( ・∀・)ノ やっはろー!
つれづれなるままに、八結のイチャイチャ系SSを書いていこうと思います。
◆基本的に台本形式。
◆多分プロローグとエピローグだけ地の文あり。
◆大体短編集っぽい感じ。
書き溜めてある話もあれば、内容だけ決まっていてまだ書いていない話もあるので、
投下スピードは速かったり遅かったりすると思いますが御容赦下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407390423
【プロローグ】
心理学における、単純接触効果というものを御存知であろうか。
単純接触効果とは、繰り返し接することで好意度や印象が高まる効果のことである。
分かりやすく言うと、何度も同じ曲を繰り返し聞いているといつの間にか好きになっていたり、ギャルゲーで特定のヒロインとの会話を重ねることにより好感度が上がったりするアレだ。
これは、現実の人間関係においても同じことが言える。
同じ部活に所属し、毎日放課後を共に過ごしている相手に惹かれる……。
これはある意味、自然なことなのだろう。
総武高校の卒業式を迎える頃には、由比ヶ浜の想いにとっくに気がついていた。
もう、「どうせまた勘違いだ」などと言って逃げることが許されないくらいには、己に向けられた好意を確信していた。
だが、それはほんの一時の幻想だ。
奉仕部という、たった数人だけの空間を2年間共にしたからこそ生まれた、ただの思い込みに過ぎないのだ。
そんな不確かなものが、それぞれ違う学校に通うようになってまで、ずっと続くなんてことはありえない。
きっと由比ヶ浜は、大学で沢山の友達を作って、忙しいながらも充実した日々を送るのだろう。
そして俺は、慣れない大学生活に四苦八苦しながら、せめて休日くらいは精一杯引きこもるのだろう。
そこに互いが介在する余地はない。
だから、別々の大学になったことを機に一度距離を置き、一時の幻想は断ち切ってしまえばいい。
失われることがわかりきっているものを延命させることになんの意味があるのか。
いつか失くしてしまったものを時折そっと振り返り、
まるで宝物みたいに懐かしみ慈しみ、
ひとりそっと盃を傾けるような幸福も、きっとある。
だから、俺と彼女の青春ラブコメは、これでまちがっていない…………
…………そう、思ってたはずなんだけどなぁ。
結衣「ヒッキーお待たせ~!」ギュッ!
八幡「ちょっ!? おまえ街中でそういうことすんのはやめろよ!!」アセアセ
結衣「えー? 別に腕に抱きつくくらい良くない? だって……」
結衣「あたし達、付き合ってるんだし……さ?」///
八幡「っ! そ、そうだな」///
おい!
いつものポーカーフェイスな俺はどこへ行ってしまったんだ!!
結衣「あはは。ヒッキー顔真っ赤ぁ~」
八幡「うっ……」
結衣「さっ! それじゃあ気を取り直して、出発進行ー!!」
腕を絡ませたまま、俺を引っ張り歩き出す。
あの、いくらなんでもギュッとしすぎじゃないですか?
腕になんかふにっとしたもの当ってるから!
ええい、柔らかい可愛い良い匂い恥ずかしいっ!!
由比ヶ浜とは疎遠になるとばかり思っていたのに、どうしてこうなった。
ぶつくさと文句を言いつつも、由比ヶ浜に振り回される生活を楽しく思ってしまっているあたり、俺も随分と角が取れたものだ。
小町や平塚先生あたりは「捻くれ具合がマシになった」だの「ついに更生した」だの喜びそうなものだが、俺から言わせてみればこれは断じて更生などではない。
個性の没落である。
頑張れ! 俺のアイデンティティー!!
しかし、今更頑張って理性を総動員したところで仕方がないか。
───まぁ、どうしようもない奴待っても仕方ないわな
─────違うよ。待たないで、……こっちから行くの
やっぱり由比ヶ浜には勝てなかったよ……。
◇ ◆ 設 定 ◆ ◇
・原作で高2の人達は、現在大学1年生。
・奉仕部は皆大学バラバラだけど、比企谷八幡と由比ヶ浜結衣は付き合っている。
(八幡&結衣は実家暮らしのままで、雪乃は都心で一人暮らし)
・このSSにおいて高3の一色いろはと高2の比企谷小町は、生徒会メンバーで仲良し。
(八結スレという体ですが、小町と一色の出番も多めになると思います)
『ゆきのんとの関係はどうなったの?』とか、
『そもそも高3の時どんなことがあったの?』
といった過去篇は、要所要所で明かしていこうと思います。
それでは、本編スタート!
【①おかえり】
八幡「あぁ~、大学疲れた~……」
八幡(6月下旬、大学に通うのにもそろそろ慣れてきた頃合いだ。そうなってくると最初は新鮮だったキャンパスライフも、段々面倒に感じてくるものである)
八幡(ぼっちだから代筆なんて頼める人が居るわけないし、当然ノートの貸し借りをする相手も居ない)
八幡(つまり、面倒な授業であってもサボることができないのだ……)
ガチャッ!
八幡「ただいま」
小町「おかえりー」
結衣「おかえり~」
八幡「……おい、なんで由比ヶ浜がうちに居んの?」
結衣「あ~。今日ね、うちの大学四限の授業が休校になって暇だったから、急に遊びに来ちゃった」テヘッ
八幡「テヘッじゃねぇよ」
小町「ちょっとごみぃちゃん! せっかく可愛い彼女が玄関で出迎えてくれてるのに、その態度はないんじゃない?」
結衣「……ヒッキー嬉しくないの?」
八幡「う、嬉しいです……」///
結衣「えへへー」
小町(わぁ~お。お二人さん、すっかりバカップルですなぁ)ニヤニヤ
【②見ちゃダメ!】
小町「さて! お兄ちゃん帰って来たことだし、小町はどこかにお出掛けでもしよっかな~」
八幡「変な気ぃ使わんでいい。勝手に俺の部屋に入ってこなければ問題ないから」
小町「はーい」
小町(なるほどね。それで最近部屋の掃除してたんだ)
八幡「由比ヶ浜、飲み物とテキトーな菓子でも出すから、俺の部屋で待っててくれ」
結衣「あ、うん。前に来た時は部屋に上がられるの嫌がってたけど、今は大丈夫なの?」
八幡「あぁ。その、なに、交際相手をリビングまでしか通さないままってのもなんかアレだし……」
結衣「そっか。……なんか嬉しいな」
八幡「ん……。あ、ただし変なとこ漁ったりすんなよ!」
結衣「そんなことしないって」
結衣「……ってか、やっぱり見られたたら困る物とかあるんだ」
八幡「んなことわざわざ聞くなよ。あるに決まってんだろ」
結衣「まぁヒッキーも男の子だから仕方ないよね。あんま良い気はしないけど、黙認したげる」
八幡「ちげぇから! いや違くないけど、そういう物ばっかってわけじゃないから!」
結衣「ほんとー? 怪しいなぁ」ムムム
八幡「なんだ、お前の中では見られたくない物=全てエロイ物なのかよ」
八幡「どんだけ脳内思春期なの? 流石なんちゃってビッ……こほん」
結衣「あっ! 今超失礼なこと言いかけたでしょ!! 彼女に向ってそんなこと言うとかマジありえないんだけど! ヒッキーマジキモい!!」
八幡「だから途中で言うのやめただろ! ってかそっちこそ俺に失礼なこと言いまくってるけどそれはいいのかよ」
八幡「そもそも俺の中で、ビッチとなんちゃってビッチは微妙に定義が違───」
小町「ちょっとお二人さーん。小町に家にいても良いと言った以上、ここでずっと痴話喧嘩続けるのはやめていただけませんかねー」ジトー…
結衣「小町ちゃんっ!? ち、痴話喧嘩とか、そんなんじゃ、ない…し……」///
八幡「……いいからとっとと部屋行ってろ」
結衣「う、うん……」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~八幡の部屋~
結衣「あぁ~、恥ずかしかったぁ~~~」ボフンッ!
結衣(ッ!? 勢いでダイブしちゃったけど、ここヒッキーのベッドじゃん)アワワワワー
結衣(……なんか、心地良いかも)
結衣(毛布も、枕も、全部ヒッキーがいつも使ってる物なんだよね……)
結衣「…………」ギュッ!
結衣「…………」スリスリ
結衣「…………」クンカクンカ
八幡「………何してんだよオイ」
結衣「っ!??? わぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」
結衣「見るなぁ!!」ブンッ!
八幡「いたっ」ボフッ!
八幡(……くないな。投げられたの枕だし)
八幡「やめろやめろ。ジュース持ってきたのに零したらどうすんだ」
結衣「あ、ごめん……」
八幡「…………」
結衣「…………」カァァァアアア…
八幡(何これ超気まずい……)
八幡「あー、えぇっと、俺何も見てないから……」
結衣「……そういうことでお願いします」シュン…
【過去篇其ノ一:本日はお日柄もよく、つまるところ練習日和である。】
~高校三年時、4月初旬~
一色「えー……、新入生の皆さん御入学おめでとうございます。長い冬も過ぎ去り暖かな春の日差しが心地よく感じられる季節となりまるで皆様の入学を待ちわびていたかのように桜の蕾が一斉に咲き乱れ───」
八幡「ストップ」
一色「ちょっと、何なんですか! せっかくつっかえずにちゃんと読めてたのにー」プンプン!
八幡「あれのどの辺がちゃんとなんだよ……。もっとゆっくり聞こえやすいように話せ」
一色「いやぁ~、こういう堅い文章読むの、未だに慣れないんですよねー……」
八幡「あと、桜の蕾が咲き乱れって何?」
一色「え?」キョトン…
八幡「この前の春一番で、学校の桜半分くらい散ってるじゃねえか。恐らく入学式当日にはもっと散ってるぞ。どっかから言葉パクってきたのがバレバレすぎる」
一色「そんなこと言われても仕方ないじゃないですかー。わたしがこういうの、自分で考えられるように見えます?」
八幡「あのな、一から十まで自分で考える必要はないんだよ」
一色「でも今せんぱいがー」ブツブツ
八幡「理研だってコピペやりまくってるこんな世の中だ、高校生がやって悪いわけがない。テンプレの言葉を、丸パクリだと思われない程度に改変しておけばそれでいい」
一色「……理屈は理解できませんが、やるべきことは分かりました」
八幡「ほら、俺も一緒に考えてやるから、とっとと考えなおすぞ」
一色「は~い」チッ…
八幡(え? 手伝ってやってるのになんで舌打ちされなきゃならないの? 俺一人に全てやらせるつもりだったのだろうか……)
八幡「まっ、こんなもんだろ」
一色「ふぅ~……やっと終わったー……」ノビー
八幡「いや、まだ全然終わってないから。言葉考えるより、おまえの読む練習の方がよっぽど時間かかりそうだ」
一色「もうめんどくさいですー」ムスー
八幡「やれやれ、面倒なのは俺の方だ」
一色「そんなこと言って、先輩は毎回助けてくれますよねー。もしかしてわたしのこと好きなんですか?」
八幡「んなわけないだろ」
一色「それは残念です。わたしは先輩のこと、結構好きですよ?」
八幡「あんまり気安く好きとか言うな」
八幡(勘違いしちゃったらどうするんだよ……)
一色「ごめんなさい、もう気安く言いません」
八幡(お? やけに素直だな)
一色「気安くとかそんなんじゃなくてですね、真剣に───」
一色「先輩のこと、心の底から愛しています」
八幡「 」
一色「…………」ジー
八幡(……は? こいつ葉山のこと諦めてないんじゃなかったの?)
八幡(え、どういうこと!? ドッキリ!? それとも俺の人生にもついに春が────)
一色「……………ぷぷっ」
八幡「おまえ……まさか…………」
一色「あはははははは~! わたしが先輩のこと、本気で好きになるとでも思いましたー?」
八幡「なっ…………」アングリ
一色「何慌ててるんですか、ぶっちゃけキモいです」クスクス
八幡「おい……、いくらなんでもやって良い冗談と駄目な冗談があるだろ! 俺のトラウマ掘り返すようなことするなよっ!!」クワッ!
一色「ひいぃっ!? ちょっ、何ムキになってるんですか! 日付思い出して下さいよ日付!!」アタフタ
八幡「日付? …………あっ」
八幡(本日、4月1日でした……)
一色「さぁ~って、休憩しゅうりょー! 気を取り直して練習再開しますよー」エイエイオー!
八幡「ぐぬぬ……」
【③大学生活】
結衣「ねえねえ、大学どんな感じ?」
八幡「どんな感じって言われてもなぁ。多分、おまえんとこの大学と大差ないだろ」
結衣「そーゆーことじゃなくって、ヒッキーが大学でどんな感じなのか気になるじゃん」
小町「それ小町も気になります! お兄ちゃん、結衣さんと付き合い始めてからちょっと明るくなった気がするし、案外友達沢山作れてたりするの?」
結衣「ん~。あたし的には、女友達が多いとちょっと複雑なんだけど……」
八幡「安心しろ。浮気なんてするわけないだろ。ってかそもそも、大学に友達なんて居ない」
結衣「えっ……」
小町「うわぁ……」
八幡「なんだその反応は。別に友達居なくっても良いだろ! 俺はこれでも大学生活を満喫してるんだよ」
八幡「大学、それはとても素晴らしいものだ」
八幡「なぜなら、大学とは“ボッチに優しい空間である”」
八幡「授業中に『二人組作ってー』とか『班になれー』とか言われることもないし、何よりクラスというものがない」
八幡「そもそもクラスって何なんだろうな。大人から言わせりゃ協調性を養う場らしいが、あんなのはむしろ逆だ
八幡「一部の仲間同士だけでツルみ、相容れない者を攻撃する……、つまり排他性を学んでいるに過ぎない。ソースはもちろん俺」
八幡「他に大学の良い点を挙げるとすれば、……そうだな」
八幡「授業中にしろ休み時間にしろ、案外一人のやつが多い。本当は友達がいるが取ってる講義の関係で現在は一人である、なんてやつも少なくない」
八幡「そのため、購買や食堂で一人飯をしている者も必然的に多いわけで、俺はそんなやつらに擬態し堂々と室内で昼食を取れるというわけだ」
八幡「つまり大学ではぼっちでいても、『何あの可哀想な人……』『友達居ないの?』『うわぁキモ……』みたいな視線を浴びせられる可能性が極めて低いといえる」
八幡「結論を言おう」
八幡「~嗚呼、素晴らしきかなキャンパスライフ~」
小町「…………」
結衣「…………」
八幡「え、……なに?」
小町「最近口数が増えたのは明るくなったわけじゃなくて、学校で話し相手が居ない分、小町や結衣さんの前でよく喋る様になっただけなんだね……」ウルウル
結衣「あたしがヒッキーと同じ大学に合格してれば、きっと違う未来もあったのに……。なんかごめんね」ウルウル
八幡「おいお前等、俺に憐れみの視線を向けるのはやめろ」
小町「大丈夫だよ。小町がいくらでも話し相手になってあげるから! あ、今の小町的にポイント高い」
結衣「寂しくなったらいつでも電話とかしてきて良いんだからね!」
八幡「だからやめろって! なんか逆に虚しくなっちゃうだろ! ……やめてくださいお願いします」
いいっすね~
期待!
うわ、もう3時過ぎてんじゃん。
今日昼飯まだだったから食ってきます。
~スレの目標~
明日が終わるまでに、話を8/8まで進める。
ふむ
期待
わくてか
いいねいいね
はっぴーさん?
>>20 >>22 >>23 >>24
さんくす
>>25
過去篇は、某所に長々とうpしたやつの中から大事な話だけピックアップして再構成
してるし身バレは仕方ないと思ったけど、ここの匿名性がまるで生かされないなぁww
高校三年時の展開を知ってたとしても、知らないフリしててくれると助かります。
【過去篇其ノ二:いつの間にやら、部員は増えている。】
~高校三年時、4月中旬~
雪乃「まだ少し肌寒いし、紅茶でも淹れましょうか」
結衣「わーい!」
小町「ここの部室、紅茶が常備されてるんですか?」
結衣「うんっ。ゆきのんが入れてくれる紅茶、すっごく美味しいよ~!」
小町「ほほぉ~」
雪乃「温度調節と手順さえ間違わなければ、これくらい誰でも出来ることよ。もし良ければ、今度小町さんに教えようかしら」
小町「お願いします!」
結衣「ねぇねぇゆきのん、あたしは? あたしには教えてくれないの?」
雪乃「……さぁ、紅茶の準備が出来たわ」
結衣「シカトされたっ!?」
ゴクゴク ズズズ…
小町「流石雪乃さんですね~、その辺の自販機のやつよりよっぽど美味しいです!」
雪乃「そうかしら。買ったものとあまり大差はないと思うのだけれど、喜んでもらえたようで嬉しいわ」
結衣「ふぅ~、あったまる~……」
雪乃「はい。比企谷君の分も淹れておいたわ。せっかく、あなた用のティーカップもあるのだしね」コトッ
八幡「ティーカップっつうか、どこからどう見ても湯呑みだけどな。……ま、どうも」
雪乃「ふふ、どういたしまして」
八幡(雪ノ下から素直な善意を向けられることに未だに慣れないというか、何だかむず痒い……)
八幡「コホン……。それより、なんで最近小町が居るの? ってか溶け込みすぎじゃね?」
雪乃「なんで、とは、どういう意図の質問かしら」
結衣「そうだよヒッキー! 同じ部員に対してそんなこと言っちゃ失礼だよ!」
小町「まったく、これだからごみいちゃんは……」ジトー
八幡(え、これ俺が悪いの? 小町が入部したこと全く聞いてないんだけど……)
結衣「あっ、そうだ! 今度小町ちゃん用のティーカップ、一緒に買いに行こうよ!」
小町「おおっ! そんなことまでしてもらっちゃって良いんですか?」
雪乃「ええ、もちろんよ。小町さんだけ紙コップというのも申し訳ないし、なるべく早く買いに行きましょう」
結衣「ついでにカラオケとかボーリングも行きたいな~!」
雪乃「……それのどこがついでなのかしら。時間配分的に考えると、そちらがメインになってしまうじゃない」
結衣「えぇ~、たまには良いじゃん」
小町「小町も行きたいでーす☆」
結衣「ねー♡」
雪乃「……仕方ないわね。それと、ボーリングではなくボウリングよ。あなた、穴掘りでもするつもり?」
結衣「穴掘り? ゆきのん何言ってんの?」
雪乃「はぁ……」ヤレヤレ
ワイワイ キャッキャ
八幡(いかにも“女の子の空間”って感じで居辛いんだけど)
八幡(……何これ俺要らなくね?)
【④来訪者】
八幡「たでぇま」
八幡「…………」
八幡(大学から家に帰ってくると、玄関には見慣れぬ女物の靴)
八幡(また由比ヶ浜でも来てんのか?)
~リビング~
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
ガチャッ!
八幡「おーい、ただいm……」
小町「あ、お兄ちゃんおかえり~」
一色「せんぱ~い、お久しぶりですねー。おじゃましてまーす!」
八幡「……なんでお前が居るんだよ」
一色「ちょっとー、そんな嫌そうな顔しないでくださいよぉ」プンプン
一色「この時期は生徒会の仕事も少なくて暇ですし、友達の家に遊びに来て何が悪いんですかー?」
小町「そうだよお兄ちゃん! いろはさんは小町のお客さんなんだから、失礼な態度取らないでよね!」
八幡「はいはい……」
一色「もしかして、『先輩に会いに来ましたよー!』とか言った方がポイント高かったですか?」
八幡「高くねえよ。むしろそんな理由だったら、即座に追い返すまである」
小町「小町的にも、今んとこお義姉さん候補は結衣さんだけで十分かな~。修羅場とか見たくないし」
一色「ねえ小町ちゃん、先輩と結衣先輩ってそんなにラブラブなの?」
小町「そうですねぇ……。小町の前では物理的にイチャついたりはしてないけど、かなり仲良いと思いますよ」
一色「へぇー、なんか意外。普通にカップルしてる先輩が想像できないっていうか、そもそもどうやって付き合い始めたのかも想像つかない……」
小町「ほらほらお兄ちゃん、そんくらい教えてあげなよ」
八幡「あ? なんでそんなこと一色に教えなきゃならねぇんだよ」
小町「そりゃまあ恥ずかしくって言えないよねー」
小町「高校卒業の時は自分から結衣さんを遠ざけておきながら、いざ数ヶ月間会わなくなると寂しくてたまらなくなったとかお兄ちゃんマジごみいちゃん」
八幡「ちょっと待て! 違うから! いやほんとそんなんじゃないからっ!!」
一色「うわぁ~……。捻くれてるというよりも色々こじらせすぎててキモい……」
小町「あの時は小町も苦労したんですよ? 4月頃のお兄ちゃん、なんかいつも元気なかったし」
八幡「忘れろ……、忘れてくれ……」クロレキシガー…
一色「小町ちゃんもこんなのが兄妹で大変だねぇ」
小町「ま、こんな愚兄を支えてあげるのが小町の役目ですから! ちなみに今の、小町的に超ポイント高い」
一色「あはははは! 愚兄ってwwwww」
八幡「ちょっと。さっきから俺の扱い酷過ぎない?」
八幡「何気にこんなのとか言うんじゃねぇよ……」
一色「まぁまぁ、先輩にもたまぁ~に良い部分があるってことくらいちゃんと理解してますから」
八幡「嘘つけ」
一色「ホントですってばー! その証拠に、卒業前に先輩からもらった第二ボタン、今でも大事にとってあるんですよ?」
小町「えっ、なにそれ!? お兄ちゃんいろはさんに第二ボタンあげたのっ!? 浮気はポイント大暴落だよ!!」
八幡「浮気も何もその頃は由比ヶ浜と付き合ってねぇし、そもそもあげたんじゃなくて一色に毟り取られただけだから……」
一色「またまたぁ~。あの時結構デレデレしてたくせに、先輩ったら強がっちゃってー」
八幡「デレデレなんてしてねぇよ」
八幡(はぁ……、こいつと会話してると疲れる……)
八幡「小町、一色が帰ったら教えてくれ。それまで俺は自分の部屋に引き篭もるから」
小町「りょーか~い」ラジャッ!
一色「えぇ~~~! せんぱぁ~い、もうちょっとわたしとお話ししましょうよー!」
八幡「嫌だ。じゃあな」
小町「お兄ちゃん、なんだかんだ言っていろはさんと喋るの楽しそうにしてましたね」
一色「そうかな? 久々に会ったのに調子乗りすぎちゃったかなーとか気にしてたんだけど」
小町「いえいえ、そんなことありませんよ!」
一色「そっか。小町ちゃんの目に楽しそうに映ったなら、きっとそうなんだろうね」
一色(良かったぁ~)
乙
乙
由比ヶ浜もいろはすもかわいい
やべぇ名前ミスった
バレたら嫌だし変更するわ
【⑤散歩しよ】
FROM ☆★ゆい★☆
SUB やっはろー!
こんばんわ ・∀・)ノ
ヒッキーさぁ、
明日ってたしか講義午後からだったよね?
FROM 比企谷 八幡
SUB Re:やっはろー!
おう
FROM ☆★ゆい★☆
SUB Re2:やっはろー!
相変わらず返信二文字だし……(-д-;)
まぁいいや。
それでね、明日の朝なんだけど───
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
~次の日~
サブレ「わんっ! わんわん!!」フリフリ
八幡「…………」
八幡「なぁ、ほんとだったら今日は昼前まで寝てられたんだけど。なんでわざわざ早起きしてまで、犬の散歩に付き合わなきゃなんないの?」
結衣「小町ちゃんにさぁ、『お兄ちゃんが午後から授業の時、よく寝過してるみたいなんですけどどうしましょう?』って相談されて」
結衣「だから、ちゃんと朝から起きる理由を作ってあげたの!」
八幡(小町のせいかよ……)
八幡「仕方ないだろ。ノンビリ寝ていられると思うと、ついつい寝すぎちゃうんだよ」
八幡「つうか小町のモノマネすげぇ似てないな」
結衣「そうかなー? そんなことないと思うんだけど」
八幡「そんなことあるから」
結衣「むぅ~……」
結衣「え~、コホン」
結衣「お兄ちゃんお兄ちゃん! そんなイジワルなことばっか言ってると結衣的にポイント超低いし!! ……じゃなくって、低いよ!!」
八幡(似てなさすぎてヤバイ)
八幡(あと、由比ヶ浜にお兄ちゃんって呼ばれると、なんか妙な気分になってくる……)
結衣「ちょっと、外でニヤニヤしないでよ。これだからごみいちゃんは……」
八幡(ニヤニヤなんてしてないから。し、してないよね?)
八幡(たしかに俺はシスコンだが、妹プレイで喜んでしまう性癖なんてないはずだ。いや、断じてない!)
八幡「由比ヶ浜さん、それはあなたがそう思っているだけよ。私の顔は至って普通だわ」
八幡「それと、その小町さんの物真似を即刻やめてもらえないかしら? 傍から聞いていて物凄く滑稽なのだけれど」
八幡「あなたの物真似は、ただ口調を似せているだけよ。声質、イントネーション、間の取り方……、全てがお座成りでまるでなっていない」
八幡「声質を似せるのは声帯的に限界があるにしても、口調のトレースくらいもう少しなんとかしてもらいたいものね」
八幡「はっきり言って、酷く不愉快だわ」
八幡「……っと、モノマネってのはこうやるんだよ」
八幡(ちなみに、何かを誤魔化したい時に捲くし立てるとこまで含めて完璧なモノマネである)
結衣「似すぎてて逆にキモいからっ! ってかゆきのんそこまで酷いこと言わないし!!」
八幡「まぁそれもそうか。おまえにはとことん甘いもんな」
八幡「さて、一通り会話を楽しんだことだし、そろそろ帰るとするか」
結衣「ダメダメ! まだ全然散歩してないじゃん!!」
八幡「チッ、誤魔化せなかったか」
結衣「本気で帰るつもりだったんだ……」
八幡「冗談に決まってんだろ。ほら、行くぞ」
結衣「うんっ♪」
【⑥散歩しよ Part2】
サブレ「ハッ ハッ ハッ」トテトテ
結衣「~~~~~♫」スタスタ
八幡「散歩のさせ方、意外としっかりしてんのな」
結衣「ん?」
八幡「リードの長さとか、犬歩かせる位置とか。もっと適当にやってんのかと思ってた」
結衣「あぁ~、たしかに昔は適当だったかも。でもほら、高校の入学式ん時のあれで怖くなっちゃって」
結衣「だからもっとしっかりしないと! って思ったの」
八幡「良い心がけのわりに、高二の時も逃げられてた気がするんですがそれは……」
結衣「あれは首輪のせいでしょ! ……それも含めて飼い主の責任かもだけど」シュン…
八幡「まぁ、もう首輪やリードの心配はないだろ。結構まともそうなやつを選んだつもりだし」
結衣「うん、ありがとね。サブレも気に入ってるみたい」
八幡「ほんとかよ。サブレとちゃんと意志疎通できてんの?」
結衣「失礼な! あたしこれでもサブレのこと、滅茶苦茶大事にしてるんだからね?」
八幡「俺だってカマクラ大事にしてっから。なんなら、大事にしすぎて一切外に出していない」
結衣「なにそれかわいそう!!」
八幡「んなことないって。生まれて此の方ずっと室内で育ってきた猫を、今更外に出したところで戸惑うだけだ」
八幡「それに、猫は犬と違って好き勝手に動くからな」
八幡「外に放し飼いした事によって、怪我したり病気を患ったりするケースも珍しくない」
八幡「猫が健康的に生活できる空間をしっかり家の中に作っておけば、室内飼いは決して悪いことじゃないんだ」
八幡「むしろ推奨されてるまである」
結衣「ほえぇ~」
八幡「ちなみに犬も、犬種によっては毎日外に出す必要はないんだぞ」
八幡「特に小型犬は肉体的に脆いのが多いから、あんまり散歩しすぎると足に良くないって話も聞いたことあるなぁ」
八幡「まぁダックスフンドの場合元々が猟犬だから、その心配は必要ないと思うけど」
八幡「サブレは毎日散歩するのが習慣になってるみたいだし、それに丈夫そうだからこのままで問題ないだろ」
結衣「なんか、ヒッキーが動物博士みたい……」
八幡「こんくらい動物好きなら普通の知識だ。実際うちは、昔犬飼ってたわけだし」
結衣「そういえばそんな話してたことあったね。ってかヒッキーって、そんなに動物好きだったんだ」
八幡「おう。結構好きな動物は多いな。……ただし人間以外に限る」
結衣「うわぁ……、一言余計すぎる……」
結衣「あ、そうそう。首輪とリードだけじゃなくって、シュシュとか、この前の誕生日にもらったネックレスとか……」
結衣「ヒッキーから貰ったものは、全部大事にしてるからね!」
八幡「……あっそ、そりゃよかった」
結衣「ふふっ、照れちゃってー」ウリウリ
八幡「うっせ」///
サブレ「くぅ~ん……」(リア充爆発しろ……)
ヒッキー誕生日おめでとう!!
ってなわけで、次の話題は誕生日(ただしヒッキーの誕生日とは言っていない)
【過去篇其ノ三:由比ヶ浜結衣は皆に愛されている。】
~高校三年時、6月 inカラオケボックス~
雪乃「それでは由比ヶ浜さんの、18歳の誕生日を祝して……」
一同「「「「「「かんぱ~い!!」」」」」」
結衣「皆、本当にありがとーーー!!」
彩加「こちらこそ、今年も呼んでもらえて嬉しいよ」ニッコリ
八幡「俺も戸塚が居てくれて嬉しいぞ」
彩加「もぅ! からかわないでよ八幡っ」
義輝「八幡よ! 今回こそ我と共に歌いつくそうではないか!」
八幡「いや、俺は歌わないから……」
結衣「今年もこんなに祝ってもらえるなんて思ってもみなかったから、超ビックリしたよー」
雪乃「それだけ、あなたが皆から愛されているということよ」
結衣「そうかなぁ~」エヘヘー
小町「もちろんですよ! ねっ、お兄ちゃん?」
八幡「え、まぁ、う~ん……。よく分からんけど、きっとそうなんじゃないか?」
小町「もぉ~。そこはもっとこうハッキリと……『もちろん俺も愛してるぞ、結衣!』って言ってあげなきゃダメでしょ!!」プンプン
結衣「小町ちゃんっ!???」///
八幡「そんなに慌てなくても、んな台詞言うわけねぇだろ」
結衣「だ、だよね……」ハァ…
八幡(露骨に落ち込まれても反応に困るんだが……)
雪乃「由比ヶ浜さん、今年もケーキを作ってみたのだけれど、食べてもらえるかしら」
結衣「ワーイ! ゆきのん大好き!!」
雪乃「食べる前からそんなに喜ばなくても……」
結衣「ゆきのんが作ってくれた料理なら、なんだって美味しいに決まってるよー」
雪乃「そ、そうかしら」テレッ
小町「ほら、お兄ちゃんもさっさとプレゼント渡さないと。わざわざ二人きりのシチュで渡せるほど大それた物選んだわけじゃないんだからっ」ヒソヒソ
八幡「言われんでもわーってるよ」ヒソヒソ
結衣「ん~~~! これマジ美味すぎだし!!」モグモグ
雪乃「ふふ、作った甲斐があったわ。切り分けたから、戸塚君や材……えっと、そこの人もどうぞ」
彩加「わぁ~。すごく美味しそう! 雪ノ下さんありがとう!」
義輝「うぐぅ……。我にもケーキを恵んで下さるのは非常にありがたいのだが、どうにも複雑な気分であるぞ……」
八幡「なぁ由比ヶ浜、少しいいか?」
結衣「ん?」
八幡「ほれ、プレゼントだ」つ□
結衣「!! ありがと~! これ、開けてみていい?」
八幡「おう。大した物じゃないけどな」
ガサゴソ
結衣「わぁ~、模様とか超カワイイー」
八幡「去年首輪だったから今年リードってのは、ちょっと安直すぎたか?」
結衣「そんなことないよ! あたしの好みっぽいやつ選んでくれたのかなーとか、色々伝わってきて凄く嬉しい」
八幡「なら良かった」
結衣「ありがとね、ヒッキー!」ニコッ
八幡(安直も何も、本当は色々と悩んだのだ)
八幡(去年プレゼントした犬の首輪をチョーカーと勘違いして喜んでいたことから推測するに、そういう類の物をあげればきっと喜ぶのだと思う)
八幡(だから最初はネックレスでもプレゼントしてみようかと思ったが、俺にはハードル高すぎて結局やめた)
八幡(由比ヶ浜の容姿と社交性なら、来年の今頃にはどこぞの大学で素敵な彼氏でもできていることだろう)
八幡(チョーカーとかネックレスとかそういうのは、その彼氏から貰えばいい)
八幡(そうだ、これでいい。俺は何も間違っていないはずだ……)
間違ってなかった
>>52
ありがとうございます。
話が分かり辛くなっちゃうかなぁ~と若干不安になりつつも、
現在の話と一年前の話をいったりきたりしてるのは、
そういう風に関連付けて見せる意図があったりする。
【⑦梅雨】
ザァァァアアア……
結衣「雨だね~」
八幡「そだな」
結衣「遊び行けないし嫌だね~」
八幡「俺は室内の方が好きだけどな」
結衣「もぉ! 天気もヒッキーもムカツク!」
八幡「天気については俺に文句言われても知らん」
八幡「もう7月だし、梅雨なのは仕方ないんじゃねえの?」
結衣「そーだけどさぁ~……」
結衣「あっ! 雨に関する良い思い出あった!」
八幡「良い思い出?」
結衣「ほらほら、去年の今頃相合傘したじゃん!」
八幡「……知らん知らん。忘れた」
結衣「絶対嘘だ~。ヒッキー嘘は嫌いなんじゃないの?」
八幡「俺は嘘も欺瞞も嫌いだが、誤魔化しは好きなんだよ」
結衣「いやもう意味分かんないし……」
結衣「ねぇ、また相合傘してみる?」
八幡「……あんなこともうしないから。なにあれ恥ずかしすぎでしょ」
結衣「あ、やっぱり覚えてたんだ」
八幡「そりゃ忘れらんないだろ。大体お前はああいうシチュエーションに託けて、くっついてきすぎなんだよ」
結衣「しょうがないじゃん! せっかくのチャンスだったんだもん!!」
結衣「それに嫌じゃなかったでしょ?」
八幡「その質問はズルイと思います……」
結衣「あはは」
結衣「今はもうさ、理由とかなくてもくっついて良いよね?」
八幡「……う。それは、えっと」
八幡「お手柔らかにお願いします……」
結衣「えへへー」ギュゥーッ!
八幡「…………」/////
八幡(ヤバイヤバイ)
八幡(離れたいのに離れたくなくて自分でもワケが分からん……)
【過去篇其ノ四:想いは雨の様に降り注ぎ、鳴りやまない。】
~高校三年時、7月初旬~
ザァァァァァァ…
結衣「あ、あれ?」
結衣「折り畳み傘鞄に入れたはずだったのに入ってない! なんでっ!?」ガサゴソ
結衣「もうゆきのん帰っちゃったしどうしよぉ~……」
八幡「仕方ねぇな。小町、由比ヶ浜に傘貸してやってくれないか? おまえは俺の傘に入って帰れば済む話だし」
小町「ん~。小町とお兄ちゃんで相合傘するのもそれはそれでポイント高いけど~……。いやでもなぁ……」ブツブツ
八幡「おまえ、また変なこと企んでるんじゃ───」
小町「結衣さん! 傘を貸してあげたいのは山々なんですけど、小町は食糧買いに行ったり晩御飯作ったり色々やらなければならないことがあるんですよ!」
結衣「は、はぁ」
小町「そ・こ・で! うちの兄を貸しますんで、バス停まで連れてってもらって下さい!」
結衣「えぇっ!? そ、それってあたしとヒッキーが一緒の傘で……ってこと!?」
小町「はいもちろんそうなりますねぇ~」ウェヒヒヒ
八幡「おい小町! いくらなんでもそれは悪ふざけが過ぎるぞ!」
小町「いやいや何言ってんの。バス停なんて歩いてほんの数分でしょ?」
小町「それでは結衣さん頑張って下さい! さよ~なら~」スタコラサッサ
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ザァァァァァァ…
八幡「…………」
結衣「…………」チラッ
八幡「……おい、あんま離れると濡れるぞ」
結衣「あ、うん。じゃあくっつくね……」スッ
八幡「いやちょっとそれはいくらなんでも近すぎるんじゃっ」///
結衣「ご、ごめんっ!」///
八幡(どうしてこうなった……。怨むぞ小町……)
八幡(はぁ……。小町が最近色々企みまくりで小賢しすぎる。いやまぁそんなところも可愛いんだけど)
結衣「ヒッキー、その……、あたしが傘忘れちゃったせいでこんなことになっちゃって、ごめんね?」
八幡「いや、別に謝るようなことじゃないだろ」
結衣「でもなんか、複雑そうな顔してたから……」
八幡(それはほら、さっきからずっと触れてる肩の柔らかさとか、すぐ隣の髪から漂う良い匂いから気を紛らわそうとこっちはこっちで必死なんだよ!)
結衣「…………」ピタッ
八幡「ん、どうかしたのか?」
結衣「もうすぐ、バス停着いちゃうから……、もう少しこのままじゃ、駄目…かな?」
八幡「お、おい。急に何言い出すんだ……」
結衣「だって、あたし等もう高3なんだよ?」
結衣「奉仕部も、きっともうすぐ終わっちゃうんだって思ったら……、これ以上、今までのままじゃいられなくって、それで……」
八幡「…………」
結衣「それにね、急にじゃないよ。全然、急になんかじゃない」
八幡「……そうか。そう、だな」
八幡(由比ヶ浜が、俺に抱いているであろう特別な想い。そんなものは存在しないと、どうせまた俺の勘違いだと、ずっとそう思ってきた)
八幡(いや、そう自分に言い聞かせて逃げてきたんだ。そうしなければ、自制が利きそうになかったから)
八幡(かけがいのない存在なんて作りたくはなかったのに、由比ヶ浜のことが、奉仕部がそうであると認めてしまいたくなかったから)
八幡(だが、目をそらし続けるのは、もう限界なのかもしれない……)
八幡「由比ヶ浜、俺は今のぬるま湯のような関係性が好きだ。おまえはそうじゃないのか?」
結衣「好きだよ。でも……、それでもあたしは……」
八幡「……仮に、仮にだ。俺と由比ヶ浜の関係性が、何か別のものに変わったとする。でも、そんなのきっと1年間も続かないぞ?」
結衣「……どういう意味?」
八幡「そういうのはな、同じ高校・同じ部室で共に時間を過ごしていたからこそ芽生えた、ほんの一時の感情に過ぎない」
八幡「そんなものは幻想なんだと、少し離れればすぐに気付くことになる」
結衣「あたしは、そんなことないと思うけどな……」
八幡「そんなことあるだろ、きっと……」
結衣「……っ」
八幡(そんな顔をしないでほしい。悪いのは由比ヶ浜でなく、全て臆病な俺のせいなのに……)
八幡「……すまない。でも、どうにも変われそうにないし、そう簡単に変わりたくもないんだ……」
結衣「じゃあ、じゃあさ……。もし、この先も一緒に居られるなら、ヒッキーはそれで安心できる?」
八幡「……俺は守れる保証のない約束はしない主義だ。だから、そうなってみないとには何とも言えない」
結衣「あ、あはは……。そう、だよね……」
八幡(俺は、ここまできても尚、由比ヶ浜の気持ちを完全には把握しきれていないのだろう)
八幡(だが、これだけは分かっている。一度変わってしまえば、二度と元に戻すことはできない)
八幡(それくらい由比ヶ浜も分かっているはすだ。それでも、こいつは踏み出してきた)
八幡(なら、俺にできることは───)
八幡「……ただ、その、なに」
八幡「どんなに変えたくないと願っても変わらないものなんてない」
八幡「だから、俺もその内ちょっとくらいなら変わる可能性がある気がしないでもないような……、そんな気がするような……」
結衣「ふふ、何それ」
八幡「悪かったな」
結衣「うん、悪い。さっきから曖昧な表現しすぎだし。聞いててもどかしすぎっ」
八幡「んなこと言われてもだな……。仕方ないというかなんというか」
結衣「ばか…」
八幡「うっ……」
結衣「でも、ヒッキーなりに頑張ってくれたんだよね」
八幡「なんでそんなこと分かんだよ」
結衣「それくらい分かるよ。ヒッキーのこと、今までずっと見てきたもん!」
八幡「見てんのかよ……」
結衣「うん。これからも、ちゃんと見てる」ニコッ
結衣「ありがとね。今はこれで、我慢できそうな気がする、かな」
八幡「そうか……」
結衣「傘、ここまででいいよ」
八幡「おい、まだ雨強いままだろ」
結衣「もうバス停すぐそこだし、走ってけば大して濡れないって!」
八幡「まぁいいけど、風邪引くなよ」
結衣「うん、今日はほんとありがとう」
結衣「それと───」
結衣「───待っててね。今度は絶対逃がさないからっ!」
八幡(そう言って走り去る彼女の顔は、先程までとはうってかわってまるで晴天の様に輝いていて、俺の網膜から離れてくれそうにない)
八幡(そして、一度高鳴り始めた俺の想いも、依然降りつづける雨の様に、暫くやんでくれそうにないのであった……)
話が7月まで進んだし、とりあえず一旦終わり~!
今日中に8月8日の話まで間に合うかどうかわからないけど、もう寝ます。
ここまで見てくれた方々&感想くれた方々、ありがとうございました。
おやすみなさーい。
やっぐなーい
いろはす好きならいろはすSSも書いてええんやで
おつ
かわゆい
【⑧歌うのって楽しいよね!】
~カラオケデート中~
八幡「フリータイムか……」
結衣「そだけど、どうかしたの?」
八幡「フリータイム、直訳で自由な時間、まったくもって嫌な響きだ」
八幡「修学旅行、遠足、体育の授業etc、自由時間と言われる度にどうしたらいいものか、昔の俺は大変悩まされた」
結衣「なんか似たような話、高2くらいの時にも聞いたことあるし……」
八幡「え、そうだっけ?」
八幡「やべぇな、今回はマジで全然覚えてないわ。俺も歳かもしれん」
結衣「もう老化現象っ!? ボケるの早すぎだからぁ!」
八幡「まぁそんな話はともかく、フリータイムで入ってどうすんの? 二人で6時間もカラオケに居座るとかそんなの無理だろ」
結衣「そんくらい余裕じゃない? 歌う以外にもやれること色々あるし!」
八幡「例えば?」
結衣「お昼ごはん食べれるしー、ドリンクバー付くから色々飲みながらお喋りしたりもできるしー、あとデザート系のメニューも案外豊富でおいしい!」
八幡「飲み食いしてばっかじゃねえか……。あと、こういう所で食べる飯は、高い割に美味くないと相場が決まってるもんだ」
結衣「え~、普通に美味しくない? それにあたしクーポン持ってるし!」
結衣「他にはー、ええっと……、歌うのに疲れたらお笑い見たりもできる!」
八幡「は?カラオケでお笑い?」
結衣「ヒッキー知らないの? カラオケのテレビで、芸人さんのコント見れるんだよ」
八幡(え、マジで? 最近のカラオケそんな機能付いてんの?)
八幡(もういっそのこと、スーパーヒーロータイムやプリキャアも見られるようにしちまおうぜ! そしたら日曜寝坊した時とか非常に助かる)
結衣「別にずっと歌ってるんでも良いんだけどね」
八幡「いや、だからそれは無理だろ」
結衣「無理じゃないよ?」
八幡「は?」
結衣「前に優美子と2人でフリータイムの間中、交互に歌いっぱなしなのやったの!」
結衣「楽しかったけど終わる頃には凄い喉痛くなっちゃってさー、次の日まで声ガラガラで大変だったよ~」アハハー
八幡(なんでそんなにテンション高く話せるんですかねぇ……)
八幡(それ本当に楽しいの? 喉を痛めてまで歌い続けるとか拷問の間違いなんじゃないの?)
結衣「それに、さ」
八幡「?」
結衣「ヒッキーと一緒だったら、大抵何してても楽しいかなぁ~、なんて。たははー……」
八幡「……自分で照れるようなことわざわざ言うなよ」
結衣「あぅ……」
八幡(いや、まぁ、嬉しかったけど……)
【⑨テスト期間】
FROM ☆★ゆい★☆
SUB へるぷ・みー・ヒッキー!
うちの大学、来週からテスト期間なんだけど……
いーやーだー><
FROM 比企谷 八幡
SUB Re: へるぷ・みー・ヒッキー!
俺んとこも来週からテストだ
FROM ☆★ゆい★☆
SUB Re2: へるぷ・みー・ヒッキー!
へぇ~
じゃあさ、次の休み一緒に勉強会とかやんない?(〃ω〃)
FROM 比企谷 八幡
SUB Re3: へるぷ・みー・ヒッキー!
真面目な話、
大学も学部も違うのに一緒に勉強したとこで意味なくね?
FROM ☆★ゆい★☆
SUB Re4: へるぷ・みー・ヒッキー!
えぇー
二人とも文系なことに変わりはないじゃん!!(`・ω・´)
FROM 比企谷 八幡
SUB Re5: へるぷ・みー・ヒッキー!
俺文学部
おまえ経済学部
おk?
ちなみに、教養科目として
経済学入門っつー授業取ってみたけど、
まるで意味が分からなかった。
ミクロとかマクロとかなんだよ
あれ文系科目じゃなくて数Aの仲間だろ
俺は金輪際数学とは関わらないと誓った男だ
この誓いをあまり舐めるな
FROM ☆★ゆい★☆
SUB Re6: へるぷ・みー・ヒッキー!
珍しく返信長いと思ったら文句ばっかだし……(´・ω・`)
あ、そうだ!
ならあたしが経済学おしえてあげる!!
FROM 比企谷 八幡
SUB Re7: へるぷ・みー・ヒッキー!
お、マジか
若干屈辱的な気がしないでもないけど助かる
そして俺は単位を取れて、
代わりに由比ヶ浜が落とすんですね分かります
FROM ☆★ゆい★☆
SUB Re8: へるぷ・みー・ヒッキー!
屈辱的ってなんだし!
ってか一番最初のテストから単位落としたりしないからぁ!!
【過去篇其ノ五:人ごみに紛れないように握ってくれた手が、胸の奥までつかんで離さない。】
~高校三年時、8月下旬~
八幡(現在駅俺は駅にて、とある人物と待ち合わせ中だ)
八幡(待ち合わせ時間より少々早く気すぎてしまったため、待ちぼうけを食らっている次第である)
八幡(べ、別に、楽しみすぎて家を早く出ちゃったとかそういうことでは決して───)
結衣「お、お待たせ……」テトテト
八幡(───そこには、去年と同様の可愛らしい浴衣に身を包む、由比ヶ浜結衣が居た)
八幡「お、おう」
結衣「待たせちゃってごめんね……」
八幡「いや、そんなに待ってないから大丈夫だ。まだ集合時間より早いしな」
結衣「そっか。えぇっと……」
八幡「その、なに。……今年もいいな、その浴衣」
八幡(なんで中身じゃなくて毎回服の方を褒めてんだよ。ほんと俺って成長してないな……)
結衣「そうかな? えへへ……、ありがとう」///
八幡「ん。……そんじゃ、そろそろ行くか」
結衣「うんっ!」
八幡(電車に揺られること数十分、千葉ポートタワー周辺……つまりは昨年と同じ千葉市民花火大会会場へ到着である)
八幡(いくつもの出店が軒を連ねており、時間が経つにつれ人の流れもだんだんと激しくなっていく)
八幡「おい、はぐれんなよ」
結衣「うん。……うわわっ!?」ヨタヨタ
八幡「ったく、言ってるそばから……」
結衣「だってぇ……、これ歩き難いんだよ!」
八幡「なら無理してその格好で来なくても良かったんじゃないか?」
結衣「それは、えっと……、ヒッキーが、去年も浴衣褒めてくれたから……」
八幡「はぁ……」
ギュッ
結衣「っ!? その、手……」
八幡「……嫌なら止めるけど」
結衣「嫌じゃない! 全然嫌じゃないし!!」
八幡「この人混みじゃケータイも通じ難いだろうしな。はぐれないようにするにはこれが一番効率いいだろ……」プイッ
結衣「そっか、そうだね。なら、しょうがないよね。しっかり握っててよっ」ギュッ!
八幡「お、おう」///
八幡(ヤベー何これ自分でやっておいて滅茶苦茶恥ずかしいんだけど……)
結衣「~~~♪」ルンルン
八幡「随分とご機嫌だな」
結衣「今、すっごく幸せだな~って」エヘヘー
八幡「別に、手をつなぐのくらい初めてのことでもないだろ」
結衣「そうだけどさ。……ねぇ、初めて手を握った時のこと、ちゃんと覚えてる?」
八幡「ん、まぁ、一応。ディスティニーランドだろ?」
八幡(正直、犬耳パペットガハマさん、物凄く可愛かったです……)
結衣「もー、違うし!」
八幡「え?」
結衣「修学旅行の、えーっと……お化け屋敷!」
八幡「あぁ~、映画村のとこか」
結衣「そうそうそれそれ! あの時も、手を差し伸べてくれたのはヒッキーの方からだったんだよ?」
八幡「そ、そうか。そんな細かいとこまでよく覚えてんな」
結衣「うん。忘れられるわけないよ……」
八幡「…………」
結衣「あっ、林檎飴の屋台みっけ! おいしそ~」
八幡「ま、今回は小町のおつかいもないことだし、好きなとこ回ろうぜ」
結衣「うんっ!」
八幡「そろそろ花火も始まるだろうし、見易い場所に行くか」
結衣「そだね。どの辺にする?」
八幡「どこでも良いぞ。去年の反省を生かしてビニールシート持って来たしな」
結衣「わぁ、ありがとー」
八幡(これなら前回の様に有料エリアへ迷い込むこともないし、毎年来ているであろう陽乃さんとエンカウントせずに済むだろう)
八幡(いや、エンカウントというより固定シンボルの方がイメージとあうな。あの人ボスっぽいし……)
八幡「よし、この辺にするか」ヨイショ
結衣「うん」ストン
ヒュ~ バーン!
結衣「あ、丁度始まったね!」
八幡「お、そうだな」
結衣「きれ~……」
八幡「あぁ……」
結衣「…………」
八幡「…………」
結衣「ねぇ、来年もさ……、こうやって、一緒に花火見れるかな?」
八幡「……前にも言ったろ? 守れるかどうか分からない約束はしない。だから、来年になってみないことにはなんともな……」
結衣「…………」
八幡「ただ、その……、そうなったら良いなと、思わないこともないというか……」
結衣「ふふ。まったく、相変わらずなんだから」
八幡「……悪かったな。それに、そういうのを考えるのは受験が終わってからの方が良いだろ」
結衣「そだね。……あのさ、受験勉強とか、他にも色々頑張るから、だから───」
結衣「あたしが無事に合格したら、聞いてほしい話があるの」
八幡「……分かった。その時はもう、由比ヶ浜から絶対に逃げない。約束だ」
結衣「うん! 約束っ!」
八幡(こうして、俺の胸中に仄かな明かりを灯しながら、夏休みはあっという間に終わりを告げたのであった)
【⑩イメチェン?】
~勉強会~
八幡「ふぅ~……、なんとか理解できた。ありがとよ」
結衣「うんっ! あたしがヒッキーに勉強教えるパターンって今までほとんどなかったから、なんか嬉しいなー」
八幡「今まで教わってばっかだったもんな」
結衣「うっ……。それはあんまり言わないでほしいかも。結局成果出なかったし……」
八幡「そうか? 学内テストの成績とか、入試に近付くにつれどんどん良くなってきてたし、一応成果は出てただろ」
結衣「それはそうなんだけどさー、でもやっぱりヒッキーと同じ大学に入りたかったなぁ」
八幡「今になって思えば、この距離感が丁度良い気もするけどな。学校でまでベタベタされたら正直かなわん」
結衣「えぇ~。恋人同士一緒の大学って、なんか憧れない?」
八幡「学内でイチャついてる奴等とか、むしろ殺意が湧くレベルで気に食わないんだが」
八幡「あと同性同士であったとしても、妙にテンションアゲアゲの奴等も同罪な」
八幡「滅びろ」
結衣「そんなんだから大学で友達できないんじゃ……」
八幡「いいんだよ。周りに頼らなくともなんとかなるよう自分がしっかりしていれば、それで問題はない」
結衣「でもでも、せっかくのキャンパスライフだよ? もっと満喫しようよ!」
八幡「満喫っつってもなぁ」
結衣「そうだ! 大学生らしくイメチェンとかしてみたら?」
八幡「例えば?」
結衣「えーっと……、髪染めてみる、とか……。でもヒッキーはこのままがいいし、う~ん……」
八幡「このままがいいならこのままでいいだろ」
結衣「そだね。イメチェンで凄くかっこよくなっちゃってモテだしても困るし」
八幡「おい、まるで今の俺がまるでモテないみたいな言い方やめろ」
結衣「え、ちがうの?」キョトン
八幡(悪意がない分とても傷つくんですが……)
八幡「俺だって由比ヶ浜以外から好意を向けられたことくらい───」
結衣「っ!??? え、ウソッ!? いつ誰にどこで!??」
八幡「あ、ヤベ。今のはなんつーか、ほら、見栄張っちゃっただけというか……」
結衣「ちょっとヒッキー誤魔化さないでよ!!」
八幡「誤魔化しとかじゃなくてほんとにアレは違うから……」
八幡(そう、去年のクリスマスに何か起きた気がするけどあれは気のせいだ。)
八幡(そういうことにしておくのが、俺と川なんとかさんの互いのためである)
八幡「そ、そんなことより、そっちこそイメチェンとかしてみないのか?」
結衣「してほしいの?」
八幡「別にしてほしいわけじゃないけど、そういうミーハーなことするの好きだろ?」
結衣「なんかムカツク……」
結衣「ヒッキーはどんな女の子が好み?」
八幡「おまえ」
結衣「…………」///
八幡「い、今のは無しで」///
八幡「見た目だけで言うなら、清楚系が好みかな」
結衣「ゆきのんみたいな?」
八幡「雪ノ下の場合綺麗すぎていかにも高根の花って感じがしちゃうけど、まぁ系統で言えばそんな感じだ」
結衣「むぅ~~~」
八幡「怒るくらいなら、最初からそんな質問するなよ……」
結衣「あたしも黒髪にしてみようかな……」
八幡「由比ヶ浜が黒髪だと、入試シーズン思い出すな」
結衣「あ、そっか。そういえばヒッキーは、黒髪のあたし見たことあったんじゃん」
八幡「忘れてたのかよ。たしか、黒髪ガハマさんはなんか地味だった気が……」
結衣「地味言うなぁ!!」
八幡(地味可愛い系も、それはそれで好きだけどな。口に出す気はないけど)
【過去篇其ノ六:聖夜に流れる滴は……。】
~高校三年時、12月下旬~
八幡(夏休みが終わると、様々なことが驚くほどのスピードで過ぎ去っていった)
八幡(例えば、一色に無理やり手伝わされた文化祭)
八幡(例えば、一色に無理やり手伝わされた体育祭)
八幡(例えば、一色に無理やり手伝わされた生徒会選挙)
八幡(等々、受験生は色々と忙しいのだ。……っておい、全部一色絡みじゃねえかふざけんな!)
八幡(文化祭と体育祭を通じて一色と仲良くなった小町を生徒会選挙で当選させるため、一緒に公約考えたり手回ししたりしたものだ)
八幡(そんなこんなで月日は過ぎ去り、今日から冬休みである)
~冬期講習~
沙希「あれ、あんた居たんだ」
八幡「そりゃあ冬期講習初日からサボるわけにもいかないだろ」
沙希「でもほら、今日って……」
八幡「今日がどうしたんだよ。普通の日だろ?」
沙希「街とか物凄く鬱陶しい感じになってんのに、よくそんなこと言えんね」
八幡(本日、12月24日。塾の外はクリスマスムード一色である。あ、“いっしき”じゃなくて“いっしょく”な)
八幡(さっきから一色一色言いすぎて、一色がゲシュタルト崩壊気味なんだが)
八幡「こんなもん、ぼっちの俺には関係ないことだ。リア充だけ勝手にはしゃいで勝手に爆発してりゃあ良いんだよ」
沙希「最近のあんたのどこがぼっちなのさ。まぁ、今日はまだイブだしね」
八幡「おう。明日は塾もないし、家で小町とクリスマスパーティーだ」
沙希「……由比ヶ浜はほっといていいわけ?」
八幡「っ!? な、なんでこそで由比ヶ浜の話が出てくんだよっ! あいつは何も関係ないだろ!!」
八幡「比企谷家ではなぁ、12月25日は家で小町と過ごすって決まってんだよ」
八幡(そう。それが本来のクリスマスの過ごし方であり、奉仕部でパーティーなんてやってた去年が例外中の例外なだけだ)
沙希「ふぅん。あんた等最近よくデートとかしてるみたいだったから、てっきり付き合い始めたのかと思ってたけど、……そういうわけでもないんだ」
八幡「いやあの、デートとかそういうアレじゃないし。たしかに最近部活終わりとかよく遊んでるけど、それはほら、受験勉強の息抜きに過ぎないというか……」
沙希「ま、別にどうでもいいけど」
八幡(つーかなんで、俺と由比ヶ浜が遊んでること知ってんだよ。他にも色んな奴等に見られていたりするのだろうか? 嫌だなぁ……)
沙希「んで、今日帰り暇?」
八幡「用事なんてあるわけないだろ。悪いか?」
沙希「じゃあさ、えっと……塾終わったらちょっと付き合ってよ」
八幡「……は?」
沙希「暇なら別に良いでしょ」
八幡「えぇ~……」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
八幡(冬期講習後、結局俺は断りきることができず、川崎に付き合わされていた)
八幡(日も傾き始め、街はイルミネーションの明かりで溢れ返っている。こんな中を女子と二人で歩くとか、超恥ずかしいんだけど……)
八幡(ま、荷物持ちさせられてるだけなんですけどね)
沙希「助かったよ。一人で持つのも無理ではないけど、ケーキが崩れると困るし」
八幡「家族全員分のケーキにチキンか。兄妹多いと大変だな」
沙希「ま、嫌じゃいけどね」
八幡「そうか。俺は小町以外の兄弟なんて要らないけどな」
沙希「このシスコン」
八幡「おまえに言われたかねぇよ」
八幡「おまえんち、この辺だっけか?」
沙希「うん。……その、けーちゃん……えっと、京華が比企谷に会いたがってたんだけど、ちょっとあがってく?」
八幡「いや、そういうのはちょっとな……」
八幡(こいつ急に何言ってんの? 聖夜に女子の家にお邪魔するなんて、そんなレベル高いこと俺にできるわけないだろ!)
沙希「じゃあここまでで良いんだけどさ、……少し話聞いてもらえる?」
八幡「今までも会話してたのに、改まってなんだよ」
沙希「…………」ゴクリ…
沙希「あのさ、あんた前に私のこと、『俺には必要なんだよ』って言ってくれたよね」
八幡「……はい?」
沙希「あと、あ……、『愛してるぜ川崎!』って言われたこともあったんだけど、それも覚えてないの?」
八幡「いや、覚えてないというか、あれは……」
八幡(こいつ、急に何言い出すんだっ!?)
沙希「はぁ……。やっぱり全部冗談だったわけ? まぁ、分かってたけど……」
八幡「…………あのな、川崎、その……」
沙希「あんたが気にすることじゃないけどね。私が勝手に勘違いして、勝手に舞い上がって、そんで」
沙希「……勝手に傷つくだけだから」
八幡(俺は鈍感係主人公でも難聴系主人公でもない。むしろ敏感で、過敏で、過剰に反応してしまう方だ)
八幡(だからこそ、川崎の言わんとしていることはよく分かる。目を背け、耳を逸らしたいのに、分かってしまう)
八幡(異性に話しかけられ、ちょっとした言葉に心を躍らせ、すぐに期待してしまう……。過去の俺が通った道と、まったく同じだ)
八幡「本当に、申し訳なかった……」
沙希「っ! ……別に、謝らなくてもいいよ。言われて嫌だったわけじゃないし。ただ、それでも私はあんたのことが……」
八幡「悪い、言わないでくれ」
沙希「…………」
八幡「……俺は、川崎の気持ちに応えることはできない」
八幡(期待されるのも善人扱いされるのも嫌いだが、善意や好意を向けられること自体が嫌なわけではない。ただ、苦手で、つい逃げてしまうだけだ)
八幡(こいつは、最近の俺と由比ヶ浜の関係に気付いておいて、尚踏み出してきた。踏み出してきてくれた)
八幡(たとえ受け入れることはできなくても、その気持ちを否定しはいけないように思う)
八幡(なら、俺に出来るせめてものことは……)
八幡「俺な、その…………、好きな人が居るんだ」
八幡(いつからだろう。こんな気持ちになったのは)
八幡(花火大会で手をつないだ時だろうか。一緒の傘で帰ったあの日だろうか。それとも、もっと前からかもしれない)
八幡(あいつ自信と向き合うには、もう少しだけ時間がかかるだろう。でも、それでもあいつは許してくれている。少しくらいならその優しさに甘えても良いのだと、そう思えるようにもなった)
八幡(だが、川崎には、今素直に打ち明けよう。きっと、そうしなければならない)
八幡「俺は……、俺はっ! 由比ヶ浜のことが───」
沙希「馬鹿じゃないの?」
沙希「何ムキになってんのさ。こんなの、冗談に決まってるでしょ」
…………は?
…………………はぁ!?
八幡「いや……、おまっ……」
沙希「愛してるだのなんだの、心にもない事を散々言われたお返し。ちょっとからかってみただけ。文句言われる筋合いはないと思うけど?」
八幡「…………」
沙希「荷物、ありがとう。……そんじゃサヨナラ」
八幡(そう言う川崎の声は震えていて、微かに頬から流れる何かが視界に映る)
八幡(そして、去り際に冗談めかして放たれた最後の一言が、俺の胸の奥まで入り込み、鼓膜から離れてくれないのであった)
「………愛してるよ、八幡」
───こうして、比企谷八幡と川崎沙希の物語は、始まることもなく終焉を迎えた。
【⑪街でエンカウント】
八幡(テストも終わり、ようやく夏休み開始である。休み最高!!)
八幡(休日の俺とはいえ、由比ヶ浜に振り回されずともたまには己の意志で外出するのだ)
八幡(まぁ、本屋に行きたいだけなんですけどね)
??「あーっ!!!」
八幡「げっ……」
一色「先輩っ!? 先輩ですか? 先輩ですよねー!!」
八幡「……人違い人違い。他人の空似だ」シッシッ
一色「そんな嫌そうにしないで下さいよー。お久しぶりです、せ~んぱいっ☆」
八幡「そんなに久し振りか? たしかおまえ、先月あたりうちに来てただろ」
一色「その時は先輩全然相手してくれなかったじゃないですかぁ~」
八幡「お前等生徒会コンビは苦手なんだよ。小町のうざかわいさと一色のうざうざさが掛け合わさって、うざ度がヤバイことになる」
一色「うざかわいさはともかく、うざうざさって何ですかねぇ……」
一色「てゆーか、卒業する時に『小町のこと、よろしく頼む(キリッ!』とか言ってたのはどこのどなたでしたっけ?」ニヤニヤ
八幡「うぐっ……」
一色「それに、1つのうざいと2つのうざいを掛けたところで、1×2=2のままですよ? 相変わらず数学の出来は最悪なんですねー」
八幡「うっせ。大学では数学なんて取ってないからどうでもいい。2度と数学とお近づきになるつもりはない!」
一色「せんぱーい、結衣先輩と付き合い始めてから冷たくありません?」
八幡「そうか? 俺は元からこんなもんだろ」
一色「んー。言動は確かに高校時代のままなんですけどぉ、なんていうか……」
一色「わたしのあしらい方に愛が感じられませんっ!!」
八幡(は? こいつ何言ってんの? 元々愛なんてねえよ!!)
一色「偶然とはいえせっかく会えたわけですし、超絶プリティな後輩に冷たく接した罰として、今日は1日中買い物に付き合ってもらいますからね!」
八幡「え、やだよ」
一色「ダーメーでーすー! さ、行きますよー」グイグイ
八幡(あぁ……。やっぱり休日に外出なんてするんじゃなかった……)
はい。
いったん終了です!
数時間後に再開すると思います
乙
クソおもろいけど修羅場がほしい
はようはよう
おつおつ
仕方が無いけど、さきさきが不遇過ぎて辛い
>>93
ありがとー!
>>94
ありがとうございます。
修羅場展開は書いたことないんだよなぁ~ 俺修羅とか好きだけどww
修羅場はともかく、本編はただのイチャコラ・話に緩急をつけるために過去篇でシリアス、みたいな感じでやっています。
>>95
メフィスト降臨が気になるからすぐに更新は無理っす!!
八幡は艦コレやスクフェスやアイマスなのに対して、(原作だとガラケーだけど、流石に大学生になる頃にはスマフォになってると仮定して)ガハマはパズドラやモンストやってそうなイメージ。
ちなみに中の人(東山さん)はLINEのツムツムが好きらしい。
>>96
自分もサキサキの扱いには悩んだ。
ハーレム物にする気は更々ないけど、サキサキはゆきのんやいろはすと違って明確に好意がある感じだし、無視するわけにはいかないなーと思った結果こうなりました。
川崎ファンの皆様ごめんなさい。
【⑫浮気はギルティなんだからねっ!】
結衣「夏休みに入って会いやすくなったのは良いけど、暇だね~」
八幡「だな。暇なのは非常に素晴らしいことだ」
結衣「むぅ……」
結衣(どっか遊び行きたかったのに……)
八幡「…………」ダラダラ
結衣「…………」ゴロゴロ
八幡「…………」ウトウト…
結衣「ちょ、寝るなし!」
八幡「どうせノンビリしてるだけなんだし、昼寝くらいしてもいいだろ?」
結衣「じゃあノンビリするのやめて、どっか遊びに行こうよ!」
八幡「……眠いから嫌だ」
結衣「じゃあ目が覚める話でもしてあげよっか?」
八幡(夏にする目の覚める話といえば、やっぱり怪談か? そういうの苦手なくせに、一体どんな話をするつもりなんだ?)
八幡「面白そうじゃないか。それで本当に目が覚めたら、遊びに出かけてやらんこともない」
結衣「なんか偉そうでウザい……」
八幡「まあまあ。んで、何なんだ?」
結衣「ヒッキー、この前いろはちゃんとデートしたでしょ?」
八幡「ッ!???」ビクゥ!!
結衣「ちょ、ビビリすぎだし! そんなやましいことしてたのっ!?」
八幡「待て待て待て! あれはなんというか、その、偶然バッタリ出くわしてしまいそのまま振り回されていただけであって、デートとかそういうアレなわけじゃない! 断じて違うぞ!!」アタフタ!
結衣「…………」ジトー…
八幡「うっ……。す、すみませんでした……」
結衣「あはは。別にマジで怒ってるわけじゃないけどね。どんな感じだったのかは、小町ちゃんから大体聞いてるし」
八幡(なるほど。“一色→小町→由比ヶ浜”という情報の流れか)
八幡(こいつら全員学年違うのに、女子コミュニティーにおける噂の広がり具合が怖い……)
結衣「んで、目は覚めた?」
八幡「あ、そういえばそれが狙いだったな……。覚めた覚めた。超覚めた」
結衣「良かった。いろはちゃんの買い物に付き合ってあげたんだから、あたしにも当然付き合ってくれるよね?」ニコッ!
八幡「……わーったよ」
結衣「ふふふ」
八幡(あれ? こいつの思い通りに誘導されただけじゃね?)
八幡(尻に敷かれる未来しか見えない……)
あ
いつのまにやら100超えたぜ!
【過去篇其ノ七:想いは甘い味がする。】
~大学三年時、2月中旬~
八幡(センター試験、そして大学本校で行われた入試や面接も、無事終了した)
八幡(俺はセンターの時点である程度余裕があったし、普通に合格していることだろう)
八幡(多分。きっと。恐らく。……ヤバイ不安になってきた)
八幡(それはともかく、問題は由比ヶ浜だ)
八幡(由比ヶ浜と一緒にセンター試験を採点していた雪ノ下曰く、何とも言えない結果だったらしい)
八幡(まぁ、夏休み前の由比ヶ浜では絶対にダメであっただろうに、まだ可能性の残る結果を叩き出せたあたり流石の努力といえよう)
八幡「小町ー。朝飯くれ~」
小町「あれ? 3年ってもう、卒業式の練習くらいでしか学校ないんじゃなかったの?」
八幡「まあな。でも今日はちょっと用事が……」
小町「用事? あ、ふ~ん。なるほどなるほどー」ニヤニヤ
八幡「……何だよ」
小町「いんや、なんでもないよー。ま、頑張って☆」
八幡「うぜぇ……」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~奉仕部部室~
コンコン! ガラガラガラ……
八幡(俺が部室にて読書をしながらノンビリ時間をつぶしていると、おっかなびっくりといった様子で、ゆっくりと扉が開かれる)
八幡(その先から現れたのは、頬を少し赤く染め、肩くらいまでの黒髪を後ろで束ねた、少し童顔気味であるものの出るとこ出ている美少女であった)
??「や、やっはろー……」
八幡「え……。誰?」
??「はぁぁぁ!? あたしが呼び出したんだからあたしに決まってるでしょ!」
八幡「あたしあたし詐欺とか結構なんで……」
??「えっ、ホントに誰か分かってないの? 冗談だよねっ!?」
八幡「おまえのことが分からないわけないだろ? とりあえず、茶髪のまま入試を受ける程馬鹿じゃなかったようで安心した」
結衣「あたしのこと分からないわけないとか、そんな……/// じゃ、じゃなくって! いくらなんでもその反応は酷すぎだしっ!!」
八幡「はいはい、悪かったって。ちょっとからかってみただけだ」
結衣「まったくもう」プンスカ!
結衣「あ、あんまジロジロ見ないでよ……。どうせ似合ってないとか言いたいんでしょ?」
八幡「あー、その……、なんだ。中々可愛いと思うぞ? 結構黒髪女子って好きだし」
結衣「ふ~ん。なんか、黒髪好きって言われるのは複雑なんだけど……」ボソボソ…
八幡「……あ、もちろん普段の茶髪も嫌なわけではないというか、由比ヶ浜らしくてそれはそれで良いと思ってるというか……」
結衣「ふふっ。ありがと」
八幡「……あんま恥ずかしいこと言わせんなよ」
八幡「んで、扉の前でずっと突っ立ってないで、さっさと渡すもん渡したらどうだ?」
結衣「な、なんのことかなー?」アハハー…
八幡「いや、さっきから体の後ろに何か隠してるのバレバレだから……」
八幡「つぅか、わざわざ2月14日に女子から呼び出されておいて何もありませんでしたーとか、どんな罰ゲームだよそれ」
結衣「たははー……。やっぱりバレバレだよね……」
八幡(バレバレバレンタインとか、なんか語呂良いな)
結衣「ど、どうぞ」
八幡「お、おう。……ありがとう」
八幡「早速食べてみていいか?」
結衣「うん。あのね、ゆきのんに助けてもらいながら凄い頑張ったし、今回はちゃんと味見もしたから、多分大丈夫だと思うんだけど……」
結衣「駄目だったら正直に言ってね?」
八幡「ん……」モグモグ
結衣「……どう、かな?」
八幡「…………」
結衣「うっ……。なんか無言で怖いんだけど」
八幡「あ、悪い。普通に美味くて驚いただけだ」
結衣「ほんとっ!?」
八幡「あぁ。これ、トリュフってやつか?」
結衣「うん。なんかね、最初はもっとこうドドーンって感じの作ってみたかったんだけど、ゆきのんが手作りするならこれにしときなさいって」
八幡(単に溶かして型に流し込み固めただけのやつよりは凝っている様に見え、尚且つ誰が付くっても失敗しなさそうなチョイスをするあたり流石だな)
八幡(いや、由比ヶ浜のやつ、たしか弱火を維持することすらまともにできてなかったからな……。湯煎の時点で超苦労してそう。主に雪ノ下が)
>>103
高校三年生だよねー
八幡「そこまで大それたもんじゃなくても、貰えただけで、なんつーか……、すげぇ嬉しい。それに、十分美味いしな」
結衣「そっか、えへへ。良かった~……」
八幡「そういえば、入試、出来はどうだったんだ?」
結衣「えっと……、緊張しまくりで、何て回答したのかもあんま覚えてないっていうか……」
八幡「それじゃあ答え合わせのしようもないじゃねぇか」
結衣「うぅ……」
八幡「そんな落ち込むなよ。今更クヨクヨしても仕方ないだろ? 後は結果を待つだけだ」
結衣「うん……」シュン…
八幡「………せっかくだし、ちょっとどっかで遊んでくか?」
結衣「いいのっ?」
八幡「おう」
結衣「ヒッキーの方から誘ってくれるなんて超珍しいねっ!」ニコニコ
八幡「……ま、たまにはな」
八幡(入試について、今更慌てたところでどうしようもない)
八幡(それに由比ヶ浜なら、きっと、いや、絶対に大丈夫なはずだ……)
バレバレバンタインとかマジ鈍感すぎなロミオさんwwwwwwwwwwwwwwww
【⑬八月八日】
結衣&小町「「お誕生日、オメデトー!!」」つケーキ
八幡「お、おう。ありがとう」
八幡「……で、このケーキ、2人で作ったのか?」
小町「うん、そだよ~」
八幡「おい小町、ちゃんと由比ヶ浜の監督を怠らなかっただろうな? 卵のカラ入りケーキとか食いたくないんだが……」
結衣「せっかく頑張ったのにヒッキー酷過ぎ! もうそんなミスしないしっ!!」
小町「ま、とりあえず食べてみてよ」
八幡「……いただきます」ゴクリ…
八幡「…………」モグモグ
八幡「………………」パクパク
八幡「……………………」ムシャムシャ
結衣「どう……かな?」
八幡「結構料理の練習でもしてたのか? 普通に美味いぞ」
結衣「ほ、ほんと!? 良かったぁ~……」
八幡「小町が1人で作った場合のケーキを100点とすると、これは80点くらいの美味
さだな」
結衣「なんか複雑な言い方されたっ!」
小町「結衣さんの愛情補正を入れて採点したらどうなるのかな?」
八幡「……秘密」プイッ
小町「もぅ! 相変わらずヘタレなごみぃちゃんだなぁ!!」ヤレヤレ
八幡(あぁぁぁ……。恥ずかしい恥ずかしい嬉しい恥ずかしい嬉しい嬉しい……)
>>107
あぁぁぁぁぁぁああああああああ
ヤベーミスったorz ありがとうございます
>>103
『~大学三年時、2月中旬~』⇒『~高校三年時、2月中旬~』
話の流れで分かると思うけど、皆様脳内変換よろしくお願いいたします。
すみませんでした。
よしっ。
読んでてややっこしくなってしまいそうな誤字はあったものの(マジでごめん)、
とりあえず目標通り、8月8日中に誕生日の話題まで辿りつけました!!
目標達成したことだし、今日はここまでです。
何か要望なり感想なりあったら、書いてもらえると1的にポイント高いよ!
結衣といろはと小町に弄られる八幡が見たい
イチャイチャ
>>109
気づいてもらえて嬉しいwww
ちなみに、
【過去篇其ノ四:想いは雨の様に降り注ぎ、鳴りやまない。】 とか
【過去篇其ノ五:人ごみに紛れないように握ってくれた手が、胸の奥までつかんで離さない。】
のタイトルも、それぞれ『想いはRain Rain 』と『夏色サプライズ』の歌詞を参考にしてたりする。
まぁそんな感じで気づく人にだけ気づいてもらえれば良いや~って感じの小ネタは入ってても、
その辺のネタが直接的に話に絡む心配はないのでご安心を!
>>114
なるほど、その展開は面白そうですね!
でも今書き貯めてある分にそういう話はないので、書けそうだったら挑戦してみます。
無理だったらスマソ
>>116
八結イチャイチャは見てても書いてても楽しい!!
おつ
ガハマさん可愛い
乙
ルミルミも出してくれてもいいのよ?
乙
あーしさんとかが由比ヶ浜と卒業後どうなったのかとかちょっと気になるかも
俺もメフィスト取ってきたけどいつも通り一生倉庫番だわ
大学の普通受験で面接あるのって医学部だけじゃないの
AOとか推薦は学部に関わらずあるんだろうけど
千葉村制圧!いっくよー☆
>>121
看護もあるし、外語でもあるところはある
>>118
ありがと~
>>119
ルミルミも、この世界だともう中学二年生か!
JCルミルミの話も書けたら書いてみたいなぁ~。
しかしどう無理矢理エンカウントさせるかが問題。
一応私の中では、高3の時の文化祭に中1ルミルミが来たことになっています。
文化祭の話は本編に関係ないし、バッサリカットしちゃったけどww
>>120
今でも結衣は、あーしさんや海老名さんと仲良いと思いますよ!
葉山グループの関係性については、過去篇の卒業式の後の話でちょっとだけ触れる機会があるかな?
>>121 >>123
私は指定校推薦で面接しか受けていないので、ぶっちゃけ普通の大学入試はよく知りませんごめんなさいm(__)m
私も私立文系(法学部)ですけど、千葉の私立文系の場合どうなるんでしょうね。
>>122
語呂イイネ!
それじゃあ……
投下開始! いっくよー☆
【⑭デートのお誘い】
八幡「なぁ、どっか行きたいとことかあるか?」
結衣「へ? え、どっかに行きたいって言ったら連れてってくれるの!?」
八幡「そこまで驚かれると、普段の俺が滅茶苦茶付き合い悪いやつみたいじゃねぇかよ。なんだかんだ言いつつ結構遊びに出かけてんだろ」
結衣「それはそうなんだけど、ヒッキーの方から誘ってくれることなんて滅多にないから驚いちゃうのは仕方ないっていうか……」
結衣「あ、もちろんすっごく嬉しいんだけどね!」
結衣「あ、どこに行くにしろ、日程はお盆以外にしてくれるとありがたいかも」
八幡「家族旅行にでも行く予定なのか?」
結衣「ううん。そうじゃなくて、お盆にはゆきのんが帰省してくるんだって」
結衣「だからお盆はゆきのんと遊びつくしたいなぁ~、みたいな? もちろんヒッキーも巻き込む予定だけど、デートでどっか行くのはまた別枠ってことで!」
八幡「おい。雪ノ下がこっちに戻ってくることも俺が巻き込まれるであろうことも全て初耳なんだけど」
結衣「小町ちゃんは知ってると思うんだけど……」
八幡(俺一人だけ聞かされてないっていうこのパターン、一体何回目だよ……)
八幡「ま、ケーキの礼もあるしな。ちょっとくらいなら頑張ってみるか」
結衣「えぇー。お礼で嫌々付き合ってくれるだけなの?」
八幡「いや、その……」
八幡「嬉しそうにしている由比ヶ浜を見るのは、結構楽しいです……」ボソボソ…
結衣「ふ~ん、そうなんだ……」ニマニマ
【過去篇其ノ八:はたして、大学受験の結果や如何に。】
~高校三年時、2月下旬~
八幡(ついに、合格発表の日がやってきた)
八幡(12時になればPCやケータイで合否を確認できるってんだから、便利な時代になったもんだよな)
八幡(そういうわけで、休日にも関わらず、奉仕部4人は部室に集まっていた)
小町「雪乃さんの合格発表は明日でしたっけ?」
雪乃「えぇ。しかし間違いなく合格している自信があるから、わざわざ集まってもらわなくても大丈夫よ」
結衣「流石ゆきのん凄い自信……」ソワソワ
雪乃「それに私が受けた大学からは、結果が封書で届くことになっているのよ」
小町「なるほどなるほどー」
小町「あ。そういえば、雪乃さんの志望校をまだ聞いてなかったような……」
雪乃「……秘密よ」
八幡(ま、多分陽乃さんと同じ、地元の国立理工系の大学に行くんだろうな)
小町「お、そろそろ12時になりそうですね」
結衣「うぅ~……」ガクブル
八幡(あと10秒……5秒、3、2、1)
八幡(雪ノ下は由比ヶ浜の、小町は俺のケータイを除き込み、固唾を呑んで見守る)
八幡(回線が込み合い、中々開くことのできない合否発表ページを何度かリロードし、どうにか合格者の受験番号一覧を見ることができるようになる)
八幡「…………」ゴクリ…
小町「固まってないで早く番号探してよっ」
八幡「……わかってるよ」
八幡(目当ての番号目指して、スマフォの画面を下へ下へとスクロールしていく)
八幡「ない……ない……ない……」
八幡「……おっ!」
小町「あっ! 今のお兄ちゃんの番号じゃなかった!? ちょっ、下に行きすぎだって戻って戻って!」
八幡(自分の番号はチラリとしか見えていないが、小町にも見えたと言うのだから見間違いや錯覚ということはないだろう)
八幡(俺は小町の言葉を無視して、どんどんスクロールを続ける……)
八幡「頼む……頼む……あってくれ……」
小町「お兄ちゃん……」
雪乃「…………」
結衣「………………」スッ…
八幡(突如、由比ヶ浜が静かに立ち上がり、こう告げる)
結衣「あ、あはは……。なんか、ね、あたしの番号……ないみたい…………」
八幡(そんな……、嘘だ)
八幡(由比ヶ浜結衣は、努力をし、それを結果に結び付けることのできる人間だ)
八幡(そのことは、ここ半年間勉強を教えてきた、俺と雪ノ下が一番分かっていることじゃないか)
八幡(だから、ギリギリだろうがなんだろうが、どれだけ危なっかしくても由比ヶ浜ならなんとかなる。そうに決まっている……)
八幡「……も、もう一回、ちゃんと確認してみろよ。もしかしたら自分の番号を見落としただけって可能性も……」
雪乃「……非常に残念だけれど、その可能性はゼロに等しいわ。私も一緒に確認していたのだし、それに……」
八幡「…………」
雪乃「比企谷君、あなたもずっと、由比ヶ浜さんの番号を探していたのでしょう?」
八幡「………………」ギリリッ…
結衣「あー……、えっと……。ヒッキーも、ゆきのんも、今まであたしのために、頑張ってくれてたのに……、なんていうか、ほんと……、ごめん…なさい……」
八幡(どうにか最後まで言葉を言いきった由比ヶ浜が、その場に泣き崩れる。俺はそんな光景を、とてもじゃないが観ていられなかった)
八幡「雪ノ下、後は頼む」
雪乃「……えぇ」
八幡「さ、小町。俺等は帰るぞ」
小町「えっ……」
スタスタ スタスタ
小町「ちょっとお兄ちゃん!」
八幡「…………」
小町「お兄ちゃんってばっ!!」グッ!
八幡「……何だよ?」ピタッ
小町「何だよじゃないよ……。結衣さんのこと、ほっといていいの?」
八幡「別にほっといたわけじゃないだろ。雪ノ下だっているんだし。むしろ俺達が居ない方が、あいつも泣きやすいんじゃねぇの?」
小町「そうかも……しれないけど……」
小町「あのね……。もちろん結衣さんのことも心配だけど、小町が一番気にかけてるのはお兄ちゃんのことなんだよ?」
八幡「あ? 俺がどうしたってんだよ」
小町「そんな辛そうな顔してどうしたもこうしたもないでしょ!」
八幡「馬鹿言え。自分は合格してたんだぞ? 超嬉しいに決まってんだろ」
八幡(つーか俺、誰にも祝われてなくね? 妹にすら祝ってもらえないとか何それ悲しい……)
小町「……結衣さんの第二志望校ってさ、たしか千葉県内だったよね」
八幡「あぁ、そうだな。普通に実家から通える範囲のとこだったと思うぞ」
小町「じゃあさ、大学が別々になっちゃっても、そんなの関係ないよね。大丈夫、だよね?」
八幡「何がどう大丈夫なのかは分からねぇけど、そういうのは……、なるようにしかならないだろ」
小町「…………」
────もし、この先も一緒に居られるなら、ヒッキーはそれで安心できる?
──────待っててね。今度は絶対逃がさないからっ!
────────ねぇ、来年もさ……、こうやって、一緒に花火見れるかな?
──────────あたしが無事に合格したら、聞いてほしい話があるの。
────俺もその内ちょっとくらいなら変わる可能性がある気がしないでもないような……、そんな気がするような……
──────その時はもう、由比ヶ浜から絶対に逃げない。約束だ。
────────俺な、その…………、好きな人が居るんだ。
──────────俺は……、俺はっ! 由比ヶ浜のことが───。
八幡(ふと、今までの出来事が蘇る)
八幡(俺は由比ヶ浜のことを特別視していたのだろう。それはもう、認めざるを得ない)
八幡(だが、聞いてほしい話があると言われたのも、俺がもう逃げないと約束したのも、全ては同じ大学で過ごせることを前提とした話だ)
八幡(別々の大学に通い、最初の内はなんとか関わりを保っていたとしても、徐々に疎遠になっていくくらいなら……)
八幡(……初めから、期待なんて持たない方がましだ)
あひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
更新きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
八幡「悪い、小町。先に帰っててくれないか?」
小町「なんで」
八幡「ほら……、職員室に合格の報告をしに行かなきゃなんないから。妹同伴で職員室ってのもなんか変だろ?」
小町「なら、廊下で待ってる……」
八幡「……いいから帰れ。一人になりたい気分なんだよ」
小町「…………」
小町「……色々言いたいことはあるけど、今日のところは黙って言うこときいてあげる」
八幡「助かる」
小町「あっ、あと」
小町「お兄ちゃん。大学合格、おめでとう」
八幡「あぁ」
スタスタ スタスタ
小町「まったくもうっ! 一番辛いのは結衣さんのはずなのに、そんなにクヨクヨしててどーすんの? これだからごみいちゃんは……」ブツブツ…
八幡(ばっちり聞こえてるっつーの……)
八幡(小町が去り、寒々とした廊下に独り、立ち尽くす。外から僅かに聞こえてくる運動部の声も、どこか別の世界のことのように感じられる)
八幡(先程までグチャグチャだった頭が、冷気によって次第に冷めていく)
八幡(俺と由比ヶ浜の関係は、今までも何度か崩れかけた。それを修復してこれたのは、同じ学校・同じ部活で共に時間を過ごしてきたからこそだ)
八幡(冷静になって考えれば考えるほど、別々の大学になってまで、その関わりが続いてくれるとは到底思えなかった)
>>134
えっ、何そのテンション……。
ドンビキなんですけどぉー……。
嘘です! 楽しみにしてもらえていたみたいでめっちや嬉しいよ!!
【過去篇其ノ九:一色いろはは、本気の愛を謳う。】
~高校三年時、2月下旬~
一色「うぅ……、ぐすっ……」
八幡「…………」
一色「わたし……、わたし、本気で好きで……、どうせ見向きもされないことなんて分かってたけど、でも、諦めるなんて無理で……、それで……」
八幡「……そうか」
一色「こんな結末になることくらい、最初から分かってたはずなのに、辛くて辛くて堪らないです……。うぅ……」
八幡(自分の胸で泣いている後輩相手にかける慰めの言葉すら、俺には出てこないのか……)
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~数分前~
八幡(目と鼻の先に卒業式を控え、もう学校へ行くこがほぼ無い三年生にとって、本日は久々の登校日である)
八幡(今日はまだ、入試の合否発表からほんの数日しか経過していない。そのため、昼休みには由比ヶ浜が居るであろう部室にもなんとなく顔を出しづらく、一人で昼飯を食うことにしたのが運の尽きだったといえよう―――)
八幡「げっ、先客ありかよ……」ボソッ…
八幡(普段人が居ないはずのベストプライスには、なぜか今日に限って二つの人影が見える。反射的に隠れちまったじゃねぇか)
一色「来てくれてありがとうございます」
葉山「こんな人気のない所に呼び出して、急にどうしたんだ?」
一色「それはですねー、えっと……」
八幡(何やら神妙な雰囲気。とてもじゃないが、ここで飯を食い出すわけにもいかなそうだ。ここは戦術的撤退を試みるしか……)
葉山「いろは、俺はまた君を傷つけたくはない。だから――」
一色「嫌ですっ! ちゃんと、言わせて下さい……」
葉山「…………」
一色「わたし、葉山先輩のことが好きです。大好きです!」
八幡(うわぁ~……。この光景に出くわした瞬間、一色が何を言おうとしていたのか大体見当はつたけれど、ついつい盗み聞きしちゃったどうしよう……)
一色「好きになったきっかけは……、葉山先輩がかっこよくて、周りにチヤホヤされてるからでした。でも、今はもう違うんです。そんな見て呉れだけじゃなくて、葉山先輩だから好きなんです!」
一色「誰にでも優しくて、とっても良い人で、完璧で……。でも、その実色々悩んでて、悔やんでて、もがいてて、大事なものを守ろうといつも必死で……」
一色「そんな人間らしいところにもちゃんと気づいてます。その上でわたしは、葉山先輩の弱い部分も含めて……全てを好きになったんです!」
一色「だから、わたしと付き合って下さい」
葉山「そうか。そんなところまで見られていたのか……」
葉山「俺のことを、そこまで真剣に考えてくれる人が居るなんて本当に嬉しい。でも……」
葉山「いろはの気持ちに応えることはできない」
一色「どうしてですか……。なんでわたしじゃダメなんですか……」
葉山「…………」
一色「酷い言葉でも構いません。お願いします、諦められるだけの理由を下さい……」
葉山「他に好きな人が居る。……これじゃ駄目か?」
一色「そんなんじゃ全然……、これっぽっちも諦めきれませんっ!!」
葉山「……いろはのことは、とても素敵で可愛い後輩だと思ってる。けど、俺が異性として愛しているのは、昔からその人だけなんだ」
一色「わたしでは、代わりにすらなれませんか……?」
葉山「俺には誰かを代わりとして見ることなんて無理だ」
一色「じゃあ、これから先、他の人を好きになる可能性は……」
葉山「それは、一概には何とも言えないな」
葉山「でも、仮に他の誰かを好きになったとしても―――」
葉山「―――その相手は、いろはじゃない」
八幡(………………)
一色「っ……」
葉山「…………」
一色「そういう台詞は、そんな辛そうな顔して言わないで下さいよ……。わたしのために言ってくれてるの、バレバレじゃないですか……」
葉山「……すまない」
一色「最後の最後まで優しいんですね。……少しズルいです」
葉山「本当に、すまない……」
一色「――――」スゥ…
一色「あはは、やだなー。なんで葉山先輩が泣きそうになってるんですかー?」
一色「女性を振るのには慣れてるはずですよね。もしかして、わたしは結構特別だったりするんですかねー?」
一色「だったら凄く嬉しいです」ニコッ
葉山「いろは……」
一色「なんか柄にもなく真面目モードになっちゃってすみませんでした。さっきのは忘れちゃってくれて構いませんよー」
葉山「…………」
一色「今まで、本当にありがとうございました。それでは―――」
一色「―――さようなら」
ダダダッ!
八幡(や、やべっ、こっち来る……)
八幡「うわっ」
一色「キャッ!」
一色「いてて……。って、なんでこんなとこに居るんですか!? もしかしてストーカーですかやっぱり先輩ってわたしのこと好きなんですかごめんなさい今は絶対無理ですっ!!!」
八幡「おまえなぁ……。ここは普段俺が使ってる場所なんだよ。昼飯食いに来ただけだ」
一色「えーっと、もしかしなくてもさっきの聞いてましたよね……」
八幡「……悪い。すぐ引き返そうかと思ったんだけどな、その、なんというか……」
一色「言い訳なんて聞きたくありません」
八幡「……はい。弁解の余地もございません」
一色「仕方ないですね。心の超広いいろはちゃんが、今回に限り特別に許してあげます。だから……」
一色「だから……」ギュッ
一色「少しだけ……、ぐすっ……、こうさせて下さい……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
一色「…………」
八幡「少しは落ち着いたか?」
一色「……はい。ありがとうございます。せんぱいが居てくれて助かりました……」
八幡「俺は何もしてねぇよ……」
一色「……もしかして、こうなることが分かってて最後まで盗み聞きしてたんですかー?」
八幡「俺はそんなに優しい奴じゃない」
一色「優しいですよ。優しすぎます。傷心中の女の子に優しくするとか、下心見え見えすぎてぶっちゃけキモいです」
八幡「だったら、その、そろそろ離れてもらえませんかね?」
一色「嫌です……」ギュウッ!
八幡「はぁ……」
一色「わたし、葉山先輩の前では笑顔でいられましたかね?」
八幡「あぁ、おまえは凄いやつだ。一色は頑張った。よく頑張った」ナデナデ
一色「っ!?」///
一色「……随分とらしくない行動ですね。それもお兄ちゃんスキルってやつですかー?」
八幡「いや……。1年以上前の話なんだけどな、俺が辛かった時にされて、少しでも心が落ち着いたことを真似しているだけだ。……おまえが嫌ならすぐ止める」ヨシヨシ
一色「嫌じゃないです。続けて下さい」
八幡「はいよ」
一色「はぁ……。葉山先輩を好きになった時点で間違ってたのかなぁ……」
八幡「……振られたのは、一色が悪いわけじゃないと思うぞ。多分葉山側の問題だ」ナデナデ
一色「せんぱいも人のこと言えませんよねー」
八幡「一緒にすんな。葉山は俺と違って、ちゃんと周りを大切にできる人間だろ? そんなの、俺には不可能だ」
一色「そんなことないと思いますけどー……」
八幡「自分でも、特定の誰かと特別な関係になれるんじゃないかと、つい最近まで思ってたんだけどな……。でも、やっぱり無理なんだ」
一色「どういう意味ですかー?」
八幡(中学時代、俺は折本のことをあっさり好きじゃなくなった。高2の夏休み明け、俺はいとも容易く雪ノ下に失望した……)
八幡(変わらないことを信条としている俺は、あの頃から成長なんかしちゃいないんだ)
八幡「きっと、今回も勘違いなんだよ。相手の気持ちのことじゃない。自分自身の想いの話だ」
一色「?」
八幡「……なんでもない。気にするな」
一色「むぅ~。それよりさっきから手が止まってますー!」
八幡「はいはい」ナデナデ
八幡(俺と由比ヶ浜の関係は、きっとなんてことはない。ぼっちだった俺に、とても素敵な友人ができた。そんなハッピーエンドな物語。ただ、それだけのことだ)
八幡(だから……、)
─────やはり俺の青春ラブコメはまちがってなどいない。
今日はヒッキーのイラスト描くの頑張った日なので、文章書くのはこのあたりでおしまいにさせて下さい。。。
あれだ。
結局なんだかんだで八幡と結衣の関係上手くいくのが分かりきってるから、過去篇をどれだけシリアスにしようと問題ないよね?ww
まぁこっから先、シリアス展開はそんなにないと思うけど。
乙はよう
キムチでもいい?
>>146
最初にスレタイみたときはこれかと思った
>>145
はよう言われましても……。
今日はもう終了ですごめんね!
現在、ネタ提供のあった「結衣といろはと小町に弄られる八幡」の書き貯め中。
明日投下できたらいいな。
>>146 >>147
おいゴリラやめろwww
ぶっちゃけ原作の千棘はあんまり好きじゃなかったけど、アニメだと東山さん補正で幾分か雰囲気丸くなってて良かった。
でも小野寺さんとマリーとるりちゃんの方がもっと可愛いと思います!!!
なお、この話が終わる頃になってようやくスレタイ回収される模様。
>>148
もうすぐ日付かわりますよ。
>>149
その返しはズルイっ。
じゃあ>>148の「明日投下できたらいいな」を「明日中に投下できたらいいな」に変更ってことで!
◇◆このタイミングで唐突に過去作の宣伝◆◇
【俺ガイル】 八幡「例えば、あり得たかもしれないそんな世界」
【俺ガイル】 八幡「例えば、あり得たかもしれないそんな世界」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406964695/)
俺ガイルSSに飢えてる方は、これでも読んでくれると1的にポイント激高でっす!!
>>150
そんなのとっくの昔に読んだわい
むしろこのスレから来たよ
過去作タイトルどんどんあげてくれていいよよ?
>>1
pixivで同じはなしをみたんだが同じ人なのか?
>>151
お、マジか 嬉しいです!
>>152
ありがとうございます。
しかし過去作タイトルどんどん上げてくれていいと言われても、ここに投稿した過去作は>>150のやつだけです。
>>153
過去篇は某所に長々とうpしたやつの中から大事な話だけピックアップして再構成しているという発言を>>26でした通り、まぁ、そういうことです。
見て下さってありがとうございます!
大学入ってからの話はほぼ全て新規ですので、過去篇の内容を知っている方もお楽しみいただけると幸いです。
なんでこんなことやってるのかというと、前に書いた話をそのままここに貼りつけるだけじゃ芸がないし、こんな感じで未来の話も絡めながらリメイクしたいと思ったからです。
名前で呼び合おうとするけど、お互い恥ずかしい
みたいな話も読みたいです!
ダレカタスケテェ
コウシンマダナノォ
ヴェェェ
>>156がレスしてくれた時、私はバイトに勤しんでましたとさ
【⑮何をしているんですかねぇ……】
小町「……?」
小町(なんだかお兄ちゃんの部屋が騒がしいなぁ。何してるんだろ)
ガヤガヤ
「ちょっ! ヒッキーっ」
「ん?」
「えっと、もう少しやさしくしてほしいっていうか……」
小町(あ、小町の知らぬ間に結衣さん来てたんだ)
「んだよ。やろうっつったのは由比ヶ浜だろ?」
「それはそうだけど……。んっ、痛っ」
小町(んぅ???)
「さっきから体動かしすぎだから……」
「だって、勝手に動いちゃうんだから仕方ないじゃん……」
小町(いやいやいや。どうせ小町の勘違いなだけだから……)
「ちょっとヒッキー! さっきからイジワルなことばっかしないでよ」
「んなこと言われてもなぁ。俺だって本気出さないとマズイんだよ」
「そうなの?」
「あぁ。おまえ初めてにしては上手すぎだろ……」
「そ、そうかなー?」エヘヘー
小町(え、まさか、そんな……)
「ソレッ!!」
「あっ! 油断したそばからまたそんな……痛いって!」
「ほら、もっと頑張れって」
「無理無理無理! ちょっ! ヒッキーほんとやめ───」
小町(ちょっとちょっとちょっと!!)
小町(小町も居るっていうのに、真昼間から何やっちゃってんの!??)ガタガタッ!
「あれ? 今なんか音しなかった?」
「ん、そうか? 今日は親居ないし、小町も出かけてたと思うんだけど」
小町(少しコンビニまで行ってただけで、もうとっくに帰ってきてますってぇぇぇええ!!!)
小町(ってかヤバイ! 盗み聴きしてたのバレたっ!?)
「ヒッキー、一旦これ中断ね」
「おい、まだ最後までいってないのに中断とかやめろって!」
「もう! ダメったらダメ!!」
ガチャッ!
結衣「 」
小町「 」
小町「あ、これはその、えぇっと……」ワタワタ…
結衣「やっぱり小町ちゃんだったんだ~」ニコッ!
小町「ひぃぃいい!! 小町は何も見てません何も聞いてませんだからそのどうかお見逃しを───」
結衣「ほぇ? 何言ってるの?」
小町(でーすーよーねー)
小町(この状況で誤魔化せるわけないですよねーーー)
結衣「よかったら小町ちゃんも混ざる?」
小町「えっ……、本気、ですか?」
結衣「もちろん!」
結衣「あたしとヒッキーが付き合ってるからって、遠慮とか全然しなくっていいのに。小町ちゃんならいつでも大歓迎だよ!」
小町「そんなこと言われましても……」
八幡「おーい小町、おまえも一緒にやりたいならさっさと来いよ」
小町「お兄ちゃんはそれでいいのっ!?」
八幡「え、普通にいいけど。つうかさっきから何騒いでんの?」
八幡「ゲームくらい小町も混ざって良いに決まってんだろ」
小町「………………は? ゲーム……?」アングリ…
八幡「おう。むしろさっきまで何の話だと思ってたんだよ」
小町「いやぁ~、それは……あははー…………」
八幡「3DSでマリカやってただけなんだけど、おまえどんな勘違いしてたんだ?」
小町「あ、マリカね、ふぅ~ん……」
結衣「あたしテレビゲームの方は結構慣れてんだけどさぁ、DSや3DSのやつは今日が初めてで、さっきからやられまくりだよ~……」
八幡「由比ヶ浜のやつ、カーブする度に体まで左右に動くし、甲羅ぶつける度に痛い痛い騒ぎだすから見てて面白いぞ」
結衣「んなこと言われても仕方ないでしょ!」
結衣「小町ちゃん聞いて! ヒッキーね、赤甲羅とか取るとわざとあたしに追い抜かせてから狙い撃ちしてくるの!! 酷くない?」
八幡「酷くねぇよ。こんなの当然の戦術だ」
小町「さっきの会話はそういう意味だったのね……」ガクッ…
小町(あぁぁぁぁぁ………………)
小町(小町はなんという勘違いをしてしまったのでしょう……。恥ずかしすぎる……)
【⑯大☆乱☆闘】
ピカ! ピカッ! チュー!!
エイ! ヤッ! テヤッ!
チャァァァアアア~~~!!!
ヒュ~ン……
小町「あぁぁぁあああ~~~!!!」
一色「やったーーー!!!!! 勝ったーーーーー!!!」
1位:Kirby
2位:Pikachu
3位:Peach
4位:Mr.Game&Watch
小町「そんな……、小町とピカチュウのコンビが負けるなんて……」
小町「数年間くらい一緒に旅してきた気分でいたのに……」
八幡「なにその気分。意味分からん」
結衣「それにしてもいろはちゃん、スマブラ上手だね~」
一色「昔から男子と遊ぶ機会多かったんで、こういうの慣れてるんですよねー」
八幡「小さい頃から男遊びが趣味とか、どんだけビッチなんだよ……」
一色「そんな言い方やめてくださいよぉ! 最近は先輩以外の男の人と遊んでませんってー」
八幡「んなこと言われても、嬉しくもなんともないからな?」
八幡「つうかお前等、俺のこと集中的に狙いすんじゃねえよ。3対1で最初に俺を潰すのは卑怯すぎるだろ」
一色「わたしはなんとなぁ~く先輩を最初に潰しておこうと思っただけですよー? 別に、他2人と協力プレイしてたわけでもありませんし」
結衣「あたしはこの前のマリカの仕返ししようと思っただけだし!」
小町「小町もあん時のこと怒ってるんだからね!!」
八幡「なぜ小町に怒られにゃならん……」
一色「ま、弱い先輩が悪いってことで!」
八幡「いや、COM相手だと強いから。対人戦に慣れてないだけだから」
結衣「あっ……(察し」
一色「先輩って、子供の時から寂しい人生送ってたんですね……」
小町「ちっちゃい頃からずっと、ゲームの対戦相手は妹しか居なかったもんね……」
八幡「ゲームでもリアルでも、3人がかりで俺のHPを減らすのはやめろ」
八幡「いやもうほんとやめて下さい」
小町「それでは気を取り直しまして、罰ゲームタァ~イム!!」
小町&一色「「いえぇ~い!!!」」パチパチパチー!
八幡「は? 罰ゲーム?」
結衣「あたしも聞いてないんだけどっ」
小町「そりゃまぁ、たった今思いついたことですし」
一色「どんな罰ゲームがいいかな?」
小町「ん~~~。あ、会長! 良い案が思いつきました!」ハイッ!
一色「なんだね小町くん!」
小町「3位と4位が互いをファーストネームで呼び合う……なんてのは如何でありましょうか!!」
一色「素晴らしい! 採用っ!!」ビシッ!
八幡(何このとてつもなくウザイ小芝居……)
結衣「えっ! それって、あたしとヒッキーが名前で呼び合うってこと!?」
小町「はい! そういうことです!!」
一色「罰ゲームは絶対ですよ!」
八幡「やだよ。嫌に決まってんだろ」
結衣「嫌に決まってるんだっ!?」
八幡「あぁー、いや、そういう意味じゃなくて……」
小町「ほらほら。どうせお兄ちゃんは自分から急に呼び方変えたりできないんだから、良い機会だと思うよ?」
一色「結衣先輩も頑張ってくださいねー」
結衣「うぅ……」
結衣「……よし」
結衣「えっと…………、はち…ま……n…………」ボソボソ…
八幡「…………ゆ、い…………がはま」
一色「先輩アウトーーー!」
小町「このヘタレっ!!」
八幡「いや! 仕方ないだろ! こんなの無理だって!!」
八幡「それに由比ヶ浜の方だってちゃんと言えてなかったしお互い様じゃね?」
結衣「ご、ごめん……」
八幡「はぁ……。ちょっとこっち来い」
結衣「?」
八幡「まぁ、なんつうか、こういうのはさ……、外野が居ない時に、その内な」ヒソヒソ
結衣「う、うんっ」
小町「…………」ニヤニヤ
一色「…………」ニヤニヤ
八幡(こいつらマジでウゼェ!!!)
【過去篇其ノ十:勝負の行方は、平塚静のみぞ知る。】
~高校三年時、2月下旬~
一色「え~、皆様、本日はお集まりいただきありがとうございまーす!
一色「それじゃあ早速、卒業式の会場設営始めちゃいましょー!」
生徒会役員共「「「「おぉー!!!」」」」
結衣「お、おぉーっ!!」
八幡「お~……」
雪乃「…………」
一色「せんぱ~い、ダラダラしてないでとっととこれ運んじゃってください」
八幡「言われんでもさっきから動いてんだろ」バタバタ
小町「雪乃さーん、照明や音響の設定ってこんな感じで大丈夫ですか?」
雪乃「そうね、照明は問題ないと思うわ。しかしマイクの音はもう少々大きくしておかないと、一番後ろの人は聞こえにくくなってしまうのではないかしら」
一色「ん~……。じゃあマイクの音量テストするんで、結衣先輩、一番遠くに立っててもらえますかー?」
結衣「あ、うんっ!」マイク チェック ワンツー♪
小町「お兄ちゃん、イス並べるの雑すぎっ! そこんとこ曲がってんじゃん!」
八幡「え、どこ」
小町「ほらそこ! 後ろから5列目のー……」
八幡「はいはい。直してきますよ」
一色「雪ノ下先輩、送辞の言葉ってこんな感じでOKですかねー?」
雪乃「……流石に、それを3年に聞くのはどうかと思うのだけれど」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
雪乃「ふぅ、なんとか終わったわね」
結衣「疲れたーっ!」
八幡「なぁ……。なんで俺等、1・2年から顎で使われなきゃなんないわけ?」
雪乃「あなたが小町さんや一色さんからいいように使われているのは、いつものことじゃない」
八幡「おまえな、聞いてて悲しくなる様な現実をわざわざ突き付けてくんなよ」
雪乃「あら、自覚はあったのね」
結衣「いろはちゃんが会長らしかったっていうか、ちゃんと周りに指示出せるようになってたし、小町ちゃんも生徒会に馴染んでるみたいだったし、良いことなんじゃないかな?」
八幡「まぁ、そりゃそうだが……」
結衣「それにさ、最近全然体動かしてなかったから久し振りに良い運動になったっていうか、あたしは結構楽しかったよ?」ニコニコ
八幡「…………」ジー…
結衣「ん、どうかした?」
八幡「あー、いや、なんでもない」
八幡(まだ、合否発表のあの日からほんの数日しか経過していないのに、今日の由比ヶ浜は朝から元気なように思える)
八幡(第二志望校に無事合格していたからそれで安心したのか、単にメンタルが強いのか、はたまた別の理由か……)
平塚「奉仕部諸君、お疲れ様!」
雪乃「平塚先生もお疲れ様です」
八幡「最後の依頼が雑用ってどういうことなんすか……」
平塚「まあまあ、あまり細かいことを気にするな。そんなことより大切な話があってな」
結衣「?」
平塚「フッフッフ、気になるか?」
八幡(嫌な予感しかしない……)
平塚「さて、それでは──」
平塚「──チキチキ! 第一回・奉仕部バトルロワイヤル! 勝者は誰だッ!?」
結衣「奉仕部バトルロワイヤル?」
八幡「誰が一番人に奉仕できるか、人の悩みを解決できるかっていう、あの勝負のことですか?」
平塚「うむ。そうだ」
雪乃「勝負……」ピクリ…
八幡「俺はてっきり、その話はなかったことになってるのかと思ってたんですけどね」
平塚「そんなわけなかろう。ちゃんと勝者を決めてきたぞ!」
八幡「まぁそれは良いんですけど、“勝者は敗者になんでも命令できる”ってやつ、ちょっと適当すぎません?」
平塚「と、言うと?」
八幡「なんでもっつっても、当然ながら実現可能な範囲でですよね」
平塚「もちろんその通りだ」
八幡「ならついでに、“命令できるのは1回のみ、そして内容は持続性のないものに限る”、というルールも厳密に定めておきましょうよ」
結衣「持続性? どういうこと?」
雪乃「つまり、その人の今後の人生に関わって来るような、長期間に及ぶ命令は無しという……ということでしょう?」
八幡「おう」
雪乃「比企谷くんがまともなことを言うなんて少し意外なのだけれど、それが妥当なところね」
八幡(なんで一々ディスられなきゃならないのん?)
平塚「ふむ。君達がそれで良いのなら、そういうことで構わんよ」
平塚「しかし、比企谷も雪ノ下も少し弱気なんじゃないか?」
雪乃「……非常に癪なことながら、勝者は比企谷くんであると思っていますから」
平塚「なぜだね?」
雪乃「単純に、依頼を解決……とまではいかなくても、解消してきた件数が一番多いと思われるのが彼だからです」
平塚「ほう。雪ノ下の口からそんな言葉が出てくるとは」
八幡「俺はそうは思わないけどな」
雪乃「なぜかしら?」
八幡「さっきおまえが言ってた通り、俺は依頼を解消してきただけで解決していない」
八幡「文化祭やクリスマス会なんか、場を取りまとめ真っ当な方法で依頼を解決して来たのは雪ノ下だ」
結衣「うんうん」
八幡「それに、バラバラになりそうだった奉仕部を繋いできてくれたのは由比ヶ浜だ。由比ヶ浜が居なかったら、部活自体がなくなってたかもしれないしな……」
結衣「そ、そうかな? えへへ」
八幡「だから俺が勝てるなんて、最初っから考えちゃいねぇよ」
平塚「ふむ、なるほどな」
平塚「それでは満を持して、結果発表といこうか!!」
八幡・雪乃・結衣「…………」ゴクリ…
平塚「勝者は───」
平塚「───由比ヶ浜結衣、君だッ!!!」
結衣「えええぇぇぇっ!?」
雪乃「……なぜ彼女の勝ちなのか、解説をお願いできるでしょうか」
平塚「再確認しておくが、これはあくまでも『誰が一番人に奉仕できるか、人の悩みを解決できるか』という勝負だ」
平塚「だから、先程比企谷が言っていた様な理由で由比ヶ浜が勝者になることはあり得ない」
八幡「じゃあ、なんで……」
平塚「簡単なことさ。このゲームを始めた時、私の独断と偏見で裁定を下すと言ったろう?」
平塚「つまり、私が一番解決してほしかった依頼を解決したのが、由比ヶ浜だということだよ」
結衣「???」
平塚「数年前のことになるが、私がまだ若手……今でも十分若手だが! 今以上に若手だった頃にとある依頼があってな」
結衣「どんな依頼だったんですか?」
平塚「その質問に答える前に、奉仕部発足に至るまでの話をしておかないとならない」
八幡(考えてみれば、俺達が1年の頃の奉仕部部員は雪ノ下のみだったわけだ。それで部活が設立できたのはおかしな話である)
八幡(平塚先生の力で部を作ったにしても、なぜ作ろうと思ったのかが謎だ)
平塚「君達が入学してくる前から私は生活指導を担当していてな、多くの生徒の悩みを聞いたり、ほんの微力ながら困っている生徒の力になってきたつもりだ」
平塚「しかし、家庭の事情やら何やら色々抱えているであろうに、一切私に頼ってくれない生徒が1人居たのだよ」
平塚「その生徒が卒業間際、初めて私に相談…もとい、あるお願い事をしてきた」
平塚「普段から周りを利用こそすれ頼らないやつだったから、私を頼ってくれたことがとても嬉しくてな」
平塚「それが私にとって、一番解決したかった依頼。そして、由比ヶ浜が解決してくれた依頼だ」
結衣「えっと、今の話にあたし何の関係もなかったような……」
八幡「あと奉仕部発足の理由についても全然分からなったんですけど」
平塚「まぁそう焦るな。本題はここからだよ」
平塚「その生徒が卒業間際に言ってきたことというのが中々面白くてな」
『今度、「世界を人ごと変えたい」なんてことを本気で言う子が入学してくると思うんだけど、その考え方……というか生き方を、どうにかしてあげられないかな?』
『常に正しくて、とっても優しい良い子なんだけどね。けど世の中は優しくなくて正しくないからさ、小さい頃からずっと生き難そうにしてて……』
『あはは。私じゃ精々、上手く立ち回る見本になってあげるくらいのことしかできないよ。でも───』
平塚「私にならば、その子の生き方を変えてあげることができるだろうなんてぬかしてきやがる。とんだ無茶振りだ」
平塚「だが、だからこそ面白い」ニヤリ
雪乃「……その生徒というのは」
平塚「おっと。依頼人のプライバシーに関する質問には答えられない」
雪乃「…………」
平塚「そこから先は君達の知っている通りだ」
平塚「まだ1年生の雪ノ下に、『今度奉仕部という部活を作ろうと思うのだが、部長をやってみないか?』と話を持ちかける」
平塚「そして雪ノ下の元へ数人の依頼人を出向かせ、人と関わる中で何か変化が生まれるのではないかと期待したのだが……、正直無駄だった」
平塚「そしてその翌年、前々から目を付けていた生徒……つまり比企谷を奉仕部へ送り込んだ」
八幡「前々から目ぇ付けられてたのかよ……」
平塚「方向性は違えど、君達は『世の中と上手く折り合いをつけられない』という点において似ていたからな」
平塚「マイナスとマイナスを掛け合わせればプラスになるのではないかとも思ったが、これは由比ヶ浜が居てくれなければ逆効果だったかもしれないな」
結衣「ん?」
平塚「考えてみたまえ。仮に奉仕部が雪ノ下と比企谷の2人だけだったら、どうなっていたと思う?」
結衣「部室にずっと2人きり……。もしかしていかがわしい関係になっちゃったり……」アワアワ
八幡「ねーよ」
雪乃「有り得ないわね」
平塚「由比ヶ浜、私は今2人の性格の話をしているのだが……」
結衣「あ、あははー。そうですよね」
八幡「先生が言いたいのは、もし由比ヶ浜が居なければ、俺の捻くれ具合も雪ノ下の融通の利かなさも悪化してたかもしれないってことでしょう?」
平塚「そういうことだ」
雪乃「それはたしかに、認めざるを得ないかもしれませんね……」
平塚「最近の雪ノ下は、まだまだ棘はあるものの、依然と比べ格段に丸くなった」
雪乃「っ……」///
平塚「それはもちろん比企谷の力もあってこそだろうが……。誰も立ち入れなかった雪ノ下の心に最初に踏み込み、それを解してくれたのは紛れもなく君だよ、由比ヶ浜」
結衣「!」パァァァ!
平塚「そういうわけだ。私の判決に、まだ何か疑問があるかね?」
雪乃「いいえ」
平塚「その依頼人が誰なのか心当たりがあるならば、今度じっくり話し合ってみたまえ。今の君ならば、案外仲良くなれるかもしれないぞ?」
雪乃「仲良くなるのは無理だと思いますけど……」
雪乃「……分かりました。話合いくらいはしてみます」
平塚「よろしい」
結衣「それじゃあ……、あたしがゆきのんとヒッキーに命令できるんだよね?」
雪乃「そうなってしまうわね」
八幡「なるべく楽なやつにしてくれよ」
結衣「う~ん……、よし決めたっ! 卒業しても、皆ずっと仲良くすること!!」
八幡「おい、持続性のある命令は無しって決めたろ」
結衣「じゃあ、えっと、えぇっと……、願い事を増やす願い事みたいに命令の数を増やすのは……」
雪乃「それも当然無しね」
結衣「そんなぁ」
平塚「まだ明日も学校はあるんだ。そんなに急いで考えることもないさ」
結衣「はい。じっくり考えてみます!」
結衣「とりあえず、今日は疲れちゃったしどっかで食事でもして帰ろっか?」
雪乃「疲れたのなら早く帰って休もうと言う考えにはならないのかしら?」
八幡「別に食事くらい構わないぞ。何なら奢ってやろうか?」
結衣「ほんとっ!?」
八幡「あぁ。ただしそれで命令はチャラな」
結衣「そんなの絶対認めないしっ!!」
八幡「チッ……」
八幡(いつも通りな由比ヶ浜の様子を見ていると、この前泣き崩れていたのがまるで夢だったのではないかと思えてしまう)
八幡(どういう心境の変化かは分からないが、笑顔で居られるならそれは良いことなのだろう)
八幡(いや、良いことなのだと、そう思い込みたいんだ。あの日、第一志望校から落ちた際、由比ヶ浜が涙を流していた本当の理由から目を逸らすために……)
雪乃「放課後にこの面子で行動する機会ももうないでしょうし……。そうね、食事くらいなら」
結衣「ワーイ! ゆきのん大好き!!」ダキッ!
雪乃「あまりくっつかないで頂戴」
結衣「うん。じゃあ少しくっつく!」
雪乃「………」ハァ…
結衣「ほら、ヒッキーも早く行くよっ」
八幡「はいよ」
八幡(ま、考えたからと言って入試の結果が変わるわけでもない)
八幡(なら、今は残り僅かなこの時間を楽しむとするか……)
今回はここまででおしまーい
~今後の予定~
過去篇其ノ十一(いろはす回)
⑰未定(多分ガハマ回?)
過去篇其ノ十二(ゆきのん回)
⑱ゆきのん&はるのん回
過去篇其ノ十三(ガハマ回)
過去篇其ノ十四(ゆきのん回)
⑲奉仕部三人回
⑳奉仕部三人回
エピローグ(タイトル回収ガハマ回)
了
もうかなり終盤ですね。
もしかしたら過去篇其ノ十五がどっかに入るかもしれないけど、
大体こんな感じの流れになると思います。
⑰の未定のとこにルミルミ出してみようかなぁ~とか思ったけど、
難しそうでしたごめんなさい。
おつん
おつおつ
おつ
終盤?そんな馬鹿な
おつおつ
おつおつ
きょうは はいしゃさんに いってきました
おやしらずを ぬかれて とっても とっても つらいです まる
つうわけで、本日は更新する元気ないっす。すみません。
>>180 >>181 >>183 >>184
ありがと~!
>>182
あと数日でエピローグまで終わっちゃうと思うけど、
終わった後で没ネタとか投下したくなる可能性が微レ存。
親知らずは辛いらしいな
続き期待
俺の周りでも今日2人親知らず抜きに行ってたわ
もしかして…?
とりあえず続き期待
>>186 >>187
ありがとう。親知らず抜くの大変だよ。
自分の場合下2本の生え方がおかしくって、噛み合わせの問題で上2本も抜かなきゃならない感じ。
ちなみに昨日抜いたのが2本目だから、あと2本抜かにゃならないけど、がんばる!
そんじゃまぁ気を取り直しまして……
とりあえず軽めに投下スタート!
【過去篇其ノ十一:つつがなく、卒業式は取り行われる。】
~高校三年時、3月上旬、卒業式~
一色「卒業生の皆様、御卒業おめでとうございます」
一色「先輩方とのお別れがこんなにも早くくるなんて、信じられない気持と共に、寂しさが込み上げてきます」
八幡(ふむふむ。危なっかしかった入学式の挨拶とは打って変わって、今回はとてもハキハキとしている)
八幡(まさに生徒会長らしい堂々とした出で立ちだなぁ~、なんて思っていたのも束の間……)
一色「いつも助けて下さった先輩方への……ぐすっ…名残は尽きません……」
一色「うぅ……卒業生の皆様の……ますますのご健康とご活躍を心からお祈り申しあげ……えぐっ……送辞といたします」グスン…
八幡(そこはあざとく涙目になる程度で良かっただろ! なんでマジ泣きしちゃうんだよ!!)
八幡(ったく、俺はそういったお涙頂戴な青春劇は大嫌いなんだ)
八幡(だから今すぐ泣くのは止めてくれ。……俺まで泣きそうになってくる)ウルウル
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
一色「せ~んぱいっ」クイクイ
八幡「可愛らしく袖を掴むな。わざとらしすぎて逆にウザイ」
一色「ちょっ、その言い方は酷くありませんかー?」
八幡「いつものことだろ」
一色「それもそうですねー。こういうやり取りにもすっかり慣れちゃいました」
一色「でも……」
一色「こんな楽しい時間も、もう終わりなんですよね……」
八幡「あー、まぁ、なんだ。文化祭くらいには顔出しに来るさ」
一色「ほんとですかっ!?」
八幡「当たり前だろ? なんてったって、次の文化祭では小町が生徒会役員として頑張るわけだしな」
一色「……このシスコン」
八幡「あとおまえ、今日といいこの前といい泣きすぎ」
一色「っ!」
一色「この前のことは忘れて下さい恥ずかしいじゃないですかこんな目の腐った不審者みたいな人の胸で泣きじゃくった挙げ句慰めてもらったとかわたしの人生で最大の黒歴史確定なんですからほんと忘れて下さい忘れて下さい忘れて下さいッッッ!!」ポカポカ
八幡「お、落ち付けっ! そんな話を大声ですんな! それにあれは俺悪くないだろ!!」
一色「葉山先輩に何を言われても泣かないって覚悟してたのに、あんなに優しくするからいけないんですよ! 涙腺緩んじゃうに決まってるじゃないですか!」
八幡(理不尽すぎる……)
一色「あ、そうだ」
八幡「あん?」
一色「送辞の言葉、どうでした?」
八幡「後半泣いてた点を除けば、かなり良かったんじゃねーの?」
一色「もっとなんかこう……、『感動した!』とか『全俺が泣いた!』とかないんですかー?」
八幡「けっ、俺が一色の言葉くらいで泣くわけないだろ」
一色「むぅ~……」
一色「先輩のことを想いながら話してたのになぁー」
八幡「……ハァ?」
一色「だって、わたし的に一番先輩なのはあなたなんですよ」
八幡「わりとマジで意味がわからん」
八幡(一番先輩ってどういう日本語だよ……)
一色「わたしにとって葉山先輩は、ただの先輩後輩以上の間柄になりたい相手でした。……結局無理でしたけど」
一色「戸部先輩のこと、最初はその辺によく居る使い勝手の良い馬鹿な男くらいにしか思っていませんでしたけど、話せば話す程思ってた以上に凄く良い人で……。なんだかんだ言って結構好きです」
一色「結衣先輩は、先輩というよりもまるで友達みたいに接してきてくれて。わたしもああいう先輩になりたいです」
一色「雪ノ下先輩は、わたしもあれくらい色んなことができれば、もっと生徒会長らしくなれるのかなぁなんて……。ちょっと憧れちゃいます。まぁぶっちゃけ今でも少し怖いですけど」
一色「それで、先輩は……。わたしが困ってる時はいつも助けてくれて、わたしが悩んでる時はいつも背中を押してくれて、わたしが落ち込んでる時はいつも励ましてくれて……」
八幡「…………」
一色「捻くれてるくせにとっても優しくて、めんどくさがりのくせに凄く頼りになって……」
一色「普通の人とはかなりズレてますけど、わたしにとっては一番先輩らしい先輩でしたよ!」ニコッ!
一色「あははー。なんかこれ、言ってて照れますねー」
八幡「なら言わなきゃいいだろ」プイッ
一色「あ、せんぱい顔真っ赤ぁ~」
八幡「そっ、そんなことないぞ! てかとっとと仕事に戻れ。片付けとかやることあんだろ」
一色「ちぇ~」
一色「じゃあ最後に……」ブチッ!
八幡「ちょっ!? おまえ人の制服に何してんの!???」
一色「何って、ボタン引き千切っただけじゃないですかぁ~」
八幡「そういうことは葉山にやれよ!」
一色「葉山先輩相手にできるわけないじゃないですか! そんなことしたら周りの女子に刺されちゃいますよ!」
八幡「なるほど……」
一色「また、会いましょうね」
八幡「あぁ。奉仕部に新入部員が入ってくれるとも思えないし、きっと無くなっちまうだろうけど……、小町のこと、よろしく頼む」
一色「まかされました!」
一色「それでは、お元気で」
八幡「一色も頑張れよ」
一色「はいっ!!」
【⑰視線】
結衣「泳ぎたい!!」
八幡「は? 唐突に何だ?」
結衣「だって夏休みだよ夏休み! 海でもプールでもいいからさー、どっか泳ぎに行きたくない?」
八幡「行きたくない? って言われてもなぁ……」
八幡「夏休みとは暑さから身を守るためのものであり、本来的な意味に則って言えば外に出ちゃいけないんだぞ?」
結衣「またすぐそういうヘリクツ言う……」
八幡「大体どうしてこうリア充ってのは、暑い日にわざわざ外に出たがるんだ?」
結衣「暑いから水辺に行きたいんじゃん!!」
八幡「プールや海に行くよりも、クーラーの効いた室内にいる方がよっぽど涼しいだろ」
八幡「よって、涼しさを求めることを目的としてわざわざ水辺へ行く必要はない。証明終了」
結衣「うぅ~~~……。この前、誕生日ケーキのお礼にどっか連れてってくれるって言ったのに……」
八幡「安心しろ、その約束を忘れてるわけじゃないから。ただ、ほら、泳ぎに行くのはちょっと……」
結衣「そんなに嫌なの? もしかしてヒッキーってカナヅチ?」
八幡「違うから。ってかそもそも、プールとか海とかそういうのは恥ずかしいからナシなんじゃありませんでしたっけ?」
結衣「ほぇ? ……あ、それ2年も前の夏休みにした話でしょ!」
結衣「あの時とは2人の距離感とか関係性とか全然違うんだから、もう気にしなくっていいのっ!!」
八幡「いやいや、お前が気にしなくても俺が気にするから」
結衣「そんなに嫌ならもういいよ!」
結衣「優美子や姫菜とか、それが無理そうだったら大学の友達誘って行ってくるからっ!!」
八幡「…………」
結衣「……ヒッキー?」
八幡「……嫌だ」
結衣「えっ。ちょっ、どうしたの?」
八幡「別に誰と水辺に行ってこよが駄目とは言わないけどよ、お前の水着姿が不特定多数に見られると思うと、なんか……こう……」
八幡(やべぇぇぇ……。これ言っててスゲー恥ずかしいしなんか情けない……)
結衣「それ、駄目って言ってるのと変わらないじゃん」
八幡「嫌なもんは嫌なんだから仕方ないだろ……」
八幡「はぁ……。こんなん全て俺の我儘だ。おまえが気にする必要はない。……好きなだけ泳いできて構わないぞ」
結衣「結局、ヒッキーが一緒に行くって選択肢はないんだね」
八幡「それはないな。もし由比ヶ浜と一緒に海なんかに行ったりしたら、周囲の野郎共の目を潰したくなっちまう」
八幡「それに、俺より三浦の方がボディーガードの適性ありそうだし」
結衣「ふふ、なにそれ」
結衣「……まったくもう、しょうがないなぁ。いいよ、行かないから」
八幡「いや、だから勝手に行く分には構わないって」
結衣「でも本当は嫌なんでしょ?」
八幡「それは、そうだけど……」
結衣「ヒッキーってさ、変なとこで独占欲強いよね」
八幡「変ではないだろ。おまえはもうちょい……自分が水着姿になったらどういう視線を向けられるかとか、考えた方が良いぞ」
結衣「ふ~ん。心配してくれるのは嬉しいんだけどさ、ほんとにそういう視線気にしちゃっていいの?」
八幡「あ? そりゃ自己防衛意識は高いに越したことないだろ」
結衣「へぇ~。今までヒッキーがあたしの胸とか足とかチラチラ見てても気付いてないフリしててあげたのに、これからは気にしちゃっていいんだ?」
八幡「ちょちょちょちょっとまて! 俺が由比ヶ浜をチラチラ見てたとか、そんな証拠一体どこに───」
結衣「ふつーにバレバレだからっ!」
八幡「なん…だと…!?」
結衣「高校時代からずっとそんな感じだったのに、今までバレてないと思ってたの? 逆にそっちの方が驚きなんだけど」
八幡「…………もう止めて下さいお願い致しますこれ以上何か言われたら恥ずかしさと情けなさとみっともなさが限界に達して俺は死んでしまいます……………………」ブツブツ ブツブツ
結衣(顔真っ赤にしてうなだれてるヒッキー可愛いなぁ……)
結衣(ゆきのんがヒッキーからかって楽しんでた気持ち分かっちゃったかも。うふふふふ……)
八幡「……ッ!?」ゾクリッ!
八幡(変なフラグたったりしてないよね? 気のせいだよねっ!?)
なんかヒッキーが女々しくなっちゃったかな。
まぁキャラ崩壊って程でもないだろうしいいや。……いいよね?
一先ず終了です。
夜になったらまた更新するかも。
【過去篇其ノ十二:こうして、彼らの高校生活は終りを告げる。】
~高校三年時、3月上旬、卒業式後~
八幡(卒業式終了後、俺達3人はこの部屋に別れを告げるべく、奉仕部部室に集まっていた)
結衣「うわ~ん! ゆきのーーーん!!」ギュッ!
雪乃「あまりくっ付かないでほしいと何度言えば理解してもらえるのかしら」
雪乃「結局最後まで分かってもらえなかったようね……まぁいいわ」テレッ
結衣「お別れなんて嫌だよー!!」ウワーン
雪乃「大丈夫よ、永遠の別れというわけでもないわ。けれど……、これでこの部室も見納めね」
八幡(雪ノ下が物哀しげな眼をしていると、なんだかとても絵になるな)
八幡(俺と由比ヶ浜は二年間だったのに対し、雪ノ下は三年間、ずっとこの部室に居たわけだ。やはり人一倍感慨深くもあるのだろう)
雪乃「…………」
結衣「ん? どうかしたの?」
雪乃「いえ……、別に大したことではないのだけれど。ただ、そこの変質者に妙な視線を向けられている気がして」
八幡「ただ見てただけで変質者呼ばわりかよ」
雪乃「あら、それのどこがただ見ていただけなのかしら。『舐るような腐った視線で、美少女二人を視姦している』の間違いではなくて?」
八幡「おい、自分で美少女とか言っちゃうなよ。あと俺の目が腐ってんのは、いつも通りの通常運転だ」
雪乃「随分と温いツッコミね。その上『いつも通りの通常運転』だなんて、まるで『頭痛が痛い』や『馬から落馬』のような物言いをしないでもらえるかしら」
雪乃「それで国語学年3位だなんて聞いて呆れるわ」
八幡「せっかく自分で言ってて悲しくなるような自虐を含んだツッコミしたのに、それを完全論破しないでもらえませんかね……」
雪乃「フッ、そんなのだから、最後の最後まで3位止まりなのよ」ドヤァ
結衣「あはは……。二人とも相変わらずだね」
ウィーロッキュー コレカラー♪ プリーズ チョッキユー リアクショーンヲ ミセテー♪ スコシデ イイカーラー♪
ピッ
結衣「はいもしもしー、あ、隼人君?」
結衣「うん、うん、あっちゃー……」
結衣「ごめんごめん、もーちょい宥めといてもらえる? あと少ししたら行くから!」
八幡「葉山達と打ち上げか?」
結衣「うん。あたしが遅いせいで優美子が怒っちゃってるみたい……」
八幡「さいですか。それにしてもお前ら、3年になってクラス替えもあったのに、よく仲良いままでいられたよな」
結衣「……あの時は怒っちゃったけど、今になって思えば全部ヒッキーのおかげだね」
八幡「別にそんなことないだろ」
結衣「そんなことあるよ!」グイッ
八幡「……ま、最後だしな、感謝の言葉くらい素直に受け取っておく」
結衣「うん!」ニコッ
結衣「それじゃーもう行くね!」
八幡「おう」
結衣「あっ、そうそう!明日の卒業パーティー、来るの忘れたら絶対許さないから!!」
八幡「……は?」
雪乃「すでに私の部屋は使えるにしてあるから、大丈夫よ」
結衣「さっすがゆきのん!」
八幡「え、何それ、俺聞いてないんだけど……。つーかおまえ卒業パーティ的なこと今からやりに行くんじゃねーのかよ」
結衣「そうだけどー、そっちでやるのとこっちでやるのは別なの!」
結衣「……ヒッキー来てくれないの?」ウルッ
雪乃「いくら比企谷君が薄情者とはいえ、私達が呼んでいるにも関わらず来ないなんてこと、ありえないのではないかしら」
八幡「うっ……」
結衣「平塚先生に~、小町ちゃんに~、中二に~……あと彩ちゃんも呼んであるんだけどなー」
八幡「マジで! 戸塚も来んの!? 行く行く! 超行く!!」
雪乃「…………」ギロッ!
八幡「ひぃぃぃっっ!」ビクッ
結衣「もう! あたし急いでるのにヒッキーのせいで余計に時間食っちゃったじゃん!」
八幡「俺のせいかよ……」
結衣「とにかくまた明日ね! それじゃっ!!」
雪乃「えぇ、また明日」
八幡「じゃあな」
スタタタタタタ
雪乃「……本当に、残念だったわね」
八幡「あ? 急になんだよ」
八幡(俺の頭が残念だとでも言いたいの? 何それ傷つく)
雪乃「彼女のことよ。せっかく、模試では成果を出せていたのに」
八幡「あぁ、そのことか。あいつ自身も、勉強教えてた俺達も、十分頑張ったさ。現に由比ヶ浜の学力はどんどん良くなってきていた」
雪乃「そうね……」
八幡「たとえ第一志望が駄目だったとしても、努力してそれ相応の結果も出せたんだ」
八幡「一流大学を狙ってたわけでもないんだから、第二志望校でも別に問題ないだろ? それで悲しむ必要がどこにある」
雪乃「そう言う割には、あの時泣き叫んでいた彼女を見て、あなたまで痛ましい表情をしていたような気がするのだけれど」
八幡「ならそれは気のせいだ。おまえが勝手にそう思っただけに過ぎない」
八幡(そのことを、今更考えたところで何も変わらない。悲しんだところでどうにもなりはしない)
八幡(だから、一番辛いのは由比ヶ浜本人なはずなのに、俺が苦しむのは間違っている)
雪乃「そう。なら、私はもうそのことについて何も言わないわ」
八幡「あぁ、悪いな」
雪乃「…………」
八幡「……話は変わるが、おまえはどのタイミングで卒業したことになるんだと思う?」
雪乃「たしか……3月いっぱいは高校生で、4月に入った時点で大学生へ身分が変わるはずだったけれど」
八幡「そういうユキペディアさん的なことを聞いているんじゃなくてだな、気分的な話だよ」
雪乃「その不快な呼び方を止めてもらえないかしら」
八幡「そっちこそ今まで散々変な呼び方してきてただろ。いいから質問に答えてくれよ」
雪乃「そうね、卒業式が終わった瞬間……いえ、私にとっては、この部室から外へ足を踏み出した時かもしれないわ」
八幡(そうか。本当は明日に引き延ばしたかったんだが、なら、仕方ないな)
八幡「……卒業前に、おまえに話しておきたいことがある」
雪乃「何かしら」
八幡「なぁ雪ノ下、俺と友だ──」
雪乃「ごめんなさい、それは無理」
八幡(テヘッ☆ やっぱり駄目でしたとさ)
八幡「おい、嫌じゃなくて『無理』ってなんだよ。生理的に無理とかそういうあれなわけ?」
雪乃「別にそういう意味では……」
八幡「くそっ! ぜってーOKもらえるタイミングだと思ってたのに、また俺の勘違いかよ」
八幡「でもほら、三度目の正直って言葉もあるくらいだし、今度こそ行けると思っちゃっても仕方なくね?」
雪乃「二度あることは三度あるとも言うわね」クスッ
八幡「そのいい笑顔で人をおちょくるのを止めろ……」
雪乃「……これは由比ヶ浜さんから聞いたことなのだけれど、友達と言うのは口で了承したからなるものではなく、自然となっているものなのだそうよ」
八幡「それはそうかもしれんが……」
雪乃「だから、その、2年間同じ部室で……それなりに良い時間を共有し、時には喧嘩をしたり、協力したり、共に歩んできた私達の関係は……わざわざ承諾を得るまでもなく、既に、えっと……」モジモジ
八幡(……マジかよ。何これホントにあの氷の女王? 超カワイイんだけど)
八幡「あー、えっとだな……、大体言いたいことは分かったから、無理に言わなくてもいいぞ」
雪乃「しかし、こういったことははっきりと口で伝えておかないと、何かこう、スッキリしないというか……」
八幡「明日も会うんだろ? その時気まずくなっても俺は知らねぇぞ」
雪乃「それもそうね。なら、今私が言ったことは忘れなさい。今すぐに」
八幡「そんな『今すぐ記憶を抹消してあげようかしら』みたいな目付きでこっち見んな!」
雪乃「ふふっ」
わずかに開いた部室の窓から、爽やかで心地よい春風が入り込む。
風になびく綺麗な黒髪と、彼女が浮かべる柔らかな笑顔が、脳に鮮明に焼きつく。
この瞬間を、今日という日を、奉仕部で過ごした2年間を───
───俺は、ずっと忘れない。
おつおつ
いやいい雰囲気出してんな
やっはろー
なんか今日はダラダラしてたら、ここに来る時間遅くなっちゃいました
1時くらいから2話ほど投下予定
荒らしだけど待ってる
【⑱ただいま】
FROM 由比ヶ浜 結衣
SUB ( ・∀・)ノ やっはろー!
ゆきのんゆきのんo(。・ω・。)o
そろそろこっちに着いたー?
FROM 雪ノ下 雪乃
SUB Re: ( ・∀・)ノ やっはろー!
既に千葉には到着したわ。
今は駅からタクシーで家へ向かっているところよ。
FROM 由比ヶ浜 結衣
SUB Re2: ( ・∀・)ノ やっはろー!
わっ!
タクシーとかなんかブルジョワだっ∑(゜ロ゜ノ)ノ
でももう千葉に居るんだね
よかった~
じゃあ明日には会えそうな感じ?
FROM 雪ノ下 雪乃
SUB Re3: ( ・∀・)ノ やっはろー!
えぇ、大丈夫よ。
そろそろ家に到着しそうだし、時間や集合場所に
関しては後程連絡させてもらってもいいかしら?
FROM 由比ヶ浜 結衣
SUB Re4: ( ・∀・)ノ やっはろー!
りょーかい(☆`・ω・)ゞ
~雪ノ下家~
ガチャッ!
雪乃「ただいま」
陽乃「あっ! 雪乃ちゃんおかえり~!!」
雪乃「……なぜ玄関で待ち構えているのかしら」
陽乃「え? そりゃあ愛しの妹が久々に帰って来るんだもん!」
雪乃「質問に対する答えになっていないじゃない」
陽乃「えぇー! 雪乃ちゃんつれなぁ~い」ブーブー!
雪乃「……一応、出迎えてくれたことには感謝しておくわ」
陽乃「や~ん、もっと素直に喜んでくれればいいのにー。お姉ちゃん楽しみで楽しみで仕方なかったんだよ?」
雪乃「喜ぶもなにも、別に嬉しくもなんともないのだけれど」
雪乃「大体、ゴールデンウィークにも実家へ戻ってきたのだし、そこまで久し振りというわけでもないのだし……」
陽乃「うぅ~ん、私もガハマちゃんみたいに『ゆきのんきゃわわー!』とか言って抱きつけば、雪乃ちゃんに優しくしてもらえるのかなぁ?」
雪乃「由比ヶ浜さんはそんなこと言わないわ」
陽乃「そうだっけ?」
雪乃「本当、姉さんは変わらないわね」
陽乃「もっちろん! 私は昔っから雪乃ちゃんのことが大好きな、優しい優しいお姉ちゃんのままだよ!」
雪乃「…………」
雪乃(姉さんが私を本当に気にかけてくれていたこと、そして、そのおかげで奉仕部が出来たということを、あの日の平塚先生の話で私は知った)
雪乃(それが紛れもない事実である以上、とても感謝しているし、先程の言葉を一蹴するのも少し気が引けてしまうけれど……)
雪乃(でも……)
陽乃「もうちょっとお喋りくらい楽しもうよー! せっかく仲良し姉妹に───」
雪乃「仲良し姉妹になった覚えなんて微塵もないわ」キッパリ!
陽乃「そんなぁ~~~」シクシク
雪乃「はぁ……。あとで会話くらいしてあげるから、少しそこをどいてもらえないかしら」
雪乃「荷物を部屋に置いたり、シャワーを浴びるくらいのことはしたいのだけれど」
陽乃「ほんと? じゃあちゃんと後でお姉ちゃんの部屋に来てね! 約束破ったらお仕置きだよ!!」ピョンピョン!
雪乃「…………やっぱり、口を利くのすら止めた方が良かったのかしら……」
陽乃「!?」
雪乃(まったく……。もう少し落ち着いてほしいものね)ヤレヤレ…
【過去篇其ノ十三:かくして、命令は遂行される。】
~高校三年時、3月上旬~
八幡「なぁ小町、今日ってもう2月じゃないよな……」
小町「は? 昨日の卒業式が3月1日なんだから、今日が2月なわけないじゃん」
八幡「外見ろ外」
小町「わぁ~。雪だ雪!!」
八幡「なんで3月なのにこんなに寒いんだよ。外出たくねぇ……。ずっと家に引きこもってようぜ……」
小町「何言ってんの! お兄ちゃんは今から戸塚さん達を迎えに行くんでしょ!!」
ガタリッ!
八幡(俺としたことが……、戸塚を迎えに行くという大切な使命を見失っていただとっ!?)
八幡「よし! 今すぐ行こう! 即刻家を出よう!!」
小町「小町は一足先に、雪乃さんちに行ってるからね」
八幡「おう。戸塚は俺に任せろ!!!」
小町「中二さんも忘れないであげてね……」ヤレヤレ…
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
八幡(そんなこんなで、現在雪ノ下の部屋にて卒業パーティー中である)
八幡(材木座なんか、ここに着くまでの間
『八幡よ! 今から一人暮らしな女性の部屋へ突入というドキドキワクワクなシチュエーションのはずなのに、我はなぜヒヤヒヤしているのであろうか!』
『もしや……、これが武者震い!?』
とかなんとかウザかったが、なんだかんだで結局普通に楽しんでいる様だ)
戸塚「この料理、どれもすっごく美味しいね~」
小町「ありがとうございますー! そう言ってもらえると頑張って作った甲斐がありました!」エッヘン!
義輝「八幡八幡、この肉が特に美味いぞ! これがあの噂に聞く、超S級食材を使用した幻の珍味であるかっ!?」
ー
八幡「何がS級食材だ。雪ノ下と小町が料理したんだから、そりゃなんだって美味いだろ」
平塚「残念だったな比企谷、材木座の発言は案外的を射ていたぞ?」
八幡「へ?」
平塚「その肉は私が大金を叩いて買ってきた超高級ビーフだ! 心して味わうが良い!!」
結衣「わぁ~! 先生太っ腹ー!!」
平塚「ハッハッハ!! なぁに気にするな、私から君等への卒業祝いだ!!!」ババン!
八幡(確かにメッチャ美味いし嬉しいんだけど、教師からの卒業祝いが肉ってどういうことだってばよ……)
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
結衣「あぁ~、おいしかったー!!」ノビー!
八幡(おい。おまえがあんまり伸びの姿勢を取るな! 視線を制御するのが大変になっちゃうだろ!!)
小町「でもそろそろ解散の時間ですかねぇ」
戸塚「寂しいけど、もう遅いしそろそろ帰らないとだね」
結衣「えぇ~~~」
八幡「えーも何も、由比ヶ浜の場合最初から帰る気なかっただったろ。なんだそのお泊まりセットは」
結衣「あ、バレてた?」アハハー
雪乃「由比ヶ浜さん」チョイチョイ
結衣「ん?」スタスタ
雪乃「─────────」ヒソヒソ
結衣「っ! あ、うん。ありがと……」
八幡「?」
雪乃「気にしなくてもいいわ」
結衣「ゆきのん大好きー!」ダキッ
雪乃「だからそれはやめなさいと何度も……」
結衣「いいじゃんいいじゃーん!」
イチャイチャ
平塚「さて、そろそろお暇させてもらうとするか」
彩加「そうですね」
平塚「もう暗いし、雪が降っていて外は危ない。私の車で送っていこう」
小町「わーい! ありがとうございまーす!」
彩加「ありがとうございます!」
義輝「感謝感激雨霰!!」
八幡「んじゃ、俺もお言葉に甘えて……」
平塚「悪いな比企谷、この車、4人乗りなんだ」
八幡(な、なんだってー!!)
八幡「……それマジっすか」
小町「だんだん雪弱くなってきてるみたいだしそろそろ止みそうだから、時間空けてから帰って来たら?」
義輝「フハハハハ! 貴殿の日頃の行いが悪いからこうなるのだ!!」
彩加「ごめんね、八幡……」
八幡「えっ、ちょっ……」
小町「なんなら結衣さんと一緒に、ここに泊まってっちゃえばいいじゃん! そしたら小町的に──」
雪乃「それは私的にポイント低いのだけれど……」
小町「あ、ごめんなさい」
雪乃「私は見送りに行ってくるから、留守番よろしく」
結衣「うん」
八幡「あー、じゃあ俺も見送りに……」
小町「お兄ちゃんは来ちゃダメっ!」
雪乃「あなたはここで大人しくしていなさい」
彩加「八幡、由比ヶ浜さん、またいつか遊ぼうね!」
義輝「さらばだっ!!」
平塚「じゃあな。……頑張りたまえ」
八幡「頑張れって一体何を……」
バタン!
八幡「…………」
結衣「…………」
八幡「本当に置いてかれちまった……」
結衣「そ、そうだね」タハハー…
八幡(おい、目を逸らしながら苦笑すんな。この2人きりな状況、計画的なのがバレバレなんだよ……)
結衣「えっと……、高校生活も、ついに終わっちゃったね」
八幡「そうだな」
結衣「楽しかった?」
八幡「楽しいことばかりではなかったけど、小学生や中学生時代の俺が今の自分を見たら、きっと羨ましがるだろうよ」
結衣「そっか。よかった」
八幡「今まで、色々とありがとな」
結衣「もぅ。そんなお別れみたいなセリフ、今言わないでよ」
八幡「…………」
結衣「ヒッキー……、あの、さ」
八幡「……なんだ?」
結衣「もしあたしが、今、この場で想いを告げても……、多分ヒッキーは応えてくれないよね?」
八幡「さぁな」
結衣「誤魔化さないで」
八幡「言い訳でもなんでもなく、正直、本当に分からないんだ……」
八幡(自分に正直になろうにも、『由比ヶ浜と離れたくない』と思う自分も、『無理に繋がりを継続させた所でいずれ破綻する。ならばこのタイミングで距離を取った方が良い』と考える自分……、どちらも混在している)
八幡(今までの俺なら、こんなことで悩んだりしなかったはずだ。迷わず後者の道を選んでいた)
八幡(この比企谷八幡ともあろう者が、何かしら変化してしまっているのだろうか……)
八幡(俺は、一体どうしたら…………)グッ…
結衣「やっぱ、困っちゃうよね。……ごめん」
八幡「なんでおまえが謝るんだよ。悪いのはどう考えても、煮え切らない俺の方だろ」
結衣「そんなことないよ。だって、『この先も一緒に居られるなら、ヒッキーはそれで安心できる?』とか、『無事に合格したら、聞いてほしい話があるの』って言っときながら、受験失敗しちゃったのはあたしのせいだもん……」
結衣「だから、まだいいの」
八幡「……?」
結衣「別々の学校になっても、あたし達ならきっと大丈夫だって証明してみせる!」
結衣「それでヒッキーが、色んなことを信用して、安心できるようになったら、その時は……ね?」
八幡「……そう、か」
結衣「うんっ! 待たないでこっちから行くって、ずっと前に決めたもん。そう簡単に諦めるわけないじゃん!」
八幡(ふぅ……。人の感情の機微に聡い由比ヶ浜のことだ。俺の葛藤も、臆病な部分も、煮え切らないところも、全てバレているのだろう)
八幡(これは単に、猶予期間を貰ったにすぎない)
八幡(これから先どうするべきなのか、今一度考えなければならないんだろうな……)
結衣「その内連絡するから、また遊ぼうね」
八幡「暇だったらな」
結衣「メール無視しちゃ駄目だよ?」
八幡「いくらなんでも無視はしねぇよ。メールに気付くのは遅れるかもしれんが」
結衣「もぅ!」
八幡「んじゃ、俺もそろそろ帰るわ」
結衣「うん。それじゃあまた………あああっ!!!!!」
八幡「うるせぇ」
結衣「だって! あと1つ大事なこと忘れてたっ!!」
八幡「んだよ?」
結衣「命令っ!」ビシッ!
八幡「…………」
八幡「よし、帰るとするか……」ヨッコラショ
結衣「待て」ガシッ!
八幡「ぐえっ! 襟引っ張んな!!」ゲホッ…
結衣「だったら逃げんなし!!」
結衣「普通に可能なことで、この場だけで終わるような命令だったら何でも良いんだよね?」
八幡「……お手柔らかにお願いします」
結衣「だいじょぶだいじょぶ。あたしが言おうと思ってる命令は、今までにヒッキーがやったことのあることだから」
八幡(今までに俺がやったことのあること? 一体何をさせるつもりなんだ?)
結衣「あの、さ……。この前いろはちゃんにやったのと同じこと、あたしにもしてもらえないかな……?」
八幡「あ?」
結衣「だからぁー……、抱きしめながら頭撫でたり、してあげたんでしょ?」
八幡「ナンノハナシデスカ?」
結衣「別に怒ってるわけじゃないし、隠さなくってもいいんだけどな」
結衣「たしかにちょっと嫉妬しちゃうけど、ヒッキーは普通に良いことしたと思うよ?」
八幡「ちょっと待て。俺は一色を抱きしめたりなんてしてない。あいつが勝手に抱きついてきたから、落ち着くまで頭を撫でてやってただけだ」
八幡「……そもそもなんで知ってるんだよ」
八幡(葉山に振られたことを一色が自ら誰かに教えはしないだろうし、葉山が言いふらすとも到底思えない)
八幡(他にあの件を知ってるやつなんて居ないはずなんだが……)
結衣「小町ちゃんがね、いろはちゃん本人から聞いたんだって。ほら、あの二人最近かなり仲良いみたいだし、信用して話しちゃったんじゃない?」
八幡(小町ェ……。一色がそれだけ小町のことを信用してくれているというのは俺としても嬉しいが、当の小町が他人にバラしちゃったら意味ないだろ!)
八幡(お兄ちゃんガッカリだよ!!)
八幡「はぁ……」
結衣「あはは。多分小町ちゃんもあたし意外には話してないだろうし、そんなに気にしなくっても平気なんじゃないかな?」
八幡「噂ってのは、そうやって徐々に広まっていくもんなんだよ。おまえは誰にも話してないだろうな?」
結衣「さぁ? ヒッキーがちゃんと命令きいてくれなきゃ、ポロッとゆきのんに話しちゃうかもよ?」
八幡「策士め……」
八幡(あの時俺が一色にしたこと──頭を撫でながら、「一色は頑張った」と声を掛けてやる──は、以前由比ヶ浜にしてもらったことのパクリである)
八幡(それを本人に知られてるとか恥ずかしすぎるんですけど……)
結衣「命令は絶対、でしょ?」
八幡(そう言って由比ヶ浜は、俺の胸に軽くもたれかかってくる。心臓の音聞かれてないよね大丈夫だよねっ!?)
八幡「……撫でればいいのか?」
結衣「うん」ギュッ…
八幡「い、いくぞ」ゴクリ…
八幡(現在の由比ヶ浜は、ここに泊まることを前提としていたためか、いつものお団子をほどいてある状態だ)
八幡(一撫でする度に、毛先の整った癖のない髪の感触が、俺の指と脳裏に深く刻み込まれる)
結衣「やっば……。何これ、恥ずかしすぎてヒッキーの顔見らんないんだけど……」///
八幡「終わりにするか?」
結衣「……終わりにしたいの?」
八幡「い、いや、そういうわけじゃ……」
結衣「じゃあ、飽きるまで続けて……」
八幡(結局、俺と由比ヶ浜が離れることができたのは、かなり時間が経過してからのことであった……)
とりあえずここまで~
途中で、
彩加「 」
を
戸塚「 」
って間違えてしまった場所が2箇所ほどありました。ごめんなさい。
かぎかっこの場所が全員同じになるように、二文字表記に拘ってるんだよね。
だから由比ヶ浜や雪ノ下やいろはみたいに3文字がある人は間違いようがないんだけど、
戸塚彩加は苗字も名前も二文字なためややこしい。
こういうミス気になっちゃうという方々、申し訳ございませんでした……。
あ、由比ヶ浜は3文字じゃなくて4文字か。
あと静ちゃんみたいな1文字も、間違えないから安心。
おつおつおたつおつつおおつつあつおたつつおつおつつおうたおおたあたおつあおあおつ
乙なんだが追加で今から投下してもいいよ!
おつおつ
原作買って読んで待っとる
可愛いガハマさん期待
追いついた!乙
かのんちゃんの歌良いですよね、自分はYES-TODAYが好きです
>>232
うむ。原作は買って損ないよ!
2巻の終わり頃からすごく面白いと思う。
ただし絵柄は安定していない模様。
>>233
可愛いガハマさんの話は、エピローグまで待って下され。
次はヒッキーゆきのんゆいゆい3人の話になるので。
>>234
ドキドキ ムネガ イェストゥデー♪ ムネムネ ドキガ イェストゥデー♪
私はダーリンベイビが一番好きだ!!!
【⑲暑苦しい】
八幡(8月15日の午後12時半くらいのこと、病気になりそうなほど眩しい日差しの中……って、なんだよこの変な事件に巻き込まれそうなモノローグは)
八幡(事故には二度と会いたくないし、ループ物も御勘弁願いたい)
八幡(どこぞの人気アニメなんて夏を8回繰り返しただけですげぇ叩かれていたのに、エンドレスエイトサウザントなんてやったらきっと誰も見てくれないだろう)
八幡「…………」
結衣「ヒッキー?」
八幡(あぁ~、早く新刊出ねぇかな。もう分裂がどんな話だったかうろ覚えなんだけど)
結衣「ちょっとヒッキーってば! どうしたの? なんか難しい顔して」
八幡「いや、別になんでもねぇよ。それより急がなくていいのか?」
結衣「わっ! もうこんな時間!? 早くしないとゆきのん待たせちゃう!!」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~繁華街的な集合場所~
結衣「あれ? もうすぐ1時になるのに、ゆきのんまだ来てないね」
八幡「あいつなら早めに来てそうなもんだがなぁ」
八幡「こちとらこんな暑い中急いできたってのに、向こうが遅れてきたら嫌味の一言でも浴びせてやるか」
結衣「もう! そーゆーこと言わないの!! きっとすぐ来るって」
八幡「いや、分からんぞ?」
八幡「雪ノ下の場合かなり極度な方向音痴だから、数ヶ月ぶりの千葉県に戸惑い迷子になった挙げ句、最悪集合場所まで辿り着けないなんてこともありえるかも───」
雪乃「本人が居ないのをいいことに、随分と言いたい放題してくれていたようね?」
八幡「げっ」
八幡(こいついつの間に来たの? つうか急に背後から現れるなよ。こえぇよ……)
結衣「ゆっきのーーーん!!」ダキッ!
雪乃「きゃっ! 由比ヶ浜さん、いきなりくっつくのは……」
結衣「しょうがないじゃん! 早く会いたかったんだもん!!」
八幡「こんな炎天下の中ゆりゆりすんな、見てるこっちが暑苦しいから」
結衣「えー。だって久々にゆきのんに抱きつくとなんかヤバイよ? 髪も肌も超サラサラのスベスベだし!」
雪乃「っ!/// 変なことを言うのは止めなさい! 早く離れて……わっ!」クラッ!
八幡「……おっと」トサッ
八幡(あ。受け止めた時に少し髪に触れちゃったけどマジで超サラサラ。これはヤバイ)
八幡「危ねえなぁ、平気か?」
雪乃「……助かったわ」
結衣「ゆきのんごめん! 大丈夫?」
雪乃「えぇ、大丈夫よ。少しよろけただけだから」
八幡「由比ヶ浜に抱きつかれた程度でよろけるなんて、珍しいこともあるもんだな。夏バテか?」
雪乃「夏バテや体調不良という程のものでもないわね。ただ寝不足なだけだから、心配には及ばないわ」
結衣「寝不足? もしかして、家でなんかあったの?」
雪乃「…………その通りよ」
結衣「……ゆきのん、家絡みの問題じゃあたしには何もできないかもしれないけど、相談に乗るくらいなら───」
雪乃「姉さんの長話に付き合わされて、朝まで寝させてもらえなかったわ……」ドンヨリ…
結衣「あ、あははー。家ってそういう……。それはそれでなんか大変そうだね……」
八幡「ま、姉妹仲も良好になった様で良かったな」
雪乃「好き勝手言うのをやめなさい。別に姉さんと仲良くなったというわけでは……」
結衣「まあまあ良いじゃん! それより早くどっかお店入ろうよ。お腹減っちゃった」
八幡「なら12時くらいに集合しとけばよかっただろ?」
結衣「それだと絶対どこも混んでるじゃん。お盆だし」
雪乃「1時でもまだ混んでいると思うのだけれど、クーラーの効いていそうなところに早く入りたいという点には同意ね」
八幡「んじゃ、てきとーにサイゼでも行くか」
結衣「せっかく色々お店ありそうなとこに来たのになんでサイゼだし!」
八幡「だってほら、俺と由比ヶ浜はいつでもサイゼに行けるけど、雪ノ下は東京に住んでるわけだし」
結衣「東京にもサイゼあるからねっ!?」
八幡「あったとしても、本場の千葉のサイゼと他県のサイゼじゃ気分的に味が違うだろ」
雪乃「そんな風に感じるのはあなただけよ」
八幡「え、そうなの? そう感じるのって俺だけ? いやいや、お前等の千葉愛が足りないだけだろ!」
雪乃「そもそも、そこまで深い地元愛を抱いたことがないのだけれど……」
結衣「まったくもー! ヒッキーはいつもいつもめんどくさいなぁ」
八幡「おい、あんまり気安くめんどくさいとか言うなよ。由比ヶ浜に言われると、なんかこう、……色々と不安になっちゃうだろ」
結衣「メンタル弱すぎだからぁ! ヒッキーが面倒な性格してることなんて今更すぎるし、本気で嫌なわけじゃないからね?」
八幡「それフォローしてるつもりかよ……」
結衣「あ~あ、せっかくさっきのこと不問にしといてあげようと思ったのになー。怒っちゃおっかなー」
八幡「は? さっきのこと?」
結衣「うん。ゆきのんがよろけてヒッキーが支えてあげた時、ちょっと鼻の下伸ばしてたでしょ?」
八幡「っ!?」
結衣「元はといえばあたしが悪いわけだしスルーしといたけど、ほんとは気付いてたんだからね!!」
雪乃「……比企谷くん、彼女持ちでありながら私を厭らしい目で見ていたなんて最低ね」
八幡「ちょっとまて! 厭らしい目で見たりなんてしてないから!」
八幡(ほんとほんと。嘘じゃないって。ただちょっと髪の感触にクラッときちゃっただけだから!)
八幡(……こんくらい仕方なくね?)
結衣「…………」ジトー…
八幡「うっ……」
結衣「ヒッキーの浮気性……」
八幡「……安心しろ。何があっても、お、俺は由比ヶ浜一筋だ」
結衣「ちょっ! ヒ、ヒッキー? 急に何言ってんの!?」アタフタ
結衣「いや、あの、かなり嬉しいんだけど時間と場所は弁えてほしいっていうか、えぇと、その……」///
雪乃「人前でイチャつくのはやめてもらえないかしら?」
結衣「いちゃ!? ち、ちがっ!」
八幡(うをぉぉぉおおお!!! 雪ノ下の前だというのに俺はなんという発言をしてしまったんだぁぁぁあああ……)
雪乃「あと、先程の比企谷くんの『こんな炎天下の中ゆりゆりすんな、見てるこっちが暑苦しいから』という発言は誤用よ」
雪乃「『炎天下』と『中』では意味が被ってしまうじゃない。正しい使用例としては、そうね……」
雪乃「こんな炎天のもとイチャイチャするのはやめなさい、見てるこっちが暑苦しいから。……といったところかしら」
結衣「わーわーわー! だからイチャイチャしてたわけじゃないからぁ!!!」><
八幡「……俺達からかって楽しんでるだろ」
雪乃「さぁ、それはどうかしらね? ふふふ」
【過去篇其ノ十四:そして、比企谷八幡と雪ノ下雪乃は……。】
~高校三年時、3月上旬、卒業パーティ後~
八幡(マンションを出ると、そこは雪国だった……)
八幡「……って、なんでおまえ外に居るんだよ。まさかずっと、雪の中突っ立ってたのか?」
雪乃「随分と遅かったわね。あなた達がどんな淫らな行為をしているのか分からないのに、部屋に戻れるわけないでしょう?」
八幡「んなことしてねぇよっっっ!!」
八幡(ったく……。なんつーこと言いやがるんだ、こいつは)
八幡「つうか、なら部屋に戻らないまでもマンション内に入るとか、いくらでもやりようはあっただろ」
雪乃「心配してもらわなくても大丈夫よ。ちゃんと防寒具は身につけているのだし、暑いのより寒い方が好きだから」
八幡「まぁ、大丈夫ならそれでいいけど……」
八幡「なんか変な気ぃ使わせちまったみたいで、悪かったな」
雪乃「そんなこと気にしなくてもいいわ。私が勝手にやっていることだもの」
八幡「おまえが由比ヶ浜に甘いのはいつものことだが、俺にまでそういう態度ってのは……少し調子が狂うな」
雪乃「あら、いつもみたいに罵倒した方がよかったかしら? もしかして、あなたMなの?」
八幡「ちげぇよ……」
八幡(違うよね? 俺Mじゃないよね?)
雪乃「刺々しい方がいいと言うのであれば、そういった態度を取ってあげないこともないのだけれど」
八幡「なんだそれ……」
八幡(そういえば、昨日の卒業式後の一幕。あれってつまり、俺と雪ノ下はもうとっくに友達だった……ってことでいいんだよな? いいんだよね?)
八幡「…………」
雪乃「ッ……。変な視線をこちらに向けるのはやめなさい」
八幡「あ、悪い……」
八幡(昨日と今日で、結構恥ずかしいことしてんなー……。黒歴史ではなく良い記憶になってくれることを切に願おう)
雪乃「それで、由比ヶ浜さんとあなたの関係は、結局どうなったのかしら?」
八幡「どうもなってねぇよ。今まで通りだ」
雪乃「そう」
八幡「…………」
雪乃「…………」
八幡「……何か文句を言われるものだとばかり思ってたんだが」
雪乃「やはり私に詰られるのが好きなようね。あなたにそのような性癖が本当にあったとは思っていなかったわ」
雪乃「少し認識を改めた方がいいのかしら……」
八幡「いやだから違うって!」
八幡「さっき由比ヶ浜に変な命令されたばかりなせいで、今かなりいっぱいいっぱいなんだから、これ以上俺の頭をごちゃごちゃにするのは勘弁してくれ」
雪乃「どんな命令をされたのかは、聞かないでおいてあげるわ」
八幡「……助かる」
雪乃「それに、あなたと由比ヶ浜さんの関係について何も思うところがないわけではないけれど、あえて口に出したいことはないもの」
八幡「そうか」
雪乃「えぇ。正直、あまり心配していないわ」
雪乃「比企谷くんのことだから、少し由比ヶ浜さんと距離を置こうなんて考えているのかもしれないけれど、どうせそんなことは無理だもの」フフッ
八幡「どういう意味だよ」
雪乃「さぁね。きっと、その内分かるわ」
八幡「これ以上外で話してるのもあれだし、そろそろ帰るわ」
雪乃「えぇ。いつかまた、会いましょうね」
八幡「大げさな言い方だな。俺もおまえも千葉県内の大学に通うわけだし、会おうと思えばいつでも会えるだろ?」
雪乃「私はあなた程暇人ではないのだけれど。それに……、本当にいつでも簡単に会えるわけではないもの」
八幡「そうなのか?」
雪乃「えぇ。これはまだ由比ヶ浜さんにも言っていないことなのだけれど……、私、東京の大学へ行くことになったの」
八幡「えっ」
雪乃「だから三月半ばには引っ越すし手筈になっているし、」
八幡「ちょっと待て! おまえ、地元の国立理工系の大学に行くんじゃ……」
雪乃「そんなこと一言も言っていないじゃない。あなたが勝手にそう思い込んでいただけでしょう?」
八幡(そういえば、前にどこの大学に行くのかという話になった時、確かに雪ノ下ははぐらかしてちゃんと応えていなかった)
八幡(俺はあの時特に何も思いはしなかったが、まさか、本当に……)
八幡「なんで今まで黙ってたんだよ」
雪乃「……ごめんなさい。どうしても、言いだし辛かったのよ。由比ヶ浜さんにも、この後ちゃんと話しをするわ」
八幡「…………」
雪乃「私が東京へ行くことが、そんなに意外かしら?」
八幡「あぁ。意外っちゃ、意外だな」
雪乃「姉さんの様にならなくてもいいと言ってくれたのは、あなたじゃない……」
雪乃「だからもうやめたの」
雪乃「最初は姉さんと同じ大学へ行くつもりだった。姉さんと違う道を選んでしまえば、まるで逃げている様で、自分で自分のことが嫌になってしまいそうだったから……」
雪乃「でも比企谷くんの影響で、そんなことは気にせず自分の好きな道を選ぼうという気になったのよ」
八幡「俺のせいかよ」
雪乃「あなたのおかげよ」
八幡「そ、そうか……」
八幡「じゃあ、これでしばらくの間、本当にお別れになるわけか」
雪乃「そうね。少しは寂しかったりするのかしら?」
八幡「馬鹿言え。んなわけあるか。ただ、まぁ、その……」
八幡「雪ノ下、おまえと友達になれて、本当に良かった」
雪乃「私も、あなたと出会えて、本当に良かったわ」
八幡「そんじゃ、またいつか、な」
雪乃「えぇ。またいつか」
八幡(こうして、二度と戻る事のできない輝かしい日々は、ひとまず幕を閉じたのであった……)
過去篇はこれにて終了。
八雪友情ENDっぽい感じにしたかった。
よっし! ヒッキーの誕生日の話とお盆の話を、リアルの日付け通りに書けて満足!!
あとは⑳とエピローグの計2話で本編もおしまい。
明日には終わると思うので、ラストまでお付き合いいただければ幸いです。
とりあえず、一旦ここまで。
( ・∀・)ノシ
おっつん
この八幡に2年の時書いた作文朗読させたい
厄介払いもすんでいよいよ八結編ってところですか?
渋で読んだが雪乃は葉山と同じ大学でいちゃラブ展開になるので
苦手な奴は引き返せよww
おつおつ
もう終わりか…俺の楽しみがおわってしまう…
今更で悪いんだけど(というか今日見つけたスレなわけだが)
>>137のベストプライスって何やねんとツッコんでおく
翻訳すると最高価格だぞ
完全に蛇足だが
ベストプレイスって書こうとしたんだろうな
おつおつ
原作でもゆきのんルートじゃなかったらこんな感じになりそうだなー
八幡相変わらずめんどくさいけど卒業したら本当に仲のいい一部以外とは疎遠になるし不安になる気持ちはあるんかなぁ
>>247
あざーす
>>248
やめたげてよぉ!!
>>249
シブの方でも、葉山とゆきのんをくっつけたつもりは更々ないよ。
ただあの二人のわだかまり的なものを、ほんの少し解消させたかっただけ。
なんでもかんでも恋愛に結びつける気はないしね。
あと、このスレにおける高3時の話はもうおしまいのつもりなので、葉山の出番はもうありません。
いろはす振る時しか登場シーンなくって、葉山ファンの人たちごめんね……。
>>250
本編は明日で完結予定だけど、その後どうするかは未定。
このスレ自体を終わりにするのか、それとも需要がありそうだったらおまけで没ネタ公開とかした方がいいんですかね?
>>251
お、今日見つけて一気読みして下さったんですね。
ありがとうございます。
そして私はなんという恥ずかしいミスをしてしまったんだ……orz
>>252
うん、その通りです……。
>>253
自分の原作予想。
ストーリー上のメインヒロインはゆきのんで、最終的には雪乃絡みの話をどうにかしつつ素直に仲良くなっておしまい
……って感じかなと思ってる。
タイトル通り正しいラブコメにはならないものの、八幡と結衣は両想いなのかな?
みたいな雰囲気を漂わせつつ完結してくれると1的にポリント凄く高い!!
×1的にポリント凄く高い!!
○1的にポイント凄く高い!!
なんだこの誤字……
ちょうど今スキラゲ来てるしね!
没ネタ公開とかしてくれたら個人的にはポイント高い!
やはり>>1のSSは誤字(まちが)っている
こいや
ポリデント凄い高いな
ばあちゃんが嘆いとったわ
需要あるからどんどん続けてね
過去編終わりか…
>>33で小町が言ってる遠ざけておきながら寂しくなっていくあたりは描かないのかな?
正直卒業してしばらくの期間が見たいな
>>257
そうそう、>>98の時にちょっと話したソシャゲネタも没ネタの1つ。
あんな雑談を覚えててくれる人がいてくれて嬉しい。
ちなみにメフィスト降臨は、アヌビスの運ゲで無事ノーコンできました。
>>258 >>260
おおぎりかな?(すっとぼけ)
おまえらフツーに上手いなwwwwww
>>259
きたよ
>>261
没ネタも2つ3つしかないけどね。
続けられそうだったら続ける。とりあえず本編は今から投下する分でおしまい。
>>262
あぁ~。その辺の話、一応某所に投稿したのがあるにはあるのよ。
でも無駄に話の進みが遅いしテンポ悪い。
その上SS書き始めた初期に書いたものだから、今以上に文が稚拙。
う~ん……。
大学生になってからの4月5月6月の話も、再構成して投下した方がいいのかな?
まぁどうするべきか、のちのち考えてみます。
そんじゃ、本編ラストの更新、いっくよー!
【⑳飲食店】
結衣「久し振りにアレやろう!!」
雪乃「?」
八幡「あれそれこれじゃ分からん」
結衣「ほら、じゃんけんで負けた人が飲み物買ってくるやつ。ここの場合ドリンクバーだから、買ってくるっていうか取ってくるだけど」
八幡「久し振りっつうかなんつうか、それってお前等が勝手にやってただけじゃね? 俺も混ざったことあったっけ?」
結衣「あ、あれ? ヒッキーも一緒にやったことなかったっけ?」
八幡「……忘れた」
結衣「どうだったか、あたしもあんまりよく覚えてないかも……」
雪乃「流石比企谷くんね。彼女も自分自身も覚えていないなんて、存在感の薄さが天下一品だわ」
八幡「寝不足のわりにお元気そうですね」
雪乃「褒め言葉として受け取っておこうかしら」フフッ
結衣「よ~し。じゃあ、いっくよー!」
八幡「え、結局やるの?」
結衣「最初はグー! じゃんけん……」
三人「「「ポン!」」」
八幡「…………」チョキ
雪乃「…………」チョキ
結衣「…………」パー
雪乃「っ!」グッ!!
八幡「流石由比ヶ浜。一発目から一人負けとか空気読んでんな」
結衣「なんかムカツク! あとゆきのんも嬉しそうにしすぎだしっ!!」
雪乃「別に喜んでなんかいないわ」フンッ
八幡「いや、バレバレだから。相変わらず勝負事に拘りすぎだろ」
雪乃「……由比ヶ浜さん、たまにはウーロン茶でも飲みたい気分なのだけれど」
結衣「うん、分かったー」
八幡「今ので話し逸らしたつもりなの? 下手すぎでしょ?」
結衣「いいからヒッキーは何にすんの?」
八幡「MAXコーヒーで」
結衣「ドリンクバーにあるわけないからぁ!!」
八幡「チッ、使えねぇなぁ。んじゃメロンソーダでよろしく」
結衣「はいはい。じゃあ取ってくるね~」
八幡「おう。こけて零したりするなよ」
結衣「んなことしないし!」
スタスタスタ
八幡「……結局、おまえの言う通りになったな」
雪乃「何の話かしら?」
八幡「ほら、俺が由比ヶ浜と距離を置くなんて無理とかなんとか、前に言ってただろ」
八幡「なんなの? エスパー?」
八幡(高校卒業後由比ヶ浜は、『別々の学校になってもあたし達なら大丈夫』という発言を現実にしてみせた)
八幡(その時点で俺の逃げ道はなくなり……いや、違うな)
八幡(どうしようもなく臆病だっただけで、本当はもっと前から、逃げずに向き合いたいと思っていたのだ)
八幡(俺は由比ヶ浜と、そして俺なんかを友達だと認めてくれた雪ノ下に、背中を押してもらったに過ぎない)
雪乃「あんなの、予知や予言という程のことでもないわ。見ていれば容易に想像のつくことよ」
八幡「そうかい」
雪乃「えぇ。由比ヶ浜さんの想いは言うまでもなく分かりやすすぎるくらいだったけれど、高3の頃には既に、あなたの方も大概だったもの」
八幡(やだこれ恥ずかしい……)
雪乃「けれど、せっかく付き合い始めたというのに、普段のノリは高校時代とあまり変わっていないのね」
八幡「まあな。こんくらいが丁度良いだろ」
雪乃「さっきはつい囃したててしまったけれど、私が居るからといってそこまで気を遣わなくてもいいのよ?」
八幡「やめろやめろ。雪ノ下が居ようが居まいが、俺と由比ヶ浜の関係はこんな感じだ」
雪乃「そう。……それはそれでつまらないわね」
八幡「おい、つまらないって何だそれ。俺をおもちゃ扱いすんな」
雪乃「あなただって本当は、由比ヶ浜さん相手に野獣の様な醜い欲望を押さえるのが大変なのではないの?」クスクス
八幡「…………まぁ、そうな」
雪乃「あら、必死になってバレバレの誤魔化し方をするのかと思ったのだけれど、意外な答えね。……通報しようかしら」
八幡「はぁ……。あのな、由比ヶ浜みたいなビジュアルもスタイルも中身も抜群なやつが、自分の部屋でゴロゴロしてるんだぞ?」
八幡「そんな無防備な姿を頻繁に晒されたら、そりゃ当然やましい気持ちも湧いてくる」
八幡「けど、なんつうか……、本当に手を出したりする気はまだねえよ。そういうのはもっとこう、ちゃんと手順を踏んでだな……」
雪乃「言葉だけを見れば優しい発言なのだけれど、あなたが言うとヘタレているようにしか聞こえないから不思議ね」
八幡「うるせ。……大切にしたいんだよ」
結衣「あ、あの~……。あたしとっくに戻ってきてるんだけど」タハハー…
八幡「!!!」カァァァアアア/////
雪乃「あら、おかえりなさい。比企谷くんが急に惚気だしたものだから、気が付かなくってごめんなさいね」
八幡「惚気てなんかねぇから! つうか由比ヶ浜、お前どこから話聞いてやがった!?」
結衣「えぇと、あたし相手にやましい気持ちを抱いてる的なところから……」
八幡(もうやだ。はちまんおうちかえる……)グスン
【エピローグ】
8月下旬、夕方といえどもまだまだ暑く感じられる、そんな頃。
お盆も終わり、雪ノ下が都心へ戻ってから数日後のことである。
結衣「やっはろー!」
八幡「お、おう……」ポケー…
待ち合わせ場所の駅には、洒落た髪留めで髪を全てアップに纏め上げ、黒と緑を基調としたシックな浴衣に身を包む由比ヶ浜結衣の姿があった。
いつものアホな子で童顔気味な由比ヶ浜とはうってかわって、とても大人びたイメージを感じさせられる。
去年と一昨年目にした浴衣もかなり似合っていたが、この浴衣姿もそれはそれで……正直、たまりません。
結衣「ん、どしたの?」
八幡「あ、いや、なんでもないぞ。それより来んの早かったな。待たせちまったか?」
結衣「ううん、大丈夫。ほら、今まで花火大会の時はいつもヒッキーが待っててくれたし、今年はあたしが先に待ってようと思って!」
八幡「そんなこと気にしてくれなくても良かったんだけどな」
デートの時は男の方が先に待っていなければならない的な男女差別的思想はどうでもいいものの、こんな人通りの多い所で由比ヶ浜を待たせてしまうのは、俺の精神衛生上よろしくない。
ナンパされてたらどうしようとか、写メられてネットに晒されでもしたらどうしようとか色々考えちゃう。
過保護すぎ? いいえ、普通です。
結衣「それにさ、今回はヒッキーの方から誘ってくれたから、すっごく嬉しかったんだ」
八幡「あー、それはあれだ。どっかデートしに行くって約束もあったしな」
八幡「ディスティニー行きたいとか面倒なこと言われる前に、無難な誘いをしたまでだ」
結衣「ハァ!? なにそれっ!!」
結衣「花火大会が初デートの場所だから大切に想ってるとかそういう理由で誘ってくれたんじゃないわけっ!??」
八幡「そうか、言われてみれば2年前の今頃が初デートなのな」
結衣「まさかそんな大事なことも忘れてたの……?」
八幡「……忘れてるわけないだろ。しっかり覚えてるよ」
結衣「そっか。そうだよね。えへへ……」
そう、はっきりと覚えている。
嫌な記憶もないわけではないが、そんなことがどうでもよくなってしまう程鮮明に、由比ヶ浜の浴衣姿は目に焼き付いているさ。
あ、別に俺が浴衣フェチってわけじゃないから。
浴衣姿に限らず、水着姿とか変な仮装姿とか、普段と一風変わった格好をしていた時の光景は全て脳内ディスクに保存済みである。
もちろんデータ保護もバッチリ。
俺の脳みそマジ優秀すぎぃ!
……なんか、我ながら最近の自分が気持ち悪い気がする。
でもまぁ、昔から小町や戸塚に関してはこんなもんだったし?
そうそう。俺は至って普通だから。気にするなかれ。平常心平常心。
結衣「なんかニヤニヤしててキモいんだけど……」
八幡「……コホン。頼むから気にしないでくれ」
おかしいなぁ。
平常心を心掛けていたはずなのに。
俺の顔面マジ無能すぎぃ!
結衣「ま、いいや。行こっ!」
八幡「おう」
電車に揺られること数十分、毎年恒例の花火大会会場までやってくる。
由比ヶ浜と連れ立ってここへ来るのもこれで3回目。
すっかり慣れたものだ。
慣れたはず……なんだけど……。
八幡「……ん」
黙って手を差し出すことしかできない。
去年の俺は、もうちょっとかっこよく自然に手をつなぐことが出来たと思うんだけどなぁ。
え、気のせい?
そうですかごめんなさい……。
結衣「そろそろ手ぇつなぐのくらい慣れてよね」
八幡「わるい」
結衣「ふふ、いいよ。そういうとこがヒッキーの可愛い部分でもあるし」ギュッ!
八幡「男に向かって可愛いとか言うなよ。それ、言われても全然嬉しくないからな?」
八幡「……あ、戸塚に向かって可愛いというのは有りだ。むしろ言わない方が失礼にあたるレベル」
結衣「もう! たとえ男子が相手だとしても、あたし意外にデレデレするの禁止!!」メッ!
ふぇぇ…由比ヶ浜さんが怖可愛いよぉ……。
なんだかんだ言いつつ露店巡りを楽しんでいると、あっという間に花火の時間がやってくる。
今回はそれなりに良い場所を確保できたので、ここなら花火を思う存分満喫することができるだろう。
しばらくすると定刻通りの花火開始を告げるアナウンスが会場に響き渡り、直後、夜空に光輪が次々と咲き乱れる。
結衣「わぁ~、キレイだねー」
八幡「そだなー」
結衣「うわ、なんか返事テキトー……」
八幡「あ? まさか『花火より、おまえの方が綺麗だよ(キリッ!』みたいな台詞を期待してんの?」
結衣「そういうわけじゃないけどさー、なんていうか、ほら、もっとロマンチックな感想聞きたい!」
八幡「ロマンチックねぇ……」
俺にロマンなんぞ求められても困る。
花火でロマン……、花火でロマン……、あ。
そういえば昔、なんか花火でロマン絡みの話を聞いたことあんな。
八幡「たしか中学ん時の理科の先生が話してたことなんだけどなー」
結衣「?」
八幡「今の奥さんと初めてデートしたのが、地元の花火大会だったんだと」
結衣(そ、それって……、あたし達の初デートも花火大会だから、将来あたしもヒッキーの奥さんに……ってこと!???)アワワワワー///
八幡「んでな、色とりどりな花火が打ち上げられるわけだろ」
八幡「それを見て、黄色いのがナトリウムで緑がバリウムで~っていう話を得意げに語ったら、まるでロマンがないって怒られたとかなんとか……」
結衣「ほんとロマンなさすぎだからぁ! ってかなんでわざわざその話題チョイスしたの!?」
八幡「仕方ないだろ。花火でロマンって言われて、真っ先に思い出した話がこれだったんだから」
結衣「はぁ……。これだからヒッキーは……」
とまぁ、そんな軽口を叩き合いながら花火を見ていたのも最初の数分間だけ。
花火が激しくなるにつげ、徐々に口数も減り、周囲の喧騒と花火の音しか聞こえなくなる。
しかしそれは嫌な沈黙ではなく、かといって心地よい沈黙というわけでもなく、上手く言えないがもっと別な……。
はっ!
まさかこれが、いわゆる良い雰囲気ってやつなの!?
ドキがムネムネしすぎてどうにかなっちゃいそう。
むしろとっくに思考回路がおかしくなってるまである。
結衣「その、さ……」
そんな俺に追い打ちをかけるかの如く、由比ヶ浜がぽしょりと言葉を紡ぐ。
八幡「なんだ?」
結衣「…………」ゴクリ…
結衣「キス……しても、いい?」
八幡「なっ!?」
八幡「由比ヶ浜さん? こんな公共の場で正気か……」
結衣「こういう雰囲気でファーストキスできたら良いなぁって、思って。ダメ……かな?」
この前時間と場所を弁えろとか言ってたのはあなたですよね?
あと上目使いはやめろ!
そんな潤んだ瞳で見つめられたら、俺は───
結衣「ほ、ほら! みんな花火の方見てるし、周りの目を気にする必要はないかなぁ~、みたいな……」
八幡「…………」
結衣「ッ~~~~~~!????」
───勝手に動き出す体を、止めることができなかった。
由比ヶ浜の言葉を遮るかのように抱きよせ、顔を近づける。
そして………
八幡「…………」
結衣「………ん」
………気付いた時には、俺の唇と由比ヶ浜の唇が重なっていた。
八幡「……これで良かったか?」
結衣「 」ポケー…
八幡「由比ヶ浜? おーい、大丈夫かー?」
結衣「 」
返事がない。まるで屍の様だ。
ってかそういうリアクションは勘弁してくださいよ。
いつものコミュ力で場を和ませるくらいのことしてくれないと、恥ずかしすぎて死んでしまいそうにそうになる。
……ええい。
既に俺の羞恥心は限界突破だ。
ここまできたら、どれだけ恥を重ねてしまっても、もう変わらない気がする。
結衣「 」
八幡「大丈夫か、……結衣」
結衣「……うぇっ!? ヒ、ヒッキー? 今、あたしのこと名前で……」
八幡「……できない約束はしないって話、したことあったろ」
八幡「この前、その内名前で呼ぶって言っちまったしな……」
結衣「うん……、ありがと…………は、八幡」
うっ……。
思わず言葉に詰まってしまう。
ってかヤバイヤバイ。
さっきから由比ヶ浜の顔を、とてもじゃないが直視できない。
柔らかい唇の感覚とか初めてのキスの味とか考えれば考えるほどどつぼにハマって抜け出せなくなる気がしたので、どうにか誤魔化しを試みる。
八幡「まぁ、その、なんつーか……」
結衣「いいよ、無理に何か言おうとしなくても。あ、あたしも今かなりテンパってるし……」
八幡「そうか……」
結衣「うん。それにね……、十分幸せだから」
キムチ?
花火で明滅する視界の中、喧騒も花火の音も意識から外れ、由比ヶ浜の言葉のみが耳に残る。
由比ヶ浜の頬が朱に染まって見えるのは、きっと花火の明かりのせいだけではないのだろう。
多分俺も真っ赤になってるし。
それにしても、幸せ、か。
ありきたりで陳腐な言葉だが、由比ヶ浜のまっすぐな言葉は妙にしっくりとくる。
俺達が付き合い始めるまで、それなりに長い月日を要した。
亀の様な歩みかもしれないが、少しずつ少しずつ、たしかに進んできた。
3年前の春に出会い、2年前から交流を持ち、色々あった高2・高3を経て、ようやくここまで辿り着いたのだ。
だから、
俺がリア充を満喫するのは何かがまちがっている気もするけど、
幸せだからまぁいいか……。
~ 由比ヶ浜「キス……しても、いい?」 八幡「なっ!?」 ~
了
乙。
続きはよ。
キスの後にやることはよ
「キムチでもいい?」のネタを出してきたのは、>>278で3人目かな?ww
あっちの世界で東山さんは、言う側ではなく聞き間違える側やったやろいい加減にしろ!(笑
>>280 >>281
いやあの、キスの続きとか言われてもワタシヨクワカラナイ……。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございましたm(__)m
没ネタは頭の中にあるだけで書き貯めてあるわけじゃないから、更新は数日後になると思います。
明日は午前中バイトで午後から焼肉食いに行く予定あるし、
月曜は歯医者で親知らず(3本目)を抜かなきゃならないから、
没ネタ書けるとしたら火曜あたりかな?
>>262で言われたような話は、本編終わったにもかかわらず没ネタ見てくれてる人とか多そうだったら、そのうち投下するかも。
火曜まで話の更新はしないけど一応スレをチラチラ気にしてると思うので、
雑談とか質問とか雑談とかダメ出し(荒らしはスルーするけど全うな批判はちゃんと聞きます)とか雑談とかあればどんどんどうぞ!
乙!!
さて、八幡もデレたことだし
これからはどんどん砂糖をぶっこんでいこう
>>284
デレたとはいえ、こいつらマジで進展遅いからなぁ。
名前呼びも大事な時だけで、普段はヒッキー由比ヶ浜呼びに戻ってそうなイメージ。
一体全体、いつになったら肉体関係に発展するんですかねぇ……(ゲス顔)
いやまぁどうせエロ描写とかできないんだけどね!!
>>285
かままととぶってんじゃないよ。生娘じゃあるまいし
火曜あたりまで没ネタ更新しないなら、それまでsage進行でいこっと。
>>284も乙ありだけどsage忘れてんぞ。
>>286
真面目な話、エロは書いたことも描いたこともないんだよな~。
挑戦してみたい気がしないでもないけど、見るに堪えないものになりそう。
仮に挑戦するにしても、当分あとになると思います。
乙
いつか別ヒロインもよろしく
乙
まだまだ二人のイチャイチャ分が足りない、MAXコーヒーくらいまでお願いします
乙
>>289
別ヒロインが目立つ話は好き。このスレ内でも、小町やいろはすが結構目立ってた気がするし。
でも、自分で書きたくなるカップリングとしては八結一筋なんだよな~。
見る分には八雪も好きなんだけどね。
>>290
彼女いない歴=年齢だから、正しいイチャイチャの仕方が分かんねえんだよゴルァアアア!!!
……ごめんなさい取り乱しました。
ただでさえヒッキーが誰かとラブコメしてる時点で若干キャラ崩壊気味にならざるを得ないのに、甘々にすれば
甘々にするほど「誰だよおまえ」って感じになりそうな気はするけど、自分も八結で激甘イチャコラが読みたい!
>>291
さんきゅ。
お前男だったのか、なんかコメントが女の子っぽかったから誤解してたじゃねーかよ
>>293
ちょっとまてぃ!
1度たりともネカマっぽい発言をしたことはないと思うんだがどうしてそうなった……。
あれか。一人称のせいか。
普段俺って使わないから、格式ばって(?)自分or私を使ってたために勘違いされたのかな。
まぁいいや。
付き合い始めを書かないなんてジグソーパズルの最後の1ピースを埋めないようなもんだ
京大生「成就した恋ほど語るに値しないものはない」
パズルのピースが埋まって行く。
◆今日からしばらくの間更新していくのは、高校卒業~6月半ばくらいまでの話です。
数ヶ月前にほぼ初SSとして書いた話を色々手直ししつつ投下していくことになるので、
更新スピードは少しノンビリめかもしれません。
それでは、お付き合いのほどよろしくお願いいたします!
【入学篇Ⅰ:ごーいんぐ・ごーいんぐ・あろーん・うぇい。】
総武高校卒業式から数週間が経過した。
由比ヶ浜は今頃何をしているのだろうか。
雪ノ下はもうこの地に居ないのだろうか。
ケータイを見つめながら、ついそんなことを考えてしまう。
小町「お兄ちゃん、ここんとこスマフォいじってること多くない?」
八幡「ん。あぁ~、そうかもな」
八幡「材木座の奴が、東京の生活はこうだの一人暮らしはああだの、一々連絡してきやがるんだ。無視したら無視したで更にウザいし……」
小町「でも、今メールしてる相手は中二さんじゃないんじゃない?」
なんでそんなこと分かんだよ。
小町「表情でバレバレだよ。多分結衣さんでしょ」
俺の視線だけでの問いかけに対し、小町は嫌な笑みを浮かべながら答えてくる。
人の心を読むのはやめなさい!
八幡「まぁ、そうだけど」
小町「デートのお誘いですかな?」
八幡「明日暇か聞かれただけだ。ちなみに暇じゃない」
小町がジトぉ~っとした目で、こちらを睨みつけてくる。
あの、明日暇じゃないっていうのは珍しく本当のことなんですけど……。
八幡「昨日の俺とかーちゃんの会話忘れたのか?」
小町「あ、そっか。たしか明日は入学式用の服を買いに行くんだっけか」
八幡「その通り」
そんな会話をしながら、由比ヶ浜への返信をパパっと済ませてしまう。
小町「お兄ちゃんお兄ちゃん、まさかとは思うけど、『暇じゃない』の一言で返信したんじゃないだろうね?」
八幡「そのまさかだけど何か?」
小町「これだからごみぃちゃんは……」
明日暇かと聞かれて暇じゃないと返しただけであって、俺は何一つとして嘘はついていない。
わざわざ聞かれていない日の予定まで、教えてやる必要もないしな。
小町「このまま二人が疎遠になっちゃったら、小町は嫌だな」
八幡「そうなったらそうなったで、仕方のないことなんじゃないのか?」
小町「それで良いの? もしもこのまま離れ離れになっちゃったら、後悔するんじゃない?」
一瞬、言葉に詰まる。
今までの様々な思い出が蘇る。
だが、あの眩しすぎる毎日はもう戻ってこない。
時間の経過だけは、努力ではどうにもならないのだから。
八幡「たしかに、後悔も惜しむ気持ちもある。だが、惜しむのは由比ヶ浜のためじゃない」
八幡「自分の青春を惜しむんだ。自らの時を、自が浸っていたあの時間と空間を惜しむんだ」
小町「は? 何言ってんの?」
八幡「だからな小町。俺は俺なりにちゃんと由比ヶ浜のことも考えてみるから、おまえは気にすんな」
小町「むぅ……」
すでに、あれから色々と考えたさ。
由比ヶ浜のこと。俺自身のこと。
きっと由比ヶ浜は、大学で沢山の友達を作って、忙しいながらも充実した日々を送るのだろう。
そして俺は、慣れない大学生活に四苦八苦しながら、せめて休日くらいは精一杯引きこもるのだろう。
そこに互いが介在する余地はない。
そして出した結論がこれだ。
連絡がくれば、決して無視はしない。
しかしそっけない態度でしか応じない。
そうしておけば、きっとその内今の関係は解消される。
失われることがわかりきっているものを延命させることになんの意味があるのか。
いつか失くしてしまったものを時折そっと振り返り、まるで宝物みたいに懐かしみ慈しみ、ひとりそっと盃を傾けるような幸福も、きっとある。
だから、俺と彼女の青春ラブコメは、これでまちがっていないはずだ。
小町「最近のお兄ちゃん、ちょっとおかしいから心配だな」
八幡「おかしいって何が」
小町「ん~。上手く言えないんだけど、ボ~っと遠くを眺めてたり、今朝も何かそわそわしてたし、う~ん……」
朝そわそわしてたのは仕方ないじゃん……。
あの日、俺に寄りかかって来た由比ヶ浜の柔らかさ。とても心地よい髪の質感、そして匂い。
そういったものがインプットされすぎてて、度々夢に出てきちゃうんだよ……。
───『比企谷君のことだから、少し由比ヶ浜さんと距離を置こうなんて考えているのかもしれないけれど、どうせそんなことは無理だもの』
ふと、雪ノ下の声を思い出す。
これはつまり、由比ヶ浜と会わない日々に、俺の方が耐えられなくなるという意味だったのか?
いやいやいや。
そんなことがあってなるものか。
俺は今まで、ボッチに誇りを持って生きてきた。
それなのに、たった一人の人間と疎遠になるだけで辛いなんてことがあっちゃならない。
別に寂しくなんて全然ないし?
最近ボ~っとしていることが多いのだって、ついつい由比ヶ浜のことを考えてしまうからとかそんな理由では断じてないし?
ホントダヨ。ヨソジャナイヨ。
小町「お兄ちゃん何してんの? 一人にらめっこ?」
八幡「……そんなに変な顔してたか?」
小町「うん。かなりキモかった」
八幡「うぐっ……」
と、とにかく!
この二年間が異常だっただけで、独りきりが俺にとってのスタンダードだ。
だから、ぼっちならぼっちでいいだろ。
小町に何を言われようとも関係ない。
俺は俺の道を行く。
こうして間違えに間違えまくったまま、俺のキャンパスライフは幕を開けるのであった……。
【入学篇Ⅱ:特筆すべきこともなく、大学生活は始まりを告げる。】
4月、ついに大学生の仲間入りである。
俺の大学生活は、至って普通の幕開けであった。
入学式当日に事故に巻き込まれたり、不思議な巡り合わせがあるなんてこともない。
高校の時が異常だっただけで、これが普通だ。
ザ・普通。
普通って最高!
そして現在俺は、愛すべき我が家へ帰宅中。
クラス別けも班活動もない大学がどんなに気楽であろうと、やっぱり家が一番快適な事に変わりはない。
誰かと共に寄り道をすることもなければ、当然サークルなんてものにも入っちゃいない。
履修している講義さえ終わればすぐさま帰る。
これ、基本中の基本な。
ちなみに通学手段は、自転車と電車、そして駅から大学までの徒歩だ。
高校へ通っている時と比べ手間は増えたが、運が良ければ電車で座っていられる分むしろ楽になったかもしれない。
大体、総武高校へ通うのにも結構時間かかってたしな。
中学時代の連中と同じ高校へ通わなくて済むよう、わざわざ遠くの総武高校を選んだのは自分なため、誰にも文句は言えないが……。
そんなどうでもいいことに思考を割いている内に、我が家へ到着。
玄関を開けると、まるで俺を待ち構えるかのように小町が居た。
小町「お兄ちゃんおかえりー!」
八幡「……おう」
小町「うっわー。わざわざ可愛い妹が出迎えてあげたのに反応わるぅ~い」
八幡「自分で自分の事可愛いとか言っちゃうなよ。まぁ可愛いけど」
小町「今の小町的にポイント高いよっ! まったくもうこの捻デレさんめー」
八幡「はいはい。あ、俺ちょっと寝るから晩飯の時間になったら起こしてくれ」
小町「…………」
八幡「ん、どうかしたのか」
え、もしかして俺の事を起こしにくるの嫌なの?
今までなら、それくらいのこと快く引き受けてくれていたというのに、もしかして遅れ気味の反抗期?
それとも俺嫌われちゃった!?
後者なのだとしたら、ショックすぎて起こされても起きれなくなりそう。
むしろ永眠まである。
小町「あのさ、最近のお兄ちゃん、なんか元気なくない?」
八幡「……別にそんなことないぞ。むしろ大学生活が平和すぎて、幸せに満ち満ちているくらいだ」
小町「ふーん」ジトー
八幡「な、なんだよ」
小町「あーあ、何があっても小町にだけは正直に話してくれると思ってたのになー。ショックだなー」
八幡「その言葉、全然気持ちが入ってないだろ」
小町「テヘッ☆」
八幡「おい……」
小町「でも、何かあったなら話してほしいってのは本当だよ」
今までの俺なら、ここで正直に話していたことだろう。
生徒会選挙の時なんて、小町に話すことが出来たおかげで随分と救われたし。
だが、今は……。
八幡「よく言うぜ。お前も俺に黙ってることがあるくせに」
小町「うっ、それは……」
八幡「別にそれで良いんじゃねえの?」
八幡「小町が話したいことがあるなら何でも聞いてやるけど、話したくないことまで無理に話す必要はない」
小町「…………」
八幡「そしてその逆もまた然りだ。俺も話したくないことまでは話さん」
小町「ごめんね、お兄ちゃん。その……、奉仕部がなくなっちゃうこと、今まで黙ってて。」
八幡「まぁ、そんなに気にすんな。部員が小町一人じゃ、廃部になるのは仕方ねえよ。」
雪ノ下ならともかく、他のやつが一人で奉仕部をこなすのは中々難しいことだろう。
八幡「それに、そのこと俺知ってたし」
小町「平塚先生から?」
八幡「あぁ。ちょっとこの前メールしてな」
小町「そっか……」
おっと。
小町に悲しそうな顔をさせてしまった。
こんなんじゃお兄ちゃん失格だな。
八幡「安心しろって。俺に元気がないように見えたんだとしても、そのせいではないから」
小町「うん……。でも、ほんとにごめんなさい」
小町「前は、小町のためにも奉仕部を守ってみたいなこと言ったくせに、こんなことになっちゃって」
八幡「だから気にすんなって言ったろ。たしかに奉仕部には色々と思い出があるが、今となってはもうどうでもいいさ」
小町「お兄ちゃん……」
嘘ではない。
俺にとって奉仕部という部活は、“部活そのもの”は、元々そこまで大事ではなかったのだろう。
それこそ以前めぐり先輩が言っていたように、奉仕部が全員で生徒会へ移行しても良かったのかもしれない。
そう、俺が守りたかったのは、部活などという形式上のものではない。
大事なのは場所や団体名などではなく、そこに存在している人と人との関係性だ。
俺と雪ノ下が静かに本を読み、
会話がなくとも落ち着けて、
そこに騒がしく由比ヶ浜がやってくる───
───そんな空間こそが、俺が本当に守りたかったものなのだから。
【入学篇Ⅲ:やはり俺のキャンパスライフはまちがっている。】
───『待たないでこっちから行くって、ずっと前に決めたもん』
─────『そう簡単に諦めるわけないじゃん!』
───『あなたのおかげよ』
─────『私も、あなたと出会えて、本当に良かったわ』
八幡「んぁ……」
小町「あ、おはよー」
夢を見ていた。
忘れられない、しかし二度と戻れはしない日々の夢を。
奉仕部が廃部となってから数日経った、そんなある土曜日のことである。
今日は大学の特別講座もないので、俺は家でダラダラと優雅な休日を満喫していた。
ソファーで寝っ転がっていただけのつもりが、どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
小町「お兄ちゃんさー、ボッチに逆戻りしちゃったから最近元気なかったんでしょ~」
八幡「は? 何言ってんの? 変な気づかいとかしないで済んで、超気楽で快適に決まってんだろ」
小町「またまたー、そんなこと言ってほんとは寂しいくせにっ!」
うわ~……こいつうぜぇ……。
この前のしゅんとした態度は一体なんだったのだろうかと思うくらいに、小町は元気を取り戻していた。
まぁ辺に落ち込んでいられるより、こっちの方が小町らしくて俺としても嬉しいんだけどな。
八幡「いや、別に寂しくないし。全然寂しくないし」
大事なことなので二回言いました。
八幡「それにお前がいちいち心配しなくても、ちゃんと高校のやつらとは連絡取り合ってるからな」
小町「そなの?」
八幡「あぁ、戸塚や平塚先生とはたまにメールのやり取りしてるし、材木座からは一方的にしょっちゅう連絡くるし……」
材木座に関しては半分くらい無視しているが問題ないだろう。
そのくらいが丁度良い。
ちなみに、材木座は東京の専門学校へ、戸塚と雪ノ下は東京の大学へ進学した。
ついでに川…なんとかさんは、千葉県内の大学へ通っているそうだ。
県外へ進学したやつらは一人暮らしを始めたらしい。
雪ノ下は高校時代から一人暮らしをしていたため問題ないだろうが、戸塚大丈夫かな……。
戸塚のことだ、家事なんかは頑張ればどうとでもなる気もするが、あんな可愛い天使が都会で一人暮らしとか不安すぎる。
小町「いやいや、先生や戸塚さんや中二さんのことじゃなくて……」
小町「結衣さんとか雪乃さんとか結衣さんとか結衣さんとはどーなってんのさ!」
八幡「俺と雪ノ下が一々メールや電話なんてするわけないだろ。あとなんで由比ヶ浜を三回言ったんだ」
小町「ぶ~、今日のお兄ちゃんの態度、小町的にポイント低い!」
八幡「んなこと言われても知らねえよ……」
今までふざけていた小町の顔が、ふと真剣なものになる。
やだこれ嫌な予感しかしない。
小町「結衣さんとのこと、このままで良いの?」
八幡「……どういう意味だ」
小町「小町だって一年間一緒に部活動してきて、もう分かってるんだよ?」
小町「お兄ちゃんは結衣さんの気持ちにちゃんと気付いてて、それが満更でもないことくらい……」
八幡「…………」
あぁ、その通りさ。
高校三年に進級した頃からのあいつの態度は、積極的というか大胆というか、とにかく分かりやすいものだった。
それこそ俺が、これは勘違いしているだけだなんて自分に言い聞かせて、由比ヶ浜の気持ちから逃げることが許されない程に。
だから、『あたしが無事に合格したら、聞いてほしい話があるの』と言われた時、俺は正面から話を聞くつもりでいたし、なんなら答えだって決まっていた気もする。
だが、それはもしもの話だ。
そんな仮定の話をして何になる。
それに、あんなのは高校で共に時間を過ごしていたからこそ芽生えた、ほんの一時の感情に過ぎない。
この瞬間だけを切り取って見れば、由比ヶ浜が俺に対し抱いている感情は、嘘の混じらない確かな本物なのだろう。
けれど、それはあくまで現在の話だ。ならば未来は?
そんな不確かなものが、別々の学校に通うようになってまで、ずっと続くなんてことはありえない。
永遠などというものはないのだ。
それだけではない。
大学へ行けば、俺より見た目も性格も良い男なんていくらでもいるだろう。
顔もスタイルも人当たりも抜群に良い由比ヶ浜のことだ、引く手数多過ぎて逆に困っているかもしれない。
だったら、あいつは過去の恋愛なんてとっとと忘れて、傍で自分を守ってくれる素敵な彼氏でも見つければ良い。
んでもって俺は引き続き、超平和ボッチライフを満喫するだけ。
ほら、簡単だろ?
誰も傷つかない、皆幸せな世界の完成だ。
八幡「あのな小町、俺と由比ヶ浜はただの友達だ。それ以上の関係になることなんて今更ありえないし、そうなる必要性もない」
小町「必要性とかそういう問題じゃないでしょ」
八幡「必要のない事、やらなくてもすむことはやらない。それが俺の生きる道さ!」キリッ!
よし、バッチリ決まった。
冷ややかな視線を向けられているような気もするが知らん。
モンダイ ナンカ ナニモナイヨ♪ ケッコー ケッコー イケルモンネ♪
せっかくニヒル(?)を気取っていたところだったのに、間の抜けた着メロが鳴り響く。
誰だよこんな頭悪そうな曲を設定したやつは。
……俺しか居ませんね、はい。
FROM ☆★ゆい★☆
SUB やっはろー!
ヒッキーお久しぶりo(≧▽≦)o
元気してた?
日曜なら絶対に暇してるって聞いたよ!
じゃあ遊ぼう!
全は急げってことで、さっそく明日遊ぼう(〃ω〃)
10時にららぽ前集合だからね(*・ω・)b
遅れたり午後10時に来たりしたら許さないからっ!!
以上☆
えぇ~……
何この頭空っぽ感満載のメール……
つーか『日曜なら絶対に暇してるって聞いたよ』ってなんだよ。
誰から聞いたのかも、なんで暇=遊ぶことになるのかも分からねえよ。
しかも俺に拒否権はないわけ?
あと、『全は急げ』じゃなくて『善は急げ』だからな。
由比ヶ浜の場合ただの誤変換ではなく、素で間違っている可能性が微粒子どころか原子・分子レベルで存在している。
まぁ、誰から聞いたのかは大方見当付くんだがな。
八幡「おい、小町」ジー…
小町「へへへー、出来の良い妹を持ってお兄ちゃんは幸せ者ですなぁ」ニヤニヤ
ケッ、余計なことしやがって。
この際もうあれだ。
一方的にメールが来ただけだし、了承したわけでもないし、いっそのことサボってしまおう。
小町「もしも明日すっぽかしたりしたらさ、再来週気まずくなっちゃうんじゃない?」
八幡「俺の頭の中を読むな。あと再来週ってなんのことだよ」
小町「あれ? まだ話してなかったっけ?」
小町「ゴールデンウィークに雪乃さんがこっち戻ってくるから、一緒に集まろって話になってたじゃん」
なってたじゃんとか言われましても知らないんですが……
また俺だけ聞かされてないパターン?
何それ泣きそう。
小町「とーにーかーく! この前珍しく雪乃さんの方から連絡がきて遊ぼうってことになったんだから!」
八幡「雪ノ下がそんな用事で連絡寄越すようになったことは驚きだが、俺には一言もないあたりに悪意を感じる」
小町「計画はこちらに任しといて下さいって返事しちゃったし、小町に恥かかせるような真似だけはしないでよね?」
八幡「はいはい、わーったよ……」
大学入学を機に俺は独りに戻るものだとばかり思っていたし、それを受け入れていた。
そのことを疑いもしなかった。
だがよくよく考えてみれば、あの雪ノ下雪乃が、一度手に入れたものを……俺達との繋がりを、そう易々と手放してくれるはずがないよな。
となれば、やはり俺の方が間違っていたのだろう。
八幡「はぁ……」
小町「?」
間違えることは罪だ。
間違えは問い直さなければならない。
間違えは償わなければならない。
明日、由比ヶ浜とデーt……ではなく! ではなく!!
明日、由比ヶ浜と共に買い物とか飯食ったりとか何かする。
その程度の事で、きっと許してもらえてしまうのだろう。
八幡「そういうことなら、仕方ないよな」
小さくそう呟き、少しだけ頬を綻ばせながら、俺は───
FROM 比企谷八幡
SUB Re:やっはろー!
了解
───とても簡潔な返事を送るのであった。
小町「お兄ちゃん顔がニヤけててキモい」
八幡「せっかくの雰囲気が台無しだよッ!!!」
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ~入学篇~
了
はい。
本日更新分はこれにておしまいです。
デート篇は明日頑張ります!
おつ、デート編はよ
はよ
おつ
おつ
【デート篇Ⅰ:依然として、雪ノ下雪乃の毒舌は変わっていない。】
八幡「あぁ~……、どうすっかなぁ……」
由比ヶ浜との約束の前日、俺はベットでゴロゴロとしながら頭を悩ませていた。
まぁどうするも何も、既に了承の旨を返信してしまっているので、逃げるに逃げられないわけだが。
一度承諾した約束をすっぽかすわけにはいかないだろう。
そんなことを考えながら由比ヶ浜から届いたメールの文面をぼーっと眺めていたら、突如ケータイが鳴り響いた。
手に持って眺めてる時に急に鳴り出すのやめてくんない?
ぶっちゃけびびる。
平塚先生や戸塚……あとついでに材木座と連絡を取り合うことは今でもたまにあるのだが、その時は大体メールだ。
しかし、今かかってきているのは電話だった。
しかも知らない番号からである。
ピッ!
八幡「…………」
??『…………』
八幡「もしもし?」
??『……もしもし』
八幡「えーっと、あの、どちら様でしょうか?」
??『…………』ハァ…
何これ、間違い電話?
切っちゃって良いの?
雪乃『まったく、久し振りに会話してあげようと思い電話をかけたというのに、声で気付くことも出来ないなんて一体どういうつもり?』
雪乃『目だけでなくついに耳まで腐ってしまったというの? このまま症状が悪化して、そのうち全身が腐敗してしまうのかしら。良い気味ね』
あっれれー? おかしいぞー?
俺と雪ノ下は、たしか連絡先を交換したことがあったはずだ。
交換したのは、出会ってから何ヶ月も経過した頃のことではあったが……。
機種変でもして、そのことを俺にだけ教えてくれなかったのだろうか?
地味にショックだ……。
雪乃『安心なさい、別にケータイを変えたわけではないわ。これは家の固定電話よ』
雪乃『そのくらいのこと電話番号の頭を見れば分かると思うのだけれど、……あなた馬鹿なの?』
そうですね、ちゃんと電話番号を見ていなかった俺が悪いですね。
あと、雪ノ下には俺の頭の中でも見えているのでしょうか?
何それ怖い。
八幡「おい、急に捲くし立てるように喋るなよ……。ってか、おまえ今東京で一人暮らししてんだろ? よく固定電話なんて持ってるな」
雪乃『えぇ。固定電話があった方が、FAXとか地震速報とか何かと便利だから』
地震速報の設定くらいケータイでもできた気がするんだが。
あぁ、こいつ、ケータイにもそういう機能が付いていることを知らないんだろうな……。
雪乃『なんだか今馬鹿にされたような気がするわ』
八幡「き、気のせいじゃないか?」
だから俺の脳内を読むのは止めてもらえませんかね。
雪乃『さて、そろそろ話の本題に入りたいのだけれど』
八幡「本題も何も、いきなり訳分からんこと言ってきたのはそっちだろ。大体、“もしもし”の一言で誰の声だか判断しろって難易度高すぎじゃないか?」
雪乃『これ以上話の腰を折るのは止めなさい。まったく、これだからあなたという人は……』
えぇ~……。
これ、俺が悪いの?
雪乃『とにかく、話の本題に入りたいのだけれど、今お時間大丈夫かしら?』
現在、午後9時過ぎ。
電話をするには少々遅い時間帯ではあるものの、由比ヶ浜に指定された時刻までまだ半日以上もある。
つまり、残念ながら暇だった。
仕方がない。
あまり良い予感はしないが、俺は雪ノ下の話を聞くことにしたのであった……。
【デート篇Ⅱ:トラブルはいつも、突如として訪れる。】
雪ノ下との長電話の後、俺は中々寝付けず……と思いきや、いつの間にやら眠りに落ちていた。
そして夜は明け、なぜか約束の時間より30分も早く由比ヶ浜との集合場所に到着。
……ぎりぎりまで家でのんびりしておく予定だったんですけどね。
別に由比ヶ浜と会うのが楽しみだったとか、家に居てもそわそわして落ち着かなかったとか、そんなことはない。
断じてない。
本当ダヨ? 嘘ジャナイヨ?
そして辺りを見回してみると、
「そこのカワイイ君、ちょ~っと時間あるかな?」
「俺達と一緒に遊ばない?」
「え、ええっと……」アタフタ
なぜか典型的なナンパを受けているやつがいた。
今どきこんなナンパをする奴等なんて居るんだな。
まぁ俺は、古典的なナンパも近代的なナンパも、そもそもナンパに古典や近代があるのかどうかも知らないが……。
「その、ごめんなさいっ。今、人を待ってて……」
「そんなこと言ってー、さっきからずっとここに居るじゃん! 約束すっぽかされちゃったんじゃないの?」
「その分俺等が楽しませてあげるからさ、どう?」
二人の男に絡まれているその女性は、流石ナンパをされるだけのことはあり、非常に良い見栄えをしている。
首回りが少々大きく開いた上着からは鎖骨が艶めかしく覗いており、下はミニスカートにニーソックス。
洋服にあまり聡くない俺の目からでも、中々にお洒落なことが見受けられる。
というか、どこからどう見ても由比ヶ浜結衣だった。
それにしても、チャラ男の先程の言動には少々引っ掛かる部分がある。
さっきからずっとここに居るってどういうことだよ。
俺、集合時間より30分も早く来たんですけど?
助けてやりたいのは山々だが、自分より格段に強そうな二人の男を相手に真正面からメンチ切るわけにもいかない。
如何に上手く口八丁手八丁でこの場を納めるか思案していると、良い案を思いつく前に由比ヶ浜に気付かれてしまった。
結衣「あっ、ヒッキー!」トテテ
八幡「ちょ、おまっ!?」///
駆けよって来た由比ヶ浜が、突如、俺の腕に抱きついてきた。
なるほど、こうすれば奴等も諦めると思ったのだろう。
行動の理由も理屈も理解できる。
でも止めて下さいお願いします!
ここ1ヶ月程、女性と会話すら一切していなかった(ただし家族や店員……と、昨晩の電話は除く)というのに、いきなりこんなことをされてしまうと、ほら、色々と、ね?
ふと、由比ヶ浜の口が俺の横顔に近づいてくる。
ま、まさか、そのまま頬にキスとかしちゃうつもりなのん!?
まてまてまて! いくらなんでもそこまでする必要はないだろっ!!
だが、どうやらそれは俺の杞憂だったらしい。
結衣「そんな怖い顔してると、相手怒らせちゃうよ……」ヒソヒソ
耳元でそんなことを囁かれる。
怖い顔などしていたつもりはないのだが、おかしいなぁ。
とりあえず、必死で苦笑いを取り繕う。
結衣「う~ん……その顔はなんかキモいかも」ボソッ…
とても小さな声で呟いていたが、顔が近いせいでばっちり聞こえてしまった。
小町ちゃん助けて……僕もうお家に帰りたい……。
「チッ、彼氏持ちかよ」
「あーつまんねー」
そんなことを言いながら、二人の男は去っていく。
捨て台詞までテンプレなのが奴等の美学なのかもしれない。いや、そんなことはないか。
あと俺は、か……彼氏とか、そそそそんなんじゃねえし。
結衣「ヒッキー、ありがとね」ニヘラー
由比ヶ浜お得意の上目使いこうげき! 八幡に効果は抜群だ!
だがいきなりニヤケ面を晒してまたキモいと言われるのも嫌だし、必死で平静を装う。
八幡「いや、結局俺は何もできなかったし……」
結衣「そんなことないよ! 助けようとしてくれてたのは伝わってきたし!」
結衣「それに、ヒッキーが早く来てくれたから何とかなったんだよ」
八幡「そうか、なら良かった。…………と、とりあえず、もう腕から離れても良いんじゃないか?」
結衣「え? わぁぁぁあああっ!?」バッ!
由比ヶ浜が慌てて後ろへ跳び退く。
あぁ、せっかくの柔らかい感覚と良い匂いが……じゃなくて、今のは天然でやってたのか。
こいつの場合、行動に計算と天然が入り混じっているからそこが判断しづらい。
基本的には物凄く分かりやすいやつなんだけどな。
八幡「朝から災難だったな。んで、なんでこんなに早くから居るんだよ」
結衣「え? それは、ほら……///」
由比ヶ浜は、俺の服の袖を可愛らしくちょこんと摘みながら、笑顔でこう答えた。
結衣「今日が、凄く楽しみだったから」ニコッ
あざとい! あざとすぎる!!
どこぞの後輩など比べ物にならないあざとさである。
先ほどの天然と違い今度のは確実に計算であろうと理解していても、ついついドキッとしてしまうのが男の性。
あんまり俺の純情を弄ばないでください。
大体、最近少し暖かくなってきたからといって、そんな恰好でいるから変な奴等に目を付けられるんだ。
特別露出度が高いというわけではないにしろ、あまり周囲に見せたくない様な格好というかなんというか
……鎖骨や絶対領域が妙にエロい。あと、可愛いんだけどどことなくビッチっぽい」
結衣「どこ見てんの! 変態っ!! ヒッキーマジキモい!!! ……あっ、そうだ、あとビッチ言うなし!」ビシッ!
八幡「えっ」
どうやら、途中から考えが口に出てしまっていたらしい。
マジで?
やべー恥ずかしすぎるマジでちょっとどうしよう新たな黒歴史確定の瞬間キターーーーー!
結衣「ほんと、今の、ガチでキモいし……。でも、可愛いって言ってもらえたのは嬉しいっていうか、えっと……」モジモジ
八幡「あー、その、まぁなんだ。全面的に俺が悪かった、今の発言は忘れてくれ」
結衣「ヒッキーは、さ……あんまあたしを、周りに見せたくないって思ったって、本当?」
八幡「 」
まさに絶句。
さっきの俺は、そんな部分まで口に出していたのか……。
付き合っているわけでもないのに俺は何言ってんだ。
つーか仮に付き合っていたとしても、あまり言うべきことではないように思える。
もう恥ずかしいとかそういうのを通り越して、自分で自分をキモく思ってしまうレベル。
……割と本気で帰りたくなってきた。
むしろ冗談抜きで涙目である。
結衣「じぁあ……ゲーセンとか買い物とか色々するつもりだったけど、とっとと個室に入っちゃおっか?」
────はいぃ!?
いやDQN諦め早すぎるだろww
【デート篇Ⅲ:本日比企谷八幡の防御力は、平常と比べ格段に低い。】
個室と言われて淫らな妄想をした人は正直に手を挙げなさい!
今なら怒らないからっ!!
……ごめんなさい俺のことです。
あれから数分後、由比ヶ浜に連れて来られたのは、何の変哲もないカラオケボックスであった。
どうやらこいつは、フリータイムでここに居座るつもりらしい。
俺としては、そんなに長々とカラオケに居たくないんだげな。
しかし、
「ほんとはウインドーショッピングとかする予定だったんだけどさ、ヒッキーがあんなこと言いだすから仕方ないじゃん」
とか言われてしまっては、逆らうに逆らえない。
かくして、『6時間、地獄の耐久カラオケ大会』の幕開けである。
受付けを済ました由比ヶ浜の後に続き、室内へ入っていく。
由比ヶ浜はあからさまに、隣に1人分のスペースを空けるように座ったが、俺は気にせずテーブルを挟んだ反対側の席へ座る。
結衣「むぅ……」
おい、露骨に残念そうな顔すんな。
大体、わざわざ隣に座る必要ないでしょ。
こうした方が互いにスペースを広く活用できるし、飲み物を取りに行く時なんかも楽だ。
俺は至って合理的な行動をとったにすぎず、隣に座ると変な意識しちゃうからとかそんな理由じゃないんだからね!
八幡「とりあえずどうする、まずは歌うか?」
ここで『まずは互いに近況報告でもしよう!』なんて言われたら困る。
大学生になってから、何か話題になるような出来事なんて一切ないし……。
強いて言うならボッチに拍車がかかったくらい。
なにそれ悲しい。
結衣「そだね、歌おっか! ヒッキーは何歌う?」
八幡「いや、俺はあんまりカラオケ来ないし、一曲目にどんなのが良いか分からないからな。そっちから先に歌ってくれ」
結衣「ん~……。初めての相手と来ると一曲目何にするか悩むけど、別にあたしとなら何でもよくない?」
結衣「ってかヒッキー、なんだかんだ言って結構カラオケ来てたじゃん」
八幡「それはおまえが、受験勉強疲れたから帰りどっか寄ってこうよーとか訳分からんこと言って、俺や雪ノ下を巻き込んでただけだろ」
疲れたと言っておきながらカラオケに立ち寄るとか本当に意味不明。
わけが分からないよ!
それに、ほとんど由比ヶ浜が自分で歌っていた気がする。
まぁ実際楽しかったんですけどね。
俺、家だと鼻歌とか結構口ずさんじゃう派だし。
ボッチは家に帰ると、学校で喋れない分ついついテンション上がってしまうのである。
あと風呂場で歌うのも、良い感じにエコー効いて楽しいよな。
以前浴槽で熱唱していて、それが二階に居る小町にまで聞こえていたと知った時はかなり恥ずかしかった。
あれ、やっぱり御近所さんにも聞こえていたのかなぁ……嫌だなぁ……。
より一段と外に出たくなくなった。
結衣「よし、これにしよっと」ピッ
俺が黒歴史を思いだしている内に、曲選びが済んだようだ。
いかにも由比ヶ浜らしい元気なメロディーが流れ出し、それにマッチした元気な声で歌い始める。
前々から思っていたことだが、こいつってかなり良い声してるよな。
可愛らしく、尚且つ綺麗な声質をしている。
結衣「恋愛マスター ねえマスター この恋どこに向かうの♪ 想像ライアー ラブライアー 嘘も 過去もまとめて♪」Yeah!
それにしても、いきなりラブソングかよ。
勘弁してくれ。
あと、おまえ「ライアー」とか絶対意味分からずに歌ってるだろ。
ちなみに日本語訳すると「嘘つき」という意味である。
もし意味を理解したうえで、嘘も欺瞞も嫌いとの言いつつ嘘を吐きまくっている俺への皮肉として歌っているのだとしたら、由比ヶ浜さん怖すぎる。
結衣「ふぅ~、歌い終わったー」
八幡「随分楽しそうだったな」
結衣「うん!ヒッキーとカラオケ来れたの、久し振りだしね」エヘヘ
あんまりキラキラした笑顔でこっち見んな。
はぁ……、俺も何か曲入れるか。
結衣「ねぇねぇ」
八幡「ん?」
結衣「その……ヒッキーもさ、何か恋愛系の曲歌ってみてよ」
八幡「…………」
さて、どうするべきか。
ここで無理に断って妙な意識をしているように思われるのも癪だし、いっそのこと恋愛系の歌を入れてやるのも有りかもしれない。
八幡「よし。お望みとあらば、それっぽいのを歌ってやる」
結衣「えっ、マジで!?」ワーイ!
そう言って俺は自信満々にとある曲を入れると、メタルな音が鳴り響く。
八幡「ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ!」
結衣「いきなりデスボだっ!?」
八幡「モ!ト!カ!レ!コ!ロ!ス!」
結衣「!???」
八幡「君の元カレ 殺したいよ~♪ 君を汚したから~♪」
結衣「…………」
八幡「ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ア゛イ! ファック! ファック! ファック! ファック!」
結衣「 」ドンビキ
以上、比企谷八幡君による、大熱唱でした。
八幡「あぁ~、疲れた……。おまえが恋愛曲歌えとか言うせいで、一曲目から喉痛くなってきたんだが」ゲホゲホ
結衣「こんなの望んでないし……」
八幡「なんでだよ、男の醜い独占欲を前衛的に表現した良い歌じゃないか」
結衣「いや、なんかもういいや……」
よし、勝った!
俺に恋愛系の曲を歌わせようとした時点で由比ヶ浜が悪いな、うん。
これでも、『D!T!D!T!』とかやりださなかったあたり結構自重したんですよ?
結衣「まったくもう、ヒッキーはしょうがないなぁ」
そうだね。ヒッキーだからしょうがないね。
由比ヶ浜の前で、真面目に恋愛曲を歌うことなんてできるわけがない。
結衣「よし、次はこれにしよっと」ピッ
そう言って由比ヶ浜が入れたのは、またしてもラブソングであった。
うん、やはり良い声だ。
だけど、だけどな……
結衣「窓辺で 溜息 あなたに早く会いたい♪ 想いは 溢れる どうすれば伝わるの? わからない だけどね 大好きだよ♪」♡
なんでこんなにストレートな歌詞なの?
作詞したやつ馬鹿なの? 死ぬの?
ちょっと気になったので、スマフォを取りだし調べてみると……おいおいマジかよ。
こんな脳内お花畑な詩を書いたやつが、『青春アミーゴ』や『抱いてセニョリータ』の作詞者と同一人物とか、日本の音楽界はもうダメかもしれないミ・アミーゴ。
結衣「ほらほらダーリンベイビ感じてる? ほら ほら 笑顔見せて♪ 等身大の愛情を 届けるよ~♪」
そんなどうでも良いことをしている内に、いつの間にやら由比ヶ浜が俺の隣へ移動してきていた。
ちょ、近い近い! ドキドキしちゃうだろ!!
等身大の愛情とか要らないから向こうへ行ってくれ。
結衣「あのねダーリンベイビ信じてよ♪ ねぇ ねぇ 抱きしめてよ♪ 最高級の I need youを あげちゃうよ~♪」
今気付いたんだが、こいつテンション上がってくると少し独特な歌い方になるのな。
語尾を延ばす部分の音を少し上げる様な歌い方が耳によく残り、聴いていて心地よい。
声は心地よいのだが、隣で元気にぴょんぴょん跳ねながら歌われると、ついつい視線が、こう…スカートに……
結衣「La La La La La~♪」
どうやらこれで歌い終わったらしい。
あぁ、聞いていただけなのにドッと疲れた、主に精神力的な意味で。
気を抜くとすぐにスカートへ視線が吸い込まれそうになるが、理性を総動員しなんとか耐え抜いた俺偉い。
結衣「…………」ジトー…
八幡「ん、どうかしたか?」
結衣「さっきから、あたしの太股チラチラ見てたでしょ」
八幡「ぜっ、全然しょんなことないぞ!」
やべ、噛みまみた。
結衣「普通にバレバレだし!」
なん…だと!?
だが少し待ってもらいたい。
八幡「仮に、仮におまえの言う通りだとして、俺のすぐ隣で跳ねながら歌ってんのが悪い」
そうだ! 俺は悪くねぇ!
悪いのはいつだって世界の方である。
八幡「なんでいきなり隣に来たんだよ」
結衣「だって、なんだかつまんなさそうに、スマフォ弄りだしちゃうし……」
八幡「そう見えたんなら悪い。別につまらなくないけどな」
結衣「本当?」
あぁ、本当だ。
むしろ……
八幡「おまえが楽しそうに歌ってるのを見るのは、中々楽しいぞ」
結衣「っ! バ、バカ……」///
由比ヶ浜が、自分の頭のお団子をくしゃくしゃっと弄る。
照れた時によくやるこいつの癖だ。
高校の頃から変わっていない。
とてもくすぐったい空気。
過去の俺なら、絶対に嫌悪していた様な雰囲気だが───
───今の俺には、悪くないように思えた。
血遂げとかのんちゃんかwwwwww流石wwwwwwww
>>333
ごもっともなんだけど、ヒッキーVSモブチャラ男の話なんて長々書いてもつまらんでしょって思ったからこうした。
>>339
お、両曲とも分かってくれる人居たか! 嬉しい!!
しかし血遂げとか誤変換ひどいなwww
「イメージ的にガハマさんに合いそうな東山ソングってなんだろう?」って考えた結果、こうなりました。
晩飯食うんでちょい休憩します。
ひとまず乙
想いはRain Rainもここの主だっけ、いい酒が飲めそうだ
あとはらぶこーるさえくれば役満だな
いつまで晩飯食ってるんですかねぇ(怒)
ただいま。
>>344
一昨日3本目の親知らずを抜いたばかりだから食事に時間かかるんだよ!
仕方ないだろ!!!
まともな固形物が食えないせいで、圧倒的に肉が足りない。辛い。痛い。
>>343
想いはRain Rainの歌詞を若干参考しにた話だったら、>>57のことかな?
らぶこーるはなぁ……。
ttps://www.youtube.com/watch?v=nzc_H7Q7CmE
この弾き語り映像とか相当凄いと思ったけど、らぶこーるの曲調自体が結衣には合わない気がする。
あこちゃーも好きだし、無理に役満狙わないでザンクくらいを刻んでいきたいと思います(笑
んじゃ、再開!
【デート篇Ⅴ:こうして、比企谷八幡は決意を固める。】
雪乃『これ以上話の腰を折るのは止めなさい。まったく、これだからあなたという人は……』
時は戻り、昨晩の話である。
雪乃『とにかく、話の本題に入りたいのだけれど、今お時間大丈夫かしら?』
八幡「あぁ、何の要件で電話なんてしてきたんだ?」
雪乃『あなた、最近由比ヶ浜さんのことを避けているそうね』
八幡「……なんの話だ?」
雪乃『とぼけても無駄よ。由比ヶ浜さん本人から、既に言質は取っているわ』
言質って、何かの犯人かよ。
雪乃『あなたに何気なく暇かどうか尋ねても、遊びに誘う前に全てあしらわれてしまうと言っていたのだけれど』
八幡「あぁ~……、もしかして今回のドストレートなメール、差し金はおまえか?」
雪乃『えぇ。由比ヶ浜さんに助けを求められたものだから、
「シスコンな彼のことだもの、きっと小町さんに協力してもられば上手く行くのではないかしら」
と答えておいたわ』
八幡「小町に丸投げかよ、それズルいだろ……」
結果的に、まんまとしてやられたわけですけどね。
俺の妹があんなに可愛いのだから仕方ない。
雪乃『私としてもそのことに多少負い目があったから、こうして電話を──』
八幡「あー、おまえが心配するようなことは何もねえよ。ちゃんと明日遊ぶことになったから」
雪ノ下の発言を遮るようにして言い切る。
もう面倒だ、このまま会話を終わらせてしまおう。
雪乃『そう、ちゃんとデートは取り行われることになったのね』
八幡「デっ、デートとかそんなんじゃねえしッッッ!!!」
会話を終わらせるつもりが、思わず反射的に反論してしまう。
ほら、由比ヶ浜とはただ一緒に出掛けるだけであって、デートとかそういうアレなわけじゃ、ない…よ?
雪乃『あなた、まだそんなことを言っているの? いい加減素直になったらどうなのかしら』
八幡「……おまえには関係のないことだろ」
雪乃『いいえ、これは私が受けた依頼だもの』
依頼? 何のことだ?
俺を遊びに誘う件以外にも、由比ヶ浜に何か頼まれたのだろうか。
雪乃『私だって本当は、あなた達のことに一々御節介を焼きたくはないわよ』
雪乃『大体高3の時なんて、私も小町さんも同じ部室に居たというのに、毎日毎日イチャイチャと……』ゴゴゴゴ…
八幡「ファッ!?」
こ、こいつ、なんてこと言いやがる!
八幡「ちょっとまて! イチャイチャなんてしてなかっただろ! 毎回あいつが一方的に……」
雪乃『あら、下衆谷くんも相当デレデレしていたように見えたのだけれど、私の気のせいだったのかしら』
ぐっ、雪ノ下相手に普通の口喧嘩をしても勝てるはずがない。
よし、一旦落ち着こう。
クールになれ、比企谷八幡!
八幡「あのなぁ、おまえに言われるまでもなく、自分の正直な気持ちくらい当の昔に分かってる。本当に嫌なら、とっくに拒絶している」
雪乃『だったら……』
八幡「でもな、雪ノ下、色恋沙汰なんてほんの一時の幻想だ。そんな不確かなものが、別々の学校に通うようになってまで、ずっと続くなんてことはありえない」
雪乃『由比ヶ浜さんのことですら、未だに信用できないというの?』
八幡「そりゃ俺だって、奉仕部内に、それなりの信頼関係は既に築かれていると思ってるさ」
八幡「だが、完全に信用することなんてできないし、する気もない」
電話越しに、息を呑む音が聞こえる。
そして雪ノ下は、愁いを帯びたような声で言葉を紡ぐ。
雪乃『そう……。あなたはきっと、自分と付き合うことで彼女の立場が悪くなってしまうことを懸念して、今まで踏み込まなかったのだと思っていたのだけれど、違うのね』
八幡「違わない、それも理由の内だ。ただ、それだけじゃない」
由比ヶ浜の立場が悪くなるのを懸念して、か。
雪ノ下にそう言われ、あの嫌な記憶が頭をよぎる。
八幡「なぁ、相模南を覚えているか?」
雪乃『もちろん忘れてはいないけれど、急に何?』
八幡「おまえは由比ヶ浜に対し、絶対的な信頼を寄せているのかもしれない。だが、今から俺が懇切丁寧に───」
八幡「それは間違っているという理由を説明してやる」
由比ヶ浜と二人で夏祭りに行った時の話だ。
俺達はそこで、偶然にも相模と遭遇してしまい、嘲笑された。あざ笑われたのだ。
あの時の俺は随分と心が凍てついた。
俺と由比ヶ浜からしてみれば、相模の態度は酷い奴のそれに他ならない。
しかし、相模南の視点に立って物事を見てみると、話の中身はまるで違うものとなる。
雪ノ下は知らないかもしれないが、由比ヶ浜と相模は1年の頃仲が良かったそうだ。
それも、日頃からつるむレベルでの仲の良さだ。
それが2年生に進級したらどうなったと思う?
知っての通り、由比ヶ浜は三浦に目を付けられ、見事葉山グループの仲間入りを果たす。
そして、由比ヶ浜は相模との関わりをほぼ経ち切った。
本人は「さがみんは友達」だとか言っていたが、俺はあいつらが会話しているのを見たことがほとんどない。
その事象は、相模の目にはこう映ったはずである。
私よりカーストの高い連中と仲良くなった途端、奴は私を見捨てたのだと。
由比ヶ浜は、一年間ずっと仲良くしてきた相手を、いとも容易く見限った。
しかもそのことに対し、『1年の頃はよく一緒に居たけど、今はそうでもないから少し気まずい』程度の認識しか持っていない。
あいつはそういうやつだ。
そう考えてみると、夏祭りにおける相模のあの態度にも少しは正当性が出てくる。
あれは冗談やからかい混じりの攻撃などではなく、由比ヶ浜に裏切られたことに対する、相模なりの反撃だったのだろう。
この話の論点は、相模が可哀想だとかそんなことではない。
むしろあんなやつどうでもいいし、とっとと忘れてしまいたいまである。
重要なのは、『由比ヶ浜は、新たなより良い仲間と出会えば、過去の仲間を簡単に切り捨てる人間である』ということだ。
俺達と由比ヶ浜との関係が、相模と由比ヶ浜の関係と同等なものだとは思わない。
由比ヶ浜は俺達のことを、とても大切に想い、日頃から気にかけてくれているのも分かっている。
だとしても、5年後、10年後まで、それが続くとは限らない。
俺や雪ノ下も、いずれ相模と同じ立場になってしまうのかもしれない。
可能性としては、十二分に有り得る話だ。
それだけではない。
修学旅行のことを、戸部と海老名さんの件を思い出してみろ。
あいつは海老名さんの本心に気付くことなく、大岡や大和と共に、戸部を海老名さんへけしかけた。
大岡と大和が海老名さんの気持ちに気付くことができないのは、立場的に仕方がないとしよう。
だがあの時三浦は、葉山のように事情を知っていたわけでないにも関わらず、確かに海老名さんのことを理解していたのだ。
ならば、三浦とほぼ同じ立ち位置な由比ヶ浜に、理解できぬ道理はないだろう。
人間は見たいものしか見ることができない。
聞きたいことしか聞こえない。
あの時の由比ヶ浜はまさにそうだ。
あいつは戸部に持ちかけられたコイバナという餌にまんまと釣られ、海老名さん側の気持ちなど、自分にとって都合の良いようにしか考えていなかった。
誰がどんな弁解をしようと、これらは過去に起こった、紛れもない事実である。
結論を言おう。
つまり、例え由比ヶ浜結衣が相手であっても、絶対の信頼を寄せるのはまちがっている。
俺はそんなことを、数十分かけて、捲くし立てるように話し続けた。
とても長い話を聞き終わった雪ノ下が、ぽつりぽつりと喋り出す。
雪乃『……驚いたわ』
俺だって驚いたさ。
自分が他者をどう見ているのかについてここまで話したのは、高校二年時のクリスマスイベント前、平塚先生と語り合った時以来だ。
こんなことがまたあるなんて、想像すらしていなかった。
雪ノ下が相手だからこそ、できたことなのだろうか……。
雪乃『あなたが由比ヶ浜さんのことを、そんな風に見ていただなんて……』
随分と冷めた声でそう言われる。
八幡「おまえ、何か勘違いしてないか?」
雪乃『どういう意味かしら』
八幡「俺はあいつのことを、何1つとして悪くは言ってはいない」
暫し、雪ノ下が黙り込む。色々と思案しているのだろう。
そして十分な間を開けた後、こう言われた。
雪乃『……とてもそうは思えないのだけれど。あなたの支離滅裂な話を聞いていると、なんだか頭が痛くなってきたわ』
支離滅裂? 断じてそんなことはない。
俺の考えは徹頭徹尾一貫している。国語学年3位を舐めるなよ。
八幡「おまえさ……由比ヶ浜のことを、聖人か何かだと思ってないか?」
由比ヶ浜は、俺や雪ノ下の様な人間とこんなにも仲良くしてくれる、とても優しいやつだ。
ついつい、まるで女神のように感じてしまうのも分かる。
超分かる。
だがな、決してそんなことはない。
それは有り得ないんだよ。
良い部分だけの人間なんて、存在しているわけがない。
八幡「全ての相手と関わりを保ち続けるなんて不可能、友達の多い由比ヶ浜なら尚更のことだ」
八幡「自分にとってより良い仲間を見つけた時、過去の仲間を切り捨てるのは当然の行動であり、責められるようなことではない」
俺との関係性も、いずれ断ち切られてしまうのだろうか。
そう考えると心が痛くなる。
しかしそうなったとして、きっと自業自得なのだろう。
なにせ、現在由比ヶ浜を避けているのは俺の方だ。
八幡「また、見たいものしか見えず、聞きたいことしか聞こえないのも、誰だって同じだ」
俺もそうだ。
雪ノ下だって、時と場合によってはそうだろう。
八幡「だから由比ヶ浜は、卑怯な部分も醜い部分も沢山ある、至って普通の人間なんだよ」
そう、それが普通の人間というものだ。
全ての事柄に対して、常に正しくあろうとし続けるおまえのその姿勢も、それはそれで結構好きだけどな。
雪乃『成る程……。何となくだけれど、あなたの物言いも少しは理解できたわ』
八幡「そうか。そりゃ良かった」
雪乃『それで、だからどうするというの』
雪乃『由比ヶ浜さんがどんな人間であろうと、現在あなた達が互いに抱いている想いが、そう簡単に変わるわけでもないでしょう?』
八幡「……そうだな。…………その通りだ」
俺は一体どうするべきなのか。
そんなこと、高校卒業が近づいた頃からずっと考え続けてきたことだ。
由比ヶ浜には俺以上に良い相手がいくらでも居る。
だから、別々の大学になったことを機に、想いが経ち切れるまで一度距離を取るべきだと……。
その時の俺は、勝手にそう思い込んだ。
だって、かけがえのない存在なんて怖いじゃないか。
それを失ってしまったら取り返しがつかないだなんて。
失敗することが許されないだなんて。
二度と手に入らないだなんて。
でも、今更距離を置いたところで、もう手遅れのようだ。
八幡「雪ノ下、ありがとな」
雪乃『っ! 急に気色の悪いことを言い出すのは止めなさい。通報するわよ』
八幡「まぁ、なんだ。今まで頭の中で思索したことなら数え切れない程あったが、たまには口に出してみるもんだと思ってな」
どうやら自分で思っている以上に、由比ヶ浜のことを深く考えていたらしい。
とっくに由比ヶ浜は俺の中で、かけがえのない存在になってしまっていたんだ。
八幡「おまえのおかげで、自分の気持ちに整理をつけることができた」
先程、俺は彼女のことを、普通の醜い人間であると断じた。
関係性を断ち切られるのは心が痛いと、そう感じた。
これ以上、彼女の好意に甘えたままではいられない。
ならば、既に解は出ているはずだ。
八幡「だから明日、俺の出した答えを、あいつに告げてくる」
まったく、我ながら本当に面倒臭い人間だと思う。
こんな自分も愛しているがな!
俺は数年間の時を経て、ようやく、由比ヶ浜と本当の意味で向き合えそうだ。
とりあえず、今日はこんなもんでおしまい!!
また明日お付き合いくださいませ。
デート篇Ⅳを飛ばしてたorz
今から貼る話は、
【デート篇Ⅲ:本日比企谷八幡の防御力は、平常と比べ格段に低い。】 (>>334~>>338)
と
【デート篇Ⅴ:こうして、比企谷八幡は決意を固める。】 (>>346~>>353)
の間に入る話だと思ってください。
まぁデート篇Ⅴが電話シーンの回想だったし、どこに入っても辻褄は合うから問題ないっちゃ問題ないんだけど、違和感あるかも。
本当に申し訳ございませんでした。
【デート篇Ⅳ:由比ヶ浜結衣は更に踏み込む。】
結衣「あ~! スッキリした―!!」ニコニコ
八幡「あんだけ歌いまくっておきながら、なんで元気有り余ってんだよ……」
結衣「後半あたしが歌いまくってたのは、ヒッキーが全然曲入れなかったからじゃん!」
序盤はちゃんと交互に歌っていたんですよ?
だがな、アニソンなんかはOPの部分しか聞かないから、2番以降は知らないパターンが多いし、普通のメジャーな曲に至ってはそもそも知らなかったりする。
ようするに、フリータイムを耐え抜けるほどあまり歌を知らないのだ。
しかし中々楽しい時間であった。
由比ヶ浜がずっと楽しそうにしていたのが、まぁその……俺としても嬉しく感じたり、とかな。
こうして、俺と由比ヶ浜の無駄に長いカラオケがようやく終わった。
楽しかったけど疲れた……。
八幡「んで、これからどうする? もう5時だし帰るか?」
結衣「ん~、そだね」
あれ?
こいつのことだから、絶対「えー!もっと遊んでこうよー!!」とか言い出すと思っていたのに、これは意外な反応だ。
結衣「その代わり……、1つ、お願いしても良い?」
───そんなこんなで現在、由比ヶ浜の家から最寄りの駅へ降り立ったところである。
結衣「ついてきてくれてありがとね」
八幡「ん、まぁ日も傾き始めてるしな。俺と別れた後に今朝みたいな目に合われても後味悪いし、仕方ないさ。送っていくくらいのこと、別に気にすんな」
結衣「相変わらず捻デレてるなぁ」フフッ
八幡「捻デレ言うな……」
これくらいのこと、本当に構わない。
むしろ助かったくらいだ。
なぜなら俺は、由比ヶ浜に告げたいことがあった。
だが、言葉にしてしまったが故に壊れてしまうものも存在する。
だから今までずっと言わずにいた。
今日も言えずにいた。
しかし昨晩、覚悟を決めたのだ。
結衣「~~~♪」ルンルン
由比ヶ浜はカラオケの余韻覚めやらぬといった感じで、随分とご機嫌なようだった。
だがそれもつかの間、歩いていくにつれ徐々に鼻歌も収まり、どこか堅い雰囲気になる。
ふと由比ヶ浜が立ち止まり、急にこちらを振り向いたため、一歩後ろを歩いていた俺との距離が縮まる。
八幡「おっと……」
俺は思わず一歩後ろへ下がるが、その距離を詰めるかのように由比ヶ浜はこちらへ近づいてくる。
由比ヶ浜の綺麗な瞳が、俺の視線を掴んで離さない。
無言で見つめ合ったまま、数秒の時が流れる。
八幡「な、なんだよ」
結衣「……ヒッキー、覚えてる? 二年前の──」
八幡「夏祭りの帰り道のことか?」
結衣「うん」
そりゃ、分かるさ。
あの時とまったく同じ場所だ。
以前由比ヶ浜が俺に、何かを言おうとして、止めた場所。
結衣「あのね……あたし、卒業式から今日までの間に、色々考えたんだ」
結衣「別々の大学になっちゃって、もう奉仕部で過ごしたみたいな時間は戻ってこないし、会える回数も凄く減っちゃう。それは分かってる」
そして、少し悲しげな表情をして、こう告げる。
結衣「それに、高校卒業してからのヒッキー、あたしのこと避けようとしてたでしょ……。ちゃんと気づいてるんだよ?」
八幡「…………」
卒業してから昨日までの間、奉仕部の面々と全くの音信不通だったわけではない。
しかし俺は、人との直接的な繋がりを……特に由比ヶ浜を避けていた。
高校時代、人生の中で唯一鮮やかだった日々を、決して悪いものだったとは思っていない。
それでも……独りに戻った方が、気楽だしな。
これで良い、俺は何も間違っていないはずだ。
そう思っていた。
自らを欺き、そう思い込もうとしていた。
結衣「でも、それでも、あたしは……」
刹那、先ほどまで潤んでいた瞳に、強い意志が宿る。
結衣「諦めたくない!」
八幡「っ……」
由比ヶ浜が、覚悟は決まったと言わんばかりに、大きく息を吸い込む。
おまえが何を言いたいのかは分かっている。
今回ばかりは、きっと、勘違いではないのだろう。
だが……
結衣「ヒッキーのこと、ずっと前から──」
八幡「止めろっ!」
思わず大きな声が出てしまう。
瞬間、由比ヶ浜の肩がびくりと跳ねる。
八幡「それ以上は、言わないでくれ……」
結衣「…………」
互いに、体が震えているのが分かる。
由比ヶ浜は今にも泣き崩れそうなのを、歯を食いしばり、必死に耐えていた。
こんな姿を見ていたくはない。
辛い表情をさせてしまっている原因が、俺自身であるということが許せない。
今すぐ逃げ出してしまいたい。
それでも、逃げ出すわけにはいかない。
由比ヶ浜に、告げなければなければならないことがあるんだ。
やべえ、面白え。よくこんなん書けるなー。
日陰で応援してますー
【デート篇Ⅵ:ここから、彼と彼女の新たな関係が始まる。】
結衣「ヒッキーのこと、ずっと前から──」
八幡「止めろっ! それ以上は、言わないでくれ……」
最後まで聞いてしまったら、きっと本心を告げることができなくなる気がした。
由比ヶ浜の言葉に流され、上っ面の関係を築くのなんて、真っ平ごめんだ。
八幡「俺はまだ、おまえと付き合うことはできない」
由比ヶ浜の瞳から、一筋の滴が零れ落ちる。
このままじゃいけない。
早く、早く次の言葉を告げなければ。
八幡「っ……」
過去の様々なトラウマが甦る。
昨日、由比ヶ浜と向き合う覚悟を決めたはずなのに、体が震えて言葉が出ない。
俺は一体、どこまで臆病ものなんだ。
結衣「…………うぅっ……あたしのこと……友達として、しか……見れない……の?」
嗚咽に塗れ、途切れ途切れながらも、小さなこぶしを握り締め、由比ヶ浜は必死に言葉を紡ぎ出す。
違う。
違うんだ。
そうじゃない。
俺は──
俺は────
八幡「俺は、由比ヶ浜結衣のことが…………大好きだっ!!!!!」
・・
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
俺の意味不明な告白から、早くも約二週間が過ぎた。
素晴らしきかな、ゴールデンウィークの到来である。
社畜の鏡であるうちの両親は、GW序盤はまだ仕事があるらしい。
お疲れ様です。
心の底より感謝しています。
だから俺が大学卒業した後も、このまま養い続けて下さい。
そんなわけで、現在家には俺と小町の二人だけ。
だから俺はGW初日だというのに、日がかなり高く昇るまで眠っていた。
寝ぼけ眼のまま階段を下りると、台所から良い匂いが漂ってくる。
小町が昼食の準備をしてくれているのだろう。
八幡「小町ー、メニュー何?」
好きな食べ物だと八幡的にポイント高い。
そんな期待を込め台所を覗いて見ると……
雪乃「ちょっと何をやっているの。今すぐ手を止めなさいっ」
結衣「えぇ~、野菜切ってるだけじゃん……」
雪乃「猫の手すらできないあなたが、包丁を持つのはまだ早すぎるわ」
美少女二人が、我が家の台所で仲睦まじく料理をしていた。
そして小町がどこにも居なかった。
これは目の錯覚だろうか……。
結衣「あ、ヒッキーおはよー!」
雪乃「随分と遅いお目覚めね、寝坊助さん」
一体、どういうことだってばよ?
八幡「おまえら何でうちに居んの? ってか何勝手に上がってんの?」
雪乃「勝手じゃないわ。小町さんに入れてもらったもの」
八幡「……小町家に居なくね?」
結衣「小町ちゃんなら、さっき平塚先生と一緒に出てったよ」
げっ。
平塚先生まで来てるのかよ。
雪ノ下がGWに帰省してくるらしき話は小町から聞いていたが、それ以上のことは何も耳にしていない。
まさかうちに集まることになっているとは思ってもみなかった。
誰か、俺にもちゃんと連絡なり報告なりしてくれよ……。
ホウレンソウ、すなわち報告・連絡・相談。
社会人になったら基本中の基本ですよ?
そんなことも知らないの?
社会に出る気のない俺には、関係のないことだと思われているのだろうか。
こいつら酷い。
世間は怖い。
やっぱり俺は社会人になんてならない!
それにしても、なぜ小町は先生と共に出掛けたのだろう。
俺の疑問を感じ取ったのであろうエスパー雪ノ下さんが教えてくれた。
雪乃「戸塚君と材……木座君も今日帰省してくるそうだから、先生の車で駅まで迎えに行ったわ」
お、ようやく材木座の名前を覚えたのか。
しかし今大切なのはそんなことではない。
八幡「ととととと戸塚だと!? 戸塚もうちに来てくれんの!?」ウオオオォォォォ!
結衣「ヒッキーマジキモい……」
雪乃「呆れたわ。あなた、恋人ができても何も変わらないのね」
俺の戸塚への愛は何があっても変わらないゼ!
…………ん?
今こいつ何て言った??
恋人???
思わず由比ヶ浜の方をギロリと睨みつけてしまう。
すると、手を胸の前でわちゃわちゃさせながら慌てて弁解をしはじめた。
結衣「ちょっ、タンマタンマ! あたし何も嘘話したりしてないからねっ!?」ブンブン
八幡「……じゃあ雪ノ下に何言ったんだよ」
由比ヶ浜は指をモジモジさせながら、たどたどしく話し始める。
結衣「えっと……ヒッキーがあたしに、その、大好きって言ってくれたこととか……」
おいおい恥ずかしいじゃないか。
結衣「でも、まだ付き合うっていうのがどういうことなのかよく分からないから、少し待っていてほしいって言われたこととか……」
不甲斐なくてすみません。
結衣「最近ヒッキーがよくデートしてくれて……凄く嬉しいなぁ、とか……」
喜んでくれているみたいで何よりである。
結衣「あとは、う~ん……ゆきのんに話したのって、多分このくらいかな?」
なるほど。
全て事実だった。
八幡「おい雪ノ下、俺と由比ヶ浜は付き合っているわけじゃないぞ」
恋人。
それは、約款だらけの契約だ。
自分は相手のことが好きなのだと、相手は自分のことが好きなのだと、そう思い安心する為に存在している言葉な気がしてならない。
もっとも、それが悪いことだとは思わない。
恋人という形態を取ることで互いに安心できるのであれば、由比ヶ浜の心が安らぐのであれば、きっと良いことなのだろう。
でも現在の俺には、由比ヶ浜の期待に応え続けるだけの自信がない。
自分に自信が持てるまでは、恋人などという安易な言葉に安心していたくはない。
今はまだ、考えてもがき苦しみ、あがいて悩んでいたい。
だから、もう少しだけ待っていてほしい。
雪乃「互いに好意を抱いている男女が、頻繁にデートを重ねている……傍から見れば、付き合っているのと何も変わらないじゃない」
結衣「えへへ~」///
言いたいことは山ほどあるが、由比ヶ浜が嬉しそうだし、まぁ……放っておくか。
雪乃「比企谷君の捻くれ具合にも改善の兆しが見えてきたことだし、これ以上は追及しないでおいてあげるわ」
改善の兆しって何だよ。
俺は自分の性格が大層気に入っているし、環境や人との関係が変わろうと、今後とも自分自身が変わるつもりは更々ないぞ。
八幡「あ、そういえばおまえ、電話で依頼がどうのこうのと言っていたが……一番最初に平塚先生が持ってきた依頼のことだったのか」
確か依頼内容は、俺の捻くれた孤独体質の更生だったはずだ。
雪乃「違うわ。捻くれている部分はともかく、もうとっくに孤独ではないじゃない」
八幡「じゃあ依頼って何なんだよ。由比ヶ浜が、俺とのデートを取りつける件以外にも何か頼んだりしたのか?」
結衣「ん? あたしはそれ以外何も頼んでないよ?」
じゃあ一体どんな依頼だ?
俺と由比ヶ浜は一緒になって頭を悩ます。
結衣「あっ! あたし分かっちゃったかも!!」ハーイ!
八幡「お、何だ?」
結衣「それはね~、『俺は本物が欲しい』ってやつだよっ」エッヘン
…………。
うわぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!
忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい
雪乃「正解よ、由比ヶ浜さん」
結衣「わーい!」
八幡「もう二年も前のことだろ……。いい加減に忘れろよ……」
雪乃「あなたから依頼を持ち掛けられたのは、高校二年の12月。そして現在は大学一年の5月頭」
雪乃「つまり、まだ一年半も経過していないわ。前々から数学が苦手だったようだけれど、ついに引き算すらできなくなってしまったの?」
……年度で数えれば、別に俺間違ってなくね?
雪乃「それで、その依頼は解決したということで良いのかしら」
八幡「あー、その依頼なんだがな、多分一生解決しないぞ」
結衣「えぇ~、なんでっ!」プンスカ!
八幡「今になって思えば、あの依頼が解決することも解消されることもありえないんだ」
結衣「どゆこと?」
八幡「言葉の意味は受け取る人の素養や価値観、置かれている環境によって大きく左右される」
八幡「俺の考えている本物、由比ヶ浜の考えている本物、雪ノ下の考えている本物。きっと全て違うものだ」
八幡「言葉を尽くしたところで、その答えを共有なんてできっこない」
八幡「だから、考え続け、求め続けるしかない。本物の答えより、その求め考え続けることが大切なんだよ」
考え続け求め続ける以上、そこに終わりはない。
ようするに、あの依頼に終了は訪れない。
雪乃「何か釈然としないわね」
結衣「うぅ~……、あたしはヒッキーと共有したいかも」ムスー
八幡「……本物が何かという答えは共有できなくても、共有できているものならちゃんとあるさ」
結衣「えっ! なになに?」
八幡「それは……」
結衣「それは?」
八幡「それはだな……」
ガチャッ
小町「たっだいま~!」デデン!
八幡「…………」
結衣「…………」
雪乃「……おかえりなさい」
小町「あ、あれ? 小町としたことが、もしかして空気読めてませんでした?」
狼狽する小町を余所に、後ろからぞろぞろと人が入ってくる。
平塚「やぁ。ようやく起きたのか」
義輝「会いたかったぞ八幡! 新たな境地へ到達した、我の新作をしかと目に焼き付けるがいい!!」
彩加「皆、久し振り」ヒラヒラ
天使だ……数ヶ月ぶりに、俺の前へ天使が舞い降りた…………。
八幡「俺も会いたかったぞ戸塚ぁぁぁぁ!!!!!」
彩加「僕も会えて嬉しいよ!」
義輝「あっれあれ~? 会いたかったって言ったの我なんだけど! 我なんだけど!!」
平塚「そういえば比企谷、私を差し置いて由比ヶ浜と良い感じになっているらしいなぁ……」ケッコンシタイ…
八幡「ちょっ、なんで先生がそのこと知ってんすか! 小町おまえかっ!?」
小町「ワタシジャナイヨー」
八幡「おい待て逃げるな小町ぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」
結衣「ヒッキー! さっきの話の続きは? ヒッキーってばぁ~」ピーピーギャーギャー!
雪乃「まったく、騒々しいわね……」
本物が何かという答え。
それは皆バラバラで、共有することなんてできないけれど、それでいい。
いつか各々の本物を見つけ出せればそれでいいさ。
けれど共有できているものもある。
それは、今まで共に過ごしてきた時間と、別々の道を歩んでいても尚、現在こうして集まれているという事実だ。
その事実があるだけで、今の俺には十分だ。
しかしいずれ、もっと多くを求める時が来るのだろう。
俺から由比ヶ浜へ更に踏み込む時が、遠からずくるのだ。
だから、俺と由比ヶ浜の曖昧な関係は、傍から見て正しくないのかもしれないけれど
もう少しこのままで─────
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ~デート篇~
了
これにてデート篇はおしまいです。
2人がちゃんとくっつく話はまた後日!
>>361
ありがとぉぉぉおおお
・・・・・・?
安価の場所的に誤爆かな?
よし、勝手にそう思っておこう。
おっつおっつ
乙! 面白かったよ
ここは>>373みたいな頭のおかしなやつがいっぱいいるけど
気にせずに頑張ってね
あと、由比ヶ浜に対する考察というか見方がけっこう厳し目だね
萌えてるやつはだいたい聖女扱いだし作者ですらそうだからな
乙
欠点も含めてかわゆいだからな
>>375 >>377
ありがとー
>>376
ありがとう!
ヒッキーなら他人の良い部分だけ見たり悪い部分だけ見たりはしないだろうなと思って、こういう考え方をさせてみました。
でも、「作者ですらそうだからな」って部分はそうなん?
わたりんがキャラのことをどう思っているのかとか、私はあまり知りませぬ。
6/18にゆいゆいフィギュアの写真撮りまくってツイッターではしゃいでたことは知ってるwww
>>378
うむ。
うむ!!
しかしメシマズはその内どうにかしてほしい。
ばらしーすであったぞ!
おつおつ
このssがここ最近の生きる希望
もしかして渋の☆★はっ●ー★☆さん?
いつも表紙をお借りしてお世話になっています。
>>380 >>383
アリガトー!
>>381
大袈裟やなwww嬉しいけど!
>>382
383さんが言ってくれている通りです。
あと、>>154でもその辺についての回答をしていたりします。
それでは本日も更新スタート!
【誕生日篇Ⅰ:ついに彼等は、2年越しの約束を果たす。】
小町「あれ? お兄ちゃん出かけるの?」
本日、6月初旬、休日なり。
ひっそりと家を出ようとしたところ、玄関先で小町に発見されてしまった。
八幡「ん、ちょっとな」
小町「また結衣さんとデート?」
ニヤニヤしながらんなこと聞いてくんな!
俺と由比ヶ浜が友達以上恋人未満の関係になってから、小町はいつもこんな調子である。
八幡「ちげーよ」
小町「またまたー。普段ちょっと買い物に行くくらいの時はジャージだったり髪ボサボサだったりするのに、今はちゃんとお出かけする格好じゃん」
流石は我が妹。
人間観察に優れていらっしゃる。
八幡「まぁ今日は一人じゃないからな」
小町「てことはやっぱりデートなんでしょー?」
小町「お兄ちゃんと遊んでくれる相手なんて結衣さんくらいしか居ないんだからさ、今更バレバレの嘘吐かなくってもいいのに~」フフン!
ひでぇ……。
そんなこと言われるとお兄ちゃん傷ついちゃうよ?
戸塚や材木座や雪ノ下といった俺が高校時代交流を持っていた相手は、現在東京にて一人暮らしをしている者が多い。
川なんとかさんは今でも千葉に居るみたいだが特にこれといった関わりもないし、地元在住で俺と共に出かけるような相手は由比ヶ浜しか居ないというのは、まぁ妥当な推測だろう。
え? 大学の友達?
ばっかおまえ、大学では誰とも関わってないに決まってんだろ!
しかし……。
八幡「いや、今日は本当に由比ヶ浜じゃないんだけど」
小町「はっ! まさか浮気!?」
これ以上小町と下らないやり取りを続けていたら時間に遅れてしまう。
小町を適当にあしらい、歩くこと約10分。
目的の駐車場までたどり着く。
約束の相手は、既にそこで俺を待ち構えていた。
平塚「お、来たか」
八幡「ども。お待たせしました」
平塚「気にするな、私も今来たところだ。久し振りだな、比企谷」
そう言って笑顔を向けて来る女性は、我が恩師、平塚静である。
久し振りっていうか、ゴールデンウィークに会ったばかりなんだが。
八幡「あれからまだ1ヶ月しか経ってないと思うんですけど」
平塚「ははは。それでも久し振りに感じてしまうのだよ。つい数ヶ月前までは、しょっちゅう顔を合わせていたのだからな」
八幡「確かにそっすね」
平塚「まぁ、世間話は移動しながらにでもしようではないか。さぁ、乗りたまえ」
八幡「んじゃ、よろしくお願いします」
このスポーツカー、相変わらずメタリックでかっけぇ!
そんなことを思いながら平塚先生の愛車の助手席へ乗り込む。
すると程なくして、低い稼働音と共に車が走り出した。
その重低音とは裏腹に運転は軽やかだ。
心なしか、軽快に走る車と同じく、平塚先生自身もルンルン気分のように見える。
八幡「なんか、機嫌良さそうですね」
平塚「ずっと楽しみにしていたからなぁ。君が高校を卒業したら一緒にラーメンを食べに行こうという約束をしたのが、随分と前のことのように感じられるよ」
八幡「そんなメールが送られて来たのは、たしか高2の……夏休みのことでしたっけ?」
平塚「お! あと3ヶ月程で、あれから2年も経つのか。時間の流れは早いものだな」
平塚「はぁ……。年々早くなっていくような気がする……」
あぁ……。
歳を取れば取る程、体感時間は縮むっていいますもんね。
事故られても困るので、その発言は心の中に留めておくことにする。
八幡「随分と前のことのように感じられるって言ったり、時間の流れは早いって言ったり、一体どっちなんですか……」
平塚「よし。この話は止めにしよう!」
えぇ~……。
年齢が絡んだ途端にこれかよ。
まぁいいけど。
八幡「んで、どこに連れてってくれるんですか?」
平塚「近い所は自分で行ってしまうだろうと思ってな。今日行くのは、車で1時間程かかる隠れた名店だ」
八幡「結構遠いっすね」
平塚「安心したまえ。話したいことはまだまだ山ほどある! 話したいことというより、聞きたいことだが」
……嫌な予感しかしない。
平塚「結局、由比ヶ浜とはどうなったのだね?」
俺が由比ヶ浜へ想いを告げたことは、ゴールデンウィークの時点で平塚先生も知っていたわけだし、そりゃあ聞いてきますよね……。
まったく小町のやつめ!
なんで余計なこと喋っちゃうんだよ!!
隠しておいても良かっただろうに。
八幡「何というか……、ぼちぼちです」
平塚「なんだ。まだちゃんと付き合っていないのか」
八幡「いや、あの、付き合ってはいないものの、一緒に出かけたりはよくしてますし……」
変な心配をされないようにそう答えたのだが、平塚先生は逆に呆れ顔になる。
平塚「君達には君達なりのペースというものがあるのだろうし、あまり小うるさくは言いたくないのだが……」
八幡「?」
平塚「君が今やっていることは、見様によっては彼女候補をキープしているのと同じことだぞ?」
八幡「ちょっと! キープとか人聞きの悪いこと言うの辞めて下さいよ!」
平塚「何が違うと言うのだね……」
由比ヶ浜が俺に向けてくれている好意を分かった上で、俺は由比ヶ浜に好きだと言った。
だが付き合うわけでもなく、今も曖昧な関係を維持し続けている。
確かに客観的に見れば、それはキープになってしまうのかもしれないが……。
八幡「……んなこと言われましても」
平塚「相思相愛なのだろう? ならばとっととはっきりさせて、清い男女交際を行えば良いだけではないか。何を困ることがある」
八幡「相思相愛とか言うの辞めて下さいよ。照れるじゃないっすか」
平塚「ははは」
うぅむ……。
きっと、平塚先生の言っていることは正しいのだろう。
だが、俺はどうにも、言われた通りの行動を取ることができそうにない。
八幡「由比ヶ浜をずっと待たせてるってことは、自分でも分かってるんですけどね……」
平塚「いいか比企谷! 出会いなんてのはな、歳を取れば取る程減っていくものなんだ!」
平塚「自分の人生にあと何回チャンスが残されているのかは、誰にも分からないのだぞ?」
平塚「それなのにせっかくの貴重なチャンスを無駄にしてどうするッ!!」
八幡「えっと……、あの……」
平塚「あの時ああしていれば良かっただとか! あの人は絶対に逃すべきではなかっただとかっ! あんな男にはもっと早く見切りを付けるべきだったとか!」
平塚「そんなことを、今更悔やんでも、遅い、ん、だぞ……うぅ……」グスン…
八幡「せ、先生なら大丈夫ですって! きっとまだチャンスありますよ! だからとりあえずちゃんと前見て運転して下さいっ! ほら! 前っ!!」
平塚「す、すまない……」
なんでいつの間にやら、俺が平塚先生を慰めることになってしまっているのだろう……。
この人トラウマありすぎだろ……。
黒歴史対決でもしてみたら、俺と結構良い勝負になるんじゃね?
平塚「……取りみだしてしまいすまなかった」
八幡「はぁ……」
平塚「と、とにかくだな。君のことだ、きっと相手が大切だからこそ慎重になっているのだろうが、それじゃ駄目なんだ」
平塚「大切であればある程、曖昧な関係ではなく、きちんとした関係を築いていくべきだと私は思うよ」
この上なく正論に聞こえる。
いや、誰かに言われるまでもなく、そうすべきなのだということは自分自身でも分かっている。
けど、俺は……。
【誕生日篇Ⅱ:やはり比企谷八幡は、由比ヶ浜結衣に弱い。】
平塚先生とラーメンを食いに行った次の週の日曜日。
由比ヶ浜と会うべく、俺は街中で1人突っ立っていた。
由比ヶ浜に想いを告げたあの日以来、何度か共に出かけたり……つまり所謂デートの様なことを重ねてきたものの、いまだに慣れないのはなぜだろうか。
家を出る前はそわそわしてしまい小町にからかわれるし、つい早く待ち合わせ場所に来てしまう。
そして待ち合わせ場所に着いてからは必要以上にキョロキョロとあたりを見回してしまい、通行人から
「何あの挙動不審な人……不審者?」
みたいな視線を向けられてしまうのがいつものパターン。
しかし、何度も同じ失敗を繰り返してしまう程俺も馬鹿ではない。
小町にからかわれたり早く来すぎてしまうあたりは今まで通りだが、まだ大丈夫。
きっと大丈夫なはずだ。
今日こそは、挙動不審な真似なんてしてやるものかっ!
そう心に固く誓い、直立不動のままでいること約10分。
黒ずくめの男の怪しい取引(妄想)を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいて来る怪し…くない影に気が付かなかった。
結衣「やっはろー!」
八幡「ひゃぃ!?」
結衣「ヒッキーお待たせ~……って、どしたの?」
キョトンとした顔で問いかけられる。
ほら、急に後ろから声をかけられるような経験、俺にはほとんどないから。
どうしてもビクッとなってしまうわけでして。
八幡「い、いや。なんでもないぞ」
結衣「今の反応絶対普通じゃなかったし!」
八幡「気にしないでくれ……」
……俺、出だしから格好悪すぎやしない?
今日はちょっとしたサプライズがあるもんで、いつも以上に緊張していたりするのだが、それを悟られない様に振る舞わなければ。
八幡「ってか、おまえも来るの結構早いな」
結衣「だって、毎回ヒッキー早く来てるくれてるから、長々待たせちゃうのもなんかなぁ~と思って」
八幡「俺が勝手に早く来てるだけだから、気にしなくってもいいんだぞ」
結衣「ふぅ~ん。……そんなに楽しみだったりするんだ?」
八幡「べ、別にそういうわけじゃ……なくもないが……」
結衣「ふふっ」
おい。急に優しく微笑むな。
ドキッとしちゃうだろ!
八幡「コホン……何か、少しいつもと雰囲気違うな」
結衣「そう?」
八幡「あぁ。なんつうか……、清楚系ビッチって感じがする」
結衣「清楚系ビッチって何だし! ってか元々ビッチじゃないからぁ!!」
本日の由比ヶ浜は、白を基調としたワンピースに、淡いピンクの上着を軽く羽織ったような出で立ちだ。
色合いやパッと見の雰囲気は清楚っぽいのだが、いかんせん胸元や太股の露出度のせいでビッチ感が拭いきれていないような気がする。
そのワンピース、なんで丈短けぇんだよ。
いやまぁ可愛いし眼福なんだけど。
由比ヶ浜が「うぅ~~~」と唸りながらこちらを睨みつけてくる。
結衣「今日はビッチ呼ばわりされないような服を選んだつもりだったのに……」
……そんなことを考えてくれてたのか。
俺としては、由比ヶ浜が周りの視線を集めてしまうのが嫌でついああいう良い方をしてしまっていただけで、本気で嫌だったわけじゃないんだけどな。
ちょっと罪悪感が湧いてきたので、率直に謝っておく。
八幡「悪い。あ~、なんだ、その……、正直、物凄く可愛いと思うぞ?」
結衣「……言い訳っぽい」
八幡「嘘じゃねぇよ。ただ、素直に褒めるのが恥ずかしかったから、つい、な……」
結衣「まったくもぅ。ヒッキーはそういうとこ相変わらずなんだから」
そう言うと由比ヶ浜は、おもむろに俺の腕へ自分の腕を絡みつかせてくる。
八幡「ちょ、止めっ」
結衣「ダーメっ! ビッチビッチ言われて、意外と傷付いてるんだからね?」
八幡「悪かったって……」
結衣「ならこれくらいのこと許してくれてもいーじゃん!」
八幡「だ、だからって、腕組んで歩くとか俺にはハードルが高すぎて……」
抵抗する俺を見て、クスクスと笑いだす。
え? なんで俺笑われてんの?
八幡「……急になんだよ」
結衣「だって、口では嫌がっておきながら、……ぷぷっ、凄い、ニヤけてるんだもん」
八幡「っ!?」///
だからあの、そんなにくっつかれると色々柔らかいものがあたってるからね?
そういう態度は即刻おやめなさい。
そんなにひっぱんなくても逃げたりしないから!
とまぁ理性を総動員してみたところで、満面の笑みで俺の腕をひく由比ヶ浜を見ていると、更に頬が緩むのを抑えきれないのであった。
世にも奇妙な感じのSSが気になるから、ちょっと更新やめるわ。
うん。
でも連投できないってメンドそうだよね。
あと、支援してたらだけなのに、なぜSSLというだけで馬鹿にされにゃならんのか……。
まぁいいや
再開します。
>>398
しょうがないとは言いたくないが
一部のsslの悪目立ちというか愚行が目に余るのは事実
sslっていう特徴がある以上目の敵にされることも良くあることだな
(しかし>>1の不満は当然なので悪しからず)
【誕生日篇Ⅲ:御覧の通り、由比ヶ浜結衣はぐいぐい攻めている。】
本日の目的地は、とあるアミューズメント施設。
ゲーセンや映画館、ボーリング場やカラオケ等々、色々詰まっている系のアレだ。
今回の行き先は一応俺が考えたのだが、大層なデートプランを考えることなどできない俺にとって、一ヶ所で楽しめそうな施設は大変ありがたい。
だがそこへ行く前に、由比ヶ浜に連れられ近くのカフェへと立ち寄っていた。
八幡「ここに前から来たかったのか?」
結衣「ううん。近くに良いお店ないかなぁ~って昨日調べてみたら、ここが丁度良さそうだったから」
店内へと入ることにより腕から解放された俺は、由比ヶ浜と対面の席へ座る。
べ、別に、腕離されて残念とか、全然思ってないんだからねっ!
……そんな冗談はともかく、飲食店でわざわざ隣同士に座るバカップルって一体なんなの?
俺は公共の場でイチャついたりなんてしない!
既にもう遅いとか、そんなことはないはず……。
八幡「結構良い雰囲気のとこだな」
結衣「でしょ? 値段もいい感じだったし」
たしかに、アミューズメント施設内の飲食店だと、無駄に高かったりするもんな。
それに対し、ここのカフェは中々リーズナブルなお値段である。
メニューにしても、カフェらしい軽食から、普通の昼食っぽいものまで様々のようだ。
……情けない話だが、これもう最初から由比ヶ浜にデートプラン任せた方が良かったんじゃないの?
結衣「ヒッキー何頼む?」
八幡「う~ん……。流石にラーメンはなさそうだな……」
結衣「そりゃカフェにラーメンはないでしょ……」
八幡「ま、ラーメンは先週滅茶苦茶美味いのを食いに行ったし、別にいいか。んじゃカレーで」
結衣「飲み物は?」
八幡「水で良い」
由比ヶ浜が手早く店員を呼び、カレーとカツサンドとサラダ、そしてなんだか難しそうな名前の飲み物と、食後のパフェを注文する。
八幡「スタバのコーヒー並みのネーミングセンスだな……」
結衣「あはは。カフェの飲み物って、どこもそんなモンでしょ」
八幡「え、そうなの? んじゃ何? この世のリア充共は皆、そういう品名を噛まずに言えるのかよ。すげぇなそれ」
結衣「そうなんじゃない? よく知らないけど」
知らないのかよ。
もちろん俺も知らんけど。
結衣「あ、そうだ。さっき言ってた滅茶苦茶美味しいラーメンっての、ちょっと興味あるかも。今度あたしも連れてってよ」
八幡「あぁ~、それは難しいな」
結衣「?」
八幡「油ギトギトの豚骨がメインの店だったから、多分普通の女子には合わない」
八幡「それに車で1時間もかかる所だったからな……。行くなら近場の美味い店で勘弁してくれ」
結衣「うん、じゃあそれで。忘れないでね?」
デート開始からまだ30分程しか経過していないのに、早くも次の約束を取り付けられてしまった。
流石由比ヶ浜さん。
女子大生になってから、策士レベルがUPしているんじゃないですか?
結衣「ヒッキーが車でお出かけって珍しいね。そういう話、普段聞かない気がする」
八幡「何でそういう些細なとこに目ざとく気付くんだよ。女の勘ってほんとパないな……」
結衣「ほぇ?」
八幡「あ~、えっとな、実は平塚先生に連れてってもらったんだ。言っておくが浮気とかそういうのじゃ……」
結衣「ちょっ、先生相手でそんな勘違いしないし! ってかそういう言い方されると逆に怪しいんだけど」
八幡「だからちげぇっての……」
もし小町以外の女子と遊んだりでもしたら、こりゃきっと一発でバレるな。
もっともそんな相手は居ないので、心配するだけ無駄である。
むしろ大学では、女子どころか男子とも一切会話できないまである。
何それ、自分で言ってて悲しくなってきた……。
……高校卒業間際せっかくちゃんと友達になれたわけだし、雪ノ下とはまた会いたいとも思うが、そん時は当然由比ヶ浜も一緒に居るだろうしどの道心配する必要はないだろう。
結衣「先生どんな感じだった?」
八幡「どんな感じって言われても、数ヶ月じゃ何も変わってないさ」
いつも通り年齢を気にしてた。
マジで誰か早くもらってあげて!
俺はもう、もらってあげたくなったりしないから!!
結衣「どんな話してたのか気になるじゃん。あっ、本気で疑ってるとかそんなんじゃなくて、ほら、総武高のこととか!」
良かった。
気にしているのは高校のことか。
それなら、あの会話については触れる必要がないな。
八幡「小町も一色も、ちゃんと生徒会やってるみたいだぞ。他は……特に高校の話してねぇな」
結衣「ふ~ん、そっか。奉仕部なくなっちゃっても、小町ちゃんなら大丈夫だよね」
八幡「あぁ。あいつは俺と違って、クラスにもちゃんと居場所があるしな」
結衣「これから自虐ネタ禁止」
八幡「えっ……」
そんな雑談をしている内に料理が運ばれてくる。
俺が頼んだカレーも、由比ヶ浜のカツサンドとサラダも、全て美味そうだ。
結衣「ヒッキー、これ1つ食べる?」
八幡「あぁ。こっちもカレー1口くらいやるぞ?」
結衣「うん。いただきまーす!」
俺はカツサンドを1切れもらい、由比ヶ浜はサラダに付いてきたフォークを器用に用いてカレーを1口頬張る。
うむ。美味い。
なぜこんな行為を自然にできているかって?
最初の1口目を食われる分には何の問題もないのだ。
これなら間接キスになりようもない。
だが、問題は食後のデザートで発生した……。
結衣「はい、どうぞ」
由比ヶ浜はそう言って、俺にパフェを1口差し出す。
え、もしかしてこれ、フィクションでよく目にする「あ~ん♡」ってやつ?
いやいやいやいや!
そんな真似できるわけないだろ!!
八幡「……遠慮しとく」
結衣「ヒッキー甘いの好きでしょ?」
八幡「そうだけど、ほら、分かるだろ……?」
結衣「間接キスとかそういうのヒッキー気にするかなぁと思って、最初にあげようとしてるのにー」
まだ由比ヶ浜は1口も食べていない状態なので、確かに俺は間接キスをしないで済む。
でも、その後そのスプーンでそっちもパフェを食べるわけだし、問題は何も回避できてないんじゃないですかねぇ。
結衣「こっちだって、その、割と恥ずかしいんだからさ。早くパクッとしちゃってよ」
八幡「恥ずかしいなら止めとけば良いんじゃ……」
結衣「んっ……」
ズルい!
涙目&上目使いのコンボはズルい!!
八幡「わ、分かったよ……」
結衣「ほんとっ!?」
パァァァっと、由比ヶ浜の顔が笑顔になる。
はぁ……。
ついさっき「俺は公共の場でイチャついたりなんてしない!」と誓ったばかりだというのに、こうなってしまった以上やるしかないのか。
意を決して、俺はパフェを頬張る。
比企谷八幡18歳、ついに人生初の「あ~ん♡」を経験してしまった……。
そして、スプーンを拭くこともなく、そのまま由比ヶ浜もパフェを食べ始める。
結衣「えへへー」
八幡「お前なぁ……、さっきは俺の事ニヤけてるだの顔真っ赤だの言ってきたくせに、今度はそっちがそういう顔してるぞ……」
結衣「だって、へへへっ、嬉しいんだもん」
おい、ニヤケ面でクネクネしながらパフェ頬張んな。
しかし、とてつもなく嬉しそうな顔を見ていると、怒るに怒れない……。
結衣「ヒッキーも真っ赤になってるよ」
八幡「……由比ヶ浜が可愛すぎるのが悪い」
結衣「えっ……」
八幡「な、なんでもない!」
結衣「もっかい! 今のもう一回言って!!」
八幡「絶対に嫌だ」
───結局、同じ台詞を1回どころか3回程言わされましたとさ。
ほんと俺の精神が持ちそうにないんだが……。
>>400
言ってることはすげーよく分かる。
変な発言してるやつやsageないやつがSSLに多いのなんて、他所のスレ見てりゃ一目瞭然だもんな。
あ、べつに400さんがsage忘れたことへの嫌味じゃないよwwww
あれがとね!!
【誕生日篇Ⅳ:またしても、思い悩み、問い直す。】
散々恥ずかしい思いをさせられ、頭が沸騰しそうなままあっという間に時間は過ぎ、早くも夕方である。
由比ヶ浜はゲーセンでもカラオケでも、非常に楽しそうにしていた。
俺はてっきりデートなんだし映画でも見たがるものかと思っていたのだが、由比ヶ浜曰く
「映画だったらDVDでも借りて、家でのんびり見た方が良くない? あ、そうだ! 今度ヒッキーんちにオススメのやつ持ってくからっ!」
とのことだ。
ラーメン食いに連れていく件に引き続き、2つ目の約束まで取りつけられてしまったな。
由比ヶ浜さんマジ策士。
そんなこんなで帰宅のお時間。
俺は由比ヶ浜の家の近くまで来ていた。
結衣「まだそんな暗くないし、わざわざ送ってくれなくても良かったのに。……まぁ、凄く嬉しいんだけどさ」
頭のお団子をくしゃりといじりながら、由比ヶ浜が照れつつ微笑む。
だから何で一々仕草が可愛いんだよ!
うっかり惚れちゃうだr……いやまぁ、既にベタ惚れですけれども……。
八幡「たしかに最近日が伸びてきたよな。でも俺がしたくてしてるだけだから、気にすんな」
結衣「うん。ありがと」
八幡「それに……、ちょっと今日は、渡したい物と言いたい事があってな。中々切り出せなくてここまで連いて来たってのが正直なとこだ」
結衣「……?」
どちらからともなく歩みを止め、二人して立ち止まる。
二年前の夏、由比ヶ浜が俺に何かを言おうとして、やめた場所。
そして二ヶ月前、俺が由比ヶ浜に想いを告げた場所。
今回も、奇しくもあの時とほとんど同じ地点だ。
八幡「えっと、な。まだ少し早いけど、今週おまえの誕生日だろ? だから、……プレゼントだ」
由比ヶ浜の誕生日は今週の水曜。
別々の大学とはいえ、実家暮らしのままな俺達が平日に会うのも無理ではないが、それではプレゼントだけ渡してすぐ解散みたいになってしまいかねない。
そうなるより、1日遊んだ後に渡した方が良いだろうという俺なりの判断だ。
誕生日当日にもメールくらいは送るつもりだけどな。
……いや、そうなるかどうかは、この後の話次第か。
結衣「あ、ありがとうっ! まさか今日貰えるなんて思ってなかったよ! ねぇねぇ、今開けてみても良い?」
八幡「いいけど、それ程期待しないでくれよ」
そういえばこいつ、去年のリードも一昨年の首輪も、貰ってからすぐに開けていたな。
なんだか懐かしい。
結衣「うわっ!? 何この高そうなネックレス!」
八幡「高そうに見えるだけでそうでもないんだな、これが」
結衣「ほんと?」
八幡「あぁ。数千円だ」
結衣「へぇ~。何万円もするやつに見えちゃった。ヒッキーって、意外とセンス良かったんだね」
おいおい、一言余計だ。
そこは素直に喜んどいてくれよ。
八幡「ま、色々考えたんだよ。一昨年プレゼントした犬の首輪を、チョーカーと勘違いして喜んでたろ?」
八幡「だから最初はチョーカーにしとこうかと思ったけど、そういうの俺にはよく分かんなくってな。そういうわけでネックレスにしておいたんだが……」
結衣「うんっ! 凄い嬉しい!!」
八幡「そうか。そりゃ良かった」
いやもう本当に良かった。
ネックレスを買う際、店で相当頭を悩ませたからな。
これでガッカリされでもしたら、正直かなりショックを受けたことだろう。
結衣「せっかくセンス良いんだからさ、自分もお洒落してみたらいいのに」
八幡「別に俺はセンス良くねぇよ」
結衣「でもこれ、ヒッキーが選んでくれたんでしょ?」
八幡「あー……、それはその、あれだ。自分で自分のを選ぶのと、由比ヶ浜にならどんなのが似合いそうか考えるのじゃ、まるで違うだろ」
結衣「ふ~ん、へぇ~。自分のは無理でも、あたしに何が似合いそうかは分かるんだ?」エヘヘー
由比ヶ浜が、とても嬉しそうにはにかむ。
ってか俺、今日恥ずかしいこと言いすぎじゃね?
……しかもこれから、もっと恥ずかしいことを言わなければならないのだが。
結衣「それで、さっき話もあるって言ってたけど、……何?」
ふと、由比ヶ浜が笑みを引っ込め、神妙な面持ちになる。
期待半分、不安半分といった具合に、体をそわそわさせている。
俺はずっと由比ヶ浜を待たせ続けてきたのだから、こんな表情をさせてしまうのも当然だろう。
八幡「前に、俺の方から告白しておきながら、
『付き合うってのがどういうことなのか、まだよく分からないから、少し待っていてほしい』
……みたいなこと言ったの、覚えてるよな?」
結衣「……うん。答え、決めてくれたの?」
八幡「付き合うってのがどういうことなのかは、もう分かったつもりだ」
八幡「多分、ここ最近やってることは、恋人同士の関係とまんま変わらない……ような気がする」
八幡「そしてそのことを、喜ばしく感じている自分が居るのも事実だ」
結衣「じゃあ、じゃあさ! ちゃんと付き合ってくれるってことで──」
八幡「ちょっと待て。最後までちゃんと聞いてほしい」
結衣「……また、逃げたりしないよね?」
少し震えた声で、とても不安そうに問いかけてくる。
全部俺のせいだ。本当に申し訳ない。
だが、これ以上そんな思いをさせないためにも、ちゃんと話し合っておかなければならないことがある。
八幡「あの時言った通り、俺は由比ヶ浜のことが……だ、大好きだ。それは今でも変わらない」
八幡「でも、踏ん切りが付かないのには色々と理由があってな……」
結衣「ん、全部聞くから、ちゃんと話してほしいな」
八幡「あぁ、分かった……」
夕日が沈み、外套の明かりに照らされながら、長々と話を続けた。
まず、これから先も、由比ヶ浜の期待に応え続けるだけの自信を持てないということ。
自分に自信が持てるまでは、恋人などという安易な言葉で安心していたくはないと、そう思っていたということ。
結衣「思ってた……ってことは、今はそうでもないの?」
あぁ。
それについては、先週平塚先生と話したおかげで、自分の中である程度整理をつけることができた。
平塚先生にも、由比ヶ浜との関係についてこう思っているということを話してみたら、
「何を言っているんだ。どうせいつになっても、そんな自信は持てないのだろう? 永遠にそのままでいるつもりかね?」
とか、
「悩んでいるままで良いんだよ。永久不変の感情なんて有り得はしない。そしてそれは間違いじゃない」
「これから由比ヶ浜と一生を共に過ごすも、別の新しい愛を見つけるも、それは君達の自由だ」
「だから期待に応え続けるとかそんなことを考えていないで、もっと『今』を、1つ1つ大切にすべきだ」
と言われた。
先生、言ってることはほんとカッケーなぁ。
なんで良い相手を見つけられないんだろう?
おっと、話題を戻すとしよう。
そう言われてしまっては、グダグダと悩んでいたのが馬鹿らしくなってしまう。
だからもうやめた。
先のことなんて考えてみても分からない。
だが、今現在の「由比ヶ浜結衣のことが好きだ」という想いには、自信を持つことができる。
そのことを全て、ありのままに話してみると、
結衣「うん。ずっと好きでいさせてみせるから、それで十分だよ。でもヒッキーも、あたしが離れてかないようにちゃんと捕まえててねっ!」
と、笑って言われてしまった。
しかし、まだ話しておかなくてはならないことがある。
むしろ本題はここからだ。
結衣「本題?」
八幡「あぁ。多分根本的に、恋愛に対する認識が、俺と由比ヶ浜ではまるで違う」
結衣「?」
由比ヶ浜はきっと、恋だの愛だの、そういった感情を、素敵なものだと思っている。
けれども、俺はそうは思わない。
いや、素敵な側面もあるのだろう。
それはこの数ヶ月の中で、身をもって体験したことだ。
それでも尚、俺は恋愛感情を賛美する気にはまるでならない。
結衣「えっと、ヒッキーはさ、あたしと一緒に居て楽しいとか嬉しいって感じてくれてたんだよね?」
それはその通りなんだけどな……。
恋愛感情は独占欲に他ならない。
最初に清楚系ビッチ呼ばわりしてしまったのだって、おまえが周りの視線を集めてしまうような格好をしているのが嫌だったからだし、すぐに嫉妬だってしてしまう。
由比ヶ浜のことをジロジロ見てくる有象無象には、金槌を投げつけたくなるまである。
それに独占欲だけならまだしも、恋愛は依存性まで孕んでいるように思える。
そういった感情は、決して褒められたものではないはずだ。
高2の初め頃と比べて、今の自分は随分と人間強度が下がってしまった。
いやいや、中二病とかそういうのじゃなくてだな。
孤高であることは強い。
繋がりを持たないということは守るべきものを持たないということだ。
つまり、逆説的に考えて、近頃の俺は脆くなってしまったのだろう。
それこそ、ぼっちであることに誇りを持っていたはずなのに、もう独りには戻りたくないなどと考えてしまう程に。
俺の話を聞いて少し逡巡したのち、ぽつりぽつりと由比ヶ浜は答え始める。
結衣「ん~、なんていうか全部、今更だなーって感じなんだけど……」
うん?
今更ってなんだよ……。
結衣「ヒッキーってさ、恋人どころか、友達関係でも無駄に重く考えてたよね」
八幡「そ、そうか?」
結衣「うん。人間関係全般、そんな感じだったと思う」
八幡「むぅ……」
結衣「だから、そんなこと言われても今更だよ」
結衣「ヒッキーが変に重たい部分あることとか、凄く面倒な考え方してることくらいとっくに分かってて、その上で好きになっちゃったんだもん」
慈しむような、とても優しい視線を向けつつ、徐々にこちらへ近づいてくる。
結衣「心配しなくっても大丈夫。二人で一緒に手を取って歩んでいけば、きっと大丈夫だから」
八幡「由比ヶ浜……」
結衣「それにほら、あたしだって嫉妬くらいするし、独占欲もあるんだよ?」
そして、真正面から抱きしめられる。
腕を抱かれたことはあっても、こうもおもいっきし体を抱きしめられたのは初めてだ。
由比ヶ浜の体温と、そして心の温かみが、ひしひしと伝わってくる。
結衣「今までだってすれ違いとか色々あったけどさ、全部なんとかなってきたじゃん」
八幡「そう、だな……」
結衣「だからね、そんなに難しく考えないで、あたしのこと……、まっすぐ愛してほしいな、なんて……」
非常に照れながらも、必死に語りかけてくる。
由比ヶ浜結衣はとても優しい女の子だ。
この『愛してほしい』という言葉でさえ自分のためではなく、俺を安心させ、納得させるためにそう言っているように感じられる。
ここまでさせてしまっているのだ。
もう、腹をくくる以外に選択肢はないだろう。
八幡「……本当に、俺なんかでいいのか? 多分おまえが思っている以上に、俺は面倒なやつだぞ?」
結衣「もう十分過ぎるくらい面倒だけど、全然嫌いになったりなんてしないから、安心して」
八幡「あぁ……」
俺を抱きしめる腕に、より一層力が込められる。
そして───
結衣「あなたのことが好きです。この上なく愛してます」
結衣「だからあたしと……付き合って下さい」
八幡「…………喜んで」
由比ヶ浜が瞳を潤ませながら、俺の胸に顔を埋めてくる。
落ち着かせるように、こちらも強く抱き返す。
もしかしたら、俺の方も少し涙目になってしまっていたかもしれない。
数分して腕の力を緩めるも、由比ヶ浜は中々離れてくれそうにない。
ってかここ、人通りが少ないとはいえ公道なんですけど……。
その辺の状況ちゃんと分かってます?
何はともあれ、比企谷八幡と由比ヶ浜結衣の関係は、さらに前へ進むことができたのであった。
【誕生日篇Ⅴ:ようやく彼と彼女の関係は定まり、新たなる1歩を踏み出す。】
あれから数日後、ついに6月18日。
由比ヶ浜結衣、19歳の誕生日だ。
あとたったの一年でハタチかよ。
大人になんてなりたくない。
ずっと子供のまま、社会から保護されて生きていきたい。
そもそも、学生でなくなるとか想像できない。
はぁ……、これ以上歳を取るのは嫌だなぁ……。
自分の誕生日なわけでもないのに、そんなことを考えながら大学から家へと帰る。
どうやら小町はまだ帰ってきていないようだ。
生徒会の仕事か、はたまた友達と遊んでいるのだろうか。
リビングのソファーに寝転がりながらケータイをいじる。
この前プレゼントを渡したとはいえ、おめでとうのメールくらいは送っておかないとな。
それとも電話の方が良いのだろうか?
うぅむ……。
彼女なんて今まで居たことがないから、まるで分からん。
というか、あんなにも可愛いやつが俺の彼女……なんだよな。
今でも夢なのではないかと思ってしまいそうになる。
そんなことを考えながらスマフォの画面とにらめっこをしていると、ピーンポ~ンと玄関からチャイムが鳴り響く。
うるせぇな。
小町ならチャイムなんて鳴らすわけないし、宅配か何かか?
面倒に思いながらも立ち上がり、玄関へと向かう。
八幡「どちら様ですかー?」
??「どちら様だと思いますかー?」
うわぁ~。なんで来てんだよ。
追い返すわけにもいかないし、しぶしぶドアを開ける。
八幡「……はぁ。声でバレバレだっての」
結衣「何でそんなに嫌そうな顔するしっ!!」
八幡「あー……、彼女を家へ上げるなんていう経験初めてなわけだから、いきなり来られるのはちょっとなぁ……」
結衣「彼女、か。そっか、そうだよね。あたしがヒッキーの彼女かぁ~……えへへへへ」
来訪者は、言うまでもなく由比ヶ浜結衣である。
結衣「でも、いきなりじゃないよ?」
八幡「あ?」
結衣「今なら家にヒッキー意外誰も居ないこととか、小町ちゃんに教えてもらったから来たんだけど」
それがどうした!
俺にとってはいきなりなんだよ!!
八幡「また小町の策略かよ……」
結衣「まあまあ。誕生日なんだし大目に見てよ。それとも、見られたら困る物でもあるの?」
八幡「べ、別にそういうわけじゃないぞ? あっ、だけど俺の部屋には入るなよ! 絶対だぞ!」
結衣「やっぱり見られたら困る物あるんだ……。ま、別にそんくらい気にしないけど」
おぉぉ。
それはありがたい話だ。
けどやっぱり諸々見られては困るから、まだ絶対に俺の部屋へは招かない……。
結衣「この前さ、映画見るなら家でのんびりDVDで見ようって話したでしょ?」
八幡「お、何か持ってきたのか」
結衣「うん。最近ちょっと暑くなってきたし、怖ぁ~いやつ!」
おい。
以前お化け屋敷に入った時、相当ビビッてましたよね?
それなのにわざわざホラーを持って来るとか、あざとい計算がなされていることが見え見えである。
いやまぁ、そういう展開も嫌じゃないんだけどさ……。
結衣「お邪魔しま~す!!」
元気いっぱいに家へ上がり込んできた由比ヶ浜をリビングへと通し、飲み物を出す。
ふと、先程ソファーに置きっぱなしにしていたケータイにメールが届いているのが目に入る。
えーと、なになに?
FROM 比企谷小町
SUB 無題
そろそろ結衣さん家に来た?
結衣さんの誕生日&お兄ちゃん達の新たな門出を祝って、
ショートケーキでも買ってから帰るね☆
1時間半くらいかかると思うから、
やることやるならその間に済ませておくように。
今の小町的にポイント高い!
あ、そうそう。
ケーキ代は結衣さんが帰った後に請求するから、
そこんとこよろしく。
そんじゃ、ガンバっ! ( ・ω・)b
えぇ~……。
なにこのメール……。
ってか『やることやるなら』って何だよ!
いくら付き合い始めたからといって、いきなりは何もしないからねっ!?
あ、やること=映画鑑賞か。
このDVDは90分みたいだし、1時間半ならピッタシだな。
うん。
そういうことにしておこう。
結衣「ヒッキーどうかしたの?」
八幡「い、いやっ、何でもないぞ?」
結衣「……変なの」
そんなこんなで、映画鑑賞は始まった。
50分程経過した頃だろうか。
物語もヤマへと差し掛かり、怖さも一段と増してくる。
それと共に、俺の体にくっつく柔らかさも増してくる。
八幡「おい、流石にくっつきすぎなんじゃないか?」
結衣「だって、仕方ないじゃん」
八幡「たしかに想像以上に怖いけどよ……」
結衣「そうじゃなくって……、あたし、ヒッキーとこんな関係になれることを、ずっと待ってたんだからね?」
そうか。
近頃暑くなってきたにも関わらず、必要以上にベタベタしてくるのは、そういうことか。
なら、仕方ないよな。
俺は黙って、由比ヶ浜の手を握り締める。
何やら嬉しそうな笑い声が聞こえるが、どんな顔をしているかは分からない。
今由比ヶ浜を直視してしまったら、映画どころじゃなくなってしまいそうだ。
こんな感じで、俺と由比ヶ浜の交際は、ようやくスタートを切ることができた。
4月中旬、雪ノ下に背中を押してもらい、
6月頭、平塚先生に喝を入れてもらい、
こうして、どうにか彼氏彼女という関係にまでなることができた。
周りの手を借りるのはここまでにしよう。
これからは、由比ヶ浜と手を取り合って、2人でちゃんと進んでいかないとな。
そんなことをぼんやりと考えながら、6月18日という日は過ぎていくのであった。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ~誕生日篇~
了
はい。
おしまい!
>>301~>>303でご指摘いただいたパズルのピースは、しっかりと埋まったでしょうか?
最初の方から読み返してみると、
>>9
結衣「あ、うん。前に来た時は部屋に上がられるの嫌がってたけど、今は大丈夫なの?」
とか
>>33
小町「あの時は小町も苦労したんですよ? 4月頃のお兄ちゃん、なんかいつも元気なかったし」
とか
>>46
結衣「あ、そうそう。首輪とリードだけじゃなくって、シュシュとか、この前の誕生日にもらったネックレスとか……」
などなど、ちゃんと話がリンクしていると思います。
大筋は今度こそ本当に終わりだけど、前に少し話してた没ネタをその内公開すると思います。
没にしただけのことはあって面白くないと思いますが、その時はまたお付き合いいただければ幸いです。
やっはろー!
乙レス、ありがとうございます!!
日曜のバイト中店長に、「月曜・火曜・水曜研修に行ってきて」
って急に言われちゃったので最近少し忙しいんだけど、ちょっとだけ書き貯めできました。
(没ネタは頭の中にあっただけであり、既に書いたものを没にしたわけではない)
多分明日あたり更新するんで、その時はまたよろしくお願い致します。
全裸で待機してる
>>435
sageてたのになぜ気づいたwww
んじゃ、はじめまーす。
※時系列的には、⑦梅雨(>>54)より後、⑧歌うのって楽しいよね!(>>69)より前くらいの話のつもりです。
【没ネタ①:アプリ】
ピコピコ
結衣「~~~♪」
八幡「高校の時からしょっちゅうケータイ弄ってたけど、よく飽きないな」
結衣「んー? ヒッキーが構ってくれるならすぐやめるよ?」
八幡「いや、止めろってわけじゃないんだけどさ、ただ何してんのか少し気になっただけだ」
結衣「高2の時と今とじゃ、やってること結構違うかな。ほら、去年あたりスマフォに変えたし」
八幡「スマフォもガラケーも変わんないだろ。あんなん俺にとっちゃ、ただの暇つぶし機能付きの目覚ましだ」
結衣「そうかなぁ? なんだかんだ言ってヒッキーも、あたしや小町ちゃんと結構メールしてるよね」
八幡「……じゃあ、暇つぶし機能&メール機能付きの目覚ましだ。これでいいか?」
結衣「あはは。それもう普通のケータイじゃん」
八幡「ぐぬぬ……」
結衣「ってか、その暇つぶし機能が大事なんじゃないの?」
八幡「ま、たしかにそうだな」
結衣「ヒッキーはアプリとか何いれてる?」
八幡「ん、ほれ」
結衣「相変わらず、よく人にケータイ渡せるなぁ……」
八幡「見られて困るものなんて何も入ってな……あっ、やっぱ返せ」
結衣「えっ! なんかマズイもんあんの!?」
八幡(修学旅行の時のツーショットとか、ディスティニーでの写真とかバッチリ保存してあるんだって)
八幡(なんかバレたら恥ずかしいじゃん……)
八幡「あぁ~、やっぱり見られて嫌な物がないわけでもなかったが、アプリを確認するくらいなら別にいいか」
結衣「なんか気になる言い方だな~。まぁいいや」
結衣「えぇと、どれどれー……うわっ、アイコンの数すくな!」
八幡「余計なデータはほぼ全て消したからな。メールとネットとアラームと、あとはモバマスとスクフェスができれば十分だ」
結衣「モバマス? スクミズ?」
八幡「スクフェスだスクフェス! なんつー聞き間違えしてやがるんだよ、まったく……」
結衣「たははー……」
八幡「スクフェスは音ゲーだ。歌に合わせてタイミングよくボタン押してくゲームくらい、何かしらやったことあるだろ?」
結衣「うん。太鼓の達人とか得意だよ!」
八幡「ゲーセンで例えるなら、どっちかっつーとポップンやユビートの方が近い気がしないでもないけど、大体そんな感じの認識であってる」
八幡「そんでもってモバマスってのは、アイドルマスターシンデレラガールズの略でアイドル育成ゲームだ」
結衣「あ、それはCMで見た事あるかも」
八幡「だろうな。んで、由比ヶ浜はどんなのやってんの?」
結衣「えっとねー、よくやってるのはLINEとかパズドラとかモンストかな?」
八幡「ケッ、いかにもミーハーって感じだな」
結衣「別にいいでしょ! 楽しいんだから!!」
八幡「LINEなんて個人情報流出ツール使って一体何の意味があんだよ。メールで十分だろ」
結衣「そんなことないってば! グループ作れば数人でチャットみたいなことができるんだよ?」
結衣「それにLINEでゲームも色々できるし」
八幡「ゲームねぇ」
結衣「うん。最近はツムツムってのにハマっててー、ほら、こんな感じ」ピコーン
八幡「……え、なにこれ。パズドラのパクリ?」
結衣「ハァ!? 全然違うし! パズドラはカカカカカって感じで、ツムツムはピピピピピって感じだからぁ!!」
八幡「まったくもって意味が分からん……」
結衣「えぇ~、ヒッキーもLINEやろうよ! 楽しいよ!!」
八幡「お前の今のプレゼンを聞いて、やってみたい思える要素が1つもなかったんだが……」
結衣「もう! さっきから文句ばっかり! ヒッキーのバカっ!!」
八幡「……悪かったよ。LINEはともかくパズドラくらい始めてやるから、機嫌直せって」
結衣「ほんと?」
八幡「おう。今度一緒に対戦しような」
結衣「うんっ!」
結衣「……って、パズドラで対戦とかできないからぁ! 絶対知ってて言ってるでしょ!?」
八幡「バレたか」チッ…
◆没にした理由
ハハ、クオリティー低wwwww
この話を思いついたは良かったけど、普通に面白くないなーと思ったのでボツ!
LINEでグループでも作れば、ゆきのんや小町も含めて色々な掛け合いができそうだけど、俺ガイルLINEスレは他にありますしね。
それに、そういったアプリをやらない人には通じなさそうな話題だからボツ!!
※時系列的には、⑬八月八日(>>110)の数日前くらいの話のつもりです。
【没ネタ②:発見っ!?】
~in八幡部屋~
結衣「…………」ゴロゴロ
結衣「…………」ペラッ ペラッ
結衣「ヒッキー、漫画読み終わっちゃったー」
八幡「ん、次の巻ならそこの本棚にあるから勝手に取っていいぞ」
結衣「はーい」
ガサゴソ ガサゴソ
結衣(あれー? 見つかんないなー)
ガサゴソ ガサゴソ
結衣(う~ん、どこだろ……あっ)ビクッ!
結衣(…………ヤッバー。エッチな本発見しちゃった……)
結衣(……ヒッキーが普段どんなの見てるのか気になっちゃうし、少しくらいなら見てもいい……よね?)
結衣「…………」ゴクリ…
結衣「………………」ペラッ…ペラッ…
結衣(うわぁ~~~、なんか凄く艶めかしいんだけど……)/////
結衣(ヒッキーこういうの好きなんだ、どうしようどうしよう)
八幡「いつまで漫画探してんだ? 前にも言ったけど変なとこ漁るなよ」
結衣「わっ!? な、なんも変なとこ漁ったりとか変な物見つけたりとかしてないし!」
結衣「ほんとそんなこと全然ないからぁ!!」ブンブン!
八幡「…………」ジィー…
結衣「うっ……」タジタジ
八幡「おい、今明らかに嘘ついただろ」
結衣「さー、なんのことやら(棒」
八幡「じゃあ後ろに隠してる物見せてみろ」
結衣「…………うん」つ[エロ本]
八幡(うわぁ~マジかー。バレないように隠しておいたはずなのに、なんで見つけちゃうんだよ……)
八幡(ってか漫画とは全然違う場所に隠しといたのに、どうしてこうなったorz)
八幡「おい! 今すぐ忘れろ! 見なかったことにしろ!」
結衣「そんなの無理だし! ってか見つけたくって見つけたわけじゃないんだし仕方なくない?」
結衣「それに色々と思うところはあるけど、何一つ文句言ってないじゃん! ちゃんと我慢してるじゃん!!」
八幡「我慢してるのかよ……」
結衣「うん。特に黒髪ロング美女ってあたりが許せない」
八幡「……由比ヶ浜が発見してしまったのが、偶然そういうのだっただけだ」
結衣「やっぱり他にも色々と持ってるんだ……」
八幡「そこはほら、詮索しちゃ駄目だろ」
結衣「わかった。じゃあそこはスルーしてあげるけど、1つだけ聞きたいことがあります」
八幡「……なんでせうか」
結衣「この女の人、少しゆきのんに似てるように見えるのはあたしの気のせい?」
八幡「………………気のせいじゃないか?」
結衣「今超目ぇ逸らした! 絶対嘘だ!! あたしに嘘吐いたりしないでよね!!!」
八幡「あぁもう分かった認めるよ!」
八幡「どことなく雪ノ下に似てるなーと思ってました! そんなこと考えながら興奮してました! 悪いかコンチクショー!!」
結衣「物凄い問題発言しながら開き直ったっ!?」
八幡「ってかマジで雪ノ下には絶対言うなよ。頼むから」
結衣「心配するとこそこなんだ……」
八幡「だって前にイメチェンするかしないかみたいな話しをした時、見た目だけなら雪ノ下系統がタイプだって正直に言っちゃったことが既にあるし……」
結衣「たしかにそうだけどさ……、そこはもうちょっと優しい嘘吐こうよ……」ショボン…
八幡「嘘吐くなって言ったり嘘吐けって言ったりどっちなんだよ」
結衣「なんていうか……、ヒッキーに空気読めとか言うだけ無駄だろうしもういいや……」シュン…
八幡(あ、あれ?)
八幡(なんかガハマさん本気でしょんぼりしていらっしゃらない?)
八幡(こいつに嫌われるのはマジでまずい。冗談抜きで命を絶ちくなっちゃうまである)
八幡(うぅむ、どうするべきか。空気を読んだ発言……、空気を読んだ発言……)
八幡「…………由比ヶ浜、愛してるぞ」
結衣「っ!???」
結衣「なんのみゃくらくもなくそんなこと言われたってちっとも嬉しくないっていうか、いややっぱ嬉しいんだけど、でもでも、えぇっと、うぅぅぅぅぅ~~~~~」//////
八幡(こいつチョロいわぁ~。詐欺に遭わないか心配になっちゃうレベル)
八幡「……ま、本音ないんだけどな」ボソッ…
◆没にした理由
なんかほら、こういう話は……ね?ww
だからボツ!!
とりまここまで。
あと2つくらい没ネタあるけど書き貯めてないから、それはまた後日~。
ひゃっはろ~
更新スタート!
※時系列的には、⑯大☆乱☆闘(>>164)の後、⑰視線(>>196)の前くらいの話のつもりです。
【没ネタ③:観賞会】
結衣「どっか遊びに行こうよー」
八幡「暑いから嫌だ」
結衣「むぅ~。じゃあ室内でできるなんか良い遊び考えて」
八幡「うーん、ゲーム対決はこの前やったしなぁ。じゃあ互いに好きな映像持ち寄って、DVD観賞会なんてどうだ?」
結衣「それいいね! ヒッキーの案にしては普通に面白そう」
八幡「失礼な……。あ、それと、恋愛脳丸出しのくだらねぇドラマとか持ってこられても困るからアニメ限定な」
結衣「それDVD観賞会じゃなくてアニメ観賞会じゃん!!」
~数日後~
結衣「やっはろー!」
八幡「おう」
小町「結衣さんいらっしゃ~い!」
結衣「ちゃんとツタヤでDVD借りてきたよ!!」
八幡「んじゃ、さっそく観るか。由比ヶ浜のが先でいいぞ」
結衣「ん~、こういう時一番最初ってなんか嫌なんだよね」
八幡「俺は自分が選んだ作品的に締めが良いんだけど」
小町「そういうことなら小町におっまかせ~☆ まずは小町のターンってことで!!」
八幡「ん? 小町もなんか観たいのあるのか?」
小町「うん。最近2期がはじまった作品なんだけど、1期を見返したくなったんだよね」
八幡「ほう」
小町「よーし、再生っ!」ピッ!
(☝ ՞ਊ ՞)☝ウェェェェェェェェェェェェェイ! on 眩しい光 鋭く 目を背ける 一瞬へ~♪
八幡「お、Freeか」
小町「うん。とりあえず1話だけ見ようかなって」
結衣「これ水泳アニメ?」
小町「そうですね」
結衣「へぇ~、こういうの好きだったんだ。なんか意外」
八幡「映像も凄く綺麗だし、ストーリー自体は普通に面白いぞ。……まぁ色々とアレな作品だが」
結衣「どゆこと?」
八幡「観てりゃその内分かる」
~Free!視聴後~
結衣「あぁ~、ヒッキーの言ってた意味ちょっと分かったかも……」
八幡「だろ?」
結衣「なんか姫菜が好きそうな感じだね」
小町「えぇー。最高じゃないですかー」
八幡「小町が腐ってしまわないかお兄ちゃん心配だよ……」
結衣「え、えっと、次はあたしの番だね!」
小町「結衣さんは何持って来たんですか?」
結衣「これっ!」つ『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』
八幡「なるほどな……、これか……」
結衣「ハガレン嫌いなの?」
八幡「いや、ハガレンは好きだぞ。それにこういう時、それ1本で終わる映画をチョイスするセンスも良いと思う」
結衣「でもなんか不満そう」
八幡「まぁ、感想は観終わってからってことで」
~シャンバラを征く者視聴後~
八幡「小町はどうだった?」
小町「結衣さんには悪いんですけど、そもそものストーリーがよく分かんなかったです」
小町「これって1期の続編映画ですよね?」
小町「ハガレンの1期やってた頃って、小町はまだ小さかったのであんまり話を覚えてないっていうか……」
結衣「あ、そっか! ごめん!!」
小町「いえいえ、結衣さんが気にすることじゃないですよ。バトルシーンなんかはかっこよかったですし!」
八幡「俺もアニメ1期の内容そのものに物申したい」
結衣「ものもうすって……」
八幡「前半は良かったけど、後半のアニメオリジナルストーリーは一体なんなんだよ。あんなん完全に黒歴史だろ」
八幡「これはどのアニメにおいても言えることだが、尺の都合で原作をカットするならまだ分かる。しかし話自体を変える必要はどこにもない」
八幡「そういった改変が改悪になることはあっても、改良になることなんてまずないからな」
八幡「アニメのハガレンは、FULLMETAL ALCHEMISTと1期のOP・EDさえ覚えておけばそれで良い」
結衣「ふんっ! 原作厨乙」
八幡「なっ!?」
小町「珍しくバッサリだ~」
八幡「……気を取り直して、最後は俺のターンだな」
結衣「散々ケチつけたんだから、ちゃんと面白いやつ見せてよね」
八幡「任せとけ。俺が今日観てもらいたいのは、CLANNADの1話~9話だ」
結衣「長っ!!」
八幡「仕方ないだろ。9話が区切り良いんだから」
小町「クラナドって原作ギャルゲでしょ? そんなの妹と彼女に見せるとか、ものすごーくポイント低いんだけど」
結衣「ギャルゲを9話も見せるつもりなんだ……」
八幡「おいおまえら引くな。CLANNADマジで良い話だから!」
小町「無難にゴシックとかいぬぼくにしとけばいいのに」
八幡「アイマスとかラブライブを選ばなかったあたり、ちゃんと配慮してんだろうが」
八幡「あとワタヌキッチンのことは忘れてさしあげろ……」
八幡「それに丁度昼時だし、昼飯でも食いながらノンビリ視聴してれば9話なんてあっという間だろ?」
八幡「1話あたり24分、それが9話分で、えっと……」
結衣「24×9=216分っ!」
小町「てことは約3時間半ですね」
八幡「くっ……。計算は由比ヶ浜に勝てないのが酷く屈辱的だ……」
結衣「なんか失礼なこと言われたっ!?」
八幡「俺はテキトーに飯の準備してくるから、お前等真剣に観てろよ。前半はあんま面白くないからって寝るなよ!」
結衣「面白くないんだ……」
~CLANNAD視聴後~
小町「イイハナシダナー……」ウルウル…
結衣「うぅ……風子ちゃん…………」ボロボロ
八幡「おい由比ヶ浜、感受性が豊かなのは良いことだが号泣しすぎだから」つハンカチ
結衣「ありがと……。ってかなにこれ、全然涙止まんないんだけど……」
八幡「な、良い話だったろ?」
結衣「うん……。途中風子ちゃんが可哀想すぎて……、でも最後には…………」ウワーン!
小町「お兄ちゃんがこういう話を好きだったことに小町はビックリだよ」
結衣「あ、たしかに……。普段のヒッキーだったら、学園青春ラブコメとかハートフルストーリー?とかすごいバカにしそうなのに……」グスン…
八幡「ばっか。そんなこと気にしてたらラノベなんて何も読めないだろ」
八幡「そもそも2次元と3次元は全くもって違う。同一に考える方が余程まちがっている」
小町「うんまぁたしかに」
八幡「だからCLANNADは、あくまで架空の物語として大好きなんだよ。これが現実だったら馬鹿にするだろうけどな」
結衣「えぇ~。もし現実でこんなことが起きたら、あたしなら絶対一緒になって頑張っちゃうなー」
八幡「うわ、マジかよ。冷静に考えてみるとあいつら、ゴミにしかならない木材を怪奇現象と共に配り歩くキチガイ集団だぞ?」
八幡「そんなのと一緒に頑張るとかないわー。由比ヶ浜さんマジひくわー」
小町「うわぁ……。せっかくの余韻が台無しすぎる……」
結衣「…………ヒッキー本気で気持ち悪い」
八幡「っ!? お前等CLANNADに感情移入しすぎだからぁ!!」
小町「あ、なんか今の言い方結衣さんっぽい」
八幡「えっ、俺がこいつに影響受けてるってのか? おいおい小町、それはいくならんでも俺に失礼だろ」
結衣「そっちの方が失礼すぎだからぁ!!」
◆没にした理由
あおちゃんがFree!大好きなのは有名だけど、東山奈央さんがハガレンやCLANNAD好きなことは知らない人が多いのではないかと思ったので。
多くの方に通じなさそうな中の人ネタはボツ!
あと最後の方、CLANNAD知らない人は何言ってんだか分からないと思ったのでボツ!!
それとあおちゃんFree2期出演おめでとうございます。
おつおつ
中の人ネタわからんかったわ
CLANNADは人生
※時系列的には、【⑳飲食店】(>>265)のすぐ後の話のつもりです。
【没ネタ④:服屋さん】
結衣「ゆきのんゆきのん、次はこのお店入ろーよ!」
雪乃「洋服店ね、構わないわよ」
結衣「わーい!」
八幡「んじゃ、俺はどっかで待ってるわ」
結衣「なんで? ヒッキーも一緒に行こうよ」
八幡「なんでって、明らかに女性向けの店だしそりゃあ入りにくいだろ」
結衣「えぇ~、ヒッキーにも一緒に選んでほしかったのに」
八幡「どうして雪ノ下の目の前でお前の服を選ばにゃならんのだ……」
結衣「あ、そっか。なんか恥ずかしいもんね」
八幡「……ん、そだな」
雪乃「あら。まるで私の前でなければ、由比ヶ浜さんの服を選んであげるかのような言い方ね」
八幡「う、うっせ。いちいち上げ足取るんじゃねぇよ」
八幡「まぁとにかく、俺はその辺でテキトーに時間つぶしてるから」
結衣「どっか行っちゃうの?」
八幡「その辺の本屋でもぶらぶらしてるだけだから気にすんな。それにお前の買い物は無駄に長いしなぁ」
雪乃「そうね、では由比ヶ浜さんの気が済み次第連絡するわ」
八幡「おう、頼む」
結衣「むぅ・・・…」
~in服屋~
雪乃「それで、どんな服が気になっているの?」
結衣「んーとね、色々かな~」ルンルン♪
雪乃「……比企谷くんの言う通り、長い買い物になりそうね」
結衣「色々見て回るのが楽しいんじゃん! ゆきのんは何か欲しい服とかないの?」
雪乃「特にこういうのが欲しいということはないのだけれど、せっかく立ち寄ったのだし一着くらい買っていこうかしら」
雪乃「そもそもそこまで多く普段着を持っていないから、大学へ何を着ていくか困る事が多いのよ」
結衣「ドレスとかああいうのを持ってる方が凄いと思うけど……」
雪乃「そうかしら?」
雪乃「とにかく私は普段着のバリエーションに乏しいものだから、制服が指定されていた中学・高校時代がいかに楽だったか、最近になって痛感しているわ」
結衣「んじゃあ今日とかすっごく暑いし、いかにも夏服!って感じなの選んでみよっか」
雪乃「夏休み明けの大学生活を想定するのなら、徐々に涼しくなってくるわけだし秋服を選ぶ方が良いのではないかしら?」
雪乃「それに由比ヶ浜さんのセンスで派手なものを選ばれてしまっても、正直困るのだけれど」
結衣「そんなことしないから! ちゃんとゆきのんに似合いそうなの探すし任せて任せてっ!!」グッ!
雪乃(本当に大丈夫かしら……)
結衣「あっ、これなんてどう? ハデすぎないし地味すぎないし、フツーにお洒落な感じじゃない?」
雪乃「そうね……。系統としては申し分ないのだけれど、少々首回りが緩くないかしら?」
結衣「そう? 鎖骨がギリギリ見えるか見えないかくらいな感じだし、こんくらいならちっとも際どくないと思うけど」
雪乃「…………あなたが着た場合はそうでしょうね」
結衣「ほぇ?」
雪乃「……だから、私がそういった服を着た状態でしゃがんだりすると、その……、なんというか……、胸元に隙間が…………」
結衣「あっ……、ゴメン……」
雪乃「くっ……」シュン…
結衣「え、えっと、ゆきのん超可愛いしメチャクチャ綺麗だし、そのくらい全然気にする必要ないと思うっていうか」アセアセ
雪乃「コホン……、変な気を遣わせてしまってごめんなさい」
雪乃「服を真剣に選んでくれているのは伝わってきているし、とても嬉しいから大丈夫よ」
雪乃「えぇ、本当に大丈夫よ。これくらいのことなんともないわ。いちいち気にするのも馬鹿らしいくらいね」
雪乃「何の役にも立たない脂肪の有無なんてこれっぽっちも気にしてなんかいないから」
結衣「うんうん。ほんと役に立つことなんて何もないから」
雪乃「…………それは嫌味のつもりかしら」チッ…
結衣「えぇ~……。なんかゆきのんがヒッキー並みに面倒だ……」
雪乃「し、仕方がないじゃない! 高校の頃からほとんど成長していないのよ? 実は常にとてつもなく気にしているに決まって───」
結衣「あたしだって高校の頃とサイズ変わってないからぁ!」
雪乃「由比ヶ浜さんはもうその大きさで十分でしょう?」
結衣「うん。ってかマジで良いことなんてないからね?」
雪乃「……例えば?」
結衣「肩凝りやすいし、走ったりうつ伏せになったりする時邪魔だし、歳とると垂れるってよく聞くし……」
結衣「あと一番嫌なのは、しょっちゅう男の人にチラチラ見られることかな」
結衣「まぁ仕方のないことなんだろうし怒ったりはしないけど、不快なものはやっぱり不快っていうか」
雪乃「フッ。私の場合どの道男性の視線を集めてしまうから、その点については胸の有無なんて関係ないわね」ドヤァ!
結衣「…………」
雪乃「…………」
結衣「…………」
雪乃「……なんか悲しくなってきたわ」グスン…
結衣「あ、あははー……」
◆没にした理由
やめたげてよぉ!
最初は「貧乳を気にしてるゆきのん可愛い!」って感じの話を書いてみたかったんだけど、
話の構成を考えてみたところ「ゆきのんカワイソス(;ω;)」って内容になっちゃったからボツ!!
カップリング的にはブッチギリで八結推しなんだけど、
キャラとしては普通に雪乃も好きだからこういうのは無しの方向で……。
さて、これにてネタは全て尽きた。
あ、エピローグ後の話(キスしたは良いけどお互い意識しまくっちゃってどうのこうの~みたいなやつ)も、書けないことはない気がする。
でもエピローグ>>270より後に話を付け足すのは蛇足になっちゃうかな?
まぁ没ネタの時点でもう十分蛇足な気がしないではないけど、時系列的には全てエピローグより前の話だからセーフという言い訳。
どうしませうか。
>>466
うん、CLANNADは人生!!
風子ルートがマジで好き。個人的に、風子ルートとリトバスのリフレインがkey作品の二強だと思ってる。
結局PC買い替えることになったわ。
ハードディスクはサルベージとやらをして、データ復旧できるかどうかやってみないと分からんって感じみたい。
どうなることやら???
てす
※iPadで半角カタカナの入力方法が分からない点については予めご了承下さい。
【小ネタ①:手】
八幡「…………」ペラッ ペラッ
結衣(あ、ヒッキー片手で本読んでる)
結衣「よく片手で読めるね」
八幡「んー、普段はこんなことあんましないけどな。読みにくくなるだけだし」
八幡「たまぁ~になんとなく気分でこうしたくなるだけだ」
結衣「そうなんだ。でもあたし大きいモノ片手で持ったりできないから羨ましいな~」
結衣「ってかヒッキー手ぇ大きくない?」
八幡「そうか? かなり普通サイズだと思うんだけど」
結衣「そっかなー?」
八幡「お前の手が小さすぎるだけなんじゃね?」
結衣「むぅ……、なんかムカツク……」
結衣「でもそれ他の人にも言われたことあるかも」
八幡「ほらな。やっぱり由比ヶ浜の手が他の人の手より小さいだけだろ」
結衣「そんなに小さいのかなぁ……」
結衣「……はいっ!」つ
八幡「……ん? なにそれ、御手? 犬の真似?」
結衣「オテじゃないしッッッ!!!」
結衣「手の大きさ比べしようってこと! ふつーに考えてそんくらい分かるでしょ?」
八幡「悪かったな。あいにく俺は普通じゃないもんでしてね」
結衣「まったくもう……」
八幡「わーったよ。大きさ比べすればいいんだろ? ほれ」つ
結衣「ほんとに結構大きさ違うね~」
八幡(由比ヶ浜の手、ほんとちっせーな)
八幡(ってか何これ、超スベスベなんだけど。ちっちゃかわいい……)サワサワ
結衣「わっ!?」
八幡「っ!! わ、悪い。その、なんというか、つい…………」
結衣「あ、ええと、急にだったから驚いただけで嫌なわけじゃないっていうか、ヒッキーにだったら手くらいいつ触られても構わないっていうか……」
八幡「そ、そうか……」///
八幡(わーーー、やっちまったやっちまった! メチャクチャ恥かしいんですけど!!)
結衣「えいっ!」ギュッ!
八幡「えぇと、なんでしょうか……?」
結衣「ヒッキーの方から手ぇニギニギしてきたんだから、恋人繋ぎくらいしてみたって文句はないでしょ?」
八幡「たしかに文句は言えないけど……」
結衣「ふふっ、ならいーじゃん!」ニヘラー
八幡(……ま、かなり得した気分だし別にいいか)
なにこれタイピングに超時間かかる!
疲れたからおしまい!!
新しいPCが我が家へやってきたら頑張ると思うのでお許し下さい(-_-;)
あ、そうそう。
パソコンなくて最近暇だし、ヒッキーに誘発されて(?)スクフェス始めてみました。
アニメ見てないしキャラも一部しか知らんけど、普通に音ゲーとして面白いね。
おかえり!更新楽しみにしてる
あと渋でイラストのほうもいっぱい描いてくだされ
期待
レントゲンで見て、親知らずが1本も無いことが確定した俺は勝ち組
なんとか無事か
ゆっくり待ってる
【小ネタ①:手】
八幡「…………」ペラッ ペラッ
結衣(あ、ヒッキー片手で本読んでる)
結衣「よく片手で読めるね」
八幡「んー、普段はこんなことあんましないけどな。読みにくくなるだけだし」
八幡「たまになんとなく、気分でこうしたくなるだけだ」
結衣「そうなんだ。でもあたし大きいモノ片手で持ったりできないから羨ましいな~」
結衣「ってかヒッキーの手大きくない?」
八幡「そうか? かなり普通サイズだと思うんだけど」
結衣「そっかなー?」
八幡「お前の手が小さすぎるだけなんじゃね?」
結衣「むぅ……、なんかムカツク……」
結衣「でもそれ他の人にも言われたことあるかも」
八幡「ほらな。やっぱり由比ヶ浜の手が他の人の手より小さいだけだろ」
結衣「そんなに小さいのかなぁ……」
結衣「……はいっ!」つ
八幡「……ん? なにそれ、御手? 犬の真似?」
結衣「オテじゃないしッッッ!!!」
結衣「手の大きさ比べしようってこと! ふつーに考えてそんくらい分かるでしょ?」
八幡「悪かったな。あいにく俺は普通じゃないもんでしてね」
結衣「まったくもう……」
八幡「わーったよ。大きさ比べすればいいんだろ? ほれ」ピトッ
結衣「ほんとに結構大きさ違うね~」
八幡(由比ヶ浜の手、ほんとちっせーな)
八幡(ってか何これ、超スベスベなんだけど。ちっちゃかわいい……)サワサワ
結衣「わっ!?」
八幡「っ!! わ、悪い。その、なんというか、つい…………」
結衣「あ、ええと、急にだったから驚いただけで嫌なわけじゃないっていうか、ヒッキーにだったら手くらいいつ触られても構わないっていうか……」
八幡「そ、そうか……」///
八幡(わーーー、やっちまったやっちまった! メチャクチャ恥かしいんですけど!!)
結衣「えいっ!」ギュッ!
八幡「えぇと、なんでしょうか……?」
結衣「ヒッキーの方から手ぇニギニギしてきたんだから、恋人繋ぎくらいしてみたって文句はないでしょ?」
八幡「たしかに文句は言えないけど……」
結衣「ふふっ、ならいーじゃん!」ニヘラー
八幡(……ま、かなり得した気分だし別にいいか)
※過去篇其ノ一:本日はお日柄もよく、つまるところ練習日和である(>>13)の、数日後の話です。
【過去篇1.1話:つつがなく、入学式は取り行われる。】
小町「お兄ちゃ~ん! 小町の晴れ着姿はどう?」
八幡「ただの制服だろ。ってかこの前も見た」
小町「何そのつまんない反応! 小町的にポイント低いよ」
八幡「もうおまえも高校生なんだから、その変な口癖止めろよ」
八幡(たまに俺までその口癖に感染しちまうじゃねぇか)
八幡(まぁ、好きな相手のことは自然と真似たくなるっていうしな。あ、今の八幡的にポイント高い)
小町「むぅ~……。そだ、そういえばさ」
八幡「ん、どうした?」
小町「もしかしてお兄ちゃん、高校の入学式体験するのって今回が初めて?」
八幡(俺は事故のせいで、自分の入学式に参加できていないのであった)
八幡(そうか、あの始まりの事故から、今日で2年も経つのか……。なんだか感慨深いな)
八幡「あぁ、そういえばそうだな。言われるまで全然考えてもみなかった」
小町「よしっ、じゃあ気合いれて行かなきゃね! はりきってレッツゴー!!」ビシッ!
八幡「え……もしかしてこれから毎日、おまえを自転車に乗せてかなきゃいけないの?」
小町「え? そんなの当たり前じゃん」ウェヒヒヒ
八幡「当たり前なのかよ、はぁ……」
~入学式~
一色「えー、新入生の皆さん、御入学おめでとうございます」
一色「長い冬も過ぎ去り、暖かな春の日差しが心地よく感じられる季節となりました。まるで皆様の入学を待ちわびていたかのように、校庭の花々も綺麗に咲いています」
一色「これから、皆様の新たな───」ペラペラ
八幡(不安だった生徒会長の挨拶も、とりあえず何とかなったみたいだ。その後も特に問題は起こらず、入学式は至って普通に終了した)ホッ…
小町「あっ、おにーちゃーん! お~い!!」ブンブン
八幡「ったく、あんまり大声出すなよ。初日から変な目で見られても知らないぞ」
大志「お兄さん、お久しぶりっす!」
八幡「げっ、おまえもうちに入学したのかよ。お兄さんって呼ぶなと何度言ったら分かるんだ。……あとおまえ誰?」
大志「大志っす! 川崎大志っす!! 絶対分かってて聞いてますよね!?」
八幡「んだようっせぇな……」
沙希「おい」
八幡「あん?」
八幡(なんだ、川なんとかさんも来てたのか)
沙希「あんまうちの弟いじめるんじゃないよ」キッ!
八幡「別にいじめてねぇよ。妹に付く悪い虫を追っ払ってるだけだ」
沙希「このシスコン」
八幡「黙れブラコン」
小町(この二人、兄弟愛強いところとか、目付き悪いところとか、普段一人で居るところとか、どことなく似てるな~……)
小町(ハッ! まさか、思っていた以上に有力なお姉さん候補っ!?)
小町「これはこれは、楽しい高校生活になりそうですなぁ」ニヤニヤ
八幡(小町のこの笑顔を見ていると、嫌な予感しかしない……)
本日はここまで。
自分で書いておいてこんなこと言うのもなんだけど、結局>>83的な展開になるんだと思うとなんかかわいそう……。
サキサキごめんね!!
>>502
ありがとう! ペンタブとSAIについてはなんとかなったから、無事絵も描けるようになったよ。
でも画面の大きさも解像度もだいぶん変わったもんだから、慣れるまでしばらくの間は描きにくそう。
頑張ります!!
>>503
うらやまー
4本とも抜くのはほんと大変だった。ってかここ1・2か月で急に歯が4本も減っちゃって、どことなくもの悲しい。
>>504
どうにか無事でした!
wordには卒論の下準備的なやつも入ってたから、ハードディスク復旧できて本当に良かった。
しかしSAIの過去作のデータは破損したorz
作っておいた素材とか模様とか消えちゃってショック!!
※過去篇其ノ二:いつの間にやら、部員は増えている(>>27)の、数日後の話です。
【過去篇2.1話:喧嘩するほど仲が良い……もとい、ただの犬猿の仲である。】
八幡(とある放課後のことだ)
八幡(小町用のティーカップを買いに行くのに付き合わされた後、小町と由比ヶ浜に無理矢理連行される形で、俺と雪ノ下はボウリング場へ連れて来られていた)
八幡(それはまだいい。いいのだが……)
戸部「っべー! 隼人くんまたスペアとかほんとぱないわー」
葉山「いやいや、ボウリングは俺より優美子の方がよっぽど上手いよ。さっきからストライク出しまくりだし」
戸部「いやぁ~。なんつーか、アレじゃね? 向こうのレーンはレベルが違いすぎっつーか……」
~向こうのレーン~
雪乃「ふふ……、これで私の勝ちね……」ハァ…ハァ…
三浦「あ? 一回くらいただのマグレっしょ? 3ゲーム制にすれば絶対あーしが勝つし」イラッ
雪乃「望むところよ……。何度やったって結果は同じ……格の違いを見せてあげるわ……」ハァ…ハァ…
八幡(……どうしてこうなった)
八幡「おい雪ノ下、止めとけって。長期戦になったらおまえに勝ち目ないだろ」
雪乃「部外者は口を挟まないでっ」キッ
三浦「ヒキオは引っ込んでろ!!」ギロリ
バチバチバチバチ
八幡(こえぇ~、こいつら超こえぇ~……)
結衣「ヒッキーごめんね?」
結衣「今日サッカー部が休みなこと知らなくって、まさか優美子達が居ると思ってなかったから」アハハ…
八幡「別に、おまえが謝ることじゃないだろ」
結衣「うん……」ショボン…
八幡「……変に空気読んで縮こまってなんかいないで、おまえもとっととボール取ってこいよ」
八幡「この際向こうはもう放っといて、こっちはこっちで普通に楽しもうぜ」
結衣「えっ/// う、うん! それじゃあこっちは仲良く勝負しようね!」
八幡「いや……、勝負はしなくても……」
結衣「負けった方が勝った方にアイス奢ることっ! んじゃ、すぐボール取ってくるから!!」トテテ
八幡「はぁ……」
小町「むふふ~。今の態度は小町的にも結衣さん的にもポイント高いよ!」ニヤニヤ
八幡「うっせ!」
【小ネタ②:膝枕】
八幡「すー……すー……」zzz
結衣「…………」ナデナデ
結衣(寝てると腐った眼も隠れて普通にイケメンだなー。ってかヒッキーの寝息可愛い……)
八幡「…………」zzz
八幡「……んぅ」パチクリ
八幡(あれ……?)
八幡「…………」
結衣「あ、ヒッキー起きた? おはよー」
八幡(あ…ありのまま今起こったことを話すぜ! 目が覚めたら、そこは由比ヶ浜の膝の上だった……)
八幡(何を言っているのかも何が起こっているのかも俺が一番わけ分かんないんですけどっ!? え、マジでなにこれ)
八幡「由比ヶ浜さん? この状況を説明してもらえると助かるんだが」
結衣「ほら、お昼ご飯食べた後ヒッキー寝ちゃってたから」
八幡「それは覚えてる。俺が聞いてるのはそういうことじゃなくてだな、えぇと……」モゾモゾ
結衣「わっ!? ちょっと急に動ないでよ!!」
八幡「わ、わるい」アセアセ
八幡「……って、俺何も悪くなくね?」
八幡(このままだと太腿のスベスベ柔らかな感触に屈してしまいそうで色々とまずい)
八幡(しかも由比ヶ浜の顔を見ようと上を向くと、大きな二つの膨らみがどうやっても視界にばっちり映ってしまい俺の理性がヤバイ)
八幡「……とりあえず起きていいか?」
結衣「えぇ~。せっかくだしもう少しこうしてようよー」
八幡「駄目だ」
結衣「なんで?」
八幡「駄目なもんは駄目だ!」
結衣「あ、もしかしてヒッキー照れてる?」
八幡「……かなり」
八幡(照れてるとかそんなもんじゃ済まなくなりそうで困るから早く逃げさせてくださいお願いしますいやもうほんとマジで!!)
結衣「まったくもー、しょうがないなぁ」
八幡「ふぅ……、助かった……」
結衣「んで、よく眠れた?」
八幡「よく眠れたかどうか忘れるくらい、精神的に一気に疲れた」
結衣「なにそれっ。人がせっかく膝枕してあげたのに意味わかんない!」
八幡「してくれなんて誰も頼んでねぇよ!」
結衣「むぅ~~~、ヒッキーのばかぁ」
八幡「あー、その、なんだ……。不快だったとかそういうわけじゃなくて、むしろなんというか……」
八幡「あぁもう! スゲー幸せだったけど妙な気分になりそうだったから嫌だったんだよ!!」///
結衣「ふ~ん、そっかそっか」
結衣「ふふ、許したげる」エヘヘー
八幡(あぁ……、最近恥ずかしい思いをさせられてばかりな気がする……)
はいっ! 今日の投下分はおしまい!
妙な気分になって何か問題あるの?
ゆっくりいきたいんだよ
おつおつ
次は妙な気分になった八幡とガハマさんを書いてくれるんですね!?
※過去篇其ノ三:由比ヶ浜結衣は皆に愛されている(>>48)の、数日前くらいの話です。
【過去篇2.5話:どこからどう見ても、デート以外の何事でもない件について。】
八幡「小町! 今年も遂にこの日がやってきたぞ! いざ出撃だ!!」
小町「おぉー!!」
八幡(最寄りのバス停からバスで15分、『東京わんにゃんショー』の会場である幕張メッセに到着だ)
八幡(東京わんにゃんショーが行われるのも、東京ディスティニーランドがあるのも千葉であることから分かるように、『千葉≒東京』という計算式が出来上がる)
八幡(……つまり、真の首都はもはや千葉であるといえる。やはり千葉最高)
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
八幡「なん…だと!?」
八幡(幕張メッセに辿り着くと、そこにはなんと懐かしのツインテゆきのんが待ち構えていた)
八幡「え……、なんでおまえが居んの?」
雪乃「いつにも増して腐った目と、そのぬぼーっとした顔でこちらを見るのを止めてもらえないかしら」
八幡「いや、だからなんでおまえ居んの……」
雪乃「私は小町さんに呼ばれたから来ただけなのだけれど、どうやら小町さんは居ないようね」
雪乃「妹をダシに使って私を呼び出すなんて、随分と卑怯で下卑たやり方ね、下衆谷君」
八幡「ちょっとまて小町ならすぐ横に……って、あれ?」
八幡(あ、あんにゃろー……、謀ったなぁぁぁああああ!!!)
八幡「んで、どうして俺の後に付いてくんだよ。小町が消えたんだから、一緒に見て回る必要はないだろ」
雪乃「さっきまで小町さんは居たのでしょう?」
雪乃「なら、こうして色々見て回っていればどこかで遭遇できるかもしれないし、私の様な美少女と共に行動出来るのだからあなた側に不利益はないはずよ」
雪乃「文句を言われる筋合いはないわ」
八幡「自分で美少女とか言っちゃうなよ……」
八幡「いや別に文句があるわけじゃないが、俺も雪ノ下も自分のペースで見て回りたい派だろ?」
八幡(あと、なんか女子と二人でお出かけとか恥ずかしいし。ただし小町相手の場合は除く)
八幡(あ、やっぱり文句あったわ。久々の小町とのデートを邪魔してんじゃねぇよ)ギリリ…
雪乃「それはそうなのだけれど、その……、私は犬が苦手というわけではないにしろ得意ではないのだし、たとえ比企谷くんのような人であれ、居ないよりは居てくれた方がまだマシというか……」
雪乃「それと、先程とても不愉快な視線を感じたのだけれど」
八幡「き、気のせいだろ……」
八幡(そういえばこいつは犬が超苦手なうえに、滅茶苦茶方向音痴だったな)
八幡「でも良いのか? 俺なんかと二人きりで行動することになって」
雪乃「初めてのことというわけでもないのに、何を今更……」
雪乃「男女が二人で行動したからといって、必ずしもデートというわけではないでしょう?」
八幡「まぁ、それはそうだが」
八幡(そうだ。これは断じてデートなどではない。方向音痴で犬が駄目なやつの面倒を見てあげる、ただそれだけのことだ。他意は何もない)
雪乃「それに、あなたと二人きりというのも、その……、嫌いではないわ」
八幡「そ、そうか……」
八幡「んじゃ、一緒に色々見て回るか。……猫を重点的に」
雪乃「そうね、そうしましょう。比企谷君にしては珍しくとても賢明且つ聡明な判断だと思うわ」ウキウキ
八幡「おまえどんだけ猫好きなんだよ……。楽しみにしすぎだろ……」
~鳥ゾーン~
八幡「おぉ~! やっぱ鷲や鷹はかっこいいなー!!」
雪乃「昨年もそうだったけれど、普段はまるでゾンビの様なのに動物を見ている時は妙に元気ね」
八幡「仕方ないだろ。こういうのは見てるだけでテンション上がってくる!」
雪乃「ふふ、分からなくもないわ」
八幡「だろ?」
雪乃「でも私は勇壮で美しい鳥だけではなく、ペンギンの様な可愛らしいものも好きよ」
八幡「あいつら可愛いか? ペンギンの語源って──」
雪乃「ラテン語で肥満の意だと言いたいのでしょう? それくらい知っているわ」
八幡「ぐぬぬ……、流石ユキペディアさん……」
雪乃「残念だったわね、あなたのその矮小な自尊心を満たすことができなくて」クスクス
八幡「……そこまで言う必要なくね?」
~犬ゾーン~
ワンワン! キャンキャン! クーン ワンワン!
雪乃「うぅ…………」ガクブル
八幡「おい、あんま背中に引っ付くな」
雪乃「別に引っ付いてなどいないわ。私はただ自分の安全を確保するために当然の行動を取っているだけであって……」
八幡「小型犬相手にビビる行為のどこが当然なんだよ」
雪乃「比企谷くんの癖に生意気よっ」
八幡(ほんとあんまりくっつかないで下さい鬱陶しい暑苦しい恥ずかしい良い匂い……)
~猫ゾーン~
雪乃「ようやくたどり着いたわね」
雪乃「まったく、犬ゾーンを通過しなければ猫ゾーンへ来られないなんて、とても不親切な配置だと思うのだけれど」
八幡「いや、人気動物である猫や犬を中央付近に持ってくるのは普通だと思うぞ?」
雪乃「そんなことはどうでもいいわ。早く猫と触れ合いましょう」
八幡「自分で文句言っといてどうでもいいのかよ……」
八幡(そう言うと雪ノ下は早速猫と戯れ始めた)
八幡(最初はどうなることかと思ったが、こんな無邪気な笑顔の雪ノ下を眺めているのも、まぁ───)
───悪くはない。そんな気がした。
※過去篇其ノ三:由比ヶ浜結衣は皆に愛されている(>>48)の、数日後の話です。
【過去篇3.1話:果たして、結婚とは如何様なものか。】
平塚「はぁぁぁ~~~……、結婚したい…………」グスン
八幡「なんか、今回はいつにも増して深刻そうですね」
平塚「あぁ。今まで私が結婚したいと言ってきたのは、ほら、親戚の目や親の小言が要因だろ?」
八幡「はぁ、そうみたいっすね」
平塚「けどな、この前友人の結婚式に呼ばれて……」
八幡「ジューンブライドってやつですか?」
平塚「そうだな。それを見ていたら結婚そのものに憧れというか……、ああいう幸せな花嫁に私も早くなりたいと、深く思ってしまったのだよ……」
八幡「幸せな花嫁ですか。幸せそうに見えるだけで、本当に幸せかどうかなんて傍から見ても分からないでしょ」
平塚「幸せな花嫁ではなく、幸せそうな花嫁か。たしかにそうかもしれんな。しかし最初はそれでも良いんじゃないか?」
八幡「?」
平塚「真の幸せとは、夫の有無に関わらず、己の力で掴み取るべきものさ」ドヤァ!
八幡(うわぁ~この人今自分でかっこいいこと言った気になってるよ……。まぁ実際かっこいいけど)
平塚「比企谷はそういうのに興味はないのかね?」
八幡「あぁ、俺も相互助力関係としての結婚には興味ありますよ。なんてったって専業主夫目指してますし」
平塚「まずは恋愛をしなければ何も始まらんだろうに……」ヤレヤレ
八幡「んなこと先生にだけは言われたくな───」
平塚「何か言ったかね?」ギロリ
八幡「ひぃぃぃいいい!? いえ何でもございませんっ!」
平塚「なら良い」
八幡「ぐっ……。んで、なんでしたっけ? 恋愛っすか?」
八幡「俺はこう見えて、中学時代は恋愛経験豊富でしたよ。……全部片想いのまま終わりましたけど」
平塚「そ、そうか」
平塚「だがまぁ焦ることはないさ。今の君の周りには魅力的な女性が沢山居ることだしな」
八幡「俺の周りに魅力的な女性? 何ですかそれ、もしかして自分のこと言ってます?」
平塚「ッ!? ひ、比企谷には私が魅力的な女性に見えるのかね!??」
八幡(え……、冗談で言っただけなのに何この食いつき様……)
八幡「えぇっと……、平塚先生は物凄く生徒想いな人ですし、惚れ惚れする程かっこいいですし、魅力的な人間だと思いますよ?」
八幡(まるでダンディなおっさん的なかっこよさだが、女性云々は置いといて魅力的な人であることは事実だし嘘は一切言っていない……はずだ)
八幡(もうちょい普段から女性的なところを見せれば、この人絶対モテモテなのにな)
平塚「そ、そうか! 比企谷は私のことをそう思っていたのか! 御世辞だとしても嬉しいぞ!」///
八幡「いやあの別に御世辞のつもりはないというか……」
平塚「ハハハ! 今日の君は随分と口が上手いな! そうだ、ジュースでも奢ってあげよう! 遠慮せずに欲しい物を言いたまえ」
八幡「あ、はい。じゃあMAXコーヒーで……」
八幡(今日の平塚先生、普段以上にチョロすぎる!)
八幡(もうほんと誰か早く貰ってあげて!!)
【小ネタ③:ヤキモチ】
小町「お兄ちゃんさー」
八幡「んー?」
小町「結衣さんとデートとかちゃんとしてるのは小町的にもポイント高いんだけど、えぇと……」
八幡「……なんだ?」
小町「あ、いや、やっぱなんでもない」
八幡「おい。そんな気になるような言い方しておいて、なんでもないってことはないだろ」
小町「なんでもないったらなんでもないの! ほんと気にしなくていいから!!」
八幡「…………なに、もしかしてお前、最近構ってもらえなくて寂しいの?」
小町「うっ」ギクッ!
小町「別に寂しいってわけじゃないんだけどさ、なんていうか、まぁ……、当たらずとも遠からずというか……」モジモジ
八幡「うわなにこのカワイイ生き物今すぐ抱きしめたい!」
小町「……割と本気で気持ち悪いんでこれ以上近づかないで下さい」
八幡「え、あ、すいません」
小町「はぁ……。お兄ちゃん普段は凄く鈍感なのに、なんで変なとこで鋭いかなー?」
八幡「何言ってんだ。俺はいつでも過敏で敏感で過剰で、これっぽっちも鈍感の要素なんてないだろ」
小町「いやいやそっちこそなに言ってんの」
小町「女子の気持ちとか分かってない時ばっかだし超鈍感じゃん! 現に結衣さんもお兄ちゃんの鈍感っぷりのせいで散々苦労してたじゃん!!」
八幡「はぁ? 由比ヶ浜の気持ちくらい高校の時から大体気づいてたから。気づかない振りしてただけだから」
小町「うわぁ~……、ほんと最低だー……」
八幡「我ながらかなり酷いことしてたとは思うが仕方ないだろ。俺にも色々とあったんだよ」
八幡「それになんだかんだで上手くいったんだから、別に問題ないたろ?」
小町「うん? そう……なのかな? いやでもやっぱりごみいちゃんがクズだという事実に変わりはないっていう……」
八幡「おいやめろって。あんまり俺を傷つけるなよナイーブなんだから」
小町(なんか今日のお兄ちゃんいつにも増してキモいなぁ……)
八幡「まっ、今でも由比ヶ浜の気持ちが分からないこととかまだまだ多々あるが、小町が何考えてるかならなんとなく分かるんだよ」
小町「ふ~ん」
八幡「当たり前だろ? 何年も一緒に暮らしてきた小町と出会って数年の由比ヶ浜となら、小町のことのほうが断然よく分かる」
小町「そっかそっか……」
八幡「だから俺が最近由比ヶ浜と遊んでることが多いからって、お前が遠慮する必要はないさ」
小町「んー、じゃあ今度お出かけに付き合ってくれると嬉しいな~」
八幡「おう。そんくらい全然構わないぞ」
小町「ヤッター! じゃあ週末までにちゃんとお出かけの準備しといてね!」
小町「食べたいスイーツとか欲しい新作のお洋服とか色々あるから!!」
八幡「えっ、小町さん? 準備って金用意しとけって意味なの?」
八幡「俺お財布代わりなの???」
小町「ふふっ、彼女が出来ても妹に優しいお兄ちゃんは、小町的にもきっと世間的にもポイント高いよ!」
八幡「お、おう……」
八幡(財布の中身大丈夫かなぁ……?)
八幡(まぁ小町の笑顔のためなら、そんくらい安いもんか)
おしまーい。
八結スレとはいえここんとこ八結の話ばっかりだったから、今日の更新分は違う要素を詰め込んだ感じの内容にしてみました。
たまにはこういうのもアリかなーと思うのですが、いかがでしたでしょうか?
あと、パソコン壊れた期間に始めたスクフェスに普通にハマって、アニメの方も1期2期共に一気見してしまいました。
ハマったっつっても課金とかは一切するつもりないし、まだランク60だけど。
シャンシャンするの楽しい!!
乙
11連するともっと楽しいんやで(ゲス顔)
>>548
すでに11連は3回やったよ! 無課金でも序盤は石溜まりやすくていいね。覚醒モブの絆貯めるの楽だし。
SR覚醒りんちゃん SRかよちん SRことりちゅん(・8・) を持ってて、URは0って感じ。
そろそろまた50個溜まりそうだけど、BiBi勧誘くるまで貯めておきたい……っ!
チケットは6枚持ってるんだけど、使い時がいまいちよく分からん。スクフェスにはゴッドフェス的なもの(UR確率上がること)はないんだよね?
ごめん sageの「e」だけ大文字になっちゃってたorz
sage失敗した挙句、全角と大文字言い間違えるとか恥ずかしっ! やだこれもー。
三週間ほど更新サボっててすいませんっしたー!
ちなみに今週行ってきたディスティニーランドでは、ほぼずっと雨降ってたり人身事故で中々帰れなかったり等々不幸でしたとさ。
でもスペースマウンテン乗ってる時とか周りがキャーキャー言ってる中自分は「やっはろー!!!」って叫べたし、なんだかんだで楽しかったよ。
それでは、久々の更新スタート!!
※過去篇其ノ四:想いは雨の様に降り注ぎ、鳴りやまない(>>57)の、数日後くらいの話です。
【過去篇4.1話:比企谷八幡の夏休みは、始まる前から既に詰んでいる。】
結衣「あーもー疲れたぁ~……」グダー
雪乃「あなた、受験に向けて頑張るのではなかったの?」
結衣「そうだけどさー、最近毎日毎日勉強じゃん?」
八幡「そりゃ受験生だしな。いつまでも、のんびり読書したりケータイいじってるわけにはいかないだろ」
結衣「ぶぅ~」
雪乃「けれど、たしかに最近頑張っていたものね。今日はもう終わりにしましょうか」
結衣「ワーイ! 勉強終わりー!」
八幡「あのな由比ヶ浜、勉強ってのはやめることはあっても終わることはないんだぞ。人生一生勉強だ」
結衣「なんか同じようなこと前にも聞いたし……」
八幡「以前言ったのは、『仕事ってのはやめることはあっても終わることはねぇんだよ』だ」
小町「嫌なこと言うの好きだねぇ」
八幡「だが、最近よくよく考えてみるとそうでもないような気がしてきた」
小町「?」
八幡「ほら、うちの親父とか定年した後絶対何もしねぇぞ」
八幡「その頃には小町も大人になって働いてるだろうし、かーちゃんの方は定年後も家事とか色々仕事がありそうだけどな」
雪乃「そう考えると、主婦の方だけ一生仕事なのかもしれないわね」
八幡「だろ? 人生不公平だよな」
小町「でもさ、お兄ちゃん専業主夫志望でしょ?」
八幡「おう。だから自ら茨の道を突き進む俺は、まさに人間の鏡といえる」
雪乃「そうね。あなたを鏡にして己を省みれば、さぞかし立派な人間ができるのではないかしら」
八幡「あ? なにそれ? 俺のこと反面教師って言ってるようにしか聞こえないんだけど」
雪乃「あら、自覚があったの?」
八幡「ぐぬぬ……」
小町(仲良いなぁ~)ニヤニヤ
結衣「でもさー、こう毎日毎日部室で勉強ばっかしてたら、小町ちゃん退屈しちゃわない?」
小町「ん~、そうですねー……。そういえば結衣さん、なんで急に勉強頑張りだしたんですか?」
結衣「えっ? えぇと~、それは……」
雪乃「あなた、たしか志望校のレベルを上げると言っていたわよね」
小町「はっ!! もしやこの前、小町にお兄ちゃんの志望校を聞いてきたのと何か関係がっ!?」
結衣「わぁぁぁあああっ!!! ダメだよ小町ちゃん! しぃ~っ!」アタフタ
小町「むふふ。そういうことなら部室でじゃんじゃん勉強しちゃって下さい!」
小町「小町は適当に宿題とか読書とかしてるんで御心配なさらずにっ☆」
結衣「やめてよもぉ~///」
八幡(お、俺は何も聞いてない何も聞こえてない!)
八幡(この前意味深なこと言われて以降、今まで以上に由比ヶ浜のこと意識しちゃったりとかそんなこと全然ないんだからねっ!)
雪乃「由比ヶ浜さん、そろそろ夏休みだけれど何か予定はあるの?」
結衣「ん? えーっと、たしか今年は家族旅行の予定ないし~……」
結衣「優美子や姫菜とは遊び行くかもだけど。うん、多分基本的に暇だよ! 何して遊ぶ?」
雪乃「そうね……、毎日というわけにはいかないでしょうけど、2・3日に一度くらいの頻度で私の部屋に来られないかしら?」
結衣「えっ!? そんな頻繁に行って良いの?」
雪乃「ええ、もちろん」
結衣「何しよっかなぁ~。ゲームにー、お菓子パーティーにー、あとお泊まり会もしたいし~、あとは───」ルンルン♪
雪乃「それもいいけれど、勉強道具を絶対に忘れないようにね」ニッコリ
結衣「っ!?」ガクゼン…
雪乃「……比企谷君、あなたは聞くまでもなくいつでも暇よね?」
八幡「えっ」
雪乃「流石に私一人で受験範囲を教え尽くすのは骨が折れるから、あなたも必ず来ること。いい? これは確認ではなく確定事項よ」
八幡「いやちょっと待て!」
八幡「俺にも夏季講習とかゲームとか宿題とか昼寝とか夏季講習とか読書とかアニメ鑑賞とか……、あとほら夏季講習とか色々あるから無理だって!」
雪乃「はぁ……。実質、夏季講習しか予定ないじゃない。小町さん、比企谷君の夏季講習の日程は分かるかしら」
小町「はいはい! 小町におっまかせ~♪ 家に帰って確認したら、速攻でメール送りますねっ!」
雪乃「助かるわ。それに合わせて予定を組んだら由比ヶ浜さんにも連絡を入れるから、三浦さん達と遊ぶのは極力、勉強会以外の日にしてほしいのだけれど」
結衣「うぅ……。高校生活最後の夏休みなのに、予定が勉強で埋め尽くされていく……」ガックシ
八幡(俺の優雅な休日ライフが……、早くもオワタorz)
【過去篇4.2話:モノクロの世界から、輝いたこの世界。】
八幡(夏休み開始から2週間程が過ぎ、雪ノ下が住むマンションで勉強会をするのがもはや日課となってきてしまった……)
八幡(しかし、今日はいつもと違うことが2つある)
八幡(まず1つ目に、普段はリビングで勉強をしているのに、現在俺達が居るのはどういうわけか雪ノ下の寝室だ)
八幡(机は3人で使うにはなんとも狭いものしかないし、部屋中から良い匂いがするため勉強に全然集中できなくて困る)
八幡(そして2つ目。普段は昼過ぎから集まっているのに、今日は午前中から来るようにとの部長命令をなぜか厳守させられていた)
雪乃「さて、そろそろ昼食にしましょうか」
八幡「そういや、どうして今日は朝から呼んだんだ?」
雪乃「……察しくらいはついているものだと思っていたのだけれど、本当に何も分かっていないの?」
八幡「は? 何のことやらさっぱりだ」
雪乃「そう。それならそれで構わないわ。由比ヶ浜さん、行きましょう」
結衣「うんっ!」グッ!
八幡「行くってどこにだよ。ってかおまえ、なんで気合入れてんの?」
結衣「なんでって言われても……、秘密っ!」
八幡「……あっそ」
雪乃「とにかく、比企谷君はここで大人しく勉強を続けていてちょうだい」
雪乃「社会的に殺されたくなければ、私と由比ヶ浜さんの目がないからといって物色の様な真似をしないことね」
八幡「んなことしねぇよ……」
結衣「あ! あと、絶対部屋から出ちゃダメだからね!」ビシッ!
八幡「はいはい」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
八幡「あぁ~……。腹減った……」グダー…
八幡(あいつら一体何してんだよ。雪ノ下が「そろそろ昼食にしましょうか」って言ってから、既に1時間以上経ってるぞ。何だかとても嫌な予感がする……)
ガチャッ!
結衣「ヒッキーお待たせ~! リビングに来ていいよ」
八幡「おう。まさかとは思うが、おまえが料理してたんじゃないだろうな……」
結衣「え、えぇ~と、それは……」アセアセ
八幡「マジでそうなのかよ……。俺、今日無事に帰れるかな……」
結衣「失礼すぎだしっ!」
八幡(リビングに行くと、随分と豪勢な料理が並んでいた。七面鳥とかケーキとかそんなのだ)
八幡「…………」
雪乃「あら、だんまり?」
八幡「あ、いや……。ケーキはともかく、七面鳥ってクリスマスか何かかよ……」
雪乃「けれど、これで何のために朝から呼んだのか分かったのではないかしら?」
八幡「でもそれなら、由比ヶ浜だけ朝から呼んでおいて、俺は普段通り昼過ぎから来れば良かったんじゃないのか?」
八幡「昼飯を食べずに来いって言われりゃそうしたし」
雪乃「仕方なかったのよ。由比ヶ浜さんと一緒に料理を作るとなると、どれだけ時間がかかるか分からないもの」
雪乃「だから料理中にあなたが来てしまわないように、どこかに監禁しておくのが安全だと判断したまでよ」
八幡「さっきまでのあれは監禁だったのかよ……」
結衣「そんなことよりヒッキー、」
雪乃「比企谷君、」
「「お誕生日おめでとう!」」
八幡(今日が俺の誕生日ということは分かっていたけれど、まさか祝ってもらえるなんて微塵も思っていなかった)
八幡(誕生日って、基本的に嫌な思い出しかなかったからな)
八幡(例えば、俺だけが呼ばれなかった誕生日会、俺のためかと感動してたら俺と同じ日に生まれたクラスメイトのために歌われていたバースデーソング等々……)
八幡(こんなにちゃんと祝ってもらえたのなんて、多分初めてだ……)
雪乃「……何か感想くらい言うのが常識だと思うのだけれど」
八幡「わ、悪い。驚いて言葉が出なかったというか、正直、物凄く感動した……」
結衣「よかった~」フゥ~…
雪乃「味付けは大体私が行ったから、食べられない物はないと思うわ。……多分」チラッ
結衣「こっち見て酷い事言われたっ!?」ガビーン!
八幡(とても嬉しいことに変わりはないのだが、近くで見てみるとこのケーキ、何というか色々と酷い)
八幡(特にクリーム塗るの下手すぎだろ。どっちがやったのか丸分かりだな。だが、まるで悪い気はしない)
八幡(……ごめんやっぱ嘘食べるのちょっと不安かも。いやまぁ絶対食べるけど)
雪乃「このケーキ、見た目は不格好なものの味は保証するわ」
雪乃「スポンジの材料を混ぜたのは由比ヶ浜さんなのだけれど、私が事前に分量を量ったものを用意しておいたし、焼いたのも私だから」
結衣「なんか、ぐちゃぐちゃになっちゃってごめんね?」シュン…
八幡「別に、美味けりゃ問題ないだろ。早速少し食べてみて良いか?」
結衣「ケーキって普通最後に食べるものじゃないの?」
八幡「……早く食べてみたくなったんだよ」
結衣「……そっか。なら、どうぞ。召し上がれ……」
モグモグ
八幡「…………」
結衣「ど、どうかな……?」モジモジ
八幡「ん、凄く美味いぞ」
結衣「ほんとっ!?」パァァァ!
八幡「あぁ。でも、このちょっとジャリジャリするのは何だ? 隠し味的な不思議調味料でも入れたの?」
結衣「あっ……」
雪乃「あなた……、あれだけ余計なものを入れようとしないように念を押したのに、まさか勝手に何か入れたの?」
結衣「違う違うそうじゃないし!」ブンブン!
雪乃「…………」ジトー…
結衣「えっと、あの、多分それ…卵の殻だと思う。ちゃんと取ったつもりだったんだけどなぁ~、あはは…………。ほんとごめん……」
八幡「そんな落ち込むなよ。ほんの少しジャリっとしただけだし、これくらいなら問題なく食べられる」
結衣「ヒッキー……」ウルウル
八幡「でも、そうか……。由比ヶ浜は卵を割ることすらまともにできないのか……」
結衣「だ、だって! コンコンってやってもヒビ入んなくって、卵って意外と固いんだなぁ~と思ってゴンゴンッ!ってやったら、こう、ブシャーって……」
雪乃「卵は料理の基本でしょうに、呆れたわ……。これからは受験勉強だけでなく、料理も猛特訓する必要がありそうね」
結衣「そんな~! ゆきのーん!」ウワーン!
八幡(何はともあれ、今までの人生の中で、今日は最も輝いた8月8日になったのであった)
【小ネタ④:身長差】
八幡「…………」ジィー…
結衣「ん? どうかした?」
八幡「いや、なんつーか、もしかしておまえ少し縮んだ?」
結衣「ハァ!? 1ミリたりとも縮んでないしっ!!」プンスカ!
八幡「これくらいのことでマジになって怒んなよ」
結衣「ちっちゃいの気にしてるのにそーゆーこというヒッキーのせいでしょ!」
八幡「手の大きさの件に引き続き、身長も気にしてたのか……。つうか平均より多少低いだけで、そんなチビじゃないだろ」
結衣「ヒッキーが縮んだとか言うのが悪いんじゃん! まったくもう!」
結衣「ってかさ、ヒッキーが背ぇ少し伸びたんじゃない?」
八幡「そうか?」
結衣「うん。多分高校の頃よりほんのちょっとだけ伸びたんだと思うよ? あたしは高2くらいの頃から、身長も体重もほとんど変化ないし……」
八幡「あぁ~。そういえば大学入学直後にやった身体測定の時、少し伸びてたような気がしないでもない」
結衣「うわー曖昧だなぁ」
八幡「小さすぎたりでかすぎたりしたら不便かもしれないけど、そうじゃない限り別に気にするようなことじゃないだろ」
結衣「とか言って、ほんとはもうちょい身長ほしいと思ってるくせにぃ~」
八幡「うっ」ギクッ
結衣「平塚先生よりヒッキーのほうが小さいもんね」
八幡「いやあのそれはあれだから! 向こうが無駄にでかいだけで決して俺が小さいわけじゃないから!」アセアセ
八幡「早寝でも心掛ければ、今からでもどうにかなるだろうか……」
結衣「あはは、やっぱりもっと伸びてほしいんじゃん」
八幡「うっせ」
結衣「でもあんまり大きくなっちゃダメだよ?」
八幡「?」
結衣「カップルの理想の身長差って15cmなんだってさ」
八幡「……へぇ」
結衣「あ、ヒッキー少し照れてる?」
八幡「…………ふん」プイッ!
八幡(ま、今のままでもいいか……)
本日の更新はここまでです!
久々の更新にもかかわらず見て下さった方々、ありがとうございます!!
おっ、久々の更新じゃあないか、待ってたぞ
ニヤニヤした
乙
乙
実際ガハマさんって身長どのぐらいだっけ?
>>577
あざーす!
>>578
詳しく何センチくらいという表現はされてないけど、童顔で身長は少し低いっていう設定が原作にあったはず!
個人的には、
成人男性の平均身長(2013)……171.65㎝ ヒッキーの身長……約171㎝
成人女性の平均身長(2013)……158.60㎝ ゆいゆいの身長……約155㎝ ゆきのん……約160㎝ 平塚先生……約172cm
という妄想。
いろはすもガハマさんくらいしかなさそう。
小町は原作やアニメだとガハマさんより小さいだろうけど、この時間軸だと抜いてる可能性もあるかも。成長期だしね。
Kousin S.T.A.R.T!!
※過去篇其ノ五:人ごみに紛れないように握ってくれた手が、胸の奥までつかんで離さない(>>75)の、1ヶ月後くらいの話です。
【過去篇5.5:残り少ない高校生活イベントは、次々と過ぎ去っていく。】
一色「それでは、体育祭の終了と、奉仕部の御協力に感謝を祝して……」
一色「かんぱ~い!」
結衣&小町「「かんぱ~い!!」」イエーイ!
八幡「乾杯」
雪乃「……乾杯」
八幡(文化祭やら体育祭やら一色に半強制的に手伝わされた数日後、俺と雪ノ下は打ち上げにまで強制参加させられていた)
八幡(まぁ、小町と……ついでに由比ヶ浜も楽しそうだし別にいいけど)
一色「おっ、良い感じでお肉が焼けてきましたねー」
小町「美味しそうですね!」
結衣「よ~し! おもいっきし食べるぞー!!」
八幡「太っても知らねぇぞ」
結衣「ヒッキーデリケートなさすぎっ! 体育祭で沢山走ったりしたから今日は良いの!!」ムキー!
雪乃「……由比ヶ浜さん、それを言うなら『デリカシーなさすぎ』ではないかしら」
結衣「あっ……」
一色「美味しいですね~」
結衣「肉も野菜もうんまー!」
八幡「この野菜はな、野菜そのものが良いのではなくかかってる塩ダレが美味いんだよ。やっぱタレ最高だな」
小町「概ね同意だけど、わざわざそういうこと口に出しちゃうあたりがポイント低いよ」
結衣「同意しちゃうんだ……」
雪乃「私は焼肉屋に来るのは今回が初めてなのだけれど、どうして箸がこう金属製なのかしら?」
小町「メタリックでかっこ良いですよねっ!」
八幡「だよなっ!」
一色(やっぱりこの兄妹変わってるなぁ……)
結衣「エコとかそういうアレじゃない? 割り箸だといちいち捨てなくちゃならないし」
八幡「マジレスすると毒殺を防ぐために使っていた名残って聞いたことあるぞ?」
結衣「毒殺? どゆこと?」
雪乃「たしかに銀製の箸やスプーンを使用していれば、毒が盛られていた際に変色してくれるものね」
結衣「え、毒でお箸の色変わっちゃうの……?」
雪乃「えぇ。もっとも、そういった理由で銀製の者が使用されていたのは韓国の王宮時代の話だったはずよ」
雪乃「だから日本の焼肉店である以上、そんな昔の名残云々よりも環境面を理由とした方がしっくりくるのだけど。そもそもこの箸はステンレスのようだし」
結衣「じゃあやっぱりエコってことだね!」エッヘン!
八幡「いや、正解がどうかは知らないけど、今のは雪ノ下の勝手な見解に過ぎないからな? こんなことで勝ち誇られても困るんだが……」
八幡「そうだ。なぁ小町」
小町「ん?」
八幡「文化祭や体育祭、一緒に一色達の手伝いしててどうだった?」
小町「普通に楽しかったよ? 中学の頃の生徒会とそこまで大きな違いはなかったし、先生達のポイントも稼げるし」
八幡「理由がせこいな……」
小町「もちろん会長さん達が良い人だから楽しかったんですけどねっ☆」
一色「もぉー照れるなぁ~。小町ちゃんこそ色々手伝ってくれて大助かりだったよ! ほんっと怠け者の兄とは大違い!」
小町「いえいえ、それほどでも~」
八幡(こいつらの会話はどこまで本心でどこから御世辞なのだろうか……)
小町「んで、急にそんなこと聞いてきてどうしたの?」
八幡「いや、楽しかったならそれで良いんだ」
小町「? 変なお兄ちゃん。ま、いっか」
【過去篇5.6話:雪乃のパーフェクト(?)料理教室。】
そうだ、パンケーキを作ろう(唐突)
八幡「え、なんで? パンケーキって、ようするにホットケーキのことだよな?」
雪乃「えぇ、日本ではホットケーキという呼び方の方が親しみ深いかもしれないわね。パンケーキというのは主に英語圏での呼び方だそうよ」
雪乃「もっとも、近頃では国内でもパンケーキという呼称を使うケースが増えてきているように思うのだけれど」
八幡「そういうユキペディアさん的な知識を聞いているわけじゃなくてだな、なんで作らなきゃならないんだよ……」
雪乃「この前の焼肉屋、由比ヶ浜さんも一緒に肉を焼いていたにも関わらず、何も悲惨なことが起きなかったでしょう?」
結衣「いきなりバカにされたっ!?」
八幡「まぁ火加減は俺が気にしてたし、あとはただ肉を置いてひっくり返すだけだからな」
八幡「焦げる前に誰かが食べるだろうし、悲惨なことになりようがないだろ」
雪乃「つまり! 焼いてひっくり返すだけの作業であれば、由比ヶ浜さんにもできるということよ!」ドヤァ!
八幡「お、おう……」
八幡「……ん? 一瞬納得しそうになってしまったが、焼肉とホットケーキってまるで違くね?」
雪乃「とにかく、夏休みに受験勉強だけでなく料理も教えると言った以上、やれるだけのことはやるわよ」
結衣「うん! 頑張る!!」エイエイオー!
八幡「はぁ……」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~雪ノ下亭~
雪乃「まずは簡単なことから始めるべきでしょうし、今回はホットケーキミックスを使用するわ」
結衣「ホットケーキミックス?」
八幡「ホットケーキを作るなら、本来は小麦粉使わなきゃならないんだよ。ホットケーキミックスってのがあると、そういう手間が省けるわけだ」
結衣「へぇ~」
八幡「つっても、牛乳や卵は混ぜなきゃならないわけだが……。おまえ、たしか卵を割ることすらまともにできなかったよな……」
結衣「そ、それくらいもうできるようになったからっ! ……多分!」
八幡「多分なのかよ」
雪乃「本当なら全て由比ヶ浜さんにやらせた方が良いと思うのだけれど、今日は余分な卵もないことだし仕方ないわね。割るのは私がやるわ」パカッ!
結衣「わっ! ヒッキー今の見た!? 卵片手で割ってたよ!!」
八幡「慣れてるやつなら普通なんじゃね? 小町もそれできるし」
八幡(まぁ俺は無理だけど。しかし両手を使用してなら普通に割ることができるので何の問題もない)
結衣「……あたしもそれやってみたい」ワクワク
八幡「食い物で遊ぶのはやめとけ」
結衣「遊びじゃないしっ!」
雪乃「食べ物を粗末にするのはやめておきなさい」
結衣「うぅ~……。ゆきのんまで酷い」
八幡(さて、ここからがホットケーキ作りの本番である)
八幡(といっても、初級編ということで卵の黄身と白身を分けるような本格的な真似はしない)
八幡(単にホットケーキミックスと卵と牛乳を混ぜ合わせるだけなのだが───)
雪乃「由比ヶ浜さん、周りにぴちゃぴちゃ飛ばすのは止めて頂戴」
雪乃「全然混ざっていないわ。ちゃんとボウルを手で押さえて」
雪乃「……そんなにムキになってかき混ぜる必要はないのよ? こう、手首のスナップを利かせて、軽く素早く動かせばいいの」ハァ…
八幡(───なんでこんなに悪戦苦闘してんだよっ!)
八幡(そんなこんなで雪ノ下のHPをガンガン削りつつも、ようやく焼く段階までたどり着く)
八幡(なんか見てるだけで俺まで疲れてきたんだけど。もう帰っていいかなぁ?)
雪乃「……火はもっと弱く」
結衣「うん。あ、あれ? 火が消えちゃった……えいっ! わわっ!? 今度は強くなりすぎたしっ! あ、また消えちゃった……」
雪乃「なぜカセットコンロで弱火を維持することすらできないのかしら……。眩暈がしてきたわ……」
八幡「ちょっとどいてろ。火加減は俺がやるから」
八幡(こうして四苦八苦の末、どうにかこうにか完成である)
結衣「いっただっきまーす!」
八幡&雪乃「「いただきます」」ハァ…
モグモグ モグモグ
結衣「んまー!」
八幡「うむ。中々美味いな」
雪乃「そうね。失敗しなくて本当に良かったわ」
結衣「……あ、あれ? 結局、かき混ぜる意外あたし何もやってなくない?」
八幡「…………」
雪乃「…………」
結衣「ゆきのん……、これ、あたしの料理の練習だったんだよね?」
雪乃「え、えぇ、そうね。」
八幡「……気が付かなければ全員幸せのまま終われたのにな」
八幡(やはり由比ヶ浜結衣の料理はまちがっている……)
※時系列的には、没ネタ④:服屋さん(>>467)の数時間後の話です。
【小ネタ⑤:うつらうつら】
~帰りの電車の中~
結衣「いやぁ~、楽しかったねっ!!」
八幡「そうだなー。……あ」
雪乃「………………」コクリ…コクリ…
八幡「雪ノ下さんのせいで寝不足だって言ってたし、寝かしといてやるか」
結衣「うん、そだね」
雪乃「………………」ユラユラ…
雪乃「………………」コテン
結衣「あっ」
雪乃「………………」スー…スー…
結衣(わぁぁぁ、寄りかかってきてるゆきのんマジ可愛いんだけど……)
結衣(まつ毛長っ。肌すべすべだし髪サラサラだし寝顔最高だし、なんか羨ましいなー。美貌ドレインとかできないかな?)
結衣(むぅ~……、ちょっとくらい触っても起きないよね?)
結衣「…………」ツンツン
雪乃「…………んん」
結衣(ほっぺ超プニプニ! なにこれヤバイ癖になりそう!!)
八幡(雪ノ下のやつ、寝てると棘のない分綺麗さと可愛さが普段以上に際立って半端ないな)
八幡(ってか大学生になって、更に美貌度増したんじゃね?……じゃなくって)
八幡「何イタズラしてんだよ」
結衣「まあまあ、少しくらいいいじゃん」
八幡「寝かしといてやれって」
結衣「うぅ~~~、こんなチャンス滅多にないのに」
結衣「ゆきのんのこんな寝顔なんて、次いつ見れるか分かんないんだよ?」
八幡(フッ、この理性の鬼である俺が、そんな安い誘惑に負けるわけ……)
雪乃「すぅ……すぅ……」zzz
結衣「せっかくなんだしもっと堪能しとかなきゃ!
八幡「うぐっ……」
結衣「ヒッキーはもったいないと思わないの?」
八幡「……たしかに」
結衣「でしょ?」
八幡(彼女の目の前でこんなことを考えてしまうのもどうかと思うが、あの毒舌や凍てつく視線が無い分寝顔の雪ノ下は破壊力が半端ない)
八幡(由比ヶ浜の言う通り、このまま何もしないというのも何かもったいない気がしてきてしまった……)
八幡「…………写メとか撮っちゃう?」
結衣「…………う、うん」
八幡&結衣((これバレたら絶対ヤバイ……))
八幡「よし、いくぞ……」ゴクリ…
結衣「いぇ~い」ヒソヒソ
八幡「お前も一緒に写るのかよ。まぁいいけど」ヒソヒソ
パシャリ!!
結衣「わぁーーー。ヒッキー何やってんの。無音カメラとか使わなきゃダメだってッッッ」ヒソヒソ
八幡「仕方ないだろっ。んなアプリ持ってねえって」ヒソヒソ
結衣「仕方ないで済むわけないじゃんっ。もしバレたらどーすんの?」ヒソヒソ
八幡「どうするも何も、お前は怒られるだけで済みそうだが俺は殺されるかもしれんな……」ヒソヒソ
雪乃「そうね。比企谷くんのことは社会的に抹殺しようかしら」
結衣「っ!!!?」
八幡「ヒィィィッ!?」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
~比企谷家~
小町「お兄ちゃんおかえりー!」
八幡「……おう」
小町「あれ? なんか元気ないね。楽しんできたんじゃないの? 何かあった?」
八幡「いやっ、なんでもないぞ! なんでも!!」
八幡(うむ。何もなかった、そういうことにしておこう……)ガクブル
本日の更新はここまで!
ダスビダーニャ。
乙ー!
○っ○ーさんはガハマさん派なのにゆきのんも丁寧に書いてくれるからポイント高いっすわ
>>599
ありがとうございます!
一番好きなのがガハマさんってなだけで、大抵どのキャラも好きですからねぇ~
またまた少し間隔が空いてしまい申し訳ございません。
文化祭も終わって少し落ち着いたことだし、今日は更新していきますよっと!
【過去篇5.7話:とどのつまり、最初から結果は見えている。】
~生徒会役員選挙の数日後~
彩加「この前の生徒会選挙、小町ちゃんが無事当選して良かったね!」
八幡「おう。ありがとな」
義輝「八幡よ、我にはあれがデキレースのようにしか見えなかったのだが……」
八幡「まぁな。そうなるようにこっちで仕組んだ」
彩加「そういえば由比ヶ浜さんの応援演説、随分らしくない感じだったけど、あれも八幡が仕組んだことなの?」
八幡「ん、あの文面を考えたのは雪ノ下だ」
八幡「単純な知名度だったら雪ノ下の方が上かもしれないが、由比ヶ浜の方が人脈広いし好感触も得やすいしな。だから由比ヶ浜に読ませた」
八幡(一色を当選させることは至極簡単だった)
八幡(小町が中学の時使っていた手……つまり、事前に「私が生徒会やるよ!」と周囲に言いふらしておけば、今までも生徒会長だった一色に対抗しようという奴は出てこない)
八幡(それに去年同様、公約を雪ノ下が考え、応援演説は葉山だったしな。もう負ける要素がない)
八幡(しかし、まだ高校内では知名度が高くない小町の場合、事前に周囲を牽制する様な方法はあまり有効ではない)
八幡(いくら小町の人望が高かろうと、1年生間の票を集めるのが精々といったところだろう)
八幡(そこで今回は2つ手を打った。1つは、先程述べた通り人脈の広い由比ヶ浜に応援演説をやらせること)
八幡(文化祭の時なんか目立っていたから、雪ノ下程ではないにしろ知名度も高いし、これで2・3年の票も得やすくなる)
八幡(そして2つ目、これはあまり褒められた方法ではないだろうな……)
彩加「八幡、どうかしたの?」
義輝「お主、さては悪に手を染めたな?」
八幡「不正って程のことはしてないけどな。選管を利用させてもらっただけだ」
義輝「戦艦とな。バーニングラブでも放ったか……」
八幡「バーカ。選挙管理委員会だよ。あれは前の生徒会メンバーがやってるんだ」
彩加「それって一色さん達のことだよね?」
八幡「おう」
義輝「クックック。票数を後悔しない以上、いくらでも改竄し放題というわけか! 流石八幡汚いでござる!!」
八幡「だから不正はしてねぇっつったろ。それに、今回も立候補してる一色は票数を数えるとこまでは関われないから、結果をいじるのは不可能だ」
彩加「じゃあ何をしたの?」
八幡「誰がどの役職に立候補するのかを、一般生徒に公表する前に教えてもらっただけだよ。だから一番倍率の低そうな所に小町は立候補できたんだ」
彩加「なるほど~。やっぱり八幡は頭良いね!」ニコッ!
八幡「そ、そうか?」///
ドタバタ ドタバタ
小町「あっ! お兄ちゃんみっけ!」
一色「せんぱいっ! 何こんなとこで遊んでるんですか! 生徒会室の衣替えするんでとっとと手伝ってくださいー」
八幡「あ? 冷蔵庫とか暖房器具とか去年運び込んだまんまだろ? 何するってんだよ……」
一色「去年度とまったく同じままじゃつまらないじゃないですかー。いいから来てください」
八幡「ちょっ! 俺今戸塚とオマケと話してるとこなんだけど」
義輝「オマケっ!??」
小町「いいからほら、早く早く!」
八幡「はぁ……」ウンザリ…
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
一色「ふぅ~~~。ようやく終わりましたねー。お疲れ様でした!」
小町「お疲れ様でした!」
八幡「衣替えっつうか、ただの大掃除だったじゃねえか。俺は雑用係じゃないんだが……」
小町「まあまあ。今日の晩御飯はお兄ちゃんが好きなものばっかり作ってあげるから! あ、今の小町的にポイント高い」
八幡「はいはい」
一色「それにしても、今年の選挙のことまで考えていてくれたなんて思ってもみませんでしたよー」
一色「改めて、本当にありがとうございました」ペコリ
八幡「……アホか。おまえのためじゃねぇよ。全部小町のためにやったに決まってんだろ」
小町「まったく、相変わらず捻デレさんだなぁ」
八幡「うっせ」
八幡「……小町」
小町「ん?」
八幡「生徒会に入ったからといって奉仕部を辞めたわけじゃないんだし、いつ遊びに来ても良いんだからな」
小町「もちろん!」
八幡「それと、何かあったら少しくらい手伝ってやるから、ほどほどに頑張れよ」
小町「……うんっ! 小町におっまかせ~☆」ラジャッ!
八幡「あぁ。応援してるぜ、新生徒会役員!」
小町「えへっ!」
※過去篇其ノ六:聖夜に流れる滴は……(>>83)の、数日後くらいの話です。
【過去篇6.1:またしても月日は過ぎ去り、ついに新たな年を迎える。】
八幡「……よお」
雪乃「あら、比企谷君。まさか、新年早々あなたの腐った目を見なければならないなんてね」
雪乃「……明けましておめでとう」
八幡「えっ、なにおまえ俺が来ること知らなかったの? 言いだしっぺの由比ヶ浜もまだ来てないみたいだし、遅れたかと思って急いだ俺がバカみたいじゃねぇか」
雪乃「いえ、丁度時間通りよ。ちなみにあなたも来ることは知っていたわ」
八幡「なら余計な事言わないで『あけましておめでとう』の一言でよかったろ」
八幡「こちとら早起きさせられて寝不足なんだよ。正月っつったら寝正月が基本だろ……」
雪乃「私は、年が明けてもあなたの目が相変わらず腐っているという事実を、ただ述べただけなのだけれど」
八幡「……俺は新年になったくらいのことでそう簡単に変わる気はねえよ。おまえの方こそ、年が明けても全然毒気抜けないのな」
雪乃「それはどうも。褒め言葉として受け取っておくわ」
八幡「ふん」
雪乃「……普段以上に瞳が濁っている様に感じるのは気のせいかしら。何かあったの?」
八幡「何もねぇよ」
雪乃「…………」ムスッ
八幡「はぁ……。大丈夫だ。おまえが気にしなきゃならないようなことは、本当に何も起きてねぇよ」
雪乃「そう。なら、そういうことにしといてあげるわ」
八幡「……助かる」
八幡(そう。あれ以来本当に何もなかった)
八幡(川崎とは、クリスマス以降も冬期講習で何度か顔を合わせている。だが、こっちは色々気にしていたというのに、向こうは至って普段通りであった)
八幡(今までと変わらない、俺と川崎の距離。関係とも呼べない程度の関係)
八幡(きっと、そういう風に振る舞ってくれているのであろう。だがそれで良い)
八幡(互いに取りつくろい無理に笑顔を演じるより、言葉を交わさない方が余程マシなはずだ)
八幡(もっとも、それはそれで虚飾なのかもしれないけれど……)
トテトテ トテトテ
結衣「ごっめ~ん! これ着るのに手間取って遅れちゃったー」バタバタ
雪乃「大丈夫よ、そんなに待たされていないわ。あけましておめでとう、由比ヶ浜さん。その……今年もよろしくお願いします」
結衣「うんっ、ゆきのんあけおめー! こちらこそよろしくねー!」
八幡(雪ノ下のやつ、俺が来た時と大分態度が違くありませんかねぇ)
結衣「ヒッキーもあけおめことよろ~!」
八幡「お、おう」
結衣「それにしても、ゆきのんの浴衣すっごいきれー」
八幡「……は?」
結衣「ん、どしたの?」
雪乃「これは浴衣ではなく着物なのだけれど……」
結衣「えっ」
八幡「ちなみに、今おまえが着てるそれも着物な。まさか浴衣と着物の違いが分からないとか言うんじゃ……」
結衣「は、はぁ!? そ、そんなわけないじゃん! ちょっと言い間違っただけだし!! ヒッキーマジキモい!!!」
八幡「ま、二人とも似合ってるんじゃねぇの?」ボソッ…
結衣「えっ」
雪乃「ふふ」
八幡「ほら、合格祈願するんだろ? とっとと済ませて早く帰ろうぜ、行くぞ」
結衣「あ、待ってよ~!!」
チャリーン! パンパン!
結衣(ヒッキーと同じ大学へ行けますように……)
八幡(由比ヶ浜の受験がどうにかなりますように……)
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
雪乃「それじゃ、私はもう帰らせてもらうわ」
八幡「おう。んじゃ俺も帰るわ」
結衣「え~。せっかくだしどっかで遊んでこうよー」
雪乃「三箇日は実家にいなければならないという話をしたはずなのだけれど……。自由な時間を貰えたのは、初詣の間だけよ」
結衣「……じゃあ1月3日も遊べないの?」
雪乃「えぇ。3日がどうかしたのかしら?」
結衣「ゆきのんの誕生日じゃんっ! あたしの時はケーキ作ってもらったりしたんだし、今度はあたしが何か作ってあげようと思ってたのにぃ~」
雪乃「…………」
八幡「…………」
雪乃「……由比ヶ浜さん、変な気は回してくれなくても大丈夫よ。えぇ、本当に大丈夫だから。謹んで遠慮させてもらうわ」
結衣「?」
八幡「あのな……めでたい日に、わざわざ不幸をプレゼントすんのはやめてやれ」
結衣「ッ!? 二人とも酷過ぎだしっ!!」プンプン!
雪乃「……もうしばらく、賑やかな日々は続きそうね」フフッ
八幡「だな」
さてさて。
最近没ネタやら小ネタやら過去篇ばっかりで、本編の内容をお忘れの方も多いのではないでしょうか?
と、いうわけでぇ~~~。
小町が懇切丁寧に説明してあげちゃいますよっ!
【☆★前回のオレガイル!★☆】
(※小ネタや過去篇ではなく本編軸>>270の話です)
小町「お兄ちゃんと結衣さんが付き合い始めてから早数ヶ月、そろそろ夏休みも終わるそんな頃」
小町「二人は毎年恒例の花火大会デートへ!」
小町「結衣さんからメールで聞いた話によると、とっても幸せなデートになったみたいだよ! やったね☆」
小町「でも、家に帰ってきたお兄ちゃんは妙にソワソワ」
小町「理由を聞いてもはぐらかされちゃったし……まったくもう!」
小町「そして数日後」
小町「結衣さんが我が家へ遊びに来たんだけど……あれ? なんかギクシャクしてない?」
小町「も、もしやッ! 花火大会にかこつけて、目を合わせるのも恥ずかしくなるような一夏の経験をしちゃったの!???」
小町「そんなこんなで変な雰囲気の二人!」
小町「果たして八結の運命や如何に!?」
▼次回、ようやく本当に最終回!!
てなわけで、本日の更新は終了です。
ありがとうございました!
残念ながら、本日で本当に締める予定なんだよなぁ(諸行無常
【最終回:やはり俺の青春ラブコメは……。】
八幡「…………」
結衣「…………」
……沈黙。
沈黙とは、口を利かず黙っていること。
もしくは、活動をやめて静かにしていることである。
現在9月中盤。
大学の夏休みは長いことだしまだまだ休んでいられるだろうと高を括っていたのも束の間、休日終了が刻々と目の前に迫ってきていた。
夏、終わらないで(切実)
本来夏休みは休むためにあるのだから、残り僅かな時間を沈黙──つまり活動をせず静かな状態──
で過ごすことは全くもって正しい行いであり、その理論に則って考えれば「沈黙って素晴らしい!沈黙最高!」となるはずなのだが……。
八幡「…………」
結衣「…………」
……どうしてこんなに気まずいんですかねぇ?
なぜ由比ヶ浜とまともに会話することができないのか、問題点を1から整理していこう。
まず、事の発端は数日前の花火大会に遡る。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
結衣「キス……しても、いい?」
八幡「なっ!?」
八幡「由比ヶ浜さん? こんな公共の場で正気か……」
結衣「こういう雰囲気でファーストキスできたら良いなぁって、思って。ダメ……かな?」
結衣「ほ、ほら! みんな花火の方見てるし、周りの目を気にする必要はないかなぁ~、みたいな……」
八幡「…………」チュッ…
結衣「ッ~~~~~~!????」
八幡「…………」
結衣「………ん」
八幡「……これで良かったか?」
結衣「 」ポケー…
八幡「由比ヶ浜? おーい、大丈夫かー?」
結衣「 」
八幡「大丈夫か、……結衣」
結衣「……うぇっ!? ヒ、ヒッキー? 今、あたしのこと名前で……」
八幡「……できない約束はしないって話、したことあったろ。この前、その内名前で呼ぶって言っちまったしな……」
結衣「うん……、ありがと…………は、八幡」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
そう。
ここまではいい。
何一つとして間違えていない、我ながら完璧な青春ラブコメであったといえよう。
しかし、そんなShinyでDreamyな時間もあえなく終わりを告げる。
なぜかって?
我がコミュ力の底辺ぶりをあまり舐めるなよ。
良い雰囲気のまま帰宅……なんて真似ができるわけないだろ!
だって口付けとか当然初体験なわけですし?
とてつもなく恥ずかしすぎて頭が沸騰しそうだったわけですし?
緊張のあまりまともに会話するどころか相手の顔を見ることすらできなくなってしまったのは俺がいけないのではなく、当然のことでありむしろ自然なことなのではないだろうか。
そうだよ。
仕方なかったんだって。
ほら、花火大会の後無言のままお別れとはならず、こうやって今日会う約束を取り付けただけでも上出来であるといえよう。
うん。俺頑張った。すげー頑張った。
八幡「…………」
結衣「…………」
まっ、そんな言い訳をいくら考えてみたところで事態が好転するわけじゃないんですけどね。
いやほんと誰か助けて。
うぅむ……。
由比ヶ浜の方からいつも通りのテンションで接してきてくれればなんとかなるような気がする。
結衣「…………」
おいおい、ほんと頼むぜ。
空気読んだ行動とるの得意だろ?
とりあえずこの気まずい感じを何とかしてくださいお願いします。
いやまあ、空気を変えるのは俺も得意っちゃ得意なんだが、俺のやり方だと悪い意味で空気をぶち壊してるだけだからなぁ。
もうそんな方法を使うわけにはいかない。
ましてや、大切な存在が相手であっては尚のことだ。
…………くそっ。
柄じゃないなんてことは重々承知しているが、こうなったら正攻法で行くしかないのか。
八幡「……な、なあ」
結衣「……なぁに?」
八幡「あー、えぇっと……」アセアセ
どうにかしようにも言葉が出てこない。
こういう時ばかりは、普段は好きな己の性格が本当に恨めしい。
……言葉にできないのならば、気持ちだけでもきちんと向き合わなければ。
俺は意を決して、今まで宙をさまよっていた視線を由比ヶ浜の方へと向ける。
八幡「…………」
結衣「ヒッキー?」
あ、ヤバイ。
由比ヶ浜の顔を見ていると、どうしてもあの夜のことが鮮明に思い出されてしまう。
暗がりでも分かるほどに上気した肌。
揺れる瞳。
交わる唇。
そして、柔らかいの一言では表現しきれない、どうにも不思議で幸せな感触。
思い出すだけでもどうにかなってしまいそうだ。
悪意には耐性のある俺ではあるものの、こういった気恥ずかしさには滅法弱い。
日頃の屈強な理性による抵抗も虚しく、俺の視線は由比ヶ浜の唇へと吸い込まれ───
八幡「…………」ジー…
結衣「ッ! ちょっ、そんなマジマジ見られると恥ずかしいんだけど」///
八幡「わ、わるい」
結衣「ってかさっきから妙にソワソワしすぎだし!」
結衣「意識しちゃうのは分かるっていうかあたしも結構恥ずかしかったりするげさぁー、ヒッキーの場合気にしすぎ!!」
八幡「いや、そりゃそうだけど、そっちこそさっきからずっとダンマリで……」
結衣「それは超話しかけづらいふいんき出してるのが悪いんでしょ」
え? 俺が悪いの?
それとふいんきじゃなくてふんいきな。
とかそんなツッコミを入れてる場合じゃなかった。
八幡「今日の俺、そんなに話しかけにくかったか?」
結衣「うん。すっごく」
八幡「……誠に申し訳ございませんでした」
結衣「まったくもう」
話しかけづらいとか……んなこと言われても、ねぇ?
どうしろってんだよ。
八幡「…………」ソワソワ
結衣「って、またソワソワしてるし!」
八幡「それは仕方ないだろ! 抑えようにもどうしようもないんだって!!」
結衣「むぅ~~~。これから先、ずっとそんな感じでいる気?」
八幡「いや、それは……」
たしかにこのままではまずい自覚はある。
とはいえ、普通に振る舞えと言われてもすぐにはできそうにないというかなんというか……。
八幡「その、悪いと思ってはいるんだが、まだ気恥ずかしさが抜けなくてだな」
結衣「じゃあ……、慣れてみる?」
八幡「……ぇ?」
結衣「いや、ほら、さっきからヒッキーあたしの唇チラチラ見てから……」
結衣「えぇと、またああいうことしたいのかなー、とか……、そんで慣れれば平気になるかもなー……、とか、思ったり……」
八幡「 」
……………は? ハァァァ!?
あんなことしたから俺は普通でいられなくなっているというのに、だったら慣れるまでしちゃえばいいじゃんとか何それ意味分かんない!
トンデモ理論すぎんだろっ!!
結衣「……嫌?」
うぐっ……。
だから瞳を潤わせつつの上目使いはズルイと思います。
八幡「嫌、って、わけじゃ……ないけど……。でも、なんつうか……」
結衣「嫌じゃないなら、さ……」ズイ…
八幡「えっ、ちょっと待て、おいっ」
結衣「ん」ズズイ…
由比ヶ浜がどんどんこちらへ近づいてくる。
後ずさるも背中が壁に当たり、退路が断たれ、そして───・・・・・・…………
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
結衣「ふふふ。ヒッキー、少しは慣れた?」ニコニコ
八幡「あー……。慣れたっつうか、しばらくはもう結構です……」グッタリ…
結衣「えぇー。そんなこと言わないでさー、またしようよ!」
八幡「致しません」
結衣「むぅ。つれないな~」
つれないも何も、しょっちゅうこんな目にあってたら俺の神経がもたないっつうの。
つーかこっちは気が気でないってのに、なんでそんなに元気なんだよ。
いやまぁ、由比ヶ浜のおかげで普通に喋れるようにはなったし感謝はしてるんだけどよ。
結衣「迷惑だった、かなぁ?」
八幡「そ、そんなことはないぞ。むしろ大変幸福でありましたというか、えぇと」
結衣「えへへー」ニヘラー
そんな嬉しそうにニヤけやがって。
可愛すぎんだろっ。
結衣「それじゃ、そろそろ帰るね」
八幡「おう」
結衣「またね。……八幡っ!」
八幡「っ///」
……おい!
不意打ちしといて言い逃げはズルイだろ。
ヒョコッ!
小町「おに~ぃちゃんっ!」
八幡「うをっ! いきなりビックリさせんなよ」
小町「にひひー。それで、お兄ちゃんはさっきまで結衣さんと何をしてたのかなー?」ニヤニヤ
八幡「なななななな何もしてないぞッ!?」
小町「……ごまかすの下手すぎでしょ」
八幡「…………」
小町「まっ、別に何しててもいいんだけどさ、しっかり責任を持った行動しなよ?」
八幡「責任とらなきゃいけないような行為には至ってねえよ。ほんとに」
小町「首元にバッチリキスマーク付けながらそんなこと言われましても……」
っ!? マジで!??
うっわーこれどうすんだよ親にはぜってーバレたくねえ。
ってか小町にバレた時点で結構精神的にキツイ。
あ、本当にキス以上のことはしてないからね?
……キスは何度も何度もされまくっゲフンゲフン。
八幡「少なくとも、小町に迷惑かけるような事態は起こさないさ」
小町「小町のことは二の次でいいからさ、ちゃんと結衣さんを幸せにしてあげなきゃダメだよ?」
八幡「気が早えよ」
小町「どうだか」ジトー
八幡「……小町ちゃん? ほんとキス以上のことはしてないからね? ほんとにほんどからねっ!?」
小町「ほ~。キスしてたことは認めますかそうですかそうですか」ニヤリ
ぐっ!
しまった、墓穴を掘ったか。
……どのみちバレバレだっただろうけど。
八幡「まぁあれだ。幸せにするとかそういう大層なセリフを吐くのは、大学卒業後も……そしてそれから先も、ずっと関係が続いてたらの話だろ」
小町「そっか。じゃあ、ちゃんと続くといいね」
八幡「……ん、そだな」
とはいえ、俺と由比ヶ浜の関係が平穏なまま続くなんてことはあり得ないだろう。
なんつっても、俺はキス1つで取り乱しまくるようなヘタレだからな!
きっとこれからも、何度か気まずくなったり波乱が巻き起こったりするんだろうな~。嫌だな~。
それでも、俺はずっと一緒にいたいと思っている。
それはきっと、向こうも同じだろう。
普通の恋人同士とはズレているのかもしれないけれど、それをいけないことだとは思わない。
それぞれに適した付き合い方というものがあるのだ。
普通でなくても、正しくなくても、俺達は俺達なりのやり方で頑張ってみるさ。
だから、今までもこれからも─────
─────やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 二次創作SS
由比ヶ浜「キス……しても、いい?」 八幡「なっ!?」
~了~
大学卒業までやろう
ふぅー。
くぅ疲くぅ疲。
8月7日にスタートしたこのスレですが、なんか3ヶ月間も続いちゃいましたね。
これもひとえに皆様の応援のおかげです!
後半は中々蛇足気味だったかもしれませんが、こんなSSに最後までお付き合いくださり、本っっっ当にありがとうございました!!!!!
乙
1、2レス程度の短さでいいので後日談が2、3本ほど見たいです(例:夫婦生活、結婚前夜パーティ、荒ぶる平塚先生等々……)
>>633
そんなんやったらどんだけ年月かかるか分かったもんじゃない&ネタがないwwww
だから続ける気はないけど、最後まで見てくれてマジでありがとね! 1的にポイント最高!!
>>635
えっ、結婚編か~。考えたこともなかったです。
ってかやっぱり皆の中では、その頃になっても平塚先生はずっと独身のままなのかwwwwww カワイソス
皆様、乙レスありがとうございます!!
HTML化依頼を出してこようと思うのですが……、その前にっ!
>>635の発言により思い付いた話をほんの2レス分くらい投下しようと思います。
~数年後、結婚式場~
ワイワイ ガヤガヤ
義輝「ふむぅ……。まさか我々の中で、八幡が一番最初に結婚することになるとは」
彩加「あはは。たしかに八幡は一生独身だったとしても楽しく生きていそうな感じがするし、こうも早く籍を入れるっていうのはすごく意外だね」
八幡「別れる気がない以上、遅かれ早かれ結婚することになるわけだしな」
八幡「結婚は人生の墓場とかよく聞くが、まぁ……、あいつと同じ墓に入ることになるならそう悪いもんでもないさ」
義輝「なぬっ!? おむしの口からそのような言葉を聞くことになるとは……」
義輝「もしや貴様、八幡の偽物であるなッ!!!?」ババッ!
八幡「あ? おまえなに言ってんの? つーかいい歳して中二病続けてんじゃねぇよ」
義輝「いやほら、俺だってほんとは恥ずかしいんだけどさ、最近は作家もメディアに露出する機会が偶にあったりするからキャラ立ちも重要というか……ね?」
八幡「お、おう……。おまえも色々と苦労してるんだな……」
彩加「ほら、材木座君のそういうところを気に入って応援してくれいる人だってきっと少なくないよ! がんばって!!」
義輝「うん。ありがとう……」
義輝「ごほん! ごらむごらむ……それはそうと、花嫁は放っておいてよいのか?」
八幡「あぁ~、さっき控室に行ったら小町と雪ノ下に追い返された。メイクやら衣装やらバッチリ決めてる姿をギリギリまで見せたくないってのが、結衣の希望だとさ」
八幡「なんで小町と雪ノ下は控室に入ってよくて、新郎である俺が立ち入り禁止なんだよ」ケッ!
義輝「おぬしの奉仕部内での扱いは、今も昔も変わっていないのだな」
八幡「うっせ」
彩加「え、えっと。何はともあれ八幡、本当に結婚おめでとう!」
義輝「うむ! めでたいめでたい!!」
平塚「比企谷、私からも祝福させてもらうぞ」
八幡「みんな、ありがと……ん?」
義輝「…………」
彩加「…………」
八幡「…………」
平塚「うん? どうかしたのか?」
八幡「……平塚先生、いつからここに居たんですか」
平塚「いつからも何も最初から居たさ。招待状を送ってくれたのは君と由比ヶ浜だろうに」
八幡「あー、えっと、そうじゃなくってですね」
平塚「おっと! そうかそうか、もう由比ヶ浜ではなく比企谷になるんだったな。私としたことがうっかりしていたよ、すまない」
八幡「はぁ、なんかもういいや……。別に結衣の呼び方くらい自由で構わないと思いますよ」
平塚「そうかね? たしかに二人とも比企谷では紛らわしいものな、ハハハ」
平塚「それにしても、先程は随分と惚気ていたな」
八幡「はい?」
平塚「ほら、『あいつと同じ墓に入ることになるならそう悪いもんでもない』だのなんだの」
八幡「そんなとこから聞いてたんですか」
平塚「ハハハ。だから最初からここに居たと言っているだろう」
平塚「君たちは私のような売れ残りの存在など、気にもとめていなかったようだがな!」
義輝「…………」
彩加「…………」
八幡「……その歳で自虐ネタされても、さすがに笑えないっす」
平塚「グハッ!!」
義輝「そのような発言と性格のせいで売れ残っているのでは……」
平塚「ぐうぅぅうううッッッッ」
戸塚「二人とも、そんなこと言っちゃダメだって!」
戸塚「……今更内面を変えたところでもう手遅れなんだからさ」ヒソヒソ…
平塚「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
・
・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・
平塚「という夢を見たんだ……」ズーン…
八幡「んな話されましても……」
八幡「ってか、俺と由比ヶ浜が付き合い始めてからまだ半年も経ってませんよ? いくらなんでも結婚とか気がはやすぎなんじゃ」
平塚「し、仕方ないだろう! 私だって好きでそんな夢を見たわけではないんだ!」
八幡「はいはい」
平塚「ぐぬぬ……」
平塚「しかしまぁ真面目な話、君たちは互いに一途そうだからな。もしかしたら正夢になってしまうかもしれないぞ?」
八幡「いやいや、さっきのか正夢になっちゃったら困るでしょう。……平塚先生が」
平塚「……グスン」
平塚「と、とにかく! せっかく素敵な彼女が出来たんだ。あまり悲しませるような真似をするんじゃないぞ」
八幡「言われなくともわかってますよ」
八幡「それに、先生にも色々と感謝してますから。怒られるような真似はもうしませんって……多分」
平塚「ふふ、そうかそうか」
HTML化依頼を出してきます。
それでは、またいつか! ( ・ω・)ノシ
このSSまとめへのコメント
いいss。
でも原作は絶対こんな上手くいかないだろな。
これピクシブに完全に同じやつあるけど
ご本人さん?そうでなければただの盗作だな
というかこれシリーズ物だろ?ww
本人のはずだよ〜
これが終わるとか悲しすぎる。が浜ちゃんを愛でるいいssだったのに
最後の戸塚辛辣だなぁ笑
いいガハマさんSSでした!
良作。それに尽きる。
読んでいて自然とニヤニヤしていた