小町「お兄ちゃん、誕生日おめでとー!」八幡「おー、サンキューな」 (56)


【比企谷家・リビング】


小町「お兄ちゃん、誕生日おめでとー!」

八幡「おー、サンキューな」

小町「いやぁ、お兄ちゃんももう18歳かぁ。時間が過ぎるのは早いねぇ……」

八幡「そうだな、時間が過ぎるのは早い。むしろ早すぎて最近は時代に取り残されている錯覚をするまである」

小町「まぁお兄ちゃんはあんまり流行とか気にしないタイプだしねー。でもお兄ちゃんの他人に流されないそういうトコ、小町結構好きだよ。……あ、いまの小町的にポイント高い!」

八幡「はいはい高得点高得点。で、それ溜まったら何と交換出来るの? 肩たたき券?」

小町「え? なにお兄ちゃん小町の肩揉んでくれるの? わーいやったー! 最近小町肩コリひどくってさー、さっすがお兄ちゃん! 小町のことよく見てるね!」

八幡「おい待て小町、なんで俺がお前の肩を揉む流れになってんだ。むしろ今日は俺の誕生日なんだからお前が俺の肩を揉んでくれっての。最近受験勉強で肩の筋肉が凝り固まってやばいんだよ」

小町「やだ」

八幡「即答とかお前な……。……まぁいい、なら小町、代わりと言っちゃなんだが、今俺が抱いている疑問をぶつけてもいいか?」

小町「うん? 別にいいけど? 小町が答えられることならちゃんと答えるよ」

八幡「そいつは助かる。……んじゃまず、なんでウチの中にこいつらがいるんだ?」




雪乃「比企谷くん、誕生日おめでとう」

結衣「ヒッキー誕生日おめでとー!」

いろは「せーんぱいっ、お誕生日おめでとーございまーす!」

沙希「比企谷、……えっと、その、……お、おめでとう」

大志「お兄さん、誕生日おめでとうっす!」

京華「はーちゃん、たんじょうび! おめでと!」

戸塚「八幡、お誕生日おめでとう」

材木座「クックック……八幡、貴様も遂にこの齢に達したか。これで貴様も我t「中二さん、話長いです」……あ、はい、スミマセン……」



八幡「……小町、お前が(材木座も)呼んだのか?」

小町「えーっと、うん。お兄ちゃんへのサプライズプレゼントで呼んだんだよ(中二さんは知らない)」

八幡「……なるほどな。よし、とりあえず大志と材木座、こっち来い」



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大志「え? なんすかお兄さん?」

材木座「我を呼び出すとは何事だ八幡。……ハッ!? まさか八幡貴様……我の持つ禁断の書物に気がつ「あーうん、そういうのいいから早く来い」……う、うむ。よかろう」

沙希「……ちょっとあんた、うちの大志に荒っぽい真似したらあたしが許さないからね?」

八幡「ブラコンのお前がいる前でそんな恐れ多い事しねぇから安心しろよ」

沙希「ッ!? ちょっ、あんたそういうのは京華の前で言わないでくれない? 間違って覚えたらどうしてくれんの「ねぇねぇさーちゃん、ぶらこんってなに? ぶらんこー?」――っ! …………あんた、後で覚えときなよ」


八幡「(……やべぇ、川なんとかさんの殺気が今世紀最大レベルの鋭さだ。ここは一度撤退しねぇと殺られる……っ)」

八幡「よ、よし、お前ら二人に話があるからついて来い。ほら、行くぞ」

大志「あ、うっす」

材木座「ほむん、よかろう。――全軍、我に続け!」

八幡「なんでお前が仕切ってんだよ……。いや、別に移動してくれるからいいけどよ……」



【比企谷家・廊下】


八幡「……よし、まずは大志。俺はお前に言わなければいけないことがある」

大志「は、はいっす。いつになく真剣ですけど……なんすかお兄さん」

八幡「……はいそこ! まずそこだ大志! なんでお前は何度注意しても俺を『お兄さん』と呼ぶんだ! 俺はお前のお兄さんではないと何度言えば理解してくれるんだ!?」

大志「え、だってお兄さんは比企谷さんのお兄さんですし、他に呼びようがないんすから仕方ないじゃないっすか」

八幡「だったら小町を『小町』と呼べばいいだけだろう。お前に『お兄さん』と言われるくらいならまだ小町を呼び捨て……いや、呼び捨てはダメだ、大志のくせに生意気だ、絶対にそれは許さん。えーっと……だからだな、呼び捨てではなく『小町さん』と呼べばいいだけの話じゃねぇか」

大志「そ、それは……えっと、そうかもしれないんすけど、その……俺的に女子を名前で呼ぶのはかなり恥ずかしいんすけど……」

八幡「お前の感情なんぞ知らん、恥ずかしいなら小町に近づくな。 ……とにかくいいな? 金輪際俺の事を『お兄さん』と呼んだらお前を社会的に葬り去るからな? 俺のことは今後『比企谷さん』と呼べ!」

大志「は、はいっす!(なんか今日のお兄さんおかしい……)」

八幡「よし、次行くぞ次」


八幡「材木座」

材木座「ククク……我の名を呼ぶのは貴様か八幡。何用だ」

八幡「ああ、とりあえずお前、その懐に持ってるラノベの原稿俺に渡して家に帰れ」

材木座「ひょ?」

八幡「あー安心しろ、ちゃんと最後まで読んで徹底的に酷評しといてやるから、な?」

材木座「…………ウェイウェイウェイ、ちょっと待つのだ八幡いや待って下さい八幡さん? 色々ツッコミ所があるが、なぜ我に強制帰還を命じるのだ!?」

八幡「いやだってお前考えてもみろよ。お前がどうやって俺の誕生日を知ったのかは知らねぇけど、というかなんで俺の家を知ってるのかも知らねぇけど、そもそも本人の知らぬ間にそういう事を知ってるとか、ストーカー以外の何者でもないお前に軽く恐怖を感じてるけど、お前あの空間に長時間いられるか?」

材木座「」

材木座「(……きょ、今日の八幡、辛辣過ぎて我のLPは既にゼロでござるの巻)」

八幡「まぁお前がわざわざ俺の誕生日を祝いに来てくれたのは正直嬉しい。でもお前たぶん場違い感半端無くて周囲から針の筵になるだろうから、ここは帰った方が精神衛生上よろしいはずだ」

材木座「……、」

八幡「これは俺なりの優しさだ。だから大人しく家に帰れ材木座。な?」

材木座「……、」コクッ

八幡「そんじゃ、気をつけて帰れよー」

材木座「……、」トボトボ

大志「(……お兄さん、鬼っすね)」

八幡「大志、なんか言ったか?」

大志「いやっ!? なんも言ってないっすよお――じゃなかった、比企谷さん!」

八幡「……ん、そうか。んじゃそろそろリビングに戻るぞ」

大志「は、はいっす」


【比企谷家・リビング】


八幡「さてと、……次は」

結衣「あれ? ヒッキー、中二はどうしたの?」

八幡「……あー、あいつは急用が出来たから帰った」

結衣「へー、そっか。急用なら仕方ないねー」

大志「(本当はお兄さんが無理矢理帰したんすけどね……)」

沙希「大志、こいつに変なコトされなかった? 殴られたりとか蹴られたりとかは?」

大志「大丈夫だよ姉ちゃん、何にもされてないって」

沙希「そう。ならいいけど……」

八幡「……おいおいそんなに睨むなよ、本当に何もしてねーっての。それに心外だな、俺は言葉の暴力は行使するが肉体的な暴力は一切しない紳士だぞ?」

雪乃「個人的な感情の赴くまま力を振るう人間を、果たして紳士と呼んでいいものなのかしら……」

いろは「まあ先輩は紳士って柄じゃないですよね。わたしが思うに先輩は策士ですかねー」

雪乃「悪知恵の働く自己保身に長けた策士ね。もしくは彼は私程ではないけれど語彙や言い回しも達者だから、案外詐欺士とか向いてるんじゃないかしら」

八幡「おいそれだと作品変わっちゃうだろ。やだよ総務執行部の庶務と詐欺師の二足わらじとか、無理に決まってんだろ」

八幡「(あとさりげなく私の方が上アピールすんなよ。確かに厳然たる事実だけど負けず嫌いの子供じゃねぇんだから……いや、負けず嫌いなのは合ってるか)」

戸塚「は、八幡? 急にどうしたの?」

八幡「あー、なに気にするな戸塚。この場にいる自称淑女の方々に言われて少し揺らいだだけだ」

八幡「(ああ、この側にいるだけで感じる清涼感、清々しい気分になる。やっぱり戸塚は天使だな。戸塚がいればあとは何もいらない)」



陽乃「おやおやー? 自称淑女とは心外ですなー比企谷くん。わたしが淑女じゃなかったら世の中に淑女はいないことになっちゃうけど?」



八幡「(何もいらないと願った直後にこれとか最悪のプレゼントをありがとよ神様。やっぱ俺あんたのこと嫌いだわ)」

今日はここまで
続きは明日


陽乃「こーら、わたしを見るなりそんな嫌そうな顔しないの比企谷くん。せっかく来たのにそんな表情されたらお姉ちゃん悲しいなぁ……」

八幡「残念ながら陽乃さん、俺に姉はいないんでそんな事を言われても困ります。というかなんでカーテンの裏から出てきたんですか、もう少しましな登場の仕方があったと思うんですけど」

陽乃「えー、だって普通に登場しても面白くないじゃない?」

八幡「登場する面白さに時間をかけるなら、もっと他の事に時間を使った方が有意義だと思いますけどね」

陽乃「あらら、これまた手厳しい」

八幡「すいません、何分受験勉強で気が立っているもので」

陽乃「あー、そっか。比企谷くんって今年高校3年生だから今は受験勉強真っ盛りか。どう? 勉強は順調?」

八幡「まぁ……ぼちぼちです。この前の模試では志望校でA判定出てるんで、このペースを継続すればいけると思います」

陽乃「ふーん、なるほどなるほど。まぁわからない所があればわたしに遠慮無く言ってね。イロイロ手取り足取り教えてあげるからさ」ニコッ

八幡「はぁ……、それはどうもありがとうございます(相変わらず完璧な作り笑いだよなぁ……)」

陽乃「ふふっ、そこで浅く溜息をつくのが比企谷くんらしいよね。普通こんな美人なお姉さんに迫られたら無下にはしないと思うけどなぁ」


雪乃「……姉さん、寝言は寝てから言って頂戴。それとまだ私達と比企谷くんとの会話は終了していないのだけれど、勝手に口を挟まないでもらえるかしら」


陽乃「ああごめんごめん雪乃ちゃん、別に比企谷くんを取って食べたりしないからそんなに怒らないで」

雪乃「……別に、私は怒りを感じているわけではないのだけれど」

いろは「(そう言ってる雪ノ下先輩が拳を握り締めてるのは言わない方がいい……ですかね?)」

小町「ま、まぁまぁ雪乃さん落ち着いてください! えーっと、あの、その……あ、そうだお兄ちゃん! ちょっと近くのコンビニで飲み物買ってきて! ほら、お金は小町が出すから!」

八幡「え、なんでそこで俺が買い出しに行かなきゃ行けないの? しかも今日は滅茶苦茶気温高いし家から出たくないんだけど?」

小町「このニブチンさん! ごみいちゃん! つべこべ言わないで買って来なさい! 今日がお兄ちゃんの誕生日だからといって、お兄ちゃんが主役とは限らないんだよ!?」

八幡「おいバカお前やめろ、小学生の時のトラウマが蘇ってきちゃうだろうが」

八幡「(クラスメイトから俺の為に歌われたバースデーソングかと思ったら、同じ日に生まれた奴の為に歌ってたとかもうね……、やっぱり世の中ってクソだわ)」

八幡「……てか別に買い出しに行っても構わねぇけど、この人数分の飲み物買うとなると1人じゃキツイんだが?」

戸塚「あ、それならぼくも手伝うよ八幡」

八幡「よしわかった小町、飲み物の買い出しに行けばいいんだな? そうと決まれば行くぞ戸塚。今は一刻も時間が惜しい。あ、ちょっと待ってやっぱ着替えてくるから3分待っててくれ」ダッ

戸塚「え、あ、うん。じゃあぼく玄関で待ってるね」

小町「(……お兄ちゃん、それはちょっと露骨過ぎて流石の小町もドン引きだよ……)」


【コンビニ】


店員「っしゃっせー」

八幡「っ」ビクッ

戸塚「? どうしたの八幡?」

八幡「あ、いや、あの店員の声聞いたら戸部かと思ってだな……」

戸塚「あー、あの独特な喋り方かぁ。うん、たしかに戸部くんの喋り方とそっくりだね」

八幡「声質もなんか似てるしな。てっきり戸部の兄弟かと思ったぜ」

戸塚「もしかしたら本当に兄弟だったりしてね」

八幡「んー、でも顔はそこまで似て……いや、チャラい感じは似てるしもしかしたら……? ……まぁ戸部の兄弟とかどうでもいいけどな」

戸塚「そ、そっか……。と、とりあえず飲み物買おうか八幡。八幡はMAXコーヒーだよね?」

八幡「ああ。……あー、あと雪ノ下は紅茶、由比ヶ浜と一色はピーチティー、小町はレモンティー、陽乃さんはコーヒー、川崎は緑茶で京華はりんごジュース、大志は…………まぁコーラでいいだろ」

戸塚「た、大志くんだけ適当なんだね……」

八幡「んー、適当というよりあいつの好みを俺が知らないだけだな。他の奴らとは結構会ったりするから分かるんだが、俺はあいつと絡む事が滅多にないからなぁ」

戸塚「あんまり仲が良くないんだね……。ぼくは大志くん、いい子だと思うけどなぁ」

八幡「いやー、まぁ悪い奴ではねぇってのは分かるんだけどな。ほら、小町に近づく奴は俺の敵だから」

戸塚「八幡……、妹思いなのはいいけど、ほどほどにしなとダメだからね?」

八幡「うぐっ、……は、はい」

八幡「(戸塚にジト目で窘められてしまった……。……ジト目の戸塚可愛いなぁ)」



店員「っしゃっせー」


留美「(暑い……、何か飲み物買おう)」

留美「(…………って、あれ? ……あそこにいるのってもしかして)」

留美「……八幡?」


八幡「……ん? 戸塚、呼んだか?」

戸塚「え? ぼくは呼んでないけど」

留美「八幡、こっち」

八幡「こっちってどっちだよ……って、なんだよルミルミか」

八幡「(振り向いた先にいたのは制服姿の鶴見留美だった。ああ、そういえばこいつはもう中学生か)」

留美「ルミルミって呼ぶばないで、キモいから」

八幡「相変わらず辛辣だなお前は……」

留美「私、お前じゃないんだけど?」

八幡「あー、はいはい、留美だったな。よう留美、久しぶりだな」

留美「……うん、久しぶり」

戸塚「久しぶり、留美ちゃん。ぼくのこと覚えてるかな?」

留美「えっと……魔法使いみたいなコスプレしてた人、だっけ?」

戸塚「うん、そうだよ。名前は戸塚彩加っていうんだ。よろしくね」スッ

留美「え、あ、……よ、よろしく」アクシュ

八幡「(いいなー、戸塚と握手とか羨ましすぎんぞルミルミ……っ)」

留美「で、八幡達はそんなに飲み物カゴに入れてなにしてんの?」

八幡「あーこれか? 実は妹に買い出しを頼まれてな」

戸塚「ぼくはその付き添いだよ。一人で沢山持つのも大変だからね」

留美「ふーん。パーティーでもするの?」

八幡「んー、まぁそんなとこだな」

留美「なんのパーティー?」

八幡「俺の誕生日パーティー」

留美「え、八幡の誕生日祝ってくれる人いたんだ」

八幡「おいこらルミルミ、言っていい事と悪い事の区別ぐらいつく年頃だろうが。もう少しオブラートに包め」

八幡「(なにこのド直球、速すぎて俺の心のグローブぶち抜いたんですけど?)」

留美「ルミルミって呼ぶな。だって前に八幡言ってたじゃん、友達いないって」

八幡「それは小学生の時の話だっつーの。……、今は違うんだよ」

留美「…………ふーん、あっそう」

八幡「……、」

留美「……、」

戸塚「あ……、えーっと、そ、そうだ留美ちゃん。もし留美ちゃんの都合が良ければだけど、今から一緒にパーティーに参加するってのはどう、かな?」

留美「……私が? ……いい、急に飛び入り参加とか迷惑でしょ?」

戸塚「そんなことないよ。全然迷惑じゃないよね、八幡?」

八幡「え? あ、お、おう。そうだな、全然迷惑じゃねぇな、うん」

八幡「(いかん、戸塚だからなんとなく返事をしてしまったがこれまずくねぇか? 傍目からしたら中学生を持ち帰りしてる様に見えなくもないし……)」

戸塚「ほら、八幡もこう言ってくれてるから、どうかな?」

留美「……そこまで言うなら、…………わかった、行く」


八幡「(小町になんて説明すりゃいいんだ……。……まぁバカ正直に話すしかないんですけどね)」


【比企谷家】



八幡「……たでーまー」

戸塚「ただい――じゃなかった、お邪魔します」

留美「……、」

小町「あー、やっと帰ってきた。遅いよお兄ちゃ…………ん? ……あれ? そこにいるのはもしかして留美ちゃん?」

留美「……、」コクッ

小町「おー、久しぶりだね留美ちゃん。ささっ、どうぞどうぞあがってあがって」

留美「……お邪魔します」

小町「はいはいどーぞ。何もない家だけどゆっくりしていってねー」

八幡「(戸塚と留美は小町の横を通ってリビングへ向かっていく。……よし、これなら俺も行けるか……?)」

八幡「……、」スタスタ

小町「はいちょっと待ったお兄ちゃん」ガシッ

八幡「(ですよねー、そんな甘くないですよねー。……ちっ、正面突破は無理だったか)」

小町「お兄ちゃん、小町はお兄ちゃんに何を頼んだか覚えてる?」

八幡「全員分の飲み物だな」

小町「そうだね。うん、見たところちゃんと買ってきてるみたいだから、そこはいいよ。でも何をどうしたら、買い物帰りに女子中学生を連れてこれちゃうのかな?」

八幡「なー、それなんだが俺もまったくもって想定外なんだわ。どうしてこうなったんだろうな?」

小町「それは小町のセリフだよ! ただでさえついさっきまで絶賛修羅場中だったのに、留美ちゃん参戦でこれ以上場を荒立てられたら小町の手に負えないよ!」

八幡「すまんな小町、俺が不甲斐ない兄なばっかりに……」

小町「不甲斐ないというより甲斐性なしだよ……。見境が無いにも限度があるよごみいちゃん……」

八幡「決して俺はそんなつもりは一切ねぇんだけどなぁ……」

小町「(一体いつからうちの兄は天然のたらしになってしまったのか……。もういい加減誰かに絞ってもらわないと小町の精神的負担が大き過ぎるよ……)」


小町「……まぁお兄ちゃんが甲斐性なしのゴミクズなのはどうでもいいや」

八幡「なにそれ小町ちゃん? それお兄ちゃん的にはどうでもよくないことだと思うけど?」

八幡「(小町はいつからこんなに口の悪い子に育ってしまったのか……。お兄ちゃん小町の将来がとても心配です)」

小町「とにかく、現状のお兄ちゃんの周りには多くの女性がいます。俗にいうモテ期です、ハーレムです。ぼっち(笑)とか自虐的に言ってたら中二さんに背後から刺されてもおかしくない状態です」

八幡「小町ー、材木座はぼっちじゃねぇぞー。あいつ一応オタク系の友人はいるからなー」

小町「うん、細かいことはいいから。流して」

八幡「(少数派の意見を有無を言わさず握りつぶすの、お兄ちゃん良くないと思います)」

小町「で、お兄ちゃんは誕生日という節目を迎えて18歳になりました。男性で18歳になると出来ることといえば――はいお兄ちゃん!」

八幡「結婚」

小町「うん、まさか即答するとは思ってなかったから小町ちょっと引いちゃうなー……」

八幡「何言ってんだ小町、俺は前から専業主夫になるって言ってただろうが。それくらい答えられないで専業主夫が務まるか」

小町「お兄ちゃんのその並々ならぬ強い意思はなんなのかな……。まぁそうだね、お兄ちゃんはもう結婚が出来ます、法律上はね」

小町「でも法律が許しても世間はそういうことには厳しい目を向けます。若年婚は経済的に苦しいし、最近は景気もあまりよくないからその影響で晩婚化も進んでます」

八幡「……小町ちゃん? お前なんでそんなに結婚に関して詳しいの? 実家出て行く気満々なの?」

小町「お兄ちゃんが結婚するまでは出て行かないから安心して。はい、なのでお兄ちゃんには今後の為にも『せんぱーい、主役が来ないといつまでたっても始まらないんですけどー?』決めてもらうからね」

八幡「? すまん小町、いま一色の声と被ってよく聞こえなかったんだが?」

小町「突発性難聴で誤魔化そうたってそうはいかないよお兄ちゃん。まぁとにかくそういうことだから、頑張ってね♪」タタタッ

八幡「いや、マジで聞こえなかったんだが……」

八幡「(なんで女って人の話を聞かないんですかねぇ……。少しは耳を傾けてくれたっていいじゃねぇかよぅ……)」


八幡「(……まぁいいか。いや、よくないけど。とりあえずリビングに戻ろう)」スタスタ


【比企谷家・リビング】


陽乃「わー、何この子!? 小さい頃の雪乃ちゃんそっくりなんだけどー♪」ダキッ

留美「ちょっ……、なにこの人いきな……りっ、はな……っ! 離してってば……っ!」グググ

雪乃「……姉さん、みっともないからやめて頂戴。身内の恥だわ」

陽乃「んー? なら雪乃ちゃんがこの子の代わりになってくれる? それならやめてもいいよ?」

雪乃「………………、ごめんなさい鶴見さん。もう少しそうしてもらえるかしら。おそらくすぐ飽きると思うから」

留美「なん……で、私の意思は無視されなきゃなんないの……っ!」ジタバタ


八幡「(リビングに戻った俺の目に飛び込んできたのは、何故か陽乃さんに無理矢理抱きしめられる留美の姿だった)」


八幡「人ん家でなにやってんですか陽乃さん……」

陽乃「あ、比企谷くんお帰りー♪」

八幡「はい、少し遅くなりました。……えっと、とりあえずそいつを離してやってくれませんか? 滅茶苦茶嫌がってるんで」

陽乃「んー、比企谷くんが言うなら仕方ないなぁ。はい、ごめんね急に捕まえちゃって」パッ

留美「っ!」ダッ

八幡「(陽乃さんから開放された留美は一目散に駆け出して俺の背後に回る。おいこら俺を盾にするな)」

陽乃「さてさて、主役が帰って来たならそろそろ始めないとね。おーい、小町ちゃーん」


『はいはーい、今そっちに持って行きますねー』


八幡「(陽乃さんの呼びかけに応じた小町の声はキッチンの方から聞こえてきた。視線をそちらに向けると、キッチンには二人いる。一人は小町、もう一人は)」


『なぁ比企谷の妹、これはどこに立てればいい? 中央か? それと周りに立てた方がいいのか?』

『んー、ロウソクの大きさ的には中央の方がいいと思うんですけど、そこに立てちゃうとチョコプレートの文字が見えにくくなっちゃうんで周りにお願いします』

『なるほどな。ではそうすることにしよう』


八幡「(――――平塚先生……だと……?)」


『……ふむ、こんなものか』

『じゃああとはロウソクに火を点けて運んじゃいましょう♪ 大志くーん、カーテン閉めてー!』


大志「了解っす!」

いろは「はいはい、では先輩はこちらになりまーす」

八幡「え? ちょ、おいコラ押すな一色」

八幡「(平塚先生がいた事に驚く間もなく俺は一色に背中を押されてソファに座らせられる。なにこれ、こんな唐突に始まるもんなの?)」

結衣「えっと、留美ちゃんはこっちね。あ、さいちゃんそこのおしぼり取ってくれる?」

戸塚「これだね。はい、由比ヶ浜さん」

京華「ケーキ! ケーキ!」

沙希「こら、けーちゃん。スプーンで遊ばないの。お行儀悪い」

陽乃「雪乃ちゃん、そこの割り箸取ってー」

雪乃「……明らかに姉さんの方が位置的に近いじゃない。お断りよ、自分で取って頂戴」





小町「はーい、お待たせしましたー! バースデーケーキの登場でーす♪」


結衣 いろは 戸塚 大志「「「「イエーイ!」」」」


八幡「(気がつけば室内は暗くなり、部屋の光源は蝋燭に灯る小さな炎のみになっていた)」

八幡「(賑やかな声とともにケーキを運んできた小町はそれを静かにテーブル中央へ置く)」


京華「さーちゃん、ケーキ! ケーキがある!」

沙希「そうだね。でもこれはけーちゃんのじゃないからもう少し待っててね」


八幡「(目の前のケーキに興奮している京華を川崎が優しげな声音で窘める)」

八幡「(俺が京華ぐらいの年頃の時もこんな風にはしゃいだのだろうか。今では絶対にしなそうなことだが、昔の俺はどうだったのだろう)」


陽乃「蝋燭に灯る炎は見ていると落ち着くよねぇ。一説では蝋燭の炎がゆれる【ゆらぎ】が自然界にだけ存在するリズムらしくて、そのリズムが精神を安定させるみたい」

雪乃「キャンドルセラピーはその【ゆらぎ】を用いた精神安定法ね。効果は精神安定や安堵感を与えるだけでなく、精神統一、集中力増加もあると言われているわね」


八幡「(そんな京華とは対照的に雪ノ下姉妹は蝋燭の炎に着眼点を置いて話をしていた)」

八幡「(相変わらず雪ノ下は雪ノ下で博識で、その姉の陽乃さんも陽乃さんで博学だ。やはり似た者姉妹だなこの二人は)」


留美「……、」


八幡「(留美は俺の右斜め前のソファで座ってじっと蝋燭の炎を眺めていた)」

八幡「(陽乃さんに抱き付かれて荒んだ精神を落ち着かせているのだろうか)」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 22:46:03   ID: StPc3XmM

おもしろい!文体も本家に近いし
是非完結して欲しい!

2 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 23:54:38   ID: qlof_F62

※1たしかに!

期待してます!

3 :  SS好きの774さん   2014年09月17日 (水) 19:43:24   ID: 5NoJ6rM9

すいません取り敢えず早く書いてもらえますか?めちゃくちゃ楽しみなんですけど?

4 :  SS好きの774さん   2015年01月16日 (金) 18:11:20   ID: 0ib7XJ6-

続き待ってます

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