提督「長門」 (27)
提督「長門」
長門「…なんだ」
提督「アイスクリームは好きか」
長門「…嫌いではない」
提督「好きでもないと」
長門「うむ」
提督「じゃあ食べちゃお」
長門「待て」
提督「なんだ」
長門「…好きだ」
提督「俺も好きだよ」
長門「…こほん。…まあ、なんだ、その…私も、その…」
提督「ああ美味しい」
長門「…」
提督「嘘だよ。どうぞ」
長門「…いただこう」
長門は間宮のアイスクリームが好きみたいだ。
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・初めてSS書きます
・今日初めて読んだ小説のパロディ(というかパクリ?)です
・艦これ だけど あんまり艦娘要素ないかもです
提督「そういえばお前は水上スキーしてるよな」
長門「私だけではなかろう」
提督「後で教えてよ」
長門「いいだろう。うまくやれよ」
提督「ずっとアイスのスプーンぺろぺろしてるヤツよりは上手くできると思うがね」
長門「随分と言ってくれるな」
長門は案外負けず嫌いだ。
酒匂「ぴゃん♪阿賀野型軽巡四番艦、酒匂です!司令、よろしくね!」
提督「ああ、よろしく頼む」
長門「…酒匂」
酒匂「…長門、さん」
長門「酒匂…っ」
酒匂「長門さん!長門さぁ?んっ!」
酒匂が着任すると、長門は目に涙を浮かべてびょおびょお泣く酒匂と抱き合った。
提督「夏、だな」
長門「ああ」
提督「僕は夏は好きだ」
長門「なぜだ」
提督「水着に浴衣、お祭りに花火。最高じゃないか」
長門「不純だな」
提督「許してくれよ」
長門「…私は夏は嫌いだな」
提督「なぜ」
長門「色々と思い出す」
提督「…成程ね」
長門「だが、提督とならば…なんだ…」
提督「なに」
長門「…なんでもない」
長門は夏が嫌いのようだ。
提督「今日も一日お疲れ様」
長門「…うむ」
提督「明日は日曜日だね」
長門「いつものニチアサタイムだな」
提督「ホント好きよねえ」
長門「提督も仮面ライダーが楽しみなんだろう」
提督「長門こそプリキュアが」
長門「あの子たちは見習うべきところがたくさんある」
提督「僕も仮面ライダーになれるくらいの男になりたいねえ」
長門「…提督ならば…なれる、だろう」
提督「ホントに?長門もプリキュアになれるよ」
長門「…それはいいかな」
そういえば、長門は僕とケッコンカッコカリしてから、どうも言葉に詰まることが多くなった。
提督「ああ、今日も腹が減った」
鳳翔「お疲れ様でした、お夕飯できていますよ」
長門「今日のメニューはなんだ」
鳳翔「カレーです。人参がなかったので、代わりにさつまいもと大根を入れてみました」
提督「ほお、変わったカレーですね」
長門「さ、鳳翔。早く私の分をわけてくれ」
提督「がっつくなよ」
長門「腹が減ったのだ。好物と来てはなおさらな。…そうだ、緑茶も頼む」
長門はカレーが好きらしい。
提督「長門」
長門「なんだ」
提督「僕の手を握ってみてくれ」
長門「どうした、突然」
提督「いいからいいから」
長門「…ひゃっ…冷たいな…」
提督「長門がビックリするかと思って冷やしておいた」
長門「書類の整理をやめたかと思えばそんなことを…」
提督「…」
長門「…」
提督「ひゃって」
長門「うるさい」
提督「ひゃっ」
長門「うるさい」
提督「いてててて」
長門「ふん」
提督「なんで恋人繋ぎだったの」
長門「…」
提督「いててててて」
長門は僕と手を握る時、何故か小指を立てる癖がある。それと、驚いた時は拍子抜けした声が出るらしい。
そして、恋人繋ぎ。
「月曜日の朝は憂鬱だな」
「私たちに曜日も何もなかろうに」
「まあ、たしかに」
「それじゃあ、行ってくるぞ」
「気を付けて」
月曜日の朝。出撃する第一艦隊を見送って、執務室に戻る。
艦載機を発艦し、雷撃してくる戦艦とはいったいなんなんだ。水上機母艦か何かか?
長門が戦艦レ級の砲撃から大破状態の大和を護り、沈んでいった。
大和から通信が入った。
執務室から海岸へと走りながら、僕は涙がとまらなかった。
いつもへらへらしている男が、びょおびょお泣きながら走っているのだから、艦娘たちがいぶかしげに僕を見たのも、無理のない事だった。
長門が死んだ。僕の長門が沈んでしまった。
僕は悲しみでいっぱいだった。
海岸で第一艦隊を迎え入れた。確かに、見送った6人のうち、1人足りなかった。
「長門は」
「私を庇って…沈んでいきました」
「そうか…そうか」
泣けて、泣けて、泣きながら大和が差し出した長門のケッコン指輪を受け取り、泣きながら頭を下げる大和を抱き締め、泣きながら皆に入渠の指示を出し、泣きながらふらふらと歩いていた。
「テートクー!ナガトがー!」
歩いていたら、ぼろぼろの金剛が走ってきて僕に叫んだ。
入渠もせずによく走れるなあなんて思いつつ、金剛と走った。
急いで鎮守府の外に飛び出したら、一人の女学生が倒れ込んでいた。
よく鎮守府の前を通る学生は見るが、倒れている学生を見るのは初めてだった。
というか、どう見ても長門ではない。
「確かに似てなくはないが、長門ではないだろう」
「…Hmm?…確かにナガトに見えたんデスけどネー…」
「運ぶぞ」
無愛想にぼそっと言って、僕は女学生を抱きかかえた。十五歳くらいだろうか、白いセーラー服に紺のスカートを着た、黒い長髪のどこかはかなげな少女だった。
「ありがとう」
入渠施設のベッドで寝かしておいた彼女が目覚めてから初めに発した言葉だった。まるで状況を理解しているかのように、迷いなくそう言った。
「ここはどこ?」
そうでもなかった。
「ここは鎮守府ですよ」
「ってことは、あなた提督さん」
「はい」
「こちらは…艦娘さん」
「Yes!金剛デース!」
「わあ、すごい」
「フフーン」
「お嬢さん、学校へ連絡は」
「必要ありません、今日はお休みでしたので」
「ではなぜ制服を」
「少し目的があったのです」
「それは」
「オトメの秘密です」
「そうですか、それは失礼しました」
「いえいえ」
「金剛、今日はもう休みにしよう。放送をお願いするよ」
「Why?まだDaily任務は残…ah,了解デス」
色々と察してくれたようでよかった。金剛は長女だし、アレでも気配りは出来る方だ。
「コーヒーでもお持ちしましょうか」
「いえ、お構いなく」
少女の腹が鳴いた。
「お腹が鳴いていますよ」
「…朝ごはん、まだなんです」
「御馳走しましょう」
「お願いします。…飲み物は緑茶で」
「かしこまりました。テレビでも見ていてください」
部屋を出たと同時に、金剛のよく通る声がスピーカーを通して聞こえていた。
「鳳翔さん」
「…提督」
「昨日のカレーの残りが確かありましたね」
「ええ」
「温めてもらえませんか」
「…わかりました」
反応を見るに、長門の事は知れ渡っているらしい。
ドタドタと足音が聞こえた。あまり聞かない、うるさくもあるがどこか間抜けな気もする足音だ。
「ぴゃあ」
酒匂が勢いよくドアから飛び出てきた。
「珍しいな、そんなに急いで」
「長門さんが沈んだって、本当なの」
「…」
「何とか言ってよ」
「ぴゃあ」
「ぴゅう」
「温まりましたよ」
「ありがとうございます」
「…司令ってば」
「ぴゃあ」
「ぴゅう」
僕はカレーを持って、後ろに酒匂をくっつけて少女のいる部屋へ歩き出した。
期待
「ありがとうございます」
少女はテレビを消し、こちらに向き直った。
「何を見ていたのですか」
「いえ、何も」
「司令ぃ」
「ぴゃあ」
「ぴゅう…あ、あれ」
後ろをひっついてきた酒匂が少女を見るなり、目から涙をこぼして少女に抱きついた。
「長門さん!長門さぁ?んっ!」
「えっ…えっ?」
「酒匂」
「ぴゃあ」
「この方は長門じゃないよ」
「あれ…でも今確かに」
「部屋に戻ってなさい」
「えぇ、でも」
「病人の前でうるさくしない」
「…はぁーい。矢矧ちゃんに遊んでもらおー」
「そうしなさい」
「ふふ、元気な子ですね」
「騒がしくて申し訳ない」
「いえ、楽しいので大丈夫ですよ。私の居たところは、とても静かでしたから」
「そうですか」
「はい。あ、カレー、いただきますね」
少女は黙々とカレーライスを口に運んで、時々緑茶をすすっていた。
「ごちそうさまでした」
「いえ」
「そういえば、これからは1日お休みなんですね」
「ええ」
僕はぶっきらぼうに言った。
「海が見たいです」
少女がそう言うので、海岸にやってきた。さっき残した足跡は、まだ残っていた。
少女は目を輝かせると、おもむろに服を脱ぎだして海へ飛び込んだ。
目を背けなければならないが、少女の安否を確認しなければならない。
しかし、人を見殺しにしてしまったなどと噂が立っては困るし、沈んだ長門にも申し訳ない。
ちらりと目を向けると、少女はスクール水着に身を包んでいた。
「今日は水泳の授業があったんです」
「でも学校はお休みする予定だったのでしょう」
「ええ」
僕は首を傾げた。
「提督さんも一緒にどうです」
「いえ、僕は結構です」
実はカナヅチ、なんてことがバレては困る。
「遠慮せずに」
「いえいえ」
「あれ、もしかして海軍さんなのに泳げないの」
「待っててください」
少女がおかしそうな目を向けるので、僕はしゃくになり、箪笥の奥底に沈んだ水着に着替えて戻ってきた。
水泳の訓練を思い出し、頭痛と懐かしさが襲ってくる。
「提督さん、こっちですよ」
数メートル前方に居る少女にむっとなり泳ぎだすと、とつぜんぐんっと前に引っ張られ、ほとんどころぶようにうつぶせになって進み始めた。
結局長門には水上スキーを教えてもらえなかったことを思い出し、涙が出そうになるがぐっとこらえる。
「わ、すごいすごい」
いつのまにか十数メートルも泳いでいた。少女がパチパチと手を鳴らして僕に賞賛の言葉を贈る。
「やればできるじゃないですか」
「僕を誰だと思っているんですか」
そう強がりつつも、なんだかカナヅチを見透かされていたようで、僕は恥ずかしくなった。
>>14
ありがとうございます
こういうレスいただくととっても嬉しいもんですね
最後まで書いてあって、あともう1/3もないくらいです
「あがりましょうか」
時計を見ればもうお昼をさしていた。
「プールに入った後のアイスクリームって、とっても美味しいと思いませんか」
「そうですね。…食べますか、アイスクリーム」
「よろしいんですか」
海からあがり、間宮でアイスクリームを二つ買って、食べながら歩いた。間宮さんは不思議そうな顔をしていた。
十五分ほどフラフラと歩いて、気が付いたら鎮守府の外に出てしまっていた。どうせ休みなのだからいいのだが。
足を止めることなく、またしばらく歩いていると、近所の広場でお祭りが行われていた。
月曜日なのに随分と人が多いな、と思っていると、
「夏休みですからね」
まだアイスクリームのスプーンをぺろぺろとなめていた少女が興味なさげにそう言った。
そうか、学生は夏休みか。懐かしい。
「ま、私には関係ない事なんですけどね。何か食べませんか」
少女はアイスのスプーンをポケットに放り込み、財布を変身ポーズのようにかっこよく構える。表情もきりっとしている。
「朝ご飯のお礼を」
「結構ですよ。学生さんに奢ってもらうほど僕も貧乏じゃあない」
今日何本目になるだろうかアイスキャンデーを舐めながら、道中借りた浴衣を身にまとって少女は語る。
「夏は嫌いですね」
「これだけ楽しんでいるのにですか」
「ええ、もちろん」
「どうしてですか」
「昔の事を思い出すんです」
「昔、ですか」
「ええ」
少女は物悲しそうに、しかし楽しそうにくすくす笑いながら話している。
僕はふと、長門の顔を思い出して悲しくなる。彼女も夏は嫌いだとか昔の事を思い出すだとか言っていた。
「…僕の顔に何かついていますか」
「いいえ、何も」
どん。
空に光が灯る。打ち上げ花火だ。
「おや、花火ですね」
「提督さん」
「はい」
「戦いは辛いですか」
「勿論です」
「頑張ってください、私の為にも」
「ええ」
「空に灯る光は、こんなにも綺麗になるんですね」
「…ええ」
「今日ももう終わりますね」
「そうですね」
「明日になれば、また朝が来ますね」
「そうですね」
「夏は嫌いでしたが、今日は楽しかったですよ」
「それはよかった。僕もですよ」
空に上がる花火をぼうっと見て目を伏せ、何故か溢れそうになる涙をこらえていると、少女は僕の手をそっと握った。
「今までずっと、です」
懐かしい、深く赤い目が僕を見つめた。そして、少女は僕のポケットから長門のケッコン指輪を奪い取る。
「わあ、ぴったり。よかった」
くるくると嬉しそうに回る彼女。
「提督とならば、夏も楽しいものだったよ」
ぴたりと止まって振り返り、長い髪がふわりと風に舞う。
「私もずっと、愛していたよ」
寂しそうに笑った顔が、長門によく似ていた。
「それだけ言いにきたんだ。じゃあな、達者で」
そう言うと、海の方へとすばやく駆けていってしまった。
僕はそこに立ちつくし、いつまでも、彼女のいない7月29日の夜空の光を見上げていた。
そういえば、彼女に手を握られた時、僕も彼女も、小指が立っていた。
これで終わりです。
江國香織さんの「つめたいよるに」に収録されている「デューク」というお話を読んで、とても感動したので書いてみました。
初SSでしたし、突貫作業で書いたのでおかしな所も多々あったかと思いますが、見逃してください。
長門さんの命日と言われる7/29(私の誕生日でもあります)にも、アイデアさえあればまた何か書きたいなーと思っています。
ちなみに嫁は矢矧です。
乙
雪風と比叡の話とかどうだろう。
あの二人はあまり知られてないが悲しい因縁があったりします
>>23
読んでくださってありがとうございました。
雪風と比叡…雷撃処分の話でしょうか。
史実で関わった艦娘の絡みとか大好きなので、考えてみます。
ちなみに鳳翔さんが作ってたカレーは、昔戦艦長門で作られたレシピ…という話を聞きました。
あと、戦艦長門が沈んだ7/29は月曜日だったみたいです。
おしまい。
HTML化依頼してきますー。
このSSまとめへのコメント
四十九日とかそんなみたいな話だったが感動しました