スライム娘「……私は、勇者」ドヤァ (22)


~ 約300年前 ~


スライム「ぴー」ウロウロ

スライム「ぴっ?」ツルンッ…


< ゴロゴロゴロゴロ……!! 「ぴぃぃいいいいいっ!?」バッシャーン!!



< バチャバチャバチャバチャバチャバチャ!!!!

< ……シー…ン…



────────── ザバッ



スライム娘「ケホッ…ケホッ……」ヨロヨロ…

スライム娘「……ぁ…う?」




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~ 300年後・現在 ~


スライムベス「スラちゃん、いるかしら」ミョンッ

< コンコンッ

スライムベス「……」

スライムベス「やっぱりいないのねぇ、となると泉で子どもたちと遊んでるのかしら」

スライムベス「仕方ないわねぇ」


< ミョンッ…ミョンッ…


スライムベス「キングスライム様が呼んでるのに、困ったスライムだわ……本当に」




──────── 「すごーい! ボク、水の上を歩けてるよ!」



バブルスライム「凄いや! ねぇねぇ、私も乗って大丈夫かな?」

ぶちスライム「おれもー!」ミョンッ


スライム娘「……」コクン

スライム娘「お水は……お昼までは凍ってるから、平気」ニコッ


バブルスライム「やったー!」ブミョンッ

ぶちスライム「わっとと、本当だ! 凄い凄い!! 冷たくて気持ち良いやっ!」ミョンッ


< 「そうだ、歩ける泉で鬼ごっこしよー!」

< 「さんせい! じゃあじゃあ、私が鬼ね!」

< 「ボク、メタルスライムだけど本当にそれで良いの?」

< 「メタル君はボミオスの杖で遅くしてからだよー」

< 「ええっ……」



スライム娘「……」

スライム娘「…♪」クスッ


< 「ここにいたのね」


スライム娘「……?」

スライムベス「おはよう、スラちゃん」

スライムベス「今日も私のとこの息子達と遊んでくれてたのかしら」

スライム娘「…うん」

スライム娘「ぶちスライムは元気いっぱいで……とても良い子だし、バブルちゃんも…頭が良い」

スライム娘「……あの子達は、きっと将来この集落のトップで皆を守ってくれる」ニコッ


スライムベス「ふふ……あなたのおかげよ」

スライムベス「それはそうと、キングスライム様が呼んでらしたわ? 何だか急ぎみたい」


スライム娘「……!」

スライム娘「お爺ちゃんが……?」


< バンッ!

スライム娘「っ…お爺ちゃん……!」


キング「……おお、その声はスライムかの…よく来てくれた…」ゴホッ…ゴホッ…


スライム娘「……目が…もうあまり…?」

キング「うむ……数日前からの…」

キング「恐らくお主の回復や治癒の魔法ではどうにもなるまい……それがワシの運命、限界なのだ」

スライム娘「……」

キング「それより……スライムよ、覚えておるかのぉ…」

スライム娘「…?」

キング「25年前……ワシが生まれたばかりの頃、お主はワシによく様々な本を読んでくれた」

キング「……一歳の時だったか…ワシがお気に入りにしていた本を一冊、お主はワシにくれたな」

スライム娘「……」コクン


スライム娘「…覚えてる、誕生日プレゼントにあげた……『勇者伝説』」


キング「…………」

キング「……やはりお主は…ゴホッ…特別なのだな」


スライム娘「……?」コクン…?


キング「……スライムよ、ワシは…お主に本を譲って貰ってからずっと考えていた」

キング「お主は……何なのか…と」


スライム娘「……」


キング「ゴホッ…集落の者達は、とくには考えぬ」

キング「お主はワシ達の生まれた時にはいた、そして親の生まれた時にもだ」

キング「スライムがこの集落にいる事は、とても自然な事だと思ってきた」

キング「だが……ゴホッ…ゴホッ…」


スライム娘「……っ」

スライム娘【ベホマ】ポゥ…


キング「ぉお……すまぬ、しかし変わらぬな…温かいものだ…」

スライム娘「……」ニコッ

キング「…だが、ワシは考えていたのだ……スライムは、恐らく我々の理解を越えてると」

キング「そして……スライム、お主が伝説の勇者だと…」


スライム娘「……」

スライム娘「え?」


キング「『伝説の勇者の姿は決して人であるとは限らない』」

キング「あの本の最後に書かれた文章だ…ゴホッ…ワシはそれを見て、一時は自分が勇者なのだと思いもしたものだ」

スライム娘「……喜んでいたのは見ていた」

キング「ゴホッ…ゴホッ……のぉ、スライム…」

スライム娘「なに…?」

キング「お主が勇者なのだと、そう思う理由は……ワシ達が生まれるより遥か昔からお主が遊んでいるあの泉だ」

スライム娘「泉……が?」


キング「人間の持つ書をも見て知ったのだ……この世界の何処かには二つの泉があると」

キング「1つは……魔王を生み出す生命の泉」

キング「そしてもう1つは……ゴホッ…! ゴホッ……グッ…ゴホッ…!!」


スライム娘「お爺ちゃん…!」


キング「……もう1つは、神々に祝福されし精霊の泉だ…」

キング「魔王が生まれたのは…此処ではない、そして此処にある泉には遥か昔は飲めば傷が塞がったそうだ……」

キング「わかるかの…? つまり……あの泉は、お主をその姿にした泉とは『勇者伝説』に記されている勇者を生み出す精霊の泉……!」


キング「お主が、この混沌とした世界を救う勇者なのだ……」



スライム娘「私が……勇者…」


キング「スライムよ、ちょっとワシに手を貸してくれぬかの」

スライム娘「?」

< スッ…

キング「……ゴホッ…そこの、本棚にある中で1つ青い本がある…」

キング「それを奥に押し込めば……隠し扉が開くのだ…」

スライム娘「……」コクン


< スタスタ……

< 「……」

< ガコンッ!


< ギギギギギギ・・・・・


スライム娘「……!」

キング「スライムファングとメカスライムの二人に作って貰ったのだ……ゴホッ…ゴホッ…」

キング「お主に渡したい物がある……着いてきてくれ…」

スライム娘「……」



< ペタ…ペタ…

キング「ゴホッ…ゴホッ…」

キング「……お主の体格では狭いかもしれぬな…すまないの」


スライム娘「……」

スライム娘「大丈夫」


キング「……ゴホッ…ゴホッ………そろそろ扉がある筈だ、そこはワシの王冠にあるサファイアをかざせば開く…ゴホッ…」

スライム娘「…サファイア…って、青い宝石のこれなの……?」

キング「うむ……ゴホッ…ゴホッ…!!」

スライム娘「! ……待ってて、いま開けるから… 」スッ



< キィンッ・・・!

< ガチャッ!



キング「……開けてくれるか、スライムよ」

スライム娘「うん」ガチャッ…ギィィ……



キング「……ゴホッ…ハァ…ハァ…ッ!!」グラッ

< ドサァッ!


スライム娘「お爺ちゃん…!」

キング「すまぬ……スライムよ…ハァ…ッ、ワシにどうやらお迎えが来てしもうた…」

キング「……だが、ここで召される前に…」プルプル…

スライム娘「………」



スライム娘【ホイミ】ポゥ…



キング「…ああ、お主は……本当に優しいスライムだ」

キング「……そこの円卓に乗っている紙と、奥にある部屋に用意された物を持っていくといい」

スライム娘「……? 持って…いく…?」

キング「お主がその姿になったのは、ほぼ間違いなく泉の力だ…そして、今の世界は…勇者を必要としている」

スライム娘「分からないの……お爺ちゃん、あなたは何を言ってるの…」


キング「これは……ゴホッ!! ゴホッ!!…ぅ…運命なのだ…」

キング「お主はワシと出会い…そして、きっとこれまでのワシが見つけてきた物はお主の為に役立ち…世界は、お主に救われる…」

キング「……ゴホッ…ハァ…ッ、ハァ…ッ、すべては………精霊様のお導きだったのだ…きっと…」


スライム娘「………」

< ぎゅぅ……

キング「っ……?」






──────── 「お疲れ様……もう、頑張らなくて良いんだよ…?」






キング「……ぁ…」

スライム娘「……うん」

キング「なら……」すぅ…

キング「…おやすみ……スライム…」


< ポワァ…ン……


スライム娘「……」

スライム娘「おやすみなさい」ニコッ


スライム娘「きっと、天国で皆と遊べるから…大丈夫だからね」


スライム娘「……」

スライム娘「……」

スライム娘(円卓に乗っている紙……)

スライム娘「……」スタスタ…


─── 集落の泉 ───




ぶちスライム「えへへっ、まてまてー!」ミョンッ

メタル「あわわ……ボミオスかけすぎだよ追いつかれちゃう…っ」ミョンミョンッ


< ヒュンッ!!

メタル「え?」ガキィンッ

メタル「わ、わ、わっ!? なんで矢が飛んで……」


ぶちスライム「わーッ! 危ない、危ないよぉ!!」ミョンッミョンッ

< ヒュンッ!! ヒュンッ!! ヒュンッ!!


バブル「きゃぁああっ! ママぁ!!」



スライムベス「……」じっ…

スライムベス【メラミ】ギュォッ



────────── ゴォオオオオッッ!!!


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