと脱げ!」
少女「お風呂やあ! 後で入るから御主人だけ先に」
男「そんなこと言って風呂場をサウナにするだけだろ! 汚いまま布団に入れられるか!」
少女「僕は狂犬病だから入れないの! シャワー浴びると狂犬病になるの!」
男「いらん知識ばかり備えやがって……っ! おし、そこまで嫌がるなら俺も諦めよう」
少女「ふへ? いいの?」
男「ああ、俺だけ風呂に入る。後でしっかり1人で入れよ」
少女「う、うん」
男「服脱ぐから脱衣場から出てくれ」
少女「……御主人。僕も入る」
男「1人の方が入りやすいんだろ?」
少女「僕だけだとお水怖いから……御主人と入る……」
男「よく言えたな。偉いぞ」
少女「うん!」
男「……ちょろいな」
書き溜めたらまた書く
少女「御主人。体をタオルで隠すのはマナー違反だって前にテレビで見たよ」
男「どんだけ前の記憶を引き出してんだよ。それ数ヵ月前の旅番組であった知識だろ」
少女「なんか覚えてた」
男「マナーに気を付けないといけないのは温泉宿とか友達の家の風呂を借りるときだけでいい」
少女「そうなの?」
男「ローカルルールで成り立つ我が家に、外の世界の当たり前など通用しない」
少女「御主人が悪の組織の親玉みたい」
男「だから、少女はそのバスタオルを外さないように風呂を満喫すること。いいな?」
少女「分かったよ。御主人」
男「守れなかったら鮭半分な」
少女「ここでもシャケさん?!」
男「俺の背後に立つんじゃねえ」
少女「立たないと御主人の背中が流せないよ」
男「俺は自分で洗えるからいいんだよ」
少女「まあまあ、御主人。そんなことをおっしゃらずに」
男「いくら媚を売っても俺は少女の頭を洗う。全力で」
少女「っ?!」
男「それとも自分で洗う練習をしてみるか?」
少女「ぼ、僕は背中だけ洗えば体全体も綺麗になる人間だから」
男「そんなやつは人間と呼ばねえよ」
少女「どう? 御主人は気持ちいい?」
男「もうちょっと力を入れてくれると、そうそう。それぐらいがいいわ」
少女「御主人は痛くされるのが好きなんだね。僕覚えたよ」
男「そのままの意味で脳にインプットしたら悲惨な人物設定になるから忘れろ」
少女「そうなの? 僕はどんな御主人でも受け入れられるよ」
男「俺が受け入れられないわ」
少女「はい。背中終わり。次は前だよ、御主人」
男「前は俺がする。タオルを」
少女「やだぽん!」
男「ぽん?」
少女「僕が御主人を全部綺麗にするんだ! えいや!」
男「馬鹿! 抱き付くな! 前は俺がすんだよ!」
少女「僕がのぼせるまで御主人を洗い続けるんだ!」
男「意味分かんない作戦を企ててんじゃねえ! おらよ!」
少女「わうん!」
少女「御主人に乱暴されて僕の奪われちゃった……」
男「断じてこのタオルは少女のではない。諦めて湯船に浸かってろ」
少女「……水面がゆらゆらしてる」
男「なんで少女は水が嫌いなんだ? 昔から洗ってやってるのに」
少女「なんか……濡れる」
男「そりゃ濡れるだろうな。なんせ水だし。お湯だし。液体だし」
少女「僕、あの感覚にどうしても馴染めなくて」
男「好き嫌いで動かれてたら絶対に後悔するのは少女自身なんだがなぁ……」
少女「……御主人となら湯船に入れるかも」
男「今度はその手できたか。1人も2人も変わんねえだろ。案外気持ちがいいからちゃっちゃと入っちまえ」
少女「僕は御主人と一緒がいい! 御主人と一緒に気持ちよくなりたいの!」
男「アウト」
少女「御主人……早くきて……」
男「その表現がわざとならやめようぜ。無意識なら口を結べ雌犬が」
少女「……」
男「涙目で俺を見るな。洗い終わったら入ってやるから大人しく待ってろ」
少女「御主人は水嫌いじゃないんだね」
男「水に触れることすらままならないレベルで嫌うやつはまずいないだろ。よほどのことがない限り多少の水嫌いでも支障なく風呂には入るし」
少女「僕が変なのか……」
男「少女は犬上がりだから仕方ないっちゃ仕方ないさ。前例も無いわけだし」
少女「そっかぁ……僕が初めてなんだね」
男「そうだな」
少女「えへへ、それってなんか嬉しいね。ね、御主人?」
男「これを喜ぶべきかどうかは非常に難しいだろ。少女が嬉しいならいいけども」
少女「僕はすっごく嬉しいよ。だって御主人と同じになれたんだもん」
男「よくも恥じらい無くそんな台詞を」
男「俺が洗い終わったから少女の番だぞ」
少女「僕も洗うんだよね……」
男「もっと人間に近付きたいなら体を洗え。身を清めろ」
少女「水も嫌だけど泡もいやぁ」
男「なんなら背中と頭を洗ってやろうか?」
少女「うん……お願いします御主人」
男「洗い方を学習したら自分で洗えるようになれよ」
少女「僕、頑張って覚えるよ」
男「ほら、タオル持て。中に石鹸を入れて包んで擦れ」
少女「おお! 泡あわしてきたよ!」
男「泡触ってみ」
少女「すっごく柔らかい。泡すごいよ! 御主人!」
男「泡、嫌いか?」
少女「泡、好き!」
男「……ちょろいな」
男「力加減はどんなもん?」
少女「御主人のちょうどよくて気持ちいいよ」
男「ん」
少女「御主人。背中だけ?」
男「背中だけ」
少女「お腹も足も洗ってくれないの?」
男「洗わないな」
少女「洗ってくれないんだ……」
男「だって犬じゃないし」
少女「なんか複雑な気分だよ、御主人」
男「俺からすれば至って分かり易いし、当然な気がするが」
少女「犬だったときは御主人は沢山触ってくれたのに、人間になったら御主人には近づけたけど、なんだか遠くなった気がする……」
男「それが犬特権と人間特権だ」
少女「どっちも欲しい」
男「我儘が通るようになるといいな」
少女「お風呂、好き……かも……」
男「そりゃあ、ようござんした。お風呂が喜んでるぞ」
少女「僕も嬉しい。お風呂も嬉しい。御主人は?」
男「アイスが欲しい」
少女「……」
男「イチゴとバニラのカップアイスがあるぞ。どっちにする?」
少女「御主人は嬉しくないの?」
男「嬉しいぞ。なんせ風呂上りのアイスは格別だ」
少女「みんな嬉しくなったね。御主人、僕はイチゴがいいです」
男「イチゴな」
少女「えへへ、イチゴ味いただきまーす」
男「しかし、それが堪能できるのは髪を乾かしてからであった」
少女「御主人……生殺しだよ……」
男「イチゴ味は美味しいか?」
少女「あまうま」
男「急いで食べるとアイスは思っている以上に早くなくなる」
少女「あ、もう半分もない……」
男「ペース配分をしっかりしないと隣でアイスを美味そうに味わう俺を眺める地獄のひと時がくるであろう」
少女「……僕はゆっくり食べる」
男「賢い選択だ。だが」
少女「だが?」
男「少なくなったアイスは溶けるペースが早くなる」
少女「っ?!」
男「計算を間違えずとも、少女はでろでろに溶けたアイスを啜る悲惨な末路になるだろう」
少女「僕の貴重なアイスタイムが……」
男「さて、アイスも食べたし歯も磨いた」
少女「御主人と寝るだけ」
男「『と』?」
少女「僕の体毛がなくなったから、もっと御主人に寄り添って寝ないと」
男「人間の世界には布団という名の優れた寝具がある」
少女「布団?」
男「タオルケットよりも凄いやつだ。御主人いらずの優れもの」
少女「御主人とどっちが凄い?」
男「俺には劣るが、そこまで引けを取らない」
少女「御主人凄い」
男「なんせ俺は唯一無二の存在だからな。呼吸をするたびに熱くなる」
少女「僕、暖かい御主人と寝る」
男「布団にくるまって寝なさい」
少女「御主人冷たい」
少女「御主人。僕のお布団は?」
男「両親の寝室からひぱってくるか。どうせしばらく使ってないし」
少女「……」
男「何だよ。そんな顔しても一緒の布団じゃ寝ないからな」
少女「御主人……僕、御主人に嫌われちゃった?」
男「嫌ってるわけじゃないけどさ。寝食を共にするいじょう、お互い一歩引いた生活が大切になるわけだよ」
少女「僕、御主人のこと大好きだよ。だから御主人と一緒にいたい。寝たいよ」
男「風呂場でも言ったが、お前は犬じゃない。人間だ。だから」
少女「そうだよ。僕は人間になれたんだよ。御主人のことをちゃんと好きって言えるようになったんだよ」
男「……」
少女「御主人にとって、僕はただのペットかもしれない。御主人に優しくされたら甘い鳴き声をあげながらすり寄る愛玩動物って認識かもしれない」
男「その言い方はちょっと待てよ」
少女「御主人。主従関係のままでもいいから、僕のことを愛してください。嘘でもいいから好きだって言ってください」
男「無茶を言うな。そんな無責任に好きだの愛してるだの言えるか。馬鹿犬」
少女「……ですよね」
少女「え、えへへ。僕は眠くて頭が回ってないみたいです。寝る前に変なこと言ってごめんなさい」
男「人間の思考に慣れるまではしばらく感情で動きそうだな」
少女「もうちょっと賢くなってから御主人と会話します」
男「布団持ってくるから待ってろ」
少女「わざわざいいですよ、御主人。僕は御主人の飼い主さんのお部屋で寝ます」
男「隣で寝たいんだろ?」
少女「……いいんですか?」
男「俺の布団に潜りこむのは無しな。俺だって我慢してるんだ。少女の想いは俺も恥ずかしくなるくらいに伝わった」
男「だけど、俺の気持ちがまだ整理できてない。俺が責任を持って少女の気持ちを受け取れるようになるまで待ってほしいんだ」
少女「僕が待つの?」
男「だってさ、ほら、人間らしい俺と煩悩だらけの俺。どっちがいい?」
少女「ワイルドな御主人も捨てがたい」
男「理知的な方がいいと言っておくれ」
少女「本当に御主人の隣で寝れるんだ……」
男「手は出すな。手を出させるな。俺に理性を保たさせろ。俺が手を出したら噛め。鉄の掟だぞ」
少女「うん。分かったよ、御主人」
男「じゃ、布団に入れ。電気を消すぞ」
少女「はーい」
カチ
少女「御主人、お部屋暗いね」
男「電気消したからな」
少女「……」モゾモゾ
男「おい」
少女「おてても繋いじゃだめ?」
男「手だけだからな」
少女「えへへ、御主人のおっきい手、あったかい。おやすみなさい、御主人」
男「おやすみ」
書き溜めもネタも尽きたし終わり
これを元に新設定で書き直すかもしれない
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