女「」男「ウェッゲホッゴホッオボボッ!」ゲロー (36)

女「男くん。
私、あなたの事がー」

男「それ以上近付くな…!」

女「え?」ピタッ

男「それ以上近付くと、俺、吐くから。」

女「」

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女「私の事が吐くほど嫌ってこと?」

男「なんで女子ってすぐそうやって陰気になるのか分からん。」

女「…。」

男「俺は人が嫌いなんだ。」

男「嫌いすぎて、吐いてしまうほどに。」

女「」

女「じょ、冗談、だよね?」

男「いや本気だ。試してみるか?」

女「うん。
寄れば良いの?」

男「ああ…。いや、すまんやっぱやめてくれ。吐くのって疲れるし。」

女「…。」

女「人が嫌いって、どうして?」

男「人付き合いって疲れるし、それに、人って汚いじゃないか。」

女「汚い?」

男「うん。欲にまみれてて、汚い。
特に俺たちくらいの学生だと、見え透いてて余計嫌だ。」

女「えっと、例えば?」

男「例えば…そうだな、あそこに女子と喋ってる男子がいるだろ?」

女「Aくん、だよね。
かっこ良いから皆に好かれてる。」

男「あぁ。つまり、俺と対極の人間なわけだが…
彼のあの身ぶり手ぶり、気取った話し方、それは誰にしも平等というわけではない。
例えばA子とB子とでは扱いが違う。」

女「あ…本当だ。微々たる違いだけど。なんかB子に対する受け答えの方がノリがいいね。」

男「そうだ…それは 人間の欲目に帰来する。
俺は人間…突き詰めれば、人間の欲が嫌いなんだ。」

女「…。」

女「で、でも、今まで普通に過ごしてたじゃない。」

男「…必死に耐えていたんだ。休憩時間は基本的にトイレに行って、昼飯もトイレで食べてた。」

女「…べ、便所メシ…!
…じゃあ私、人間嫌いを克服するの手伝うよ。」

男「はぁ?」


男「ちょっと待て、なぜそうなる。意味が分からない。」

女「だって私、あなたの事好きなんだもの。」

男「え、ちょっと、まっ…!うぐっ」ゲロー

女「…。」

男「…人間嫌いのやつに告白するな。」フキフキ

女「ごめん。まさか一世一代の告白でも吐くなんて思わなかったの…。」フキフキ

男「…言っておくが、俺は別にこの体質を治したいとは思わない。」

女「でも、社会に出たら嫌でも人と関わらないといけないよ?」

男「俺の両親は幼い俺を残して死んだが、その代わりに莫大な資産を残した。
一生豪遊できるほどの金だ。
つまり、働かなくても良い。」

女「…働かないとしても、一人は淋しいでしょ?」

男「人間嫌いのやつにそんな理屈が適用されると思うのか?」

女「………けど、私は男くんと関わりたいから。だから、男くんの人間嫌いを克服させるよ!」

男「…。」

女「おかえりなさいっ!」

男「…ウェェオボッ」ゲロー

女「わ、大変…ちょっと待って、今片付けるから…!」フキフキ

男「な、んでお前が俺の家にいる…!?
お前がいたせいで吐いただろうが!」フキフキ

女「私、男くんの人間嫌いって、幼い時に親からの愛情がたくさんもらえなかったから、発症したと思ったの。」

女「だから…しばらく男くんの親になるね!」

男「は?」

ちなみにマンションの鍵は、同級生だと管理人さんに言うと、いとも簡単に開けてもらえました。
ずさんすぎる。

女「ご飯はいっつもどうしてるの?」

男「出前。」

女「…スーパーは……行けないよね。そんな体質じゃ。
冷蔵庫はあるのに…」

男「飲み物はストックしてる。」

女「…よし、じゃあ私材料買ってくるね!
何か食べたい物ある?」

男「…とくには。」

女「わかった。いってきます!」

男(…あいつの勢いに負けて流されている。)

男(作ったご飯をひっくり返して、こんなもん食えるか!!っていったら帰るかな。)

男「…。」

女「…えーと、結構料理には自信あったんだけど…食べられなさそう?」

男「…いや、すごい、と、思う。売り物みたいだ。
…作れる物なんだな。」

女「ありがと、嬉しい!
まぁ味が問題なんだけどね。
ささ、どうぞ食べて。」

男(今だ男!!ひっくり返すんだ!)

男(…嫌…食べ物に罪はないし…第一こんなうまそうな物を無下になんて出来ない…!)

男「…いただきます。」モグモグ

女「ど、どうかな…?」

男「…お…いしい、です。」

男(ナンダコレ。)

男(なんかいつも食べてる物と違う。
味だけじゃなくて、なんか、こう。)

女「本当?!よかった、嬉しい!」ニコニコ

男(こういうのが家庭の味、なのか。)モグモグ

男「…。」モグモグ

女「…。」ジーッ

男「…。」モグモグ

女「…。」ジーッ

男「…いくらお前が離れてくれているといっても、そんなに見られたら気分が悪くなるんだが。」

女「えっ、あっごめんつい////
お風呂沸かしてくるね!」バタバタ

男(はっ、なんで適応してるんだ…!はやく追い出さないと…。)

男(風呂が熱すぎるとか…寒すぎるとか…適当に理由つけて怒ろう。)

男「ご馳走様。」

女「あっ、全部食べてくれたんだ…よかった!
お風呂今沸いたからどうぞ!」

男「…分かった。」

男(よし、今度こそ…)

ー風呂場ー

ガラッ

男(…?!)

男(風呂場が…格段に綺麗になっている…!)

男(あちこちについていたはずの水垢やカビがなくなって…)

男(さっき俺が食べにくいから、と言って追い出した後、風呂を沸かすには時間がかかり過ぎだと思っていたが…)

男(まさか掃除をしていたのか?!)

男(…いや、焦るな俺…。
たかが風呂掃除…そうだろう?)

男(問題なのは風呂自体っ……!この、蓋をあけた中こそ、重要なんだ…!)バッ

男(……!!
なん…だと…!?)

男(入浴剤…しかもこれは俺が愛用していた"秘湯の湯"シリーズ!!切らしていたはずだが…何故ここに…)

ザバーッザバーッ…チャポン

男(ふぅ…全身が弛緩していく様だ…!
しかも俺好みの温度のお湯…!
少し熱いと感じるぐらいが良い…!)

女「…あ、お湯加減どうでした?」

男「…よかった。
お前…あの入浴剤…。」

女「あ、ごめん、嫌いだった?
私のお気に入りなんだけど…」

男「"秘湯の湯"シリーズ、いいよな。」

女「男くんも愛用者なの?!
いいよね、あの入浴剤の無理のない自然な香りが好き!」パァッ

男「ああ、実際に沸いてる温泉から作られてるからな。
その気持ちはわかる。」

男(いかん…流されてしまった…!)

女「よし、じゃあ私帰るね。」

男「そうか。」

女「うん、また明日!
あ、制服はクローゼットに掛けてあるから!」

男(やっと帰った。)

男(寝る前にクローゼット確認しとくか。)ガチャ

男(…予想はしていたが…アイロンが完璧にかかっている…。)

男(非の打ち所がないとはこの事か。)

ピピピ、ピピピ、ピピピ、

男(…朝か…。)

男(…パン…あったっけ。)ノソリ

ガチャ

女「男くん、おはよう!」

男「!!ウェッゴバッゲフッ!」ゲロー

女「うわっ、ごめん!待ってて今片付ける!」

男「…なんでいるんだ?」フキフキ

女「昨日のうちに鍵を拝借したの。
…男くんの、親になるんだもん!」フキフキ

男「…。」

女「男くん、朝は洋食派?和食派?」

男「特には。」

女「そっか。とりあえず今日は和食だよ!」

男(…生粋の日本の朝ごはん…!)

男「…いただきます。」ズズーッ

男(朝のあったかいお味噌汁って、こんなに美味しい物なんだな。
身体にじんわりしみる…。)

女「男くん、りんごは好き?」ショリショリ

男「まぁ普通に。」モグモグ

女「まあ嫌いな人、あんまり見かけないけどアレルギーとかあるしねー…っはいできた!
デザートにどうぞ!」

男「この形のカットは…?」

女「うさぎさんりんごだよ!
この二つのとこが耳!」

男「へぇ、器用なもんだな。」

女「けっこうだれでもできるよ?
っと、もうこんな時間!
お弁当、ここに置いとくね!私今日委員会だから先に行く!」

男「んー。」

バタン!

男(はっ!いかん!
流されまくっている…!)

ー授業前ー


男(学校では話しかけてこない。)

男(…一応人目とかは気にしてるのか。)

男(なにか…奴の弱みさえ握る事が出来たら…!)

男(苦しいが…人に聞くしか無いか…)

男「な、なぁ。」

A「ん?どうかしたか?」

男(適当に人に話しかけてみたらみかけで人を判断するこいつかよ…
…まぁ仕方ない。)

男「…女さんの事について聞きたいんだが。」ヒソヒソ

A「男がそういう話してくるの、珍しいな!一部ではホモ疑惑もあったのに。」

男「ホ…!?やめろよ縁起でもない!」

男(というか男女関係なく無理なんだけどな。)

A「あはは、ごめんな。今度みんなにも言っておくよ。
…で、女さんのことだっけ?」

A「一言で言えば…努力家?」

男「…努力家?」

A「あぁ。
なんでも両親が亡くなってて…っと、それは男もか…。
彼女はそれに加えて、借金もあってな。」

もしかして前にもss書いてた?

>>28

相変わらず拙いですが、メイドとかくれんぼするやつ書きました

男「借金…?」

A「あぁ。
彼女の両親が作ったものらしいが、両親が死んでその借金を親戚が肩代わりしたから、彼女は返すために一生懸命バイト掛け持ちとかしてるそうだ。」

男「なるほど…」

A「って、なんか暗い話だな。こんなの参考にならないか。
まぁでも実直な良い子だと思うぞ。」

男(流石に両親の死とか、借金とかでなんやかんや言うのも非人道的か…)

男「助かった。ありがとう。」

A「たいしたこと言えなくてごめんな。
また何かあったら言えよ!
男はあんまり人と関わらないからなー…。」

A「…って、あれ?もういない…。」

男「ッゼハーッゴフッウグッ…!」

男(頑張った俺…!あんなに近くで人と話すなんて!)

男(といっても、それに見あった成果は得られなかったな。)

男「…。」

女「お帰りなさいっ!」

男「ゴフッウッ…!
…またいるのか。」

女「恋は誰にも止められないんだよ!
今日はね、お菓子を作ってみました!じゃーん、みたらし団子ー!」

男「…!み、みたらし団子…!」

女「もしかして、苦手?」

男「……。」

女「…そっ、か。じゃあ持って帰…」

男「ま、待て!!」

女「え?」

男「だから、その……?っ食ってやる。」

女「…わかった!お茶いれるね!」

男「…」ムシャムシャ

女「…」ジーッ

男「…食べないのか?」

女「後で食べるよ。その皿に盛ってるやつ取ろうとしたら必然的に男くんに近づいちゃうし。」

男「そ、か。」

女「うん。
でもさ、私の事気にかけてくれるのは大きな一歩だと思うよ!」

男「…人は、嫌いだ。」

女「うん…今は、それでも良いの。」

女「じゃあ帰るね!夕飯はレンジの中のやつをあっためて食べて!」

男「…ん。
あのさ、玄関のドアの取っ手に掛けてる袋の中に、お金いれておいたから。」

女「…何のお金?」

男「食費。お前が俺が食べる分の材料買ってるんだから、当然だろう。」

女「じゃあこれからは差し引き分と、レシートとかも渡すね。」

男「いや、お釣りはいらないから。
とっておけ。」

女「…?うん。分かった。
それじゃあまたね!」ガチャン

男「…。
家政婦だと、思えば良いんだ。
距離だって、最低五mはあけてるし。」

男「…大丈夫だ。俺は、何も変わらない。」

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