フレンダ「私の一番嫌いなタイプ」 (50)
上×フレ
フレンダ厨集まれ。それ以外は即解散。
フレンダ美化要素アリの、フレンダが好きじゃない人にとっては不快なスレである恐れがあります。
人殺しとくっつけては上条sageであるというご意見はごもっともですが、ここはそういうスレだと割りきってください。
楽しんでくれる人に悪いので、SSの批判はしても読んでる人の批判はやめてください。
あんまり期待しないでテキトーに読んでください。
割りとシリアス系です。
最近禁書を知ったニワカの初のSSなので、おかしな点があったらじゃんじゃん指摘ください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408158127
両側を高い壁に塞がれた暗い路地裏で、一人の少女が数人の男に囲まれ孤立していた。
道には空き缶やペットボトルといったゴミが転がり、太陽の恵みも少なく空気は湿っぽく冷たい。
学園都市の路地裏といえば、治安の悪いこの街でも最下層の危険エリアだ。
ご覧の通り道路状況は最悪だし、マンガや小説の舞台から引っ張ってきたようなベタな不良がゴロゴロといる。
こんな最悪な環境を好んでうろつく人間なんていないし、いたとしても同類のズレた人間だけだ。
たまに時間に追われて近道に、という理由で裏道に入り、そこでばったり事件に遭遇なんていう話をよく耳にするが、自業自得の馬鹿だと少女は思う。
そんな自分から火に飛び込むような馬鹿な真似しといて被害者面するなんてマヌケすぎる。
少女フレンダ=セイヴェルンは、そんなことを思いながら自分の状況を省みた。
近道をしようと思って、路地裏に入り、数人のスキルアウトに囲まれている←イマココ。
フレンダはフッと自嘲気味に笑い、偶然にしてもよくこんなにトントンと危機的状況が生まれてしまうことにある意味感心した。
「おいおい、あんまガキビビらせんなって。かわいそうに、こんなに固まっちゃって。ホラ、別に俺たち君に危害を加えようなんて思ってないんだよ?ただちょっと一緒に遊ぼうって誘ってるだけでさぁ」
「ギャハハハ。よくもまぁお前そんなことが言えるよなぁ?どの口が言うんだって。こないだのあの子、どうみてもまだ小学生くれーだったよな。お前が妊娠確定プレイやった子」
「マジかよそれ、お前超ロリコンじゃん」
「コラ、てめシカトこいてんじゃねーぞ」
それで凄んでいるつもりなのか、バンダナを巻いた男がフレンダの真横の壁に手をついて迫ってくる。
当然のように通行人はゼロ。この先も助けは期待できないだろう。
それに、例えば誰かが通りかかったとして、自分の身を投げ打ってまで誰かを助けようとする人間なんていないことをフレンダは知っている。
誰の目にも危機的状況、今にも犯されそうに見える。
だが、フレンダの場合はその限りではなかった。彼女なら、部屋を飛び回る羽虫を殺すより簡単に男達全員を倒すことができる。
だいたい、コイツらも少しは頭を使えよとフレンダは思う。
場所は超能力開発の盛んな実験都市。そんなところを無警戒にも一人の少女がブラブラ歩いているだけで怪しむべきなのだ。
彼女が、無能力者では及びもつかない能力者だという可能性を。
「なぁおい、てめ調子こいてんじゃねーぞ」
ああしまった。コイツらの話全然聞いてなかった。
フレンダがそう思った頃には、不良集団の一人、バンダナを巻いた男が彼女のブラウスに手をかけていた。
面倒くさいから見逃してくれないかな、と争いに対して消極的だったフレンダもこれには怒りを隠しきれない。
彼女は伏せていた顔を上げ、睨み殺すような眼光で男を刺す。
「……ッ!」
豹変したフレンダの態度に怯んだ男の手を取り、締め上げようとしたところで、彼女は先に男の手首を掴んでいる腕があることに気づく。
「!?」
吃驚して横を振り返ろうとするより先に、腕の主が声を上げた。
「離せよ」
見上げた先の、自分より身長が高い少年の口からそんな言葉が洩れる。口調は大人しいが、言葉に言い知れぬ威圧感がある。
そして、フレンダは、それが自分の服を掴んでいる男に対しての言葉だと気づいた。
だったら何か、この少年は大人数を前にして、自分を助けるために割って入ってきた?
フレンダは驚きと疑問の入り混じった複雑な表情で成り行きを眺めていた。
少年はバンダナの男の腕を捻り上げて地面に投げ飛ばした後、今度はフレンダの手をとって走りだす。
「え、ちょっと―――!!」
状況についていけずに彼の顔を見ると、彼はさっきまでとは打って変わった焦りの表情でお前も走れと促してくる。
どうやらあれだけ格好良く凄んでおいて逃げ出す腹づもりらしい。
少年と少女の逃避行は、この後約10分あまり続いた。
☆
「はぁ…はぁ…はぁ…、いやーさすがにやばかった。これはちょっと死ぬかと思った」
場所は第7学区の公園。かれこれ直線距離にして1kmはあの場所から離れたところだろう。
近道するつもりで通ったのに、フレンダの目的地とは結構距離が開いている。
息を切らした少年は天を仰ぐようにして深々とベンチに腰掛け、そんなことを言った。
まるで、窮地に駆けつけた王子様とヒロインとのラブコメの始まりのような光景だ。
だが、王子様を見つめるヒロインの視線は限りなく冷たかった。
フレンダは助けられたつもりは毛頭ない。むしろ邪魔されたといったほうがニュアンス的に近い。
少年はふと思い出したように顔を上げ、フレンダの方を見た。
「ケガとかないか?駄目だぞ、あんなとこ一人でうろついちゃ」
優しく微笑み、彼は諭すように言う。
ああ、これだ。こいつ、あのパターンだ。
フレンダは、少年を苦手な人種だと判断した。
「なに?一人でいいコトした気になってる訳?……馬ッ鹿じゃないの?」
途端に、辺りがシンと静まり返ったかのような空気が流れる。それだけに、フレンダが発した一言がより際立つような感じだ。
言い終えてから、フレンダはハッとした。こんなつもりじゃなかった。
彼女は適当に礼でも言って、可愛らしいウインクでもして、さっさと別れるつもりだった。
その方がスムーズだし、そうしておけば余計な面倒事に関わる心配もこれ以上この少年と関わる必要もない。
さっさと帰って、明日になれば綺麗さっぱり忘れてしまえただろう。
それなのに、つい、言葉が洩れてしまっていた。
冷静に考えれば、ここで無害そうな少年と敵対するメリットはない。
しかし、フレンダは所詮まだ高校生の女の子だ。大人じゃない。
ここでさっと謝ってしまえば済む事かもしれないのに、自分の失言を取り下げる気にはどうしてもなれなかった。
ここぞとばかりに開き直って、未だ何も言わない少年に畳み掛けるように言葉を続ける。
「結局、あんなスキルアウト連中なんて一人でどうとでもなった訳よ。それがなに?事情も知らないクセに勝手に割って入ってきて、イイ人のフリなんかして。迷惑だっつってんの」
フレンダは両手を上げて挑発するようなため息をつき、極めつけに彼を睨みつけてやった。
すると、彼は驚いたような顔をする。
この顔が見たかった。
自分の親切がおっせっかいなんだと直接他人から告げられた、最高に傷ついた瞬間のカオ。
偽善者うぜーんだっつーの。
―――コイツはイイ人のフリして喜んでるただのバカだ。
クラスでイジメられてる子がいれば、声を大にしてイジメっ子を叱責してあまつさえ自分に酔うタイプ。
押し付けがましいお節介の押し売りして、自分が誰かの役に立ってるって思いたいだけのオナニー野郎。
フレンダは心のなかで罵り、トドメとばかりに歩き去りながら言う。
「なんか下心があったのかもしんないけどさ、そういうのやめたほうがいいよ。ウザいし」
吐き捨てるように言ってみて、フレンダは存外自分がスッキリしていることに気がついた。
そして今更ながらに、あー私ってこんなこと思ってたんだ、と気づかされる。
反論の一つでも飛んでくるかなと身構えていたが、少年は終ぞ何も言わなかった。
ほらみろ、とフレンダは少しだけ自嘲気味に笑った。自分を笑っている気分になった。
もう彼が何を言っても聞こえない距離をフレンダは歩く。歩くペースは意図せずとも速くなった。
初対面の相手にこれだけ苛立ちが募るのは、きっと私怨だ。
きっと、――――――――――。
「……………」
そう考えて、やめた。
またいつものように虚しくなるだけだと思ったからだ。
★
自由だ。
世界は自由であるようで、しかし自由じゃない。
例えば学生なら昼間は学校に行くという絶対のルールがあるし、大人には仕事がある。帰れば帰るで宿題があり、家事があり、仕事の残りもあるかもしれない。
マナーやルール、それら全てに縛られて人間は生きている。
だが、今この場にだけは俗世とは隔離された紛れもない自由がある。
そんなことを、第7学区のファミレスでフレンダは思った。
場所は窓側の禁煙席、12番テーブル。フレンダと彼女の仲間『アイテム』の面々はそこにいた。
テーブルの上には、明らかにコンビニで買ったであろう弁当、持ち込んだ雑誌、持ち込んだ缶詰が展開されており、度胸満点、ルールもクソも存在しない無法地帯となっている。
驚くべきことに、彼女たちはまだ一度も店側にオーダーを取らせていないのだ。
よくドリンクバーだけで粘る女子高生がいると聞くが、これはその比ではなかった。
出禁にされても文句は言えないだろう。
にも関わらず彼女らがここに居座り続けることができるのは、偏に、彼女らのリーダー麦野沈利の功績が大きい。
彼女の眼光は周囲の人間に物を言わせぬ迫力があり、店側の誰もが12番テーブルに近寄ることが出来ないのだ。
さらに、その睨みはもう慣れっこであるはずの仲間たちにも抜群の威力を発揮する。
むしろ、普段の素行を知っている分、自分たちの方にこそ真価を発揮しているとフレンダは思う。
わがままに実力が伴うってもうサイアク、とフレンダは缶詰でタワーを作りながら小さくつぶやいた。
「そういえばふれんだ、来るの遅かったね」
とは、滝壺理后の言葉だ。
自由を絵に描いたような過ごし方をするメンバーの中で、彼女は唯一奇行に及ばない『アイテム』最後の良心である。
そんな滝壺のファミレスでの過ごし方といえば、だらけた座り方で窓の外をぼーっと眺める、だ。
(滝壺はAIM拡散力場浴と呼んでいる)この行動は、森林浴のようなものだといっていい。
「まあね。ちょろっと回り道して散歩してたって訳」
なんでもなさそうにそう説明すると、今度はソファの上で体育座りをしながら雑誌を広げていた絹旗最愛が、
「散歩ですか?超面倒くさがり屋のフレンダが……めずらしい事もあるんですね」
「超まではないっつーの」
絹旗は、『アイテム』最年少の少女だ。栗色のショートヘアで、子供っぽい(本人はこだわっているらしい)パーカーをいつも好んで着用している。
趣味は映画鑑賞で、今彼女が読んでいる雑誌も映画情報のものらしい。
「そんなに暇なら映画でも見に行きませんか?私の見立てではこの3本辺りが超面白そうです」
「一応聞いとく。タイトルは?」
「エイリアンvsスナイパー、ゾンビパニック、カンフーレース」
「うわぁ、もれなく全部地雷っぽい。ちょっと怖いもの見たさみたいなのはあるけど」
フレンダの引きつった笑みに、絹旗ははぁ、と嘆息する。どうやら見込み違いだったらしい。
それっきり絹旗が映画を勧めることはなかったが、フレンダは一人テーブルに広げられた紙面を覗き込み、パッケ詐欺の匂いを感じるのだった。
それから暫くの間、12番テーブルには無言の時間が続いた。
メンバーはそれぞれ勝手な過ごし方に興じており、席の沈黙に気まずい思いをしている者はいない。
皆待っているのだ。リーダー、麦野沈利の携帯端末にかかってくる一報を。
それはフレンダが一人の人間から一つの道具に成り代わる合図でもある。
今更緊張も不安も何もない。かといって別にいい気分でもない。強いて言うならただただ無だ。
ふぅ、となんの気なしに息をつき、カレー風味のサバ缶を開けようとしたところで、麦野の携帯が鳴った。
静かだったテーブルが輪をかけてぐっと静かになる。
サバ缶をしまいながら、フレンダはこっそり舌打ちした。
★
黒いゴミ収集車の助手席で、フレンダは携帯を弄っている。
運転席に座る男との面識が無いため、手持ち無沙汰をごまかすためでもあった。
開いているのは特に興味もないウェブサイト。とにかく、到着までの時間つぶしになればなんでもよかった。
大通り沿いの横道で彼女を拾ったゴミ収集車は、どんどん人気のない道へ入っていくが、誰も気に留めない。
そのためのこの車だ。
あとは死体の回収に便利だという点もある。
車が向かっているのは第10学区。フレンダの今日のお仕事はそこで行われる。
依頼内容はスキルアウトの殲滅。いわば簡単なお掃除だ。
アイテムの4人はそれぞれ3つの路地裏からエリアに侵入し、雑魚を片付けながら中央のアジトへ駒を進める手筈になっている。
戦闘タイプでない滝壺はアイテムの要でもあるため、麦野と行動を共にする。
うっすらとした暗がりに入った車が停まる。運転席の下っ端がフレンダを促し、彼女もそれに従い車を降りる。
車はすぐに出発し、次の回収ポイントへ向かって行った。
「あー、超めんどくさぁい」
怠そうにつぶやいて、フレンダは建物と建物の間に歩みを進める。
路地の入口には等間隔に釘が刺してあり、地面に小さな仕切りを作っていた。
走れば躓いてしまうだけの子供の悪戯のようなそれには、実はちゃんとした目的がある。
街中を走り回っている警備ロボットの侵入を妨げるためだ。
さらに、衛生から姿を写されることがないように、道を挟む建物の屋上にはシートが貼られている。
傍から見れば工事の最中であるようにしか思われない、ちょっとした細工だ。だがそれも一時的な目くらましにすぎない。
誰かが異変に気がつく前に仕事は早く終わらせるに限る。
フレンダは両手に握った人形の感触を確かめるようにして、湿っぽい地面に足を踏み入れた。
今回はここまでということで。またそのうち続きを載せたいと思います。
☆
学園都市は雨模様に包まれた。
フレンダがそれに気づいたのは、頭上で響くバラバラという妙な音を聞いてからだ。
最初は建物の中に潜伏していた敵が、上から何かを撒いてきたのかと疑ったがそうではない。
音の正体は貼られたシートにたたきつけられた雨粒だった。
学園都市の天気予報は外れない。絶対の的中率を誇るその技術は、学園都市内ではしばしば天気予言という使い方をされたりする。
つまり、この雨は事前に予知されていたものだということだ。
なるほどそれでこの時間か、とフレンダは少しばかり感心する。
悲鳴、怒声、轟音、血の匂い。戦場に響く喧騒を、雨は綺麗に洗い流していく。
雨が降れば外を出歩く人間はグッと減少する。懸念されていたリスクは次々に、意図的に解消されていった。
戦況は圧倒的有利。そして彼女たちには追い風すら吹き始めた。
しかしフレンダはちっとも喜べない。
彼女は、まるで見えざる糸に操られているような感覚を覚えた。そうして、いや、やはり実際操られているんだと思い直す。
力なく笑って、改めてこの街の力は絶対だと実感する。
だからこそ、今日びこの街に目をつけられたスキルアウトに生きられるすべはない。
そして、その絶対の力は、次は誰に牙を剥くのかも知れない。
またしても一人、一人とフレンダの手に堕ちていく。
雨による湿気で、血は霧を染めた。
彼女の前では激しい轟音と悲鳴が炸裂し、彼女の後ろには物言わぬ屍が転がっている。
フレンダは顔色一つ変えない。
人形が飛んでいく。導火線に灯された火が走る。
向かいの道から麦野と滝壺、隣の通路からは絹旗が歩いてきた。
今日の仕事はこれまでだ。
★
『彼女の過去』♯1
周囲を灰色のフェンスに囲まれた小さな公園を、子どもたちはなんと呼んでいただろうか。
今とはなっては思い出せないが、きっと愛称のようなものがあったのではないかとフレンダは思う。
そんな小さな近所の公園(遊具はブランコとシーソー、滑り台くらいしかなかった)の片隅で二人の少女が遊んでいる。
二人は、小さな砂場で山を作っていた。
片方の女の子より一回り大きい少女、フレンダは、ピンクのシャベルを使って器用に砂を集めてみせた。
一方その隣で山を作る妹のフレメアは素手だ。
二人は同じような完成図を想像しながら作業を進めていたが、進行にずいぶん差が出来てしまっている。
「大体、お姉ちゃんずるい」
フレメアは自分の作った山と姉の山とを見比べて、頬を膨らましてつぶやいた。
フレメアの作った山は姉のそれの半分の大きさもない。隣の芝は青く見えるというが、フレメアの抱く劣等感はそれ以上だ。
目尻に涙を浮かべながらぶーたれる妹に、フレンダは笑って言う。
「結局、これが姉と妹の差ってやつよ。フレメアにはそれくらいでちょうどいい訳」
思いやりの欠片もない姉の辛辣な態度に涙しながらも、フレメアはより一層の執念を燃やした。
立ち上がって砂場の隅から砂を集めては、それを今の山に振りかけて固める。
何度も何度も繰り返すと、そこには大きな山と、それを取り囲むような堀ができていた。
「やった!私もやればできるのだ!大体、お姉ちゃんの山より――――?」
ふふん、と胸を反らして得意気に言うフレメアの前に、もう姉の姿はなかった。
「お姉ちゃん……?」
ついさっきまでの優越感なんてどこかへ飛んでしまった。
フレメアの口から不安げな声が洩れる。
公園にいる子どもたちの中に、見慣れたブロンドヘアの少女はいない。
まさか自分を置いて先に帰ってしまったのではないか。フレメアの脳裏を一抹の不安がよぎる。
と、そこへ、どこからか銀のバケツを持ってきたフレンダが戻ってきた。
一瞬でぱぁっと表情を明るくするフレメアだったが、その顔も長くは続かなかった。
子供の感情の起伏というのは、とにかく激しい物なのだ。
フレンダは自らの作った山にシャベルで切り込みを入れ始める。
自分が考えもしなかった斬新な行動に、フレメアはしばし目を奪われた。
フレンダが刻む小さな溝は、山をくねくねと、回り道をしながら下って行き、やがて小さな穴へ辿り着く。
フレンダは大仰な仕草で砂を払い、次に銀バケツを両手で抱えて山の隣に置いた。
チャプンッという音を聞き、フレメアは次第に姉の意図を理解した。バケツには古びた柄杓が突っ込まれていた。
フレメアは息を呑む。ただの砂の塊に命が吹き込まれる感じがした。
姉の手によって、山の頂上から柄杓ですくった水が流される。
溝の砂を少し押しのけながら水が下って行くと、後には濃くなった軌跡が続く。フレンダが次々に水を流していく。
やがて最下層の湖に水が溜まるまで、フレメアは息をするのも忘れてジッとその光景に魅入っていた。
そして次にフレメアが目にするのは、さっきまで立派だったはずの自作の山だった。
「……やっぱりお姉ちゃんずるい」
「にしししし!」
「………」
フレンダは妹を見下すように笑ったが、いつまでも言い返さない妹を見てついにいたたまれなくなったのか、再びシャベルを持った。
次にシャベルが掘ったのは、単純な一直線の溝だった。
溝は、フレンダの貯水湖からフレメアの山の堀までを繋いだ。
湖から押し出されるように流れ始めた水が堀へ到達し、フレメアの山を取り囲んでいく。
フレメアには、ただの砂の山が一面の緑に見えていた。
「大体、やっぱりお姉ちゃんはすごい。にゃあ」
今度はさっきよりずっと明るい笑顔を浮かべたフレメアに、つられるようにしてフレンダも笑う。
「…私だけじゃないよ。結局、これは二人で作った訳」
意地悪なはずの姉の、意外な一言。フレメアは一瞬ぽかんとし、ひしと姉に飛びついた。
「お姉ちゃん!大好き!」
「うわっ!重っ!」
それから二人はああでもないこうでもないと意見を交わしながら砂遊びを続け、日が沈む頃には、砂場にちょっとしたオアシスが誕生していた。
ちょっと書いてたら溜まったので。予防線の件はごめんなさい。
このSSまとめへのコメント
別の上フレSSにいたアンチ最近見ないなぁと思ったらここに湧いてたか
嫌いなのにご苦労なこって…