海未「ヤンデレ……って、なんですか」 (252)


※タイトルの割にそこまでヤンデレ要素はないです

※海未がヤンデレというわけではありません

※基本的にSID設定です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405671699

真姫「知らない? 一部の漫画とかでよくあるらしいんだけど」

海未「私は漫画はあまり読まないので。前に穂乃果の家にあるものを読もうと思ったとき、読み方が分からなくて以降…」

真姫「漫画の読み方が分からないって……もはや天然記念物ね」

海未「照れますね」

真姫「褒めてないわよ。まぁ私もにこちゃんの影響で読むようになったから、読み始めたのは最近だけど」

海未「それで、先ほどのヤンデレというのは?」

真姫「さあ?」

海未「はい?」

すみません、>>1に書き忘れましたので、追記しときます

基本SID設定と書きましたが、性格等はアニメ寄りです

真姫「私も意味は知らないの。ただにこちゃんに、真姫ちゃんってヤンデレっぽいよねって言われたから、ちょっと気になっちゃって」

海未「はあ……なんでしょうか…何かの名前ですかね」

真姫「さあね……それより、海未の相談ってなに?」

海未「あ、えっと、実はですね…最近、凛と希のノロケが酷くなってきて…」

真姫「ノロケって……ああ、なるほどね…」

海未「ユニット別の練習時、常に花陽と絵里の話を聞かされるんです…」

真姫「それはなんというか…ご愁傷様ね」

真姫「にしても、凛はともかく希まで? あんまりそういうイメージないけど」

海未「凛に合わせて悪ノリしてるって感じですね。いざこちらから絵里の話題を振ったら、途端に照れますし」

真姫「相変わらずめんどくさい性格ね…」

海未「…真姫」

真姫「何よ」

海未「ユニット、交代してもらえませんか?」

真姫「嫌に決まってるでしょ」

真姫(にこちゃんと離れるなんて論外だし)

海未「ですよね…」

真姫(しかし海未がそんな冗談を言うなんて……よほど参ってるのかしら)

真姫「あー……あの、ほら、いっそのこと、海未もノロケてみれば?」

海未「と言われましても、私には相手がいませんし…」

真姫「好きな人とかいないの?」

真姫(まぁ大体予想はつくけど…)

海未「特にいませんね」

真姫「そうよね、やっぱり穂乃果かことり……………って、う゛えぇっ!?」

海未「そんなに驚くことですか…?」

真姫「え、だって……ちょ、ちょっと待って、何を言ってるのよ」

海未「何がですか」

真姫「だってあなた、普段あんなに幼なじみバカじゃない」

海未「バカって……、確かにあの二人のことは大切に思っていますが、大事な親友ですよ」

真姫「そ、そうだったの……」

真姫(なんてことなの……てっきり海未は同類だとばかり…)

海未「私は、恥ずかしながら恋愛経験が乏しいので」

真姫「……」

海未「真姫?」

真姫「あ、ご、ごめん、ボーッとしてたわ」

真姫「まぁとりあえず今は耐えるしかないわよ。そのうちノロケるのに飽きてくると思うわ」

海未「そうでしょうか…」



ガラ

海未(真姫はああ言ってましたが…あの二人が恋人に飽きる光景が想像出来ないんですよね…)

ことり「あれ? 海未ちゃん?」

海未「あ、ことり」

ことり「どうしたの? 今、音楽室から出てこなかった?」

海未「えっと…ちょっと真姫に相談があって…」

ことり「相談? …海未ちゃん、何か悩み事があるの?」

海未「いえ、大したことではないので気にしないでください」

ことり「…ならいいんだけど…」




凛「ほら見て、海未ちゃん! 今のかよちん!」

海未「ああ…はい。花陽は今日も可愛いですね」

凛「だよね! ぎゅーっとしたいにゃー」

海未「そうですね」

希「あ、海未ちゃん。エリちも今すごいカッコいいダンスしてんねんで、ほら」

海未「ソウデスネ」

希「なんでウチだけあからさまな棒読みで対応されたんやろ?」

海未「……というより二人とも、どうしていちいち私にノロケてくるんですか」

凛「だって海未ちゃん、なんだかんだでちゃんと聞いてくれるし」

希「反応が面白いし、からかいやすいし」

海未「…希の言葉は聞かなかったことにしますね」

希「うん」

海未「…私たちもそろそろ練習を再開しましょうか」

凛「うん。あ、そうだ、海未ちゃん」

海未「はい?」

凛「いつも話聞いてくれてるんだし、海未ちゃんも凛たちに聞いてほしいことがあったらちゃんと言ってね」

海未「…考えておきます」

凛「うんっ」

海未(…まぁ、凛はなんだかんだで悪気がないから、怒れないんですよね。…希は面白がってるだけでしょうけど)

希「失礼やなぁ……ウチもちゃんと海未ちゃんのこと考えてるんよ?」

海未「勝手に心を読まないでください」


◆ ◆ ◆



海未「……絵里が私に話だなんて珍しいですね」

絵里「そうね。ごめんなさい、休日に押しかけちゃって」

海未「いえ。それで用というのは?」

絵里「希のことよ」

海未「ああ…」

海未(そこはかとなく、嫌な予感がします)

海未「希がどうかしましたか?」

絵里「最近、練習中に…その、希の視線を感じるの」

海未(まぁバッチリ見てますからね)

絵里「私と希が付き合ってるのは海未も知っていると思うんだけど」

海未「はい」

絵里「付き合ってても、希ってどこか距離を置いて接してくるのよ」

海未「まぁああいう性格ですからね」

絵里「ええ。だから希が私のことを見てくれてるなんて私の妄想なのかなって……」

海未「いえ、実際見てますよ」

絵里「えっほんと!?」

海未「はい、バッチリと。希は絵里のこと、すごく好きだと思いますよ」

絵里「そ、そうなんだ、よかった……。ありがとう海未、教えてくれて」

海未「いえ、お役に立てたならよかったです」

絵里「……あの、なら私も希に遠慮しなくてもいいのかしら」

海未「と言いますと?」

絵里「希に鬱陶しがられたらって思うと、怖くてメールとか自分からは送れなくて……」

海未「ああ、そういう……気にしなくていいんじゃないですか。よく分かりませんが、恋人同士なんですし、メールくらい普通ですよ」

絵里「そ、そうよね! 私、勇気出して送ってみるわ!」

海未「はい。……あ、今お茶でも淹れてきますね」

絵里「ちょっと待って。その前に」

海未「はい?」

絵里「あのね、私、希以外の誰かと二人で話す機会があまりないの」

海未「はい。えっと……それがどうかしましたか?」

絵里「だから、その……一度やってみたくて」

海未「何を?」

絵里「…恋人の、自慢話」

海未「」

海未「……ノロケ、ということですか?」

絵里「そ、そうとも言うわね」

海未「えぇっと……謹んでご遠慮させていだきます」

絵里「そんなこと言わないで聞いてよ! 私、一度でいいから希のことを誰かに自慢してみたかったの!」ガシッ

海未「か、肩を掴まないでください! 大体、そんなのにこにでも話せばいいじゃないですか!」

絵里「にこは真姫のことで頭がいっぱいだから、私のこういう話は鬱陶しがるの! 海未しかいないのよ!」

海未「知りませんよそんなの!」

絵里「海未ぃ……」ジワッ

海未「えっ、ちょ、こ、こんなことで泣かないでくださいよ」

絵里「だって、海未が話聞いてくれないから……」グスッ

海未(子供ですか…)

海未「……分かりました。聞きますよ」

絵里「ほんと!?」パァ

海未「はい。ただお茶を淹れてくるので、待っていてください」

絵里「手伝うわ」

海未「あ、ありがとうございます」

絵里「ううん。…あ、それでね、早速希のいいところから話したいんだけど…」

海未(って、早く話し始めたかっただけですね…)




絵里「こんなに遅くまでお邪魔してごめんなさい」

海未「いえ…」

海未(まさか本当にこんなに遅くになるとは思いませんでしたが…)

絵里「今日はありがとう。楽しかったわ」

海未「何よりです」

海未(希の話をしているときの絵里は目が輝いていましたからね…よほど好きなんですね)

絵里「じゃぁまた学校で」

海未「はい、また」

海未(………数時間もぶっ通しで友人のノロケを聞くのはさすがに疲れますね)

海未(でもまぁ、絵里が嬉しそうだったので良しとしましょう。さて、じゃぁ私も家に…)


「――海未ちゃん!」

海未「!? ……って、なんだ、穂乃果ですか、ビックリさせないでください…」

穂乃果「あ、ごめんね。…今の、絵里ちゃんだよね?」

海未「見てたんですか」

穂乃果「うん。こんな時間まで何かしてたの?」

海未「少し話を聞いていたんです」

穂乃果「話って?」

海未「大した話ではないですよ」

海未(まさか延々とノロケを聞かされていたなんて言えませんしね…絵里の名誉のために)

穂乃果「…そっか。うん、それならよかった」

海未「ところで穂乃果はどうしてこんな時間にここに?」

穂乃果「あ、うん。新商品のおまんじゅう、海未ちゃんに味見してもらおうと思って」

海未「え、いいんですか?」

穂乃果「うん。…海未ちゃんのお家、あがってもいい?」

海未「もちろんです」

穂乃果「ありがとー」




ガチャ

穂乃果「えへへ。海未ちゃんの部屋は相変わらず海未ちゃんのにおいがするね」

海未「どういう意味ですか…」

穂乃果「落ち着くってことだよー」

海未「ならいいですけど……あ、お茶淹れてきますね」

穂乃果「うん」


パタン


穂乃果「……海未ちゃんのにおい、本当に落ち着くなぁ…」

穂乃果(…けど、今日はちょっとだけ違う感じが……ああ、そっか。絵里ちゃんが来てたからかな)

穂乃果「……」

穂乃果(海未ちゃん早く戻ってこないかな。なんか落ち着かないや)


◆ ◆ ◆


海未「……あ、あの」

にこ「ん? …ああ、ごめんね。休日に押しかけちゃって」

海未「いえ、別に…」

海未(デジャヴ…)

海未「…あの、まさか真姫についての話でしょうか」

にこ「よく分かったわね」

海未「ごめんなさい、もうノロケ話はお腹いっぱいです…」

にこ「は、ノロケ?」

海未「違うんですか?」

にこ「ノロケというか、相談よ」

海未「相談……にこが私になんて、珍しいですね」

にこ「まぁあんたにはなんか似たオーラを感じるというか…そういう意味では、絵里でもよかったんだけどね」

海未(似たオーラ?)

にこ「…まずはこれを見てほしいの」ス

海未「携帯……って、これ、にこのじゃないですか。見てもいいんですか?」

にこ「見てもらわないと話が進まないから」

海未「えっと……では、失礼します」チラ


【受信メール】

真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん
真姫ちゃん


海未「」

にこ「どう思う?」

海未「どう思うも何も……真姫のメールの数が半端ないですね、としか」

海未(スクロールしても真姫の名前しかない…)

にこ「でしょ。しかもそれ、全部ここ三日のものなの」

海未「三日で数十件ですか……すごいですね」

にこ「やっぱりそう思うわよね…」

海未「しかし真姫とにこは付き合ってるんですし、これくらいは普通……なんですよね、多分」

にこ「いや、まぁ確かにそうかもだけど……でも電話とかメールで夜寝るのも遅くなってるし、にこが誰かと話してるとすぐ妬いてくるし、真姫ちゃんって見かけによらず独占欲がすごいのよ」

海未「それだけ好かれているということではないんですか?」

にこ「そう考えると嬉しいんだけど……にしたって、度を過ぎてると思うの」

海未「だったら真姫に直接言ってみたらどうですか?」

にこ「それは……なんか、言いづらいじゃない。にこが真姫ちゃんのこと好きじゃないみたいに思われるのも嫌だし」

海未「なるほど」

にこ「…それでさ、もし海未が真姫ちゃんの立場だったとしたら、どう言われたら穏便に対応しようって思う?」

海未「そうですね……って、どうして真姫の立場なんですか。考えにくいのですが…」

にこ「あ、あー……いや、ほら、海未って、ちょっと似てるじゃない」

海未「…真姫にですか?」

にこ「うん。なんかこう、束縛しそうなとこが」

海未「ここは怒ってもいいところでしょうか…」

にこ「ご、ごめん、バカにしてるつもりはないのよ。…けど実際、海未も結構束縛するタイプでしょ?」

海未「違いますよ。というか、誰とも付き合ってないのに束縛も何もないです」

にこ「えええぇっ!?」ガタタッ

海未「そ、そんなに驚くことですか?」

にこ「だって、てっきり付き合ってるもんだとばかり…!」

海未(真姫といい、どうしてそんな勘違いを…)

海未「私は誰とも付き合ってませんし、好きな人もいませんよ」

にこ「そうなんだ……ごめん、てっきり海未も真姫ちゃんと似た系統かと…」

海未「…付き合っていたことを誤解するならともかく、どうして私が真姫と同じタイプだと思ったんですか?」

にこ「いや、だってあんたたち三人いつも一緒にいるし」

海未「それを言うなら絵里と希だって、凛と花陽だって同じじゃないですか」

にこ「そうだけど、あんたたちの場合はちょっと特殊っていうか………あー…」

海未「どうしました?」

にこ「なんか、分かった気がする」

海未「何をですか?」

にこ(てっきり海未がどっちかに依存してるのかと思ってたけど…)

にこ「逆なのね」

海未「逆?」

にこ「……まぁ、気付いてないならその方がいいかもね」

海未「え?」

にこ「とりあえず、真姫ちゃんにはどう対応すればいいかしら」

海未「えっと……そうですね…そもそもにこは束縛されるのが嫌なんですか?」

にこ「嫌っていうか……気に入らないのよ」

海未「気に入らない?」

にこ「誰かと話してるだけで嫉妬するってことは、つまりにこのこと信じてないってことでしょ。にこは真姫ちゃんのこと信頼してるのに、不公平じゃない」

海未「あ、なるほど……じゃぁそれを素直に真姫に話してみればいいんじゃないでしょうか」

にこ「…怒らないかしら」

海未「大丈夫ですよ。真姫はにこのこと、大好きですから」

にこ「……そうね。じゃぁ、言ってみるわ」

海未「はい」




にこ「相談に乗ってくれてありがとね、海未」

海未「いえ、お役に立てたならよかったです」

にこ「あんたって堅物だけど基本的に良い子よね」

海未「それは褒めているのですか…?」

にこ「めちゃくちゃ褒めてるわよ。ほら、頭撫でてあげるわ」

海未「結構です」グイッ

にこ「ちょっ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない!」

海未「…冗談ですよ。はい」ス

にこ「よしよし」ナデナデ

海未(…自分より背の低い相手に頭を撫でられるというのも、なんだか変な感じですね)

にこ「じゃぁまたね」

海未「はい、また」


海未(…にしても、二週連続で先輩を家に上げることになるとは……不思議な気分です)

穂乃果「…海未ちゃんっ!」ギュッ

海未「ひゃっ……ほ、穂乃果……あなたは普通に声をかけることは出来ないのですか…?」

穂乃果「……」ギュー

海未「…穂乃果? どうかしたんですか?」

穂乃果「…先週は絵里ちゃんで、今週はにこちゃん」

海未「え? …ああ……たまたまですよ」

穂乃果「ホントに? じゃぁにこちゃんとなに話してたの?」

海未「それはにこのプライバシーに関わることなので言えません」

穂乃果「ええぇー…」

海未「それよりどうしてここに? 新商品のおまんじゅうは先週いただきましたし……何か用があったんですか?」

穂乃果「んー…ただ海未ちゃんに会いたかっただけ」

海未「え、それだけでこんな時間にわざわざ?」

穂乃果「迷惑?」

海未「いえ、そんなことは……穂乃果の脈絡のない行動にはもう慣れてますし」

穂乃果「えへへ……海未ちゃんっ」ギュッ

海未「く、苦しいですよ」

穂乃果「だって海未ちゃんにぎゅーってしてると落ち着くんだもん」

海未「もう…」

穂乃果「…海未ちゃん、大好き」


◆ ◆ ◆


海未「……」

真姫「……あの、海未。そんな鬱陶しそうな顔で見られると、傷つくんだけど…」

海未「そ、そんなつもりはなかったのですが……すみません、デジャヴが…」

真姫「デジャヴ?」

海未「いえ。それより、今日は何か用があって来たんですよね」

真姫「あ、うん、実はね…」

海未「にこのことですか?」

真姫「よく分かったわね」

海未(それくらいしか思いつきませんから)

海未「何かあったんですか?」

真姫「……にこちゃんがね、にこちゃんのこと信頼してるならメールと電話の回数減らしてくれって言ってきて…」

海未「ああ……」

真姫「何よ、その返事。…まさか海未がにこちゃんに何か言ったんじゃ…」

海未「い、いえ、決してそのようなことは。けどにこが言うことは間違ってないと思いますよ。恋人同士だからといって、あまり束縛しすぎるのもよくないですし」

真姫「私だって別に好きで束縛してるわけじゃないのよ。あ、にこちゃんのことは好きだけど」

真姫「ただ、にこちゃんってすごく可愛いじゃない。きっとモテるだろうし……縛り付けておかないと、どこかに行きそうで怖くて…」

海未「…真姫は、にこのことが好きですか?」

真姫「当たり前でしょ」

海未「では、にこ以外の誰かに告白されたら、その心は揺らぎますか?」

真姫「そんなわけないじゃない。にこちゃん以外の人に興味なんてないわ」

海未「にこも同じだと思いますよ」

真姫「え?」

海未「にこだって真姫のことが好きなんです。他の誰に想われようと、その事実は変わりません」

真姫「………そうね。もう少しにこちゃんのことを信頼しないとダメよね」

海未「そうしてあげてください」

真姫「ありがとう、海未。おかげで少しスッキリしたわ」

海未「何よりです」

真姫「お礼に、私の知り得る限りの、にこちゃん可愛いエピソードの一部を教えてあげるわ」

海未「結構です。お帰りください」




海未(即答で断ったにも関わらず、結局にこの話を聞かされる羽目になりました…)

真姫「今日は有意義な一日だったわ」

海未「はあ……まぁ、そうでしょうね」

海未(あれだけにこの話をしていれば)

真姫「ごめんね。海未はああいう話は苦手って聞いてたのに…」

海未「いえ……、あまり得意ではないですけど、真姫が満足してくれたならそれでいいです」

真姫「海未……あなた良い人ね。にこちゃんには及ばないけど、キュンとしたわ」

海未「そ、そうですか」

真姫「それじゃぁ、また学校でね」

海未「はい」

海未(……まさか今度は凛や花陽や希が来たりしないですよね…?)

海未(…そういえば、今日は穂乃果がいない……まぁさすがにそう何度も偶然は続きませんよね)


パタン



穂乃果「……今日は真姫ちゃんかぁ…」


◆ ◆ ◆


穂乃果「うーみちゃんっ」

海未「穂乃果…? あなたがことりより早く来るなんて珍しいですね…」

穂乃果「もー海未ちゃんってば失礼だなぁ。穂乃果だってたまには早起きするよー」

海未「そうですか…偉いですね」ナデナデ

穂乃果「あ……えへへ。海未ちゃんに褒められるの久しぶりだから嬉しいなぁ」

海未(それはそれでどうかと思いますが…)

穂乃果「…ねぇ海未ちゃん?」

海未「なんですか?」

穂乃果「穂乃果のこと好き?」

海未「な、なにを急に…」

穂乃果「いいから答えてよー」

海未「……嫌いなわけないでしょう。何年の付き合いだと思ってるんですか」

穂乃果「付き合い……えへ…そうだよね! 海未ちゃん穂乃果のこと大好きだもんね!」ギュッ

海未「ひゃっ…み、道端で抱きつかないでください!」

穂乃果「いいじゃーん。穂乃果も海未ちゃんのこと大好きだよー」

海未「もう…」

ことり「二人とも相変わらず仲良いね」

海未「あ、こ、ことり、おはようございます」

穂乃果「ことりちゃん、おはよー」

ことり「うん、おはよ。ごめんね、遅れちゃって」

海未「これくらい平気ですよ。いつもの穂乃果に比べれば全然」

穂乃果「むぅ……その言い方はなんか棘があるよ」

海未「本当のことでしょう」

ことり「あはは……じゃぁ学校いこっか」




穂乃果「海未ちゃん、移動教室だよ! 一緒にいこ」

海未「分かりました」


穂乃果「海未ちゃん、着替え終わった? 体育館、一緒にいこー」

海未「あ、はい、ちょっと待ってください」


「園田先輩、ちょっといいですか? お話があって…」

海未「え? はい、いいですけど…」チラ

穂乃果「…穂乃果もついてっていい?」

「へ!? あ、えっと……」

海未(目を逸らすということは、あまり人には聞かれたくない話なんでしょうか)

海未「穂乃果たちは先に教室に戻っていてください」

穂乃果「えぇー…」

海未「穂乃果」

穂乃果「……分かった。早く帰って来てね、海未ちゃん」

海未「はい」

海未(……それにしても、今日の穂乃果はやたらと一緒にいたがりますね……何かあったんでしょうか)

ことり「……」


◆ ◆ ◆


海未「……どうぞ」コトリ

凛「ありがとー! わ、おまんじゅうおいしそー!」

希「ありがとうね、海未ちゃん」

海未「いえ………それで、わざわざ休日に二人そろって私の家を訪れるなんて、どういう用件ですか?」

凛「ふぁふぉふぇ、ふぁふぃふぃふ」モグモグ

海未「凛、おまんじゅうを飲み込んでから話してください」

凛「ふぁーい」

希「じゃぁ代わりにウチが説明するね」

希「実は海未ちゃんにちょっと相談があって…」

海未「相談? …希にしては珍しいですね」

希「うん。これ、ウチの携帯なんやけど…」スッ

海未「?」

海未(なんだかこんな展開が前にもあったような気が…)


【受信メール】

絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里
絵里


海未「……わあ」

海未(最近はデジャヴを感じることが多いですね…)

希「どう思う?」

海未「はっちゃけてるなぁ、と」

凛「しかもこれ、全部一日のメールなんだよ」

海未「一日!?」

海未(真姫の三日分を一日で……絵里、勇気を出し過ぎですよ…)

希「別に嫌ってわけやないんやけど…急にエリちからメールがくるようになったから、なんか戸惑ってしもて」

海未「まぁこの量じゃ無理もないですね…」

凛「あ、そういえば登録名は絵里って呼び捨てなんだね」

海未「そういえばそうですね。普段はエリちなのに」

希「い、今はそんなことどうでもええやん」

希「それより、エリちのことでなんか心当たりとかない?」

海未「………」

海未「……」

海未「…」

海未「ありません」

希「今の間はなに?」

海未「熟考していたんです」

希「ならええけど…」

海未「まぁ量は異常ですが、それだけ愛情が深いということですし、いいんじゃないでしょうか」

希「んー……まぁそれもそうかなぁ…。元々エリちって独占欲強いタイプやったし」

海未「希が迷惑じゃないなら、このままでもいいんじゃないですか」

希「それもそうやね……、うん、じゃぁ素直にエリちとのメールを楽しむことにする」

海未「はい」

海未(解決したようでよかったです……ほとんど私の責任ですし…)

海未「それで、凛は希の付き添いですか?」

凛「うん。途中でたまたま会ったから、ついてきたにゃ」

海未「今日は花陽と一緒じゃないんですね」

凛「かよちんは家族とお出かけ中。凛も誘われたんだけど、さすがに家族水入らずを邪魔するのは悪いから断ったの」

海未「なるほど」


♪アリフレタカナーシミー、アリフーレタイーターミトー


希「あ、エリちからメール」

海未「絶妙な着うたのチョイスですね…」

希「エリちが一人で歌ってる曲がこれしかなかったから」

海未「なるほど…」

希「ごめん、ちょっと返信するから二人で話しといて」

凛「うん。あ、そうだ、海未ちゃんは最近どう?」

海未「どう、とは?」

凛「順調かなって」

海未「? 弓道部のことですか?」

凛「違うよー。穂乃果ちゃんと」

海未「穂乃果と? まぁ、見ての通り関係は良好ですが」

凛「そっかー。もうキスとかした?」

海未「はっ!?」

凛「え、まだなの?」

海未「いや、そういう意味ではなく! 私と穂乃果はただの友達です!」

凛「えぇっ!?」

海未「なんでそんなに驚くんですか……」

海未(これも前にあった展開ですね……何なんですか、本当に)

凛「だ、だってどう見ても………あ、そ、そっか……」

海未「なんですか」

凛「いや、なんでもないよ! 海未ちゃん、ファイトだにゃ!」

海未「はい…?」

希「…よし、返信完了っと。海未ちゃんって穂乃果ちゃんと付き合ってへんかったんやね」

海未「しっかり聞いていたんですね…。付き合っているわけないでしょう。穂乃果は大切な幼なじみです」

希「恋愛感情とかは?」

海未「ありません」

希「んー………穂乃果ちゃんたちも大変そうやねぇ…」

海未「何がですか?」

希「いや、こっちの話。凛ちゃんたちは最近どんな感じ?」

凛「かよちんの可愛さが日々加速していく感じ」

希「順調ってことやね。そういえば凛ちゃんたちは幼なじみで付き合ってるよね」

凛「うんっ。凛は小さい頃からずーっとかよちん一筋にゃ」

希「微笑ましいなぁ」

希「…」チラ

凛「小さい頃からそばにいるからこそ分かることっていうのもあるしね」

凛「…」チラ

海未「……何故二人してこっちを見るんですか」

希「いや、ウチもアリやと思うよ、幼なじみ同士の恋」

海未「それは人それぞれでしょう」

凛「海未ちゃんは正論しか言わないからつまんないにゃ」

海未「つまらなくて結構です。それより二人とも、用が済んだなら帰ってください」

希「え~っ、海未ちゃんつめたぁーい!」

海未「……なんですか、その甘えたような声は」

希「穂乃果ちゃんの真似」ドヤ

海未「追い出していいですか?」




希「それでも結局夕方まで構ってくれる。海未ちゃんは良い子やねぇ」ナデナデ

海未「やめてください、大声あげますよ」

凛「でも海未ちゃんのお家楽しかったにゃ! また来てもいーい?」

海未「……まぁ、凛だけなら」

希「え、ウチは?」

海未「では気を付けて帰ってください」

希「無視!?」

海未「……冗談ですよ。希もまた来てください」

希「もー海未ちゃんは可愛いなぁ!」ギュッ

海未「や、やめてください!/// 警察呼びますよ!」ジタバタ

希「海未ちゃんはウチを変質者か何かやと思ってない…?」

凛「じゃぁ海未ちゃん、またねー」

希「ねー」

海未「はい、また」

海未(……あの二人といると、時間が過ぎるのが早いですね。楽しいというよりも、慌ただしいという意味で。……いえ、楽しくないわけではないんですけど)

海未(それにしても希の携帯は常に鳴ってましたね……絵里、あまりやりすぎないといいのですが…)



穂乃果「……」

穂乃果「海未ちゃんってば、抱き付かれただけで赤くなっちゃって、可愛いなぁ」

穂乃果「…穂乃果が抱き付いても慌てるだけで頬なんて染めないくせに……」

穂乃果「……」ギリッ


◆ ◆ ◆


穂乃果「海未ちゃーんっ」ギュー

海未「な、なんですか、今日は元気ですね」

穂乃果「穂乃果はいつも元気だよー」スリスリ

海未「分かりましたから、離れてください」

穂乃果「えぇー……嫌?」

海未「嫌ではありませんが……恥ずかしいです」

穂乃果「じゃぁいいじゃん!」ギュッ

海未「ああもう…」

海未(…まぁたまにはこういうのも…)

ことり「あの、二人とも、ここ教室だけど…」

海未「よくないですね!」バッ

穂乃果「あう…」

穂乃果「……」ジー

海未「…なんですか?」

穂乃果「……」ペタ

海未「……なんで頬を触るんですか」

穂乃果「…平熱だね」

海未「当たり前です」

穂乃果「…赤くならないんだね」

海未「え?」

穂乃果「ううん、なんでも…」

穂乃果(……やっぱり穂乃果じゃダメなのかな……なんで…一番長く一緒にいるのに…)

穂乃果(…長くいすぎて感覚が麻痺してるとか…? だとしたらどうすれば…)

海未「穂乃果…?」

ことり「……」

一旦ストップします

もうちょい続くので暇なときにでもお付き合いいただけると嬉しいです

再開していきます


◆ ◆ ◆


海未「……」

花陽「……あ、あの…ごめんね、急に来ちゃって…」

海未「あ、いえ、全然。むしろこの雨の中、大変だったでしょう」

花陽「ううん。えっと……実は、相談があって…」

海未「…凛のことですか?」

花陽「えっ、よく分かったね」

海未「まぁ私と花陽の一番大きな共通点が凛ですから。それで、凛がどうかしたんですか?」

花陽「あのね……私、お米が、好きなの」

海未「そ、そうですか」

海未(想定外の切り出しですね)

花陽「それから、凛ちゃんのことも大好き」

海未「はい」

花陽「…今度の週末、凛ちゃんにデートに誘われてるんだけど……そのとき、お昼も一緒に食べようってことになって…どうせなら私が作っていったら凛ちゃんが喜ぶかなって思って…」

海未「微笑ましい話ですね」

花陽「でもね……そのお弁当に、おにぎりを入れるか、サンドイッチを入れるかで、すごく悩んでるの」

海未「……そうですか」

海未(何故私に相談に来たんでしょうか…)

海未「あの、それは凛に聞けばいいのでは?」

花陽「凛ちゃんは絶対おにぎりって言うと思う。…けどそれは、私に気を使って言ってるだけな気がして…」

海未「まぁ凛の頭の九割は花陽のことで埋まってそうですしね」

花陽「ううん。前に八割って言われた。一割は猫ちゃんで、残り一割はμ’sのみんな」

海未(私たち、猫と同等ですか……まぁいいですけど)

花陽「けど凛ちゃん、最近私の趣味に合わせてくれてばかりで……申し訳ないなって…」

海未「…凛はラーメンが好きでしたよね」

花陽「え? うん、そうだけど…」

海未「部活帰りにラーメンを食べに行こうと凛に誘われたとしたら……花陽はどうしますか?」

花陽「もちろんついていくよ。凛ちゃんの誘いだもん」

海未「十日連続でも?」

花陽「うん」

海未「一ヶ月連続でも?」

花陽「うん」

海未「体重が増えてしまうかもしれなくても?」

花陽「う……そ、その分ダイエットするから…」

海未「恐らくみんなそうですよ」

花陽「え?」

海未「真姫だってにこのためなら甘いものを買占めそうですし、にこもトマト尽くしの料理でも真姫と一緒なら喜んで食べるでしょう」

海未「希は絵里と一緒ならどんなチョコ菓子だって食べるでしょうし、絵里も希がいれば嬉々として焼肉食べ放題に行くと思います」

海未「好きな人と一緒にその人が好きなものを食べたい……それはみんな思ってるんじゃないですか。凛も花陽に合わせてるのではなく、合わせたいんですよ、きっと」

花陽「そ、そうなのかな……けど凛ちゃん、お昼はいつもパンだけど…」

海未「それも、花陽がお弁当を作ってくれれば喜んで食べると思いますよ」

花陽「……じゃぁ、お弁当をおにぎりにしても、凛ちゃん喜んでくれるかな…?」

海未「花陽の手作りですから、にゃーって鳴いて喜ぶと思いますよ」

花陽「そっか……うん、じゃぁおにぎりを作る! 海未ちゃん、相談に乗ってくれてありがとう!」

海未「いえ、こちらこそ。なんだか和みました」

花陽「和み?」

海未「花陽たちは純粋でいいですねってことです」

花陽「うん…?」




花陽「海未ちゃん、今日はありがとう!」

海未「いえ。さっきよりはマシですが、まだ雨が降っているので気を付けて帰るんですよ」

花陽「うん。また明日」

海未「はい。また」

海未(……それにしても、お弁当をおにぎりにするかサンドイッチにするかで悩んでいる人を初めて見ました)

海未「花陽は可愛いですね…」



穂乃果「……」


◆ ◆ ◆


ことり「うーみーちゃんっ」ギュッ

海未「こ、ことり……、穂乃果みたいなことをして驚かせないでください」

ことり「えへー」

ことり「穂乃果ちゃんといえば、今日はお休みだけど大丈夫かな…」

海未「穂乃果が風邪を引くなんて珍しいですし…心配ですね」

ことり「うん。雪穂ちゃんの話によると、昨日ずぶ濡れになって帰って来たらしいんだよね…」

海未「何かあったんでしょうか…」

ことり「さあ…? 穂乃果ちゃんがお休みなら、今日のμ’sの練習もお休みかな」

海未「恐らくそうでしょうね」

ことり「最近はいつも練習してたから、ちょっと寂しいなぁ。あ、放課後お見舞いに行く?」

海未「はい。ただ私は弓道部に顔を出さなくてはいけないので、後で行きます」

ことり「そっか。じゃぁことりは先に行ってるね」

海未「お願いします」

海未(…穂乃果の好きな苺をお土産に持っていけば、喜んでくれるでしょうか)

海未(しかしあまり甘やかしすぎるのも………いえ、風邪のときくらい優しくしたほうがいいですよね。普段は少し厳しく接してますし)

ことり「…海未ちゃん? ボーッとしてるけど、考え事?」

海未「あ、いえ、なんでも」

ことり「ふぅん…。……あ、今日は二人きりだね」

海未「二人きりって……周りにはたくさんクラスメイトがいますけど」

ことり「もー海未ちゃんってば女の子の気持ちが分かってないなぁ…」

海未「私も女なのですが…」

ことり「…えいっ」ギュッ

海未「…何故腕を組むのですか」

ことり「女の子の気持ちが分からない海未ちゃんのために、ことりが教えてあげようと思って」

海未「くっつく必要はないでしょう」

ことり「ドキドキする?」

海未「今更するわけないでしょう」

ことり「えー、つまんない…」

海未「それより早く離れてください。恥ずかしいです」

ことり「もっと恥ずかしいことしてもいいんだよ?」

海未「……チャイムが鳴ったら離れてくださいね」

ことり「はーい」




ことり「海未ちゃん、次は移動教室だよ!」

海未「そうですね」

ことり「一緒にいこ」

海未「はい」

ことり「あ、ちなみに今の一言目は穂乃果ちゃんの真似。似てた?」

海未「あまり」

ことり「自信あったんだけどなぁ…」

海未「ことりの声は可愛いですから、声真似には向いてませんよ」

ことり「そ、そう? 可愛い、かな…」

海未「はい、とても」

ことり「そっかぁ……えへへ、海未ちゃんに可愛いって言われちゃった」

海未「それより早く行かないと授業が始まっちゃいますよ」

ことり「うん」

海未「……あ、そういえば穂乃果のお見舞いなんですけど」

ことり「ん?」

海未「苺を買っていこうと思うんですが、どうでしょうか」

ことり「いいんじゃないかな。喜ぶよ、きっと」

海未「そうですか……ではそうします」

ことり「……ねぇ海未ちゃん」

海未「なんですか?」

ことり「ことりが風邪ひいても、お見舞いに来てくれる?」

海未「当たり前です。ことりならチーズケーキですよね……あ、でも風邪のときにケーキはどうなんでしょうか…」

ことり「……ふふ、嬉しいなぁ。ね、くっついてもいい?」

海未「歩きにくいからダメです」

ことり「けちー」

海未「……あ、風邪にはスポーツドリンクがいいんでしたよね」

ことり「へ? あ、うん、そうだと思うけど…」

海未「ではそれも買っていきましょう。あと、冷えピタと…」

ことり「……海未ちゃん、穂乃果ちゃんのお母さんみたい」

海未「そうですか…? 穂乃果のお母様はもっとサバサバしたカッコいい方ですが…」

ことり「そうじゃなくて、穂乃果ちゃんに対して過保護すぎないかなってこと」

海未「そんなことありませんよ」

ことり「ならいいけど……心配なのは分かるけど、あんまり心配しすぎたら海未ちゃんが疲れちゃうよ」

海未「疲れる? 身体なら鍛えてるから平気ですよ」

ことり「そういう問題じゃなくて……もー海未ちゃん面倒くさい」

海未「め、めんど…!?」

ことり「とにかく、穂乃果ちゃんのことは一旦忘れて、ちゃんと授業に集中しなきゃダメだよ」

海未「わ、分かってますよ。そもそも、そんなにいつも穂乃果のことを考えているわけではありません」

ことり「ならいいけど…」

ことり(…本当はいつも考えてるくせに)




♪I know happy holiday,happy holiday-


海未(メール…? こんな夕方に…誰でしょうか)

海未(………穂乃果から? 一体なにを…)


【学校終わった? お見舞いにきてよ、寂しいよ】


海未(……穂乃果がこんなメールを送ってくるなんて珍しいですね…よほど暇なんでしょうか)

海未(…それともよほど体調が悪いとか…? …いや、それならメールを打つ前に寝てますね)

海未(とりあえず、弓道部に顔を出したらすぐに行きます、と………返信。部活中に鳴っても困りますし、サイレントモードにしておきましょう)

海未(さて……本当はダメなんですが、小走りで弓道場まで行きましょう。早く穂乃果のところに行きたいですし)

海未「………あれ?」

海未(そういえば、穂乃果のメールには寂しいと書いてありましたが、この時間ならことりがもう着いているはずなのですが……)

海未(……まぁただ単に早く来いってことですかね)




海未(思ったより部活が長引いてしまいました……穂乃果が怒ってないといいのですが…)

海未(今何時でしょうか……携帯を…)

ことり「あ、海未ちゃん、お疲れ様」

海未「へ……え、こ、ことり? どうして校門に? とっくに帰ったはずでは…」

ことり「やっぱり一緒に行こうと思って、海未ちゃんを待ってたの」

海未「なんでそんな…」

ことり「二人一緒に行ったほうが穂乃果ちゃんも元気出るかなぁって。……迷惑だった?」

海未「あ、いえ、まさか。じゃぁ二人で行きましょうか」

ことり「うん」

海未(そういえば携帯で時刻を確認するタイミングを失ってしまいました……まぁ今更確認してもどうにもならないですし、別にいいですかね)

ことり「…そういえば、海未ちゃんと穂乃果ちゃんは生まれる前からの幼なじみなんだよね?」

海未「はい。近所でしたし、母親同士の仲が良かったので」

ことり「そっか。だったら海未ちゃんは穂乃果ちゃんのことなんでも知ってそうだね」

海未「豪語出来るほどではないですけど、それなりには」

ことり「じゃぁ、穂乃果ちゃんが本当は寂しがり屋さんなことは?」

海未「……まぁ、そうかもしれませんね。よく人に引っ付いてますし」

ことり「うん」

海未「それがどうかしたんですか?」

ことり「うーんとね……海未ちゃん、穂乃果ちゃんのこと、好き?」

海未「好きですよ」

ことり「ことりのことは?」

海未「好きですよ」

ことり「うーん…」

海未「何が言いたいんですか…?」

ことり「えっと、じゃぁ、穂乃果ちゃんことりなら、どっちが好き?」

海未「え? ……どっちとか、そんなのありませんよ。二人とも大切です」

ことり「だよね。普通ならそれでいいんだけど……でもね、難しいね」

海未「……あの、本格的に何を言いたいか分からないのですが…」

ことり「うーん、簡単に言うと、寂しがり屋の人って、裏を返せば嫉妬深いんだよ」

海未「寂しがり……って、もしかして穂乃果のことですか?」

ことり「うん」

海未「嫉妬……穂乃果には一番似合わなさそうな言葉ですが」

ことり「そんなことないよ」

海未「そうでしょうか…」

ことり「……ねぇ、だから海未ちゃん、ことりを選んで」

海未「え?」

ことり「そうしたら、守ってあげるよ」

海未「守るって……本当に何を言っているんですか。大体、なにから守ってくれるんですか」

ことり「穂乃果ちゃんから」

海未「穂乃果から…? …穂乃果が私やことりに対して何かするわけないじゃないですか」

ことり「んー……まぁそれならそれでいいけど」

海未「変なことりですね…」

ことり「海未ちゃんは鈍いね」

海未(…本当にどういうことなんでしょうか…)




穂乃果ママ「ごめんなさい…せっかく来てもらったのに、あの子ついさっき寝ちゃったみたいで…」

海未「そうですか…」

穂乃果ママ「夕方くらいからずっと起きてたから……多分疲れちゃったのね」

海未(夕方から……ということは、私たちを待っていたのでしょうか…)

ことり「えっと……じゃぁ、どうする?」

海未「起こすのも悪いですし……あの、これ。苺とか買ってきたので穂乃果に渡してください」

穂乃果ママ「まぁ、わざわざ悪いわね。あ、穂乃果、明日には治ると思うから」

海未「はい。お大事にとお伝えください」

ことり「明日、迎えにきますね」

穂乃果ママ「ええ。ありがとう、二人とも」




ことり「…残念だったね。穂乃果ちゃんのこと」

海未「そうですね…」

海未「……あの、ことり。さっきの話なんですが…」

ことり「ん?」

海未「穂乃果から守るとはどういう意味ですか」

ことり「そのまんまだよ」

海未「よく分からないのですが…」

ことり「……ことりから言っても、海未ちゃんはきっと信じないよ」

海未「私はあなたの言うことなら疑いなんてしません」

ことり「そうだろうね。けど、それが穂乃果ちゃんを侮辱するような内容だったら?」

海未「穂乃果を……?」

ことり「たとえば、穂乃果ちゃんがスーパーで万引きするのを見た、とか」

海未「穂乃果がそんなことするわけありません。見間違いですよ」

ことり「……。だから多分言っても無駄なんだよ。あ、ちなみに今の万引きの話はもちろん冗談だからね」

海未「……今日のことりの言うことは難しくて、よく分かりません」

ことり「そのうち分かるよ……って、出来ればそんな事態にはならないでほしいんだけど」

海未(そんな事態…?)




ことり「じゃぁことりの家はこっちだから。またね、海未ちゃん」

海未「はい。穂乃果を家まで迎えに行くので、明日は少し早めに集合しましょうか」

ことり「…うん」

海未「では、おやすみなさい」

海未(…穂乃果、明日には元気になっているといいのですが)

ことり「……海未ちゃん」

海未「はい?」

ことり「ことりは海未ちゃんのこと好きだから」

海未「どうしたんですか急に。私だって同じですよ」

ことり「そうじゃなくて、友情としてじゃなくて、恋愛感情として好き」

海未「……………えっ?」

ことり「だから、もし海未ちゃんもことりのことそういう風に見ることが出来るなら、付き合ってほしいの」

海未「え、ちょ、ま、待ってください、ことり」

海未(恋愛感情としてって……それはつまり、希が絵里に、凛が花陽に向けているような好意のことですよね…その逆もまた然りですが…)

海未(ことりが私を好きって……でも、そんな態度今まで一度も…)

ことり「…海未ちゃん、目グルグルしてる。頭フル回転って感じだね」

海未「あ、当たり前じゃないですか! なんでそんなこと、急に…」

ことり「だって、ことりが言わないと海未ちゃん永遠に気付かなさそうなんだもん。鈍いし」

海未(そういえばさっきも鈍いって言われましたね…)

海未「……あ、あの、ことり、私は…」

ことり「返事は今じゃなくていいから」

海未「え……しかし…」

ことり「ゆっくり考えて。…ずっと待ってるから」

海未「………分かりました」

ことり「うん。じゃぁ海未ちゃん、また明日ね」

海未「はい…また」


海未(……正直、女の子から告白されたことは何度かありますが……まさかことりに…)

海未(……ことりのことをどう思っているか、きちんと考えなくてはいけませんね。中途半端な答えを出さないように)




海未(……さて、そろそろ寝ましょうか。……あ、念のため携帯のアラームを少し早めに設定し直しておきましょう)

海未(…あ、着信がきてたんですね……え? 不在着信三十六件……って、全部穂乃果から…)

海未(サイレントモードにしていたから気付かなかったんですが……何故こんなに……よほど心細かったんでしょうか)

海未(…今電話をかけても穂乃果は寝ていますし…メールをしたら着信音で起こしてしまう可能性が……とりあえず明日電話に出られなかったことを謝りましょう)

海未(……さて、今日はそろそろ寝て…)


♪I know happy holiday,happy holiday-


海未「え? ……あ、ことりからですね」


【寝てるところを起こしちゃってたらごめんね

 今日はいきなりあんなことを言って、混乱させちゃってごめんなさい

 でも海未ちゃんのこと好きっていうのは本当だから

 海未ちゃんも真剣に聞いてくれて嬉しかったよ
 
 明日、穂乃果ちゃんも元気になって三人で登校できたらいいね♪

 じゃぁおやすみなさいー】


海未(……わざわざメールを送らなくても…。混乱したのは確かですけど、謝られるようなことではありませんし)

海未(…それに、どんな形であれ、人に好かれるというのは嬉しいものですしね)

海未(とりあえずことりに返信して、今度こそ寝ることにしましょう)


海未(………幼なじみ同士の恋、ですか)

海未(…ことりとは小さい頃からずっと一緒ですし、一緒にいると落ち着きますし……しかしこれが恋愛感情なのかと問われると……どうなんでしょうか…)


◆ ◆ ◆


海未(…さて、今日はいつもより早めに集合場所に行って、ことりと一緒に穂乃果を迎えに行かなくては)

海未(穂乃果の風邪、治ってるでしょうか…)

海未「では、行ってまいります」ガラ

穂乃果「…」

海未「っ!?」ビクッ

海未「…って、なんだ、穂乃果ですか……ビックリしましたよ…」

海未「……え? いや、どうして穂乃果が私の家の前に?」

穂乃果「……昨日、お見舞い」

海未「あ……すみません、昨日は思ったより弓道部のほうが長引いてしまって……穂乃果をわざわざ起こすのも忍びなくてそのまま帰ってしまいました」

穂乃果「……別に、起こしてくれてもよかったのに」

海未「風邪だったんですから、たくさん寝るほうがいいんですよ」

穂乃果「けど……」

海未「体調はもういいんですか? 熱は?」

穂乃果「平気。元々そんなにひどくなかったし」

海未「そうですか。大したことなくてホッとしました」

海未「…他のみんなもそうでしょうけど、穂乃果がいないと、やはり寂しいですから」

穂乃果「……海未ちゃんは?」

海未「え?」

穂乃果「海未ちゃんは……穂乃果がいなくても平気なの?」

海未「……そんなわけないじゃないですか」

穂乃果「…ほんと?」

海未「当たり前です。穂乃果がいないと調子が狂うというか……その、寂しいですよ」

穂乃果「……海未ちゃん…」ギュ

海未(…今日くらいは甘えさせてもいいですよね)ナデナデ

海未「昨日は電話に気付かなくてすみません。サイレントマナーにしていたので」

穂乃果「ううん……大丈夫。海未ちゃんの声、聞きたかっただけだから。今聞けたから、もう平気」

海未「そうですか。…あ、お見舞いの苺は食べてくれましたか?」

穂乃果「うん。すっごい美味しかった」

海未「ならよかったです。お店で一番美味しそうなのを頑張って選んだんですよ」

穂乃果「…穂乃果のために?」

海未「他に誰がいるんですか」

穂乃果「…えへへ、海未ちゃん、好き。大好き」

海未「今日はいつにも増して甘えたがりですね」

穂乃果「海未ちゃんにだけだよー」

海未「そうですか……って、いつまでもこんなことをしてる場合でもありませんね。早く行かないと、ことりを待たせてしまいます」バッ

穂乃果「あ………うん、そうだね」

海未「行きましょう」

穂乃果「……ん。…海未ちゃん、手繋いでもいい?」

海未「…学校につくまでですよ」ス

穂乃果「うんっ」ギュッ

海未「……あ、そういえば穂乃果」

穂乃果「んー?」

海未「どうして私の家まで来たんですか? 今日は私たちが穂乃果の家まで迎えに行く予定だったのですが…」

穂乃果「それはもちろん、海未ちゃん会いたかったからだよ」

海未「いつもの集合場所でも会えますけど」

穂乃果「だって、いつもの場所だと、ことりちゃんと海未ちゃんが待ってるでしょ」

海未「…それが何か問題でも?」

穂乃果「穂乃果以外の子と話す海未ちゃんなんて見たくないもん」

海未「え?」

穂乃果「…あ、大丈夫だよ。もちろん一切話すな、なんて言わないから。ただ二人きりはダメだよ。穂乃果以外の子と二人きりで話さないでね」

海未「あの、穂乃果、言っている意味がイマイチよく…」

穂乃果「あっ、ことりちゃーん、おっはよー!」

ことり「あれ、穂乃果ちゃん? よくなったんだねー、よかった!」

穂乃果「ことりちゃんも昨日お見舞い来てくれたんだよね? ありがとー」

ことり「うん。じゃぁ早速学校いこっか」

穂乃果「そーだね」

海未(……さっきの穂乃果の言葉、どういう意味なんでしょう……。二人きりで話すなって…なんでそんなことを…)

ことり「…海未ちゃん」

海未「あ、な、なんですか?」

ことり「ううん、なんでも。おはよう」ニコ

海未「お、おはようございます///」

海未(…昨日のこともあるから、顔をあわせにくいですね…)

穂乃果「……」




海未(…結局、好きとはどういうことなんでしょう)

海未(一緒にいると楽しい、ドキドキする、触れたくなる……そういう感情をすべてひっくるめて、恋と呼ぶのでしょうか)

海未(…ことりと一緒にいると楽しいですし、昨日のことを思い出すとドキドキします。触れたい……かは、まだ分かりませんが)

海未(……ことりは私に触れたいと思ってくれているんでしょうか)ジー


ことり「?」チラ


海未「!」バッ

海未(み、見ていたのがバレたんでしょうか……恥ずかしいです…)

穂乃果「……海未ちゃん?」

海未「なんですか?」

穂乃果「なにか考え事?」

海未「少し」

穂乃果「そう……。……あ、穂乃果お水切れたから、買ってくるね」

海未「いってらっしゃい」

穂乃果「……一緒に行くって言ってくれないんだね」

海未「え?」

穂乃果「なんでもない。じゃぁ待っててね」

海未「はい」

海未(……一緒に行ったほうがよかったんでしょうか。病み上がりだからか、いつも以上に甘えたになってますね…)

海未「……」チラ


花陽「あの、ことりちゃん。ここのステップがいまいち分からなくて…」

ことり「ああ、ここは多分ね、こう後ろに下がった時に…」


海未(休憩時間だというのに、ことりは優しいですね。花陽も頑張り屋さんです)

凛「海未ちゃん、かよちんは凛のだからね?」

海未「……何を唐突に言っているんですか。というか、いつから後ろに」

凛「ついさっきだよー。海未ちゃんがかよちんを見つめ始めた頃から」

海未「べ、別に花陽を見ていたわけではありません。誤解を招くような言い方をしないでください」

希「じゃぁことりちゃん見てたん?」

海未「希……、あなたたちは人の背後に忍び寄るのが得意なんですか」

希「いやー、今の海未ちゃんが隙だらけなだけやで?」

海未(もっと精進せねばなりませんね…)

希「で? 海未ちゃんはなんでことりちゃんを見つめてたん?」

海未「友人を見ることが悪いことですか」

凛「悪くはないけど、ただの友達ならなんの用事もないのに見たりしないにゃ」

海未「う…」

凛「凛はいつだってかよちんを見てるけど、それはかよちんが好きだからだもん」

希「ウチも同じ。エリちの視線も常に感じてるけど、それも同じ理由。なら海未ちゃんは?」

海未「………私にも色々事情があるんです」

凛「もしかして、ことりちゃんと付き合ってる、とか?」

海未「そ、そういうことではないですが…」

凛「なーんだ、ヒヤッとしちゃったにゃー」

海未「ヒヤッと?」

凛「うん。だって凛は穂乃果ちゃんのほうに賭けてるから……って、あっ!」

海未「…賭けてる?」

希「いやー、実はμ’sのみんなで、海未ちゃんが誰と付き合うか予想してるんよ。あ、穂乃果ちゃんとことりちゃんには内緒やけど」

海未「……怒っていいですか?」

希「ま、まぁまぁ、金銭の賭けとかはしてへんから、安心して」

海未「そういう問題ではありませんが……では何を賭けているんですか」

希「恋人になんでも言うことを聞かせられる権利」

海未「あなたたちがベタつくために私を利用しないでくださいっ」

凛「まーまー海未ちゃん、落ち着いて」

希「ちなみにウチと凛ちゃんと真姫ちゃんは穂乃果ちゃん。エリちと花陽ちゃんとにこっちはことりちゃんに賭けてるんよ。まぁ花陽ちゃんはあんまり乗り気やないけど」

海未「……二人以外という選択肢はないんですか」

希「ないなぁ」

海未「何故」

希「んー……」

海未「…どうしたんですか?」

希「いや、言ってええか分からんのやけど……多分、二人以外の人を選ぶことなんて出来ひんのちゃうかな」

海未「確かに出会いの場はほとんどないですし、私はあまり男性が得意というわけではないですけど……万が一ということもあるかもしれないじゃないですか」

海未(…もしくは、穂乃果とことり以外の女の子とか…。……周囲の影響か、最近女の子同士というのも気にならなくなってきましたね…)

希「海未ちゃんが誰かを好きになったら、あの二人が怖いやん」

海未「怖い…?」

凛「海未ちゃん本当に気付いてないの?」

海未「何をですか」

凛「穂乃果ちゃんたち、たまに怖い目で見てるんだよ」

海未「怖い目でって……私をですか?」

凛「海未ちゃんのときもあるけど、凛たちのことも。海未ちゃんにくっついたりしたら、無言ですごい目で見られるから、最近は二人の前ではくっつかないようにしてるんだにゃ」

海未「全然気づきませんでしたけど…」

希「海未ちゃんはこういうことには疎いもんねぇ…」

海未(しかし、あの二人が怖い目って……まったく想像できないのですが…)

凛「凛たちにはお互い相手がいるし、海未ちゃんには興味ないってちゃんと言ってるのにね…」

海未「興味ないって言い方もショックですね…」

凛「あるって言ってほしいの?」

海未「いえ、別に」

希「まぁみんな何だかんだ海未ちゃんのこと心配してるんよ。もちろんウチらも。海未ちゃんは色々話聞いてくれるし、良い子やと思ってるから、余計に」

海未「それはありがたいですが……心配なんて必要ないですよ。恋愛云々のことはまだよく分かりませんが、自分のことくらい自分で解決しますから」

希「やったらいいんやけど……くれぐれも無理はしんようにね」

海未「ありがとうございます」

海未(無理というのが、どういうことを指しているのかは、よく分かりませんが…)




海未(さすがにμ’sの練習の後に弓道をするのは少し疲れますね…)

ことり「あ、海未ちゃんお疲れ様ー」

海未「え、ことり? どうしてここに…」

ことり「海未ちゃんが弓道してるの見るの好きだから、こっそり見てたの」

海未「そうだったんですか……少し恥ずかしいですね」

ことり「大丈夫、今日もカッコよかったよ。すぱんって、全部真ん中にあてて……えっと、皆中って言うんだっけ?」

海未「はい、今日は調子がよかったので。…では、一緒に帰りましょうか」

ことり「うんっ」

海未「……あ、そういえば穂乃果は?」

ことり「穂乃果ちゃんは何か用事があるらしくて、今日は先に帰っちゃったの」

海未「ああ、なるほど…」

ことり「えへ、二人きりだね」

海未「っ……そ、そうですね///」

ことり「…ふふ」

海未「な、なんで笑うんですか」

ことり「いや、だって昨日同じことを言ったときはそっけなく返されちゃったから」

ことり「…ことりのこと、少しは意識してくれてるんだなぁって」

海未「……意識しないわけ、ないじゃないですか」

ことり「勇気出して言ってよかった。じゃぁ海未ちゃん、早速帰ろ」ギュッ

海未「て、手を繋ぐ必要はないでしょう」

ことり「…ダメ?」

海未「う……」

ことり「海未ちゃん…お願い……」

海未「……し、仕方ないですね」

ことり「やったぁ! 海未ちゃん大好き!」

海未「…ことりは本当にズルいですよ、色々と…」

ことり「大丈夫、ちゃんと自覚してるから」

海未「それは大丈夫なんでしょうか…」

ことり「大丈夫なんですよ。さ、帰ろ」

海未「…はい」





真姫(ああ…にこちゃんにメールしたい……けど、控えないとダメよね)

にこ「あ、真姫ちゃーん」

真姫「に、にににこちゃん!?」

にこ「な、なにそんなに驚いてるの?」

真姫「い、いや、だって学校の外で会うのって珍しいし…」

にこ「あー、確かにそうかもね。にこは夕飯の買い物に来たんだけど、真姫ちゃんは?」

真姫「私はちょっと本屋に…」

にこ「本屋? ……あ、ひょっとしてこの間にこが勧めた漫画を買いに?」

真姫「ええ。結構面白かったから」

にこ「そっかー、気に入ってくれて嬉しい」

真姫(そりゃにこちゃんが勧めてくれたものだもの。気に入るに決まってるじゃない……なんて、恥ずかしくて言えないけど)

にこ「じゃぁにこも途中まで一緒にいこっかな」

真姫「す、好きにすれば?」

にこ「うん」

真姫(…………あ、漫画といえば…)

真姫「ねぇ、にこちゃん。前から気になってたんだけど、聞いてもいい?」

にこ「なに?」

真姫「前に、にこちゃんが言ってたヤンデレって、結局どういう意味なの?」

にこ「あー……別に知らなくてもいいと思うわ」

真姫「何よ……そう言われると余計気になるじゃない。海未に聞いても知らないって言うし……物の名前か何か?」

にこ「物というか……そういう性格…じゃないわね。境遇? 属性、とか…?」

真姫「?」

にこ「えっと、つまり要約すると、好きな人のために精神を病んじゃうくらいその人のことを好きな人…ってことかしら」

真姫「へぇ……つまり褒め言葉ね」

にこ「ほ、褒め…? いや、病んじゃうんだし、あんまりいいことではないわよ?」

真姫「でもそれだけ好きってことでしょ? 良いことじゃない」

にこ「そうかなぁ…」

真姫「…でも、それならにこちゃんの言うこともあたってたわね」

にこ「え?」

真姫「だから、私は……その、にこちゃんのためなら、その、ヤンデレになったって構わないってこと…///」

にこ「う、うん」

にこ(自分で言っておいてなんだけど……あんまりヤンデレとかそういうのにはなってほしくないなぁ…)





ことり「じゃぁここで。またね、海未ちゃん」

海未「はい。気を付けて帰ってくださいね」

ことり「うんっ」


海未(…結局、ずっとことりと手を繋いでいましたね。練習後でしたし、汗とかかいてなかったらいいのですが…)

海未(それにしても、ことりの手はなんというか、女の子らしいですね。私とは違ってスラッとしていて、やわらかくてスベスベしていて……って、何を考えているんでしょう)

海未(……でもことり、嬉しそうな顔をしてくれてましたね。よかったです)


穂乃果「あ、海未ちゃん!」

海未「え?」

穂乃果「おかえりなさーい」

海未「た、ただいま……って、穂乃果、どうして私の家の前に…?」

穂乃果「海未ちゃんを待ってたんだよ」

海未「何か用事があったんですか?」

穂乃果「ううん、そうじゃなくて……穂乃果、もう黙ってるのが辛くなったから」

海未「え?」

穂乃果「……あのね、穂乃果、海未ちゃんのことが好きなの」

海未「好きって……」

穂乃果「付き合いたいんだ、海未ちゃんと」

海未「……え」

穂乃果「…穂乃果じゃダメ?」

海未「あ、いや、そうじゃなくて……ちょ、ちょっと待ってもらえますか…?」

穂乃果「うん」

海未(穂乃果も私を好きって……なんですかこれ、夢か何かでしょうか…)

海未(でも私はまだことりの想いにも答えを返せてなくて……その上穂乃果のことまで考えると……頭が破裂しそうです…)

海未「あ、あの…」

穂乃果「ん?」

海未「少しだけ、考える時間をもらってもいいですか?」

穂乃果「……どうして?」

海未「え?」

穂乃果「海未ちゃん、穂乃果のこと嫌い?」

海未「き、嫌いなわけないです。ただ、今までずっと友達だと思ってたので、心の整理が…」

穂乃果「別にいいよ、最初は友達のままでも。付き合っていく内に変わるかもしれないじゃん」

海未(そういう考え方もあるんですね……しかし、ことりのことがある以上、それは出来ません)

海未「すみません、穂乃果、やっぱりそれは…」

穂乃果「……ことりちゃん?」

海未「え?」

穂乃果「本当に海未ちゃんって分かりやすいよね」

海未「どういうことですか…?」

穂乃果「ことりちゃんとなにかあったんでしょ? 今日一日、ずっとことりちゃんを気にしてたよね」

海未「それは……」

穂乃果「…告白でもされた?」

海未「!」

穂乃果「ふふ……ほんと分かりやすいなぁ……そういう素直なところも好きだけど」

海未「……そこまでバレているなら、隠していても仕方ないですね」

海未「確かに私はことりに告白されました。返事も待ってもらっています。…だから、穂乃果も同じように待っていてほしいんです」

海未「ワガママを言っているのは自覚しています。…けど、二人のことを真剣に考えたいんです」

穂乃果「うん。嬉しいよ。海未ちゃんのそういう真面目なところとか、優しいところとか、大好き」

海未「穂乃果…じゃぁ…」

穂乃果「けどね? その優しさが向けられるのは、穂乃果だけがいいんだよ」

海未「え?」

穂乃果「穂乃果には海未ちゃんだけでいい。だから、海未ちゃんにも穂乃果だけでいいの。…そうだよね?」

海未「穂乃果、一体何を言って……」





にこ「真姫ちゃん…気持ちはありがたいけど、にこは真姫ちゃんのこと病ませたりなんかしないから」

真姫「なんで? 私、にこちゃんのためならなんだって出来るわよ」

にこ「そうじゃなくて、真姫ちゃんには真姫ちゃんのままでいてほしいの。心を病んで変わってほしくなんかない」

真姫「にこちゃん…」キュンッ

にこ「…そもそも、にこにはヤンデレをコントロールできる器用さなんてないしね…」

真姫「器用さって……そんなの必要なの? 好きな人の言うことなら大抵は聞くものだと思うけど」

にこ「んー……なんかの漫画に書いてあった受け売りなんだけどね」

にこ「強すぎる愛情っていうのは、方向性を間違えると厄介なことになったりするのよ」

今日はここまでにします
また明日再開したいと思います

お付き合いいただき、ありがとうございました

再開していきます





海未「………、?」パチ

海未「……え? ここは一体……私は何をして……、?」

海未(…なんで手足が縛られて……縛ってるこれは、ハンカチか何かでしょうか…、?」モゾモゾ

海未(そもそもここはどこですか……薄暗くて…なんだか埃くさいというか…妙に懐かしいにおいが…)

穂乃果「あ、海未ちゃん!」

海未「穂乃果…?」

海未(何故パジャマ姿なのでしょうか…)

穂乃果「うん、穂乃果だよー。大丈夫? どこか痛いとことか、ない?」

海未「頭が少しだけ…」

穂乃果「あー……やっぱり少し量が多かったのかな。初めて使ったからその辺よく分からなくて…ごめんね」

海未「量って……どういうことですか?」

穂乃果「覚えてない? あの後、海未ちゃんのお家にお邪魔して、お茶を淹れてもらったんだよ」

穂乃果「で、その時こっそり海未ちゃんのお茶の中に睡眠薬入れたの。即効性だからすぐ効いたみだいね」

海未「……は? え、睡眠薬って…」

穂乃果「最近は便利だよねぇ。ネット通販で何でも買えちゃうし。あ、海未ちゃんのお母さんにはちゃんと穂乃果の家にお泊まりすることになったって伝えてるから安心して」

海未「何を言って……、そもそもここはどこなんですか…?」

穂乃果「穂乃果のお家って結構古いでしょ? ここは昔使ってたお部屋らしいんだけど……なんのためなのか入り口が隠し扉になってて、そう簡単には見つけられないの」

穂乃果「小さい頃遊ぶ場所がなかったときに、おばあちゃんがこっそり教えてくれた場所なんだよ」

穂乃果「おばあちゃんと穂乃果の二人だけの秘密だってなんか嬉しくなっちゃって、雪穂にも教えてないの。だからちょうどいいかなぁって」

海未「ちょうどいいって……どういうつもりです」

穂乃果「海未ちゃんとここで一緒に生活しようと思って!」

海未「そんな笑顔で……、正気ですか?」

穂乃果「十分正気だよ。穂乃果が型破りな性格だっていうのは、海未ちゃんが一番よく知ってるでしょ?」

海未「それはそうですが……まさかここまでとは思いませんでした」

穂乃果「……元々海未ちゃんが悪いんだよ? 何年も一緒にいるのに穂乃果の気持ちにまったく気付かないし…最近は他の子とばかり仲良くして…」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんのこと大好きだから、海未ちゃんが他の人と付き合うなんて絶対嫌」

穂乃果「ことりちゃんは友達だし、大好きだけど……それでも嫌。海未ちゃんを誰かにとられるのだけは…絶対に嫌…」

穂乃果「…海未ちゃんに穂乃果だけを見てもらうためには、こうするしかないでしょ?」

海未(穂乃果…そこまで私のことを……、この気持ちに一切気付かなかったなんて、自分が情けないですね)

穂乃果「…あ、海未ちゃん、お腹すいてる? もう遅い時間だけど、何か作ってこよっか?」

海未「いえ…あまり食欲がないので」

穂乃果「そっか…お腹すいたら言ってね」

海未「はい。……それで? 穂乃果はこの先どうするつもりですか」

穂乃果「海未ちゃんとずっと一緒にいる」

海未「…学校は?」

穂乃果「行くよ。その間海未ちゃんと離れるのは辛いけど、自分の家にいる以上は普段通りに生活しないと怪しまれちゃうからね」

海未「そうですか…」

海未(……どうするべきですかね)


♪I know happy holiday,happy holiday-


穂乃果「ん?」

海未「あ、私の携帯……って、いつの間に取ったんですか…」

穂乃果「寝てる間に。誰からかな?」

海未「勝手に見ないでくださいよ…」

穂乃果「海未ちゃんのことはなんでも知りたいんだよ」

海未「はぁ…」

穂乃果「えっと…………あ、ことりちゃんからだ」

海未「ことり? なんて書いてあるんですか?」

穂乃果「……。別になんだっていいじゃん。それより、何か話そうよ。最近海未ちゃんと二人の時間があんまりなかったから」

海未(…そういえば前にことりが、穂乃果は寂しがり屋だと言ってましたっけ)

海未「……いいですよ。穂乃果の気が済むまで付き合います」

穂乃果「ほんと!? やったぁ!」

海未「なので、この手足の拘束、といてもらえませんか?」

穂乃果「それはダメ」

海未「ですよね…」




穂乃果「んにゃ、海未ちゃ……」スースー

海未(話すだけ話して寝てしまうとは……昔からこういうところは変わってませんね)

海未(…しかし、これはいわゆる監禁というやつなのでしょうか。そうだとすればなかなか際どい行為だと思うのですが……まさか穂乃果がここまでするとは思いませんでした)

海未(……まぁ、最初こそ戸惑ったものの…)モゾモゾ

海未「……穂乃果、人を縛るならハンカチはやめたほうがいいと思いますよ。簡単に取れてしまいますし」シュルリ

穂乃果「ふにゃ…」スピー

海未「…こういう抜けてるところも昔から変わってませんね」ナデナデ

穂乃果「えへへ……海未ちゃ、好き…」

海未(眠っていると可愛いですね……と、そんなことを思ってる場合じゃないです)

海未(…私がこのまま帰ったら、穂乃果が目覚めた時どう思うか……、かといってここにいたら危ないような気もします)

海未(真っ向から挑まれれば穂乃果に負ける気はしませんが、また薬でも盛られたらさすがに敵いません)

海未(一体どうすれば……)


――海未ちゃんを誰かにとられるのだけは…絶対に嫌…


海未(……)



◆ ◆ ◆


穂乃果「ん、……?」パチ

海未「おはようございます、穂乃果」

穂乃果「あ、おはよー海未ちゃん」ギュッ

海未「…寝ぼけてますか?」

穂乃果「ふぇ?」

穂乃果「…………って、ああああああっ! えっ、な、なんで海未ちゃん動いてるの!?」バッ

海未「人を死んでいたみたいに言わないでください」

穂乃果「い、いや、そうじゃなくて……あれ? 手足縛ってたよね…?」

海未「あんな緩い拘束ならすぐに取れましたよ」

穂乃果「そ、そんなぁ………確かに海未ちゃんが痛くないようにって、少し緩めに縛ってたけど…」

海未「ああ、だからあっさり取れたんですか。穂乃果は優しいですね、ありがとうございます」

穂乃果「えへへ、どういたしまして……って、そうじゃなくて! う、海未ちゃん! 今すぐ縛られ直して!」

海未「もちろん嫌です」

穂乃果「うぅ……こ、こうなったら実力行使で…!」

海未「…」グイ

穂乃果「……あ、あの、海未ちゃん。手を掴まれると、動けないんだけど」

海未「穂乃果が力で私に勝てるわけじゃないじゃないですか。私がどれだけ鍛えているかは、あなたが一番よく知っているでしょう」パ

穂乃果「うううぅぅぅ……海未ちゃぁん…」ギュー

海未「……とりあえず、朝ごはんでも食べに行きませんか」ナデナデ

穂乃果「……怒ってないの?」

海未「怒ってます。睡眠薬なんて体に悪そうなもの、勝手に飲まされたんですから」

穂乃果「え、そっち? ……ごめんなさい…」

海未「…別にいいですよ。元々悪いのは私です。ことりの気持ちにも、穂乃果の気持ちにも気付けていなかったんですから」

穂乃果「それは…仕方ないよ……海未ちゃんニブちんだもん…」

海未「返す言葉もありませんね。……穂乃果、話があるんです」

穂乃果「話?」

海未「今日の放課後、μ’sの練習が終わった後、屋上に残ってください。ことりと一緒に」

穂乃果「ことりちゃんと? ………うん、分かった」






ことり「それで? 話ってなにかな、海未ちゃん」

海未「……告白の返事です」

穂乃果「!」

ことり「…そっか。やっぱり穂乃果ちゃんにはバレちゃってたんだね」

穂乃果「あ、ご、ごめんね、ことりちゃん…」

ことり「謝ることないよ。抜け駆けしちゃったことりが悪いんだもん」

穂乃果「う……」

穂乃果(海未ちゃんを監禁して独り占めしようとした、なんて言えないよ…)

ことり「けど穂乃果ちゃんがここにいるってことは、穂乃果ちゃんも海未ちゃんに告白したってこと?」

穂乃果「あ、うん」

ことり「そっかぁ……なんか意外かも」

穂乃果「え?」

ことり「んーん、こっちの話」ニコ

穂乃果「?」

ことり「じゃぁ海未ちゃん、返事を聞いてもいいかな?」

海未「はい」

海未「……私は、二人とは付き合えません」

穂乃果「えっ」

ことり「…。てっきり、どちらかは選んでくれるかと思ったんだけどなぁ…」

海未「穂乃果もことりも私にとって大切な幼なじみです。…しかし、私はあなたたちをそういう目で見たことはありません」

海未「だから、すみません。好きになってくれたのはとても嬉しいですが…私は二人の想いに応えることは出来ません」

穂乃果「そ、そっか……海未ちゃんには、穂乃果じゃ……ダメなんだね……」グスッ

海未「穂乃果…」

穂乃果「ご、ごめんね、泣くつもりはなかったんだけど………、ねぇ海未ちゃん…」

海未「何ですか」

穂乃果「今だけ……今だけ、甘えてもいいかな…?」

海未「……いいですよ。昔から穂乃果は甘えたがりですからね」

穂乃果「海未ちゃ……、っ!」ギュッ

海未(…すみません、穂乃果。想いに応えられなくて…)

海未(でも、私には穂乃果もことりもどちらも大切で……一人しか選べないなら、二人とも選ばないほうがいいんです。私の身勝手のせいで、こんなに泣かせてしまって…)

ことり「……海未ちゃん」

海未「ことり…」

ことり「えへへ……本当はことりも泣きたかったんだけどね。穂乃果ちゃんがそれじゃ、ことりは泣けないよね」

ことり「……ことりも、海未ちゃんに慰めてもらいたかったなぁ…」

海未「あ、あの、ことり…」

ことり「あ、ごめんね、ことり、ちょっと用思い出したから、先に帰るね」タッ

海未「……」

海未(……ことりには悪いことをしてしまいましたね…)

穂乃果「……海未ちゃん」ギュ

海未「はい」

穂乃果「……もしかして、穂乃果が昨日言ったこと、気にしてる?」

海未「え?」

穂乃果「海未ちゃんをとられるのが嫌、って……」

海未「……いえ」

穂乃果「…ホントに?」

海未「はい」

海未(…本当は、気にしていないと言えば嘘になるのですが)

海未(でも、きっと穂乃果の言葉がなくても、答えは変わらなかったと思います)

海未(私はやっぱり、どちらかを断ってどちらかと結ばれるより、三人でいるほうが……、穂乃果たちがそう思ってくれるかは、分かりませんが…)


◆ ◆ ◆


穂乃果「おっはよー、海未ちゃん!」ギューッ

海未「ひゃっ……ほ、穂乃果…おはようございます…」

穂乃果「えへへー、今日もいい天気だねー」

海未「そうですね」

海未(元気が戻ったようですね……よかったです)

穂乃果「…あれ? ことりちゃんは?」

海未「ああ……さっきメールがありました。今日は体調不良で欠席すると」

穂乃果「…そっか。ちょっと心配だね」

海未「そうですね…」

海未(タイミング的に考えて、やはり昨日のことですよね…。私が言うのもなんですが、早く元気になってくれるといいのですが…)

穂乃果「……うーみちゃん」ギュ

海未「な、なんですか」

穂乃果「手繋ぎたかっただけ」

海未「……まぁ、いいですけど」

穂乃果「えへへ、やった」

海未(…これくらいなら友達の範囲、ですよね…)

穂乃果「じゃぁ海未ちゃん、学校までレッツゴー!」

海未「わっ……ひ、引っ張らないでくださいよ」

海未(………? そういえば、ことりが欠席するときに穂乃果にメールしないなんて珍しいですね。いつもは必ず二人に連絡があるのに)

海未(…連絡を忘れるほど、傷心しているということなのでしょうか)

海未「穂乃果」

穂乃果「なに?」

海未「放課後、ことりのお見舞いに行きませんか。今日は弓道部の練習もないですし……恐らくμ’sの練習もなしになるでしょう」

穂乃果「あー…そうだね。じゃぁいこっか」

海未「はい。後でことりにメールを送っておきますね」

穂乃果「ことりちゃん、大したことないといいね」

海未「そうですね。ことりがいないのも、寂しいですし」

穂乃果「……。うん、そうだね!」


◆ ◆ ◆


(昔から海未ちゃんは優しい)

(あの返事もきっと、どちらか一人を選ぶより二人とも選ばないほうが、三人一緒にいられる可能性が高くなると思ったから)

(私たちが気負わないように、きっと海未ちゃんなりにたくさん考えてくれたんだと思う)

(……でも、やっぱり嫌)

(海未ちゃんのことは全部全部私が独り占めしたいよ)


◆ ◆ ◆




穂乃果「あっ! 忘れてた、穂乃果今日、日直なんだった…」

海未「ああ、そういえばそうでしたね……」

穂乃果「日誌書かなきゃいけないから、帰るのちょっと遅くなっちゃうかも…」

海未(…待っていたいところですが、ことりの家に行くのが遅くなりすぎて、穂乃果の時みたいになるのも嫌ですし…)

海未「では、私は先にことりの家に…」

穂乃果「待ってて」

海未「え?」

穂乃果「…ごめん、終わるまで待っててくれる? ことりちゃんの家には二人で行こうよ」

海未「えっと……まぁ、穂乃果がそう言うなら…」

穂乃果「うんっ。出来るだけ早く終わらせるから」

海未「はい」



―放課後―


穂乃果「よーし、できた! 海未ちゃん、待たせちゃってごめんね」

海未「いえ、平気ですよ」

穂乃果「じゃぁこれ、職員室に持っていくから、もうちょっと待っててね」

海未「ええ」


海未(…時間的にはそれほどかかってませんし、ことりが寝てしまうという可能性もなさそうですね。万が一本当に風邪だった場合は、寝ているかもしれませんが)

海未(……メールの返事も、まだきてませんね。…嫌われてしまったんでしょうか…)

希「あれ? 海未ちゃん?」

海未「希? どうしてここに…」

希「ウチは今から生徒会室に行くんよ。教室のほう見たら海未ちゃんの姿が見えたから、声かけたん」

海未「へえ…珍しく絵里は一緒じゃないんですね」

希「そりゃそんな四六時中一緒におるわけやないよ」

「……」

希「エリちは先に生徒会室。いやー、今日の授業中にうっかり寝てしまって……それが先生にバレて、今までお説教くらっててん…」

海未「副会長が何をやっているんですか…」

希「その分生徒会長がしっかりしてるからええもーん」

海未「なんという他力本願……まぁ希らしいですけど」

希「それより海未ちゃんはなんでこんな時間まで残ってんの? ことりちゃんのお見舞いは?」

海未「穂乃果が日直だったので、仕事が終わるのを待っていたんです。ことりの家には今から行きます」

希「そっかそっか。穂乃果ちゃんは留守なん?」

海未「はい。そのうち帰ってくると思いますけど」

希「よし、じゃぁウチが海未ちゃんの暇つぶしに付き合ってあげる」

海未「結構です」

希「タロットで、海未ちゃんのこと占ったげるね」

海未「聞いてますか?」

希「よし、と。じゃぁいくよー」

海未「……希、あなた生徒会の仕事が面倒なだけでしょう?」

希「い、嫌やな。可愛い後輩とのスキンシップの大切さに気付いただけやん」

「……」

海未(図星なんですね…)

海未「……少しだけですよ。あまり遅くなると、絵里にも悪いですし」

希「わーい、海未ちゃん大好きー」

海未「はいはい」

「……」

希「えーっと、海未ちゃんの運勢は、っと」ペラ

希「………」

希「……」

希「…」

希「よし、生徒会室にいこ!」

海未「ちょ、ちょっと待ってください。いくらなんでも気になりますよ」

希「あー……海未ちゃんの運勢、あんまりよくなかったんよ。ただ、ウチの占いはあんま当たらへんから…」

海未「…前に当たるって豪語してませんでした?」

希「あはは……まぁ運勢なんて気合いで何とか出来るものやし。そんな気にしーひんほうがええよ」

海未(希がそこまで言うということは、よほど結果が悪かったんでしょうか…)

希「……海未ちゃん」

海未「はい?」

希「最近、穂乃果ちゃんたちと何かあった?」

海未「……まぁ少し」

希「そか。色々大変やろうけど、頑張ってね」

海未「はい」

希「…あ、あと、海未ちゃんに一つアドバイス」

希「どうしてもどちらかを選べへんのやったら、いっそのこと二つとも選んでしまうんもアリやないかな」

海未(どちらかって……穂乃果とことりのことですよね)

海未「…助言はありがたいですが、私はあまりワガママが得意じゃないんです」

海未(それにもう、私には二人を選ぶ資格はありませんし…)

希「普段色々頑張ってんのやし、たまにはワガママ言ってもええと思うんやけどねぇ」

「……」

海未「……ですが」

穂乃果「海未ちゃーん! お待たせー……って、ありゃ? 希ちゃん?」

海未「あ、穂乃果…」

穂乃果「希ちゃん、こんなとこでどうしたの?」

希「ちょっと暇つぶしを。じゃぁ穂乃果ちゃんも戻ってきたことやし、ウチはそろそろいこかな」

海未「…はい、ありがとうございました」

希「ん。じゃぁ二人とも、またね」

穂乃果「うん、またねー」

海未(……ワガママ、ですか…)

穂乃果「……海未ちゃん」

海未(でも、そんなの…)

穂乃果「海未ちゃん!」

海未「あ、は、はい。何ですか?」

穂乃果「…早く帰ろ? ことりちゃん待ってるよ」

海未「そうですね。では行きましょうか」

穂乃果「うん。……あの、海未ちゃん」

海未「はい?」

穂乃果「手、繋いで行きたいな」

海未「え、あ……はい。いいですよ」ス

穂乃果「ありがとう!」ギュッ

海未(穂乃果が甘えてくるのはいつものことですが……こんなにしょっちゅう手を繋ぐのも珍しいですね…)

海未「では行きましょうか」

穂乃果「うんっ」




穂乃果「ねー海未ちゃん」

海未「なんですか?」

穂乃果「……穂乃果ね、海未ちゃんのことがまだ好きだよ」

海未「え…」

穂乃果「何年もずっと好きだったんだもん。そんな簡単に諦められるわけないよ」

海未「そ、それもそうですね……」

穂乃果「……でもね、今日海未ちゃんに冷たくされたら、海未ちゃんのこと諦めようと思ってたの」

穂乃果「でも海未ちゃんは昨日までと変わらず優しくて、こうやって手も繋いでくれる」

海未「それは……友達としてですよ」

穂乃果「……うん、分かってる。それでも、そんな海未ちゃんが好きだから」

海未「穂乃果…」

穂乃果「…ごめんね。海未ちゃんにとっては迷惑でしかないだろうけど…」

海未「迷惑だなんて、そんなこと…」

穂乃果「ない?」

海未「………ない、ですよ。穂乃果ですから」

穂乃果「…えへへ。海未ちゃん、好き、好きだよ」

海未(……)





ことり「二人とも、わざわざ来てくれてありがとう」

穂乃果「ううん、全然」

ことり「穂乃果ちゃん、はい。紅茶でよかったかな」

穂乃果「うん、ありがとー」

ことり「…海未ちゃんも、はい」

海未「ありがとうございます。…体調は大丈夫ですか?」

ことり「うん。体は全然元気だよ」

穂乃果「それならよかった。あ、これお土産。途中のコンビニで買ったの」

ことり「わ、ありがとう。…ケーキ?」

穂乃果「うん。チーズケーキ、ことりちゃん好きでしょ」

ことり「うん、嬉しい」

ことり「……」チラ

海未「…?」

ことり「えっと……穂乃果ちゃんも海未ちゃんも、紅茶飲んでね。結構上手に淹れられたと思うの」

穂乃果「あ、うん、じゃぁもらうね」ゴク

海未「では私も…」コク

穂乃果「うん、すっごく美味しいよ!」

海未「そうですね。温度も甘さも絶妙で…さすがことりです」

ことり「えへへ……ありがとう」

ことり「……あ、あのね……昨日のことなんだけど…」

ことり「もうバレてそうだけど…今日休んだのは、昨日のことがあったから」

海未「ことり…」

ことり「……海未ちゃんにフラれちゃったとき、本当に悲しかったんだけど……泣くタイミングがなくて……まだ泣けてないの」

穂乃果「ご、ごめんね…穂乃果が勝手に一人でわんわん泣いちゃったから…」

ことり「ううん。穂乃果ちゃんは悪くないよ……ただ、ごめんね……少しだけ、海未ちゃんを借りていいかな?」

穂乃果「え?」

ことり「……海未ちゃん、昨日の穂乃果ちゃんのときみたいに、ことりのことも泣かせてくれないかな…」

海未「…ことりがそれを望むなら」

穂乃果「えっと……じゃぁ穂乃果は先に帰ってるね」

ことり「ごめんね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「ううん、お互い様だもん、気にしないで。……じゃぁね、海未ちゃん」

海未「はい、また明日」

穂乃果「ん」



パタン


ことり「……穂乃果ちゃんに悪いことしちゃった…」

海未「穂乃果は気にしていないと思いますよ」

ことり「だといいんだけど……」

海未「…ことり」ス

ことり「……抱きついていいの?」

海未「人に泣き顔を見られるのは嫌でしょう」

ことり「海未ちゃんなら平気だよ」

海未「…私が見たくないんです。やはりことりには笑顔が似合いますから」

ことり「……海未ちゃんってば、女たらしの人みたい」

海未「へ、変なこと言わないでください」

ことり「えへへ……ごめんね。じゃぁお言葉に甘えて…」ギュ

海未「……」ナデナデ

ことり「……海未ちゃんは優しいね」

海未「そんなことないですよ」

ことり「優しいよ。……だって、ことりのこと、信頼しきってるんだもん」

海未「え?」

海未「………?」フラ

海未(あ、あれ……なんか、急に、眠気が……)

海未(練習疲れでしょうか……いや、それにしては急すぎ、で、……あ、目の前が……暗……)

海未「……」バタ

ことり「海未ちゃん? ……寝ちゃった?」

ことり「……紅茶、美味しいって言ってくれて嬉しかったよ。無味無臭の睡眠薬を買ってよかったなぁ…」


ことり「……ふふっ、これでずっと一緒だね、海未ちゃん」






海未「……」パチ

ことり「あ、海未ちゃん、おはよー」

海未「……おはようございます」

海未(パジャマ姿のことり……縛られた手足…またも強烈なデジャヴを感じますね…)

海未「それで、ここはどこですか?」

ことり「そんなこと、海未ちゃんには関係ないよ。これからずーっとここで暮らすんだもん」

海未「……ことり。あなたは穂乃果よりはアクロバティックな性格ではないと思っていたのですが…」

ことり「海未ちゃんが気付かなかっただけだよ」

海未「そうですか……それは迂闊でしたね」

ことり「それより、ようやく二人きりになれたね、海未ちゃん」

海未「……そうですね」

ことり「…またそっけない返事に戻っちゃったね」

海未「こんな状態でドキドキできるほどおめでたい性格ではないので」

海未(……手足の拘束は、穂乃果の時とは違って、縄で縛られていますね。さすがにことりは賢いです)

海未「ことり」

ことり「なぁに?」

海未「話し合いましょう」

ことり「うん、いいよー。どんなお話する? ことり、海未ちゃんとお話するの大好き」

海未「何故こんなことをするんですか」

ことり「……やっぱりそういう話なんだね」

海未「当たり前でしょう」

ことり「んー……だって、海未ちゃんを独り占めしたかったから」

海未「私は物じゃないんですよ」

ことり「分かってるよ。でも好きなんだもん。独り占めしたいって思うのは当然でしょ?」

海未「……私には、よく分かりません」

ことり「海未ちゃん、恋愛とかあんまり興味なかったもんね」

海未「はい。私は昔からずっと舞踊や弓道ばかりに専念していましたから」

ことり「うん、知ってる。そういう真面目なところも好きだよ」

ことり「……でも、これからはことりが教えてあげる。恋とか、他のことも、色々」

海未「ことり……こんなことをしても良いことなんてありませんよ」

ことり「海未ちゃんと一緒にいられるよ?」

海未「…こんな風に私を物理的に縛った状態で、あなたは本当に幸せなんですか。私はこのままでは…あなたのことを、恨んでしまうかもしれませんよ」

ことり「それは嫌だけど……でもそんなの最初のうちだけだよ」

ことり「だって、これからはずっと一緒だもん。海未ちゃんの世界にはことりしかいなくなる。だったら、ことりを好きになるしかないでしょ?」

海未「……」

海未(恋愛感情というものが何なのか、結局私にはよく分かりません)

海未(しかし、μ’sのみんなの影響で、他人の恋愛事情をちょくちょく目の当たりにしてきました)

海未(絵里も希も、凛も花陽も、真姫もにこも、お互いがお互いのことを大切にして、ほんの些細なことで不安がったり、喜んだりしていました)

海未(あれがきっと正しい恋の形で……穂乃果やことりも最初はそんな想いだったはずで……それを歪めてしまったのは、間違いなく私で)

海未(だったら、私がとるべき行動は……)

海未「……ことり」

ことり「ん?」

海未「ワガママを言ってもいいですか」

ことり「え? ……もちろんいいよ! 海未ちゃんあんまりそういうこと言わないもんね、嬉しいなぁ」

海未「では、私を返してください」

ことり「……それ、答えなんて分かり切ってるよね?」

海未「話があるんです」

ことり「それなら今聞くよ」

海未「穂乃果も一緒でないと意味がないんです」

ことり「………」

海未「ことり?」

ことり「……また、穂乃果ちゃん?」

海未「え?」

ことり「海未ちゃんってさ、自覚ないんだろうけど、いっつも穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん、だよね」

ことり「穂乃果ちゃんといると楽しそうだし、穂乃果ちゃんが何をしても最終的には許しちゃうし」

ことり「ことりと二人でいるときでさえ穂乃果ちゃんの話をするよね…」

ことり「そんなに穂乃果ちゃんが好き? だったら穂乃果ちゃんと付き合えばよかったのに」

ことり「…ことりのこと気にかけてくれたの? そうだよね、ことりはどうせ二人にとっては余計な存在だもんね」

海未「ことり、何を…」

ことり「生まれる前からの幼なじみなんだもんね? ずっとずっと一緒にいたんだもん。途中から混ざってきたことりのことなんて、どうせどうでもいいんでしょ?」

ことり「だったらそう言ってよ。邪魔なら、邪魔だって…」

海未「ことり!!」

ことり「っ……なに? 本当のことでしょ?」

海未「……ことりはバカですか」

ことり「…海未ちゃんには言われたくない」

海未「まぁそうでしょうね。私が一番バカだったことは自覚しています」ギリギリ

海未(……多分いけますね)ギリッ

ブチッ!

ことり「!?」

ことり「え、な、なに今の音…」

海未「はい」シュル

ことり「………それ、縄、だよね」

海未「そうですね」

ことり「……切れてるんだけど」

海未「切りましたから」

ことり「……引きちぎったの?」

海未「はい」

ことり「………海未ちゃん、馬鹿力すぎない…?」

海未「何十年鍛えてると思っているんですか。恋愛も趣味もすべて投げ捨てて、己を鍛錬することにだけ専念していたんですよ」

ことり「……はぁ……海未ちゃん、メチャクチャだよ…」

海未「照れますよ」

ことり「褒めてないよ…」

海未「しかし、この縄、少し緩めに結んでありましたよね」

ことり「……」

海未「ことり?」

ことり「……だって、海未ちゃんの手に痕がついたら、嫌だから…」

海未(そういうところは穂乃果に似てますね…。緩い結びのせいで、引きちぎるのはちょっとしんどくなりましたが)

海未「ふふ…ありがとうございます」

何十年…

>>207

やだ恥ずかしい
十何年ですね、海未ちゃんいくつだよって話ですね
ご指摘ありがとうございます

ことり「………海未ちゃん、馬鹿力すぎない…?」

海未「何年鍛えてると思っているんですか。恋愛も趣味もすべて投げ捨てて、己を鍛錬することにだけ専念していたんですよ」

ことり「……はぁ……海未ちゃん、メチャクチャだよ…」

海未「照れますよ」

ことり「褒めてないよ…」

海未「しかし、この縄、少し緩めに結んでありましたよね」

ことり「……」

海未「ことり?」

ことり「……だって、海未ちゃんの手に痕がついたら、嫌だから…」

海未(そういうところは穂乃果に似てますね…。緩い結びのせいで、引きちぎるのはちょっとしんどくなりましたが)

海未「ふふ…ありがとうございます」

ことり「この状況でお礼を言うなんて、海未ちゃんおかしいんじゃないの…」

海未「そうですね。…それより、さっきの話の続きです」

ことり「……そんなことより、早く逃げたほうがいいんじゃない? ことり、海未ちゃんに酷いことしたんだよ」

海未「話のほうが先です」

ことり「…」

海未「私はことりのことを邪魔だなんて思ったことは一度もありません。穂乃果だってきっとそうです」

海未「出会った時期なんて関係ありませんよ。穂乃果もことりも、私にとっては同じくらい大切な存在なんです」

ことり「……海未ちゃん…」

海未「ですから、二人に伝えたいことがあります」

ことり「…伝えたいことって?」

海未「それは穂乃果も一緒の時に改めて話します」

海未「…それより」ス

ことり「……なに? 急に腕広げて…」

海未「まだことりを泣かせられてなかったでしょう」

ことり「っ………、海未ちゃんって、本当に…ズルいよね…」

海未「ことりに言われたくはないですね」

ことり「…ことりは自覚してるからいいんだもん」ギュ

海未「…そんなものですか」ナデナデ


―――――

海未(穂乃果が好きで、ことりのことも好きで、どちらかを選ぶことは出来なくて、二人を拒絶して)

海未(けど、それじゃ何も解決しない)

海未(だったら、私は……)


―――――

―――

――


海未(……しかし、まさか二度も立て続けに監禁まがいなことをされるとは思いませんでした…)

海未「人生って、なにがあるか分からないものですね…」

希「え?」

海未「あ、すみません……声に出てましたか」

希「珍しいね、海未ちゃんが独り言なんて」

海未「色々ありまして…」

希「…そっか」

希「にしても、みんな遅いね。穂乃果ちゃんとことりちゃんは何か用があったんやっけ?」

海未「はい。ことりは日直で、穂乃果は職員室です」

希「職員室?」

海未「希と同じ理由ですよ。授業中に居眠りしていたのがバレて、お説教です」

希「あー…なるほど」

希「……ところで海未ちゃん」

海未「はい?」

希「その後、どんな感じ?」

海未「…弓道部ですか?」

希「穂乃果ちゃんとことりちゃんのことに決まってるやん」

海未「……残念ながら、私はみんなのように他人にノロケる趣味はありませんので」

希「まぁ海未ちゃんはそうやろうなぁ……けど、進展具合はみんなに筒抜けやで」

海未「えっ……な、何故ですか」

希「そりゃ、あの二人がしょっちゅう喋ってるから」

海未「………初耳なんですが」

希「海未ちゃんがいいひん時を狙って話してるからね。海未ちゃんは奥手すぎるとか、ヘタレだとか」

海未「ほとんど悪口じゃないですか!」

希「事実やん?」

海未「う……べ、別に、ヘタレなどではなく、あくまで二人を大切にしているだけです!」

希「海未ちゃんはウブやからねー」

海未「バカにしてませんか?」

希「まさか。ふふ、可愛い可愛い」ナデナデ

海未「や、やっぱりバカにしているでしょう!///」カアアァッ

希「おー、顔真っ赤。海未ちゃん、最近表情がやわらかくなってきたね」

希「…これもきっと、穂乃果ちゃんたちと付き合ったからかな」

海未「……希には感謝していますよ。あの時のアドバイス、ありがたく使わせてもらいました」

希「ふふ、どういたしまして」

希「いやー、でもまさかあの海未ちゃんが三人で付き合うなんて、斬新なことをするとはね…」

海未「…前に、私がことりを意識していたとき、知らずのうちに穂乃果を苦しめていました」

海未「でも二人を拒絶したら、今度はことりが苦しんで……だったら、二人とも選ぶ他ないかと思いまして…」

海未「もう薬で眠らされるのは嫌ですし」

希「そか……って、ん? 薬?」

海未「はい。睡眠薬を仕込まれていたことがありまして」

希「え……そ、それで、眠った後どうなったん?」

海未「穂乃果のときは家の隠し部屋みたいな場所に、ことりのときは近所の使われていない空き家みたいな場所に連れていかれました」

希「なんでそんなとこに…?」

海未「二人きりになれるからじゃないですか」

希「やからって、それはちょっと…」

海未「睡眠薬はどうかと思いますが、二人とも優しかったですよ。手足を縛るハンカチや縄は緩めに結んでくれていましたし。おかげですぐに抜け出せました」

希「」

海未「…どうかしましたか?」

希「いや……海未ちゃんって、スピリチュアルやね…」

海未「?」

希「ま、まぁ三人が幸せならそれでええんちゃうかな! うん!」

海未「はい」


「……」





希(あの二人は前々からちょっと不安定やなぁって思ってたけど……まさか監禁まがいなことまでしてるとは…)

希「すごいなぁ…」

絵里「何が?」

希「あ、いや、なんでもない」

絵里「…そう?」

希(まぁ一番すごいのは、それを当たり前のことのように受け入れてる海未ちゃんやけど……なにあの子、精神鍛えられすぎやない…?)

絵里「……希ー?」

希「あっ、な、なに?」

絵里「ボーッとしてるけど……どうかしたの?」

希「あー、いや、ちょっと考え事」

絵里「ふーん……何か悩んでるならちゃんと言ってね?」

希「うん、ありがと」

希(三人で付き合うっていうのは、世間的に見れば間違ってるんかもしれへんけど……ウチは海未ちゃんたちが幸せならそれでええと思う)

希(応援してるから、頑張ってな、海未ちゃん)フフ

絵里「……」






タッタッタッタッタッ


穂乃果「海未ちゃーん!」ドンッ

海未「……穂乃果、あまり勢いよく飛びつかれると、体がもちません」

穂乃果「あ、ごめんね…平気?」

海未「はい、まあ。それよりことりは?」

穂乃果「ことりちゃんは部室に忘れ物したから取りに行ってくるって」

海未「では校門のあたりで待っていましょうか」

穂乃果「うんっ。あ、でもその前に…」

海未「?」

穂乃果「キスして?」

海未「は!? こ、ここは学校ですよ!///」

穂乃果「いいじゃん、もう放課後だし誰もいないよ。ね、早くー」

海未「だ、ダメです、人前でそんなことするなんて破廉恥です!」

穂乃果「破廉恥って……大げさだなぁ。……分かった、もういいよ……」シュン

海未「う…」

海未(そんなあからさまに落ち込まなくても…)

穂乃果「…校門のところ、いこ」

海未「……ほ、穂乃果」

穂乃果「ん?」

海未「……」キョロキョロ

海未「……」グイッ

穂乃果「へ、なに、海未ちゃ……、ん」

海未「……さ、早く行きますよ」

穂乃果「……うんっ! 海未ちゃんっ」ダキッ

海未「だ、抱き付かないでください」

穂乃果「えへへ……海未ちゃん、大好きだよ!」

海未「……ええ。私もですよ、穂乃果」



―――――

――――

―――


ジャラ…


「……ん?」


「あ、目が覚めた?」


「え? あれ……ここは…?」


「ふふ、それは秘密」


「ひ、秘密って……え、というか、ここは…?」


「あなたが悪いのよ? 私と一緒にいるのに、他のことばかり考えて……」

「あの日、見たんだから。私以外の子と楽しそうに話して…」


「い、いや、あれは…」


「でも大丈夫。これからはずっと一緒よ。ここで、ずーっと、二人でいましょう」



―終わり―

結局ガチなヤンデレなんだか違うんだか徐々に分かんなくなってました

最後まで読んでいただきありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 18:24:46   ID: 7q8loUcS

これはバッドエンドですね…

2 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 19:23:31   ID: fXm82Pav

希さんやってしまった…

3 :  SS好きの774さん   2014年07月20日 (日) 21:44:11   ID: 5FGjc_Gj

りんぱなも詳しくしてくれぃ

4 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 20:16:35   ID: Dsu3J66O

SS読み過ぎて女の子付き合ってるの当たり前に感じてきた

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