柩「ボクの世界は□□で満ちている」 (116)

多分短い

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柩「あ…、お帰りなさい。千足さん」ニコ

千足「…」

柩「……えっと、ごはんもうすぐ出来ますよ!着替えて待っていて下さい」エヘ

千足「…」

柩「…」オド…

千足「桐ヶ谷…」

柩「!…は、はい?」

千足「…」

柩「……」

千足「……いや、何でもない。いつもすまないな」スッ

柩「…あ」

スタスタ…パタン…


柩「……」

柩「………はぁ」

短編スレで書くにはちと長いと思うんで

柩(…黒組が終わって数年、千足さんが退院したと同時に、ボク達は一緒に暮らし始めた)

柩(ボクの犯した過ちは、決して消える事はない…。それでも千足さんは、それも踏まえてボクと一緒にいてくれると言ってくれた)

柩(夢にまで見た千足さんとの生活…。金星寮にいた頃の、あの時のような関係をいつかきっとまた築けるはず…そう期待して今の生活を始めた訳だけれど…)

柩「……はぁ」

柩(…現実はやっぱり、そう甘い物じゃなかった)

柩(…当時のあの出来事は、抜ける事のない毒のように、今も尚ボク達の関係に壁を作っているようだった)

カチャカチャ

千足「…」

柩「…」

千足「…」モグモグ

柩「……っあ、あの、どうですか?それ」

千足「……あぁ。美味しいよ」

柩「…」ホッ

千足「…」

柩「…そ、それ、実はこの本を見て作ったんですよ!」スッ

千足「?……Sumireko.Hanabusa…!これって」

柩「は、はい!あの英さんみたいですよ!ほら、後ろに写真も載ってて…」ペラペラ

千足「…へぇ」

柩「これの他にも色々レシピ本を出してて、あっ、最近はTVにも出てるみたいで「桐ヶ谷」

千足「…すまない。その話しは……」

柩「……ぁ」

千足「…」

柩「…す、すみません」

千足「……っいや、桐ヶ谷が謝る必要はないさ。これは、私の気持ちの問題だから…」

柩「……っ…」

千足「…」ガタ

柩「…千足さん?」

千足「すまない。溜まってる仕事を片付けたいんだ。残りは部屋で頂くよ」

柩「……」

柩「…分かりました。お仕事、頑張って下さい」ニコ

千足「……っ…」フイッ


パタン…

柩「……」

柩(黒組を思い出す話しは地雷でしたね…)ハァ

柩(…大好きな人が傍にいてくれる。それだけで幸せだと思わないといけないのに……)

柩「…しっかりしなきゃ」グスッ

柩(…あの時、千足さんがボクの手を握ってくれた時…それだけで、何となく赦されたような気になっていた)

柩「……そんな事、あるわけないのに」

柩(…手に入れたのは、好きな人の笑顔も見れないような生活…)

柩(……一緒にいる事自体、大きな間違いなのかもしれない。それでもボクは、こんな生活すらも手放す事を恐れていた…)

柩「……大丈夫…うん、大丈夫…!……頑張ろう」ニコッ

千足「……はぁ」

千足「…何をしてるんだ。私は」

千足(…私はあの時、桐ヶ谷の事を受け入れると決めた。桐ヶ谷の犯した過ちも、全て二人で償っていこうと……)

千足「…誓ったはずなのに……っ」

千足(……結果、私は彼女を苦しませてしまっている)

千足(…私が選んだ道は、もしかしたらお互いに傷付くだけなのかもしれない。……でも)

千足(それでも私は、桐ヶ谷と……)

千足「…」

千足「……はぁ」

次の日


柩「…あ、おはようございます!千足さんっ、今日は良い天気ですね」ニコ

千足「……ん、あ…あぁ…」

柩「……」

千足「…桐ヶ谷」

柩「は、はいっ?」

千足「……今日は遅くなるかもしれない。夕食は先に済ましてくれ」

柩「…」

千足「…桐ヶ谷?」

柩「…あ、いえ。分かりました」ニコ

千足「……」

柩「…ぼ、ボク、そろそろ出ないと…!千足さん、行って来ます」

千足「…あ、あぁ」

パタパタ…パタン


千足「……はぁ」




某所

「……っ、私はあの子の為に…!…あんな奴、死んで当然じゃないですか!」

千足「…お気持ちは分かります。ですが、そういった発言は……」

「……っ…」

千足「こちらとしても、あなたが不利にならないよう動きます。お辛いでしょうが、気をしっかりと持って頑張りましょう」

「…先生……はい…っ…よろしくお願いします…」

パタ…ン


千足(…あれから弁護士になった私は、今一つの案件を取り扱っていた)

千足(依頼人は、殺人罪で逮捕された若い女性。正直気は進まなかったが、詳しく調べてみると、彼女は以前に妹さんを亡くしている事が分かった)

千足(…他殺だったそうだ。その時容疑を掛けらた男は、結局証拠不充分で不起訴になっていた。そう、その男こそが、今回依頼人が手を掛けてしまった相手である)

千足(……妹の為に復讐…か)

千足(そうしてしまえる程に、仲の良い姉妹だったんだろう事が伺えた。正直復讐なんてしても、気が晴れるなんて事はない……それは彼女も身を持って分かっただろう…)

千足(この依頼を正式に受ける事にしたのは、私は彼女に自分を重ね合わせて見ていたのかもしれない…)

千足「……」フゥ


……チャン!ヤダヤダカエラナイデー!

チョッ…ウルサイ!


千足「?……何だ。騒がしいな」


?「だってだってぇー!あたしすっごく寂しいんだよ!?」

??「だから騒ぐなって…また刑期延びても知らないぞ」

?「……だってここつまんないんだよぉー!可愛い子いないし」

??「あーもう、分かった!また今度来るから、な?」

?「…絶対だよー?」



千足「…?」

千足(気のせいだろうか…。廊下にまで響く二つの声は、どこかで聞いた事がある気がした)

ガチャッ


??「……はぁ。…ったく、いつもいつも騒がしい奴だ」ブツブツ

千足「!」

??「?……あっ!?」

千足「……剣持…?」

しえな「なっ……生田目?どうしてここに…」

千足「それはこちらも聞きたいが…まぁその、仕事関係で少しな」

しえな「仕事?」

千足「…弁護士をしている。今日は依頼人と話しをしに…な」

しえな「……弁護士か、凄いな」

千足「いや、そんな…」


千足「剣持は、誰かと面会か?」

しえな「…あ、あー…まぁ、その…」

千足「…何となく想像はつくが」

千足・しえな「「…武智乙哉」」

千足「…やっぱりな」

しえな「はは…よく分かったな」

千足「声が聞こえてきてな。聞き覚えがあったんで、もしやと思ったら…」

千足「よく面会に来てやってるのか?」

しえな「んー、まぁな。ボク以外にあいつに会おうなんて奴いないし、だからこうしてたまに話しを聞きに来てるんだ。ちょっとでも外の世界と繋がりを持たせといてやらないと…」

千足「……まだ長いのか?」

しえな「…このまま大人しくしてれば、あと少しの我慢ってとこだな」ハハッ

千足「…そうか」

しえな「…」

しえな「…なぁ、今から時間あるか?」

千足「?…あぁ、少しなら」

しえな「じゃあ、ちょっと付き合ってくれ」

すごい細かいけど柩ちゃんの一人称は「ぼく」でしえなちゃんの一人称が「ボク」じゃなかったっけ

>>22
原作1、2巻読み返したらそれだった。
今月のニュータイプなんだったんだよ…orz

カランカラン


千足「この辺にこんな店あったんだな…」

しえな「武智に会った後はここによく来るんだ。あまり知られてないけど、落ち着くし気に入ってるんだ」

千足「…あぁ、良い店だな」

しえな「だろう?コーヒーも美味しいが、おすすめはカモミールティーだな。心身の疲れに良く効く」

千足「じゃあ、私はそれを…」

しえな「……最近どうだ?」

千足「!…どうって?」

しえな「仕事とかさ、忙しいのか?やっぱり」

千足「あ、あぁ……まぁまぁだな。暇よりは良いさ」

しえな「そうか。でも難しい仕事だろう?程々に休めよ」

千足「そうだな。ありがとう」

千足「……なぁ剣持。剣持は他の奴らとも会ったりはしてるのか?」

しえな「他?黒組のか?」

千足「……あぁ」

しえな「いや、武智以外とは全く。他は………そうだな。つい最近一ノ瀬が訪ねて来た」

千足「!……一ノ瀬が?一人でか?」

しえな「いや、東と一緒に。あいつ、本当に卒業したんだな…驚いたよ」

千足「……そうだな。いや、でも…」

しえな「…一ノ瀬が生きていて、ホッとしたか?」

千足「!」

しえな「生田目はさ…」

千足「…?」

しえな「ボク達とは違う側の人間だって、黒組の頃から思ってたから。……あれからどうなったのか、少し気になってたんだ」

千足「……剣持」

しえな「あっ!」

千足「!?」ビクッ

しえな「それで思い出した!そういえば劇ってどうなった?凄く今更だが、ちゃんと成功したか!?」

千足「!」

千足「…っ…それは……その…」

しえな「…生田目?」

千足「…いや、成功は成功だ……多分…」

しえな「?」

しえな「なんだ?含みのある言い方だな」

千足「…っ……」

千足「そっ、そういえば、一ノ瀬はどうして今頃?」

千足(…お、思わず話題を逸らしてしまった)

千足「…まさか、御礼参りなんて事……」

しえな「そんな事されてたまるか!ボクは本当に何も出来なかったんだぞ!?」

千足「……す、すまない」

しえな「…や、生田目が謝る事じゃ……って、その様子だと生田目の所には行ってないのか。まだ」

千足「…“まだ”?」

しえな「何でも、黒組の連中全員に卒業証書を渡して回ってるらしい」

千足「卒業証書?…今更な気がするが」

しえな「組織を抜けてたり、住所が変わってたりで随分時間が掛かってるみたいだ…」

しえな「それに付き合う東の心労が目に浮かぶよ」ハハッ

千足「……だな」フフ

しえな「…」

しえな「これ、一ノ瀬の連絡先だ。…気が向いたら連絡してやってくれ」スッ

千足「…あぁ、そうだな。ありがとう」

──────
────
──
晴『卒業証書授与!剣持しえなさん!』

しえな『…は?え?いっ、一ノ瀬!?』

東『おい、ふざけてないでとっとと済ませろ』

しえな『東も!?…ていうか、卒業?』

晴『はいっ!黒組の卒業証書を届けに来ました!』

しえな『…黒組って、あれから何年経ったと……』

晴『えへへ…///本当はすぐ渡してあげたかったんだけど』

しえな『…一ノ瀬……卒業したんだな。本当に』フッ

兎角『…』

晴『…はいっ!』ニコッ

しえな『……ていうかそれ、もしかして全員に配って歩いてるのか?』

晴『…あはは。まだ何人か渡せてない人もいるんだけど』ポリ

兎角『寧ろ渡せてない奴の方が多いな』

晴『とっ、兎角さんっ!///』

しえな『はは………変わってないな一ノ瀬』

晴『えへへ。そうかな?』

しえな『あぁ……なぁ一ノ瀬』

晴『?』

しえな『“ハッピーエンド”…だな』

晴『!』

晴『…まだまだこれからだよ!』ニコッ

──
────
──────

しえな「…」クスッ

千足「どうした?」

しえな「いや、凄いよな…一ノ瀬は。良くも悪くも真っ直ぐで…少し憧れるよ」

千足「…確かにな」

しえな「もしさ、一ノ瀬だけじゃない…。黒組の他の連中とも、もし違う出会いをしてたら……友達になれたのかな」

千足「…っ!」

千足「…違う…出会い……」

千足「…」

千足(…もし、桐ヶ谷と……)

千足「……なぁ、剣持」

しえな「ん?」


千足(…気付けば私は、あの劇の結末の事、桐ヶ谷とエンゼルトランペットの事、そして、現在の桐ヶ谷との関係、隠してきた本当の気持ち…今まで誰にも言えなかった事を、目の前の剣持に話し始めていた)

千足(剣持は驚いた顔をしていたが、真剣に、ただ黙ってこちらの話しを聞いてくれた…)




しえな「………そんな事が」

千足「……すまない。突然こんな話し…」

しえな「いや、構わないさ。誰にも言えなかっただろ…こんな話し…」

千足「……」

千足「…剣持、一つ確認したいんだが…あの時剣持をやったのって……」

しえな「ん……まぁ、察しの通り」ポリ…

千足「……っ…すまない」

しえな「これも別に生田目が謝る事じゃ…」

千足「桐ヶ谷の事、今でも恨んでいるか…?」

しえな「!」

しえな「…」

千足「…」

しえな「んー……あー、いや…。あの時は…な、やっぱり相当恨んだし、何も出来なかったのは確かに悔しかったが……」

千足「…っ」

しえな「まぁ、仕方なかったんじゃないか?」

千足「!」

しえな「……桐ヶ谷だけじゃない。誰だってああしていてもおかしくない状況だっただろ。たまたまボクと桐ヶ谷だったってだけで…」

千足「……剣持」

千足「…っ…私も、そう割り切れたら良いんだがな……」

しえな「…生田目」

しえな「…」

しえな「生田目はさ、どうしたいんだ?桐ヶ谷と」

千足「!……私…は…」

千足(桐ヶ谷と……?)

千足(…私は、桐ヶ谷を苦しめたかったのか?……違う…っ…私は……桐ヶ谷を…桐ヶ谷に……)

しえな「…」

千足「…桐ヶ谷……」

しえな「…もう、決まってるみたいだな」

千足「…!」

しえな「なら、そうすれば良い…」

千足「…え」

しえな「“こうしたい”っていう答えはもう出たんだ。後は、その答えに向かって突き進めば良い」

千足「……っ…そんな、どうやって」フイッ

しえな「それをこれから考えて行くんだろ?」

しえな「焦る必要は無い。ゆっくりでも良いから…」

しえな「ボクも相談くらいなら乗るよ。こう見えて、そういうの得意なんだぞ」クス

千足「……剣持…」

しえな「職業病ってやつかなー…はは…実は今、スクールカウンセラーやっててさ」

しえな「生田目の顔見た時、何か悩んでるなってすぐ分かった。踏み込むべきか正直迷ったが、悪い…放っておけなくて」ポリ

千足「……いや、寧ろ礼を言うよ。話せて良かった。ありがとう、剣持」フッ

千足(連絡先を交換すると、“近い内にまた会おう。”そう約束して剣持と別れた)

ヴーヴー

千足「?」

千足(それは、たった今別れたばかりの剣持からだった)


件名:空欄を埋めよ

本文:世界は□□に満ちている。

分かったら教えてくれ。

千足「!」

千足(振り返ると、剣持が携帯を片手に笑っていた。「誰かに聞いても良いぞ」それだけ言って、剣持はまたこちらに背を向けて歩き出した)


千足「…これは……」

千足「………どういう意味だ…?」



カッチ…カッチ…

柩「……ん…」ウトウト

ガチャ

柩「!」

柩「おっ、お帰りなさい!千足さんっ」

千足「…!桐ヶ谷…起きてたのか」

柩「今ごはん温めますね。あ、先にお風呂にします…?」

千足「…寝ててくれて良かったのに」

柩「…っ…すみません」

千足「…っ」ハッ

千足「…あ、いや……その…」

柩「…ぼ、ぼく…先に「桐ヶ谷っ」

柩「…!」ビクッ

千足「…っ…ぁ…」

千足「……おやすみ」

柩「!」

柩「はっ、はい!おやすみなさいっ」ニコ

パタン

柩(…おやすみなさい…か。…久しぶりに言われました)

柩「…えへへ///」

柩「…っ…///」グスッ

柩(それから少しずつ、千足さんからの会話が増えていったように思う)

柩(…といっても、「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「お休みなさい」…そんな挨拶程度の会話だったけど、それでも、そんな小さな事でもぼく達の間ではとても大きな変化だった)

柩(千足さんに何があったのかは分からなかったけれど、ぼくはまた千足さんに近付けた気がして、凄く嬉しかった)

すまん…
予定より長そうだ



千足「…ただいま」

柩「お帰りなさい、千足さん」ニコッ

柩「きょ…今日は、早いんです…ね」

千足「あ、あぁ…」

柩「ごはん、少し待って下さい…すぐに「き、桐ヶ谷…っ」

柩「…!」ビクッ

千足「…ぁ……その…」

千足「私も…手伝うよ」

柩「…えっ」

千足「…」

柩「…っ…はいっ」グスッ

──────
────
──

千足(…あれから、少しずつだが桐ヶ谷と話しをするようになった。会話らしい会話…そう呼べないとしても、今の私達にとっては大きな変化だった)

千足(あの時、剣持と話せていなかったらきっとこんな日は来ていなかっただろう…)

千足(剣持とはあの日以来、度々会うようになっていた。例のなぞなぞの答えはまだ出なかったが、急かされる事はなかった)

千足『.…剣持、降参だ。答えは一体何なんだ?』

しえな『それじゃあ、なぞなぞの意味がないだろ…誰かに聞いても良いとは言ったが、出題者に聞くのは反則だ』

千足(何度か答えを聞き出そうとした事もあったが、いつもそう躱されてしまっていた)

千足『…そういえば、最近桐ヶ谷と……』

千足(そう話しを振るのは、いつも私からだった)

千足(剣持はいつも、私が話し始めると相槌を打ちながら、真剣に話しを聞いてくれる…)

千足(私と桐ヶ谷の関係にほんの少しでも変化があると、大袈裟なくらい喜ぶ…)

千足(決して話しを急かしたりはしない…その殆どが、私の一方的な会話で終わってしまうものだったけど、剣持はいつも変わらない態度で私と会ってくれた)

千足(そんな剣持との関係は、心地良かった…)

──
────
──────

柩「千足さん?」

千足「…」ハッ

千足「あ、すまない…これはこうで良いか?」

柩「はい…あっ!…っ痛」

千足「!…桐ヶ谷!?」

柩「す、すみません…ちょっと切っちゃっただけです」

千足「見せてみろっ」ガシッ

柩「あっ……っ…///」

千足「…っ」ハッ

千足「……っ…///」バッ

柩「……////」

千足「…///」

柩「ばっ、バンソーコー、取ってきますっ///」

千足「あ……あぁ…」

パタパタ…

千足「…」

千足(……桐ヶ谷の手…)

千足「温かかったな…」ボソッ




柩「すみません…殆ど作って貰ってしまって…」シュン

千足「構わないさ。桐ヶ谷にはいつも任せっきりだったし…指は大丈夫か?」コトッ

柩「…はっ、はい。何とも…」ニコッ

千足「…」ホッ

柩「…」

千足柩「「……あの…」」ハッ

千足「な、なんだ?」

柩「!…あ、いえ…千足さんどうぞ」ニコ

千足「…」

千足「…その……桐ヶ谷」

柩「はっ、はい…」

千足「…」

柩「…」

千足「……明日も、なるべく早く帰るから…」

柩「…え?」

千足「…だから、その……っ…また、一緒に作っても良いかな…」フイッ

柩「…!」

柩「……っ…」グスッ

千足「!…桐ヶ谷…」

柩「…っ…すみませっ……っ…」ゴシゴシ

柩「…っ…はい……はいっ!」ニコッ

千足「………っ…」

千足「……柩…」

柩「!…え」

グイッ

柩「………!」

ギュッ

柩「……っ…」

千足「…」

千足「…すまない…今まで……」ボソッ

柩「!……っ…千足さん…」




柩(…時間にすると、どのくらいだったのだろう。ぼく達はそのまま、お互いを強く抱きしめ合った…)

柩(千足さんがその時、どんな顔をしていたかは分からない…)

柩(……だけど)

柩(…“ぼく達はきっと大丈夫”…そう思った)




次の日

柩「…あ、ぼくそろそろ出ないと……」

千足「あ、あぁ…」

柩「行ってきます」ニコ

千足「……桐ヶ谷」

柩「は、はい?」

千足「ちょっと待ってくれ…鞄を取って来る」

柩「え?」

千足「…」

千足「……い、一緒に、行かないか…?」

柩「!」

柩「い…良いんですか…?」

ガチャッ…バタン

千足「…」

ギュッ

柩「…あ」

千足「……ま、迷わないように…///」ボソッ

柩「!」

柩「…いくらボクでも、毎日通る道を迷ったりしませんよ」クスッ

千足「…」クス


柩「でも…ありがとうございます」

ギュッ



柩「あ、あの角のお家、いつも綺麗な花が咲いてるんですよ。知ってましたか?」

千足「…え?いや…」

柩「そのお向かいのお家は、最近ワンちゃんが子犬を産んだみたいで…」ニコニコ

千足「詳しいんだな…私もこの辺は毎日通るが……全然気付かなかった」

柩「…昔と、逆ですね」クス

千足「え?」

柩「昔は、千足さんがボクに色んな事を教えてくれた…。こうやって、手を繋いで…」

千足「!……それは」

千足(そうだ…あの頃は、桐ヶ谷に危険な事が無いように、いつも周りを気にして……)

千足(…一人で歩くようになってからは、どこか余裕がなくて…ゆっくり周りを見る事もなかった…)

柩「…千足さん?」

千足(…そっか……桐ヶ谷がいたから…私は…)

ギュッ

千足「…なぁ、桐ヶ谷」

柩「?」

千足「……桐ヶ谷は…世界は、何に満ちていると思う?」

柩「…え?」

千足「……あ、すまない。突然過ぎたな…」

柩「…」

柩「…それって、なぞなぞですか?それとも、単なる質問ですか?」

千足「え…?」

柩「……もし」

柩「…もしですけど……それが答えのないもので、その答えをぼくが決めて良いんだったら…」

千足「!」

柩「世界は




に、満ちている…が良いな」ボソ

千足「……ぇ…」

千足「あ…っ…すまない桐ヶ谷。よく聞こえ…
ブーブー

千足「!…悪い電話だ」

千足「はい?…え?…分かりました。すぐに…」ピッ

千足「桐ヶ谷、すまないが、少し急がないといけなくなった…」

柩「…ボクは大丈夫ですよ。先に行って下さい」ニコッ


千足(そう微笑む桐ヶ谷に背を向けると、私は先を急いだ)

千足(結局、桐ヶ谷が何と言っていたのか、それを聞く事が出来なかったが、“答えはきっと、もうすぐ手が届く”…そんな予感がしていた)




しえな「…良い事あった顔してるな」ニヤ

千足「…え、そんな事はない。今日は朝から少しトラブルがあったし…」

しえな「そういうんじゃなくてさ…。最近、良い顔するようになったなって」

千足「え?」

しえな「イキイキしてるというか、表情が明るくなったし、何よりよく笑うようになった…。最初に再会した時とはまるで別人みたいだ」クス

千足「!……そっ…」

千足「…そんなに、酷かったかな…前の私は…///」ポリ

しえな「あぁ。今だから言えるが、放って置いたら死んでしまいそうな顔だったぞ」

千足「…はは///」

千足「なぁ…剣持」

しえな「ん?」

千足「ありがとう」

しえな「え……な、何だ?改まって…」

千足「あの時、剣持が私の気持ちに気付いてくれたから…今の私でいられるんだ」

しえな「…」

しえな「……良かった…な…」

千足「…全部、剣持のお陰だ」

しえな「や…ボクは別に……」ポリ

千足「今までは、黒組を思い出すような事はただ辛いだけだった…でも」

千足「今は、少し違う……」

しえな「…」

千足「あの時、剣持に会えて良かった…心からそう思うよ」

しえな「……生田目…」

千足「…私達の出会いは、決して普通の出会いとは言えないが……私は剣持の事を、大切な友人だと思ってる」ニコッ

しえな「!…っ……お、お前なぁ…///」

千足「?」

しえな「…なんでもないっ!///」

千足「…それから…さ…」

しえな「ん?」

千足「……今夜、改めて桐ヶ谷と話し合ってみようと思う。桐ヶ谷の気持ちも、私の気持ちも…」

千足「…桐ヶ谷と一緒なら、あのなぞなぞの答えも、見つかりそうな気がするんだ」フッ

しえな「…!!」

しえな「…そっか……そうだな。きっと上手くいくさ」ニコ

千足「そう…だと良いな。私は……」

千足「本当に桐ヶ谷が好きなんだ。…きっと、愛してるんだと思う」

しえな「!」

しえな「………お前ら…」


しえな「…お似合いだよ。ほんっとに!」クスッ










柩「……」

──────
────
──

「ねぇねぇ、今日お昼どうするー?」

「最近出来たお店は?あそこランチ安くて美味しいって!」

「良いねー!…あ、桐ヶ谷さん」

柩「…!へ?あ、はい!」

「桐ヶ谷さんも一緒にどう?」

柩「え…」

「良いじゃん、たまにはさ。ね?」

柩「…じゃ、じゃあ」ニコ





「桐ヶ谷さんってさ、彼氏とかいるの?」

柩「え?…えっと」

「てか、最近出来た?」

「あー、分かる!最近桐ヶ谷さんそんな感じするよねー。特に今日なんて、恋する乙女オーラ全開!的な?」

柩「…えぇっ!?///」

「後で詳しく聞かせてよー?」

柩「……あ、あはは///」

「あ、ほら!そこのカフェの先だよ」

「はーい。ていうか、こんな所にカフェなんてあったんだ」

「ねー!今度行ってみない?桐ヶ谷さんも!ね?」

柩「…そ、そうですね」ハッ


ピタ











柩「…………え?」


「桐ヶ谷さーん?どうかした?」

柩「……」

柩「いえ…別に」ニコッ





柩(……そこにあったのは、穏やかな笑みを浮かべる千足さんと、楽しそうに笑う、いつかのあの子の姿だった)






柩「………」

柩「…………嫌だ…」ボソ




千足「…じゃあ、また」

しえな「あぁ」ニコ



しえな(…それからボク達は、またいつものように軽く挨拶を交わすと、互いに向かうべき所へ歩き始めた)

しえな(何故だか少しだけ名残惜しいような、そんな気がしたが、ボクは……きっと生田目も、後ろを振り返るなんて事はしなかった)

しえな(いつだって、また会える…だってボク達は……)



しえな「……友達…かぁ」

しえな「……」


しえな「……良いか。それで」クス

あ、せっかくトリ付けたのに忘れたw

しかもトリだだ漏れじゃねーか!

トリ変えました>>1です





乙哉「…うーん…手紙くれたのは嬉しいんだけどさぁー」

しえな「何か不満か?」

乙哉「いや、不満というか…何なのコレ?なぞなぞ?」ピラッ

しえな「はは。良い暇潰しになると思ったんだが……実はそれ、ボクが昔ある人物から出された問題なんだ」

乙哉「ふぅーん?…にしても変な問題だねぇー…世界は□□に満ちているって…範囲広過ぎじゃない?」

しえな「出題者がまず相当な変わり者だったからな。正直、胡散臭い奴だと当時は思ってたけど…まぁ、言ってる事は割といつも的確なんだよ」フフ

しえな「……で、武智ならその空欄、何て埋める?」

乙哉「んー…ノーヒント?っていうかさコレ、正解とかある訳?」

しえな「…ぉっ!」

乙哉「ん?…しえなちゃん何笑ってんの?」

しえな「あ、いや…良いとこ気付くなって」

乙哉「?」

しえな「それには、明確な答えなんてそもそも無いんだ」フフフ

乙哉「…へっ?何それ」

しえな「最初から答えなんて存在しない、ただのリドル…」

しえな「…でももし、正解があるとしたらそれは……絶対に一人じゃ見つけられない」

乙哉「…」

しえな「誰かと一緒に答えを探す事に意味がある…。それに気付かせる為に、この問題はあるんじゃないかな?…なんて」クスッ

乙哉「…」

乙哉「ふぅーん…」

乙哉「ねーじゃあさ、しえなちゃん…」

しえな「ん?」

乙哉「…あたしの答えは、しえなちゃんが見つけてくれる?」

しえな「!」

しえな「………だったら、早く出て来いよ…あほ」ボソッ

乙哉「!…はーい!大人しくしてるよー」ニコッ

もうトリなしでいく…
慣れない…

──
────
──────

ガチャ

柩「…」ハッ

千足「!…桐ヶ谷?…いたのか…。どうした?電気も点けないで…」

柩「…すみません。少しウトウトしてしまっていて…お帰りなさい。千足さん」

千足「あぁ…ただいま」ニコ

柩「…」

千足「?…桐ヶ谷?気分でも悪いのか?」

柩「ぁ…いえ、ただ…怖い夢を見て…」

千足「…夢?」

柩「……千足さん…」




ギュッ


千足「!…き、桐ヶ谷?///」

柩「…千足さん…どこにも行かないで下さい………」

千足「!」

千足「…桐ヶ谷……」

柩「…っ……」

千足「………大丈夫、私はちゃんとここにいるよ」フッ

柩「千足さん…」

千足「…ずっと、桐ヶ谷の傍にいるから…」ナデ…

柩「…嬉しい……」

千足「……桐ヶ谷…私は…」

柩「千足さん…」






柩「…愛してますよ……千足さん…」





チクッ

千足「…ぇ……」

ヨロ

千足「…桐ヶ……ぁっ…」

ドサッ

千足「!……っ…がはっ……はっ…桐…ヶ谷…っ…?」

柩「最初から、こうしてれば良かった…」

柩「そうすれば、誰に取られる心配もいらない…ずっとずっと、ぼくだけのものに出来たのに」

千足「!」

柩「……」

柩「…ぼくが一番…あの顔を見たいと思ってた」ボソッ

千足「…げほっ…な…?」ハーハー

柩「嫌ですよ千足さん……ぼく以外に、あんな顔見せちゃ」ニコ

千足「………ひ…つぎ…っ」

柩「!」

柩「………っ…」

千足「…な…んで……っはぁ…」

柩「……」

千足「…柩……っ」ケホ

柩「……………どうして」

柩「………どうしてこんなにうまくいかないのだろう…」









柩「……ジュリエット」

千足「!」

柩「…」フッ

柩「…いがみ合いのない世界で、ぼく達はこれから幸せになろう……いつまでもいつまでも……いつまでも一緒に暮らそう…!今、君の所に行くよ。ああ…ジュリエット、まだ微かに暖かい。……地上での…最後のキスだ……」

柩「…おやすみ……ジュリエット…」

千足「…ひつ……んっ…!」

柩「…愛してる……千足さん…愛してます」

千足「……」

柩「ねぇ、千足さん…きっと………きっと世界は…………










千足(…その言葉を、私は最後まで聞く事が出来なかった)

千足(ぼやけた視界の中で最後に見たのは、ずっと見たかった……柩の心からの笑顔だった…)





晴「兎角さーん!兎角さん、こっちこっち!」

兎角「…晴、あまりはしゃぐな」

晴「だってー…えへへ!」

兎角「…ったく、卒業証書渡すだけだっていうのに、随分嬉しそうだな」

晴「そりゃそうだよー!久しぶりに会えるんだし、それに…」

晴「柩ちゃんと生田目さん、今でも一緒にいるって分かって……それが凄く嬉しくて…」

兎角「……晴」

兎角「……元々、心配なんていらなかったんじゃないか…あの二人なら…」フッ

晴「…そうだね…えへへ!うん!だって世界は…………


















世界は□□に、満ちている。











終わり

しえなちゃんをPOISONするか最後まで迷った…
期待してた人いたら申し訳ないですが…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月03日 (日) 04:21:12   ID: e-_Je3fB

期待して待ってます!

2 :  SS好きの774さん   2014年08月07日 (木) 07:29:28   ID: HtdLUXfv

う~ん、なんか微妙だな。

3 :  SS好きの774さん   2014年08月08日 (金) 23:35:56   ID: XyyLXu0L

結局こういう終わり方か
なんだかなぁ

4 :  SS好きの774さん   2014年08月23日 (土) 15:18:44   ID: F_9d3dbr

面白かった

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