希「弱さの代償」 (242)
ドロドロあり
鬱要素あり
胸糞もあるかも
エロも多分あり
シリアス
オリジナル設定あり
自己解釈している箇所もあります
これらがダメな方は見ないことを推奨致します。
基本書き溜めしてないのでゆっくり書いて行きます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407248246
希「あはは、そうなんや」
絵里「ね、面白いでしょ」
希「うんっ」
絵里「――はぁ……なんだか最近私緩んできてないかしら」
希「そうやね」
絵里「やっぱり?」
希「威圧感のあった当時のえりちはどこへやら」
絵里「……仕方ないじゃない」
絵里「みんなのおかげね」
希「うん」
希「あの時のえりち可愛かったなぁー」
希「言えるわけないじゃないっ……!」
絵里「やめてー!!」
希「あははは」
絵里「本当最低よ……」
希「ごめんて」
絵里「はいじゃあこれ終わったから――」
希「っ……」
書類に判子を押して、後ろで私をからかっていた希と振り返った私の顔が一瞬にして接近する。
まるで時が止まったような。大きな瞳と通った鼻筋、ぷっくりとした唇。全てに魅了されていた。
夕日のせいだろうか。少しだけ赤みがかった希の頬。
希「あ、あの……」
希が目を逸らし、発した一言で我に帰る。
絵里「ご、ごめん!」
絵里「……」
希「……」
何故だろう。
胸が、痛い。
希とはずっと生徒会で一緒でクラスも一緒で、一番の友達。そう一番の友達。
それなのに、顔を見て話して、それだけで辛かった。
絵里「……」
希「し、仕事も終わったし、練習いかん!?」
絵里「そ、そうね」
もし私の気持ちが、本当だったとしても。告白する勇気はない。
この関係も大好きだから。希が大好きだから。
希「さ、いこ!」
絵里「……ええ」
きっとこの気持ちは私だけ。
いいんだ、女の子同士でそれを好きになったのだとしたら、世の中のタブーを犯した私が悪い。
――これは罰なんだ。
驕りではないけれど、希だって今の私との関係を悪くは思っていないはず。それを崩すのはしてはいけないこと。
仮にさらに深い関係になれるとしても、浅い関係になってしまう可能性が1%でもあるのならば私の勝手を貫いてはいけない。
絵里「希のためだから……」
すべて希のためだ。
愛おしい、希のため。
絵里「……結局、私好きなんじゃない……」
希「えりち?」
心配するような表情で希が覗き込んでくる。
絵里「うん、今行くわ」
◇◇
にこ「もう、うるさいって言ってるでしょ」
真姫「……私のこと好きなんじゃないの?」
にこ「好きよ。でもそれとこれとは話が違うでしょ」
真姫「……恋人ならエッチくらいしてよ……」
真姫「それが恋人なんじゃないの?」
にこ「……」
真姫「……」
真姫「ごめん……」
にこ「いや、いいわよ……」
真姫「……でも私、にこちゃんのこと好きだから」
にこ「うん……ありがと」
真姫ちゃんが素直に欲望を伝えてくるようになったのはいつからだろうか。
真姫ちゃんは恋愛経験が無かったらしい。まあ性格からして当然だとは思うけど。
そんなことも多分原因になったんだ。
愛情表現とか、多分そこらへんがわからなかったんだと思う。
恋人だからエッチする。そんなことを付き合い始めて少し経ったあたりから言い始めた。
真姫『にこちゃん……えっち、したい……』
お風呂に入ったあと、バスタオル姿、そして顔を赤らめながら真姫ちゃんは私を誘ってきた。
すっごく可愛かった。
"昔"のくせでつい襲ってしまいそうになったが、なんとか抑えた。
まだエッチなんて早い。真姫ちゃんのためにも。
――少なくとも、私が好きになった真姫ちゃんはそんな真姫ちゃんでは、ない。真姫ちゃんは変わってしまった。多分……いい意味で、なんだと……おも、う……。
軽々しくエッチがしたいだとか、キスがしたいだとか……真姫ちゃんらしくない、といえば頷いてしまう。
にこ(……こんなこと、思っちゃダメなのにね)
にこ(てかたまたま初恋人が私だったから良かったけど、これ男とかだったら確実に悪い方向に堕ちそうよね……)
真姫「……?」
にこ「なんかそんなイメージ」
真姫「なにが?」
にこ「いや、なんでもないわ」
にこ「とにかく、エッチなんかしなくても恋人は恋人なんだから、ね?」
真姫「……にこちゃんがそういうなら」
にこ「……好きだよ」ギュッ
真姫「うん……」ギュッ
ガチャ
希「……」
絵里「……ぁ」
にこ「あ……」
真姫「?」
希「お幸せにー」
絵里「お幸せにー」
にこ「ちょ、ちょっと待て!!」
絵里「なに……?」
にこ「ななななんでどこか行くのよ」
絵里「だって、どう考えても私たち邪魔みたいだし……ねえ希」
希「そうやねー」
真姫「……」///
にこ「ごめん! だからそんな目で私たちを見ないで!」
希「えー? どうしよっかなぁ」
にこ「もう……」
絵里「人目をはばからずイチャイチャしすぎなんじゃないのー?」
真姫「だってにこちゃんのことが好きだから……」
絵里「……」
絵里「そういえばどっちから告白したの?」
真姫「私からよ」
絵里「へー、凄いわね」
にこ「そんなこと言わなくていいでしょ」
真姫「そ、そうね……」
絵里「あの真姫がねぇ」ニヤニヤ
真姫「ぅう」
希「あはは真姫ちゃんもやるねー」
にこ「もうからかわないの」
絵里「にこはいつから好きだったの?」
にこ「え……?」
絵里「?」
にこ「あ……えっと」
にこ「け、結構前からよ!」
希「……そうなんや」
にこ「……ええ」
希「――良かったね! 真姫ちゃんと付き合えて!」
にこ「ええ! ありがと」
真姫「にこちゃん」///
絵里「また始まったわ」
ガチャ
穂乃果「練習だぁー!!!!」
凛「練習だぁー!!!!」
絵里「ねえ真姫、こんど少し話聞いてもいい?」
◇◇
希「……え、えりち……帰るまで、その手……繋がん?」
絵里「え、え!?」
希「嫌なら……いいんやけど……」
言ってしまった。もうありえないくらい顔が暑い。良かった、もう暗くなってて。
絵里「ほほほほ本当?」
絵里「いいの?」
希「う、うん……えりち、なら」
――好きだから。
そんな告白をウチからは出来ない。怖い、関係を壊すのも、えりちがなんて言うかなんて思うのか。
でも今の関係には満足している。えりちと適当に話して笑い合う日々にも。
ならなんでウチは手を繋ぎたいだなんて。
にこっちと真姫ちゃんに影響されすぎたんかな……。
顔を背けていると、えりちの手がウチの手を掴んでいた。
絵里「こここここれでいい?」
暗闇でえりちの顔は見えないけれど、少し緊張しているようだ。
手を繋ぐというには不相応なほど強く握ってきて、それは少し湿っている。
希「……」
希「うん……」
幸せだ。
好きな人と手を繋げるなんて。
にこっちはもう真姫ちゃんと幸せになっているし、ウチも幸せになりたいなーなんて。
絵里「……汗かいたらごめん」
希「ウチも……」
えりちは優しいからウチの要望に応えてくれたんだ。ウチの一番……そう一番……の、とも……だち。一番……一番。
絵里「ふふ希が手を繋ぎたいだなんて」
希「たまにはいいやん?」
手を繋ぐことにも少しだけ慣れて冗談も、言えるようになったかな?
絵里「じゃ私はここで」
希「あ、うん」
えりちの手が離れる。
握りしめられていた手がすっと解放される。
――あれ、なんだろ、寂しい、すっごく。
いつも途中まで一緒に帰って、背中を見ているのに、なんだろう今日はすっごく寂しい。
希「……好き……えりち」
声が自然と出ていた。
そしてその声は振り絞ったはずだったのに、えりちは振り向かない。
ささやき程度のレベルだったんだろう。
でも分かった。
希「ウチ、全然満足してないんや……」
えりちの温もりが少しずつなくなっていく。
嫌だ……嫌だ……。
そう思いながらえりちの背中を見つめていると角を曲がって、見えなくなった。
手に残った温もりも消えていた。
◇◇
「いつでも戻ってもいいのよ」
希「あははもう、戻りたいなんて思わないよ。うん、じゃあ」
母親と一週間に一回は電話をしていた。
両親が転勤族で、ほとんど一緒には居られない。だからウチは一人暮らししてでも高校は固定したいと思って現在に至るんやけど、それでもお母さんは心配してくれている。
ウチが一人暮らししてるところなんて想像出来ないらしい。
だからせめて祖母の家にとでも、とずっと言われている。
希「ウチにはµ’sがあるし」
自分で呟いて少しだけほっこりする。
希「――にこっちは今幸せ?」
真姫ちゃんと抱き合っていたにこっちの姿が目に浮かぶ。
希「幸せだよね」
携帯電話を置いて、ベッドに寝転がりながらそんなことを思う。ウチじゃにこっちにとって、役不足やったかなあなんて。
羨ましいな、好きな人と好きって言い合えて。
……帰ってきてからえりちのことが頭から離れない。
好き。好き。好き。
希「えりち……」
恋人になりたい、付き合いたい、想いを伝えたい。
希「でも……どうすればいいん?」
希「あ、ネットで調べてみよ」
こんなことネットで調べてもどうにかなるだなんて思わないけれど、今のウチはそうするしかない。
希「――素直に想いを伝えればいい……そんなの出来たらしてるって!!!」
希「もう……どうしよ……」
ネットの情報はほとんど使い物にならなそうだった。そりゃそうだ。恋愛なんてケースバイケース。当たり前。
希「……お!」
希「誰かに相談する……」
希「相談……やっぱりµ’sのメンバー?」
希「穂乃果ちゃん海未ちゃん凛ちゃんはもう一瞬で却下。あとはことりちゃん花陽ちゃん、にこっち……」
そうして考えたらもうあの人の顔しか浮かんで来なかった。
希「にこっち……」
希「うん、にこっちがいい!」
希「信頼出来るしね!!」
希「今真姫ちゃんと付き合ってるんやからそういうことも敏感そうやし! にこっち相手に練習とかさせてもらおかな?」
希「にしし」
少しだけ希望が出てきた。にこっちに相談すればなんだか解決しそうな気がする。
◇◇
真姫「……話ってなによ」
絵里「……にこ以外にはいつも通りなのね」
真姫「どういう意味?」
絵里「……いや、なんでもない」
真姫『にこちゃん……好き……抱きしめよ……にこちゃん』
いつだったかも部室で真姫が猫撫で声を上げながらにこに迫っていたことがあったのを思い出した。
真姫ってあんな声出るのねと素直に思った。目の前でクルクル髪の毛を弄りながらつっけんどんとしている真姫とは正反対の真姫がいる。
真姫「早くにこちゃんに会いたいんだけど」
私の目から見ても真姫は変わったと思う。それがいい意味でなのか悪い意味でなのか、多分いい意味なんだと思う。
恋愛は人を変える。なんて言うけど真姫を見ていると本当にそうね。
にこの前じゃまるで子供みたい。
絵里「――ああごめんなさい。で話って言うのは……」
絵里「……その、告白ってどうやって、やるの……?」
真姫「はあ?」
絵里「……」
真姫「どうしたの?」
絵里「そ、その……好きな人が居て……」
真姫「本当に!? どこの高校? やっぱりイケメンなのかしら」
絵里「あ、いや……男の子じゃなくて……」
真姫「……?」
絵里「とにかく、告白! 告白ってどうやるのか教えて!!!」
真姫「知らないわよ。にこちゃんの時は言い争いしてたら勝手に私が告白してた、よく覚えてない」
絵里「なによそれ……」
参考にならない。でも……でも。
絵里「あなた達らしいわね」
自然に告白が出てくるとかなんて羨ましいんだろう。
女の子同士というタブーすら関係なくて、お互いの想いを伝えられる――本当に羨ましい。
勇気が、欲しい。
真姫「――誰に告白するか知らないけど、絵里のこと振る人なんていないんじゃないの」
絵里「……真姫が私に告白されたら?」
真姫「断る」
絵里「ほら……」
真姫「にこちゃんがいるんだから当たり前でしょ」
絵里「真姫がフリーだったら?」
真姫「断る」
絵里「なんで即答なのよーっ!」
絵里「あーもうどうしよー!!!!」
真姫「うるさい」
絵里「真姫ぃ……助けてー!!」
真姫「はいはいじゃあね」
真姫に泣きつくが真姫は私を振り払ってどこかへ行ってしまった。
私は下級生の子からよくお手紙を貰ったりする。その子達も私みたいな気持ちなんだろうか。
タブーを犯すことになんの躊躇もないのだろうか。
絵里「……私も、頑張ろう、かな……」
◇◇
にこ「で、恋愛相談てなに?」
希「……えと、その……えと」
にこ(呼び出しておいてモジモジすんじゃないわよ……)
希は私を空き教室に恋愛相談や! とか言って呼び出した割には自分からは何も話さない。
にこ(希って基本的に受け体質なのよねー)
にこ「絵里とのこと?」
私がウンザリしてもう分かり切っていることを聞くと、希はびくんと身体を震わせた。
希「な、なんでわかるん?」
にこ「いやばれてないと思ってたの?」
希「――あはは……流石にこっち」
にこ「一緒に居た時間は長いんだからそのくらいまだ分かるわよ」
希「で……えりちのことなんやけど……」
希「わわわわ……わた、し……えりちのことが好き……なんだ」
おーい関西弁取れてるぞ。
まあそれだけ真剣なんだろうけど。
にこ「そう」
希「……」
にこ「それで?」
希「告白したい」
にこ「ふーん」
希「ふーんて、にこっち酷いよ……」
にこ「いや……すればいいんじゃない?」
だって確実に成功するでしょうし。
希「やり方わかんない……」
にこ「……」
希「だから、その……えりちとのことシミュレーションして……私がリードしてデートとかして告白する練習がしたい、の……」
にこ「――関西弁」
希「あ……ぅぅ」
ちょっと可愛い。
にこ「で、どういう意味?」
希「ウ、ウチも受け身になってるだけじゃダメだって気がついて……にこっちお願い! デートと告白の練習相手になって!!!」
にこ「……」
希「こんなこと頼めるのにこっちしかおらんの!! ね?」
にこ「いや……希さ――私と付き合ってた頃に散々デートとかしてたじゃん」
希「それとこれとは別! 全部にこっちにリードされてたし! 今度はウチから告白したいんや」
にこ(まあ……絵里もなかなか受け気質っぽいしね……)
にこ「でも私真姫ちゃんがいるんだけど……」
希「……そっか……」
希「そうだよね……真姫ちゃんにデートの練習とかしてるとこ見られたら勘違いされてまうよね」
にこ「……」
希「真姫ちゃんには言ったの? ウチとの関係」
にこ「――言わないわよ。二人だけの秘密だったでしょ」
希「そっか……」
希「……」
にこ「……」
にこ「……ああもう分かったわよ。やるわよ!」
希「?」
にこ「練習よ練習!!」
希「本当?」
にこ「希の頼みだもん、前に色々助けて貰ったしね」
にこ「その代わり真姫ちゃんには内緒にしてよ。まあ別に見られても大丈夫だと思うけど」
希「うんそれは大丈夫! ありがと、ありがとねにこっち!!」ギュッ
にこ「――んもう……はぁ……仕方ないわね……あくまで練習よ?」
こうして希が絵里に告白する為の恋愛シミュレーションが始まった。
今回はここまで。また長期戦になりそうです……。
にこ「人という漢字」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1403687901
少し題材被り気味なので、ちょっとこれと似たような描写も増えるかも、しれません、申し訳ありません。
ゆっくりと投下して行こうかと思いましたが、読みやすさ等も重視して、書き溜めてから投下していくこととします。
少々お待ち下さるとありがたいです。
◇◇
にこ「……希とデート……か」
思えば懐かしいことばかり。
当時アイドル研究部のしがらみやらなんやらでほとんど孤立していた私に優しく話しかけてくれたのは希だった。
にこ「……よく告白出来たな……」
にこ(……アドバイスなんて出来なくない?)
にこ(もう絵里も希のことを好きだってことを……)
にこ(それじゃ希のためにならないわよね)
にこ(うーん……)
真姫「にこちゃん」
にこ(希どこに連れて行ってくれるのかな。あいつのことだから……)
真姫「にこちゃん」
にこ(まさかデートの練習だなんて……告白の練習とかどうするのかしら)
真姫「にこちゃん!!!!」
にこ「はいっ!!」
にこ「……」
真姫「……無視しないでよ」
にこ「ごめんごめん」
にこ(希のことばっか考えてた……。全く変なこと相談してきて……)
真姫「今度私にも料理教えてよ」
にこ「えー、真姫ちゃんは別に料理なんて作る必要ないじゃない」
真姫「……にこちゃんに作ってあげたい……」
にこ「……」
にこ「いいわよ、でも真姫ちゃんに出来るかな?」
真姫「出来るわよ!」
真姫「じゃ、お手本食べさせて」
真姫ちゃんは手を膝に置いて少し顎を上げながら口を開いた。
なんだか猫みたい。
真姫「あーん」
口を開く真姫ちゃんの中に鶏の唐揚げを入れてあげる。
真姫「えへへ……美味しい」
にこ「ありがと」
真姫「好き」
にこ「本当……どこでも言うのね」
真姫「言葉にしないと伝わらないもん」
にこ「あはは……」
少し素直すぎる。最近はそう感じるようになってきた。
なんだか私が真姫ちゃんを変えてしまっているような。
にこ「さ、そろそろお昼休み終わるから早く食べましょ」
真姫「もっとにこちゃんと一緒に居たい……」
なんだか幼児退行したかのような真姫ちゃんの態度に少しイラっとして、頭を軽く叩く。
真姫「あう」
にこ「早くしなさい」
真姫「はいはいー」
◇◇
希「ねーねーにこっちにこっち! いつにする!?」
にこ「なによ、そんなくっつかないで」
希「えー、いいやん、もう練習は始まっとるんよ!」
にこ「いや始まってないでしょ」
希「――というわけで」
にこ「意味がわかんない」
希「明日土曜日やし、どう!?」
にこ「……練習終わったらでいい?」
希「今予定建てたいの!」
にこ「んー……じゃあ帰ったら電話するからそれでいい?」
希「いいね、えりちの時もそうしよっかな!」
にこ「あはは……いいことね」
にこ「もし仮に絵里から告白されたら?」
希「途中で遮ってウチから告白する!」
にこ「なによそれ」
希「雰囲気があればいけそうな気もしないではないんやけど……」
にこ「私が手伝えばいいんじゃない?」
希「でも失敗したくないし……」
にこ「あーはいはい、分かったわよ。じゃあ今日電話するから!」
希「うん!」
◇◇
にこ「はあ……電話しないとね」
にこ「もしもし」
希『あ、もしもし!』
にこ「で明日どうすんのよ」
希『えっとにこっちはどこ行きたい?』
にこ「……やる気あるの?」
希『え? あ、えっと……ごめん』
にこ「あんたがリードするって言ってたじゃない」
希『じゃあね……あ、アイドルショップでも行く?』
にこ「……絵里とアイドルショップに行くの?」
希『……』
希『助けて……』
にこ「……はぁ……なんか絵里が好きそうなとことか知らないの」
希『……』
にこ「……普通にどこかショッピングでもすれば……?」
希『そ、そうやね!』
希『あ、表参道とか好きだって言ってた!!』
にこ「表参道……なんかあいつらしくてイラつくわね」
希『あはは……』
にこ「私表参道なんてほとんど行かないからしっかりリード頼んだわよ、希」
希『あ……』
にこ「ん?」
希『ウチもほとんど行ったことないや』
にこ「電話切っていい?」
希『待って待ってー! ね、頑張るから!』
にこ「……分かったわよ。じゃあ駅のとこ集合で」
希『にこっちに相談して良かった』
にこ「あんたのことくらいなんでも知ってるわよ
にこ「じゃ」
ブチッ
にこ「はあ表参道ねえ。私知らないんだけど。絵里の奴リッチねえ」
にこ「なんかイライラして来た」
にこ「……あんな風に言われたの、初めてかも」
にこ「昔はほとんど私が誘ってたし」
にこ「……」
にこ「……真姫ちゃんと電話しよ」
プルルルルルルルルルル
真姫『どうしたの?』
にこ「なんでもないんだけどさ」
真姫『え?』
にこ「なんか声が聞きたくなって」
真姫『珍しいわね』
にこ「いっつも真姫ちゃんがこえ聞きたくなったのーとか言って泣きついてくるもんね」
真姫『いいじゃない別に。私の気持ち分かったでしょ?』
にこ「どうかなー」
真姫『もう!』
真姫ちゃんの声が聞きたくなるなんて、少し珍しい。
もちろん好きなんだけど、あんまり電話とかするタイプじゃないし、それにいつでも会えるし必要ないものだと思っていた。
どうしてだろう。
いつもは希と電話した時みたいにすぐに切ろうと頑張るんだけど、今日はそんな気分にならなかった。
真姫『……好き』
にこ「そればっかりね」
真姫『好きなんだもん』
真姫『言葉にしないと伝わらないってのは私が一番良く分かってるから』
にこ「そうね……」
気がつけば一時間くらい電話をしていた。
そのうち真姫ちゃんが眠たそうな声を上げて、電話は打ち切られることになった。やっぱり珍しい。
真姫ちゃんから切るなんて結構久しぶり。
にこ「……なんか眠くないなー」
にこ「明日の練習にも響くし、頑張ってねよ」
◇◇
にこ「……疲れた」
希「そんなこと言わんで!」
にこ「ていうかあんたと電話してる時駅集合って言ったけど、完全に意味なかったわね」
希「そうやね」
にこ「でもあんたと帰るなんて言うと不自然だからかなり気を使ったのよ」
希「ウチだってえりち見送ってから来たもん」
にこ「そこは徹底するのね」
希「そいえば昨日初めてえりちと手を繋いだんよ!」
にこ「初めてなのね……」
希「……緊張しすぎて死ぬかと思ったわ……」
にこ「はいはい」
希「もう、じゃあ早速いこー!」
にこ「リード頼んだわよ」
希「まずはお昼食べようか!」
にこ「そうね」
希「んーどこがいいかな」
お互いに慣れていない原宿の景色にキョロキョロとしながら進んでいく。
横に並んでいるけれど、少しだけ希が前。
にこ(あ、あそこ良さそう……)
今は希のリード、希の練習。私は口を出しちゃいけない。
ぐっと言葉を噛み締めたところで、希が声を上げながら指を指す。
希「あそこがいいよ!」
にこ(私がいいと思ったお店……)
希「嫌?」
にこ「ううんすっごくいいと思う」
希「いこ!」
希は私の手を摑んで、ぐっと引く。
にこ「ちょっ!」
希「ふふ」
希に手を惹かれながら顔を見ると、なんだか私が知っていた頃の希ではないような気がした。
にこ「……」
なんだか複雑な気分。
なにが希のことならなんでも知っている、だ。
もう希自身も成長していて、前と同じ位置でくすぶってなんかいないんだ。
希「おー、オシャレ」
オープンカフェみたいな感じのお店の席に座り、メニューを確認する。
にこ「ここどっちかって言うとランチってよりも喫茶店的なやつなのね」
希「そうやねぇ」
希「まあ甘いものでもランチになるし」
にこ「まあそうだけど」
にこ「何がいいかなー」
やっぱり大体いいお値段するのね。普段こんなとこで遊ばないからわからなかったわ。
にこ「これがいいかな」
希「そんなの食べれるの?」
にこ「多分……」
私が選んだのは少し前に話題になってたパンケーキ。
希「うーんじゃあウチもそれにしよ」
真姫ちゃんとのデートでは出かけないからこういうものを食べる機会がなかったのもあった。
真姫ちゃんとのデートでは真姫ちゃんの家に私が行って終わりだもんね。いわゆるお家デート的な。
希「それにしてもこんなオシャレなとこでリード出来るんかな」
にこ「なんでそんなに自分からリードしたいの?」
希「うーん……」
にこ「絵里にリードしてもらえばいいじゃない?」
希「ウチも変わりたいって言うか……」
にこ「……?」
希「ウチが流されてばっかで、弱かったから、にこっちと別れたんだと思うし」
にこ「……」
希「もう、あんな気持ちはしたくないから。ウチは変わりたいんよ」
希「自分の気持ちに正直に生きたい」
希は私を見てはっきりと言った。そんなこと……そんなこと言われたら。
にこ「……もう変わってるわよ、あんた」
希「え……?」
それはµ’sのお陰なのか、私と別れたお陰なのか、絵里のお陰なのか。
今となってはもうわからない。
◇◇
希「今日はありがとね、にこっち」
にこ「ええ」
希「まだまだ練習が必要やねー」
にこ「もういらないでしょ」
希「えー?」
にこ「十分リード出来るわよ」
希「なに、にこっちは嫌なん?」
にこ「……嫌よ。真姫ちゃんとデートしたいし」
希「……」
なんで、なんでこんなことを言ってしまったんだろう。
希の顔色を伺うとあからさまにテンションが落ちている。
にこ「あ……」
希「大丈夫、にこっちはそんなこと言う人じゃないってことくらい知ってるよ?」
希「はっきり言えば言うほど、それも嘘だってこと」
希「だから似たもの同士の真姫ちゃんと惹かれあったんかなー?」
にこ「なによそれ」
希の言っていることは事実だった。言った後で後悔するってことが結構ある。
それに真姫ちゃんを好きになったのだって、他愛ない言い合いとかそういうのが好きだったから。友達としての真姫ちゃんとの空間が好きだったから。
希「にこっちのことはなーんでも知ってるよ」
にこ「っ……」
希は私が知っていた頃とは違う。でも私は……。
にこ「ばか……」
希「んー?」
にこ「馬鹿って言ったのよ!」
希「なにそれ!」
にこ「もう帰るわよ!」
希「怒らんでってー」
希「――また今度デートしようね!」
にこ「……」ズキズキ
◇◇
にこ『……』
希『どうしたん、呼び出して』
にこ『……希、突然で悪いんだけど』
にこ『――私と別れて』
希『は?』
希『ど、どうしたん急に』
にこ『……私といたら希まで変な目で見られるわ』
にこ『もうアイドル研究部なんて私一人よ。もう仲間なんていない』
希『……だからウチがにこっちのそばに居てあげるって!!!』
にこ『――私知ってるの、希が色々手回ししてくれて、私に他の人の悪意が及ばないようにしてくれてること』
希『そ、そっか……』
にこ『ありがと。でも、このままだと希まで標的になっちゃうわ。これは希の為なの』
希『ウチは、別に……!』
にこ『今まで、ありがとね』
希『――ウチ、にこっちのこと好きだよ』
希『にこっちは、にこっちは、ウチのこと嫌いになったん?』ポロポロ
にこ『……ええ』ポロポロ
希『じゃあなんで泣いてるん……!』
希『どうして別れる必要、なんか!!!』
にこ『嫌いになったって……言ってるでしょ!!!』
希『それならなんでウチの為だなんて!!!』
にこ『うるさいっ!! うるさい、うるさい……!!』
希『ずるいよ、そんなの!! 勝手に告白してきて、勝手にウチの為とか言ってフるなんて!』
にこ『……』
希『……』
希『でも……』
希『……でも、にこっちがそうしたいって言うなら……ウチはそれに従うしか、ないんよ……?』ポロポロ
にこ「っ!?」バッ
にこ「はぁ……はぁ……最悪」
久しぶりに、最悪な夢を見た。
希と別れた時のことは今でも鮮明に覚えていて、時々夢に見たりする。
にこ「あいつとデートの練習なんてするから……」
にこ「……今日は練習休みだっけ」
にこ「また寝ると夢見そうだし」
希『にこっちはウチのこと、嫌いになったん!?』
にこ「……」
にこ「あの時から私の気持ちはバレてて隠せてなかったのね」
にこ「希はどんどん進んでいるのに」
にこ「――私はあの時から止まったまま」
◇◇
にこ「調子はどう?」
希「3回も手を繋いだの!」
希「えりちのこと考えてると本当に幸せで」
にこ「まあ、まあいいんじゃない」
希「えりちと付き合えたらどうしよう」
にこ「……っ」ギリリ
希「?」
希「――じゃあにこっち、またデートしようよ」
にこ「……」
希「にこっち?」
にこ「……///」
希「なんだか最近にこっち変だよ」
にこ「うるさい!」
にこ「デートの練習でしょ、するわよ!」
希と初めてデートの練習をしてからすでに三週間が経過していた。
デートの練習という名目でここ三週間で希とは色々なことをしてきたが、最近私は自分がわからなくなっていた。
なんだか希といると胸の奥が熱くなる。
お互い好きだった状態で別れたけど、引きずったりすることはなかったのに。
にこ「わかんないよ……」
絵里の話をされると、胸が締め付けられるような感覚に陥る。
薄々勘付いてはいる。でも、こんな感情捨てなきゃいけない。
真姫「にこちゃーん」
希「お、恋人のご登場やね」
真姫「あら希も居たの」
希「じゃ、ウチはお邪魔っぽいし、これで。にこっちまた今度ー」
にこ「……」
真姫「全く希ったら……にこちゃん?」
希め、人の気も、知らないで……。
にこ「真姫ちゃん」ギュッ
真姫「ど、どうしたの」
希に対してそんな感情なんてもう無い。半年以上前に消し去ったんだ。
今は真姫ちゃんが恋人。
にこ「好き、好き好き好き」
自分の中の何かを吹き飛ばすように真姫ちゃんに抱きつく。
真姫「……最近変よ」
にこ「今度の花火大会一緒にいこ」
真姫「そんなのあるの?」
にこ「川沿いで大きいのあるじゃない」
真姫「ああ」
真姫「もちろん!」
希「ラブラブやねえ……ふふ」コソコソ
穂乃果「なんだか最近にこちゃんと希ちゃん仲いいね!」
にこ「はあ? なによいきなり」
そりゃ仲はいいよ、昔は恋人だったんだから。
ことり「確かにそうかも」
真姫「……」
にこ「ちょっと……そんなこと言うとまた真姫ちゃんのご機嫌がナナメになっちゃうじゃない」
真姫「私が子供だとでもいいたいの」
にこ「完全に子供よ」
真姫「なんですって?」
にこ「はいはい、大人大人ー」
真姫「怒った! もう怒った!」
穂乃果達にはわかるのかな。微妙な私と希の中の雰囲気の違いが。だとしたら凄い。
◇◇
希「海の匂いー!!!!」
にこ「はしゃがないでよ」
希「たまには水族館てのもいいやろー!?」
にこ「まあ、そうね」
希「早速入っていきましょー」
最近はデートの日だけを希と相談して、後は希についていくだけというのが多かった。
最初の頃みたいに私がアドバイスする必要なんてもう無い。
にこ「……」
少しだけ怖かった。もう練習という名目でデートをする必要なんてないんだ。
最初は嫌々やっていたのに、最近ではデートのお誘いがある度に嬉しくなっている自分がいた。
にこ「……」
ダメだって、分かっているのに。
今回も希に駅に来てと言われ、気がついたら水族館の前だった。
入場料を支払って、ブルーで染められた館内に入っていく。
にこ「涼しいー」
希「最近あっついからねー」
希はんっと深呼吸をした後、私の手を無言で摑んできた。
にこ「……///」
希「にこっち、もしかして照れてる?」
にこ「そんな訳ないでしょ!!」
希「そっか、じゃ」
希はニヤリとして、私の身体を引き寄せた。
にこ「な、腕組む必要なんてないでしょ!?」
希「いいやんいいやん」
にこ「うぅ……///」
やだ、顔が暑い。照れてる? ダメ、私には真姫ちゃんがいる、のに。
少しずつ、少しずつ、私の中で希が大きくなっていく。
希は私との時は手を繋いだりすることに全く躊躇はないようだった。
それはプラスではなく、マイナスのこと。
希は本来奥手でそういうことは全く出来ないはず。だから絵里と手を繋ぐことが全然出来ない。
にこ(私は意識されてないってこと……)
当然のこと。分かっていること。あくまで練習、私は絵里への、踏み台。
希「……なにあれ」
にこ「……マグロ?」
希「マグロって飼えるの?」
にこ「さ、さあ……」
希「おいしそう……」
にこ「あんたね……」
希「だって絶対おいしいって!」
にこ「最近はサーモンの方が人気あるっていうわよ」
希「ま、まあそうだけどぉ……」
にこ「マグロっておよぐの早いのね……!!!」
希「すごいなぁ……」
にこ「あっちにはペンギンいるって!」
希「ペンギン好きなん?」
にこ「可愛いじゃない」
希「なんだかにこっちペンギンみたいやね」
にこ「なによそれ」
◇◇
にこ「海かあ」
希「砂浜ちょっと暑いね」
隣接する砂浜に出られるということで、水族館を堪能した後、希と砂浜に来ていた。
夏休みに入り立てということもあって人はとても多い。
希「いつか海に来たいね」
にこ「確かにね」
二人で砂浜を歩いて、日が傾き始めた頃に誰もいない岩部に辿りついた。
にこ「ここって来て大丈夫なの」
希「大丈夫やってー」
人気の少なくなった海岸はなんとも神秘的。波の音だけが私たちの間の音を支配する。
希「……なんか思いだすなあ。にこっちと付き合ってた頃」
にこ「……」
希「本当に好きだったんよ」
やめ、て。そんなこと、言わないで。
にこ「……ごめん」
希「ウチの為だったって分かってるから」
にこ「……」
希「今まで言えなかったけど」
希「――幸せな時間、ありがとね」
浜風が吹いた。希の綺麗な髪の毛を揺らした。
希の笑顔は、もう後ろを向いていないという証明になっている気がした。後ろを向いているのは――私だけ。
にこ「希、私は――!!」
希「あっ、にこっちそろそろやね、着いて来て!!」
にこ「え!?」
◇◇
にこ「これは」
希に連れて来られたところには、大観覧車があった。
にこ「チケットが必要みた――」
私がそう呟くと、ピッと紙が差し出された。
希「ウチが買ってないと思った?」
にこ「……」
いつの間に買っていたんだろう。すごい行動力と計画力。全部計算されてたのかな。
希「さ、乗ろ」
希に手を引かれて、観覧車に乗り込む。一周どのくらいなんだろ、15分くらいかな。
希が窓際に座って、私の手を引いて隣に座らせる。
にこ「……///」
希「……?」
にこ「……本当、なんか希じゃないみたい」
二人だけの空間。文字通り、誰もいない。
観覧車はゆっくりと頂点目指して上がってゆく。
希「綺麗やね」
にこ「うん」
観覧車から右は都市が見えた。普段暮らしているところとは違うけれど、私たちはこういうところに住んでいるんだと実感出来る。
にこ「すごい夕日……」
希「うん……」
手は握ったまま。
太平洋に落ちていく夕日が水面を照らしてユラユラと揺らめいている。岩場でみたものよりもさらに神秘的で……。
そんな景色を眺めていたら、あっという間に観覧車は頂点付近まで到達していた。
もうデートが終わっちゃう。
希「にこっち、ありがとね」
希はこちらを見ずに、景色を見ながらそんなことを呟く。
希「にこっちのおかげで自信が持てた」
希「明日にでも、告白するつもり」
にこ「え……」
希「――だから、告白の練習するね」
希はこちらに向き直り、私を真っ直ぐに見つめてくる。希の背後では夕日が輝く。
にこ「ごくり……」
心臓が高鳴るのが、わかる。
真姫ちゃんに言われた時とは違う、告白らしい告白。
希「あなたのことが、ずっと好きでした。付き合って下さい」
にこ「っ……」
希「……にこっち?」
私はもう何がなんだかわからなくなっていた。場の雰囲気に飲まれているとはまさにこのことなんだろう。
にこ「こっちの練習は、いいの?」
私は目を閉じて、少しだけ唇を前に突き出す。
希「……」
目を閉じていても、相手が近づいてくるのが、わかる。
希の匂いが近づいてくる、心臓が破裂しそうだ、希の息が少し顔にかかる。
希にキスをされたことはなかった。全部自分からだったから。
希と、希とキス――。
希「ダメや」
ふっと希の気配が遠ざかった。私は驚いて目を開ける。
にこ「なんで?」
希「これは練習とかそういう軽い気持ちでしちゃいけないこと」
希「――にこっちは真姫ちゃんのものやからね」
にこ「っ……!!」
希の一言で全て我に帰る。私は何をしていた?
真姫ちゃんがいるのに、キスを求めた?
私は……。
にこ「そ、そうよね! ごめんね、私ったらなにしてんだろ、あはは」
希「……」
にこ「頑張りなさいよ、あんたなら絵里を落とせるわ」
希「落とすって……」
にこ「どこで告白するの」
希「今日と同じプランで行こうかな。どうやった?」
にこ「うん、すっごく良かった」
希「良かった……」
希「今まで、ありがとね」
希はまた笑った。
――そっか、終わったんだ。
こうして私と希の恋愛シミュレーションは終了した。
◇◇
にこ『この映画見ない?』
希『男の方が死んじゃうやつやっけ』
にこ『そうそう!』
希『くす……にこっち楽しそうやね』
にこ『希と二人きりよ? 楽しいに決まってるじゃない』
希『……///』
◇
にこ『あ、この服かわいーなー』
にこ『どう思う?』
希『にこっちならなんでも似合うんやない?』
希『私は胸のとこが……』
にこ『嫌味?』
希『そうかも』
にこ『む……』
希『冗談やって。にこっちは今のままがかわいいんやから』
にこ『もう……///』
◇
にこ『クレーンゲームしよう!』
希『ウチ、したことないよー?』
にこ『じゃあ私がとってあげるわよ』
にこ『なにが欲しい?』
希『えっと……じゃあのクマのやつ』
にこ『随分簡単そうなの選ぶわね。ちょっと待ってなさい』
にこ『んしょ……よっと』
希『おー……』
にこ『もう一個とろう』
希『どうして?』
にこ『よっと……おっけー』
にこ『だって、お揃いになるじゃやい?』
希『あー……ふふにこっちったら。カバンに付けとくわ』
にこ『私も!』
◇
にこ『希ってここでお手伝いしてるのよね』
希『うん』
にこ『そっか、なら一応神の遣い?』
希『どうなんやろ。なんで神田明神に?』
にこ『お願いが、あるの』
希『お願い……』
にこ(アイドルになれますように
希『……何をお願いしたの?』
にこ『秘密……私の夢のことよ』
にこ『でもお願いしたことは、私が死ぬ気で努力しないと達成できないことなの』
希『……そっか』
希(にこっちの夢は……)
にこ『うん……』
にこ『――ねえ、希』
希『ん?』
にこ『――希、私あなたのことが好き』
バッ
にこ「はぁっ……はぁっ……また……」
また、夢を見た。
希との初めてのデート、そして私達が恋人になった日のこと。
にこ「なん、で……」
真姫「大丈夫?」
にこ「ええ……」
真姫ちゃんの家に来て、そのまま眠っちゃったみたい。
人の家で寝るのはなんだか恥ずかしい。
何気なく、携帯を開く。
希からメールが一件。
にこ「……!!」
絵里と付き合い初めたというメールが来たのはあれから三日くらい経ってから、だった。
隣に真姫ちゃんがいるところでそのメールが送られてきて、少しびっくりする。
にこ「――そっか終わったか」
にこ「……」
希が絵里のものになったから、あんな夢を見たのかな。
真姫「最近にこちゃん元気ないわね」
にこ「……うん」
真姫「どうしたの?」
にこ「なんでもない」
真姫「にこちゃんに悩みがあるなら言って欲しい。私はにこちゃんの力になりたい、一緒に苦しみたい」
にこ「……」
私に、そんなに優しく、しないで。
真姫ちゃんはいつでも優しい。私のことを好きでいてくれる。でもその優しさは今ではナイフとなって私に突き刺さる。
真姫「……さっきから誰とメールしてるの」
にこ「いや……」
真姫「……」
真姫「私はにこちゃんを信じてるから束縛とかはしないけどさ」
真姫「ちょっと寂しい」
にこ「……ごめん」
希とメールしていた携帯を充電器に繋いで放置する。
もう自分の気持ちに、気がつき始めていた。でもそれからは目を逸らす、これに正面から向きあってしまったら全てが崩壊していくようなそんな感じがする。
真姫「明日の花火大会楽しみね」
にこ「うん」
真姫「浴衣着ていく?」
にこ「うん、真姫ちゃんのも着させてあげようか」
真姫「本当?」
にこ「今日だって浴衣持ってきたの、私のやつ。このまま花火行こうと思って」
真姫「わぁすごい! 私も浴衣後で持ってくるわね」
真姫「着せ合いっこなんてなんか恥ずかしいね」
にこ「……そうね」
真姫「……」
◇◇
希「わ……花火大会なんてあるんやね」
絵里「そうなの、一緒に行く?」
希「そう言おうと思ってたの!!」
絵里「なんか真姫達も行くとか言ってた気がするわ」
希「へぇにこっち達に会えるかもしれんね」
希「にこっちには、お礼言わないと」
絵里「なんの?」
希「……あー、実はね。にこっちと練習してたんよ」
絵里「?」
希「えりちに告白する練習」
絵里「どういうこと?」
希「ウチ、デートとかでリードしたり、告白する勇気が持てなくて……だからにこっちとデートの練習として色々行ったりしたんよ」
絵里「そうだったの」
希「あの水族館もえりちと二人きりで行く前に練習したとこなんよ」
絵里「にこと二人きりで?」
希「うん」
絵里「むぅ……まあ終わったこととはいえ、少し妬いちゃうかも?」
希「えりちったら」
絵里「もうにことそんなことしないでよ?」
希「今はえりち一筋やからだいじょーぶ」
絵里「まあ、にこには感謝しないとね。私からもお礼言いたい」
絵里「希の練習ににこが付き合ってくれたから、今の私たちがあるんだし」
希「うん、そうやね」
◇◇
にこ「人多いわねえ」
真姫「そうね」
にこ「もっと近づいて」
真姫「うん……///」
にこ「……」
真姫「この辺りでいいんじゃない」
にこ「そうね」
真姫ちゃんと一緒に花火がよく見える丘の上に場所を取って座る。
にこ「浴衣可愛いね」
真姫「に、にこちゃんだって///」
にこ「あんた……常に顔赤くしてるんじゃないわよ」
真姫「仕方ないでしょ! 本当ににこちゃんが可愛いから!」
にこ「……」
にこ「……まだ日が落ちるまで時間があるわね」
真姫「あ、うん……そ、そうね」
真姫(あれ、普段なら好きって言ってくれるんだけど……)
にこ「なにしてよっか」
真姫「その辺で何か買ってくる?」
にこ「あーそれがいいかも」
にこ「屋台もあるしね」
私達は場所取りだけして、屋台がある方に向かった。
にこ「人多過ぎねー」
真姫「んーはぐれちゃう」
にこ「……」
にこ「あ、あそことか」
真姫(あれ……やっぱり、なんか変。いつものにこちゃんなら手を繋いでくれるのに……考えすぎかな)
真姫「にこちゃん……手繋ご」
にこ「ん? ああ、うん」
真姫ちゃんに言われて、確かにここじゃ手を繋ぎでもしないとはぐれちゃうかもしれないと気がついた。
真姫「……」
にこ「あれ?」
真姫「どうしたの?」
にこ「いや、なんだか金髪が見えた気がして」
真姫「金髪? 外国人の人もそりゃいるでしょうけど」
にこ「いや、絵里に見えたのよ」
真姫「ああ、絵里が?」
真姫「まあ確かにいる可能性もあるかもしれないわね」
◇◇
真姫「そろそろ花火始まるわよ」
にこ「そうね早く戻らないと」
にこ「適当に歩いてたら結構なとこまで来ちゃったわねー」
真姫「少し急ぐ?」
にこ「そうね」
真姫「むぅ……手……」
にこ「あ、ごめんね」
無意識のうちに真姫ちゃんの手を離してしまっていた。
真姫ちゃんはそれに怒ったのか少しだけ頬を膨らませる。
にこ「ごめんて」
真姫「むぅ……やだ」
動こうとしない真姫ちゃんの手を片手で握って、もう片方の手では頭を撫でてやる。
にこ「ね、許して?」
真姫「今回だけだからね」
時々幼児退行化が始まる真姫ちゃんの特効薬はとことん甘やかすことだったりする。
そうすると本来のプライドの高い真姫ちゃんが出てくるんだ。
真姫ちゃんを連れて人混みの中を進んでいく。
にこ「このままじゃ取った席まで間に合わないかも」
真姫「どうするの?」
にこ「……」
にこ「あそこ」
目に入ったのは人通りがなさそうな小高い丘に続く道。
丘に行くには整備された道を行くので、そこは使われていない。
真姫「あそこ行くの?」
にこ「いいから」
真姫「えー」
整備されていないとはいっても雑草が生い茂って、大量の虫がいるとかそういうのではなかった。
ちょっと急な坂があったりするだけ。
にこ「いいルート見つけたわね」
真姫「確かにね」
真姫「でも浴衣だとこれだけでも辛いわ」
もう少しで丘の上に到達するというところで、横道があることに気がついた。
真姫「にこちゃん、そっちじゃないよ」
にこ「よく見て。この先開けてる」
真姫「ほんとだ……」
横道を進んでしばらくすると、遠くから見えていたイメージ通りそこは開けた場所になっていた。
にこ「すごい……」
広くはないが、周りに人は誰もいない。
真姫「こんなところがあるなんて」
上後方を見上げると、ここは丘の岩が少し出っ張って出来たところらしい。私たちが席を取ったところよりは少しだけ低い位置にある。
この場所に驚いていると、花火が上がるひゅるひゅるという音が聞こえてきた。
にこ「あ! ねえ真姫ちゃ――」
ちゅっ――。
――ドンッ。
真姫「えへへ……」
にこ「……」
真姫「花火が上がる瞬間にキスとかしてみたかったの」
にこ「……もう……」
にこ「全くロマンチストなんだから」
真姫「いいじゃない」
にこ「ふふ……」
真姫「こっちに荷物とか持ってこない?」
にこ「そうしよっか」
キャッキャッ
にこ「誰か来る」
にこ「あそこの茂みに隠れよ」
真姫「別に隠れる必要なんか――」
真姫ちゃんを引っ張って、二人で茂みに隠れて様子を伺う。
絵里「ハラショー、いいところ見つけたわね」
希「えりちが屋台求めてはしゃぎすぎたお陰やね。いやせいって言った方がいいんかな」
にこ「希……絵里」
真姫「なんで二人が」
にこ「……」
にこ「……っ」ズキズキ
絵里「本当、希とこんなところこられるなんて思わなかった」
希「ウチのおかげやね!」
真姫「……なんだかいい雰囲気ね」
にこ「あの二人付き合ってるから」
真姫「そうなの!? ついに絵里告白したのね……」
にこ「告白したのは希よ。希から聞いた」
真姫「そうなんだ……絵里から私も話を聞いてて、告白のやり方おしえてくれーとか言われたわ」
にこ「なにそれ」
真姫「まあ私は気がついたら告白した感じあるから何も言えなかったけどね」
にこ「……」
二人を見ていると、本当にいい雰囲気だ。
初めの方はきゃっきゃと騒いで居たが、花火が打ち上げられるたびにきっと、会話はいい意味で減っていった。
隅っこの方にシートを引いて、座り込む希と絵里。
次第に絵里が希の方に頭を傾けて、希の肩によりかかる形となった。
胸が痛い。希が絵里と恋人らしいことをしている。胸が締め付けられる。
実感が湧いていなかった。絵里と付き合い始めたとメールで貰っても。
でもこうして目の前で恋人っぽさを見せられると、実感せずにはいられない。
にこ「……」
真姫「にこちゃん?」
真姫ちゃんも面白がって二人の様子を観察していた。
そうして、希が絵里の顔を固定して、ある行動の前触れを作りだした。
にこ(キスか……)
花火のひゅるひゅるという音が辺りに響き渡る、そうして真姫ちゃんがやったように花が開くと同時に、希の影と絵里の影が重なった。
真姫「わお……」
にこ「っ……っ」
もう見たく無かった。もう戻れない。
自分の気持ちに目を背けているけれど、膨らみすぎて、もう背けるだけの面積も、少なくなってきた。頭に思い浮かぶのは希と付き合っていた頃のこと、シミュレーションをしていた時のこと。
ずっと支えてもらって、私は希のことが――。
にこ「真姫ちゃん――んっ」
真姫「ふぇ……んんぅ……んちゅ……はぁ……」
にこ「真姫ちゃ……ふぁ……んちゅ、ちゅぷ……ちゅ……ッ……んふぅ」
真姫ちゃんに唇と舌を押し付けながら、そのまま押し倒そうかと思ったが地面が土ということに気がついて離れる。
真姫「――はぁはぁ……ど、どうしたの急に」
にこ「……」
真姫「にこちゃん……?」
にこ「――真姫ちゃん、えっちしよ」
こうやって私は目を逸らし続ける。希への気持ちに目を背けることの出来る範囲を無理やり広げるために。
真姫「え?」
にこ「シート持ってきてここでしよ」
真姫「いや、は?」
にこ「いいから」
真姫「ちょっ、待って……」
にこ「気持ち良くしてあげるから」
真姫「そういうことじゃなくて……家がいいんだけど……」
にこ「……」
にこ「いいでしょ別にここでも。早くえっちしよ」
湧いてくる雑念、迫ってくる心の闇を振り払う為に。
私は真姫ちゃんに抱きついて、首筋に舌を這わせる。
真姫「んっ……ちょ」
真姫ちゃんが身体を震わせたのを確認して、そのまま強引に胸に手をやる。
真姫「にこちゃ……本当に……ん……家でなら、いくらでも、やるからぁ……」
希のものより小さい胸の感触が手に伝わってくる。下着をつけていないので、それもダイレクトに。
真姫ちゃんの息が少しずつ荒くなっていく様を見るのが心地よい。
にこ「ふふ……」
真姫「んゃぁ……」
にこ「二つ硬いのが手に当たってるよ」
真姫「ふ……ふ……希達にバレたらどうするの……」
にこ「いいじゃない別に」
真姫ちゃんの顔が歪むのが最高に私の心を満たしていく。
もっとめちゃくちゃにしてやりたい、そう思って浴衣の中に手を入れようとした時――。
希「――なにしてんの」
絵里「……」
真姫「っ!?」
――背後から希の声が、聞こえた。
真姫ちゃんが私の後ろを見て、目を見開く。ああ見つかっちゃったか。
にこ「……」
希「あ……ご、ごめん……」
絵里「……」
にこ「――変なとこ見せて悪かったわね」
希達に向き直る。
絵里が一歩引いた目で私達を見ていた。
真姫「にこちゃん……」
にこ「ごめんね真姫ちゃん、無理やりして」
真姫ちゃんの胸元を整えてやる。
絵里「全く……花火大会に来てまでやることなのかしら」
にこ「うっさい……」
希「……」
希「にこっち達も来てたんやね」
にこ「……」
希と絵里は今でも手を繋いでいる。
にこ「あんた達こそ」
希「えへへ……」
真姫「まさか二人がそんな関係になってるだなんて知らなかったわ」
絵里「つい最近だからね」
希と絵里はくっついて、見せつけるようにしている。イライラする、希の隣に立っている絵里に。
なんで協力なんてしちゃったんだろ。
にこ「……」
希「にこっち……なんか変だよ?」
にこ「……うるさい」
希「え……」
にこ「うるさいって言ったの! 行こ真姫ちゃん!!」
ダッ
真姫「あ……うん」
真姫「ごめんなさい」ペコリ
絵里「いいのよ」
真姫「最近にこちゃんが変で……さっきも急にえっちがしたいとか言い出して……今までしたことなんて無かったのに……」
絵里「えええええっち!?」カァァアアアア
希「……」
希「何か不安なことでもあるんかな」
真姫「……私がにこちゃんのこと支えてあげないと。じゃあね、二人とも楽しんでね」
絵里「え、ええ」
◇◇
にこ「……」
真姫「大丈夫?」
にこ「……うん」
花火大会が終わった後、家には帰らずにそのまま真姫ちゃんの家に泊まることにした。
一人でいると色々考えてしまいそうだから。
少なくとも今は真姫ちゃんといれば真姫ちゃんのことを考えられる。
お風呂に入って、真姫ちゃんもちょうど上がってきたところだ。
にこ「今日はごめん……」
真姫「いいわよ別に」
にこ「……」
真姫「んっ……」チュッ
にこ「……」
真姫「するんでしょ、えっち」
真姫ちゃんが私の耳元でそう囁いた。
私の何かが吹っ切れた。
にこ「真姫ちゃん」バッ
真姫「強引なんだから」
忘れたいことがある時は身体を重ねれば忘れられる。ずっとそうやってきた。ずっと……ずっと――希との時も。
ダメだ、希のことは忘れて、今は真姫ちゃんに。
にこ「めちゃくちゃにしてあげる」
真姫「んっ……」
にこ「ふふ」モニュモニュ
真姫「ん……」
希『んぁ……にこっちぃ……ふぁ……ぁぁん』
にこ「出て、くるな……」
真姫「んっ……ちょっと乱暴よ……」
にこ「ご、ごめん」
にこ「……」サワサワ
真姫「ふぁ……にこちゃん手がえっち……」
にこ「えっちなことしてるんだから当たり前でしょ」チュッ
にこ「ここ、もう硬くなってるね」
真姫「言わ、ないで……」
浴衣の時と同様、服の下から主張を始めている真姫ちゃんの突起を撫で回す。
真姫「ん……」
にこ「気持ちいい?」クリクリ
真姫「うん……」
真姫ちゃんが気持ちよくなれるように適度に焦らしながら、刺激を与える。
真姫ちゃんの息が荒くなってくるが、声は依然としてほとんど出さない。
にこ「真姫ちゃんの可愛い声聞きたいな」
真姫「ぅん……恥ずかしいよ」
にこ「いいよ、私の前では全部見せて」クリクリ
真姫「……」
にこ「……気持ちいい?」
真姫「うん」
なんだろ、反応が薄い。
私が下手なのかな。
にこ「……んっ、まきちゃ……ふぁ……んちゅ、ちゅぷじゅ……ッぷ」
真姫「ふぁ……じゅ、ぷ……ちゅぷ、ちゅぷ」
にこ「しあわせ……」
真姫「うん……」
にこ「服脱がせるね」
真姫ちゃんのパジャマのボタンを外して、上半身と下半身のズボンも一気に下ろす。
真姫「……///」
にこ「綺麗な身体……」サワサワ
真姫「ひゃ……」
ほとんど無駄のない太ももをさする。すっごい細い……すべすべしてきて気持ちがいい。
上半身に目をやると、真姫ちゃんの二つの突起が限界まで膨れ上がって、刺激を待っているように見えた。
にこ(感じてくれてはいたのかな)
真姫「……」
にこ「……」
真姫「にこちゃん?」
にこ「あ、うん」
私が何もしないと、真姫ちゃんは何もアクションを起こさなかった。
希以上に受け体質なのかもしれない。
にこ「ここ、すっごくおっきくなってる」
にこ「触って欲しい?」
真姫「うん」
にこ「……」
にこ「……」コリッコリ……キュッ
真姫「ふぁ……」
にこ「ちゅぷ……んっ、真姫ちゃんのおっぱい……おいひいよ」
真姫「恥ずかしいよ……ん……」
にこ「ちゅぷ……ちゅーちゅっー」
真姫「出ないわよ……ん……」
にこ「ぷはぁ……跡ついちゃったね」
真姫「……」
やっぱり、反応が薄い。おっぱいはあんまり感じないのかな。
真姫ちゃんの太ももを掴んで、開かせる。
真姫「きゃ……」
にこ「ここ、凄いことになってる。もう染みになってるわよ?」
真姫「うぅ……」
にこ「感じちゃった?」
にこ「私のこと好きすぎてこんなになっちゃったの?」
真姫「ち、違うわよ///」
にこ「へぇ……」グニグニ
真姫「んぅ……」
真姫ちゃんの秘部の割れ目に指を這わせる。そこはもうぐちょぐちょに熟れていて、並行に押し付けていふだけなのに簡単に指が沈みこんで行く。
ぐちゅ……ぐちゅ。
真姫「ん……あ」
時々真姫ちゃんの声が漏れるけれど、ほとんど声はあげない。部屋に響くのは真姫ちゃんの秘部の淫靡な音だけ。
にこ「脱がすね。腰浮かせて?」
真姫「そ、そんな見ないで……」
にこ「うわ……ぐちょぐちょ……」
真姫「っ~~~~~////」
にこ「ちょっと脚閉じないで」
真姫「だって……」
にこ「いいから、恥ずかしいとこもっと見せて?」
真姫「ぅん……」
にこ「可愛い」クチュッ
真姫「ふぁ……」
真姫ちゃんの陰核に触れると少しだけ声を上げて、腰がびくんと跳ねた。荒い息とともに奥からネバネバとした淫液が絶え間無く分泌されている。
にこ「感じてくれてるんだ」グッチュグッチュ
真姫「んっ……ん」
にこ「真姫ちゃんのここえっちな匂いがする」
真姫「やめてぇ……ふぁ」
真姫「ん……」
にこ「えっちな顔してる。普段の真姫ちゃんとは大違い」グッチュクチュ
真姫「あ……イクっ……」
真姫「んっ……!」ガクガクガク
にこ「気持ちいい?」グチュグチュ
私が真姫ちゃんへの刺激を続けようとしていると、突然手が伸びて来て私の手を掴んだ。
にこ「どうしたの?」
真姫「イッたから……辞めて……」
にこ「え、イってたの?」
真姫「うん」
にこ「そ、そっか……」
全く気がつかなかった。
にこ「……」
なんだか盛り上がらない。
希『ひゃぁん、にこっちぃ……きもちぃぃよぉ……』
希『しゅきぃ……ウチにこっちのことしゅきぃっ! ふぁぁあああああああん!!!!!』
にこ(希とは真逆ね……)
真姫「んぅ……」
にこ「眠くなっちゃった?」
真姫「うん」
にこ「そっか、今日はもう辞めようか」
真姫「ごめん、先にイっちゃって」
にこ「いいの」
私が下手になったのかな。まだまだ弱点がわからないだけなのかな。
にこ「おやすみ」
今日の希幸せそうだったな。
そんな希に私は八つ当たりして……。
私、いつも希のことばっかり考えて……。
真姫ちゃんと初めてこんなことしたのに、真姫ちゃんのことじゃなくて希のことばかり。
こうすれば目を背けていられると思ったのに。もうダメみたい。
ごめん、ごめんね、真姫ちゃん。
――私やっぱり、希のことが好きみたい。
◇◇
絵里「希、ちょっかいださないで!」
希「えーいいやーん」
キャッキャッ
にこ「……」
あれから二週間くらいが過ぎた。もう夏休みも中盤で、宿題が終わらないとかいいつつ全く何もやらない穂乃果と凛が騒ぎ始めていた。
希と絵里はいつにも増して仲が良いようだ。
私はそれを見ていることしかできない。私は希のことが、好き。前よりずっと。
なんで別れたんだろう。
前も好きだったのに、希が私に関わっていると不幸になるってそう思ったから。
希と特別な関係になりたい、やだよ、友達、なんて。
希と絵里を見ているだけで頭がおかしくなりそうになる。
好きって気持ちは封印したのに、でも……もう抑えられないよ。
真姫「にこちゃん……メール返してよ……」
にこ「ん、ああ、ごめんね」
真姫「……」
真姫(最近、素っ気ない……)
にこ「……なに?」
真姫「なんでも……ない」
希。希。希。
◇◇
にこ「……」
帰ろう。
途中まで真姫ちゃんと帰ろうかと思ったけど、なんだか面倒くさくなった。進路の話があるってことで適当にごまかして、図書室で机に突っ伏していた。
図書室には何故か誰もいなかった。普通は勉強してる人とかいそうだけど。
希「――にこっち」
私の背後から声が聞こえた。
にこ「希……?」
希「なにしてるんこんなところで」
にこ「……」
にこ「絵里は?」
希「進路のことがあるからって」
にこ「ふーん。で、なにしに来たの」
希「――にこっちにお礼してなかったからさ」
にこ「お礼?」
希「練習のやつ」
にこ「いいわよ……」
これ以上私に構わないで。もう、もう抑えられなくなる、から。
希「隣座るね」
希「最近なんだかおかしいやん。何かあったん?」
にこ「……」
あんたのあんたのせいだ……。
もうおかしくなりそう。
にこ「うぅ……」
希「どうしたん」
にこ「希っ――」
ちゅっ。
もう抑えられなかった。気がついたら身体が動いていた。
希「んっ!? ちょっ!!」
希は抵抗して立ち上がるが、私もそれに合わせて立ち上がりつつ逃げられないように片腕を腰に巻きつける。
にこ「希ぃ希……」
希「ちょっ……なに……んんぅ……ふぁ……ぁぁん」
希の口の中に強引に舌をねじこんで、逃げようとする舌を包み込む。歯茎と舌を撫でるたびに希の身体が震えるのがわかる。
希がどんどんと後ずさって、人が入って来ても見えない位置まで来た。
にこ「ぷはぁ……」
希「……な、なんのつもり!?」
にこ「――好き」
希「は!?」
にこ「好きなの、希のことが」
希「でも真姫ちゃ――んんんぅっ」
希の口を唇で塞ぐ。
真姫ちゃんのことは今は関係ない、今は希と私の世界。
希「ふぁ……ぁぁん……にこっちぃ……やめ……ふぁぁん」
にこ「ふふ、キスだけでガクガクしてるじゃない」
希「どういうつもり」
にこ「さっきも言ったでしょ、私希のことが好きなの」
希「……ウチはえりちのことが好きなんよ?」
にこ「……」
希「んぁ……んんぅ……」
私はシャツの上から希の乳房に触れる。圧倒的な存在感に気圧されそうになりながらも、希が私にしてくるように優しく揉みしだく。
にこ「おっぱい弱点だもんね」
希「んんぅ、んっ、んっ、ああぁっ!!」
にこ「ふふ……絵里ともうえっちしたの?」
希「して、ない……」
にこ「そっか、じゃあまだ身体はにこしか知らないんだ」
希「ふぅぅ……」
にこ「最高……希のその表情……」
シャツのボタンをすぐに外して、希の大きな乳房を露出させる。
希「ここ学校だよ……やめ……」
そんなことを言う希を受け流しつつ、下着を下にズラす。
にこ「やめて欲しいならなんでここ硬くしてるの?」
希「そ、それは!!」
真姫ちゃんのものよりも大きい乳輪の中央にはパンパンに張った突起があった。
乳輪をくるくると回すようにして撫でる。
希「ふぅぅうん……はぁあん……」
にこ「乳首触られる想像でもしてるの?」
希「ちがっ……」
にこ「お望み通り」キュッ
希「んぁぁああああっ!!!」
希「やめ、やめっ、んっんっ、ぁあぁ、んぁ……」
にこ「本当感度いいのね」
希の脚が快楽からガクガクと震え始め、それでも突起への刺激を続けていると腰が抜けたようにその場に座りこむ。
にこ「もっと気持ちよくなっちゃえ」
希「や、やめ……本当にぃ、イクっ……ふぁ、やらやら、えりちぃ……助けてぇ……」
絵里「――希ー?」
にこ「っ!?」
希「!!」
絵里「あれいないわね」
絵里「うーん」
にこ「ここなら見つからないか……」
希の口を手で押さえて気配を探る。
にこ「……いいこと思いついた」
にこ「ここで気持ちよくしたらどうなるかな」
私は希のスカートに手を入れて、下着越しにジメッとした陰部をなぞる。
希「んんんっー!!!」
にこ「あれ、声出してもいいの? こんなとこ見つかったらどうなるかな」
希「っ……」
少しだけ怯えて表情を見せる。見つかった時のことでも想像したんだろうか。
私はあえて希の口から手を離し、口をフリーな状態にさせる。
にこ「あれ、声出さないの?」クチュクチュ
希「……っ、んふっ……はぁ、んっ、やめ……ほんとっ……んっ、く、はぁ……」
絵里「いないのかしら」
にこ「あんたが気持ちよくなるとこなんていくらでも知ってるんだから」
希「んっ、ぁああ!!」
絵里「……?」
にこ「バレちゃうわよ?」
希は自分の指を思いきり噛んで快楽に溺れそうになる自分を制御しているようだった。
絵里「なんだいないのか」
ガララ ガチャ
にこ「出ていったみたいよ」クチュックチユ
希「んぁぁあああああっ、やめて、んっんっ、ふぁぁああああ!!!!」
希「イクっ、いく……んぅっ、んぅっ、ふぁぁああああああああああ!!!!」ビクビクガグガク
希「はぁ……はぁ……」
にこ「イっちゃったわね」
希「……酷いよ」
にこ「気持ちよかったでしょ?」
希「っ……」
にこ「あんたの身体はにこが気持ちよくしてあげる」
希「こんなこと許されないよ」
希「えりちに言うよ? 真姫ちゃんにも」
にこ「真姫ちゃんに言ってもなんとかなりそうだけど、絵里に言うのはやめて欲しいわ」
なんだか今の希ならそんなことは平気でしそうだから怖い。
にこ「いいこと考えた」
私もシャツのボタンを外して、下着も外す。
希「なにを……」
にこ「ふふ」
希の腕を掴んで、そのまま後方に倒れこむ。
するとちょうど希の左腕が仰向けになっている私の頭の横にきて、押し倒しているような格好になる。
にこ「もっと近づいて」
希の頭を私の首筋辺りまで接近させた後、私は携帯電話を取り出す。
精一杯気持ちいいけど、抵抗できない、そんな表情を作り出して――。
カシャ。
シャッターを押した。
希「っ!?」
にこ「……これなーんだ」
出来上がったのは、見るからに希が私を襲っている写真。
希「な、これ……消して、いますぐ消してよ!!!」
にこ「えぇー? だってぇにこ襲われちゃったしー」
希「くっ……」
にこ「――恋人がいる前でイカされた気分はどう?」
希「っ……ふざけないで!!」
希が立ち上がる。
にこ「……」
希「こんなこと、こんなこと!」
にこ「――私があんたのこと好きってのは本当だから」
希「……うぅ」
希は泣いていた。
そしてそのまま走っていって図書室を後にした。
一人図書室に取り残されて、私は自分のしたことの重大さを知る。
にこ「……もう戻れないよ」
――今年の夏はいつもとは違う匂いがした。
◇◇
希「……」
絵里「希、探したのよ」
希「ごめん……」
絵里「大丈夫?」
希「……今日はもう帰るね」
絵里「そう……私はまだ進路のことがあるから……」
希「ばいばい」
えりちはウチに手を振って微笑んでくれた。ウチもそれに応えて手を振り返す。
微笑むことは出来なかった。
希「……」
校門に出て、さっきのことを思い返す。
希「……」
にこ『あんたのことが好きだから』
希「意味が分からないよ……」
希「にこっちとウチの関係は、終わったはずやん」
希「……」
希「やだよ……えりちになんて顔してればいいん」
にこっちの手がウチの身体を這う瞬間に、身体が一気に当時のことを思いだした。
希「……この身体が憎い」
にこっちに身体をいじられるたびに全身が歓喜していたのを覚えている。
昔にこっちが辛い時は常に身体を重ねていたから、その名残なんだろう。
にこっちのことを忘れて、えりちのことを好きになったのに。
身体はにこっちのことを忘れていなかった。
希「……えりち、ごめん」
◇◇
にこ「ごめんね、真姫ちゃん」
にこ「私はもう、戻れないんだ」
一つの関係を終わらせる為に、私は真姫ちゃんの家に来た。
にこ「入るよ」
真姫「にこちゃんいらっしゃい」
いつも通り真姫ちゃんの家に来て、いつも通り真姫ちゃんの部屋に入っていつも通り真姫ちゃんのベッドに座る。
ただ、私の心はもういつも通りではない。
にこ「……」
真姫「最近暑いわね」
にこ「そうね」
真姫「……またえっちしようよ」
真姫ちゃんがなんだかいつにも増して甘えてくる。どうしたんだろう。
正直、真姫ちゃんとの行為は楽しいとは言えなかった。初めてした時から何回か身体を重ねたが、弱点らしき所を攻めても、反応は鈍かった。
マグロとまでいかないけれど、それに近いものがある気がした。
真姫「にこちゃん?」
にこ「ごめん」
真姫ちゃんと身体を重ねる度に、希の姿が浮かんだ。私の手でよがる希の姿が。
にこ「真姫ちゃん、ごめんね……」
真姫「え?」
にこ「――私と別れて」
真姫「……」
真姫「あ、そうだ、にこちゃん今度デートしない?」
真姫「おいしいお店見つけたの、食べさせてあげるか――」
にこ「――真姫ちゃん」
真姫「っ……」
にこ「……別れて」
真姫「どうして……」
にこ「ごめん……」
真姫「どうしてって聞いてるの」
にこ「……好きな人が出来たの」
真姫「……嘘でしょ」
真姫「うっ……うぅぅぅ」ポロポロ
真姫ちゃんが私の膝下に崩れ落ちる。……謝ってももうダメだけど、本当にごめん。
にこ「こんな思いさせて、ごめん」
真姫「ひっぐ……いやだよ……」
真姫「私のこと、もう好きじゃない、の?」
にこ「……」
好きじゃないという訳ではない、ただそれよりも希のことが。
無言の肯定をすると、真姫ちゃんは声も出さずに涙を流し続けた。
しばらく真姫ちゃんのすすり泣く音だけが響く空間に居た。
そうして真姫ちゃんがぐしゃぐしゃになった顔をあげる。
真姫「……私のせいね」
真姫「私に魅力が無かったから、よね」
真姫ちゃんの目は腫れ上がっているのに、表情は毅然としている。
私が言うのもなんだけど、これは強がりだ。
真姫「にこちゃんのことを好きになって、そしてこんな関係になれて本当に幸せだった」
真姫「にこちゃんと一緒に居た時間は絶対に忘れないから。本当に本当に……」ジワッ
真姫「――今まで、ありがと」
にこ「真姫ちゃん、ごめ――」
にこ「……ううん――今までありがとう」
真姫ちゃんと一緒に居た時間が楽しかったのも本当。
さんざん懺悔はした。それでも足りないだろうけど、最後くらい、最後くらいは、懺悔じゃなくて、感謝で一つの関係を終わらせよう。
◇◇
真姫「おはよう」
にこ「おはよう」
次の日の練習には真姫ちゃんの態度はいつものように戻っていた。
真姫「はぁあっつい」
にこ「そんなに髪の毛モフモフさせてるからじゃないの?」
真姫「意味わかんない」
にこ「アイロンかけてるんでしょ?」
真姫「わざわざ巻くほどはかけてないわよ」
にこ「ふーん」
にこ「なんかタコみたいね」
真姫「はあ?」
にこ「くねくねしてるし、すぐ赤くなるし、元から赤いし」
真姫「馬鹿にしてるの?」
驚くほど自然に真姫ちゃんと会話が出来た。
私自身も、真姫ちゃん自身も引きずるタイプだと思っていたけれど、そうじゃなかったらしい。
穂乃果「真姫ちゃんの髪の毛かわいいよねー」
真姫「癖毛ってすごい嫌なものよ」
穂乃果「私もちょっと癖毛だよ?」
ことり「海未ちゃんとかはすごいストレートだよね」
海未「まあ、そうですね」
何気ない会話の中で、希の様子を確認する。
希「っ……」
目を合わせてくれない。そりゃそうよね。
にこ「振り向かせてやる……なにをしてでも」
真姫ちゃんとの関係も断ち切って、もう戻ることはできない。希と恋愛シミュレーションなんてした日から、この気持ちに辿りつくのは必然だったのかもしれない。
◇◇
希「……なに、にこっち」
にこ「わかってるでしょ?」
希「……」
にこ「あんたを私無しじゃ生きられなくさせるつもり」
希「止めて……」
にこ「……あの写真見せるわよ」
希「っ……」
にこ「空き教室でえっちってなんだか興奮するわね」
にこ「好きよ、希」
堕としてやる。希を絵里から。
◇◇
希「……えりち」
絵里「んー?」
希「ごめん」
またにこっちとえっちをした。
そんなこと言えるわけが無かった。今回は前よりもさらに激しく。ウチの身体が反応するのが、憎い。
希「えりち」ギュッ
絵里「どうしたの」
希「好き」
絵里「……」
絵里「今日希のお家でデートしましょ」
希「え……うん!!」
にこっちがいくらウチに手を出したって、ウチはえりちのことが好きなんだ。
いつか諦めてくれる。
分かってくれるはず。
希「えりち、好き」
◇◇
絵里「希の家も久しぶりね」
希「そうやっけ」
絵里「ふふ、恋人になってからは初めてじゃない」
希「もう……///」
絵里「恥ずかしいのー?」
希「うるーさーいー」
希「今日ご飯どうしよっか。どっか食べにいく?」
絵里「私がなにか作ってあげましょうか」
希「え……?」
絵里「希ってうどんしか作れないんでしょ」
希「ま、まあね」
絵里「そんなんじゃ身体壊すわよ」
希「大丈夫やって」
絵里「恋人の健康にも気を使うのも私としては重要だと思うの」
絵里「冷蔵庫見ていい?」
希「なんにもないよ?」
絵里「どれどれ、あ、これだけあればまあ作れるんじゃないかしら」
希「本当?」
えりちが冷蔵庫から材料を取り出して、キッチンに向かう。
希「なんだか夫婦みたいやね」
絵里「……」
絵里「……もう///」
希「ふふ」
幸せ。
えりちと一緒にいるだけで。
◇◇
絵里「あれ、もしかして泊まるの初めてかしら」
電気を消してえりちと顔がくっつくくらいの距離。
希「そうやったかなあ」
ウチとえりちしかいないんじゃないかと思うくらい、周りの音は何も無かった。
絵里「明日も練習ね」
希「そうやね」
絵里「ねえもっと近くに来て」
希「えりちにセクハラされちゃう」
絵里「わしわしして欲しいのー?」
絵里「ま、私は身体の関係とか好きじゃないのー」
希「――っ……」
えりちの一言に少し心が抉られた瞬間、ウチらの世界が壊された。
~~~♪♪
希「メールや」
絵里「誰から?」
希(にこっち!?)
メールはにこっちから。
希「め、迷惑メールや」
希「トイレ行ってくるね?」
絵里「ええ」
希「おしっこの音とか聞かないでよ?」
絵里「私がそんな変態に見える?」
希「ちょっとだけ」
絵里「もう」
違う方法とはいえ、トイレに近づかないように牽制しておく。
トイレに入ってメールを確認。
明日デートしよ。
希「っ……!!!」
怒りが湧いてくる。ウチとえりちの時間を邪魔して、そんなことを……。
プルルルルルルル
にこ「もしもし」
希「どういうつもりなん!」
にこ「怒鳴らないでよ」
希「……ウチとえりちの時間を邪魔しないでよ」
にこ「あら……お泊りデートでもしてたのかしら」
希「そうだったらなに」
にこ「明日の練習終わったらデートしよ」
希「……嫌」
にこ「絵里にあの写真見せた――」
希「うるさい!」
ブチッ
希「ふーふー……」
もう嫌だ。
にこっちが分からない。一体なにを考えているの。
トイレで頭を抱えていると、またしてもにこっちからメールが来た。
明日練習終わったら駅に来て。
希「……」
携帯の電源を落として、えりちが待っているベッドに向かう。
絵里「ふぁぁ……」
希「えーりち」ギュッー
絵里「もう、いきなりなによー」
希「あれ、えりち、それは……」
絵里「そこに飾ってあったクマのぬいぐるみ。可愛いわね」
希(それ……は)
思い出す。にこっちからクレーンゲームでとって貰ったもの。にこっちとの思い出の、もの。
えりちはすりすりと顔を擦り付けている。どうやら気に入ったようだ。
希「捨てる」
絵里「え、勿体ないわよ」
希「捨てなきゃ」
絵里「可愛いんだから置いておきましょうよ」
希「……」
えりちが帰ったら捨てよう。
もう置いておく意味はないし。
希「そんなことより早く電気消して!」
希「またまだ寝かさないよー!」
絵里「きゃぁー!!!」
◇◇
にこ「来てくれたんだ」
希「仕方ないやん」
にこ「睨まないでよ」
希「デートとかどういうつもり?」
にこ「そのまんまの意味だよ」
にこ「とりあえずこっちきて!」
希「もう、なに!?」
希「トイレ……?」
にこ「どーん」
希「!?」
希「……二人で個室に入ってなにする気」
希「こんなとこでえっちでもするん」
にこ「まあそんな感じ」
希「……」
にこ「あれ、抵抗しないの」
希「どうせえりちに見せるとか言うんやろ」
にこ「……流石にもの分かりがいいわね」
希「それは……」
にこ「……大人の玩具なんだけど……」
にこ「リモコン使うと遠隔操作が出来るの」ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
希「……」
にこ「下着脱いでー」
希「……」スッ
にこ「あれ……もう濡れてきてる?」
希「ち、ちがう……これは……」
にこ「想像しちゃった?」
希「……」
にこ「まああんまり時間かけると、デートの時間減っちゃうし……」
にこ「パパッと付けるわねー」
にこ「えっと……ひっつかないな……」
希「あっ……んんぁ……」
にこ「――はい、オッケー」
希「……こんな漫画みたいなことさて楽しい?」
希「もうやめようよ……」
にこ「希が私に振り向いてくれるまで、やめないよ」
希「……」
にこ「さ、デートいこ」
◇◇
にこ「何がみたい?」
希「なんでもいいんやけど……」
にこ「じゃあこれにしようよ」
希「……花嫁が死んじゃうやつか」
にこ「ね、昔もこんなの見たの覚えてる?」
希「まあ……」
にこ「お金は私が払うから」
希「いいよ、自分の分くらい!!!」
にこ「もう始まるから急いで!!」
希「もうにこっちったら……」
にこ「はぁ……最近見たかったのよねー」
にこ「希と見れて良かった」
希「……」
にこ「あ、始まる」
希「……」
なんだかにこっちは昔に戻ったみたい。ウチといる時はすっごく楽しそうにする。
昔のにこっちは学校にいる時はいまよりずっと暗くて、人から嫌がらせを受けていたりした。
希(ウチを含めてµ’sのみんなが居て、今は真姫ちゃんが居て、ウチはもうにこっちに特別な存在としては必要ないんじゃないの?)
映画の導入部なので、そんなことを考えていると。
希「んぁっ!!!」
下腹部に快楽が走る。
忘れて、た。
希「に、にこっち……」
にこ「我慢しないと他の人にバレちゃうよ」
希「んっ……んっ……やめ……」ヴヴヴヴ
希「はぁぁん……ふぅ、ふぅ……ふぅ……」
にこ「……ふふ」
希「とめ、てぇ……んっ……声でちゃ……んんんぅ」
にこ「…………」
希「ひゃ……イクっ……んっ……んっ」
ピタ
希「あ、あれ……」
にこ「どうしたの?」
希「あ、いや……」
にこっちはなんにも無かったかのようにウチの顔を見てきた。
希「っ……」
絶頂に達する寸前で止められることは何回かあったけれど……。
希(本当に嫌だ……)モジモジ
悶々とした気持ちのまま映画は流れていった。
◇◇
にこ「ホテルでもいく?」
希「はあ?」
にこ「えっちしたいでしょ?」
希「い、意味わからんよ!」
にこ「まあそれならいいんだけどさ」
希「もうなに言い出すん……」
カチッ
希「ひゃっ……んっ……い、いきなりぃ……」
にこ「みんな見てるわよ?」
希「んっ……や、らぁ……」
にこ「外で感じちゃうなんて……へんたい……」
希「ぅぅ……」ゾクゾク
にこ「気持ちいいんでしょ? 私なら希を気持ちよくしてあげられるよ」
立っていられなくなったウチはその場に座りこんで、にこっちがそれを見て耳元で囁く。
やだ、身体が……。
希「や……んっ……ぁぁ……」
希「きもちぃ……」
にこ「強くするね」
希「んぁぁああああああっ……イクっ……イク……!!!!」
ピタ
にこ「まあまだイカせないけどね」
希「うぅぅ……もうやらぁ……」
◇◇
にこ「あーあ、疲れたー」
希「……ウチはもっと疲れてるんやけど……」
にこ「気持ち良かったの間違いじゃないの?」
希「もう……」
あれから服屋に行って服を見たり、ゲームセンターでクレーンゲームをしたり、なんだか体験したことのあるデートな気がした。
にこ「クレーンゲーム、上手くなったでしょー」
ゲームセンターでにこっちからとって貰った小さなクマのぬいぐるみを、ウチのクマのぬいぐるみの隣に並べる。
お揃いになるように、二つとってくれたぬいぐるみ。
家にもこれと似たようなものがある。
強烈な、既視感。
希「なんで神田明神なん?」
にこ「お願いしなくちゃ」
希「お願い?」
にこ「……」
希「……なにをお願いしたの?」
にこ「……秘密」
にこ「私の夢のこと」
希「夢……」
にこ『秘密……私の夢のことだよ』
また、強烈な既視感。
映画を見たり、服屋に行ったり、ゲームセンターに行ったり……神田明神に来たり……。
そうか……全部……。
全部、最初のデートの時をなぞってるんやね。
ということは……。
にこ『希、私あなたのことが好き』
にこっちが、深呼吸をする。風が木々をゆらしてさらさらという音がこの場を支配する。
一陣の風が青々とした葉を舞いあげて、天に連れて行く。
にこっちの横顔が、少し哀しく見えた。
それが、前とは決定的に違うことだった。
にこ「――ねえ希……私、あなたのことが好き」
希「……」
にこっちは微笑んだ。
なんだろう。
胸が、痛い。
奥深くに封印した、にこっちへの何かが掻き出されるような、感覚。
にこっちの真っ直ぐな瞳、それを見ていると、吸い込まれそうになる。
希「ダメ……」
にこ「……そっか」
前とは違うこと。
それはウチの答えだった。
希「ウチには、えりちがいるから」
希「……にこっちには真姫ちゃんがいるやん」
にこ「ふふ……」
また、笑った。
にこ「――別れたんだ」
希「え……」
にこ「希とデートの練習してる時から、気がついちゃったの」
にこ「……希のことを好きだったけど、なんで別れたんだろうって」
にこ「忘れたと思ってた希への心に……気がついちゃったの」
希「そんなの……ずるいよ……」
希「――にこっちはずるいよ!!!!」
にこ「っ……」
希「勝手に告白して……勝手にフって……また勝手に告白して……!!!」
希「ずるいよ……ずるいずるい、ずるい……ウチの気持ちは……どうなるん……」ジワッ
希「もう……惑わせないでよ……!!!」ポロポロ
にこ「……」
なんで自分が泣いているのか、わからなかった。
えりちのことが好きなのに、なんでにこっちから告白されて、こんなに動揺しているんだろう。
わからない、なんで……心の奥深くから、直接涙が出てくるような感覚。
にこ「私のこと嫌い……?」
希「……嫌い!!」
にこ「そっか……なら、なんで泣いてるの?」
希「……知らんよ!!!」
希「わかんないけど……わかんない……!」
希『ウチのこと、嫌いになったん?』
にこ『……ええ』
希『じゃあなんで泣いてるん!?』
ウチがにこっちにフられた時に言ったことが、そのまま返ってきた。
じりじりと距離が詰められていく。
希「もう近寄らないで……!」
にこ「……希」ギュッ
希「うぅ……うう……もう、やめて……」
にこ「――ごめんね、でも、好きになっちゃった」
◇◇
にこ「久しぶりね」
希「……そうやね」
にこ「んー変わってないなぁ」
希「……」
にこ「なんでそんな暗い顔するのさ」
希「だって……」
にこ「絵里のこと?」
希「……」
希「えりちになんて言えば」
にこ「……大丈夫よ」ギュッ
にこ「内緒にしておけばバレないって」
希「……でも」
にこ「あ、これ!!」
にこっちが何かを見つけて表情を変える。
にこ「初めてのデートの時私がとったクマのやつ! 飾っててくれたんだ!」
希「あ……うん」
片付けるのを、忘れていた。片付けなきゃいけないのに。
にこ「嬉しいな」
希「……」
にこ「そういえば、希料理何か作れるようになったのー?」
希「いや、全然」
にこ「でしょうねー」
にこ「何か作ってあげようか」
希「……」
にこ「冷蔵庫見るねー」
にこ「ありゃ……なんにもない……」
希「えりちに料理作って貰ったから」
にこ「……なんだ……」
にこ「じゃ、買いに行こうよ!!!」
にこ「絵里より美味しいの作ってあげるわ!」
希「えぇ……」
◇◇
にこ「うーん、何がいいかなあ」
希「ウチはなんでもええんやけど」
にこ「全く……なに食ったらそんな胸になんのよ」
希「さあ……」
にこ「ふふなんか夫婦みたいね」
希「なにいってるん」
にこ「希は女の子っぽいし花嫁かなあ」
希「……にこっちが男の方やるん」
にこ「なんかそれも違うわね……」
真姫「あれ……あの二人……?」
数十分後
真姫「なんだかすっごく仲良さそう……」
真姫「……にこちゃん……」
真姫「いいな……私もまだあんな風に一緒に歩きたかった」
真姫「……友達としてなら、まだいけるかしら……でも、嫌よ……友達としてなんて」
にこ「希手繋ご」
希「え!? 嫌……!」///
にこ「えー、どうして?」
希「わ、わかんない……」
希「に、にこっち!?」
にこ「今まで普通に手くらい繋いでたじゃない」ギュッ
希「う、うぅ……」
にこ(……希が照れてる……もう少し、もう少しのはずなの)
にこ「どうして照れてるのー?」
希「うるさいっ!!///」
にこ「これ、恋人繋ぎだよね……」
真姫「な、なんで手繋いでるの!?」
真姫「友達同士で手繋ぐのとか普通だけど……」
真姫「恋人繋ぎ……」
真姫「なんだかおかしいわ……すっごく距離も近いし……」
真姫「あ、マンションに?」
真姫「にこちゃんの家じゃないし……希の家かしら……」
真姫「入っていった……」
真姫「おかしい……希には絵里がいるのに……」
にこ『私、好きな人が出来たの』
真姫「……嘘でしょ? そんなわけ、ないわよね?」
◇◇
希「……おいしい」
にこ「でしょー」
にこ「にこと絵里どっちがおいしい?」
希「……」
にこっちがニヤニヤとしてこっちを見る。自分の料理に最高の自信があるんだろう。
確かに最高に美味しい。
えりちよりも。
希「えりちの方が美味しい」
にこ「ふぅーん、そっか。残念」
思い切り否定したのに、にこっちは楽しげだ。
にこ「にこの方が美味しいんだ。やった」
希「そんなこと言ってないやん!」
カチッ
ウチが机を叩きながら立ち上がった瞬間、にこっちがリモコンを手にしてるのが見えた。
そして、下腹部に刺激が走る。
希「んんんぅ……うっ、あ……ッ……ぁぁああ」
忘れて、た。
にこ「気持ちいい?」
希「気持ちよく、なぃっ……」
にこ「あんた真姫ちゃんのこと馬鹿にできないくらい、天邪鬼よね」
希「っぁああああああっ……やめ、やめてぇ……んぁぁ……」
にこ「希……」ギュッ
希「ふぅぅうぁ……んぁ……」
カチッ
希「あっ……あっ……」
腰がガクガクして、立てない。
にこっちはウチに優しく抱きついて、耳元で囁く。
にこ「――えっちしよっか」
希「あぅ……ぅん」
その魔性の声に、自然とうなづいていた。
◇◇
希「お待たせ……」
バスタオルを1枚まいて、満足に髪の毛を乾かしていない状態のままにこっちが座っているベッドの横に座る。
にこっちにはウチのパジャマを貸している。サイズは合ってないみたい。
ウチの姿を見るなり、口角をニッと上げる。
にこ「……あんた、ここに私とのプリクラ入れててくれたんだ」
にこっちが取ってくれたクマのぬいぐるみにはポケットが付いていて、そこには二人で初めてとったプリクラを入れていた。
希「……なんだか捨てられなくて」
にこ「……ふぅん、戻しておくわ」
希「これ」
大人の玩具と評されたものをにこっちに突き返す。
にこ「はいはいー、どうだった?」
希「どうだったって……」
にこ「気持ちよかったならあげようか?」
希「いらない」
希「……」
なんで頷いてしまったのだろう。なんでにこっちを家に入れてしまったんだろう。
自分の行動が理解出来なかった。
にこ「初めてのえっちもここでしたよね」
希「そうやったっけ」
にこ「希ったらめちゃくちゃ声出すんだもん」
希「し、仕方ないやん///」
にこ「んっ……あむ、希……ん」
希「はぁぅ……んむ……」
――やってしまった。
ごめんね、えりち。
希「うぅ……」
希「ごめん、ごめん……」
涙が溢れた。えりちを裏切ってしまった。
そんなウチの涙をにこっちの手が拭う。
にこ「大丈夫。私のことしか考えられなくしてあげるから」ギュッ
希「ひっぐ……ぅぅううう」
にこ「あむ……んんぅ……希……」
にこっちと、またキスをした。
もう何回もキスをしているけれど、その都度罪悪感に襲われる。
にこっちに舌を入れられて、弱点を責められる。
身体が当時のことを思い出していく。気持ちよくて、お互い夢中になって身体を重ねていた蜜月の日々を。
舌を入れられて、舌を吸われて、唾液を絡ませる。もう何分こうしているだろうか。
ぴちゃぴちゃと音が鳴る。ウチの心もそれに溺れ始めている。
希「にこっちぃ……」
気がついたら、自分からにこっちの口の中に舌を入れて押し倒していた。
にこ「……ふふ……やっと希から攻めてくれたね」
にこ「でも、私攻める方が好きなの」
にこっちが不敵に笑うと小さな身体からは想像もできないほどの力で、位置エネルギーすら凌駕して押し倒される。
乱暴にバスタオルを剥ぎ取られて、人に見せるなんていつぶりかの肌を露出させられる。
顔が赤くなるのがわかる。
にこ「隠さないで」
にこっちは小さな手で、胸を下から持ち上げるようにしてもてあそぶ。にこっちは胸が好きだ。いっつもいつも胸ばかり弄られる。
にこ「ほんとおっきい」モニュモニュ
希「んっあぁ……」
胸を揉まれただけなのに、自然と声が漏れる。
にこ「ここ、弄ってないのに出っ張ってる」
希「んぁ……仕方ない、やん……」
にこ「何が仕方ないの?」
もうにこっちの顔を見れない。でも確実に楽しんでる、それは声色でわかる。
人差し指で突起の周りをゆっくりゆっくりと撫で回す。当たらないように気をつけているのだろうけど、時々突起に当たって電流が走る。
にこ「どうして欲しい?」
希「んんぅ……さわっ、て……」
にこ「ん?」
希「硬くなってるところ……さわってくだ、さい……」
にこ「ほんと変態ね。さわってもないのにビンビンにしちゃって」
にこ「――でも、そんなとこ希も好き」コリコリ
希「んんんんんぁぁあああああ!!!」ビクッビクッ
にこ「軽くイっちゃった?」
希「はぁ……はぁ……」
一瞬頭が真っ白になりかけた。
おかしい、胸だけで……。
にこ「もっと気持ちよくなっちゃって、んちゅ……ちゅーちゅー」
希「やっ、吸わないで……んっんっぅ……」
希「あっ、や、いくぅ……イクっ……」
ピタ
にこ「イカせてあーげない」
希「な、なんで……」
にこ「ありゃ……下ももうこんなになってる……」クチュゥ
にこ「今日ずっとおあずけくらってたもんね?」クチュクチュ
希「んぁぁあああああぁ、いや、いやぁ……んっ、おかしくな……ッ……ぁぁ!!!」
にこ「こんなぐっちゃぐちゃにして、匂いも結構してたのよ? 今日一日匂いを撒き散らしながら発情してたの?」
希「ちがっ、ちが……んんんぅ……や……ちがうのぉ……」
にこ「何が違うの? 気持ちいいくせに」グッチュグチュ
にこ「ほら、もう指三本もはいっちゃってる。希の膣内がもっと欲しいもっと欲しいって締め付けてる」
希「んぁ……にこっちの指……んんっ……ぁ……きもちぃ……」
にこ「んぁ……私まで変な気持ちになっちゃうじゃない……はぁはぁ……」グチュグチュ
希「んんんんぁ……やば……イク……いく……にこっちぃ……わたし……ッ」
ピタ
にこ「イカせないよ?」
希「ど、どうして……」
にこ「だってイカせちゃったら終わりだもん。希が何回でもイケるのは知ってるけどね」
にこっちの表情は本気だった。確か以前にもこんなことがあったような気がする。
希「……」
にこ「イカせて欲しい?」
にこ「……聞かなくてもわかるか……白いの溢れてるもんね」
希「お願い……イカせて……」
にこ「だーめ」
希「そんなぁ……」
にこ「電気消すね」
にこっちは立ち上がって、電気を消した。
そのままウチが寝転がっているすぐ隣に横になる。
にこ「……眠くなっちゃった」
希「本当に、寝るの?」
にこ「うん」
希「……」
にこ「イキたいなら一人でイけば?」
希「……酷いよ」
希「……ウチが一人じゃイケないことくらい……知ってるくせに……」
にこ「んー? おやすみぃ」
◇◇
にこ「ふぁ……」
希「んっ……んっ……にこっち……にこっち……」グチュグチュ
希「んっ……んっ……」
にこ「――なにしてんの?」
希「ひゃっ!! お、起きてたの?」
にこ「今起きたんだけど……」
にこ「お邪魔だったわね」
希「い、いや……///」
にこ「イケたの?」
希「……」
にこ「そっか、残念だったわね」
希「……」
にこ「て、もうこんな時間じゃない。早く着替えて練習行くわよ!」
希「朝ご飯は……」
にこ「いいわよそんなの!」
希「あ、あの……登校はえりちと……」
にこ「……そう、なら家出たら別々に行きましょう」
◇◇
今日は雨が降る日だった。
いつもよりも早く起きて、いつもとは違う駅へ。
希とにこちゃんが一緒に入っていった家がある最寄り駅。
もしかしたら泊まっているかもしれない。そんな漠然とした予想のもと、私は希の家らしき場所の近くで待機していた。
真姫「全然出てこないわね」
真姫「……練習始まっちゃう」
練習に遅れるわけにはいかないので、次の電車が来る時間になったら行こうそう考えた時。
真姫「にこちゃんと、希……」
また手を繋ぎながら、そして相合傘をしながら……。少し希が距離を取っているように見えるがにこちゃんは詰め寄っているように見えた。
真姫「……」
一緒に朝、出てくる。やっぱり泊まったんだ……。
真姫「っ……」ギリリ
真姫「ダメ……にこちゃんとはただの友達……」
頭をぶんぶんと振ってにこちゃんへの想いを掻き消す。
真姫「……あれ」
また目を戻すと、にこちゃんと希は別方向に歩き始めていた。
真姫「……」
真姫「……いまならにこちゃんに声をかけてもいいよね」
真姫「にこちゃん」
にこ「ひゃっ!!」
にこ「ままままま真姫ちゃん!?」
真姫「驚きすぎ」
にこ「なんでこんなところに!?」
真姫「用事があったのよ。そっちは?」
にこ「わ、わたしもそうよ!!!」
……なんで、隠すんだろう。
真姫「……誰かの家に泊まってたとか?」
にこ「そ、そんなわけないでしょ!」
やっぱり、何かやましいことでもあるんだろうか。
私はもうにこちゃんのなんでもないけれど……希は別。絵里とは恋人……少し見張る必要があるかもね。
◇◇
結果から言うとここ三日で特ににこちゃんと希に怪しい動きは見られなかった。
お互いの家に行くことなんて無かったし、見ていて分かったのは絵里と希がラブラブだったことくらい。
にこちゃんと希が校内を歩いているのを尾行したりしても、何故か巻かれてしまう。
真姫「……やっぱり勘違いだったのかしら」
図書室でそんなことを考えながら、ペンを咥える。
家で勉強するのもいいけれど、なんとなく今日は図書室で勉強する気分だった。
真姫「……ん!?」
何気なく外を見ると、なんだか見たことのある人が走っていくのが見えた。
長いおさげと、ぴょんぴょん跳ねるツインテール。
真姫「……にこちゃんと、希……帰ったはずじゃ……」
周りに誰もいないことを確認して、私は普段出入りしてはいけない校庭への出入り口に手をかける。
内履のまま校庭に飛び出し、二人が向かった方向を確認する。
あるのは用具倉庫。鍵がかかっているはずだから、あの裏、ということになる。
ゆっくりと、足音、気配を消して近づいていく。
真姫「……!?」
裏を覗く。
にこ「んっ……んっ……ちゅぷ……ん」
希「ふぁ……んぉ……ちゅぷちゅぱ……あむ……んんぅ」
目の前で何かが行われていた。
意味が、分からない。
にこちゃんと希が重なって……。
どういう、こと?
好きになっていたっていうのは……希のことだったの?
真姫「そん、な……」ポロポロ
さらに、さらに深く交わっていく。口だけじゃなくて、お互いの身体に手を伸ばしていく。
それを見ていると、涙が溢れた。
私の知っている人を……好きになっていたなん、て。
真姫「っ!!!!」
駆けていた。
一刻も早く離れたかった。
そして、絵里に、絵里に相談するんだ。
◇◇
希「今何か聞こえなかった?」
にこ「そう?」
希「……」
にこ「いいから続けよ」
希「でも……どうせイカせてくれないんでしょ……」
にこ「うん」
希「……なら早く終わらせよ。えりちにも今日は一緒に出かけるって言ってあるから」
にこ「ふぅん……でも、希の方からにこに声かけてくれたし……どうしよっかなぁ」ササヤキ
希「……」ゾクゾク
止められないでいた。
にこっちとの関係を断ち切れず……ずるずるずるずる。
えりちのことが大好き、なのに。にこっちと触れ合っていると、話していると……昔の感情が、戻ってきているような、そんな感じがしてしまう。
毎日にこっちと身体を重ねるが、イカせては貰えない。そうやって少しずつ支配されていく。
分かっていても、逆らえない。
身体が疼く。身体がにこっちの指を求めてしまう。
今日なんか、自分から誘ってしまった。ごめん、ごめんごめんえりち。
怖い。
もしかしたら、身体だけ、じゃなくて……心までにこっちを求めてしまったら――。
◇◇
絵里「どうしたの真姫、珍しいわね」
真姫「うん」
絵里を一人だけ喫茶店に呼び出す。明日話しても良かったんだけど、早い方が何かと都合が良い。
目、腫れてないわよね。
絵里が私の前に座って、笑う。
絵里「告白ならダメよ?」
真姫「惚気ることしかできないのかしら」
絵里「ごめんごめん。で?」
真姫「……希、のことなんだけど」
真姫「――浮気してるかもしれない」
絵里「――は?」
絵里「ちょ……なに言ってるのよ」
真姫「……」
絵里「そんなことを話すんだったら私は帰るわよ」
真姫「多分本当よ」
絵里「ちなみに相手は?」
真姫「……にこちゃん」
絵里「はっ……馬鹿馬鹿しい」
絵里「第一あなたとにこは――」
真姫「――別れたの」
絵里「え……?」
真姫「好きな人が出来たって」
絵里「……」
絵里「それが本当だとしても希な訳ないでしょう」
絵里は全く話を聞こうとはせずに立ち上がった。
絵里「時間の無駄だったわ」
絵里「じゃあね」
真姫「待ってよ絵里!!」
絵里は私の言葉に振り返ることもなく、喫茶店を後にした。
◇◇
絵里「いたいた……」
希と食材の買い出しをする約束をしていた。
何故だか早く行かなければならない。そんな脅迫概念に襲われた。決して真姫の言ったことを真に受けているわけではない。
もう来ているかもしれない、驚かそう、そう思って希の待ち合わせ場所を物陰から覗く。
絵里「っ……!!!」
そこには、希と――にこが居た。
二人で楽しくおしゃべりしているようだ。
絵里「なんでにこと二人きり?」
絵里「いや……たまたま会った可能性だってあるわ……そう、そうよ」
絵里「……」
真姫の言葉が私の中でリピートされる。
絵里「ありえない、浮気なんてありえない」
絵里「希とにこは友達だもん、二人でいるくらい普通よね?」
絵里「前から仲良かったし……」
希『にこっちとデートの練習してたんよ』
絵里「……」
絵里「……練習は終わったんだよね」
絵里「泳がせて、みる?」
今、私が希に対して急に行けなくなって。そう言ったら、どうするのか。
希を信頼したい、安心したい、その思いで私はメールを打ち込んだ。
絵里「……」
希はメールに気がついたようだ。
メールを打ち込む姿が見える。
~~~~~~~♪
絵里「ふふ……良かった」
そっかぁ。それなら仕方ないねぇ。えりちとの買い物楽しみにしてたのに……。今日はすぐ家に帰って大人しくしてるね笑
絵里「――やっぱり浮気なんて嘘よね」
自然と笑みが零れた。と同時に約束をキャンセしたのを後悔した。
絵里「はぁぁぁ……せっかくのデートだったのに……」
柱に捕まって落ち込んでいると、二人が歩き出した。
あれ、希、家はそっちじゃないよ?
にこと希が歩き出したのは、娯楽施設が沢山ある方向だった。
絵里「……」
状況は急展した。希達の後ろを気がつかれないように尾行する。
尾行なんて人生でするとは思わなかった。
絵里「……」
楽しそうに喋っている。
なんで、なんで私以外にそんな笑顔を見せるの?
嫌だ、嫌よ。
希とにこは服屋に入っていった。わたしも気がつかれないように注意を払いながら様子を観察する。
絵里「……」ギリリ
どうして、すぐに帰るって言ったじゃない。服なら私と一緒に見に行けばいいじゃない。
どうして、どうしてにこと二人きりで、デートみたいなことをするの。
――まるで恋人みたいだ。
服屋を後にして、その後二人はゲームセンターへと向かった。
様子を見るに、クレーンゲームで希が欲しいものをにこが取ってあげる、と言った感じだろうか。
絵里「……」
ゲームセンターを出た後は、特に当てもなくぶらぶらとしていた。
その間もとても距離が近くて、今すぐにでも希を私の隣に置きたいくらいだ。
絵里「な……希……」
二人が手を繋いだ。
恋人繋ぎ。
絵里「う、そ……でしょ」
私はそれを見て、もう我慢なんてできなかった。
携帯を取り出して、希に電話をかける。
絵里「……」プルルルルルルルル
かけて何をするんだと言われても説明できないが、とりあえずにこと希の二人だけの空間を邪魔したかった。
希が携帯を取り出して、画面を見る。
――とても悲しそうな表情をした。
そして……。
ブツ……。
絵里「の、ぞみ……?」
希は電話を切って、そのままにこと一緒に歩き出したのだった。
◇◇
希「……流れでデートしちゃったけど……ウチ……」
えりちが来れない、ということで、にこっちからデートのお誘いがあった。
断れたはずなのに、断れなかった。
どうして、どうしてだろう。わからない……ウチは……。
にこっちと居るのは楽しかった。少しずつ、少しずつウチの中の何かが変わって来ている。
にこっちから今日も取ってもらったクマのぬいぐるみ三体をベッドの脇にならべて、幸せな気持ちになる。
捨てようって、言ってたのに。
プルルルルルルルル
希「――ん、えりちから……」
希「さっきは出なかったから……」
希「もしもし」
絵里『ああ希、さっきはなんで出なかったの?』
希「あれは気がつかなくて……ごめんなあ」
絵里『そう、それならいいのよ。ねえ、今日の夜ヒマ?』
絵里『泊まり行きたいんだけど』
希「どうしたん、急に。別にいいけど」
絵里『本当? じゃ、今から行っていいかしら』
希「いいよー」
えりちと泊まる約束をして、電話を切る。
えりちと二人きりって最近無かったから……幸せ。
だけど……どう顔向けすれば……。
えりちが来るということで、少しだけ掃除を始める。散らかっている服だったり雑誌だったりを綺麗にして、とりあえずは綺麗に見えるようにはした。
希「掃除機とかはかけてないけど……まあいいか」
ピンポーン
希「お、きたきた」
ガチャ
絵里「こんばんは」
希「いらっしゃーい」
絵里「もうご飯食べたでしょ?」
希「うん」
絵里「じゃーん、ケーキ買ってきたの」
希「おおおおお!」
希「いいの?」
絵里「その為に買ってきたんだもん」
希「そこ座ってて」
絵里「……」
希「紅茶でいいよね?」
絵里「ええ」
えりちとウチの分の紅茶をだして、ケーキを挟んで机に座る。
希「チーズケーキや」
絵里「ベイクドとレアどっちがいい?」
希「レアかなあ」
絵里「レア食べていいわよ」
希「本当?」
希「頂きます! あむ……んんぅ……」
希「おいしぃ……」
絵里「本当幸せそうに食べるわね」
希「あはは、そうかな」
絵里「……」
続けてケーキを口に運ぶが、えりちの顔色が優れない。ケーキを食べることもしない。
希「食べないの?」
絵里「ねえ希……今日なんで、電話出てくれなかったの?」
希「え……」
希「ご、ごめん……」
絵里「……なんで?」
突然、えりちの雰囲気が、変わった。
希「気がつかなくて……」
絵里「そう……"気がつかなかった"のなら、仕方ないわね」
希「つ、次は……ちゃんと出るから」
絵里「……今日ね、私見ちゃったの」
絵里「どうしてにこと一緒にデートみたいなこと、してたの?」
希「え……」
見ら、れてた?
希「な……なに言ってるの……ウチはずっと家に居たよ?」
どうして、こんなことを言ったんだろう。どうして、嘘なんてついたんだろう。
やましい気持ちがないのならば……友達と遊んでたって言えば、良かったのに。
絵里「――嘘つかないでよ!!!!!」バンッ
希「ぁぅ……」
勢いよく机を叩いて、その勢いのまま立ち上がる。
絵里「……にこと、何してたの?」
希「い、や……えと……」
えりちの目が普段とは全く違う。生徒会長モードのえりち。皆を威圧する時の……それ以上。
希「……で、デートの、練習……」
ウチの口から出たのは、苦し紛れにもほどがある言い訳。
絵里「……練習は終わったんでしょ……恋人は私でしょ?」
絵里「ねえ、どうしてにことそんなことするの。どうして、どうして」
絵里「私のこと好きなんでしょ? ねえ、ねえ希!!!」ガシッ
希「痛っ……」
絵里「二人で居ないで!!! 二人きりなんて許さない! 希は、希は私の"モノ"なんだからっ!!!!」ギギギギ
希「痛い……痛いよ……やめて」
絵里「はっ……」
純粋に怖かった。
絵里「……ごめんなさい」
希「ごめん……」
絵里「……ねえ希、私たち恋人よね?」
希「うん」
絵里「なら、私以外見ないでよ。私だけ見てよ。私と希二人だけていいじゃない。何が嫌なの?」
希「いや、じゃない……」
絵里「……」
絵里「携帯見せて」
希「いや……そ、それは……」
絵里「見せて」
希「変だよ、えりち……」
絵里「変なのはそっち。何もないなら、見せて。早く」
希「……」スッ
絵里「……ありがと」
もう抵抗しても無駄だ。ウチは携帯を差し出す。それを奪いとるようにして、起動させる。
絵里「……なんでこんなににことメール、電話、してるの」
希「えと……それは……」
絵里「これも、"練習"?」
希「……」
絵里「――アドレス消すね」
希「え!?」
絵里「だって、必要ないでしょ? もう練習なんて要らないんだし」
希「でも、にこっちは友達で!」
絵里「……友達と恋人、どっちが大切?」
希「そういう問題じゃ……」
絵里「うるさい」
希「っ……」
どうしたの。なんで、なんでそんなに怖い顔をするの。なんで……。
絵里「はい、にこのアドレスと番号消しておいたから」
希「……」
絵里「……希……私、希が大好きなの」ギュッ
絵里「他の誰かに取られるなんて、絶対に嫌。不安なの……ね、分かって?」
希「……」
◇◇
あの日から、えりちの態度が激変してしまった。
誰かと二人きりでいるのを見ると怒りくるって、暴力まで振られそうになる。まだ振られたことはないけれど、怖い。
携帯のアドレスも、µ’sの中で残ったのは穂乃果ちゃんだけとなった。
えりちも穂乃果ちゃんだけは信用しているらしい。
絵里「今日話した人を教えて」
希「えと……凛ちゃんと、海未ちゃんと、花陽ちゃん」
絵里「にこは?」
希「話してないよ」
絵里「そう、良かった」
今日話した人を毎日聞かれる。それで気に入らなかったりすると、説教をされたりする。
でもそれが終わると決まって抱きしめてくれる。怖いけど、優しい。
絵里「じゃあ私、進路のやつ行ってくるから」
希「ふぅ……」
最近は進路のことが忙しいようで、その時だけは監視がなくなる。えりちのことは好き、やけど、疲れてしまう。
にこ「希」
希「っ……にこっち……」
にこ「……最近絵里とうまく行ってないんじゃない?」
えりちには秘密にしているけれど、進路の時になるとどこからともなくにこっちが出没して話をしている。
にこ「……みんな心配しているのよ。希にメールが届かないって」
希「……それは……えりちがみんなに説明したんやろ?」
にこ「ええ、意味わからなかったけどね。希に言うことがあるなら私を通せとか言って」
希「……」
にこ「じゃ、今日も早めに――」
希「にこっち……もう辞めよう……」
少しずつ、虜にされている自分がいることに、気がついてしまった。
これ以上して、しまうと……もう。
にこ「あんただってしたいくせに」
ウチの身体に手を伸ばしてくる。
希「んんぅ……」
こうなるともう抵抗する気はなくなってしまう。
甘美な刺激を与えられることで、疲れが吹き飛んでいくような。
にこ「希が辛かったら、言ってね。私が守ってあげる」
にこ「好きよ、希」
とくん、とくん。
そんなことを言われる度、胸が高鳴る。顔が熱くなる。
希「うぅ……」
もうわかっているんだ。
えりちにあんなことを言われてもにこっちとの関係を断ち切れない理由が。
疲れているとか、そんなことじゃないんだ。
いつからなんだろう。
――とっくににこっちのことも好きになっていたからだって。
◇◇
にこ「気持ちよかった?」
希「うん……」
希「なんで最近最後までやってくれる、の?」
にこ「……なんだか辛そうだから」
希「……」
希「……ウチ、どうすればいいん……」
希「ごめん……もうわかんないよ……」
希「……なんでこんなこと!!!」
希「なんでにこっちにこんな気持ち!!!」
希「嫌だよ……こんな気持ちなら、気がつかなきゃ……良かった……」
にこ「……」
にこ「希……絵里と別れて……?」
◇◇
絵里「ねえ真姫、あなたどうしてにこと希が浮気していると思ったの?」
真姫「あら、どうしたの? 結局不安になったから教えて欲しいの?」
絵里「……教えて」
真姫「……まあ、見ちゃったのよ。浮気現場?」
絵里「どんなこと?」
真姫「――キスしてた」
絵里「そ、そんなのありえるわけないじゃない!!!!」
絵里「希は私のモノよ!? にことキス!? ふざけるな!!!」
絵里「そうか、真姫はにこと別れたから私たちも別れさせようとしてふんでしょ、ねえそうでしょ!?」ガシッ
絵里「私と希の邪魔はさせない、邪魔はさせない!!!!」
真姫「痛いわよ! 離して、落ち着いて!!」
絵里「あ……」
真姫「……不安なら徹底的に調べてみたら? あなたが目の届かない時間とか」
絵里「私が目が届かない時間……」
◇◇
絵里「のーぞーみ」
希「おかえり」
希「一応ここはえりちの家じゃないんやけど……」
絵里「いいじゃない♪」
希「はあ全く……」
希「後は寝るだけやろ?」
絵里「希と一緒にねるー」
えりちを寝室に通して、ウチもそれに続く。
二人きりでいる時は前にも増して、甘えてくるようになった。
絵里「のーぞーみぃ」スリスリ
希「……」
にこ『希……絵里と別れて?』
好きな相手が、二人居る。
ダメなことは、分かっている、のに。
どちらの関係も断ち切れない。にこっちは真姫ちゃんとの関係を断ち切って……。
最低だ。最低だ。
絵里「ねえ、このクマのぬいぐるみって、ポケットついてるのね。知らなかった」
えりちがクマのぬいぐるみのポケットを漁る。
希「――ダメ!! そこは!!!!」
ぽろっ
絵里「何かしら……これ。プリクラ……」
ポケットから落ちたプリクラを拾い上げて、凝視する。みるみるウチに表情が歪んでいく。
絵里「あ……ぁぁ……」
絵里「うああああああああああああああ!!!!!!」
希「ひぃ……」
絵里「希!!! これはなによ!!!!」バンッ
ウチとにこっちがキスをしている、プリクラ。文字で恋人だとかなんだとか甘い言葉が書いてある。
絵里「……説明して!!!」
希「……」
希「ウチと、にこっち、恋人……だったんよ」
絵里「は?」
希「……ずっと前の話なんやけど。それはその時の」
絵里「……ずっと黙っていたの?」
希「……」
絵里「なんで隠してたのよ」
希「それは――」
パァンッ!!!!!
希「っ……」
乾いた音が響いた。
えりちがウチを叩いた音だと気がつくまでに時間がかかった。
絵里「ふざけないで……ふざけないで!!!!!」
絵里「なんで黙っていたの!? なんで元恋人とデートの練習なんてしたの!?」
パァンッ!!
パァンッ!!!!!
希「うぅ……ごめんなさ……」
パァンッ!!!!!!!!
何度も、何度も、叩かれた。
その間もえりちが色々なことを言っていたが、よく覚えていない。
これは罰なんだ。
希「うぅ……ごめんね……ごめんなさい……」ポロポロ
絵里「ふぅ……ふーっ」
絵里「――あっ……あぁ……希……ごめん、なさ……私、何考えて……」
絵里「大丈夫、大丈夫?」ギュッ
希「ううぅぅ……」
絵里「ごめんね、希……。痛かったわよね。本当にごめんね」
絵里「ちゅ……んむ……あん……」
えりちはウチを優しく抱きしめて、今までで一番優しいキスをしてくれた。
希「えり、ちぃ……」
絵里「ごめん……ごめん……」
えりちは謝り続けた。なんでそんなに謝るの、悪いのはウチなんやから。
絵里「……痛かったよね」
絵里「ねえ希、気持ちいいことしようか」
希「え……」
絵里「一番恋人らしいこと。ね?」ギュッ
◇◇
希「ん……んんぅ……」
絵里「気持ちいい?」
希「う、うん……」
絵里「こういうこと、初めてだけど……ごめんね」クチュックチュ
希「ん……ん……」
にこっち以外と身体を重ねるのは、初めてだった。
えりちはこういうことは初めてといいながら、攻めようとしたウチを押しのけて結局ウチは受けに回った。
絵里「可愛い」クチュックチュ
希「ん……」
結論から言うと、最後までイケそうに無かった。
えりちが身体を弄ぶ度に、にこっちの技術が凄かったんだと実感する。
初めてだからと電気も消しているし……。
――どうしよう、演技、しようか。
希「えりちぃ……んっ、イク……っ……うぅぁ!!」ビクビク
絵里「……気持ちよくなってくれた?」
希「う、うん……」
絵里「良かった……」
絵里「ごめんね、希」
絵里「私、希が他の人に一瞬でも取られていたなんて、考えたくなくて……」
ヤバイ……中途半端に弄られたせいで……。
希「そ、そっか……」
絵里「……一緒に寝るの、本当に幸せ」
希「うん……」
絵里「疲れちゃった……お休み……」
希「お休み」
初めてのことで緊張したのかな。えりちから控えめな寝息が聞こえてくる。
でも、ウチの煩悩が収まりそうに無かった。
ここ最近ずっとこれ以上にないくらいの快楽を与えられ続けて……。
希「んっ……んぁ……んんん」
希「にこっ……ちぃ……んぁ……ぁぁ」
えりちが寝たのを確認して、火照った身体を収めるために、にこっちの指を想像しながら慰める。
希「ごめん……ウチ、もう……」
身体が、にこっちの指を求めていた。
それは心すら凌駕するもの、だった。
絵里「……」
◇◇
希「ひっぐ……うぅ……どうすれば、いいの……」
夏休みも終わりに差し掛かる。
えりちの束縛は強くなっていく一方だ。µ’sのみんなには悟られないように、だけれど。バレるのも時間の問題。
事あるごとに暴力も振られるようになった。違う人と二人きりでいたりすると、特に激しい。
でも、暴力を振った後は優しくしてくれる。想ってくれている。
希「……アザ見えないよね」
肩の辺りが痛む。ここならアザも見えないからまだいい。
希「最近にこっちと……何もしてないな」
えりちへの想いも、にこっちへの想いも、どんどん大きくなっていった。
希「うぅ……もう、わかんないよ……」
なんでこんな気持ちに気がついてしまったんだろう。
――こんな気持ちなら、気がつかない方が良かった。
にこ「希」
希「……」ビクッ
にこ「……何をそんなに怯えているの」
希「二人きりはダメやから」
にこ「絵里に言われたの?」
希「……」
にこ「……肩痛いの?」
にこ「見せなさい」
希「いや!」
にこ「……凄いアザ……」
にこ「絵里にやられたのね」
にこ「どうなの!?」
希「ウチが悪いことやから……」
にこ「今日の練習休む?」
希「……」
にこ「……」ギュッ
にこ「もう、楽になっていいのよ。一人だけで抱え込まないで」ギュッ
にこ「んっ……希……ちゅ……」
希「あむ……んっ……」
絵里「――はぁ……やっと尻尾を見せたわね」
希「!?」
希「えりち……進路のやつじゃ……!?」
絵里「嘘よ」
絵里「おかしいと思ったの。私がいくら希を好きでも、希の中には常に誰かがいる」
絵里「――真姫から聞いてたけど、にこだったのね」
絵里「どうして希……にことは何も無いって言ったじゃない!!!!」
希「ぁ……ご、ごめ……」
絵里「どういうこと!?」
にこ「……」
にこ「あんた、希に暴力振るってるんだって?」
絵里「……好きだからよ」
にこ「何を言っているの? 暴力振るっていいわけないでしょう」
絵里「希は私のモノ!! にこ、あなたなんかに渡さないわよ」
にこ「へえ……モノ……ねえ。希をモノとして見ているの? 最低ね」
絵里「人の恋人を寝取ろうとする人の方が人として最低だと思うけど?」
にこ「あんたに魅力があれば希だって私のことなんか好きにならなかったんじゃない?」
絵里「ふざけるな……ふざけるな!!!」
絵里「にこのせいで希がおかしくなった!!!!」
絵里「返せ!! 希を返して!!!!!!」グイッ
にこ「こうやって、こうやって希にも暴力振るったの!?」
にこ「希の気持ちを考えろ!!」
絵里「こっちのセリフよ!!」
絵里「もうこれ以上希を苦しめるな!!」
絵里「恋人の私の方が希のことを好きに決まってる!! 部外者は引っ込んでて!!!」
にこ「恋人だからって何をしてもいいわけないでしょう!? 私の方が、私の方が希のことを愛してる!!!」
絵里「希!!」
絵里「私の方が好きよね!?」
にこ「希……」
希「あっ……ぁぁ……」
希「――もう……もう、やめて!!!!」
にこ「……」
絵里「……」
希「もう、やめて……ごめん……全部……全部ウチのせい、やから」
希「ごめん……」ポロポロ
穂乃果「――練習するぞー!!!」
穂乃果「あ、あれ……ど、どうしたの?」
ことり「んー?」
海未「……一体どうしたのですか」
希「うぅ……」
にこ「……」
絵里「……」
希「ごめん、ごめん……」
もう、いつもの日々には、戻れない。
ごめん、私のせいで。
私が弱かった、から。
二人がいがみ合って、争い合う所なんて、見たく無かった。
ごめん。
でも、これもウチの弱さが招いたこと。にこっちにデートのシミュレーションを頼んだのも、一人で出来なかったウチの弱さ。
にこっちとの関係を断ち切れなかったのも、えりちに束縛までさせてしまったのもウチの弱さのせい。
そして最後も、どちらを選ぶことも出来ず……なんにも出来なかった。
希「みんな……ごめんね」
私は、最後まで逃げる道を選ぼうてしている。
ああ、弱いなぁ。本当に弱い。こんなことで、私はこの道を選ぶなんて。一番大切な居場所すら無くそうとしてしまうなんて、これが弱さの代償だとしたなら……それも仕方ない。
――みんな、今までありがとね。
◇◇
にこ「……」
絵里「……」
穂乃果「ふ、ふたりとも……」
にこ「なに?」
絵里「……」
穂乃果「ご、ごめん」
真姫「――無様ね」
真姫「いつまで引きずっているつもり」
真姫「いずれ希だって学校に来るようになるわ」
真姫「そしたら、また三人で話し合うことね」
にこ「っ」キッ
絵里「」キッ
希が学校に来なくなってから一週間が経過していた。とっくに新学期は始まっているけれど、音沙汰がない。
私はその場に居なかったからわからないけど、三人で修羅場でも起こしたんだろう。
本当に、馬鹿みたい。
絵里とにこちゃんはその間全く会話がなく、µ’sの雰囲気も最悪になっていた。
頼みの穂乃果も恋愛関係では全く頼りにならない。
この現状を打破出来る人は、誰も居なかった。
三年生という中核が無くなって、µ’sというグループはどこまでいけるのだろう。空中分解する、そんな未来しか見えない。
真姫「そんなのは嫌」
真姫「……希を呼びに行くわよ。にこちゃんと絵里は来ないで」
海未「ですが……」
真姫「自分で言っておいてあれだけど、我慢出来ない。希を連れ戻すの――」
花陽「――大変です!!!!」
海未「どうしたのですか」
花陽「希ちゃんが、希ちゃんが!!!!!!!」
にこ「!?」
花陽「――転校、したそうです」
絵里「は!?」
にこ「それ、どういうことよ!?」
にこ「絵里! 早く電話して!!」
絵里「わ、わかった」
それを聞いて身体の中の熱いものがこみ上げてくる。だがそれもスッと引いていった。
勿論、驚いたことは驚いたのだが……それ以上に冷めていく私が居た。
予想なんてしていなかったけれど……驚くほど冷静に驚くほど第三者目線から今のµ’sを見ることが出来た。
誰も統率を取れない。今のµ’sは一つのことに向かう姿勢なんて無かった。
きっとにこちゃん絵里希の関係がこじれだした時からこの運命は決まっていたのかもしれない、なんて想う。
花陽があんな表情をするんだもの。嘘じゃないことくらいわかる。
希は逃げた、か。
µ’sは9人じゃなきゃダメ。そんなことを言った人が、いなくなるんだもん。
もうこの近くには居ない、のかな。
みんなは必死になって希に電話をかける。
絵里「希……希……」
そして――誰一人として希と繋がることは出来なかった。
真姫「本当……最後まで面倒な性格ね」
真姫「――あなたは今どう想ってるの?」
◇◇
希「……みんな、ごめんね」
希「なんて思うかな。責められてるかな」
希「もう、今となっては、わからないや」
新しくて、慣れない校舎。祖母の家にほど近いところ。
遠い、遠い場所。
前居たところよりずっと田舎で……。
――本当、ウチって逃げてばかりやね。
目の前には新しい教室。この奥にはまた色々な人が居るんだろう。
私が出会う新しい関係は、どんなものなんだろう。
あんまり深い関係にはなりたくないな。
――大丈夫、新しい教室に入るのは小さい頃から恒例だ。慣れてる、大丈夫。
また少しだけ仮面を被って、いい人を演じればいいだけ。関西弁は今回は封印しようかな。
――ばいばい、みんな。
ガララ
希「――初めまして、私は東條希と言います。短い間ですが、宜しくお願いします」
終わり。
もう中盤辺りから超投げやりになってしまいした。ワンパターンでグダグダで申し訳ありません。もう鬱系のは書けそうにないようです…。
ここまで読んでくれた方は、本当にありがとうございます。
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お暇な方は見て頂けると嬉しいです。
このSSまとめへのコメント
すでに不穏な匂いしかしないんですが
良いねぇ。ゾクゾクします。にこまきのぞえり大好きです。
この4人のどろどろものは大好物
今のところあんまりドロドロ感がないね、「人という漢字」では希ちゃんが報われなかったから今回はにこにーかえりちかと幸せになれるといいな、あと、少し真姫ちゃんがキモい
続き見たいけど見たくねぇ―w
展開が容易に予想できる...ホント頼むぞ!
続き見るから。
のぞにこものぞえりも好きな俺にとってはまさに最高のssだった。
主にはまた鬱書いて貰いたい
やっぱり希ちゃんは報われないのか...
でも、面白かった。