モバP「ペロペロ」 (19)

卯月の眼球は光を湛えて輝いていた。とても美しく。

宇宙より深い黒、時計より複雑な瞳孔、乳白色の強膜。

神秘的。神秘的。

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薄く涙で滲んだ瞳はいつもの卯月らしい少女の様子からは想像もできないほど艶やかに見えた。

卯月の頬に手を添えると小動物のように小さく震えた。

怯えているのか、緊張しているのか、期待しているのか、残念ながら今の俺には彼女を気遣う余裕が無い。

夢にまで見た憧れが俺の網膜の中に写り込んでいるのだ。少しくらい興奮させてほしい。

卯月は不安げに俺の名前を呼んだ。

その空気の振動は俺の鼓膜を性感帯へと変える。

背筋がしびれるような、ゾクゾクするような不思議な快楽に脳みそが支配される。

この声を閉じ込めてしまいたい。ガラス張りの部屋でなら永遠に反響させ続けることができるだろうか。

優しく卯月を抱き寄せると卯月は少し安心したのかもう一度俺の名前を呼んだ。

間髪入れず唇を奪う。その声が聞けなくなるのは残念だが今は我慢しよう。

そして気がついたら卯月は両腕を俺に掴まれ押し倒されていた。

柔らかい肉の感触とそれ以上に柔らかい卯月の唇。力で押さえ込んでいる背徳感と征服感で気が狂いそうになる。

舌を入れる。甘い。唾液が甘い。そして熱い。歯の裏を舐める。卯月の味。内頬を舐める。卯月の味。舌を舐める。卯月の味。

一通り味わった後唇を離すと卯月はトロンとした眼で俺を見つめた。卯月の耳に陳腐で単純な愛を囁く。

美しい眼球。溶けた視線は熱を帯びて俺の脳みそを溶かしていく。

神秘的。神秘的。

溶けた脳みそでは何も考えられない。俺は自分のしたいことがしたい。俺の脳みそを焼いたのは紛れもなく卯月なのだから。

卯月の眼球に舌を伸ばす。

ベロリ。

甘い。正しくは塩辛い。

一度舌を離すと卯月は俺を怯えたように見上げていた。視線にゾクゾクする。信じられないのだろう今起きたこと、イレギュラーな触感。

だけど今は関係ない。怖がらなくていい。特別がしたいだけだから。俺と卯月の特別をしたいだけだから。

眼球を舐めさせてくれ。その眼球を。卯月のきれいな眼球を。

味を、感触を、感動を、俺に感じさせてくれ。

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