京太郎「ホームレスになった……」 (405)

京太郎「なんだよ解散って……」

京太郎「同じ学校の皆に見られるのも恥ずかしいし、残った青春18キップで>>4にでも行くか」

・鹿児島
・岩手
・南大阪
・東東京
・南北海道
・奈良
・北大阪
・福岡
・西東京
・やっぱ長野に居座る


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>>3

<ok my master. star light breaker

京太郎「電車で着いたここは、奈良か」

京太郎「そう言えば和が昔奈良に住んでたって言ってたな」

京太郎「和と同じ部活って事で誰かの家に泊めて貰えないか……いやダメだ。そんな友達をダシに使うことはできない」

京太郎「まあ奈良はまったかいし、ベンチで寝ても死ぬことはないな……はは……」

???「ねぇ、そこの君」

京太郎「俺ですか?」

???「そう、なんか幸薄そうな顔をしてる君の事だよ」

京太郎「幸薄そう……はは……確かに俺、THE不幸って感じですね。SIMPLEシリーズに出れますよ……」

京太郎「ところであなたは?」

???「ほう、この辺りで私を知らないニワカがいるとは……」

やえ「私の名前は小走やえ。晩成高校麻雀部のエースを務める、王者さ」

京太郎「晩成高校……!」

やえ「ほう、流石に名前くらいは聞いたことがあるか」

京太郎「和……同じ麻雀部の仲間に聞いたことがあります。奈良で猛威を振るっている高校……」

やえ「うむ。その認識で間違いな……」

京太郎「そして数年前と今年、阿知賀に敗れたって」

やえ「うるさい!」

やえ「あの時の私は能力を知らないニワカだった……。だがそれでもプラスで終わったんだ!次はぜーったい負けない!」

京太郎「はあ……。その王者が俺になんの用ですか?」

やえ「なあに。王者たる者、困っている民には手を伸ばしてやらねばならんからね」

やえ「何か困っているならこの私がこの私が力になってあげようと思ったんだよ」

京太郎(二回この私って言ったぞ……)

やえ「うーん、でも初対面の女の子に頼るのも、なんか恥ずかしいし……」

やえ「なあに遠慮しなさんな。私は女の子である前に王者だ」

京太郎「はあ……」

やえ「それに私は小3の頃からマメすらできていない」

京太郎「はあ……?」

京太郎(なんかよくわからない人だけど、引く気は無いみたいだし、いいかこの際。困ってるのは事実なんだし)

京太郎「実は、カクカクシカジカシカクイムーブというわけで……」

やえ「なるほど。一家離散してホームレス。それでなんとなく奈良に来たと」

京太郎(和の友達をアテにしようとしたなんて言えないな……)

やえ「で、寝るところが無いか。それなら私の家に来るといい」

京太郎「は!?」

やえ「ふっ。そう遠慮しなさんな。大して広い家ではない」

京太郎「いや、そういう問題じゃなくてですね……。その、女の子の家にお世話になるなんて流石に……」

やえ「はっはっは。遠慮深いな君は。好感が持てるが、遠慮のし過ぎは逆に相手に失礼だぞ」

やえ「年上の言うことは素直に聞いてついて来なさい」トテトテ

京太郎「は、はあ……」

京太郎(なんだこの人……)

リバーサイド

京太郎「……」

やえ「さ、遠慮せずに入るがいい」

京太郎「あの、小走さんの家って……これですか?」

やえ「ん?そうだが」

京太郎「その、これってどう見ても……ダンボールハウスなんじゃ……」

やえ「そりゃどう見たところで天皇の御殿には見えないからな。心配しなさんな。2人くらい寝ることはできるさ」

京太郎「その、もしかして小走さんって、ホームレス?」

やえ「例え家が無くても心は王者さ」

京太郎「ホームレスなんですね……」

やえ「さあ、遠慮せず入るがいい」

京太郎「もう遠慮する気なんて失せましたよ……おじゃまします」

京太郎(学校の鞄に制服、私服。雑貨に拾ってきたらしきタンスと机代わりのダンボール箱……だいぶ苦労してるみたいだな)

やえ「今日は君が来た祝いだ。奮発してこの鯖缶を食べよう。賞味期限は切れてるが気にしなさんな」

京太郎「少しは気にしてくださいよ!俺もお金は少しくらいはあるから、普通の食事を……」

やえ「ダメダメ。食費なんかにお金を使っていたらすぐに身魂尽きるぞ」

京太郎「はあ……」

やえ「安心しな。私にはこれがある」

京太郎「そ、それは……!」



京太郎「小走さん、飯盒の火加減はこれくらいでいいですか?」

やえ「ああ。沸騰したら木の枝を足して、蒸気が無くなるまで炊いてくれ」

京太郎「しかしよく米なんて持ってましたね」

やえ「同級生の天文部部長がお米券をくれたのさ」

やえ「これも私の人徳だな。はっはっは」

京太郎(うーん、女子高生でホームレスになっておいてこの余裕。王者かどうかはさておき大物かもしれないな)

京太郎「ご馳走様でした」

やえ「ふっ。たまには誰かとの食事も悪くないな」

やえ「それじゃあ、やることもないし寝るとするか」

やえ「ほら、この新聞紙が布団だ」

京太郎「ああ、やっぱ新聞紙で寝るんですね……」

やえ「中々あったかいぞ。かぶってみるといい」

京太郎「あ、本当だ……あったかい」

やえ「しかも一日ごとに使い捨てているから毎日が新品だぞ」

京太郎「それはなんか違うと思いますけど……」

やえ「むう……まあいい。おやすみなさい」

京太郎「えっと、おやすみなさい……」

やえ「ZZZ……」

京太郎「寝付くの早!」

京太郎(……)

京太郎(でも思えば、あそこで小走さんに会わなかったら、俺はこの日の生活さえ真っ暗だったからな……)

京太郎(なんというか、やえさんがいてくれてよかった)

京太郎「おやすみなさい、小走さん」

小走「ZZZ」


一日目終了

どこ行ってもだいたいこんな感じになってたのかな

>>20
いんや。奈良だけホームレスシェアルート



・鹿児島→姫様とのほほんルート
・岩手→豊音と箱庭生活ひつじ村ルート
・南大阪→絹ちゃんルート
・東東京→風神ルート
・南北海道→揺杏とノーマル恋愛ルート
・北大阪→怜&竜華と3Pルート
・福岡→羊先輩と政治活動ルート
・西東京→あわあわルート
・やっぱ長野に居座る→みっぽにお世話ルート

とりあえずだいたいこんな感じにしようっての決めてて、あとは行き当たりばったりで書きながら考えてる

二日目

京太郎「うーん咲……俺のリー棒で嶺上開花するのはやめてくれ……」

やえ「おい、起きろ少年」

京太郎「うーん……あれ、なんで美少女が俺の部屋に……?」

やえ「び、美少……///なにさっきから変な寝言を言っているんだ」

京太郎「うーん……あ、そうか。俺はホームレスになって、それで……」

やえ「どうやら目は覚めたようだな」

京太郎「うぅ……。体の節々が痛いな……。ヘッドと枕が恋しい」

やえ「なあに、じきに慣れるさ。それより行くぞ」

京太郎「行くって小走さん、まだ朝の5時ですよ?こんか時間にどこにいくんですか?」

やえ「もちろん食糧調達さ」

京太郎「はぁ……」



商店街

パン屋「おはようやえちゃん」

やえ「おはようございますおばさん。今日も精がでますね」

パン屋「ほら、やえちゃんの為にパンの耳。とっておいてるよ」

やえ「いつもいつもありがとうございます」

パン屋「やえちゃんには全国大会頑張って貰わないといけないからね。こんなものしかあげれないけど、頑張ってね」

やえ「はい。きっと大手を振るって帰って来ますね」

京太郎「……」

八百屋「やえちゃんおはよー!」

やえ「おはようございます、おじさん」

八百屋「ほら、やえちゃんの為にとっておいた野菜だよ」

八百屋「折角の美味しい野菜なのに形のせいで出荷できないからね。やえちゃんのお陰で廃棄しなくて済むよ」

やえ「いえ、こちらこそいつもいつも分けてもらってありがとうごさいます」

八百屋「はっはっは!やえちゃんは礼儀正しいね」

京太郎「……」

やえ「いやー、今日も大量に集まったぞ」

京太郎「……小走さんもちゃんと敬語を使えるんですね」

やえ「おいおい、当たり前だろう。目上の者に礼を尽くすのは当然さ」

やえ「それとも私が慇懃無礼な奴だとでも思っていたのか?」

京太郎(年上にも自分のキャラを貫く厨二病だと思ってました)

やえ「ほら、今日の朝ごはんはパンの耳だ。美味いぞ」モシャモシャ

京太郎「はあ……」モシャモシャ

京太郎(母さんの焼いてくれたトーストが懐かしいな……)

やえ「お前今、今までの食事を思い出してひもじくなったろう?」

京太郎「え?ええ、まあ……」

やえ「まあごく一般ニワカ家庭の食事に比べれば味も劣るし、腹も膨れない」

やえ「そういう時はこう考えるんだ」

やえ「私達は軍人だから、貧しい現地調達の食事やマズイレーションを食べているんだと」

やえ「そうすればほら、今の状態も野営中の軍隊みたいで楽しいじゃないか」

京太郎「そう聞くと男子高校生としては若干ワクワクしますね」

京太郎「ていうか小走さん、(無駄に)前向きっすね……」

やえ「はっはっは。王者に不安など程遠いんだよ」

やえ「ではご飯も食べたし、行水と洒落込もう」

やえ「王者たる者、身だしなみに気をつけ清潔にしないといけないからな」

京太郎「ぎょ、行水って……///」

やえ「まあ実際は濡れタオルで身体を拭き、石鹸で髪を洗うだけだがな」

やえ「行水は言葉のあや、もとい言葉の泡だ。風呂だけに(ドヤッ」

京太郎「多分小走さんいまこの時世界で一番つまらない事言ってますよ」

公園


やえ「日本は水と安全はロハだ。他の国に比べて実に素晴らしい」

京太郎「今日日ロハなんて言い方しませんよ……」

やえ「ほら、君も自分の身体を吹くといい」フキフキ

京太郎(おお……!服の内側に手を入れて身体を吹く女の子って意外とエロいぞ!)

京太郎(女の子が自分の身体を触っているという興奮感、服に手を入れることで服が若干はだけチラリと見えるおへそとふともも!すばら!)

やえ「その、少年……。そんなにじっと見られると、流石に恥ずかしいんだが……///」

京太郎「あ、すいません!あっち向いて乾布摩擦してきます!」


やえ「さて、私はこれから学校だが、一人放置されるのも寂しいだろう。君もついてくるか?」

京太郎「え、いいんですか?」

やえ「なあに。奈良個人戦一位である王者の私が口を聞けば、ものの数秒で許可がおりるさ」

やえ「そのまま用務員にでも就職するがいい。はっはっは」

京太郎「やえさん……」

京太郎(やっぱ凄く面倒見が良くて優しいな、この人)

京太郎(もしかしてやえさんって、ホームレスになったばかりの俺が不安にならないように、わざとこんなキャラをして前向きな姿勢を見せてくれてるのかな……)

晩成高校

生徒A「小走先輩おはようございます!」

やえ「ああ、おはよう。君はいつも元気だな。はっはっは」

生徒B「やえさん、今日もかっこいいです!」

やえ「ふっ。当然だ。私は王者だからな」

生徒C「小走先輩、その幸薄そうな男は誰ですか?」

生徒D「もしかして彼氏!?」

みんな「キャー!///」

やえ「か、かれ……///違う、彼は路頭に迷っていたため、私が手を差し伸べたのだ」

やえ「王者たる者、困っている者は見捨てておけないから」

生徒X「やえさん優しい!最高です!」

生徒I「全国頑張ってください!」

やえ「心配しなさんな。私は小3の頃からマメすらできていない。ニワカは相手にならんよ!」

みんな「キャー!やえさんかっこいい!!!」

京太郎(デフォルトでこのキャラだったのか……)

京太郎「それにしてもやえさん、凄く慕われてるんだな……」

やえ「ん?そういえばいつの間にか名前呼びになっているな」

京太郎「あ、ほんとだ……」

やえ「出会った翌日に年下の男子に名前で呼ばれるとは、これも私の人徳のなせる技だな。はっはっは」

京太郎(うーん、なんか本当にこの人が只者じゃなく見えてきたぞ)

やえ「それはさておき、今は夏休みだからな。部室に行くぞ」

京太郎「はい」

そいや晩成高校のメンツって全然キャラ知らんからここからどうしよう……

※キャラ設定は適当でいきます。至らぬところがあってもスルーしてください

麻雀部室


小走「おまたせー」

由華「あ、小走先輩。お疲れ様です」

良子「おう、やえ。遅かったじゃん」

小走「すまんね。お客さんを連れてきたんだ」

京太郎「す、須賀京太郎です。よろしくお願いします!」

日奈「おー、男子高校生だ」

やえ「ちょっと色々あって面倒をみてるんだ。麻雀だったらしいし、練習相手にもなるだろう」

京太郎「いや……強豪の晩成相手に俺で練習相手が務まるかどうか」

やえ「そう緊張しなさんな。なにもレギュラーと打って欲しいってわけじゃないさ」

やえ「一年生達の卓の人数が足りないところに入ってくれればそれでいいよ」

京太郎「それくらいなら……」

すまん、もう安価の予定無いし書き貯めしてからにするわ

乙ー
ちなみに晩成共学やでー

京太郎は人形劇しながら旅に出れば良いんじゃないかな

>>44
そんなん考慮しとらんよ……

>>45
それは緑川や

一時間後


やえ「またとんだな」

京太郎「」チーン

初瀬「あんた本当に憧の友達の友達なの?」

由華「この晩成は一年生にして強者が多いから、勝てないのは仕方ないけど……毎回トぶなんてね……」

紀子「これがあの龍門渕を倒した清澄の麻雀部……」

京太郎「うう……実は清澄で強いのは女子達だけで、俺はもっぱら雑用ばかりやってるんです……」

日菜「不憫だねー」

やえ「ふむ……。そういえば晩成高校の麻雀部は男性部員がいないせいで、男手に困っていたな」

やえ「少年。申し訳ないが。良ければしばらくウチの雑用をやってくれないか?代わりと言ってはなんだが、麻雀を教えるくらいはしよう」

京太郎「え、いいんですか?」

良子「おいおいいいのかよやえ。部外者にそんな事頼んで」

紀子「不安……」

やえ「なあに。父兄の手伝いがくるようなものさ」

やえ「それに彼はこんな一昔前のヤンキーみたいな格好だが、悪い奴ではない。それはこの私が保証しよう」

京太郎「やえさん……!」

日菜「私は別にいいよ。買い出しとかの人が欲しかったところだし」

由華「私も元より構いません」

紀子「やえがそう言うなら……」

良子「ま、しゃーねー。頼むぜ須賀」

初瀬「アコーアコー」

やえ「勝手に話を進めてしまったが、頼めるか?少年」

京太郎「むしろこちらからお願いしたいくらいですよ。やえさんには助けてもらってますから、何かお返しをしたいと思っていたところです」

日菜「おー。愛されてるね、やえ」

やえ「あ、愛……///とはいえもう時間も時間だ。それは明日からにしよう」

やえ「では今日の部活はこれで終わりだ。初瀬、彼に校舎を案内してやってくれ。私はここで牌譜の整理をしなければいけないからな」

初瀬「それなら私たち一年がやりますよ?」

やえ「なあに。王者たるもの、たまには雑用もやらねば下の者に示しがつかないからな」

部員「やえさん……」ジーン

やえ「皆は先に帰っておいてくれ。鍵は私がしまっておくよ」

やえ「というわけだ少年。一時間くらいしたら帰るから、その頃に校門で待っていてくれ」

京太郎「あ、はい、わかりました」

初瀬「それじゃいくよ、須賀君。まずは理科準備室を案内してあげる」

京太郎「なにしにいくんだ……」

バタン

やえ「さて……誰もいなくなったか」

一時間後

初瀬「で、ここが用務員室ね。だいたいこの校舎の事はわかった?」

須賀「すまん、全然わからん」

初瀬「そろそろ時間経ったけど、校門に小走先輩来てないし部室まで迎えにいったら?私はもう帰るから」

京太郎「ああ。ありがとう。それじゃ」

初瀬「アコーアコー」

京太郎「さて、部室に行くか」

麻雀部室

京太郎「やえさ……」

やえ「ーーーはーーーだから、ここが」

京太郎「?」ソーッ

やえ「この打ち手は守りが浅いな……。このラーメン被った一年生は相手の配牌を悪くするのと、ダブリーの時に何かありそうだな。対策はーーー」

やえ「団体戦では県予選で負けたけど、個人戦では絶対にインハイチャンピオンになるんだ。そうしないと、王者晩成の威厳がーーー」

京太郎(やえさん、あんなに余裕に振舞ってるように見えたけど、実はしっかり研究もしてるし、プレッシャーも感じてるんだ)

京太郎(当然だな。ただ自尊心が高いだけの人に、県個人一位なんてなれない。それを裏付ける努力と、みんなを安心させる器ーーー)

京太郎(ーーまさに、王者)

やえ「片目を瞑ってる人は相手の癖から手牌がだいたいわかるのか……傀みたいに理牌すればーーー」

京太郎(やえさん、頑張ってください)



やえ「お待たせ。待たせてすまんね少年」

京太郎「いえ。気にしないでください。それじゃあ帰りましょうか」

やえ「あ、ちょっと寄って行きたいところがあるんだ。ついてきてくれ」

京太郎「?」

農家

農家「やあ、やえちゃん。アレ、獲れてるよ」

やえ「ありがとうございますおじさん。では頂きますね」

京太郎「何を貰いにきたんですか?」

やえ「これだよ」

猪「」バタンキュー

京太郎「」

小走「この辺には猪がでて農家を荒らすからね。罠を仕掛けてるんだが、かかった猪は私が貰って解体して食料にするんだ」

京太郎「」

小走「喜べ少年。これで今日は牡丹鍋だ。これで三日は食事に困らないぞ」黙祷

京太郎「」

小走「さて、腹を裂いて肛門を縛って内蔵を取り出して……」ブッシャァァァ

京太郎「」

小走「内蔵は塩漬けにして、今日食べきれない分は干し肉にして」ザックザック

京太郎「」

小走「岩手に練習試合に行った時に、姉帯という人にサインの代わりに目の前で猪を解体してもらって牡丹鍋を振舞ってもらった甲斐があったな」ブチブチ

京太郎「」

やえ「ん?どうした少年。顔が青いぞ」

京太郎「……やえさんって、無人島に行ってもちゃっかり生き残りそうですね」

やえ「はっはっは。王者はそう簡単にはくたばらんよ。私が死ぬなど、運命が許さない」

リバーサイド


やえ「ただいまー」

京太郎「ただいまー」

やえ「さあ、今夜はご馳走だ。鍋にコンソメの素と今朝もらった野菜クズ、そして猪の肉を入れよう」

やえ「ご馳走ついでだ。この自家製ワインを飲むか」

京太郎「自家製って……犯罪じゃないですか」

やえ「100%ぶどうジュースに誤ってイースト菌が入ってしまって放っておいたらなんか味が変わってしまっただけのジュースだよ」

京太郎「それがまかり通るなら警察は要りませんよ」

やえ「心配しなさんな。捕まったらカツ丼が食えるだけだ。どうせ携帯も住所も無いからな」

京太郎「インハイ出場停止になりますよ……ていうか携帯無いなら有事の連絡はどうしてるんですか?」

やえ「その時は良子がモールス信号を送ってくれる事になっている」

京太郎「ほんとキャパシティ高いですねやえさん……」

やえ「褒めても出せるのはリー棒くらいだぞ。ほら、鍋が煮えた。食べようじゃないか」

京太郎「はい。いただきます」

やえ「いただきます」

京太郎「結構美味しいですね」ハフハフ

やえ「だろう?王者の手料理だ。堪能するが良い」ハフハフ

京太郎「あ、やえさん汁が頬についてますよ」ふきふき

やえ「あ……///その、すまんな///」

やえ「ふう。久々に満腹だ」

京太郎「美味しい料理、ごちそうさまでした」

やえ「いい夜だ。すぐに寝るのは勿体無いな」

京太郎「そうですね。今日は月が綺麗です」

やえ「なあ少年。折角だ、君の事を話してくれないか?」

京太郎「俺のことですか?」

やえ「ああ。君と私はホームレスの仲間だし、これから麻雀部の仲間になる」

やえ「知っておきたいんだーーー君の事を」

京太郎「」キュン

京太郎「でも、俺の話なんて大したこと無いですよ。あれは半年前、和というおもちの大きな子に憧れて麻雀部に入ってーーー」


一時間後

京太郎「ていうわけで、咲の奴が天江衣に数え役満で逆転して、清澄は全国に進出したんです」

やえ「なるほど。なかなか面白い話だったよ。単行本でいうと6冊に及ぶ密度の話だったな」

京太郎「恥ずかしがら、ほとんど幼馴染の話で俺自身は何もしてないんですけどね」

やえ「ふむ……。なら何故君は麻雀部を辞めないんだ?」

京太郎「えっ?」

やえ「あまり打たせてもらえないし、体のいい雑用にしか使われていない。それなら別に居座る必要は無いじゃないか」

京太郎「それは……そうなんですけど」

やえ「おっと、勘違いしないでくれ。麻雀部が似つかわしくないと言っているわけではない」

やえ「ただ、そういのが嫌なら、無理にウチを手伝って貰うのも心苦しいという事だ」

京太郎「そんな、ことは無いです」

京太郎「俺は麻雀を打って大会で勝つだけが麻雀部員の全てじゃないと思うんですよ」

やえ「ほう?」

京太郎「確かに俺は麻雀が下手です。部内で打っても負けるどころか、皆の練習相手にもなれません」

京太郎「それでも俺は、好きなんです。咲が、みんなが、頑張っている姿を見ることが」

京太郎「そして、雑用という形ですけど、少しでもあいつらの役に立てることが、俺はどうしようもなく嬉しいんです」

京太郎「優希……俺の友達には犬って呼ばれてるんですけどね」

やえ「そうか……。どうやら君の事を勘違いしていたようだな」

京太郎「え?」

やえ「私は最初あった時、遠慮深いところを美徳と言ったが、そうじゃない」

やえ「ーーーとても優しいんだな、君は」

京太郎「やえさん……」

やえ「ただ、少し妬けるな。清澄……。幼馴染、宮永咲とやらには」

京太郎「いや、咲とはただの幼馴染で……」アタフタ

やえ「ふっ。そして素直だな。君は」クスッ

京太郎「ハズカシイ……」

やえ「だがいいのか?私とその幼馴染とやら。インターハイで必然私と当たることになる」

やえ「その時、君はどうする?どちらの味方につく?」

京太郎「俺、は……」

京太郎(どうなんだ……?俺は世話になってるやえさんに恩を返そうと晩成の雑用を引き受けた)

京太郎(それに、あんなに頑張ってるやえさんには、負けて欲しくない)

京太郎(けど、やっぱり咲には勝ってほしい……)

京太郎(俺は……)

やえ「すまん。意地悪な質問をしてしまった。酔いが回り過ぎたようだ」

やえ「そろそろ寝るかーーー」

京太郎「俺は!」

やえ「!?」

京太郎「俺は、どっちにも負けて欲しくないです!」

京太郎「確かに咲は大切な幼馴染だから負けて欲しくないです」

京太郎「けれど、やえさんも俺にとって大切な人なんです」

やえ「……」

京太郎「俺を助けてくれたし、導いてくれている感謝があります」

京太郎「でも、それだけじゃありません」

京太郎「やえさんは、みんなの期待を背負って、それに応えようと努力している。そしてみんなに不安を抱かせないように振舞っている」

京太郎「俺はそんな、みんなに愛されて、幸せを与えられる、そんなやえさんが大好きでなんです」

京太郎「だから、どっちにも負けて欲しくないです。こんな矛盾した答えしか出せない不甲斐ない奴でですいません」

やえ「……///」

やえ「ふ、ふっ。そこまで想いを懸けられるとは。王者の宿命かな///」

やえ「ーーーうんう。そうじゃないや」

京太郎「やえさん……?」

やえ「ありがとね、京太郎。あんたからの想い、すっごく嬉しいよ」

やえ「みんなから懸けられる期待は、私にとっては結構なプレッシャーだったけど、なんでかな」

やえ「京太郎からそう言われると、なんだかすっごく、心があったかくなるんだ」

やえ「私のことを、本当にわかってもらえてる気がして」

京太郎「やえさん……」

京太郎(やっぱりこの人は、無理してあのキャラを作っていたんだ)

京太郎(王者のように振舞って、みんなに、俺に不安を与えないようにして……)

やえ「ねえ、京太郎。少しだけ胸を貸してくれないかな」

京太郎「……俺なんかでよければ、好きなだけどうぞ」

やえ「ん……」ギュッ

京太郎(ーーー凄く、小さい身体だ)

京太郎(気強い王者の振る舞いが嘘のように。まるで、脆いガラス細工のように。力を込めて抱きしめてしまえば、儚く散ってしまいそうな)

京太郎(……この人は、こんな小さな身体で、みんなの重圧に耐えて。凄く頑張ってたんだ)

やえ「私は明日から、また王者になる。みんなからの期待に応えなきゃいけない」

やえ「でも、今晩だけは、こうしてていいかな」ギュー

京太郎「はい。俺なんかで安心できるなら、いくらでも」

やえ「ありがとう。京太郎」ギューッ

京太郎(こうして、俺とやえさんの夜は更けていった)



清澄高校

久「ーーーというわけで、須賀君は家庭の事情で退学。行方不明よ」

優希「そんな、京太郎……」

和「なんですかそれは、理不尽すぎます!今すぐ私の両親に連絡して……」

まこ「なんとかしようにも、肝心の京太郎が見つからんの事にはの……」

久「……こんな時くらい、部長の私を頼ってくれてもよかったのに……」

咲「京ちゃん……」











咲「どうして家がなくなったのなら、私の家に来なかったのかな……。京ちゃんの面倒くらい。ちゃーんと見てあげたのに」

咲「おかしいなぁ……?あはっ。もしかして、私以外に面倒をみてくれる女性(ヒト)がいたのかな?」

咲「浮気したのならーーーお仕置きしないとね、京ちゃん。その女の人にもね」



to be continue→

今日はこれで終わり。わずか一日で落ちるとかやえさんチョロいなんて言わないでください。俺に文書構築力が無いだけでやえさんは素敵なんです

引越し業者に引き取られてたまたま龍門渕が発見、衣のペットになっています

ところで俺、漫画派だから個人戦のルール知らない……

京太郎「やえさん、コンビニから廃棄のおにぎり持ってきました!」

やえ「でかしたぞ少年。やっと炭水化物にありつける」


やえ「今日の晩飯は鹿だ」ブッシュワァァァザックザックブチブチゴキゴキ

京太郎「」


京太郎「やえさん、川が増水してます!」

やえ「くっ……私達のマイホームが流されてたまるか!」


京太郎「買い出しからただいま戻りました」

日菜「お疲れ。須賀君麦茶あるよー」


紀子「ここはこの牌を切ったほうがいい。待ちが悪いけど振り込む確率が低い……」

京太郎「なるほど」


初瀬「で、ここが地学部室ね」

京太郎「お、おう……」


こうして全国大会前夜を迎えた

やえ「明日は東京入り。そしてその次から個人戦か……」

京太郎「いよいよ全国だと思うと、緊張しますね」

やえ「ま、全国の舞台は去年も一昨年も通ったんだ。ニワカは相手にならんよ」

京太郎「はは。それじゃあ、おやすみなさい。やえさん」

やえ「ああ。おやすみ少年」

京太郎「……」

やえ「……」

やえ「ねえ、京太郎。起きてる?」

京太郎「はい。俺も緊張して眠れません」

やえ「ふふ、……。なんで京太郎まで緊張するんだよ」

京太郎「それは……なんででしょうね」

京太郎(明日、全国の会場に行けば、清澄のみんなに会うかもしれない……)

京太郎(部長、染谷先輩、優希、和……そして、咲。元気でやってるか?)

京太郎(ははっ……。俺がいなくなったところで、みんな何か変わるわけーーー)

ギュッ



京太郎(!!)

やえ「京太郎……。朝まで、こうしてていいかな」

京太郎「やえさん……?」

やえ「京太郎は雑用とか、それ以上に……。今の私にとって、とっても心強い仲間なんだ」

やえ「だから、京太郎を抱きしめると安心する。それに、凄く頑張れる気がするんだ」

やえ「だから……お願い」ギュー

京太郎「やえさん……」

京太郎「お安い御用ですよ。俺にとってもやえさんは、大切な人ですから」

やえ「///ありがとう。京太郎」ギューッ


長野

咲「京ちゃん、本当にどこに行ったの……?」

咲「私、寂しいよ……」ギュッ

カピ「キュー……」

翌日東京

京太郎「おお、凄い!久々のふかふかのベッド!あったかいお風呂!まともなご飯!」

京太郎「我が人生最高の幸せだ……」

やえ「おーい少年入るぞ……なんでベッドの上で跳ねているんだ」

京太郎「すいません、久々のベッドでテンション上がってしまって……」

やえ「まあいいや。個人戦は明日から始まるから、今日のところは自由時間なんだ」

京太郎「あ、はい。わかりました」

やえ「今日のところは自由時間なんだ」

京太郎「はあ……」

やえ「東京観光するなりなんなり好きに過ごしていいんだ!」

京太郎「はあ……」

京太郎(ピコーン!)

京太郎「じゃ、じゃあ、やえさんさえよければ、俺と一緒に東京観光しませんか?」

やえ「///」コクン

京太郎(可愛い……)

東京

京太郎「やっぱ奈良に比べて人が多いですね」

やえ「ああ。それ故に集客が見込めるからスタバにラウンドワン、ゲームセンターと、奈良とは比較にならないほど娯楽施設が充実しているな」

京太郎「俺はこんなにあったら毎日が疲れそうだから、ちょっと田舎くらいが心地いいんですけどね」

やえ「私もだよ。そういえばうちの高校を倒した阿知賀女子の部長が、ボーリング場の娘だったな」

やえ「この前割引券貰ったし、その、良かったら今度一緒に行ってみないか……?」

京太郎「はい、喜んで!」

やえ「///」



>>85「ん?あの二人は……?」

部長

久「須賀君!」

京太郎「ぶ、部長!?」

やえ「おや、あんたは確か清澄の中堅、竹井久……この少年の部長か」

久「あなたは確か奈良個人戦一位の、晩成高校小走やえ……!」

久「あれ?どういうこと?なんで須賀君と晩成の王者が……???」

久「というか須賀君、無事だったのね!よかったぁぁぁ……」グスン

久「一家離散して行方不明って聞いたから、私もまこも咲も優希も和も心配で心配で……なんで何も言ってくれなかったのよ……(´;ω;`)」

久「うわああぁぁぁん!!」ビェー

京太郎「ぶ、ぶちょう……少し落ち着いてください……」

やえ「とりあえずここは一目があるし、一旦そこの喫茶店にでも入ろうか」

喫茶店

京太郎「落ち着きましたか?」

久「うん……」グスッ

京太郎(こんなに取り乱した部長を見るのは初めてだ……)

久「それで、須賀君はあれからどうしてたの?どつして行方不明になって、ここにいるの?」

京太郎「あー……実は行く当てもなくて、長野で浮浪者になってみんなに見られるのが恥ずかしくなって青春18きっぷでとりあえずどこか遠いところに行こうと思ったんです」

京太郎「そして奈良でやえさんに会ってなし崩し的に面倒をみてもらって、その代わりに晩成高校の麻雀部の手伝いをして、今日個人戦に出るやえさんの応援に晩成高校のみんなと来てるんです」

久「馬鹿ね……、恥ずかしいだなんて。誰もあなたの事を笑うわけないじゃない」

久「困った時くらい私達を頼りなさいよ。私達は須賀君にこれまで助けられきたんだから、助けさせてくれてもいいじゃない」

京太郎「すいません……」

やえ「いい部長じゃないか、少年」

久「小走さん、須賀君を助けてくれて本当にありがとう。ほんと……心の底から感謝してるわ」ペコリ

やえ「頭を上げてくれ清澄の部長。私も好きで助けたわけだし、彼には我が部も助けられているからな」

バンッ!

和「部長!須賀君が見つかったって本当ですか!?」

優希「じぇじぇ!ホントに京太郎がいるじぇ!なんか薄汚れて野良犬みたいだじぇ!」

まこ「京太郎……!そんなやつれて苦労したんじゃのう……」

京太郎「和、優希、染谷先輩……!」

咲「京ちゃーん!!」ダキッ

京太郎「咲……!」

咲「よかった、本当によかった……!もう二度と会えないと思った……」グスン

咲「もうどこにも行かないで!私のそばを離れないで!ずっと……ずっと私の隣にいて!」

京太郎「咲……。ごめんな。みんな、本当にごめん。色々心配かけちまったな」

久「まったくよ。もう許さないんだから!」プンスコ=3

久「とりあえず住むところは龍門渕が一晩でなんとかしてくれるだろうし、学校の方も奨学金やら私の口添えやらでなんとかしてみるから、須賀君。清澄に戻れるわよ」

京太郎「本当ですか!?」

咲「よかったね京ちゃん!」

まこ「一件落着じゃのう」

優希「よっしゃ、今日はタコスパーティーだじぇ!」

和「わ、私はラーメンが食べたいです……ゴニョゴニョ」

やえ(京太郎……。私の思っていたとおり、君は清澄のみんなからも愛されていたんだな)

やえ(やはり彼は、晩成にいるべきでは無……)

やえ(あれ……なんだか、涙が、でて……)グスン

クルッ

京太郎「やえさん……?」

やえ「……よかったじゃないか少年」

やえ「なんとかなりそうなんだろう?君にはしっかり自分の居場所があるじゃないか」

やえ「今度は、手放さないようにするんだよ。それじゃ……」

京太郎「ちょ、ちょっと待ってください!俺は晩成の一員として……やえさんの応援にここまで来てて……」

やえ「私は王者だからな、大丈夫だよ。君はその幼馴染をしっかり応援してやりなさい」

やえ(そう……私は王者だ。こんな事で挫けたりなんか、しない……)

京太郎「で、でも……俺は……」

京太郎(俺はどうするべきなんだ?確かに清澄に戻れるのは嬉しい。けれどーーー)






やえ『ありがとね、京太郎。あんたからの想い、すっごく嬉しいよ』

やえ『京太郎からそう言われると、なんだかすっごく、心があったかくなるんだ』

やえ『京太郎は雑用とか、それ以上に……。今の私にとって、とっても心強い仲間なんだ』

やえ『京太郎を抱きしめると安心するし、それに、凄く頑張れるんだ』






京太郎(……はっ。選択肢なんてはなから無いじゃないか)

咲「京ちゃん……?」

京太郎「俺は……>>96



1.やえさんのところに行く
2.やえさんのところに行く
3.やえさんのところに行く

どれも同じだけど1で

京太郎「すいません……。部長。清澄に戻るのは、この大会が終わってからでいいですか?」

咲「えっ……?」

優希「じぇじぇ!?」

やえ「京太郎……?」

久「……わかったわ、須賀君。けれど、終わったら必ず戻ってきて」

久「あなたがいないと、咲も優希も元気が無いのよ」

久「もちろん、私もね」

京太郎「はい。約束します」

やえ「いいのか……?京太郎。折角会えた仲間を応援しなくて……」

京太郎「別にいいって言えば嘘になります。けれど、このままやえさんを放っておいたら、俺は絶対に後悔しますから」

やえ「京太郎……ありがとう(ボソ」

久「小走さん。須賀君を、よろしくお願いします」

やえ「こちらこそ。少しの間だけ、彼を借りるよ」

京太郎「それじゃあみんな、また……」

咲「小走さん!」

やえ「!!」

咲「私、絶対に負けませんから!」

咲「あなたにだけは……絶対に負けたくありません!」

やえ「……ふっ。私も同じだよ」

やえ「行こうか、少年」

京太郎「は、はい……。その、咲、和。今の俺が言うのもあれだけど、二人とも頑張ってな」

京太郎「俺は絶対、帰ってくるから」

和「はい。須賀君」

咲「うん……。それじゃ、またしばらくね。京ちゃん」



to be continue→

続く。次回で最終話。王者よ永遠に

魔王咲さんはちょろっと出したら飽きたから、普通に戻した。やっぱヤンデレより純愛だよね

久「龍門渕の財力でなんとかなるわ!」
久「荒川病院の技術力でなんとかなるわ!」
久「鹿児島に行って神を降ろせばなんとかなるわ!」



ところで誰か個人戦のルール教えてください……

協議ルールはいいんだけど、トーナメント方式とか総当たりとか星を集めるとか、その辺よくわからなくて……

前回までのあらすじ

智美「ワハハ、奈良に行くぞー」

衣「わーい!」

個人戦

やえ「とうとうこの日が来たか……」

京太郎「大丈夫ですか?やえさん」

やえ「ふっ。柄にもなく緊張してるかな」

やえ「今年で最後だからか、それともーーー」

やえ「君が、見ているからかな」

京太郎「……やえさん」

ギュッ

やえ「えっ!?」

京太郎「落ち着きましたか?」

やえ「……うん。やっぱ京太郎に抱きしめられると、安心する」

京太郎「咲も和も強いです」

京太郎「俺は二人にも、やえさんにも負けて欲しくないです。けど、麻雀はそうもいかない

京太郎「俺はただ、頑張ってくださいとしか言えません」

やえ「十分だよ。ありがとう、京太郎」パッ

やえ「それじゃあ、行ってくる。」

やえ「今の私はーーー誰にも負ける気がしない」

京太郎(そういって会場へ向かうやえさんの背中は、戦場に向かう王者そのものだった)






良子「控え室に入るタイミング逃したな」

日菜「あんな二人だけの空間作られたら入れないよ」

初瀬(憧出ないし帰りたい)

やえ(個人戦は全国52区から上位3人づつ……つまり156人が出場している)

やえ(宮永照、辻垣内智葉、荒川憩、神代小蒔のシード枠4人を除いた152人が38卓で予選を行い、各卓の1位が進出する。つまり1/4に絞られ38人が残る)

やえ( そこにシード4人を加えた42人を2ブロックに分け、各ブロック21人が点数持ち越し制の半荘を何回か打ち、各ブロック全員が全員と打った後、各ブロックの最も保持点が高い上位2人の4人で最終決勝卓となる)

やえ(とにかく予選を勝たなければいけない。卓で一位になる)

やえ「お見せしよう……王者の打ちしゅじを!」

……

部員「やえさん、お疲れ様です!」

やえ「ああ、お疲れ。流石は全国区の個人戦ベスト3達だな。どいつもこいつも一筋縄ではいかない」

京太郎「それでも予選通過ですよ。おめでとうございます」

やえ「ま、当然さ。王者だからな」

良子「どうやらブロック分けか決まったようだな。やえのブロックのシードは宮永照と神代小蒔か」

京太郎「和とも同ブロックで、咲とは別のブロックか……」

やえ「ふっ。おあつらえ向きだな」

京太郎「えっ?」

やえ「私がこっちのブロックで決勝まで勝ち進み、宮永咲も向こうで勝てば決勝に辿り着く」

やえ「そして決勝で決着をつける。まさに王者に相応しい、王道ストーリーだ」

京太郎「た、確かに……」

紀子「でもそれをするには……」

やえ「わかってるさ。宮永照、神代小蒔、原村和……このうち最低でも二人を抑えなければいけない」

京太郎「やえさん……」

やえ「ま、心配しなさんな。今の私なら、なんとかなる気がする」

やえ「京太郎、あんたが見ていてくれるからーーー(ボソッ」

京太郎「どうしたんですか?」

やえ「いんや、なんでもないよ。それじゃ行ってくるよ」

部員達「やえさん頑張ってください!」

……

やえ(さてと。点数は今のところ順調。だがわたしのオーダーだとここからが本当の勝負か)

和「こんにちは、小走先輩。先日は須賀君がどうもお世話になりました」

やえ「気にするな。困っている人を助けるのも王者の務めさ」

和「はあ……?須賀君の事は感謝していますが、試合はお互いに全力で挑みましょう」

やえ「もとよりそのつもりだ。本気でかかってくるがいい」

やえ(原村和。インターミドルチャンピオン)

やえ(常に牌効率を意識したデジタル式のプレイヤーで、大きく稼ぐ技は無い代わりに失点も低く、安定した成果を出せるプレイヤー)

やえ(ありたいていに言って隙がない)

やえ(けど、負けるわけにはいかない)

やえ「さあ、いくぞ!」

……

和「ありがとうございました」

やえ「ありがとうございました」

やえ(なんとか勝てたか。他のプレイヤーの偶然の振り込みありき。決勝にでてもこうはいかんな……)

やえ(能力とか支配とか無しにここまで強いとは。流石はインターミドルチャンピオンか)

やえ(誇れ京太郎。お前の仲間は、今までのどのプレイヤーよりよほど強い)


……

やえ(とうとうきたか……)

照「よろしくお願いします」

やえ「よろしくお願いします」

やえ(インターハイチャンピオン、宮永照)

やえ(対面しただけで感じる、物凄いプレッシャー……)

やえ(だけどなんでかな。今の私には臆する気持ちはまったくない)

やえ(彼女を倒し、決勝卓に進む!)

やえ「お見せしようーーー王者の打ちしゅじを!」

……

やえ「」ズーン

京太郎「そのやえさん、元気だしてください……」

やえ「ああ……。大丈夫だ少年……まだ後半が残っている」フラフラ

良子「しかしさっすがインハイチャンプ。凄い強かったな」

日菜「でも宮永照が突出してるだけで、他の人達は大体同じように削られてるから、二位入りのチャンスはあるよ!」

京太郎「そうですよやえさん!まだリベンジのチャンスはあります!」

やえ「そうだな……。ああそうだ!私の覇道はまだ終わっていない!」

やえ「進むぞ……。決勝卓!」

部員「キャー!ヤエサーン!」

紀子「でも、それをするには神代小蒔を倒さないと……」

初瀬「憧に聞いた話だと、神を降ろすとかどうとからしいですよ」

京太郎「オカルトな話だけど、咲とか天江さんを見ているとあながち否定できないな」

初瀬「なんでも降ろす神の順序があるから、団体戦では比較的弱い神を降ろしていたせいで負けてしまったとか。けどーーー」

やえ「その代わり個人戦では強い神を降ろすという事か。一体どうなるか、見当もつかんな」

やえ「だが、宮永照に稼ぎ負けてる以上、神だろうが悪魔だろうが、負けるわけにはいかんな」

やえ「晩成の王者として決勝卓に進む。それだけだ」

……

やえ「よろしくお願いします」

小蒔「よろしくお願いします」

やえ(この試合がラスト。これで私か神代小蒔のどちらかが決勝卓に進む)

やえ(彼女が神代小蒔。服装とおもち以外は一見普通だが……)

小蒔「ZZZ……」

小蒔「」ゴッ

やえ「!?」

やえ(一瞬にして纏うオーラが変わった!?)

やえ(神代小蒔……。どうやら一筋縄ではいかなさそうだな)

……

オーラス

やえ(マズイい……。神代小蒔との点差は15000のままオーラスを迎えた)

やえ(この局で倍満以上を直撃しなけれれば、私の負け……)

やえ(不可能に近いな……)

やえ(……が、私は王者。皆の期待を背負っている)

やえ(ならばここで諦める理由など無い!)

やえ「お見せしよう、王者の打ちしゅじを!」つリー棒回転

小蒔「……」

小蒔(九面)「人の子よ。何ゆえ神である私にそこまで立ち向かうことができる」

やえ「……私は晩成、奈良のみんなの、そして京太郎の期待がかかっている」

やえ「それに応える為に諦めることはできない。それで十分だよ」

九面「私に打ち勝つことができたところで、宮永の者と戦うことになる」

九面「宮永の血。あれは私でも手に負えん。それに勝とうというのか?人の子よ」

やえ「できるかできんかはわからん。だが、やるかやらんかは私が決める」

やえ「神よ、そこをのけーーー王者が通る!」

やえ「リーチ一発タンピン三色イーペーコードラ2ーーー16000だ!」



控え室

京太郎「よっしゃあああぁぁぁ!」

良子「すげぇ、あの神代小蒔に逆転勝ちだ!」

紀子「これで決勝卓進出……!」



やえ「点棒はもらって行くぞ」

九面「……本当に私を倒すとは、大した人間だ」

九面「汝のような王者がいれば、私も祓い封される事もなかっただろうなーーー」

同卓の子(この人達何言ってんだろう……)

小蒔「ZZZ……はっ、寝てました!」

控え室廊下

やえ(さて、決勝卓か。先ほど苦渋を飲まされたあの宮永照、そして宮永咲。一筋縄でも二筋縄でもいかないな)

やえ(いかん、どうも弱気に……)

京太郎「やえさん!」

やえ「京太郎?」

京太郎「決勝進出おめでとうございます!」

やえ「ああ。ありがとう少年」

やえ「だが、本当の勝負はこれからだ……。ねえ京太郎。お願いがあるんだけど……」

京太郎「いいですよ。なんですか?」

やえ「その……私のこと、ギュッと抱きしめてくれないかな?」

京太郎「それくらいお安い御用ですよ」

ギュッ

やえ「ふあ……」

やえ「不思議だな。京太郎に抱きしめられると、私はどこまでもいける気がする」

やえ「あの宮永照にだって、勝てる気がするんだ」

京太郎「やえさん。最後の戦い、頑張ってください」

やえ「ありがとう。京太郎」

決勝卓

えり「始まりました。麻雀インターハイ女子の部個人決勝戦です」

えり「アナウンスは私、針生えりと、解説は三尋木咏選手でお送りします」

咏「わっかんねーけどよろしくなー」

えり「今大会決勝は、三年生三人に一年生一人という異色の組み合わせですね」

咏「あの一年生、県決勝であの天江衣を倒したらしいーよ。知らんけど」



やえ「よろしくお願いします」

咲「よろしくお願いします」

照「よろしくお願いします」

恭子「よろしくお願いします……」カタカタ

ちょっと風呂入ってくる

……

照「ツモ。ツモ。ロン。ロン。ツモ」ギュルルル

恭子「メゲるわ……」

咲「カン!カン!嶺上開花!ダブリーカン裏倍満18000!」

恭子「メゲるわ……」

やえ(マズイ……。なんとかなると思ったけどどうしようもないぞ)

やえ(宮永照からの敗北……。予想以上に私に植え付けられているらしい。振り込みを恐れてあまり積極的になれない……)

やえ(晩成のみんなの手前、先のような失態をし、振り込むわけにはいかない……だがこのままではジリ貧だな……)

やえ(一応宮永照の連続和了を妹が止めてくれるのはいいが、場の支配をとられている)

やえ(槍槓で隙をつけるかもしれんが、県大会で鶴賀の部長が既にやってくれたお陰で恐らく影響力は少ない)

智美(ワハハ、鶴賀の部長は私だぞー)

やえ(こいつ、直接脳内に!?)

玄(この卓はおもちが少ないですのだ!)

やえ(!?)

咲「お姉ちゃん、末原さん、そして小走さん……」

咲「この卓に来た人は、全部私が勝ちたい人たちです」

恭子「」

咲「でもその中で小走さん。私は、あなただけには絶対に勝ちます!」

やえ「!」

やえ(そうだった。先の敗北で宮永照に気を囚われていたが、私が本当に勝ちたい相手……)

やえ(宮永咲。京太郎の幼なじみで、大切な人)

やえ「そうだな……。王者の前に、一人の女として」

やえ「私も負けるわけにはいかない!」

恭子「なんや知らんが、男の取り合いか?」

照「えっ……咲に恋人……!?」

恭子(!!宮永照が動揺しとる。これはチャンスや!)

恭子「リーチ!」

咲「あ、それロンです」

恭子「メゲるわ……」

……

えり「なんやかんやでオーラスです。今のところ一位が宮永照、二位が末原恭子、三位が宮永咲、四位が小走やえですね」


やえ(なんとか盛り返したが、宮永咲にまだ追いつかない……)

やえ(京太郎……)



京太郎『ていうわけで、咲の奴が天江衣に数え役満で逆転して、清澄は全国に進出したんです』

やえ『なるほど。なかなか面白い話だったよ。単行本でいうと6巻に及ぶ密度の話だったな』



やえ(……!)


……

咲「ポン」発ポン

咲(小走さんが本気になって私に追いつきかけてる……)

咲(けれど、ここで私がこの次にくる西牌をカンして嶺上牌の中を引けば、字一色で一位のお姉ちゃんと二位の末原さんを抜いて、一位で終わる)

咲(やえさん、あなたに京ちゃんは渡さない!)

咲「カン!」西槓

咲「ツモ!嶺上開……」

やえ「……あの日の夜。京太郎に聞いた話がここで役に立つとはな」

咲「え……?」


やえ「槍槓。その嶺上牌は、王者の領域だ」

咲「!!暗槓では槍槓できない……まさか!」

やえ「京太郎に聞いた。アガれはしなかったものの、君の嶺上開花の抑止力となった技……」






やえ「ロン。国士無双。32000だ」パラパラ



京太郎「やえさんが、咲に勝った……!」

良子「やえぇぇぇ!よっしゃぁぁぁ!」

日菜「凄いよやえちゃん!」

京太郎(やえさん、俺の話を覚えていてくれたんですね……)

京太郎(おめでとう、やえさん。咲、来年頑張ろう。今度は俺も清澄の一員として頑張るから)


えり「試合終了!決まりました!宮永咲、末原恭子を抜き、小走やえが二位に踊りでての逆転勝ちです!!」

咏「あの子、途中から何かが変わったねぇ。戻ったと言うべきな?宮永照には勝てないにしても、他の二人に少し劣るくらいの実力はあったからね」

咏「そこを抜き去ったのは、運と宮永咲に対する情報。あとなにかかね。知らんけど」

えり「はあ……」

照「ありがとうございました……(咲に彼氏……)」

恭子「ありがとうございました」

やえ「ありがとうございました」

咲「ありがとうございました……。小走さん」

やえ「……」

咲「京ちゃんの事、よろしくお願いします」ペコリ

やえ「……うん。君も、元気でね」

数日後奈良

京太郎「祝勝会凄かったですね」

やえ「ああ。美味いものを沢山食べれた。これで暫くは野菜だけのスープでも生活できそうだ」

やえ「それに、今まで助けてもらえたみんなの期待に応えれたというものだ」

やえ「助けてもらったといえば、先日八百屋のおじちゃんがガンマレイを……」

京太郎「……俺は、明日長野に帰ります」

やえ「……うん」

京太郎「けれど、この数日、晩成のみんなといたこと、やえさんと一緒に暮らしたこと、絶対に忘れません」

やえ「うん」

京太郎「きっとまた、やえさんに会いに来ます」

やえ「うん」

京太郎「一緒にボーリングに行く約束しましたよね。きっと行きましょう」

やえ「うん」

京太郎「だから……そんな、泣きそうな顔しないでください。今生の別れじゃないんですから」

やえ「うん……」グスッ

やえ「絶対……絶対また会いに来てよね!」

京太郎「はい。約束です」

やえ「破ったら、長野まで追いかけに行くからな!」

京太郎「はい。必ず守ります」

やえ「ふふっ。楽しみが一つ増えた」

京太郎「今日はダンボールハウスの最後の夜ですからね。飲み明かしましょう」

やえ「そうだね。懐かしの我が家ーーーーーー」






やえ「撤去されてる……」

カン!

エピローグ

二年半後、春

やえ「京太郎、大学入学おめでとう」

京太郎「ありがとうございます、やえさん。やえさんと同じ大学に入れて凄く嬉しいです!」

やえ「ふふっ。私も京太郎が来てくれて嬉しいよ」

やえ「家に来る?ダンボールハウスだけど」

京太郎「相変わらずなんですか……」

やえ「今度は家庭菜園したり鶏を育てたり、極力自給自足にしてるんだよ」

京太郎「やえさんもう山の中でも暮らせそうですね」

やえ「ねぇ京太郎」

京太郎「?」

やえ「これからはずーっと私と一緒にいてね?」

京太郎「はい。ずっと一緒にいましょう」

もいっこカン!

これで終わりです。見てくださったみんな、ありがとうございました

アテ(馬)にしてるぜカイン

次のホームレス先>>156

鹿児島

鹿児島は姫様ルートだと言ったな。すまん、ありゃ嘘だ

前回までのあらすじ

衣「いけーカピ!」

カピ「スバラ!」

鹿児島

京太郎「さて、とりあえず見切り発射感で日本の最南端の九州まで逃げて来たわけだが、もうだいぶ暗くなったな」

京太郎「そして適当に歩いてたら山の中に入ってしまって道に迷った……」

京太郎「駅で食べるものくらい買っておけばよかったな……」ギュルル

京太郎「ああ、俺はここでもう終わりだ……」パタッ

京太郎「さよなら咲。俺がいなくても一人で頑張れよ。優希、タコスばっか食べ過ぎると太るぞ。部長、もう買い出しできなくてごめんなさい。まこ先輩、なんだかんだ部内で一番俺の面倒を見てくれたのはあなたでしたね。ありがとう」

京太郎「和……和……俺は……最後に……」

京太郎「お前のおもちを、揉みたかっ……た……」ガクッ

……

巴「あら、なんか人が倒れてますよ」

霞「あらあら、この山で遭難したのかしら」

春「死体遺棄かも……」

京太郎「」ピクピク

初美「あ、まだ生きてるみたいですよー」

小蒔「と、とりあえずうちに連れて帰りましょうか……」

霞「うーん、でもうちは男子禁制だから……」

巴「そういえば庭にテントを張ってましたね。そこで介抱しますか?」

初美「でも得体の知れない男の人を連れて帰るのはちょっと危険ですよー?」

霞「そうねぇ……。春ちゃん、ちょっと調べてくれないかしら?」

春「わかった……」ピト

春「サイコメトリー!」

説明しよう。はるるは相手に触れることでその人の記憶を映し出すことができるのだ!

小蒔「これは、この人が倒れる直前ですね」

巴「どうやら本当に野たれ死にみたいですね」

京太郎『ブツブツ……』

初美「あ、なにか喋ってますよー」


京太郎『和……和……俺は……最後に……』


霞「和……好きな人か誰かかしら?」


京太郎『お前のおもちを、揉みたかっ……た……』ガクッ


霞「」

小蒔「」

巴「最後の言葉がそれって……まごうことなき変態ですね」

初美「ただのケダモノですよー」

霞「このままここに放置しておきましょうか」

春「まって。もう少し戻してみる」


京太郎『さよなら咲。俺がいなくても一人で頑張れよ。優希、タコスばっか食べ過ぎると太るぞ。部長、もう買い出しできなくてごめんなさい。まこ先輩、なんだかんだ部内で一番俺の面倒を見てくれたのはあなたでしたね。ありがとう』

霞「……」

巴「……」

小蒔「そんな悪い人では無さそうですね」

初美(この後おもち発言に繋がるんですけどねー)

巴「今でた名前……。この人、清澄の人でしょうか」

霞「……しょうがないわ。連れて行きましょう」ヨッコラセット

初美(一人で男子高校生を担いでますよー)


テント

霞「ふう。それじゃあ私と巴ちゃんは夜のお勤めに行ってくるから、三人はこの人の事お願いね」

小蒔「わかりました」

春「わかった……」ポリポリ

初美「夜のお勤め(意味深)」(わかったですよー)

初美「あっ」

霞「あらあらうふふ……」ゴゴゴ

初美「お、お花を摘みにいってくるですよー!」ピュー

霞「まったくあの子は……。それじゃあ頼んだわよ」

春「……(コクン)」ポリポリ

……

京太郎「うーん、ここは……」

初美「あ、目が覚めたみたいですよー」

京太郎「うわっ、痴女!?」

初美「失礼ですよー!」プンスコ

小蒔「あ、急に起き上がらない方がいいですよ」

春「あなたは今まで倒れていた……」ヒザマクラ

京太郎「巫女さん……?そうか、俺はついに天国に……ていうか顔に黒糖の食べカスがめっちゃ落ちてる!」

小蒔「ここは天国ではありません。鹿児島の永水の神社です」

春「あなたはこの近くで倒れてた……」

京太郎「おお、特大のおもちが目の前で揺れてる……(ありがとうございます)」

京太郎「あっ」

春「……」スクッ

京太郎「へぶし!」ドカッ

小蒔「春ちゃん、いきなり立ち上がったら……」

初美「変態には当然のむくいですよー。それで、なんであそこで倒れていたんですか?」

京太郎「あー、実は一家離散してホームレスになってとりあえず知り合いに会わないよう日本最南端を目指して……」

小蒔「そんな、可哀想……」

京太郎「はは……。倒れたのは自業自得ですよ。なにも考えずに来てしまったんですから」

京太郎「のたれ死になんて嫌ですからね。助けてもらって本当に感謝してます」

初美「逆にどんな死に方ならいいんですかー?」

春「初美ちゃん……めっ」ポリポリ

京太郎「そうですね……」

京太郎「俺、死ぬ前に小学生の頃を、一日でいいから、またやってみたいです
わいわい授業受けて、体育で外で遊んで、学校終わったら夕方までまた遊んで
空き地に夕焼け、金木犀の香りの中家に帰ると、家族が「おかえり~」と迎えてくれて
TV見ながら談笑して、お母さんが晩御飯作ってくれる
お風呂に入って上がったらみんな映画に夢中になってて、子供なのにさもわかってるように見入ってみたり
でも、全部見終える前に眠くなって、お部屋に戻って布団に入る
みんなのいる部屋の光が名残惜しいけど、そのうち意識がなくなって…そして、死にたいですね」

初美「うわぁ……」

春「具体的すぎる……」ポリポリ

小蒔「でもそれなら叶いますよ?」

京太郎「えっ」

初美「えっ」

春「」ポロリ




京太郎「ホームレスになった……」
   第二章 時をかける男女



.

京太郎「どういうことですか……?俺、死ぬんですか?」

小蒔「死にはしませんけど、御座江ノ神という神を降ろせば、時を遡りタイムリープして、子供の頃の追体験ができます」

小蒔「この時間軸とは違う閉鎖時間を作り出すので、過去になにをしても今を変えることはできないんですけどね」

京太郎「ほ、ほんとですか!?」

初美「あー、その手がありましたか。いいんじゃないですかー?」

小蒔「言ってしまえば幸せな夢を見ることができる程度ですけど、どうでしょう?」

京太郎(うーん、言ってみただけで、本当に体験したいかと言われると微妙だが……)

京太郎(でもこんな体験二度とできないだし、いいだろこの際)

京太郎「それじゃあお願いします」

小蒔「はい。春ちゃん、後のことは頼みましたよ?」

春「……」コクン

小蒔「それじゃあいきますね。しーきーえーぶーつーとーがんしゅーじょーたーいーげーだーいどーはーつむじょーい……」

京太郎「おお、なんかそれっぽい……」

小蒔「タキオン・トランスミグレイション!」カッ

京太郎「うおお!か、身体が何かに吸い込まれて……」

小蒔「それじゃあ、行ってらっしゃいませ」

京太郎「うわあああぁぁぁ!!」

……



「ーーーさい!」

京太郎「う、うーん……」

「ーーなさい!起きなさい!」

母「起きなさい、京太郎!」

京太郎「か、母さん!?」

母「やっと起きたのね。ご飯できてるから早く顔を洗って食べなさい。学校に遅刻するわよ?」

京太郎「えっ……母さん、若!?」

母「あらやだ、当たり前じゃない。私は永遠の17歳よ」

京太郎「」

母「馬鹿なこと言ってないで早くしなさい」

京太郎「は、はーい……」

京太郎「ここは、俺の部屋……?俺の体も小さくなってる!?」

京太郎「あんまり信じてなかったけど、本当に時間を遡ったのか……」

春(姫様の力はホンモノだから、当たり前)

京太郎「滝見さん!?」

春(春でいい……)

京太郎「じ、じゃあ春さん。どうしてここにいるんですか?」

春(助言と説明と、あなたをこの世界から戻す時に、必要になる。ちなみに私の姿はあなた以外には見えない。スタンドのようなもの)

京太郎「さ、さいで……。ていうことは時が戻るってのは本当だったんだ!今日一日、少年時代を過ごせるんですね!?」

春(……)コクン

京太郎「ヒャッホォォォウ!!」

母「一人ではしゃいでないで早く来なさい!」

京太郎「はーい!」

……

京太郎「ランドセルを背負って登校かぁ。三年ぶりかな」

春(ちなみにこの世界は七年前。あなたは小学三年生)

京太郎「そうかー。みんな元気かなぁ」

友「うーっす京太郎!」

京太郎「おお、久しぶり!この頃はお前もまだ可愛げがあったな」

友「は……?」

京太郎「あっ」

春(……バカ)

友「夏休みが近いからってボケてんじゃねーのか?」

京太郎「はは……すまんすまん」

春(別に未来に影響は無いからいいけど、あまり不用意な発言はしない方がいい)

京太郎「はい……」


学校

先生「えーこの問題がわかる人ー」

京太郎「はい!」

先生「お、やってみるか京太郎。この問題は難しいぞ」

京太郎(高校生なんだから小学校の授業くらいわけないさ!)

京太郎「これは……あれ?」

京太郎(わ、わからない……)

春(小学生の頃の気持ちをしっかり懐かしめるように、学力を当時まで落としてある。姫様の粋なはからい……)

京太郎(そ、そんな……)

京太郎「すいません、わかりません」

クラス「HAHAHA!!」

……

友「おい京太郎!家に帰ったら海鳴グラウンドに集合な!みんなでサッカーやろうぜ!」

京太郎「おう、わかった!すぐ行く!」

春(楽しい?)

京太郎「ほんと最高です!神代さんも春さんも、本当に感謝しています!」

春「……」テレッ


……

京太郎「母さんただいまー」

母「お帰りなさい京太郎。手を洗ってきなさい」

京太郎「はーい」


……

京太郎「はー。食った食った。やっぱ母さんの作るご飯は美味しい」

京太郎「お、今日の金曜ロードショーは天空の城ラピュタか」

春(楽しみ……)

京太郎「春さんも見るんですか……」

春「……」コクン


……

ムスカ『みろ、人がゴミのようだ!』


京太郎「……」ウツラウツラ

父「京太郎、寝るんなら部屋で寝なさい」

京太郎「はーい……」

春(私はこれを最後まで観る。そしてあなたが寝てる間に元の時間に戻る)

京太郎「わかりました。父さん、母さん、おやすみなさい」

母「おやすみなさい」

父「ああ。おやすみ」

京太郎(父さん、母さん。過去の世界だけど、また会えて嬉しかったよ)

京太郎(楽しかった一日もこれで終わりか。本当に、楽しかった……)

京太郎(ZZZ……)

……



京太郎「うーん……。ここは……公園?」

京太郎「元の体に戻ってる……。帰ってきたのかな?」

京太郎「でもここはどこだろう……あ、春さん!」

春「ZZZ……黒糖がいっぱい……幸せ……」

京太郎「起きてください春さん……うわぁ、俺の指は黒糖じゃないですよ!口に咥えないで!早く起きてください!」

春「うーん……京太郎……?」

京太郎「倒れてたんですけど、大丈夫そうですね……」

春「ここはどこ……?」

京太郎「俺にもわかりません……。あそこの案内板を見ればわかるんじゃないですかね?ちょっと見てきます」


子供「ガブ厨ポケすぎてつまんねー」

子供「催眠厨[ピーーー]」


京太郎「ガブが厨ポケとか催眠術が厨技とかいつの時代だよ……」

春「きょ、京太郎……」

京太郎「どうしたんですか?選挙ポスターなんかみて……え?」

京太郎「2007年県知事……はぁぁ!?」

京太郎「なんでこんな昔のポスターを……いや、真新しいぞ!?」

春「ここは本当に、七年前の世界……?」

京太郎「でもさっきと違って俺たちの体は元の時代のまま……」

春「……多分、七年前の世界からタイムリープを解除する時に失敗して、七年前の世界にタイムスリップしてきた……」

京太郎「そ、そんな……。じゃあ俺たちは過去の世界にさ迷い込んだんですか!?」

春「……ごめんなさい」

京太郎「い、いえ!元はと言えば俺が過去に戻りたいなんて言い出したから……」

京太郎「と、とにかくここはどこなんでしょう?」

春「選挙ポスターに書いてある……」

京太郎「あ、ほんとだ。>>179県県知事か」

長野

???「なかったことにしてはいけない」
???「やりなおしなんか、できない。死者は蘇らない。起きた事は戻せない。そんなおかしな望みなんて、持てない 」

前回までのあらすじ

京太郎「確かに過去のこの世界を変えれば、天江さんや部長、そして咲を助けれるかもしれません……
でもアスト……春さん、それって本当に俺たちの未来なんですか?
どんなに辛くても苦しくても、逃げ出さずに必死になって戦ってきた……
その一瞬一瞬の積み重ねに、俺たちの未来があるんじゃないですか?」

春『そう……その通り。遊……京太郎。そんなものにはなんの価値もない』

絹恵「こい、京太郎!私には姫松みんなの想いが懸かってる!

京太郎「ここは長野か……。タイムリープしてきたのが長野だし、当然か」

京太郎「でもこの公園は見覚えがないな」

春「とりあえず夕方になったし、どこか寝れるところを探さないと……」

京太郎「大丈夫ですよ。俺は一応ある程度お金が……」


樋口「やっほー」


京太郎「だめだ……旧札がない……」

京太郎「俺はこのまま過去の世界でも野たれ死にするのか……」

春「……」

春「大丈夫。神の力を使ってお客さんを困らせたなんて六女仙人の名折れ」

春「あなたは必ず、私がなんとかする」

京太郎「春さん……」


京太郎「黒糖の袋、逆さまですよ」


春「……!」

京太郎(春さんも知らない時間軸に知らない場所で動揺している……)

京太郎(なら、男の俺がなんとかしないと)

京太郎「大丈夫です春さん。この場所は見当がつきます」

春「……?さっき知らない公園って……」

京太郎「あそこの銭湯の煙突は俺の見知った風景なので、それを目印に俺の地元まで行けます」

京太郎「ついてきてください」

春「……うん」ポリポリ

……

京太郎「だいぶ暗くなってきたけど、着きましたね」

春「ここは……京太郎の母校の小学校……」ポリポリ

京太郎「はい。この柵を乗り越えて体育館にいけば、倉庫の上の窓は壊れてるハズなので入れます」

京太郎「俺が先に入るので、春さんは後からついてきてください」

春「……」コクン

体育倉庫

京太郎「ここなら汚ないですけどマットも毛布もストーブも扇風機もテレビも置いてあります」

京太郎「さらに体育教師室にカップ麺と紅茶も置いてあるので、一晩でも二晩でも明かせますよ」

春「いたれりつくせり……」ポリポリ

京太郎「とりあえず今晩はここで寝ましょう」

春「……」コクン

京太郎「色々考えないといけない事はありますけど、俺も疲れてますから、まずは寝て鋭気を養いましょう」

春「……あの……京太郎……その」

京太郎「?」

春「汗かいたから、お風呂に入りたいんだけど……」

京太郎「」

京太郎「その、シャワー室は無いですけど、外にドラム缶があるので五右衛門風呂なら……」

春「構わない……。鹿児島でよく入っていた」

京太郎「いいんだ……。わかりました、用意しますね」

……

京太郎「うーん……」

春「どうしたの……?」ポリポリ

京太郎「その、薪が足りなくて少ししか水を沸かせないんです」

春「……」シュン

京太郎「なんかよくわからない魔法の力で火を起こせたりしないんですか?」

春「巫女さんをなんだと思ってるの……?」

春「でも、それならなんとかなりそう……」

京太郎「えっ?」


……

京太郎「そ、それじゃあお邪魔しまーす……」チャポン

春「……///」コクン

京太郎(水かさを増やすために一緒に入るなんて……)

京太郎(まあ、互いに背中合わせなんだけど)

京太郎(でもさっちチラッと見えた春さんの背中、真っ白で綺麗だったなぁ)

京太郎(いかん、このままじやのぼせてしまう。素数を数えないと……3.1415)

春「綺麗な星空……」

京太郎「はひ!?そ、そうですね。綺麗な背中でした!」

春「……?」

京太郎「え、えーっと……なんだかこうしてると、自分達が大変な状況にいるって事を、忘れてしまいそうですね」

春「知らない世界で冒険してるみたいで、少しワクワクする……それに」


ピト


春「あなたがいると、不安なんてどっかいっちゃう……」

京太郎(……!春さんが背中にもたれかかってきた!女の子の肌って予想以上に柔らかい……)スバラッ

京太郎「お、俺もです。一人でこんな所に迷い込んだらきっと不安で押しつぶされそうだったけど、春さんが一緒でよかったです」

春「私も……。京太郎がいてくれなかったから、きっと泣いてた」

京太郎「春さんが泣くところって想像し難いですね……」

春「……私だって女の子。泣く時だってある」プンスコ

京太郎「ははっ、すいません。でも、俺がいる限り、春さんが泣くような目には絶対に遭わせませんよ」

春「……」

京太郎「春さん?」

春「……そろそろあがるから、後から来て」ザパァ

京太郎「は、はい……(怒らせちゃったかな?)」






春(顔が真っ赤になってる……恥ずかしい///)

……

京太郎「風呂からでました……春さんテレビ見てるんですか?」

春「……」コクン


良樹『篠崎ぃぃぃ!!』

あゆみ『岸沼君サイテー!』


京太郎「これは……コープスパーティですね……」

春「……」コクン

京太郎「よくこんな状況でよく観れますね……」

京太郎「高校生達が廃校になった小学校に迷い込んで幽霊に惨殺される話でしょう……」

春「私なら大丈夫……」


グス……グス……


京太郎「ひぃぃぃ!?女の子の泣き声が聞こえる!?」

春「テレビの音では、無さそう……」ポリポリ

うう……ヒック……


京太郎「こ、こっちに近づいてきてる……春さん、俺の後ろに隠れてくださ……なんで前に出るんですか!?」

春「大丈夫。幽霊なら私が成仏させる」ポリポリ

京太郎「メンタル凄いっすね……」


そこにいるのは……

「誰っすかー……」ユラ

京太郎「ひぃぃぃ!!篠崎サチコだぁぁぁ!!」

春「違う……。この子は人間。生気を感じる」

「失礼っすねー。私はれっきとした人間」

モモ「東横桃子っすよー」

京太郎「東横さん……確か鶴賀の」

春「消えるとかいう副将……」ポリポリ

京太郎「俺と同じ小学校だったんですね。影が薄くて気がつきませんでした」

春「どうしてここにいるの……?」ポリポリ

モモ「うう……それが、友達と缶蹴りしていたらつい隠れたまま寝ちゃって……」

モモ「そのまま存在を忘れられて友達は帰って、起きたらもう真っ暗で鍵も閉められて彷徨ってたんす……」

モモ「いくら影が薄いからって酷いっすよ……」グスン

京太郎「不憫ですね……」

春「……」スッ

モモ「……?」

春「……食べる?」つ黒糖

モモ「……いただくっす」

モモ「……美味しいっすね。風味があって食べやすいっす」ポリポリ

春「それが自慢」ニコ

京太郎「おお、泣き止んだ」

モモ「もうこの際、学校に泊まっていくっす。学校にお泊りなんてワクワクするっす」

京太郎「でも親御さんに連絡を入れないと……駄目だ、俺の携帯はこの時代じゃ使えない」

春「私のなら使える……」スッ

京太郎「ツーカーだと……」


……

モモ「友達の家に泊まるって言ってきたっす」

京太郎「それじゃあ、マットを敷いたし寝ますか」

春「修学旅行みたいでワクワクする……」ポリポリ

京太郎「モモさんを挟んで川の字で寝ましょうか」

モモ「夜の学校なのに二人に挟まれてると、凄く落ち着くっす」

モモ「なんだか……お父さんとお母さんと一緒に寝てるみたいっす……ZZZ」

京太郎「寝ちゃいましたね。よっぽど疲れていたんでしょうか……春さん?」

春(お父さんとお母さん……///)

京太郎「それにしても缶蹴りか……。むかしよく遊んだなぁ」

春「……私はやったことがない」

京太郎「えっ?」

春「小さい頃から私達六女仙人は、姫様の守り手、そして友達として生きてきた……」

春「したことはお祓いと降霊。姫様と遊ぶときも姫様が怪我をしないよう外で遊ぶことはなかった……」

春「缶蹴りも鬼ごっこも……サッカーも虫取りも木登りも、なにもやったことがなかった……」

春「男の子らしい遊びをしたこともなかったし、男の子と遊んだこともなかった……」

京太郎「春さん……」

春「ごめん、京太郎……。この時間に迷い込んだのは、私のせい……」

京太郎「えっ?」

春「あなたをサイコメトリーして、膝枕した時……あなたのとても暖かい気持ちが私に伝わってきた」

春「そして小学校で楽しそうに遊んでるあなたを見て……私も、あなたと一緒に遊びくなった」

春「サッカーでも、缶蹴りでも……。あなたと一緒にいたかった……。その気持ちのせいで、元の時代に帰ることを心の奥底で拒否してしまった」

春「あなたと、遊びたかったから……」

京太郎「春さん……」

春「でも、今日……。知らない時間に一緒に迷い込んで……学校に忍び込んで、お風呂に入って、体育倉庫に泊まって……。とても楽しい、冒険だった」

春「私は……満足した。だからもう大丈夫。きっと元の世界に帰れる」

京太郎「春さん……」

京太郎「元の世界に戻っても、いっぱい遊びましょうよ」

京太郎「神代さんや薄墨さん、他の六女仙人達と一緒に」

京太郎「俺は、楽しい遊びをいっぱい知ってますから」

京太郎「だから、寂しそうな顔をしないでください。俺は、たまに見せてくれる春さんの笑顔が大好きですから」

春「うん……」ニコ

春「それじゃあ、戻ろうか」

京太郎「はい」

春「その、京太郎……」

京太郎「なんですか?」

春「手を、握ってて貰っていいかな……///」

京太郎「お安い御用です」

ギュッ

春「ありがとう……。今度こそ帰ろう。私達の……世界に」

京太郎「はい」


パアアアァァァ


……

モモ「うーん、朝っすか……ここは体育倉庫……?」

モモ「そういえば昨日は学校で彷徨って、体育倉庫に泊まったんでした」

モモ「それで巫女のお姉さんと幸薄そうなお兄さんと一緒にマットで寝たハズなのに、いませんね……。あれは夢だったんっすかね?」

モモ「うん……?黒糖の袋……」

モモ「……あれは夢じゃなかったみたいっすね」

モモ「ありがとう、お姉さん、お兄さん」

……



京太郎「うーん……」

初美「あ、帰ってきたみたいですよー」

小蒔「まだ意識がはっきりしないようです。寝ぼけてる状態ですね」

初美「時差ボケですかねー」

春「うーん……」ムニャムニャ

初美「手がなにか探してますよー」

小蒔「黒糖を探してるんでしょうか」



ギュッ



初美「」

小蒔「」

初美「ふ、二人が手をつないだですよー!?」

小蒔「そ、そんな……殿方と手をつなぐなんて、結婚してからじゃないと……///」

春「ふふふ……京太郎……。ずっと、一緒……」ムニャムニャ



カン!

終わり
前回よりかなり短くなった……。多分疲れた

やえさんで全精力使ったから、今後はこんな感じの短いストーリーしか作れない……
むしろ今回は僥倖な方。安価決まってからたまたまこの画像みてピピンときて急遽ストーリー変えた

http://i.imgur.com/HQt3UEs.jpg


ちなみに書きながらはるるの可愛さに目覚めて急遽ヒロイン変えた

次のホームレス先

>>216

東京

よくよく考えたら臨海組ってあんまキャラ掴めてないわ

前回までのあらすじ

菫「くっ……。私がこの水着を着れば宥を解放するだな!?」

東京

京太郎「とりあえず大都会東京なら、物資には困らないからなんとか生きていけるに違いない」

京太郎「この公園ならあまり人が来ないし、近くのスーパーからダンボールを貰って、住むところを作るとするか」



夕方

京太郎「一日かけて完成か……。疲れた」

京太郎「河原でブルーシートを拾えたのが幸いだな。これで防水性があがった」

京太郎「ついでにゴミ捨て場でゴミ箱と小さい棚も拾えたし、中々充実してきたぞ」

京太郎「とりあえず重くても毛布を家から持ってきてよかった。敷布団がなけりゃ筋肉痛になりそうだからな」

京太郎「さて、疲れたし寝るか。やる事も食べる物も無いしな……」

京太郎「ZZZ……」

……

京太郎「うーん……なんか変な音がするぞ」

京太郎「こんな真夜中に一体なんだ?」



LAAAAAAA~



京太郎「声……?でも日本語じゃ無いようだ」

京太郎「なんだろう一体」


「LAAAAAAA~♫」


京太郎「外人……?あの子が歌ってたのか」

京太郎「……凄く、上手だな」

京太郎(ただの公園なのに、真夜中にあの子の周りだけ街頭で照らされて……)

「LAAAAAAA~♫」

京太郎(まるで、ステージで歌う歌姫みたいだ)

「LAAAAAAA~♫……」

「……ふぅ。やっぱり思い切り歌えると気持ちがいいですね」


パチパチパチ

「!?」ビクッ

京太郎「凄く上手でしたよ。俺、感動しました」パチパチ

「み、見てたんですか?」

京太郎「はい。声がすると思ってつい……」

京太郎「その、迷惑でしたか?」

「いえ……、驚いただけです。あなたは……?」

京太郎「あ、俺の名前は京太郎。須賀京太郎です。貴方の名前は?」

「私は臨海女子二年生ーーー」



明華「雀明華です」



.

京太郎「ちぇーんみょんふぁん……?アジアの方ですか?」

明華「いいえ。フランスからの麻雀特待生ですよ」

京太郎「麻雀特待生……歌だけじゃなくて麻雀も上手なんですね」

明華「はい。でも日本だと歌いながら麻雀を打つことは禁止されてますから、なかなか調子が出ないんですよ」

明華「臨海女子の寮に住んでるから部屋で歌うこともできないので、こうして夜中に周りに民家の無い公園に来て、こっそり歌ってるんです」

京太郎「なるほど。そのおかげで今日はいいものを聞けました」

明華「ふふっ。いつも麻雀ばっかり褒められていたので、誰かに歌を褒められたのは初めてなので嬉しいです」ニコッ

京太郎「!」ドキッ

明華「京太郎さん、どうしたんですか……?」

京太郎「い、いえなんでも……」

京太郎(やばい……さすが外人。笑うと凄く美人だ……)

明華「そろそろ寮に戻らないといけないので、私は帰りますね」

京太郎「あ、はい。おやすみなさい、明華さん」

明華「はい、おやすみなさい」ニコッ


京太郎(明華さん、綺麗な人だったな……)

京太郎(また、会えるといいな)

京太郎「ZZZ……」

……

京太郎(ああー、腹減った……)

京太郎(パン屋さんにパンの耳をもらったけど、ひもじいな……)ぐー

京太郎(拾った缶詰めも幾つかあるけど、これはいざという時のためにとっておきたい)ぐー

明華「LAAAAAAA~♫」

京太郎(この声……明華さん?)


明華「LAAAAAAA~♫……ふぅ」

京太郎「今晩は、明華さん」

明華「あ、京太郎さん。今晩は」

明華「今日もここにいたんですね」

京太郎「ここに住んでますからね。大体毎晩いますよ」

明華「そうなんですか……?家はどちらに?」

京太郎「あれです」ユビサシ

明華「……?何もありませんよ?」

京太郎「だからあれです」

明華「……?もしかして家って、あのゴミの事ですか?」

京太郎「あれはゴミじゃなくて、ダンボールでできた俺の家です」

明華「……パードゥン?」

京太郎「あのダンボールが俺の家です。入ってみますか?中は結構快適ですよ」

明華「そ、それじゃあ……おじゃましまーす」


……

明華「へー。人が四人は座れそうなくらい広いですね」

京太郎「流石に立つことはできませんけどね。起きて半畳寝て一畳って感じです」

明華「日本にはダンボールの家という文化があるんですね」

京太郎「好きで住んでる人なんて滅多にいませんけどね……」

明華「……?どうして京太郎さんはここに住んでるんですか?」

京太郎「それがカクカクシカジカシカクイムーブというわけで……明華さん!?」

明華「うう……」グスン

明華「京太郎さん、苦労しているんですね……」グスン

明華「私も母子家庭で苦労して育ったから、生きるのに困る気持ちはよくわかります」

明華「けれど、決して諦めないでください。きっといつか、救われる日がきますから」

京太郎「明華さん……。ありがとうございます。俺、ホームレスになってから一人で不安だったけど、明華さんのおかげで、元気が湧いてきました」

明華「それならよかったです」ニコッ

明華「そういえば京太郎さん、お金が無いなら食べる物はどうしてるんですか?」

京太郎「それはどこかの店で売れ残ったっものを貰ったり、あとは捨てられた缶詰めを拾ってます」

明華「私より大変なんですね……こ、これは!?」

京太郎「どうしたんですか?」

明華「これは、いくらの缶詰め!」

京太郎「ああ、さっき言った拾った奴ですよ。明華さんいくらが好きなんですか?」

明華「はい……。私、魚の卵には目が無いんです」

京太郎「そうなんですか。じゃあ数の子とかも好きそうですね」

理沙(明太子!)プンスコ=3

京太郎「!?」

明華「いくら……ぷちぷち……」タラー

京太郎「明華さんヨダレが……拾い物ですけどよかったら食べますか?」

明華「いいんですか!?……い、いえその……京太郎さんの大切な食料を食べては……」

京太郎「いいんですよ。どうせ拾い物ですし、いくらの方だってお腹が減っただけの俺よりいくらが大好物の明華さんな食べて貰った方が本望ですよ!」

明華「……」

京太郎(へ、変なこと言い過ぎたか?)

明華「……ふふっ。京太郎さんは面白いですね」

京太郎「あ、ありがとうございます!」

明華「それじゃ、半分こしましょうか」カパッ

明華「うん、美味しい……」プチプチ

京太郎(明華さん、歌ってる時より幸せそうだな……)

明華「はい、京太郎さん。あーん」スッ

京太郎「えっ!?あ、あーん」パクッ

京太郎(か、関節キス……)

明華「美味しいですか?」

京太郎「はい、美味しいです!」

京太郎(流石外人、関節キスなんて気にしないのか……)

明華「は~、幸せです」プチプチ

京太郎(あなたの笑顔で俺も幸せです!)

……

明華「京太郎さん、今晩はありがとうございました」

京太郎「いえ、俺も明華さんが(予想以上に)喜んでくれて嬉しいです」

明華「ふふっ。このお礼はいつか必ずします。それでは、おやすみなさい」

京太郎「おやすみなさい、明華さん」


……

京太郎「今日の晩御飯はほうれん草か……。俺は羊かっつーの」

仁美(なんもかんも政治が悪い)

京太郎「!?」

明華「京太郎さん、いますか?」

京太郎「明華さん!?少しまってください!」

京太郎(河原で拾ったエロ本を隠さないと!)ゴソゴソ

京太郎「はい、どうぞ」

明華「今晩は、京太郎さん」

京太郎「今晩は明華さん!」

明華「……?汗をかいてますね。風邪ですか?」

京太郎(冷や汗です!)

京太郎「明華さんはどうしてここに……?」

明華「ふふっ。昨日のお礼に、学校の厨房を借りて京太郎さんにお弁当を作ってきたんですよ」

京太郎「ほ、本当ですか!?」

明華「はい。差し出がましいと思いましたが昨日私凄く嬉しかったんです」

明華「どれだけ貧しくても、優しさを忘れてはいけならい……。私のお母さんがよう言ってた言葉です」

明華「そんな京太郎さんに、私は凄く感動してしまいました」

京太郎「明華さん……。ありがとうございます。このお弁当、ありがたく食べさせてもらいます」

京太郎「いただきます!」

明華「はい。どうぞお召し上がれ」

京太郎「(パクパク)……うう……美味しい。久しぶりにご飯を食べれて、人の優しさに触れて、涙が出そうです……」モグモグ

明華「ふふっ。そんなに美味しそうに食べてもらえて、私も冥利に尽きます」

京太郎「(パクパク)ふーっ。ご馳走様でした」

明華「おそまつさまでした」

京太郎「明華さん料理も上手いんですね」

明華「家ではよく自分でご飯を作ってましたから。料理には自身がありますよ」

明華「こんなのでよければ、毎晩作りましょうか?」

京太郎「い、いいんですか!?」

明華「はい。これも、日本語で言うと袖降り合うのも福来たるでしたっけ?」

京太郎「袖降り合うのも多少の縁ですよ」

明華「そ、そうでした……」

京太郎「ははは……」

こうして、明華さんは俺に毎晩、お弁当を作って届けてくれるようになった

明華さんのお弁当を食べて、歌を聞いて……

とても幸せな日々が続いたある日


明華「すいません、京太郎さん。明日からしばらく、私は来れそうにないんです」

京太郎「……?どうして……あ、そうか。明日からは……」


京太郎&明華「インターハイ」


明華「なので、暫く会場の近くに泊まることになるので……。すいません京太郎さん」

京太郎「いえ、いいんですよ。むしろ毎晩お弁当を作って貰えるだけで俺は幸せです」

明華「ふふっ。日本人は謙虚ですね。いえ、京太郎さんが優しいんですか?」

京太郎「いや、明華さんも十分……。そういえば特待生だったんでしたっけ」

明華「はい……私は臨海の特待生として来日しました」

明華「だから、もしインターハイで失態を犯したら、麻雀協会や学校からの母国への支援が減ってしまうんです……」

明華「だから、明日からのインターハイ。決して負けられないんです」

京太郎「明華さん……」

京太郎「そういえば……明華さんは臨海の中堅でしたっけ?」

明華「はい」


京太郎「中、堅……」

京太郎(……俺が部長の情報を話せば、明華さんはきっと有利に立ち回れる)

京太郎(今までの恩や明華さんの事情を考えれば、少しのアドバイスくらいするのは、人の義理として当たり前かもしれない)

京太郎(でも……俺は清澄の一員だった。いや、今でも咲や部長に勝ってほしいと思ってる)

京太郎(俺はどうすれば……)

明華「京太郎さん……?」

京太郎「明華さん……俺は>>236

1.部長の事情を話す
2.部長の情報を話さない

事情を話すだから情報ばらすわけじゃないのかな?
とりあえず2で

×事情を話す
◯情報を話す

まあいあか

前回までのあらすじ

竜華「怜……どうして死んでまったん……」

怜『竜華……』

竜華『怜!?生きとったん!?ていうか、なんやその姿は……』

怜『ウチは転生したんや……バリアンのオーバーハンドレットナンバーズ、No.107 銀河眼の時空竜の精霊として!』

京太郎「俺は……」


優希『犬!このタコス、お前にも食べさせてやる。ありがたく思うじぇ!』

まこ『京太郎、週末ウチの雀荘が割引きセールしてるから来てみんか?お前さんくらいの実力の人もくるし、ワシも少しは麻雀を教えられるしのぅ』

和『須賀君、ここはあれこれなんやかんやでこの牌を切った方がいいですよ。デジタル打ちなら私に任せてください』

咲『京ちゃん、ここどこ……?』



久『須賀君、いつもありがとう。インターハイが終わったら、きっと今までの分恩返しするから』



京太郎(俺は……清澄のみんなを、裏切られない)

明華「京太郎さん……?」

京太郎「すいません……明華さん……」ドゲザー

明華「京太郎さん!?これはジャパニーズドゲザ……どうしたんですか!?」

京太郎「とにかく……すいません」

明華「……」

明華「よくわかりせんけど……」




ギュッ


京太郎「!!」

明華「京太郎さん。あなたが今、とても大切な選択をしたことはわかってます」

明華「私では想像もつかないような選択を、とても思い悩んで。なので私はとやかく言うことはしないつもりです」

京太郎「……」

明華「だから、そんな悲しそうな目をしないで。自分を責めないでください」

京太郎「明華さん……本当に、すいません……いや、ありがとうございます」

明華「はい。私は何があってもあなたを許します」

明華「世界の全てがあなたの敵でも、私だけはあなたの味方ですよ」

京太郎「明華さん……」

明華「なんて。最後のは一度言ってみたかっただけのセリフですけどね」

明華「それじゃあ、おやすみなさい。京太郎さん」

京太郎「はい、おやすみなさい。明華さん……明日のインターハイ、頑張ってください」

明華「はい。全力を尽くしてきます」ニコッ

……

こうしてインターハイが進み準決勝

清澄、姫松、有珠山、そして臨海が対戦することになった

それを俺は路上のテレビで観戦していた



インターハイBブロック準決勝中堅戦(うろ覚えです)


京太郎(明華さん……今のところ上手くやれてるみたいだな。流石は特待生って事か)

京太郎(部長は相変わらずだな。有珠山に迎合する事なくアガってる)

京太郎(……二人とも頑張ってください)


……

京太郎(部長の調子がだんだん上がってきてる)



明華『私の風は、守りにも使える』つ南



京太郎「明華さんーーーそれは!!」


久『それロンよ、風神さん』

明華『』

揺杏『出るかわかんねー風牌単騎待ちとかありえねー』

洋榎『夏の高校生やからな』


京太郎「明華さん……」

(あと言い忘れたけど単行本派の人はネタバレ注意)


……


明華『流石に今度は風を離しませんよ』



久『ツモ!』つ南



明華『そんな……私の風が……』

洋榎『夏の高校生やからな』

揺杏『カイジくんが食べたいのはこの焼き鳥だろう?』


……

京太郎(準決勝は末原さんの活躍により清澄と姫松が決勝に進出。臨海は敗退となった)

京太郎(元清澄として素直に嬉しい。ただ、どうしても明華さんの事が気がかりだった)

京太郎(インターハイが終わってから一週間経つが、明華さんはあれから一度も公園に来なかった)

京太郎(そして俺はーーー)

臨海女子


京太郎(ここが臨海女子の寮……)

京太郎(どうしても明華さんに会いたくて来てしまったけど、よくよく考えたら呼び出すこともできないし、部屋に行くこともできないな……)

警備員「君、ここで何をしてるのかね?」

京太郎「え!?えーっと、道に迷ってしまって……」

警備員「なるほど、言い訳は向こうで聞こうか」ガシッ

京太郎「は、離してください!俺はこんな事してる場合じゃーーー」



「おい、そいつは私の友人だ。離してやれ」



京太郎「え……?」

警備員「し、しかし……」

「私が呼んだ友人なんだ。離してやれと言っている」

警備員「す、すいませんでした!」スタコラサッサ

京太郎「あ、ありがとうございます。あなたは……?」

「私か?私の名前はーーー」



智葉「辻垣内智葉。臨海女子の先鋒だ」


.

京太郎「つ、辻垣内さんって、去年のインターハイベスト3の、あの辻垣内さん!?」

智葉「なんだ、知っててくれたのか」

京太郎「はい。有名ですし、その、よく明華さんが話てくれていました」

智葉「明華に……。やはり君が、須賀京太郎か」

京太郎「俺のことを知ってるんですか……?」

智葉「明華が君に私のことを話したよう、明華も私に君のことを話していたんだよ」

京太郎「お、俺のことを……?どんな風に話していたんですか?」

智葉「ほう、気になるか」

京太郎「まあそこそこ……」

智葉「ふっ……明華の名誉の為に内緒にさせてもらおう」

京太郎(めっちゃ気になる……)

智葉「ただ、君の事を話す彼女はとても嬉しそうだったし、君のために弁当を作る姿はとても楽しそうだったよ」

京太郎「て、照れますね……///そうだ、その明華さんは!?」

智葉「ああそうだ。その為に君を招き入れたんだった」

智葉「実は、あのインターハイの後、彼女は自室に引きこもって出て来ないんだ」

京太郎「え……?」

智葉「食欲は無いようでも幸いダヴァンが差し入れたカップ麺は食べてるから、まだ倒れてはいないようだが……流石にこのままじゃいかん」

京太郎「そ、そんな……まさかインターハイの結果で、支援金を打ち切られたから引きこもったとか……?」

智葉「いや、それは無い。明華はまだ二年だし、そんな大失態をしたわけでもないからな。打ち切られてはいない」

京太郎「よ、よかった……。それならどうして……?」

智葉「……竹井久」

京太郎「!!」

智葉「清澄の中堅である彼女に風牌で競り負けた事で、いたくプライドが傷つけられ、ショックだったらしい……ん?どうした須賀。顔が真っ青だぞ」

京太郎「い、いえ……なんでも……」

智葉「……?まあいい。本題はここからだ」

智葉「明華は私達がいくら呼びかけても返事をしてくれない……」

智葉「でも、君の声なら、届くかもしれないんだ」

京太郎「俺……?」

智葉「ああ。君の事になると、明華はとても幸せそうだった。」

智葉「歌っている時以外であんなに嬉しそうな……いや、歌っている時以上に嬉しそうな明華を見るのは初めてだよ」

智葉「だから、頼む。明華の所に行ってやってくれ」

京太郎「……はい。辻垣内さん。もとよりそのつもりでここに来ました」

京太郎「それじゃあ早速……ぐぇっ」

智葉「どこに行く気だ。流石に女子寮の中に入ることはできんぞ」ガシッ

京太郎「首が締ま……ゲホゲホ。じゃあどうやって明華さんの所に行くんですか!?」

智葉「外からに決まっているだろ」

京太郎「」

……


智葉「あそこの五階の左から六番目の部屋が明華の部屋だ」

京太郎「五階って……どうやって行くんですか?」

智葉「大丈夫、助っ人を読んである。ハオ」

ハオ「今晩は。郝慧宇です」

京太郎「あ、今晩は。須賀京太郎です」

ハオ「ふむ……君が須賀ですか。話には聞いてますよ」

京太郎(一体どんな話をしてるんだろう……)

京太郎「それで、どうやって五階までいくんですか?」

智葉「ハオ、頼む」

ハオ「はい。須賀、歯を食いしばってください」

京太郎「は?」

ハオ「火箭脚!!」ドゴォ

http://i.imgur.com/iVZIBH7.jpg

京太郎「おぶぉぉぉ……!!」キラーン

智葉「星になったか」

ハオ「あ、ちゃんと明華の部屋のベランダに着地したみたいですよ」

智葉「というより墜落だな」

……

明華「……」

明華「……」

ドゴォン

明華「……?ベランダから物音が……気のせいでしょうか?」

コンコン

明華「……何でしょうか?」ガラガラ

京太郎「みょ、明華さん……久しぶりです……」

明華「きょ、京太郎さん!?どうしてここに……ていうかどうやって……!?しかも何で死にかけなんですか!?」

京太郎「サプライズで……登場、したかったんで……す……」バタッ

明華「京太郎さーん!!」


……

智葉「お、部屋の中に入れられた」

ハオ「成功したようですね」

智葉「後は彼に全てを託そう。私たちはスマブラでもするか」

ハオ「負けませんよ」

……

明華「そうですか……。私に会いに、こんな目に遭って……心配かけてすいません」

京太郎「それは俺だけじゃなくて、辻垣内さんやハオさん達にも言ってあげてください。みんな心配してましたし、ここまで来るのを手伝ってくれたんです」

明華「はい……」シュン

京太郎「……すいません、明華さん。実は明華さんが落ち込んでいるの、俺のせいなんです」

明華「……」

京太郎「清澄の中堅……あれは俺の俺がいた麻雀部の部長なんです……。もし俺が部長の打ち筋の事を明華さんに話していればこんな事には……本当にごめんなさい」ドゲザ

明華「知ってましたよそれ」

京太郎「えっ」

明華「知ってましたよ。京太郎さんが元清澄だって」

京太郎「……えぇぇぇ!?」

明華「京太郎さん、インターハイの日にちの事を知ってたし、長野から来たって言ってましたよね?」

明華「だからなんとなく、この前謝られたれた時、わかったんです」

明華「きっと京太郎さんは清澄の一員で、そして、どうしても清澄の味方をしたかったんだって」

京太郎「そ、そうだったんですか……」

明華「京太郎さん、謝らないでください。前も言ったとおり、京太郎さんは凄く悩んで選択したんでしょう?」

明華「それなら、私は責めることはしませんよ」

京太郎「明華さん……」

明華「それに、本当はあれは私のせいなんです」

京太郎「え?」

明華「京太郎さんが清澄の味方をして、少しヤキモチを焼いてしまったんです

明華「それでムキになって冷静さを欠いた打ち筋になって……あんな事になっちゃっただけなんです」

明華「だから、自分を責めないでください」

京太郎「明華さん……。外に、出ませんか?」

明華「え?」

……

明華「ここは……?」

京太郎「カラオケです」

京太郎「明華さん、インターハイの時以来、歌ってないんでしょう?」

明華「はい……」

京太郎「だから、今日はここで思いっきり歌いましょう。そうすればきっと、いつもの調子がでます。それに……」

明華「それに?」

京太郎「俺も久しぶりに、明華さんの歌を聞きたいですからね」

明華「京太郎……わかりました。今日は思いっきり歌いますよ!」

京太郎「はい、朝まで付き合いますよ!」


……

明華「はー、沢山歌って、とても楽しかったです」

京太郎「俺も、明華さんが元気になってよかったです」

明華「……京太郎さん、少し屈んでください」

京太郎「……?こうですか?」

明華「はい。そのまま……」







チュッ






京太郎「」

明華「///」

京太郎(や、柔らかい感触が唇に……///)

京太郎「こ、これはあれですね。東欧人は挨拶がわりや感謝の印のスキンシップにキスという文化が……」

明華「ち、違います……。これは、愛情の印です」

明華「私、京太郎さんの事が、大好きですから///」

京太郎「明華さん……」



ギュッ



明華「き、京太郎さん///」

京太郎「俺、とても嬉しいです」

京太郎「初めて明華さんを見て、とても綺麗な人だと思って……そんな素敵な人に優しくしてもらって、こうして……」

京太郎「俺、今とても幸せです」

明華「……はい。私も、です」

明華「ずっとそばにいてください、京太郎さん」ニコッ

……

半年後

明華「それにしても良かったですね」

京太郎「はい。臨海女子の警備員に就職できたおかけで、寝るところも用意してもらえたし、まともに生きていけます」

明華「それもですけど……」

京太郎「?」

明華「これで、京太郎さんが近くにいられますから///」

京太郎「明華さん……///」

明華「この冬休み、私はフランスに帰省するんです。ですから……」

明華「京太郎さんも来てください。母に、あなたを紹介したいですから」ニコッ



カン!

終わり。話がだんだん短くなってる気がする



情報ばらしてフェアプレイ崩すより本気で応援するって行くかと思ったけど清澄優先ってことになっちゃったか

>>257
船Q「事前に情報<データ>を集めて対策して対抗策を練る事のどこがアンフェアや。むしろ勝つために来てるのに対抗策無しでいくのは怠慢や」

選択肢で情報を教えるを選んでた場合ストーリーにどんな変化があったんだろ?

書きかけてたんで西東京もやっちゃいます

>>262
そん時は京太郎のおかげで部長に勝つ
その後、天空編に突入する

この際だから全部分岐解説すると

>>82
どのキャラ選んでも清澄のみんなに報告され、みんながやってきて清澄に帰ることになる
それまでの会話が変化する

>>95
どれも同じ

>>177
長野→京太郎の母校に泊まりモモと遭遇。その後帰還
鹿児島→ロリ女仙人達に力を貸してもらって帰るが、その為にはなんか試練の洞窟的なのに挑む。その後帰還
北海道→成香、揺杏、爽達と天神小学校に迷い込み、その後帰還
岩手→豊音村に迷い込み、廃病院でホラー体験、その後帰還
その他→その県の代表校の誰かの幼い頃と遭遇し、その子の悩みを解決して帰還

>>233
部長の情報を教える→京太郎のおかげで明華が部長に勝利。その後即興でなんか考えた短いエピソード挟んで普通にハッピーエンド
部長の情報を教えない→ショックで明華が引きこもり、京太郎が救い出す

前回までのあらすじ
ゆみ「大それた真似……?卑怯な輩には私の槍槓をぶち込んでやるのが礼儀でな」

東京

京太郎「東京なら大都会だから、ホームレスでも暮らしていけるに違いない」

京太郎「ほら、川の向こうを見ればホームレスハウス。公園のあっちもホームレスハウス」

京太郎「よし……。なんか生きる自信が湧いてきたぞ!」


「……」フラフラ


京太郎「なんだあの人……?」


「あかん……私病弱やから……」フラフラ

京太郎「あ、あの……大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」

「大丈夫じゃない……。でも救急車はいらない。代わりに……」

京太郎「代わりに?」

照「お菓子食べたい。お菓子成分が足りなくて倒れそう」

京太郎「」


……

照「ありがとう」モグモグ

京太郎「貴重な食料が……ていうかなんで公園でフラついてたんですか?」

照「お菓子買いに行こうと思って外に出たら道に迷った」モグモグ

京太郎「地元で道に迷うんですか……まるであいつみたいだ……」

京太郎「ん……?ていうかあなた、よく見たら宮永照さんじゃないですか?」

照「うん。なんで知ってるの?」モグモグ

京太郎「そりゃインハイチャンプですからね。それにあいつも照さんの事よく話してたしなぁ」

照「あいつ……?ああ、そういうこと」モグモグゴックン

照「私についてきて」スクッ

京太郎「へ?」

照「私の高校……白糸台に行く」トテトテ

京太郎「えっ、なんで……ていうかそっちは逆方向ですよ!照さーん!」

白糸台部室

菫「どうして照を一人で買い物に行かせたんだ!」

誠子「すいません……一人で行くって聞かなくて……」

尭深「後をつけたけど、見当違いの方向に行きまくるせいで見失った……」ズズ

菫「まずいぞ……このまま放っておくと沖縄まで行ってしまうかもしれない……」

淡「この前なんか青森で発見されたもんねー」

照「ただいま」ガチャ

誠子「!?」

菫「照が一人で帰ってきた!?」

京太郎「し、失礼しまーす……」

菫「ああ、その人に案内してもらったのか」

尭深「その人誰ですか……?」

照「聞いて驚け。この人は淡の双子のお兄ちゃん」

京太郎「……は!?」

淡「……えええぇぇぇ!?」

菫「おい照、何をトチ狂った事言ってるんだ。大星に兄がいるなんて話聞いたこと無いぞ」

照「髪の毛が淡と同じ色だし、さっきあいつが私の事をよく話してたって言ってた」

照「つまり私の事をよく話せるような、私の身内で金髪と言えば淡だけ。だからこの人は淡の双子の兄弟に違いない」フンス

尭深「お茶飲む……?」

誠子「ありがとう」

京太郎「この人、インハイチャンプの宮永照さんですよね……?同姓同名のそっくりさんとかじゃなくて」ヒソヒソ

淡「あー、信じられない気持ちはわかるよ。私も最初はびっくりしたもん」ヒソヒソ

照「ほら、あんなに仲が良さそう」

京太郎「ち、違います!俺があなたの事を聞いたのはさk……」

京太郎(はっ……!咲は、お姉さんに嫌われてるって言ってた……。ここで咲の名前を出したら、気まずい空気になる……)

照「さ……?」

京太郎「さ……察しの通り、妹の淡です。俺の名前は大星京太郎です」

淡「えええぇぇぇ!?」

尭深「」ブフゥッ

誠子「うわ、汚な!」

菫「ば、馬鹿な……」

照「やはり私の推理に間違いない……」フンス

淡「ち、違うよ!こんな人、私の兄じゃ……」モガモガ

京太郎「今だけでいいから話を合わせてくれ!」ヒソヒソ

淡「んー!」モガモガ

照「淡、兄妹に対してそんな事言っちゃ駄目」

照「私のところは、もう関係がねじれ過ぎちゃってるから……せめて淡達には、仲の良い兄妹でいて欲しい」シュン

淡「……」

京太郎「……」

京太郎「な、照さんはちょっと兄弟姉妹に関して、ややこしい事情があるんだよ……今だけでいいから」ヒソヒソ

淡「うん……わかった」ヒソヒソ

淡「お兄ちゃん!」ガバァ

京太郎「妹よ!」ダキッ

照「うん。やっぱり兄妹は仲がいいのが一番」

尭深「淡ちゃんに兄妹いるって話聞いたことある?」

誠子「さあ?」

菫「……」


……

菫「というわけで今日の部活は終わりだ。大星兄、倉庫の片付けありがとう」

京太郎「いえ、これくらいなら慣れてますから」

照「菫、私はガンダム見ないといけないから先に帰る。それじゃ」バタン

菫「……で、本当のところ、君は誰なんだ?」

京太郎「あ、やっぱりバレてましたか」

菫「照の家庭の事情はあらかた聞いているからな。おそらく君もあいつに気を使ったんだろう」

菫「そして照は君のことを知らないようだし、恐らく照と照の事情の事を聞いたのは、妹の宮永咲。違うか?」

京太郎「はい、その通りです。咲と俺は幼馴染なんです」

淡「スミレすっごーい!」

尭深「宮永先輩とは大違い……」ズズ

誠子「でも宮永咲は長野の清澄なのに、なんで京太郎君がここにいるの?」

京太郎「それは……その、一家離散してホームレスになって、とりあえずなんとかなりそうな東京に来たんです」

誠子「ご、ごめんなさい……」

京太郎「いえ、いいんですよ……。社会のしがらみから離れれるのもいいですし、ダンボールハウスも寝心地は悪くないですから……はは……」

尭深「無理してる……」ズズ

菫「うーむ、だがそれは困るな」

淡「どうしてー?」

菫「照は京太郎を、大星……淡のお兄さんだと完全に誤解している。そしてその誤解も正そうとしても、自分と重ね合わせて、京太郎を淡が毛嫌いしてるだけだと思ってしまう」

淡「スミレが私を名前で呼んでくれた!」ワーイ

菫「……話を続けるぞ。とにかく誤解は解けない。そしてホームレス生活してる京太郎を照がみたら……」

尭深「兄妹不仲と思う……」ズズ

菫「そう。そうなったらまた七面倒臭いことになるし、最悪、照の方も落ち込むかもしれない」

京太郎「そんな……じゃあどうすればいいんですか俺は」

菫「うーん、君には悪いがここから遠く離れたところで生活して貰って、照には大星兄は火星にコロニー建造のアルバイトに行ってるとでも言えばいいんだが……」

京太郎「そんな嘘に騙されるんですか……」

菫「騙される」

淡「騙されるよ」

誠子「騙されるね」

尭深「騙される……」ズズ

菫「だがこれはある種チャンスだ」

淡「どういうこと?」

菫「このまま京太郎にはチーム虎姫の助っ人として居座ってもらって、部室内で淡と仲のいい兄妹を演じてもらう」

菫「それを見ることで、照の中で何かが変わり、妹とさんとの不仲が直るかもしれない」

誠子「おお……」

尭深「なるほど……」

淡「さっすがスミレ!」

菫「君には申し訳ないが、この作戦に協力してもらえないか?」

京太郎「悩むまでもありませんよ。それで咲がお姉さんと仲直りできるなら……喜んで協力させてもらいます」

誠子「即決か」

尭深「男前」ズズ

菫「ありがとう、京太郎」

誠子「じゃあ京太郎はどこに住むんですか?」

菫「それが問題だな……。私と亦野は寮だし、淡と尭深のどちらかか」

尭深「私の家は広いから、問題ない……」ズズ

淡「私も一人暮らしだから大丈夫だよー」

菫「すまないな二人とも。京太郎、どっちにする?個人的には兄妹で住む設定の方が都合がいいから、淡の家の方がいいが……」

京太郎「うーん、俺は……>>276


大星淡の家に住む
渋谷尭深の家に住む

大星家

あわあわルートか……

さて、本気入れて書くかな

そいやタイトルも入れ忘れてた

第一話:ホームレス姫
第二話:時をかける男女
第三話:風神の公園のミョンファン

京太郎(流石に年上の人といると委縮するしな……)

京太郎「すいません、大星さん。お願いできますか?」

淡「同い年だから敬語じゃなくていいよー。あと兄妹って設定だし、淡って呼んでね」

京太郎「わかった。頼む、淡」

淡「うん、よろしくねキョータロー。それともお兄ちゃんの方がいいかな?」

菫「照の前で名前で呼んでも困るし、お兄ちゃん呼びの方がいいだろう」

誠子「ごめん、京太郎君。宮永先輩が妹さんと仲直りできるまででいいんだ。迷惑かけるね」

京太郎「いえ。俺の方こそ寝床が用意されますから、願ったり叶ったりです」

尭深「お礼にこれあげる……」つお茶

京太郎「ありがとうございます渋谷さん……うわ、すごく美味しい」

尭深「それが自慢……」ニコッ

京太郎「キャラ違いますよ……」

菫「とにかく、京太郎。しばらく手間をかける……いや本当に」

京太郎「……?別に構いませんよ。部内の雑用は慣れてますから」

菫「それだけではないんだが……(ボソッ」

京太郎「???」



京太郎「ホームレスになった……」
SEQUENCE 04 淡とあわあわと照隠し


あわあわのおうち

淡「ただいまー!」

京太郎「おかえりー……って家に誰もいないだろ」

淡「えっ?たまに壁の中から女の子の声で『お帰り』って答えてくれてるよ?」

京太郎「……なあ淡。ここ家賃いくらだ?」

淡「五千円」

京太郎(渋谷さんの家にすればよかった……)

京太郎「おじゃましまーす」

京太郎(そういえば咲以外の女の子の部屋に入った事ってないな……)

京太郎(なんか少しワクワクする……)

京太郎「汚!」

京太郎(服は脱ぎ散らかしてあるしゴミ袋は溜まっるし、お菓子やジュースのゴミが散乱してるし……ベッドから風呂、トイレ、玄関までの道筋しか物が無いところが無い……)

淡「うーん、どうしても一人だと、整理整頓とか片付けとかゴミ出しとか億劫なんだよねー」

京太郎「……とにかく、まずは部屋を片付けるぞ」

淡「ラジャー!……あ、お兄ちゃん。言い忘れてた事があるんだけど」

京太郎「?」

淡「お兄ちゃんがウチに住むんなら、守って欲しいルールが幾つかあるんだ」

京太郎「まあ、それくらいは当然だよな。なんだ?」

淡「まず、午前零時と午前二時から三分間は絶対にトイレに行かない事、誰もいないのにトイレやお風呂の電気が点いてても絶対消したり中に入ったりしない事」

淡「押入れの天井は開けれるけど絶対に開けない事、寝てる時に目が覚めても天井を十秒以上見つめないこと、押入れは絶対に隙間を開けずにぴっちり閉めること、夜中に壁を叩く音が聞こえても絶対に声を出したりしない事」

淡「これだけ守ってくれればいいよ」

京太郎「」

……

京太郎「ふー、なんとか片付いた」

京太郎(下着とかも片付けたが、途中に見かけた人型のシミとか御札とかでなんかもうそれどころじゃなかったな……)

淡「ありがとう、お兄ちゃん。ご飯できてるよ」

京太郎「おっ、早いな。何を作ったんだ?」

淡「はいこれ」つピリ辛宥ヌードル

京太郎「……晩ご飯ってこのカップ麺か?」

淡「そうだよー」ズルズル

淡「もしかしておもち入り玄ヌードルか、唐翌揚げ絹ードルの方がよかった?」チュルン

京太郎「……お前の晩飯って毎晩カップ麺なのか?」

淡「うん。安いし早く作れるもん」

京太郎「お前そんなのばっか食べてるから髪の毛がラーメンみたいになってるんだぞ」

淡「ひどい!ラーメンが髪の毛みたいってラーメンに謝って!」

京太郎「怒るとこそこなのか……。とりあえず明日は食材買いにいくぞ」ズルズル

淡「はーい」ズルズル


……

淡「お湯張ったよー。先に入る?後に入る?」

京太郎「後でいいよ。家主の淡が先に入れよ」

淡「うん!」

……

淡「でたよー」

淡「でたよー」

京太郎「おーう……って、全然髪の毛乾かしてないじゃないか」

淡「だって面倒くさいんだもん」

京太郎「ほら、そこに座れ。俺が乾かしてやる」ドライヤーブイーン

淡「はーい」

ワッシャワッシャ

淡「……本当にお兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかな?」

京太郎「さあな。俺は妹がいたことがないからわからん」

淡「私もお兄ちゃんがいたこと無いからわかんないや」

京太郎「……ほら、乾かせたぞ」

淡「ありがとう、お兄ちゃん」

京太郎「それじゃあ、俺は風呂入ってくる」

淡「言ってらっしゃーい」


……

京太郎「出たぞー……って、テレビ見たまま座椅子で寝てやがる」

京太郎「仕方ない。ベッドに運んでやるか」

淡「ZZZ……」

京太郎「 お腹出して……寝相悪いなこいつ」

淡「むにゃむにゃ……もう食べられないよ……ZZZ」

京太郎「ベタな寝言を……。さて、俺も寝るか」

京太郎「電気を消して、ベッドの横の床に布団をしいて……」

京太郎「……そういえばベッドの下っていう都市伝説があったな……なんかよくないものを見てしまうかもしれん……」

京太郎「……淡のベッドって結構大きいな」

淡「ZZZ……」


>>291
淡といベッドで寝る
床で寝る

油化

前回までのあらすじ

仁美「いけ、銀河眼の光子竜!」

煌「すばら!」

京太郎(流石に女の子と同じベッドで寝るのはマズイな。床で寝るか)

京太郎(……天井やベッドの下から物凄く視線を感じるが、絶対に目を開けないぞ)


……

ゴソゴソ

京太郎(ZZZ……ん……?淡……?)

トテトテ

京太郎(台所に行った……。喉でも渇いたのか?)

ピチャ…ピチャ…

京太郎(……何かを舐める音がする……。何してるんだ?)

京太郎(ちょっと覗いてみるか)ソーッ

ピチャ…ピチャ…

京太郎(あれは……油?)

京太郎「おい淡……なんでそんなもな舐めてるんだよ……」

淡「……」クルッ

京太郎「!?」

京太郎(な、なんだ……淡いの頭に猫の耳が……それにあの目、どうみても人間の目じゃない……!)

淡?「み~た~な~」

京太郎「……!」

京太郎(俺の本能が言ってる……。逃げないと!)

京太郎(けどこんな状態の淡を放って置いていく事は……)

淡?「フカーッ!」バッ

京太郎(マズイ!)

ガブッ

京太郎「ぐっ……うあああぁぁぁ!!」

京太郎(腕を噛まれた!痛い痛い痛い……!なんて顎の力だ!人間の力じゃない!)

淡?「フーッ!」

京太郎(そうだ、確か夕方に片付けをした時、ここに包丁が!)

京太郎(あった!)ガシッ

京太郎「この……!」ブンッ

淡?「……!!」

京太郎「……!」ギリッ

京太郎(駄目だ……様子がおかしくても淡の身体を傷つけるなんて事、できない……)ポトッ

淡?「……」

京太郎「頼む……淡に身体を、返してやってくれ……」

淡?「……」

京太郎(ぐっ……聞く耳無しか……)

京太郎(あまりの痛みに、意識が朦朧としてきた……)

京太郎「……」ドサリ

……

淡「お兄ちゃん!朝だよ、起きて!」

京太郎「うっ……朝か……ここは、布団……?」

京太郎(俺は台所で倒れたハズ……。昨日の出来事は夢だったのか?)

京太郎「ぐぅっ……!!」

淡「どうしたのお兄ちゃん?」

京太郎「俺の右腕が……」

京太郎(痛い……!やっぱり昨日の出来事は夢じゃなかったんだ!)

淡「それちゅーにびょーってやつ?タカミーが言ってたよ。包帯まで巻いちゃってさ」

京太郎「包帯……?」

京太郎(昨日の噛まれた痕の手当てがしてある……。一体どういうことだ?)

淡「それより朝ご飯だよ!」

トマト、ハム一切れ、ミネラルウォーター、砂糖と塩ひとつまみ

京太郎「……お前こんな食事だから大きくならないんだぞ」

淡「ひっどーい!そのうちスミレよりおっきくなって、タカミーよりもおっきくなるもん!」

京太郎「期待せずに待ってるよ」

……

白糸台部室

菫「なるほど……猫の化け物か」

淡「へー。私全然覚えてないや」

誠子「宮永先輩は?」

尭深「三時のおやつを食べに帰った……」ズズ

菫「嘘っぽい話だが……君の腕の傷痕を見る限り、どうやら本当のようだな」

京太郎「はい……。ほんと死ぬかと思いました」

誠子「でもどうしてそんなのがでてきたんでしょうか。淡、お前まさか猫を虐めたりした?」

淡「そんな事するわけないじゃないですか」

京太郎(なんで淡は誠子さんにだけ敬語なんだろう)

尭深「幽霊とか沢山いると、そういうのが集まりやすくなるって聞いたことがある……」

菫「ふむ。京太郎が言うにはとてつもなくやばい物件らしいし、そのせいだろうな」

菫「これでインハイで不調が出ても困る。とっとと部屋ごとお祓いしてもらえ」

淡「え!嫌だよ!絶対にいや!」

尭深「淡ちゃん……?」

菫「なんで……。どうせ悪霊の類なんだろ。とっとと祓ってもらったらどうだ」

淡「悪霊じゃないもん!トイレの女の子も押入れの女の人も天井裏の男の子も壁の中の女の子も天井の蜘蛛女さんもベッドの下の男の人も、みんないい人だもん!」

京太郎「」

尭深「……やっぱうちに泊まる?」

京太郎(ていうかやっぱりベッドの下にいたのかよ!)

菫「どう考えても呪われてるだろ。早くしないと大変な事になるぞ」

淡「そんなことないもん!なんでわかってくれないの!?スミレのバカ!アホ!マヌケ!偽おもち!」ダッ

菫「誰が偽おもちだ!……行ってしまったか。少し言い過ぎたか……」

尭深「淡ちゃん……」

京太郎「俺、追いかけてきます」

誠子「京太郎君……。お願い」


……

屋上

淡「スミレのばか……」グスン

京太郎「こんなところにいたのか淡」

淡「お兄ちゃん……」

京太郎「菫さんも反省してたよ。部室に戻ろう」

淡「……私ね、規律とか集団行動とか苦手で、寮に入らずに一人暮らししたの」

京太郎「……ああ」

淡「でも一人は寂しくて、たまに泣いちゃう時があったんだ。そしたら、壁の中や押し入れ、天井やトイレやベッドの下からみんなが話しかけてくれたの」

淡「それで、一人でもみんなが一緒にいてくれるから、今は全然寂しくないんだ」

淡「だからみんながいなくなるなんて嫌だよ……」

京太郎「淡……」

京太郎「淡、俺にいい手がある」

淡「ほんとう……?」

京太郎「ああーーーお兄ちゃん任せろ」

……

深夜

淡?「……」スクッ

淡?「……」ペロペロ

淡?「!!なんだこの味!?」

京太郎「その中はネクターに変えておいたよ」

淡?「……お前」

京太郎「流石に油は不味いだろうからな」

京太郎「……あんた、俺を怖がらせて追い出す為に化け猫のふりをしてるんだろ?」

淡?「……ばれてたのかい」

京太郎「昨日淡の部屋を片付けた時、油をみたから覚えてるよ……まったく減ってない事をな」

京太郎「多分淡の事だから、調理器具や調味料各種揃えたけど、面倒臭くて自炊なんかしてないから、全然減ってないんだな」

京太郎「それなのに昨晩化け猫が現れて油を舐めた。つまり、昨日初めて油の舐めたって事だ」

淡?「……へぇ」

京太郎「そして俺の怪我をわざわざ手当てして布団で寝かせてくれていた。それは、[ピーーー]気は無くとりあえず怖がらせて追い出そうって事だ」

淡?「……正解だよ。そこまでわかってるんなら、この家から出て行ってくれないかい?」

京太郎「……すまない。それはできないんだ」

京太郎「どうしても、助けたい人達がいる。そのためには、淡の協力が不可欠なんだ」

淡?「……何か事情がありそうだね」

淡?「昨日あんたは、自分の危機なのにこの子に手をかけず、あまつさえ自分よりこの子の心配をしていた……。悪い人じゃないんだろうさ」

淡?「とりあえず話をきかせてくれるかな?」

京太郎「はい。幾らでも……」

淡?「みんなの前で」

京太郎「みんな……?」


ベッドの下の男「へぇ、姐さんが人間の話を聞くなんてね」モゾモゾ

押し入れに潜む女「それだけいい男なんだろうね」ガラッ

トイレの少女「この人、優しそう……」ガチャ

虐待されて天井裏に閉じ込められた少年「この人、怒らない……?」ガタッ

壁に埋められ死体遺棄された少女「多分大丈夫ですよ」ドンドン


京太郎「」

淡?「はは。やっぱりびっくりしたかい……淡に化けてたのはこの私」シュルッ

天井に住み着く蜘蛛女「蜘蛛女だよ」

京太郎(予想以上にお化けの見本市……普通の生活させてーな)

……

淡「テルー、そのプリンは私の……ZZZ」ムニャムニャ

ベッド男「へぇ……。幼馴染の姉妹不仲を解消する為に兄妹のフリか」

壁少女「私はてっきり淡ちゃんに、お兄ちゃん呼びをさせる変態かと思いました」

押し入れ女「同感。それで淡を守る為に、追い出さなきゃって思っちゃった」

蜘蛛女「ごめんねぇお兄さん」

京太郎「いえ、いいんですよ……どうせ俺は変態にしか見えませんから」

トイレ少女「お兄さん……元気だして……。生きてればいいことあるよ」

京太郎「ありがとう……死んでる君に言われると言葉が重いけど」

京太郎「ていうか、みんな淡を護りたかっただけなんですね」

天井裏少年「うん!だって淡お姉ちゃん、凄く優しいもん!」

押し入れ女「本当はここは、私たち化け物の住む部屋。それを邪魔されないよう、誰かが越してきても、驚かせて追い出すのよ」

トイレ少女「私達は、静かに、平和に暮らしたい……」

蜘蛛女「そしてあの子が引っ越してきたんだけど、一人が寂しいって急に泣き出してね……脅かす気も失せたのさ」

京太郎「……確かにあいつは、泣くより笑ってる方が似合いますからね」

ベッド男「んでまあ、ある日暗い顔で帰ってきて、ただいま……って呟く淡に、壁少女が見るに見兼ねて、お帰り。って言っちゃったのさ」

壁少女「そしたらあの子、すっごく笑顔になったんです……。相手は私達、化け物なのに」

押し入れ女「それ以来、なんだかんだ気に入っちゃってね。淡が寂しそうな時は、私達で物音立てて元気付けてるのよ」

京太郎「……淡が言ってた通り、みんないい人なんですね」

蜘蛛女「私達、人じゃないけどね」


みんな「HAHAHAHA!!」

……



淡「ムニャムニャ……朝……?」

京太郎「おはよう、淡」

淡「おはよう、お兄ちゃん。昨日の夜はどうだった?」

京太郎「化け猫の問題は解決したよ」

淡「ほんと!?さっすがお兄ちゃん!」

京太郎「それと」

淡「??」

京太郎「淡の言ったとおり、この部屋のみんな、いい人だな」

淡「!!」パァァァ

淡「でしょ!お兄ちゃん、話がわかる!」

京太郎「朝ご飯作ったぞ。ベーコンエッグだ」

淡「すごーい!私、高校入って初めてこんな美味しそうな朝ご飯みたよ!」

京太郎「それじゃあ、食べるか」

淡「うん!いただきまーす!」

……

深夜

京太郎「ZZZ……」

淡「タカミーのおもちやわらかーい……ZZZ」

ガタッ

強盗「ザルい施錠だぜ。さて、金目のものは、と……」

ガシッ

強盗「!?な、なんだ?足が動かない……」

ベッド男「寝かせてやれ。この子はインハイの練習で疲れてるんだ」

強盗「ヒッ……!?モガモガ」

蜘蛛女「声を出したらこの子達が起きちゃうじゃないか……。静かにしてな」

強盗「んー!んー!」

押し入れ女「こいつ、駄目な男ね」ガラッ

天井裏少年「この人怖そう……」

強盗「……!」白目


……

白糸台部室

誠子「そういえば今日の朝、強盗の常習犯が交番の前でぐるぐる巻にされて放置されてたらしいですよ」

菫「ほう。どこかに忍び込んで返り討ちに遭ったのか?」

淡「へー。何があったんだろうね」

京太郎(……そういえば菫さんは淡の家の事を知らなかったんだよな……)

京太郎(だったらなんであの時意味深な顔を……?)

クイクイ

京太郎「?」

照「京ちゃん、お菓子が無くなった」

京太郎「あ、じゃあ買いに行ってきますね」

照「私も行く」

菫「京太郎、絶対に照から目を離さないでくれよ」

京太郎「わかりました」


……

京太郎「照さんを見失った……」

京太郎「とりあえず近くのスイーツ店を辿って行けば見つかるハズ……」


男A「ねぇそこのお嬢さん、俺たちと遊びに行かない?」

照「このお菓子はあげない」モグモグ

男B「とらねぇよ!」

京太郎「あ、照さんそこにいたんですか」

照「京ちゃん、迷子にならないで」モグモグ

京太郎「迷子になってたのは照さんですよ……」

男A「照……?もしかしてこの人……」

男B「白糸台の宮永照じゃねぇか!」

男達「すいませんでした!!」ピュー

照「それじゃあ帰ろう」モグモグ

京太郎「はい」


……

京太郎「それじゃあ俺は職員室に外出届を出してくるので、照さんは先に部室に戻ってください」

照「うん」モグモグ


……

京太郎「ただいま戻りました」

誠子「あれ、宮永先輩は?」

京太郎「あれ?先に部室に帰らせたハズですが……」

菫「ば、馬鹿者……!照は、あいつは校舎内でも迷うんだ……」

京太郎「」

京太郎(そうか、チーム虎姫の雑用って)

京太郎(照さん係なんだ……)


To be continue →

続く。油化なんて書かれなければこんな展開にはならなかった

胡桃「そこ!油舐めない!」
豊音「ほっちじゃないよぉ」

前回までのあらすじ

玄「よくぞここまできた。ドラゴン使いならおもちの試練を受けるですのだ」

仁美「」ペターン

煌『すばらくない……』

怜『竜華なら楽勝やな』

竜華「任せて怜!」

白糸台部室


淡「お兄ちゃん、お菓子ちょうだい!」ヒザノウエノッカリ

京太郎「ほら、あーん」

淡「あーん」

京太郎「美味しいか?」

淡「うん!」

照「……」


……

菫「今日の部活はこれで終わりだ」

淡「お兄ちゃん、一緒に帰ろう!」

京太郎「ああ。今日の晩御飯の食材を買わないといけないから、スーパーに寄って行くぞ」

淡「私ハンバーグが食べたい!」

京太郎「また子供っぽいメニューを……」

淡「子供じゃないもん!高校百年生だよ!」

京太郎「はいはい」ナデナデ

照「……」


……

誠子「京太郎君は?」

淡「職員室だってさ」

照「……ねぇ淡」

淡「なあにテルー?」

照「……お兄ちゃんがいて、今幸せ?」

淡「うん!すっごく楽しいよ!」

照「そう……」

菫(……これは)

……

淡「っていう事があったんだよ」パクパク

京太郎「へー。これなら成功するかもしれないな」パクパク

京太郎「咲もやっと念願の照さんと仲直りができるんだ。よかったよかった」パクパクゴックン

淡「……ねえお兄ちゃん」カチャ

京太郎「ん?」

淡「そんなに……サキって子の事が大切なの?」

京太郎「まあ……大切な幼馴染だしな。幸せになって欲しいさ」

淡「……それって私よりも?」

京太郎「……?どうしたんだよ淡」

淡「ごめん……私も、自分でもよくわかんない」

淡「でも……なんか、すっごく胸がムネムネするの」

京太郎「本当によくわかんないな……。明日からインハイだろ。それで緊張してるんじゃないのか?」

淡「そうかもね……。ごちそうさま」

淡「お風呂はいってくるね」

京太郎「ああ」

バタン

京太郎「……明日はインハイ。うまくいけば照さんは咲と和解する」

京太郎「そうなるとこの生活も終わりか……。淡じゃないけど、胸がムネムネするな」

ベッド男「名残惜しいか少年」

京太郎「ベッド男さん……いや淡に手を出そうというんけじゃ……」

蜘蛛女「心配しなさんな。いまさらあの子に手を出そうとしたところで、あんたを追い出そうとはしないよ」

押し入れ女「だってあなたがきてから淡ちゃん、凄く楽しそうだもの」

京太郎「そ、そうかな……でも、これが終わったら俺はもう……」

天井裏少年「お兄ちゃんいなくなるの?」

壁少女「簡単な事ですよ。兄妹ごっこが終わったのなら、今度は兄妹ではなく、本物の関係を作ればいいだけです

トイレ少女「……」コユビタテル

京太郎「俺が淡と……?」

京太郎「そんな事、考えたことも無かったな……」

ベッド男「君たちはまだ若い。好きなだけ悩むがいいさ少年」

蜘蛛女「青春だねぇ」

ガチャ

淡「お兄ちゃん、お風呂あいたよ」

京太郎「ああ。その前に髪を乾かしてやるからそこに座れ」

淡「はーい」トテトテ

ポスン

京太郎「……なんで俺の膝の上に乗るんだよ」

淡「えへへ……お兄ちゃんの膝の上って、なんだかすっごく安心するもん」ニコッ

京太郎「!!」

淡「どうしたの?顔真っ赤だよ?」

京太郎「いや……なんでも。ほら、ドライヤーかけるからむこう向け」

淡「はーい」

京太郎(さっきみんなが変な話をしたせいで、淡を意識しちまってる……)

淡「~♫」

京太郎(淡と、恋人関係か……)

京太郎(……)

……

深夜


京太郎(眠れないな……)

ベッド男(眠れない時は星の数を数えるといい。全てを数えるには人生はあまりにも短すぎる)

京太郎(……それ言いたかっただけでしょう。室内じゃ星は見えませんよ)

ベッド(ふっ……そうだな。だが、そこに一つ星があるだろう?)

京太郎「えっ?」

淡「ねぇ、お兄ちゃん……。起きてる?」

京太郎「淡……まだ起きてたのか」

淡「うん……あんまり眠れなくて」

淡「ねぇ……一緒に寝てくれない?」

京太郎「ファ!?」

京太郎「まて淡。そういうのはまだ早……うわぁ、身体が勝手に持ち上がってベッドの方に行ってる!」

蜘蛛女「~♫」シュルシュル

ベッド男(グッドラックだ少年)グッ

京太郎「んなベッドの下から手だけ出されても……」

ポスン

京太郎「わかった。今日だけだぞ」

淡「うん……ありがとう」

京太郎「……」

淡「……」

京太郎「インハイで緊張して眠れないのか?」

淡「うんう……。そうだと思ったけど、多分違う。私、お風呂の中で一生懸命この気持ちを考えたの」

淡「そしたらわかったんだ。インハイが終わって、テルが仲直りしたら、お兄ちゃんが……キョータローが、この家を出て行っちゃう……そしてサキの所に行っちゃうから」

京太郎「淡……?」

淡「私とキョータローは、テルが仲直りするまでの関係だから、もうすぐ終わっちゃうから……。キョータローの大切な、サキの所に行っちゃうから……」

淡「私……私……」エグッエグッ

京太郎「淡……」

京太郎(俺は……>>322

淡を抱きしめる
淡に何も答えない

抱きしめる

前回までのあらすじ

私事ですが資格試験に合格しました

ギュッ

淡「キョータロー……?」

京太郎「……確かにインハイが終われば、兄妹ごっこも終わりだ」

京太郎「かといって俺たちの仲が終わるわけじゃない」

京太郎「俺はここ数日お前と一緒に過ごしてたんだ……。俺にとって、淡は凄く大切な人なんだ」

京太郎「だから……もし照さんと咲が仲直りしても、淡さえよければ、俺はお前といたい」

淡「キョータロー……。ありがとう」ギュッ

淡「でも……」

京太郎「?」

淡「私とサキ、どっちが大切なの?」

京太郎「え……?」

淡「もしサキが大事なら、長野に帰れるなら……サキの所にいくの?」

京太郎「……わからん」

淡「なにそれー!さっき私と一緒にいたいって言ったじゃん!」

京太郎「すまん……。インハイが終わるまでには、答えを出しておく」

淡「むー。返事、待ってるからね!」

京太郎「ああ。もう寝ようか」

淡「うん……キョータロー」

京太郎「うん?」

淡「今夜は、ずっとこうしてていいかな……?」ギュッ

京太郎「……ああ」



蜘蛛女「イメージ加速しーてーゆーくーみらーいにー」

ベッド男「爪爪爪」

……

インハイ会場白糸台控え室


菫「例によって例の如く照が迷子になったから、京太郎……と淡。探しにいってきてくれ」

京太郎「わかりました」

淡「はーい。行こう、お兄ちゃん」

バタン

尭深「どうして京太郎君はともかく、淡ちゃまで行かせたの……?」ズズ

菫「……多分あの二人、できている」

尭深「」ブフウッ

誠子「うわ、汚な!」

菫「同い年の若い男女が一緒に暮らしてるんだ。おかしくはなかろう」

誠子「だから二人きりにしてあげたんですね」

菫「まあな」


……

インハイ会場廊下

京太郎「あ、みつけましたよ照さん」

照「去年と会場の中が変わってる」モグモグ

淡「変わったのはテルの記憶だよ!」

京太郎「早く戻りますよ。照さんが迷子になって不戦敗なんて一番ありそうな負けパターンなんですから」

照「うん」モグモグ

照「……あれは!」ゴックン






咲「うう……ここどこ……」


.

京太郎「さ、咲!」

咲「京ちゃん……!」ダッ

ダキッ

咲「京ちゃん……!よかった、生きてたんだね!部長に京ちゃんが学校辞めて行方不明って聞いて……もう会えないかと思ってた……!」

淡「むー。お兄ちゃん、その子が咲?」

京太郎「ああ」

咲「……お兄ちゃん?ねえ京ちゃん、どういうこと?」

京太郎「あーそのだな……そういえば照さんは……?」

照「……」コソコソ

京太郎「……照さん、俺の後ろに隠れないでください」

咲「照さんってもしかして……お姉ちゃん!」

照「!」ビクッ

咲「あ、そのお姉ちゃん……」

照「……」

咲「ひ、久しぶりだね……お姉ちゃん」

照「咲……その……」

京太郎(照さん、頑張ってください!)

淡(頑張れテルー!)

咲「ご、ごめんお姉ちゃん、京ちゃん……私もう行くね……」



照「咲!今までごめん!」



咲「!!」

照「今まで意地をはって咲を避けてて、東京に会いに来てくれた時も、どうすればいいかわからなくて、追い返しちゃって……」

照「でも、もう逃げない。咲さえよければ、これからは姉妹仲良くしたい」

咲「お姉ちゃん……」

咲「私も……私もお姉ちゃんと仲良くいたい!ずっとずっと一緒にいたい!」

照「ありがとう、咲」ダキッ

京太郎「おめでとう。咲、照さん」

淡「イイハナシダナー」ボロボロ

照「ありがとう。これも全部京ちゃんと淡のおかげ。二人を見てて、咲と仲直りしようと思った」

京太郎「あー、それはですね……」

照「?」


……

照「そう……。二人ともごめん。迷惑かけた」

咲「ごめんね京ちゃん」

京太郎「こういう時は、ごめんね。じゃなくて、ありがとう。だろ」

淡「テルーの為なんだもん。お安いご用だよ!」

咲「……」

咲「京ちゃん、もう白糸台に……淡ちゃんと一緒にいる必要は無いんだよね?」

京太郎「咲……?」

淡「……」ギュッ

咲「じゃあ……長野に帰ろう?」

咲「学校は部長がなんとかするって言ってたし、住む所も、私が用意するよ?」

京太郎「……」

淡「キョータロー。聞かせて、この前の夜の答えを」

京太郎「……俺は」

京太郎(実は結論はほとんどでかかっていた)

京太郎(それを答えたくなかったのは、咲がまだ照さんと仲直りできてなかったからだ)

京太郎(同情や憐憫で、判断が鈍ったまま結論を出したくなかった)

京太郎(でも、今なら決めれる)

京太郎「咲、ごめん!俺は長野には帰れない」

咲「え……?」

京太郎「俺は……。白糸台に、淡と一緒にいるって決めたんだ。だからごめん、咲」

淡「キョータロー……!」

咲「……そっか。いいの。長野じゃなくても、京ちゃんが元気にやっていけて……幸せで生きていけるなら」

京太郎「……ごめん、咲」

咲「いいんだよ。それに、私にはもう、お姉ちゃんがいるしね」

照「咲……」

咲「淡ちゃん、京ちゃんの事お願いね」

淡「うん……任せて」

咲「それじゃあ、ばいばい。京ちゃん」

京太郎「ああ……。それじゃあな、咲」

照「……私、咲を慰めてくる」

京太郎「お願いします、照さん……。俺じゃあ、力不足です」

照「任せて。私はーーーお姉ちゃんだもの」タッタッタ

淡「……やっぱり本物の姉妹っていいね」

京太郎「そうだな……妹のお前も、悪くなかったけどな」

淡「……ねえキョータロー」

京太郎「ん?」

淡「私を、選んでくれたんだよね」

京太郎「……ああ」

淡「それなら……もう一度、しっかり聞かせて。キョータローの、想い」

京太郎「……淡。好きだ。俺と付き合ってくれ」

淡「それだけ?」

京太郎「淡の笑顔が好きだ、俺もつられて笑ってしまう。淡の甘えてくる顔が好きだ、どんなお願いでも叶えたくなる。淡の泣き顔も好きだ、守ってあげたくなる」

京太郎「淡や、淡の部屋のみんなと、ずっと一緒にいれば……きっと楽しいと思うんだ」

淡「ありがとう……。私、すっごく嬉しい!」

ガバッ

京太郎「今度は妹として抱きついてるんじゃないよな?」

淡「うん。私、京太郎の事が大好きだから」

淡「ずーっと一緒にいようね、京太郎」

京太郎「ああ。ずっとずっと、一緒だ」


カン!

京太郎「……」

淡「どうしたのキョータロー」

京太郎「照さんに咲を迎えにいかせる……迂闊だった」



咲「ここどこ……」

照「ここどこ……」



もいっこカン!

天井の蜘蛛女「淡にオトコができるなんてねぇ」

押入れの中の女「羨ましいわぁ~」

虐待されて天井裏に閉じ込められた少年「お姉ちゃんおめでとう!」

トイレの少女「おめでとう……」

壁の中に死体遺棄された少女「これでもう寂しく無いですね」

ベッドの下に潜む男「泣かせたら承知しないぞ少年」

窓ガラスに張り付く男「幸せにしてやってください」


京太郎「一人増えてる……」



次のホームレス先
>>338

茨城

吉野川上流

岩手

岩手か……ふむ

ほとんどホームレスってのは口実で、京太郎全国巡り的なストーリーになってきた

ていうか>>336とか>>337みたいな巫山戯た輩がいるんじゃ安価混ぜる都合上やってけんわ

茨城は俺の無知が悪かった。でも普通に>>1から選んでくれ

だが吉野川。てめーは駄目だ

岩手は、安価が大量に入るストーリーを予定してたからなぁ……こんなんじゃかなり不安なんだわ

すまん、どうも俺は安価スレにしておきながら、悪質な巫山戯た安価を許容する事はできん
FINAL SEQUENCEの咲ルートまでやりたかったが、これで終わりにしてHTML依頼しておく

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