勇者「民主主義に殉ずる。」(14)

魔王「民主主義は絶対正しいのか?」
魔王「民主主義は絶対正しいのか?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1368539041/)
の続きです。

先に読むといいかもしれません。
(なお、単独でも読めるようにしています。)


私の国には、笑顔がある。

私の国には、感動がある。

私の国には、悲しみがある。

私の国には、怒りがある。

この国には、怒りしかない。

なぜだろう、斬っても斬っても、魔物の怒りの姿しか思い出せない。

私の国は素晴らしかった。

この国は悲しかった。

ただ、それだけであれば楽だった。

悲しみを知ったとき、私はどうすれば良かったのだろうか。

それを教えたのは

何を隠そう

魔王だった。

魔王は、せっかく前の魔王の支配から抜け出したこの国を混沌とさせた。

それだけでなく、私の国も大きな悲しみを作った。

父は、魔物に殺された。

彼も殺された。

友人も殺された。

多くの人々が殺された。

復讐のために、私は勇者と名乗った。

前任の勇者は、かつての魔王を葬った。

私も、新たな魔王を斬った。

勇者という役目を果たした。

なのに・・・この虚無感はなんだろう。

私の国の民衆が、勇者の再来を知ったとき、多くの支援を行った。

忌わしい魔王を倒してくれ。

私の母の復讐を果たしてくれ。

魔物を殺せ。

17の女の子だった私に、多くの願いがこめられた手紙も送られてきた。

当時の私は、そんな手紙をただ願いを込めて読んでいた。



あなたの思いを、変わりに私が果たします。



今思うと、狂っていたんじゃないかと思いたい。

魔王は言った。

我は愚かなりと。

私はその言葉に怒った。貴様は何のために、私の父を殺したと。彼を殺したと。友を返せと。

魔王は反論することなく、私に言葉を続ける。

我はお前なり。

・・・なんだ、それは。それはどういう意味だ。そう聞くとこう答える。



時期に知る。

その言葉がここ10年、頭の中を駆け巡る。

まさか、ここまで反芻するものとは、思わなかった。

思わなかったからこそ、未だに輪廻の魂のように残っているのかもしれない。

思い出は、さらに魔王の言葉が続く。



貴様の国は、どんな国だ?

こう問いかける魔王は、なんて愚かな奴なんだと私は思った。

私の国には、笑顔がある。

私の国には、感動がある。

私の国には、悲しみがある。

私の国には、怒りがある。

感動があり、人々に豊かな心がある。

貴様はそれを全て怒りにした。



私はそう呟いた。

魔王は返した。



同じだ。

何?という声と顔が同時に出た私に、魔王は言葉を続ける。



我が魔王になる前、貴様の国も我の国も全く同じだった。



同じ?何を言う!そう思う私を無視するかのように、魔王は言葉を続けた。



我が住んでいた国も、貴様と同じ心があった国だった。

私には、何を言っているか分からなかった。

魔王は、若い私に戦争の歴史を教えてくれた。

私が、知っていた戦争だった。

私の国が、敵を倒した戦争。

それは知っている。

そんなことを聞いてどうする。

人と魔物がどうして相容れようか。

敵は敵でしかない。そう。敵は敵だ。

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