狂戦士「勇者に殺すためだ」(72)
魔王「殺すだと?」
狂戦士「ああ、俺は勇者に恋人を仲間を故郷を…」
狂戦士「だから…俺はお前を殺して魔王になり勇者を殺す!」
魔王「フフフ…フハハハハハハ!」
狂戦士「何が可笑しい!」
魔王「貴様が?魔王である我を殺すだと?」
魔王「我のもとに来る前に勉強するべきだったな人間」
狂戦士「なんだと?」
魔王「貴様のようなただの人間が我や勇者を殺すことはできぬ」
狂戦士「どういうことだ」
魔王「代々、勇者と魔王は不死身の存在…」
魔王「不死身である我を殺せるのは同じく不死身である勇者のみ…」
魔王「不死身である勇者を殺せるのは同じく不死身である我のみ…」
魔王「勇者でも魔王でもなく、ましてや特別な力も持たぬ貴様など一生かかっても我や勇者を殺すことはできぬのだ」
狂戦士「な……そんなわけあるか!」チャキッ
魔王「それに勇者を殺すなら好きにすればいいでわないか」
魔王「どうして我を殺す必要がある?ん?」
狂戦士「元は勇者を殺した後にお前を殺そうと思ってた…ただの気まぐれだ」
魔王「フフフ…気まぐれで我を殺そうなどとは」
狂戦士「それにお前を殺し魔王の座に就けば、ある程度魔物を支配できるかもしれないからな」
魔王「お前の言い分はわかった」
今さらだけどスレタイですら誤字を見つけた
狂戦士「勇者に殺すためだ」× → 狂戦士「勇者を殺すためだ」
正しくはこうです
魔王「どうだ貴様、我に協力せぬか?」
魔王「今貴様が我と戦って死ぬよりは我と共に勇者と戦い死ねた方が良いであろう?」
狂戦士「それは…」
魔王「まぁ、協力したところで貴様が勇者を殺せるわけではないがな!」
魔王「フハハハハハハハ!」
狂戦士「舐めるな!」ダッ
魔王「フハハハ!無駄なことを!」
狂戦士「うおぉォォ!」ザシュッ!
魔王「ぬうっ?!」ズバッ!
魔王(何故だ?!何故あのようなただの人間の斬撃が我に…)
魔王「まぁいい、勇者が来るまで退屈だったところだ…少しは相手をしてやろう」
狂戦士「がアアぁぁァ!」ブンッ!
魔王「そんな大振りな攻撃など当たるものか!」
魔王「次は我の番だ…無数の雷に焼かれるがよい!」ゴゴゴゴゴ!
狂戦士「グワアアアァ!」ドサァ
狂戦士「ハァ…ハァ…」
魔王「ほらほらどうした、これでお互い一発ずつだぞ?もう終わりか?」
狂戦士「ウ…ウゥゥオオオオォアアアァ!」ブンッ ブンッ ブンッ
魔王「フハハハハ!当たらないと言っておろう」
狂戦士「アアアアアァァアアアァッ!」ブンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ
魔王「ぐうぅぅ…!」ズバ! ズバッ! ズバッ!
魔王(なんだ…?……あやつのスピードが上がっている?)
魔王(それに先ほどの雷のダメージも回復している…どういうことだ?)
魔王「ふん!次はこの火球で灰にしてくれる!」ゴオォッ!
狂戦士「ムウゥゥンッ!」ボシュゥッ
魔王「か、かき消しただと!?」
狂戦士「フゥーッ…フゥーッ…」
魔王(やはりおかしい…先ほどよりも強くなっている…)
狂戦士「ガアァッ!」ダッ パシッ
魔王「はっ!」
狂戦士「グギギ…ギギ……ギギギ……」
魔王「ぬぅぅっ……き、貴様…我が腕を引き千切るつもりか…」
魔王「し、しかし…甘いな……」
魔王「この距離で両手がふさがっている今、我の攻撃をかき消すことも回避することもできぬ!!」
魔王「今度こそ!この火球で葬ってくれるわ!!」ゴオォッ!
狂戦士「グギャアアアァアアァァァァ!」ボォォ
魔王「フハハハハハ!どうした?はやくもがかないと本当に灰になってしまうぞ!?」
狂戦士「グウゥゥウウウゥゥゥ…!」ギチギチギチギチ…
魔王「フハハハハハハハハ!」
狂戦士「ガアァァァッ!」ブチブチブチ…ブチィッ!
魔王「ハハ……」ブシャァァァァ
魔王「アァァアギャアアアアアアア!」
魔王「な、なな何故だ!?どうして貴様のようなただの人間が?!」
魔王「何故ここまでの力が?!」
狂戦士「フウゥーッ…フウゥーッ…」ヒタ…ヒタ…
魔王(お、おおおおおおかしい…何かの間違いだ)
魔王(我は不死身の存在…勇者からの攻撃以外は効かぬはず…)
魔王「ふ、ふふふふ…貴様相手には使うつもりはなかったが…」
魔王「そんな腕!我が回復魔法をもってすれっ!」ビタッ
魔王(かっ、体が動かん!)
狂戦士「フウゥーッ…フウゥーッ…」ヒタ…ヒタ…
魔王「くっ、来るな!」
魔王「そ、そうだ!我をここまで追い詰めた貴様なら勇者も倒せよう!」
魔王「だから我と協力しようではないか!止めは貴様にくれてやる!」
狂戦士「フウゥーッ…」スッ…
魔王「わかった!魔王の地位もやる!だから!」
狂戦士「ガアアアァァァァッ!」ブウゥン!!
魔王「だぎゃっ」ズバアアァッ!!
狂戦士「ハァ…ハァ……ハぁ………はぁ……」 バタッ
ザシュッ ザシュッ グチャッ ドチュッ グシャッ グチュグチュ ………
ズシュッ ビチャッ ブシュッ ジュチャッ ……
ビチャビチャッ グチョッ ズチュッ …
〔ふぅ、これくらいでいいかな〕
…
……
………
狂戦士「……ごほっ!…ごほっごほっ!」
狂戦士「お、終わったのか…?」キョロキョロ
肉塊「」
狂戦士「へ…へへへへへ……ざまぁ見ろ…なにが不死身だ…」ヨタヨタ
狂戦士「ん?…この杖は魔王が持ってたものか」グッ
狂戦士「っ!」
狂戦士(な、なんだ!?どこかの景色が見える…空中や荒野…それに海中か?)
狂戦士(…人間狩り?…産めや増やせや政策?…通りがかった船を襲う?)
狂戦士「ぐぅ…!」パッ
狂戦士「い…今のはなんだ……頭の中に俺のじゃない意識が……」
狂戦士「そうか、魔王はこの杖で魔物たちに指示を出していたんだな」
狂戦士「でもどうやって…杖に訴えかけるのか?」
狂戦士「すぅ……魔物たちよ、勇者を魔王城へおびき寄せるのだ!」
狂戦士「これでいいんだろうか」グッ
狂戦士「……変化がない」
狂戦士「あ、杖を持って念じればいいのか」
狂戦士〈魔物たちよ…勇者を魔王城へおびき寄せるのだ…〉
狂戦士「まぁ、いつかは来るだろうが早く来させるためにな…」
狂戦士「大丈夫だ…俺ならやれる……なんてったって魔王を殺したんだ…」
狂戦士「だから……もう少し向こうで待っててくれ」
狂戦士「魔法剣士…」
勇者『へぇ~、ここが狂戦士くんの故郷なんだね』
狂戦士『ああ、国ほど大きくはないが普通の街に比べれば施設もそろってるし立派なもんだろう?』
賢者『キャーッ!カジノがあります!行ってきていいですか!?』
武闘家『おお!?闘技場もあるぞ!行ってきていいか!?』
狂戦士『はぁ…お前ら…』
勇者『ははは…先ずは宿の予約に行こうよ』
バタンッ
狂戦士『ふぅー、久しぶりと言ってもほんの半年ぐらいだが……何もかも懐かしく感じるな…』
?『…狂戦士…か……?』
狂戦士『え……魔法剣士じゃないか!』
魔法剣士『狂戦士!会いたかった!』ギュウゥ
魔法剣士『本当に心配したんだぞ!お前が勇者様達と旅に出てから何も知らせがなくて!』
魔法剣士『大丈夫なのか?どこも怪我してないか?旅はつらくないか?』ペタペタサワサワ
狂戦士『だ、大丈夫だから落ち着け』
魔法剣士『ああ…スマン…』
魔法剣士『でも本当に心配したんだ…』
狂戦士『ありがとう……それと、心配掛けてすまなかった…』ギュゥ
魔法剣士『ここにはどれくらいいるんだ?』
狂戦士『近くを通りがかっただけだしな…せいぜい2、3日ってところだろう』
魔法剣士『そんなに短いのか…』
狂戦士『ああ…こうしてる間にもどこかで魔物が人を襲ってるかもしれない…』
狂戦士『そして…俺のように親を目の前で殺される子供もいるかもしれない…』
魔法剣士『そう…だな……なぁ、今夜あの酒場で飲まないか?』
魔法剣士『もちろん無理にとは言わない……でも、できれば来て欲しい…』
狂戦士『必ず行くよ』
魔法剣士『本当か!?』
狂戦士『こんなときくらいじゃないとお前と過ごせないからな』
魔法剣士『ありがとう…絶対だぞ!絶対に来るんだぞ!』チュッ
魔法剣士『それじゃあ待ってるからな!』タッタッタ…
狂戦士『今……ふふっ……』クルッ
武闘家『よぅ』
賢者『わぁ~』キラキラ
勇者『………』
狂戦士『』
賢者『今の女性…彼女さんですか!』
狂戦士『そ…それは…』
武闘家『ほれほれ、後で変なところで言うと死にやすくなるぞ?』
武闘家『今のうちに言っておけば死ぬ確率はぐっと下がるぞ?』
狂戦士『お、お前ら…』
賢者『どうなんですか!?』
狂戦士『ま、魔王を倒したら…結婚する約束をしてる』
賢者『キャーッ!随分深い関係ですね!』
武闘家『お前…案外早く死ぬかもな…』
勇者『ねぇ、そんなことより街を案内してよ狂戦士くん』
狂戦士『あ、ああ…』
賢者『どうしたんでしょうか勇者さん…冷たいというか不機嫌というか…』ヒソヒソ
武闘家『きっとあれだろう、狂戦士がこのパーティの中で一番結婚が早そうだからって動揺を隠すために…』ヒソヒソ
賢者『なるほど…確かに、私達のような旅をしている人は婚期を気にし始めると急に不安になってきますしね…』ヒソヒソ
武闘家『だろう?俺も急に不安になって…』ヒソヒソ
勇者『二人ともなにしてるの…早く…』
武闘家『ああ、すまんすまん』
賢者『ごめんなさいです!』
狂戦士《何故だろう…すごい失礼なことを言われてた気がする…》
…
……
………
武闘家『ふぅ~旨かった、まともな料理なんて久しぶりに食ったな』
狂戦士『いつもこげの塊を食ってるからな~』チラッ
賢者『生で出されないだけマシに思ってください』
勇者『まぁまぁ、それじゃあこの後は』
武闘家『自由時間にしようぜ!賢者もカジノに行きたくて仕方ないだろ?』
賢者『いいですね!それじゃあ勇者さん、流石に一人じゃ怖いんで一緒に行きましょう!』ガシッ
勇者『え?ちょ、ちょっと待って!』ズルズル
武闘家『お前は酒場に行ってくるといい。彼女が待ってるんだろ?』
狂戦士『ああ、なんだか気を遣わせたみたいでスマンな』
武闘家『ハハハ、今度いっぱい奢ってくれよ?あ、ノロケ話はするなよ?』
狂戦士『ははっ、お前は式に呼んでやらねぇ』
武闘家『おいおい、飯と酒のために呼んでくれよ』
武闘家『じゃ、俺は闘技場行ってくるわ。今夜は帰ってこなくてもいいからな』
武闘家『彼女と楽しんでこいよ、ハハハハハハ!』タッタッタ
狂戦士『気を遣ってくれてるのか、くれてないのかわからんやつだ』
ガチャッ
狂戦士『魔法剣士はもう来てるかな?』キョロキョロ
魔法剣士『お~い、こっちこっち』
狂戦士『悪い、待たせたか?』
魔法剣士『別に平気さ、今の仲間との付き合いもあるんだろう?』
狂戦士『まぁな…でも、今は俺達二人だけだ』
魔法剣士『フフッ、そうだな』
狂戦士『じゃあ』
魔法剣士『ああ』
狂戦士・魔法剣士『乾杯』
賢者『キャーッ!また当たっちゃいました!』
賢者『やっぱり私って天性のギャンブラーなんですね!』
賢者『やりましたよ勇者さん!これで防具を新調できま……』
賢者『あれ?勇者さんはどこに?』キョロキョロ
カジノ店長『あの~…お連れの方は先に帰られたと伺っておりますのでお客様もそろそろ…』
賢者『ええ~今がいいときなんですよ?これからもっと稼げそうな…』
カジノ店長『このままじゃ当店が潰れてしまいますのでどうかお帰りに!』
賢者『もぉ~…じゃあ、あの盾一個おまけしてくださいよ』
カジノ店長『いっ?!……わかりました…では出口でお渡ししますので……』
賢者『ありがとうございます!私ちょっと景品交換してきますので先に行っててくださいね!』コインジャラジャラ
カジノ店長『』
魔法剣士『なぁ…旅は…魔王はいつ倒せそうなんだ?』
狂戦士『わからない…数日後かもしれないし数年後かもしれない』
魔法剣士『私はいつまでここに残ってお前の身を案じてればいい?』
魔法剣士『寂しいんだ…今まで我慢していたが…会ってしまったら我がままになってしまう…』
狂戦士『……』
魔法剣士『もうずっと傍にいて欲しいんだ…離れて欲しくないんだ…』
狂戦士『すまない…でも、今日は…いや、この街にいる間はずっと魔法剣士の傍にいるよ』
魔法剣士『ありがとう…』
魔法剣士『なんだか悪いな、こんなしんみりした感じにしたくはなかったんだが』
狂戦士『それじゃあ飲み直すか』
魔法剣士『そうだな……あ、飲み直すなら私の家で飲み直さないか?』
狂戦士『え』
魔法剣士『この街にいる間はずっと私の傍にいてくれるんだろう?』ニヤニヤ
狂戦士『あ…ああ…』
魔法剣士『よし!じゃあ、早速行こうか!』
狂戦士『さっきのお前のしんみりした雰囲気はどこに行ったんだよ!』
魔法剣士『フフフ、ああいう雰囲気に弱いのは相変わらずだな。それじゃあ愛の巣へ』ガシッ
狂戦士『え…演技だったのか!?』ズルズル
〔……………………〕
ザァー…
狂戦士『ん……今日は雨か…』
魔法剣士『おはよう狂戦士』ギュゥ
狂戦士『おお?どうしたいきなり』
魔法剣士『やっぱりつらいんだ…街にいる間は傍にいてくれても…後のことを考えると…』
狂戦士『魔法剣士…』
魔法剣士『ならいっそ私も付いて……そうだ!』
魔法剣士『一緒に行けばいいんだ!』
狂戦士『……は?』
魔法剣士『これからは私も一緒に行く……ダメか?』
狂戦士『いや~、他の奴らに聞いてみないと…』
〔……………………〕
魔法剣士『私は勇者のパーティとして一緒に行くんじゃない…』
魔法剣士『お前のパートナーとして一緒に行くんだ……お前の許可さえあればいい…どうだ?』
狂戦士『はぁ、どうせ断っても付いて来るつもりだろう?』
魔法剣士『よく分かってるじゃないか』
狂戦士『そりゃあ俺とお前の仲だからな』
魔法剣士『フフフ、ありがとう』
狂戦士『いいさ。さぁ、軽く朝食摂ってお前のこと紹介に行かないとな』
魔法剣士『じゃあ何か作って来るから待っててくれ』
狂戦士『おう』
〔……………………〕
コンコン
武闘家『……んお?』
コンコンコン
武闘家『ああ、なんだよせっかくゆっくり寝てるってのに』ガチャッ
賢者『勇者さん見ませんでしたか!?』
武闘家『ぐおぉぉぉ…朝から大声はやめてくれ…』
賢者『す、すいません…それで、勇者さん見ませんでしたか?』
武闘家『勇者ぁ?見てねぇぞ?早起きして散歩に行ったんじゃねーの?』
賢者『それが…昨日から部屋に帰ってないんですよ…』
武闘家『はぁ?昨日から?お前ら二人でカジノ行ってたろ』
賢者『昨日は先に帰ったと聞いたんですがずっと帰ってこなくて…』
武闘家『ふーん』
賢者『な、なんでそんなに無関心なんですか…』
武闘家『だってあいつ強いじゃん。心配する必要もねぇよ』
賢者『うーん……そうですね!』
武闘家『だろ?』
賢者『ええ!せっかくですしこのまま朝ごはん食べに行きましょうよ』
武闘家『そうだな。これだけでかい街だし朝からでも店開いてるかもな』
賢者『では行きましょうか!』
魔法剣士『準備できたぞ』
狂戦士『ああ、本当に来るんだな』
魔法剣士『もちろんだ』
狂戦士『そうか…じゃあ行くか』
魔法剣士『フフフ、これでもう寂しい思いはしなくなるんだな』
狂戦士『そうだな、じゃあ行くか』ガチャッ
『キャー!』 『助けてくれえええ!』 『魔物が街に入り込んできたああ!』
『誰かああああ!』 『い、いやだああああ!死にたくないいいい!』
狂戦士『…え?』
狂戦士『ど、どうしたんだ!』
魔法剣士『ど……どうして……』
狂戦士『とりあえず魔物を殺さないと!』ダッ
魔法剣士『あっ、狂戦士!』
狂戦士『なんだ!?』
魔法剣士『私は自警団の様子を見てくるから街の人たちをたのむ!』ダッ
狂戦士『わかった!』ダッ
『うわあああああ!』 『もう駄目だあぁああ!』 『いぎゃああああぁぁぁ!』
賢者『き、昨日まで平和な街だったのに…どうして…』
武闘家『知るか!今は人々の救援が先だ、行くぞ!』
賢者『あっ待ってくださいよ!』
武闘家『ん?!』
賢者『こ、今度は何ですか?』
武闘家『雨が止んでるな……』
賢者『そんなことよりも先ず!……あれ?…霧?』
狂戦士『クソっ!霧のせいで視界が…』
『い…痛いよぉぉ…』 『だ…だず…げで…』
狂戦士『どうしてだ!そこらじゅうから声が聞こえるのに人の気配も魔物の気配もしない…』
狂戦士『それにこの霧…自然のものじゃない…』
武闘家『狂戦士か!?』
狂戦士『武闘家と賢者か!?…勇者は?』
賢者『き、昨日からいないんですよ…』
狂戦士『なんだと?』
武闘家『待て、今は人々を助けるのが先だ。行くぞ!』
狂戦士『おい!勝手に…』
賢者『も、もう見えなくなっちゃいました…』
狂戦士『この霧だ…別れずに一緒に行動してよう…』
賢者『は、はい…』
賢者『で、でも何か変じゃありませんか?』
狂戦士『ああ、いきなりこんな霧が出るなんて』
賢者『霧もですが…人の気配も魔物の気配もしないなんて…』
賢者『しかも人の声は聞こえるのに魔物の声は聞こえないんですよ…やっぱり何かっ』ドスッ
賢者『………えっ?』
狂戦士『ん?どうした賢者?』クルッ
狂戦士『賢者?……どこに行ったんだ!』
狂戦士『賢者!?どこだ、どこにいる!?』ダダダッ
狂戦士『はぁっ…はぁっ…誰かいないのか!』ダダダッ
狂戦士『はぁっ……ん?…あれは…』
勇者『ぜぇ…ぜぇ…』
狂戦士『勇者!大丈夫か!』
勇者『きょ、狂戦士くん……どうやらあいつが霧を発生させてる魔物みたいだよ』
魔物『………………』
狂戦士『この黒い煙みたいなやつが…』
狂戦士『お、お前が…よくも!』チャキッ
勇者『待って!あいつには魔法しか効かないんだ!』
狂戦士『なっ?!』
勇者『だからここはボクが…ガフッ…』
狂戦士『お…お前…ボロボロじゃないか…』
勇者『こ、これくらい大丈夫だよ…それよりボクから離れないでね…』
狂戦士『え』
勇者『今から特大の魔法を放ってあいつを仕留める…』
勇者『幸いここは広場のようだし周りに被害が少なく済みそうだけど離れてたらキミの安全を保証できない』パァァ
勇者『だからなるべくボクの近くに…』パァァ
狂戦士『わ、わかった…』
勇者『よし…じゃあ一気にいくよ!』ゴゴゴゴ…
魔物『………………』
勇者『今だ!』
魔物『!!!!!!!!!』カッ!
勇者『ぐぅっ!…あ、あれ?!魔力が…!』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
狂戦士『ど、どうしたんだ!』
勇者『わからない!魔力が…溢れ…か、返って…』ゴゴゴゴゴゴゴ!!
勇者『うわあああぁぁぁぁ!』パアアァァァァ!
………
……
…
…
……
………
狂戦士『…ぐふっ……うぅ…』
狂戦士『な、なにが起こったんだ……っ!』
狂戦士『ま、街が…滅茶苦茶だ…』
狂戦士『そ、そうだ…魔法剣士は…勇者は…賢者と武闘家は?』
狂戦士『街の人は…あの魔物はどこだ?』
狂戦士『はぁ……はぁ……』ヨタヨタ
狂戦士『……賢者に……武闘家……』
狂戦士『二人とも…死んでる…どうして?』
狂戦士『あの霧を発生させてた魔物にやられたのか?』
狂戦士『でも……どうして胸を一突きにされてるんだ?あの魔物にこんなことができるのか?』
………
……
…
狂戦士《まるであのとき聞こえた人々の悲鳴が嘘のように街に人はいなかった…》
狂戦士《いや…嘘だったんだろう…街の人は皆、自分の家のベッドや椅子に腰かけて死んでいた…》
狂戦士《それも皆が皆、胸を一突きにされて…》
狂戦士《そして魔法剣士も死んでいた》
狂戦士《しかも魔法戦士だけ胸と腹を刺され、綺麗に首を切断されていた》
狂戦士《まるで人に切断されたように綺麗な断面だった》
狂戦士《勇者も魔物も見つからなかった…》
狂戦士《魔力の暴走で消え去ったのかと思っていた…》
狂戦士《しかし、故郷を失い他の町で飲んだくれになっていた俺の耳にある情報が入った》
狂戦士《どうやらどこかの町が消し飛んだらしい…》
狂戦士《それを話していた者に詳しく聞いたところ》
狂戦士《町の生き残りはいないため詳しくはわからないが、消し飛ぶ数分前に町一帯が霧で覆い尽くされらしい》
狂戦士《それで俺は確信した…勇者は生きてると》
狂戦士《そして、魔法剣士や賢者、武闘家…街の人たちを殺したのは勇者だと》
…
……
………
狂戦士「実際…そう思わないとやっていけない…」
狂戦士「だから俺は魔王を殺し魔王になったんだ!」
狂戦士「勇者を殺し!魔法剣士の敵を取るために!」
狂戦士「たとえ魔物を支配し人間に恐れられても勇者だけは必ず俺が!」
狂戦士「必ず俺が殺して見せる!」
カツ… カツ… カツ… ギイィ…
狂戦士「来たか……久しぶりだな、勇者」
勇者「え…?ど、どうしてここに…狂戦士くんが…?」
狂戦士「簡単なことだ、今は俺が魔王だからだ」
勇者「な…なんで…どうして魔王なんかに…魔王を闘うために一緒に旅をしてたじゃないか…」
狂戦士「お前を殺すためにはここで待ってる方が一番の近道だと思ったからな」
勇者「そ、そんな!殺すってどうしてだよ!」
狂戦士「あの街でのことを忘れたとは言わせない…」
勇者「あ、あれは…あの魔物に魔力を狂わされて……」
狂戦士「確かにあれは故意じゃないのかもしれない…」
狂戦士「だが、街の人や賢者、武闘家の殺され方は…そして魔法剣士のあれは人の手によるものだ!」
狂戦士「あのとき街の人は皆家で殺されていた!あんなことをできるのはお前だけだ!」
狂戦士「だから俺は皆の…魔法剣士の敵を取る!」
勇者「ちがうよ!あのとき魔物は本当にいたんだ!」
勇者「ボクが魔力を暴走させちゃったとき、目の前のあの魔物が消えたんだ」
勇者「それも倒して消えたわけじゃなくどこかに飛ばされるみたいに」
勇者「あのときの魔法はきっと魔物を強制転移させる魔法だったんだ」
狂戦士「嘘だ!じゃあなぜあの後お前はいなくなった!?何か後ろめたいことがあったからだろう!?」
勇者「ちがう…あの後、狂戦士くんは気を失ってしまったからわからないだろうけど」
勇者「街にさらに大量の魔物が押し寄せてきてたんだ」
勇者「だからボクは街に魔物が入らないよう、街の遠くまで誘導して戦ってたんだ」
狂戦士「嘘だ…嘘だ…」
勇者「嘘じゃないよ…誘導した魔物を全滅させた後、街に戻ったら狂戦士くんがいなくなってたんだ」
勇者「いろんな町で狂戦士くんのことを聞いて回ったけど何も情報が得られなくて…」
勇者「でも…よかった。狂戦士くんが生きてて…凄い心配してたんだ…」ギュッ
狂戦士「勇者…」
狂戦士「本当…なのか…?街の皆や仲間、魔法剣士を殺したのは…お前じゃないんだな…?」
勇者「狂戦士くん…」
勇者「ふふっ…………全部嘘だよ」
狂戦士「……………………………………え?」
勇者「だから……ボクがみんなを殺したんだよ」
勇者「さっき言った魔物が街にいたっていうのは全部嘘だよ」
勇者「あ、でもあの後街に魔物が来たっていうのは本当だよ?」
狂戦士「クソッ!少しでも信じた俺が馬鹿だった!」バッ
勇者「あぁ~、久しぶりの再会なんだからもう少し抱き合ってようよ~」
狂戦士「うるさい!今すぐお前を殺し復讐を果たしてやる!」
勇者「殺す?狂戦士くんがボクを?」
勇者「ふふふ…あはははは…あははははははははは!」
狂戦士「……なにがおかしい!」
勇者「だって…ふふふ……何にも特別な力を持ってない狂戦士くんが?」
勇者「無理だって!あははははははははは!」
狂戦士「お、俺は魔王だって殺したんだ!特別な力がなくたってお前くらい」
狂戦士「うおおおぉぉぉ!」ダッ
勇者「………だから無理だって」ガスッ
狂戦士「ぐうぅっ!」ドサッ
勇者「ね?言ったでしょ?」ドスッ グチャグチャ……
狂戦士「ぐあああああああ!」
勇者「ふふっ」ドスッ
勇者「可哀想な可哀想な瀕死の狂戦士くんに全部教えてあげるね?」
勇者「実はね、あの時『ぐぅっ!…あ、あれ?!魔力が…!』なーんて言ったけど魔力の暴走なんて起きてなかったんだ」
狂戦士「はぁ……はぁ……な、なんだと…」
勇者「それからそれから、あの黒い霧みたいな魔物はボクの魔力で作りだした分身でーす!」ドスッ
狂戦士「ぐああああ!」
勇者「だから霧もボクが発生させたんだー」グチュ…
狂戦士「ぐううううう!」
勇者「街の人は霧を発生させる前に、武闘家は狂戦士くんと別れた後、賢者は狂戦士くんと話してる時」
勇者「あの女は最後に殺してあげたよ」ズバッ
狂戦士「ぐわあぁぁああぁあああ!」
勇者「あはは、腕とんじゃったね」
狂戦士「ぜぇ……ぜぇ……」
勇者「あ、そろそろ逝っちゃいそう?じゃあ今から急いで他のことも教えてあげるね」
勇者「狂戦士くんは魔王を自分の手で倒したと思ってるけど実は魔王を倒したのってボクなんだよね」
勇者「ふふっ、驚いた顔してるね」
勇者「こうやって不可視の魔法を使って狂戦士くんをサポートしてあげてたんだ〕スウゥ…
勇者〔狂戦士くんが魔王に傷を負わせたのも、魔法を受けてもダメージが少なかったのも全部ボクが助けてたからなんだよ」
狂戦士「………」
勇者「ああっ、本当に逝っちゃいそうだから助けてあげるね」
狂戦士「…………?」
勇者「それじゃあ先ず、ボクのお腹を切って~」ズバッ
勇者「ねぇねぇ?傷口に塗り込まれぬのがいい?口移しがいい?」
勇者「ふふふ、口移しの方がいいよね……んく」
狂戦士「!!」ジタバタ
勇者「ん……ぷはぁっ!」
勇者「どうだったボクのファーストキスと血の味は?」
狂戦士「……な……なにして……」
勇者「うーん、そろそろかな?」
狂戦士「な……なに………!」
狂戦士「あがっ!ぐぐぐぐぐ…………あああああああああああ!」
勇者「やったー!見て見て、あんなにぐちゃぐちゃにした傷口も腕も再生したよ!」
狂戦士「はぁ…はぁ…ど、どういうことだこれは…」
勇者「ボクの血を飲んで再生したんだよ」
勇者「ついでに狂戦士くんが暴れたせいで傷口同士擦りついちゃって余計に血を取り込んじゃったね」
狂戦士「なんでこんなことを…」
勇者「もっと喜んでよ、憧れの特別な力だよ?不死身だよ?」
勇者「それに狂戦士くんと別れた後いろんな血を取り込んだから不老不死まで加わってるんだよ?」
勇者「嘘だと思うなら今すぐボクの首をはねてみるといいよ」
狂戦士「………」
勇者「あれ?やらないの?もしかしたらまた嘘で復讐が果たせるかもしれないよ?」
狂戦士「………ああ、いいんだ」
勇者「なーんだ、残念。狂戦士くんにも人の首をはねる感覚を味わって欲しかったんだけどな~」
勇者「なかなか気持ちいんだよ?最初はあの女で試してみたけど最高だったよ!」
狂戦士「うるさい!」ズバッ
勇者「」ボトッ ドサッ
狂戦士「……な、なんだ…やっぱり嘘じゃないか…でもこれで」
勇者「ね?どう?気持ちよかった?」ムクリ
狂戦士「!…な……」
勇者「なんだか不思議な気分だよ、自分で自分の体だけを見るなんて」グリグリ
勇者「ね?不死身でしょ?」
勇者「正気を失ってる今だから言うけど、ボク…狂戦士くんのことが大好きなんだ」
狂戦士「ガアアアァァァ!」ズシャッ
勇者「だからあの街で狂戦士くんとゴミがキスしてるの見て気が狂いそうになったんだ」
勇者「いつかは狂戦士くんの故郷を消して、ボクに対しての殺意だけで胸をいっぱいにしてあげたかったんだよ」
狂戦士「ダアアアアァァ!」ズシャッ
勇者「おっと、最近のお気に入りは腰から真っ二つにすることなの?」
勇者「話を戻すね。あのゴミのせいで予定を早めたんだ」
勇者「賢者と武闘家には盛り上げ役になってもらおうと思ったけど上手くいかないもんだね」
勇者「本当はボクが魔王になって復讐に来る狂戦士くんを待ち構えたかったけどそれも上手くいかなかったよ」
勇者「それより、よっと」ゴスッ
狂戦士「あぐぅっ!」
狂戦士「はぁ…はぁ…」
勇者「正気に戻ったかな?ざっと100年間ボクを斬り続けたけどどう?」
狂戦士「はぁ…はぁ…もう少し…もう少しだ…」
勇者「狂戦士くんは何でボクを斬ってるんだっけ?」
狂戦士「はぁ…はぁ…勇者を…勇者を殺すためだ…」
勇者「そっか、ふふふ、じゃあまた斬ってていいよ」
このやり取りも何回目かな?100を過ぎたあたりから数えなくなっちゃったよ
どうやらもうボクしか見えてないみたいだね
もう魔王城もキミの攻撃で崩れ去って、空は真っ黒な雲で覆われて朝も夜も区別がつかなくなっちゃったよ
それに昔はあんなにうるさかった人間と魔物の戦争も共倒れで終わっちゃったんだ
そのおかげか人類も魔族も絶滅したよ
これで本当に二人きりになれたね
信じてくれないと思うけど狂戦士くんがボクを殺すことなんて不可能なんだ
だから狂戦士くんは一生、いや永遠にボクのことを想いながらボクを斬り続けるんだよ
でもそれって凄い素敵なことだよね
狂戦士くんはボクのことを想いながら斬って、ボクは狂戦士くんのことを想いながら斬られる
両想いだなんて感激だよ
これからもずっと…ずーっと愛してね、狂戦士くん
~終~
あとがき
ヤンデレな感じの勇者を書きたかったが無理だった
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