海未「も、もうしわけ....げほっ」

海未「ごほっ、ごほっ」

絵里「...ちょっと海未、本当に大丈夫？」

絵里「ここ最近ずっとそんな感じじゃない」

希　「風邪じゃないって言ってたけど...」

凛　「そんなに長引くとちょっと心配だにゃー」

海未「いえ、熱などはありませんし...」

海未「ちょっとした体調不良だと思うのですが」ｺﾎｯ

海未「...すーっ、はーっ」

海未「もう大丈夫です、練習を再開しましょう」ｽｯ

真姫「ちょっと待って」

海未「？」

凛　「真姫ちゃん」

真姫「...そんなこと言ってて、もし重い病気が手遅れになったらどうしようもないでしょ」

真姫「一度、うちの病院でちゃんと診察をした方がいいわ」

海未「ごほっ...大丈夫です。この程度、あと数日もすれば治ると思いますので」

花陽「海未ちゃん、この前もそういってたけど、もう二週間だよ....？」

海未「大丈夫、本当に大丈夫ですから...けほっ」

穂乃果「海未ちゃん....」


海未「こほっ......ごほっ.......げほっ！」


穂乃果「！？」

ことり「う、海未ちゃん！！！」

海未「げほっ！...はっ...ぁっ.......っ...！」

にこ「え、ちょっ、ちょっと海未！しっかりしなさい！！」


海未「...ぜっ...ゲホっ.......ぁ...！」

海未「ぐ...ぅ......ごほっ...！！」 ﾋﾞｼｬ


真姫「！！？」

絵里「海未！！」

希　「海未ちゃん！！」


ﾎﾞﾀﾀ


凛　「え.....？」

凛　「ねぇ、それ.....」


凛　「血.....！？」　


海未「...ぅ」ﾌﾗ


ﾊﾞﾀﾝ

ﾍﾞｼｬ

-病院-


海未「......」

海未「.........」

海未「...........ん」ﾊﾟﾁ


母　「！！海未さん！」

穂乃果「海未ちゃん！目が覚めたんだね！！」

ことり「よかった...あ、すぐ先生を呼んできますっ！」ﾀﾀｯ



ｶﾞﾁｬ　ﾄﾀﾀﾀ...

海未「ここは...病院？」

穂乃果「うん...真姫ちゃんのお父さんの病院だよ」

海未（病院のベッドの上...ということは、患者は私でしょうか）

海未（...ここにくるまでの記憶がありません）


海未「穂乃果、私は」

海未「私は、どうなったのですか......？」


穂乃果「...覚えてないんだね」

穂乃果「海未ちゃん、練習中に突然血を吐いて倒れたの」

海未「え...私が...血を？」

穂乃果「すごい量でみんなびっくりして...」

穂乃果「必死に名前を呼んだけどぜんぜんこたえてくれなくて」

穂乃果「とにかく病院に連れて行かなきゃって....」

穂乃果「それで、救急車を呼んで真姫ちゃんの病院に...」ｼﾞﾜ

穂乃果「それから、海未ちゃんのお母さんに連絡して」ｳﾙ

穂乃果「それで...それで...」ｳﾙｳﾙ

海未「穂乃果........」

海未（目を真っ赤にして...それほどまでに心配をしてくれたのですね.....）

穂乃果「私、海未ちゃんにもしものことがあったらどうしようって」ｳﾙｳﾙ

海未「......心配を掛けてすみませんでした、穂乃果」ﾅﾃﾞ

穂乃果「ううぅ...海未ちゃん...！！うわああああん！！」ｷﾞｭｯ

海未「あぁ、お、落ち着いてください、穂乃果」

穂乃果「海未ちゃんのバカ！本当に死んじゃうかと思ったんだから！！」

海未「本当にすみませんでした....こほっ」

穂乃果「！」

海未「ごほっ、ごほっ...！」

穂乃果「海未ちゃん！」

母　「海未さん...！今お医者さんが来てくれますからね！」

母　「大丈夫ですからね！！！」　

海未「げほっ....！げほっ...！」ﾊﾟﾀﾀ

穂乃果「あ、あぁ......誰か...」ｷﾞｭｩｯ

穂乃果「誰かお願いだから」

穂乃果「海未ちゃんをたすけてよぉ！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

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海未（それから私は、真姫の病院で様々な検査を受けました）

海未（その結果は私には知らされませんでしたが）

海未（暫く退院できないということ）

海未（それに周囲の反応から、なんとなく察しがついてしまいました）


海未（私は.....)


海未（私は.....重い病気...なのですね）


海未「...............こほっ」

海未（.......）

海未（.......）

海未（...........）


海未「しばらく練習は、おやすみですね....」ｹﾎ

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海未（飛ぶ様に季節が過ぎました）

海未（冬が過ぎ、春が来て....また冬がやって来ました）

海未（その間私はずっと、この病室から外を眺めて過ごしました）

海未（......私の身体は、日に日に弱ってきています）

海未（じき、満足にしゃべることもできなくなるでしょう）


海未（.......）


海未（...叶うなら）

海未（まだ、身体の動くうちに）


海未（もう一度μ'sの皆と踊りたい....）

海未「ライブとは言わなくても...」

海未（.........そうです）

海未（日舞でしたら、あまり激しい動きはありませんし、今の私でも踊れるかもしれません）

海未（あぁ、もしかしたら弓道もまだ...）

海未（頑張ればきっと、ダンスだって...）

海未「......」ｳｽﾞ

海未「......」ｷｮﾛｷｮﾛ

海未（誰もいませんね...）


ｺﾞｿｺﾞｿ


海未「ずっとベッドでいい子にしていたんです.....」


ｷﾞｼｯ


海未「少しぐらい、いいですよね」


ﾃｸﾃｸ

ｶﾞﾁｬ　ｷｨｨ

ﾃｸﾃｸﾃｸ

ﾃｸﾃｸﾃｸ

ｺﾝｺﾝ　ｶﾞﾁｬ

穂乃果「やっほー海未ちゃん...って、あれ？」

ことり「いないの？海未ちゃん」

穂乃果「うん、今日は検診とかなかったはずだけど...」

ことり「もしかしたら、お散歩してるのかなぁ」

穂乃果「あ、そうかも！ちょっと探しにいってみよう！」

ことり「うん！」

-中庭-

海未「はあ....はぁ」ﾃｸﾃｸ

海未（ほんの少し歩いただけでこんなに疲れるとは）

海未（だいぶ体力が落ちていますね...）ｾﾞｪ


ｶﾞﾁｬ

ﾃｸﾃｸ


海未「中庭.....ここなら」

海未「......ふぅ」

海未（なんだかドキドキします）

海未（ふふ、誰が見ているわけでもないというのに）

海未「...よし」

海未（さて、身体が覚えていると良いのですが.....）


海未（　♪　♪　♪　～～）


ﾀﾝﾀﾝﾀﾝ


海未（最初は右足を....）ｽｯ



ｶﾞｸﾝ



海未（っ！！？）


海未（あれ....力が、入らな...っ）



ﾍﾞｼｬ

海未「----ごほ」


海未（......そう、でしたか）

海未（私の身体、もうとっくの昔に）

海未（ぽんこつになっていたんですね）


海未「......」

海未「......」

海未「....みんなのはーと、うちぬくぞー」

海未「......ばぁんっ」

海未「......」

海未「......」ﾖﾛ

海未「病室に...戻りましょう」ﾖﾛ

ﾃｸ　　ﾃｸ



ｿｯ

ことり「...っ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

穂乃果「海未ちゃん...っ」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

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海未（私の世界はまた、ベッドとその周りにあるものだけになりました）

海未（小さな世界...）

海未（もう、自分の力だけは起き上がることもできません）



凛　「海未ちゃん、今日は海未ちゃんみたいにきれいな花をもってきたにゃー！」

真姫「私がみつけたのよ」ﾄﾞﾔ

海未「そうですか...ふふ、ありがとうございます」ﾆｺ



海未（こんな私のところに、皆毎日のようにお見舞いに来ては）

海未（明るく語りかけてくれます）

絵里「はいこれ、亜里沙からのお見舞い！」

海未「これは...ぬいぐるみですか？」

絵里「あの子、頑張って作ったのよ」

絵里「大切にしてくれるとうれしいわ」

海未「うれしいです...絵里、ありがとうございます」ｺﾎｯ

海未「とても....」ｷﾞｭ

絵里「海未...」

希　「エリち」ｿｯ

絵里「あ...ああ、ごめんなさい」

絵里「亜里沙にも伝えておくわ。海未がとても喜んでたって」

海未「はい、よろしくおねがいします」ｹﾎ

海未（時折見せる悲しげな表情）

海未（私は気づかぬふりをしてほほえみます）

海未（『穂乃果、ことり、私がいないからといって、勉強をさぼってはいけませんよ！』）

海未（なんて。もう穂乃果たちの方が頭はいいのでしょうけれど...）ｸｽ


海未（絵里たちはもう卒業してしまいましたが、OBとして活動を支えてくれています）

海未（......ですが）

海未（今年穂乃果とことりが卒業してしまったらどうするのか、私にはわかりません）

海未（だから、私は....）



海未（最初で最後のわがままを言うことに決めました）

絵里「ライブが観たい？」

海未「ええ.....絵里たち８人のライブを、もう一度観たいのです」

海未「生でなんてわがままは言いません」

海未「ビデオでいいのです......ダメですか？」

真姫「そんなわけないじゃない」

にこ「8人でってところが、ちょっと物足りないけどね」

花陽「ちょっ、にこちゃん」

海未「ふふ......」ｺﾎｯ

穂乃果「......海未ちゃん、なにかリクエストはある？」

穂乃果「海未ちゃんの為だもん。どんな曲でも、最高のダンスを踊ってみせるよ！」


海未「ありがとうございます、穂乃果....では」

海未「僕らは今の中で.....をお願いします」

-屋上-


ﾀﾝﾀﾝﾀﾝ

♪　楽しいだけじゃない　試されるだろう


穂乃果「..はぁ..は...っ」


♪　だって　その苦しさも　未来


穂乃果「.......うっ...うぅっ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


凛　「えっ、穂乃果ちゃん！？」ﾋﾟﾀ


穂乃果「うぅうう......」ｸﾞｽ


希　「穂乃果ちゃん、どうしたん？」

凛　「お腹痛いの...？」ｻｽｻｽ

穂乃果「ご、ゴメン.....久しぶりに8人で踊ったら」

穂乃果「ここに、海未ちゃんがいない事がすごくさびしくなって....」ｸﾞｽ

ことり「穂乃果ちゃん....」

穂乃果「それに...この曲.....」

絵里「ええ....」

真姫「......」

希　「やっぱりみんな、気づいとるんやね...」


凛　「...？　どういうこと？」ｷｮﾄﾝ

絵里「海未はきっとこの曲を、海未から私たちへの」

絵里「.....最後のエールにするつもりなのよ」


凛　「！！！？」


凛　「え！！？」


希　「そう、μ'sの中で一人だけ先にいなくなっちゃう.....海未ちゃんからのエール」


穂乃果「.......」

ことり「......っ」

凛　「そ、そんな....」

凛　「うそでしょ？....ねぇ、かよちん」

花陽「......りんちゃん」ｿｯ

凛　「......っ」

凛　「やだ！やだやだ！！そんなの絶対いやだにゃ！」

絵里「凛、わがままをいうのはやめなさい」

凛　「でも！」

凛　「...っ！」ﾊｯ


絵里「この曲を、みんなで最高の曲にしてみせないと」ﾌﾙﾌﾙ

絵里「海未が、最期まで安心できないのよ」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

希　「エリち....」

凛　「絵里ちゃん....」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

絵里「だから.....」

-病院-


ｺｰ　ｼｭｺ-


海未（それから数日後、私の容体は急変し）

海未（とうとう喋ることもままならなくなってしまいました）

海未（........）

海未（穂乃果たちのライブ、間に合わないかもしれませんね）

海未（それだけが、心残りです.....）

ｺｰ　ｼｭｺｰ


海未（.....）

海未（........）

海未（................）


ｶﾞﾁｬ


海未（....？）ﾁﾗ


穂乃果「....おまたせ」


穂乃果「海未ちゃん」

海未（......穂乃果）

海未（来てくれたのですね）



穂乃果「最高の曲が出来たから、持ってきたよ」

穂乃果「遅くなっちゃって....ごめんね」

『♪　僕らは今の中で　輝きを待ってた　』


穂乃果「......」ﾎﾟﾁ

穂乃果「.....どう、かな」ｸﾙﾘ


海未（.....ええ、穂乃果）

海未（最高のライブです）

海未（きっとこの映像を見た人みんなが、μ'sのファンになることでしょう）

海未（本当に...)

海未（この感動を言葉で伝えられないのが、とてもくやしいです）


穂乃果「....喜んでくれたみたいで、よかった」ﾆｺ


海未（はい、本当に素晴らしいライブでした、穂乃果。ありがとうございます）

海未（....よかった）

海未（これでもう、思い残すことはありません）

海未（μ'sは私がいなくなっても、きっと大丈夫）


海未（本当に....よかった）ﾂｩ

海未（おや...涙が....おかしいですね）ﾊﾗﾊﾗ


海未「.........」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


穂乃果「....海未ちゃん」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


海未（さようなら、穂乃果）


海未（さようなら、みなさん.....）


海未「...........」

海未「.................」ｸﾃ



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凛　「......という夢を見たにゃ」ｸﾞｽｯ


ことり「おい」


凛　「ひぃっ！」ﾋｼｯ

海未「......まったく」ｺﾞﾎ

花陽「ああ、だから凛ちゃん」

花陽「朝から海未ちゃんに抱きついてるんだね」

絵里「凛！笑えない冗談はやめなさい！」

凛　「ご、ごめんなさいだにゃー！」


ﾆｬｱｰ


ｱｰ



終わり