聖剣「ふざけんな」(13)
勇者「黙れ」
聖剣「いやあああ!いやなのおおお!こんなむさ苦しいのが勇者なんてえええ!」
勇者「見た目は関係ないだろ!」
聖剣「ううっ。ドワーフの父さんに鍛えられて、ずっと宝物庫で勇者を待ってたのに……こんなのだなんて……」
勇者「こんなの言うな」
聖剣「影のあるイケメンや凛々しい女騎士みたいなのがいいぃぃぃ!」
勇者「うるせえっ!」
聖剣「というか丁寧に手入れしてくれるのはいいんだけど手つきがなんかいやらしいんだよね」
勇者「叩き折るぞ」
聖剣「えー、折っちゃっていいの?自分で言うのもなんだけど僕は聖剣として最高傑作だよ?僕を上回る剣なんてこの世に存在しないよ」
勇者「くっ……!」
聖剣「そんな聖剣を振るうのにさー。もっとビジュアルを大事にしてほしいよね。勇者がむさ苦しいおっさんで僕すごく驚いちゃったよ、ドッキリかと思ったし。というかドッキリだと言ってほしいな」
勇者「残念、俺が正真正銘の勇者だ。というか勇者という大事な役割にはベテランがついて当然だろうが」
聖剣「そうなんだけどさー。なんだかなー」
勇者「ったく。これから仲間を集めに行くんだから静かにしてろよ?酒場に集まっているらしい」
聖剣「善処するよ。ところでおじさんてなにしてた人?」
勇者「軍で兵士やってた。難しいこと考えるのは苦手だが腕っ節は強かったんでな。めでたく勇者に認定されたってわけだ」
聖剣「……それだけ?」
勇者「あん?」
聖剣「こう……魔王と因縁があるとか。代々勇者の一族だとか……」
勇者「そんなものはまったくないな」
聖剣「ええー……」
勇者「つうか魔王も勇者もすっげえ昔の話でな。今回も魔王が出たと聞いても俺はもちろん国も眉唾もんだと思ってたらしいぜ?」
聖剣「なにそれ……」
勇者「で、魔物の動きも活発化して魔王からの宣戦布告が来て大慌てで伝説通りに勇者を仕立てたわけだ」
聖剣「……そんな事情が」
勇者「知らなかったのか?」
聖剣「ずっと宝物庫に居たからね」
勇者「それで送り出された俺たちなわけだが……ぶっちゃけあんまり期待されてない」
聖剣「えっ」
勇者「仲間を含めても数人。たかだか数人で状況をひっくり返せるわけがないだろ」
聖剣「頑張り次第ではなんとかなるかも」
勇者「無理に決まってんだろ」
聖剣「なんで最初から諦めてるのさ!おじさんは強いんじゃないの!?」
勇者「人間としちゃあ強いさ。人間としてはな。でもそれだけだ。魔物がひしめく魔王の元になんかいけるわけがない。本当に昔の勇者はどうやって魔王を倒したのかね?」
聖剣「え、それじゃあ魔王を打ち倒した剣として国宝になる僕の夢は……」
勇者「知るか」
聖剣「ひ、ひどいよ!諦めないで頑張ろうよ!」
勇者「それなりには頑張るさ」
聖剣「違う!それなりにじゃなくて魔王を倒すの!」
勇者「さーて、仲間を探しますか」
聖剣「ねえ、聞いてる!?」
勇者「はいはい、聞いてますよ」
酒場
聖剣「僕は国宝としてずっとちやほやされ続けるんだああ!」
勇者「うるさくてすまない。勇者だ。仲間を探しに来たんだが」
主人「来たか。どいつもこいつも屈強の戦士ばかりだぜ」
聖剣「ねーねーねー」
勇者「黙ってろ」
聖剣「何この扱い!?僕は聖剣だよせ・い・け・ん!」
勇者「はいはいはいはい」
聖剣「はいは一回でしょ!ねー、酒場のおじさん」
主人「喋る聖剣か……な、なんだい?」
聖剣「イケメンはいる?」
主人「……は?」
聖剣「凛々しい女戦士とかも!」
主人「ま、まあ居ることにはいるがそれよりもやはり屈強な熟練の戦士達の方が旅の助けになるだろう」
聖剣「いや!勇者のおじさんは仕方ないとしてもこれ以上むさ苦しい人はお断り!」
主人「え、えーと……」
勇者「こいつの言うことは無視してくれ」
主人「は、はあ」
聖剣「嫌だー!嫌だー!華がないと嫌だー!むさ苦しいパーティーなんて嫌だよー!」
勇者「うるせえっ!」
聖剣「いいじゃんいいじゃん!長い間旅するなら華やかな方がいいでしょ!?ねっ!?」
勇者「おとぎ話とかじゃねえんだぞ。腕が立つ奴を連れていくのが当たり前だろうが」
聖剣「ほどほどに頑張るんじゃなかったの!?」
勇者「死ぬ可能性もある。リスクを下げるのは当然だろ」
聖剣「うーん……ほら、あれだよ!あんまり強い人ばかり連れて行くと国の護りが心配だよ!ある程度育てることも視野に入れようよ!」
勇者「それなら別に美形でなくてもいいな」
聖剣「うわあああん!いじわるううう!」
勇者「というかお前は魔王を倒したいんじゃなかったのか?さんざん駄々をこねてるがよ」
聖剣「華やかなパーティーで魔王を倒したいの!」
勇者「付き合ってられん」
聖剣「なんで!?」
勇者「なんでもなにも、ガキみたいなわがままばかりほざきやがって。聖剣なら少しは聖剣らしく振る舞ってみろよ」
聖剣「……そうしたら華やかなパーティーにしてくれる?」
勇者「考えてやる」
聖剣「ん、んんっ……主よ、見目に優れた仲間が良いと思う」
勇者「言ってる内容が変わってねえぞ」
聖剣「主よ。聖剣としてもここは譲れない」
勇者「てめえのどこに聖剣らしさがあるのか問い詰めてみてえな」
聖剣「何を言うのだ。私の振る舞いはどこから見ても聖剣ではないか」
勇者「親父。適当に熟練の戦士を紹介してくれ。強ければ見た目はどうでもいい」
聖剣「なっ!約束が違う……ではないか!」
勇者「約束通りちゃんと考えたぞ。そして結論はでた」
寝る。設定的に短く出来なさそう。失敗した
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