上条さん強化風紀委員再構成もの
カップリングはあるかも
チラ裏レベル
スレが荒れないように、批判に対しての擁護レスを禁止とします
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7月中旬。
夏休みの開始を4日後に控えた快晴の学園都市、第七学区。
炎天下の路上を、同じ制服を着た二人の女子中学生が並んで歩いていた。
「あー、それにしても今日はほんと暑いわねー。今日みたいな日からこんなんじゃ、夏休みに入ったら地獄よ地獄」
指定カバンを担ぐようにして持つ少女、御坂美琴が片手で日差しを遮りながら愚痴をこぼすと、隣を歩いていた少女
、白井黒子が苦笑で返す。
いくら科学発達したこの街といえど、街中の気温を下げる技術などあるはずもなく、夏は外界と同じように暑い。
「これから本格的に夏に入っていくわけですからしょうがないですの。我慢するしかないですわ。今向かっている広
場に到着すれば植木の木陰がありますから多少マシだと思いますけど」
「そうねー、だったら少し急ぎましょう。初春さん達、もう着いてるかもしんないし」
「ですわね。柵川中学の方が距離的に近いですから」
二人は少しだけ歩みを速め、もう二人の友人たちとの待ち合わせ場所であるふれあい広場を目指した。
夏休み目前のこの日、仲良し四人組はたまたま予定が合ったため、初春飾利の勧めるクレープ屋に行くことになっていたのだ。
クレープ屋自体は移動式の露店であるのだが、初春の調べによれば今日この時間はふれあい広場に店を出しているらしい。
歩道橋を渡り、交差点をまっすぐ右に抜けると、少し開けた場所に出る。
道路沿いから植木の境界線を引かれた、ちょっとした公園のような場所だ。
広場にはいくつかの露店、その周りにはパラソルの差された簡易テーブルがいくつか設置されており、集まった人々でささやかな賑わいを見せていた。
「なんか今日、結構人多くない?」
美琴がいつもより賑わった広場を遠巻きに見ながら言うと、隣に立った白井が広場の脇を指さして、
「おそらくあのせいでしょう」
「ああ、あれって確か外から来た子たちの…」
「ええ、学園都市の見学兼観光バスのようなものですわね。子どもたちもたくさんいるようですし」
「あんまり覚えてないけど、私もあれに乗ってここに来てたのかな」
「あ、御坂さん白井さん!」
そろそろ連れの友人達を探そうと歩き始めた二人を背後から呼び止める声があった。
声の主は美琴や白井のブラウスとは違った、白を基調とした紺のセーラー服に身を包んだショートヘアの少女。
探していた友人の一人、初春飾利だ。
「あ、初春さん佐天さん。ごめんね、ちょっと遅くなって」
「いえいえ。わたしたちもちょうどさっき着いたところなんです」
「にしても、やっぱ人多いですねー」
「タイミングがわるかったみたいですね」
「では、わたくし先にベンチを確保してまいりますわ」
「あ、じゃあわたしも行きます。佐天さん、私たちの分お願いしますね。お金は後で払いますから」
「うん、わかった」
四人は買物をする二人と場所取りの二人に別れ、背を向けて歩き出した。
※
「はぁ、今日も不幸の通常運転。まさか黄泉川先生から預かったメモを風に飛ばされるなんて…」
上条当麻は、第七学区の歩道をとぼとぼと歩きながら、今日何度目になるかわからない溜息をこぼす。
朝のHRの後職員室に呼び出され、黄泉川愛穂から受け取った大事なメモをなくしてしまっていたからだ。
メモにはこれから上条が向かう風紀委員第177支部の住所が記載されていたため、彼は完全に途方に暮れていた。
こんなこともあろうかと予め携帯に転送されていたGPSデータもあるのだが、あいにく携帯は充電切れ。
集合時刻のことを考えると、さすがにこれから寮に戻って携帯を充電する時間もない。
「ふ、不幸だ……」
*
「ほらお姉さま!遠慮なさらずにぃ~」
「いらないわよ!だいたい何よ、トッピングに納豆と生クリームって!!」
頬を染めながら楽しそうにクレープを押し付ける白井と、引きつった表情で逃げていく美琴。
普段通りの微笑ましいやりとりをぼんやり見つめながら、佐天と初春は食を進めていた。
「いつも通りだね、あの二人は」
「白井さんは御坂さんの事になると自分が風紀委員だって自覚をなくしてますよね……まったくもう」
「ねえ、初春~」
佐天が食べ終えたクレープの包装を丸めながら、半眼を作って初春に向き直る。
ニタァという効果音が似合いそうな佐天の悪そうな笑みにたじろぎながら、初春もなんですかと言葉を絞り出す。
「今日一日、なーんか落ち着きないっていうか、初春ちょっと変だよね?」
佐天の見透かしたような口調に、初春はギョッと目を見開いて顔をそらす。
親友のわかりやすい反応をアタリと見た佐天は密かにほくそ笑み、追求を続けることにした。
「いつもそんなにやんないよね、手鏡気にしたりとか」
「っ!?」
「……ははーん。さては初春、彼氏でもできたの~?」
「違いますよ!ただ、今日はちょっと…」
「ちょっと?」
「いえあの…今日はうちの支部に新人の方が配属されることになってて」
「へぇー、えっ、じゃあその人男の人なの?」
「ええ、まあ」
「あー、初春ってクラスでもあんまり男子と接触ないもんねー」
なるほどそれでかーと一人納得する佐天のもとに、美琴とたんこぶを作った白井が戻ってきた。
「何の話?」
「ああ、なんでも今日から風紀委員に新しい人が入ってくるらしくて、その話を初春から聞いてたところなんです」
「そういえば黒子もそんな事言ってたわね」
「御坂さんご存知だったんですか?」
「わたくしからお姉さまに報告していたんですのよ。うちの支部、これまで殿方は一人もいらっしゃいませんでしたから。これから何かと一緒にいることがあるかもしれませんし…お姉様に浮気を疑われないように―――――」
「…なーにが浮気よ」
「まあそれで、私と白井さんが新人の方を指導することになってて…」
「それでソワソワしてたのね、初春」
「別にソワソワなんて!」
「やれやれ。殿方一人に心を乱して情けないですわよ初春」
遅筆すぎて辛い
次はまとまったものを投下できるように頑張ります
白井は初春を一瞥すると緑の腕章を取り出し、
「初春。警備員への要請と、怪我人の有無の確認。急いでくださいな!」
「は、はいっ!」
白井はベンチの背もたれに足をかけ、腕章を袖口に括りつけながら颯爽と道路へ飛び出した。
幸い、爆発のショックで走っていた車はすべて停まっており、二次災害を恐れたドライバー達が車を離れ始めているほどだ。
初春も携帯を取り出して、早速警備員へ応援要請の連絡を始める。
美琴はといえば、改めて後輩たちの仕事ぶりに感心しながら、同時にいてもたってもいられなくなり走って行く白井を呼び止めていた。
後輩の力量を認めていながら、それでもどこかに不安があったのかもしれない。
助けになれるかもしれないと思ったのは、美琴が超能力者であるがゆえだ。
「いけませんわお姉さま」
しかし、白井は一度だけ振り返って、美琴の申し出を断った。
「学園都市の治安維持はわたくしたち風紀委員のお仕事。今度こそお行儀よくしていてくださいな」
言うやいなや、白井は再び現場へ向かって走って行く。
「た、大変なことになっちゃいましたねー」
佐天が辺りをキョロキョロとしながらつぶやくと、美琴も頷いて同意する。
「そういえばさっきの人、どこにいったんだろう……」
佐天は目を凝らして少年の姿を探したが、その姿を見つけることは出来なかった。
*
モクモクと上がる黒い煙の中から出てくる三人の強盗を逃がすまいと、白井は彼らの前に『空間移動』で現れた。
悠然と立ちふさがる少女に、強盗たち三人の動きも止まる。
彼らは三人共目から下をバンダナで隠しており、手にはそれぞれ武器やカバンを持っていた。
「風紀委員ですの!器物破損、および強盗の現行犯で拘束します!!」
自らが風紀委員であると、腕章を見せつけながら宣言する白井に、強盗たちは逃げることも忘れゲラゲラと笑い始めた。
嘲りや同情の混じった笑いに、白井が眉をひそめる。
「こんなガキがジャッジメントぉ?」
「おいおい、人手不足にもほどがあんだろ。怖いなら帰っていいんだぜお嬢ちゃん」
「おい、こんなガキに構うな。さっさとずらかるぞ」
慣れっこな反応とはいえ、大能力者であるというプライドが白井を余計にイライラさせる。
「そういう三下のセリフは――…」
完全に白井をなめきった男が彼女に掴みかかると、彼女は彼の体重を利用して意図も簡単に投げ飛ばしてみせた。
「死亡フラグですわよ?」
男は地面に手をつく前に身体を強打し、そのまま気を失う。
仕事柄常に最前線で戦う白井にとって、能力に頼らない戦闘は当然のスキルだった。
「このガキ……!」
仲間一人を一瞬でやられ、ようやく強盗二人の顔に真剣さが現れる。
「ガキはガキでも確かに風紀委員だ。ここは俺がやる」
白井の力量を認め、リーダー格の男が仲間を手で制し前に出る。彼は空いた右手を皿を持つように構えると、次の瞬間手のひらに炎を顕現させた。
「発火能力者……ですわね」
男の能力に当たりをつけた白井がつぶやくと、男が笑って肯定する。まるで隠していた切り札を出したような余裕の笑みだった。
「今更後悔しても遅えぞ。俺を本気にさせたんだ、てめぇには消し炭になってもらおうか」
男が言い終えぬうちに、白井は炎の射程圏内から逃れるように駆けていく。
「逃げようったって、そうは―――――っ」
男が背を向けた白井に向けて手のひらを伸ばすと、まるで意思があるかのように炎は白井へ伸びていく。
「誰が――――」
ついに炎が彼女を飲み込もうとした途端、突如彼女の姿は景色に溶け込むように消えてしまう。
「なにっ!?」
そして驚く男を嘲るように、少女の声の続きは、なぜか彼の真上から降ってきた。
「逃げますの?」
男がサッと真上を仰いだ時には、彼女の靴底が彼の顔面に直撃していた。
「ぐああぁっ!」
男は強烈なドロップキックを喰らい、地面を二三度転がった後うつ伏せに倒れこんだ。
白井は僅かな隙も与えず、スカートの下をさらって追撃の構えを見せた。
次の瞬間、虚空から金属矢が現れ、次々に男の衣服と地面とを縫い合わせていく。
「て、空間移動……!!」
ここにきてようやく怯えを見せた男が顔を上げると、白井は彼に金属矢をちらつかせながらトドメの一言浴びせた。
「これ以上抵抗を続けるようなら、次はコレを直接体内にテレポートしてさしあげますわよ?」
「……ま、参った」
白井はもう突っ伏した男には目もくれず、さっと顔を上げて三人目に向かって告げた。
「さあ、次はあなたの番――――っ!?」
だが、目の前にいたはずの三人目の男の姿は既にない。
ハッと我に返った白井の脳裏に浮かび上がったのは、学園都市の見学に来ていた大勢の子供達の姿であった。
「………まさか」
そして、白井の悪い予感には、遙か後方から佐天の叫び声が答えるのだった。
「ダメええええええっ!!」
*
「黒子ッッ!!!」
夕暮の近づいた空に、美琴の怒声が響き渡る。
黙って大人しくしているという約束は、もう美琴の頭の中から消し飛んでいた。
そして、その原因を作った事態を防げなかった後ろめたさから、白井に美琴を止めることなどできるはずもなかった。
美琴は慌てて白いセダンに乗り込もうとする強盗を真後ろから睨みつけながら、毅然と道路の真ん中に立つ。
正義感の強い美琴が、なにより友人を傷つけられる様を見て黙っていられるはずがない。
美琴はポケットから、ゲームセンターのシルバーメダルを取り出して、そっと親指で構えた。
「こっから先は私のケンカだから……悪いけど、手、出させてもらうわよ」
*
男は、現金の輸送役としてこの銀行強盗に参加していた。
犯行を終え、防犯シャッターを派手に爆破して逃げたのは戦闘をこなす囮の三人。
男は爆発の煙に紛れて、こっそり確保してあった裏口から逃げる手はずになっていた。
(急げ……裏口には足が停めてある)
左手には重量のあるスーツケースを抱えていたため、男は身体を斜めに逸らし右半身から走って行く。
裏口から外に出てみると、表の騒ぎのおかげで人はいなかった。すべて、男の思惑通りにすすむと信じて疑わなかった。
「ビンゴ」
上条当麻は、今回誰よりも冷静に動けていた。
銀行の防犯シャッターが爆破され、表から三人が出てきた際、先に顔見知りの少女が彼らと交戦しはじめたことが彼を冷静にさせていた。
白井の強さを知る上条は、手を出すとかえって邪魔になると判断し、念の為に裏手に回ってきていたのだ。
そこで、大きなスーツケースを抱えた男を発見した。
「チッ……まさか裏にまで人を回せるくらい人数が居やがったか」
「ああ。アンタもここまでだ」
「いや、確かに計算が狂っちまったが、終わったのはお前のほうだ」
男は特に動揺した様子もなく、サッとポケットからパチンコ球のような鉄球を取り出してみせた。
「俺の能力は絶対等速」
言いながら、男は一つ取り出した鉄球を稼働中の清掃ロボットへ向けてゆるやかに放った。
いくら鉄球の硬度が高くても、あのスピードでは弾かれるだけだと容易に推定できる。
「イコールスピード…?」
だが、ゆるやかに進んだ鉄球はそのままのスピードで、まるでプリンの中に沈んでいくかのように清掃ロボの中核を貫いた。
清掃ロボは煙を吹いて警報を鳴らし、やがてその動きを止める。
「俺の投げた物体は俺が能力を止めるかそれ自体が壊れるまで進み続ける……てめぇは終わりだ」
絶対等速は最後にそう告げ、手にした鉄球を3つ、上条へ向かって投げつけた。
「―――――…なっ!?」
だが、鉄球は上条の右手によって意図も簡単に払いのけられ地面をカラカラと転がる。
その動作は、まるで服についた汚れを払うかのようなものだった。
「いいぜ。まだテメェがここから逃げられると思ってんなら……まずはそのふざけた幻想をぶち殺してやる!」
*
白井黒子は、はぁと深い溜息を付きながら己の額を片手で抑えた。
姉と慕う美琴が、本気になっている。
白井は風紀委員として、美琴に治安維持の仕事に手を出してほしくないのは本音だが、今は悪い気がしなかった。
むしろ、どこか嬉しささえあると感じていた。
いつだって、白井の慕う美琴はこんな人間だった。
友人を傷つけられて指を加えているようなのは、美琴じゃない。
白井が好きになった御坂美琴は――――。
「お、思い出した……」
白井の足元で固定されていた強盗の一人が、青ざめた顔で思い出した様につぶやいた。
男は道路に毅然として立つ美琴に目を奪われながら、言葉を続ける。
「風紀委員には捕まったら最期……身も心も踏みにじる最悪のテレポーターが居て―――」
「……誰のことですの、ソレ」
「さらにそのテレポーターの身も心も虜にする最強のエレクトロマスターが…!!」
強盗の最後の一人が、佐天に人質の捕獲を邪魔され、白いセダンに乗って走る。
報復を決意したのか、進行方向に美琴をおきながらセダンはスピードをぐんぐん上げていく。
しばらく呆気にとられていた通行人たちが危険を唱える中、白井は安心してその光景を見ることが出来た。
強いて白井が感じる不安を挙げるとすれば、それは強盗が怒りを表した美琴を相手にして、無事でいられるかどうか…それだけだった。
白井は強盗の言葉に誇らしげな笑みを浮かべながら、
「そう。あの方こそが、学園都市230万人の頂点。7人のレベル5の第3位――――『超電磁砲』。御坂美琴お姉さま」
白井の視線の先で、美琴はコインを宙に弾く。
コインは空中でひらひらと回転し、やがて美琴の指の上に戻って弾かれる。
そして――――まばゆい光と、遅れてくる轟音。
コインの軌跡をたどるようにつけられた道路の亀裂から煙が吹き荒れ、超電磁砲の直撃したセダンが宙を舞い、やがて美琴の遥か後ろで地面に刺さる。
後には物凄い爆風と地鳴り、そして黒子の賞賛の声だけが残った。
「常盤台中学が誇る、最強無敵の電撃姫ですわ」
*
四人の強盗犯たちが連行車両に入れられた時には、すでに空がオレンジになった頃だった。
上条当麻と黄泉川愛穂、それに白井黒子の三人が現場から少し離れた場所で話していた。
「いやーそれにしてもお手柄じゃん?配属初日から強盗事件を解決するなんて」
「別に俺は何かをしたわけじゃ…爆風で気を失ってた強盗を一人連れてきただけだし」
「いやいや、初日なら出来過ぎた働きだって!これで小萌センセにいい土産話ができたじゃんよ!」
「げっ!飲みのネタにする気ですか?」
上条が呆れ半ばに半眼を作ると、黄泉川が快活に笑う。
どうやら話に聞く担任同士の飲み会の話の種にされることは決定事項のようだった。
「そんなことはどうでもいいんですの!大体、なんでこの腐れ類人猿なんですの!?あなたがこれから同僚!?信じられませんの!」
明らかに敵意剥き出しの態度に面食らいながら、上条も負けじと言い返す。
「俺だってテメェみてーな犯罪者まがいの奴がいる支部だとは思わなかったよ!」
「は、犯罪者まがい…?お姉さまのストーカーであるあなたが何かおっしゃいましたか?」
「それはまんまテメェのことだろ!!つーか頼む!静かにしてくれ!ビリビリに気づかれたくねーんだよ」
「あなたのほうが声が大きいですの!」
「ま、…仲良くやれそうで良かったじゃん?」
「「絶対ムリです(の)!!」」
今回はここまで
また書き溜め次第投下します!
正直、何番煎じって感じだな
>>32
ならカップリングを奇特なのにしようかな
*
翌日。第7学区のファミレスにて。
「せっかく雰囲気を作っても、そんな話ではねぇ」
佐天涙子が語った都市伝説・『脱ぎ女』を聞き終え、白井黒子はそつない反応を示した。
佐天は想定外に芳しくない反応にえー、と頬を膨らませてみるが、その場で浮いていたのは彼女の方だった。
「んー、いきなり遭遇したら怖いと思うんだけどなぁ。だっていきなり脱ぎだすんですよ?脱ぎ女!」
「怖くない……っていうか、それってただの変質者じゃないの?」
「じゃ、じゃあじゃあこんな話はどうですか?」
初春がノートパソコンをリュックから取り出し、全員に見えるよう向きを変えながら会話に混ざる。
開かれていたのは、学園都市伝説という名のいかにも胡散臭いウェブページだった。
「風力発電のプロペラが逆回転するとき、街に異変が起きる!!」
「夕方4時44分に学区間をまたいではいけない。幻の虚数学区に迷い込む!!」
「使うだけで能力が上がる道具、レベルアッパー!!」
嬉々としてページ上の項目を並べ始めた初春と佐天を、白井と美琴は呆れ半分で眺めていた。
「はぁー…。そんなくだらないサイトを見るのはおよしなさいな」
「だいたい都市伝説なんて非科学的な話。ここは天下の学園都市よ?」
「もー。本当に2人ともロマンがないな~」
「それに、本当に起きた出来事が形を変えて噂になっているケースもあるんですから」
「どんな能力も効かない能力を持つ男、なーんていかにも学園都市ならではって感じじゃないですか」
「………」
佐天が読み上げた項目に、美琴はそっと眉をひそめる。
どんな能力も効かない能力……?
よくよく考えてみれば、あれってそういうことになるんじゃ……。
ついさっきまで呆れながら眺めていたページに眉をひそめながら、美琴はそんなことを思うのだった。
「ぷっ…っふふふふふふ。そんなむちゃくちゃな能力あるわけないですわ。ね、お姉さま?」
「………」
「……ん?」
「お姉さま?」
「へっ!?あ、ああ、そうね。ほんとにいるなら一度戦ってみたいわね!あ、あはははははは。あ、私ちょっとお手洗いに行ってくるわね」
「……どうなさったんでしょうか、お姉さま」
「さ、さぁ」
*
「どんな能力も効かない能力、ねえ」
化粧室の大きな鏡台に向かって、美琴は思わず洩らしたようにつぶやいた。
これまで街中で出くわすたびに自分の能力をものともしないあの男は、一体どんな能力を持ったやつなのか。
最初こそ何度も頭をひねった美琴だったが、最近ではすっかり考えなくなっていた。
不思議、なぜ、どうして、よりも、ムカつくが先行していたからだろうか。
しかし美琴は、なんの能力も効かない能力と聞いたことで、解けなかった疑問が氷解したような感覚を覚えていた。
ハンカチをポケットに仕舞い、席に戻った時には、すでに別の話題が展開されていた。
どうやら、昨日話していた風紀委員の新しいメンバーについて佐天が初春から聞き出している場面らしい。
そういえば初春さん、男の人は苦手だって言ってたもんなーと思い出しながら美琴も会話に混ざる。
「昨日話してた風紀委員の新しい人?どんな人だったの?」
「ええっと、近くの高校の1年生みたいです。どういう人かと言われると、う~ん……実は昨日の事件のことで忙しくってそれどころじゃなかったっていうか。今日も今から支部に戻り
次第続きの作業がありまして……まともに話してないんですよね―」
「そうなんだ…風紀委員も大変なのねえ」
「あ、あれ?昨日銀行強盗があった現場にいたじゃないですかーその人。覚えてないんですか?」
佐天が意外そうに言うと、美琴がえ?という顔をする。
どうやらあの現場で彼を見たのは美琴以外の三人だけだったらしい。
「え、居ましたよね?」
「え、ええまぁ…」
「どうもそうらしいって話を私は支部に戻ってから聞きました」
「ふーん。私見てないなぁ。黒子もその話してくれなかったし」
「え゙、ええ、そのちょっと……(い、言えるわけないですのー!あの類人猿がだなんて言えるわけないですの―!!)」
「……どうしたの黒子?頭なんか抱えて」
「い、いえ別に。なんでもありませんの。お、おほほほほ」
次は20レスくらい進むように頑張ります
原作との差別化も考えなきゃならんですね
*
第七学区の大通りに面した巨大なデパートから出ると、モワッとする暑さが白井を襲う。
時は7月17日。梅雨も終わり、本格的な夏に入っていく季節。
白井は右手に下げた紙袋の中身を心配し、急ぎめに177支部に向かうことにした。
高等部も授業日程を終える放課後のこの時間になると、まだ空は明るいが人通りが一気に増えはじめる。
完全下校時刻を18時に控えた学生たちにとって、放課後の今は遊びに明け暮れる時間なのだ。
夏休み目前であることも影響してか、街には活気があるようにも思える。
そして、こういう時にこそ風紀委員をはじめとした治安維持組織の頭を悩ませる事件が起きるものなのだ。
歩道橋を渡った先のバス停を右に曲がると、白井の所属する風紀委員第177支部がある。
先日やって来たあの男も、そろそろ仕事に到着するのではなかろうか。
白井はやや眉をひそめながら考え、頭をよぎったツンツン頭の少年におもいっきり舌を出した。
何を隠そう、白井は上条当麻が嫌いなのだ。
思い返してみても、直接何かをされたわけじゃない。
何か悪口を言われたわけでもなければ、生理的に嫌悪する相手というわけでもない。
それでも白井が上条を好ましく思わない原因は、きっと嫉妬心にある。
自らがお姉さまと慕う美琴の心に住み続けるあの少年に、白井は嫉妬していた。
そういえば、はじめて美琴が嬉しそうに男の話をしたのは、一月ほど前だっただろうか。
あのバカ、と罵る相手のことだ。初めてその話を聞いた日、美琴は敵愾心からくる鬱憤を晴らしているのだろうと白井は思った。
だが、話を聞いているうちに、白井は美琴の感情の機微に気がついた。
楽しそうに罵る相手のことを、本当は美琴がどう思っているのか。
あのバカの話をするときだけ見せる微笑み。普段は見せない表情。
おそらく本人すら自覚していないであろう感情に最初に気がついたのは、皮肉なことに白井だった。
その時の自分の心境は、心配だったろうと白井は思う。
良くも悪くも女子校育ちの白井にとって、男とは悪いイメージの塊だった。
実際、学舎の園の外で関わった男といえば、治安を乱すスキルアウトに、言い寄ってくるナンパ男のような人種ばかり。
意図せずとも悪い印象ばかりを刷り込まれた白井が、自ら男に関わろうとするはずもない。
そんな状況で、美琴の心に住まう男ができたのだから、白井は当然のように心配した。
だが、どうだろう。
その男を見た白井の心には、心配なんて、とうに消え失せていたと思う。
*
「へぇ、じゃあ上条さんって白井さんとは元々顔見知りだったんですね」
放課後。
昨日に引き続き2度目の風紀委員177支部にてお茶を飲みながら、上条当麻は初春飾利と談笑していた。
2人で、雑務は15分後に始めると取り決めての休憩である。
支部の先輩である固法美偉は今日は席を外しており、白井はまだ来ていない。
初春の話では、みんなでファミレスでお茶した後どこかに寄ってから来ると言っていたらしい。
「まあな。つっても直接話したことなんて数回きりだったけどな。前にスキルアウト同士の抗争とか、能力者のケンカとかに遭遇したことがあって、そこで知り合ったって感じ」
「なるほどなるほど」
「まあ最初は思いっきり勘違いされて捕まえられちまったんだけど……」
「あははは。白井さんならやりそうですね~。白井さんってばしっかりしてて頼もしいんですけど、こう、決めたらこうだ―!って突っ走っちゃうとことかあってちょっと危なっかしいですから」
初春の言葉に美琴の姿を重ねて、思わず上条も苦笑してしまう。
なんというか、確かに上条の知るところでも、白井にはそういう部分があるように思えた。
と、そこで。
「だ・れ・が・?思い込みが激しい暴れ馬ですって~?初春」
電子錠を開け、部屋に入ってきた少女の声に、初春と上条までもがギョッとして目を見開く。
リボンで括ったツインテールに、常盤台中学の制服。まさに今しがた話の種になっていた少女、白井黒子がそこにいた。
「そ、そこまでは言ってませんよー!あ、あははは」
「……まったく。あら?来てたんですの、類人猿さん」
「テメェ…なんの恨みがあってそんな―――」
「恨みならありますわよ~?いい加減、わたくしのお姉さまにちょっかいをかけるのはやめていただきたいですの」
「え、お姉さまって御坂さんのことですか…?」
「だーっ!!だから俺は別に御坂につきまとってねーよ!むしろ付きまとわれてるんだって言ってんじゃん!」
「あやしーですの。大体そんな10秒で思いつくような言い訳、ストーカーならみんな口を揃えて言いますのよ?」
「……はぁ。何が悲しくて上条さんがあんなビリビリ女を付け回さにゃならんのだ」
「くっ!類人猿の分際でお姉さまを侮辱するつもりですのッ!?キーーーッ!!表に出やがれですの!!」
「はいはい、ちょっと落ち着きなさい二人とも。相性バッチリみたいで私も安心したわ。それより今からちょっと連絡事項があるからみんな座って」
ヒートアップしていた2人の間に割り込む形になってきたのは、支部の最年長である固法美偉だった。
彼女はなぜか今日席を外していたのだが、今しがた戻ってきたらしい。
ふん!と同時に顔を背け合う2人に、ただ一人初春がおろおろと取り残されていた。
*
遅筆で申し訳ない。ここまでしか書けませんでした
また
今日明日中に更新予定
このSSまとめへのコメント
ありがちな内容だが期待できそう
いい感じ。上黒か上琴どっちになるか気になる
続きはよ
期待してたのにエタりそうじゃんか