【ごちうさ】香風タカヒロ「ご注文はコーヒーですか?」【ゲッターロボ號】 (37)

ご注文はうさぎですか?と漫画版ゲッターロボ號との誰得意味なし二次創作
短く終わらせるから文句は最後に

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夜の町。街灯や家々から漏れるやわらかな光が通りを優しく照らす。
道はタイル貼りで、洋風な建物に囲まれたこの町を彩ることに一役買っている。



彼はこの町が好きだった。別に西洋文化を賛美するわけではなかったが、
この統一された雰囲気はなかなか無く、ただそこにいるだけで気分が落ち着くのだ。



彼の仕事は単純に言っても激務で、しかも人の命を預かるものだ。
頑丈さを誇る彼であっても、精神的重圧に時々参ってしまうこともある。
滅多にあることではないが。



その時は無理にでも時間を見つけてここへ訪れることにしている。そして今がその時だった。




タイルを叩く心地の良い足音を楽しみながら、ゆっくりと進む。こういったところも魅力の一つだ。
すれ違う人たちを横目で眺める。誰も彼も穏やかな雰囲気をしていた。町の雰囲気がそうさせるのだろうか?



この町にはうさぎが多いことで有名だ。今は夜だからかなかなか見かけることは出来ない。
うさぎが特に好きなわけではなかったが、見ていてそう悪いものではない。



……もしこんな事を部下たちに話したら、どんな顔をされるのだろう



彼は歩みを止め、小さな店と向き合った。目的地に到着したのだ。
外からでも伝わる、この店自慢のコーヒーの香りが彼の鼻孔をくすぐる。



ここはかつて彼と旧交を温めた人物が切り盛りするカフェ『ラビット・ハウス』
何もかもが昔のままだった。



彼にしては珍しく感傷的になり、取っ手に手をかけゆっくりと扉を開いた。



「いらっしゃい」



懐かしくも変わらない声がした。
背筋をピッと伸ばし、慣れた手つきで優雅にグラスを拭いている。


穏やかな顔が驚いた顔に変わる。そして次の瞬間には笑みに変わった。
キザな笑い方だったが、それが彼、香風タカヒロの親しい間柄の人にしか見せない笑いなのだ。


「君か。久し振りだな、隼人」

「相変わらずいい店だな、タカヒロ」


この店を訪れた客、神隼人はカウンターの一席に着いた。
タカヒロは何も言われずとも、コーヒーを一つ、隼人の前に置いた。


「いつものやつで良かったよな?」

「フッ……。忘れてなかったか」


優しくも香ばしい香りが店内を包む。
隼人はそっとカップを取り、一口飲んだ。


「……腕を上げたな?」

「男子三日会わざれば、ってことだ」 


いい年をした中年二人がニヤニヤと笑いながら言葉をかわす。
その様子を離れた所から毛玉のようなうさぎが見ていた。

うさぎだからあまり表情から汲み取れないが、呆れてるようにも見える。


……



「奥さんと、親父さんのことは聞いたよ……」

「ああ……」

「娘さん、なんて言ったか……。大丈夫なのか?」

「智乃だ。今はなんとか持ち直したよ」

「そうか。そいつは良かった……」


隼人の人生は戦いの連続だった。
己の力を持て余し、全力でブチ当たれる敵を探し続けてきた。
だから、こうしてゆっくりとした時間に身を置くことは殆どなかった。

もし、彼を知るかつての仲間が今の様子を見たのなら、


「丸くなったな。歳のせいか?」


と、言ったに違いない。
きっと隼人自身も同意したことだろう。


和やかな時間が過ぎる。隼人にとってなによりも得難い時間だった。
だがそういう時間というのは早く過ぎるものだ。
そしてそれは神隼人ほどの人間も例外ではない。



「帰るのか?」

「ああ。俺は忙しいんだよ」

「ここでサボっているのにか?」

「……フッ。そうだな。今はまだ、暇だな」

「次は昼に来るといい。娘に会って行ってくれ」

「ああ。そうだ、タカヒロ……」

「なんだ?」


隼人の目が鋭く光る。過去幾度も見た戦場の目だった。
きっとよくないことなのだろう。タカヒロはそう思った。



「近々でかい戦いが起こる。この辺りも巻き込まれる可能性がある。田舎に避難するといい」


隼人から伝わる緊張感は本物だった。
店内は一転して冷ややかな空気へ変わる。


「……勝てるのか?」


タカヒロはただそれだけを尋ねた。
聞いてから随分間抜けな質問だ、俺も鈍ったかと思った。


それでも、隼人は絶対の意思を込めて断言した。


「勝つ。俺達にはその道しかない。いつだってそうだ。それに、そのための準備もしてきたしな」

「號か。完成したのか」

「機密だ」


そう言って隼人は立ち上がった。会計を済まそうと財布を取り出す。



「いやいい、今日は俺の奢りだ」

「強がるな。たまにしか来れないんだ、払わせろ」

「……なら、必ずまた店に来てくれ。それが君の支払いだ」

「…………。そういうことなら。約束しよう」


コートを羽織り、扉に手をかける。
半分まで開けた所で、隼人は振り返った。


「娘さん…………ボインちゃんに育ってると、期待してるぜ」

「急に来て欲しくなくなったぞ」

「フッ……」


神隼人はそう笑って、夜の闇に消えた。
隼人がそうだったように、タカヒロも旧友との再会に喜んでいた。


それが警告のためだったとしても、だ。




それから、隼人が告げたように大きな戦いが起こった。
それは日本を、世界中を破壊するほどの戦いだった。



大勢の人が死んだ。
情報こそ検問されていてたいした事も報道しなかったが、
疎開してくる人の口から世界がどんな状況に陥ってるか知ることが出来た



タカヒロが住む町は、タカヒロともう一人の戦友の呼びかけによって、
早くから避難したために難を逃れることが出来た。



彼は疎開先でも変わらず、同じようにコーヒーを出し続けた。娘の智乃と共に。
それが今できる自分の戦いだと言わんばかりだった。





やがて戦いは終結する。
久しぶりに町に戻ると、以前と全く変わらずに町並みは保たれていた。


そのため『ラビット・ハウス』が再開するのにそれ程時間はかからなかった。




帰ってきてからしばらく経った。
世界では恐慌と復興とが同時に起こるという大騒ぎを繰り広げている。
しかしこの町はどこ吹く風と、まったく意に介した様子はない。



あれから隼人はここを訪れることはなかった。
仕事が仕事だ。もしかしたらもう死んでいるかもしれない。
生きていてもこの騒ぎだ。ここへ来る余裕などないのだろう。



それでもタカヒロは待った。
彼はニヒルの皮肉屋だが、義理堅い性格だと知っていたからだ。
約束は必ず守る男だと知っている。

だから今日も待つ。男が交わした約束を信じて


おわり

そしてエピローグ



土曜日。香風智乃は開店前に店先を掃除していた。
本当はもう一人手伝ってくれる人がいるのだが、まだベッドのなかだった。


「まったく、ココアさんは……」


そう呟きながら、掃除を続ける。
やたらとお姉さん風を吹かせようとしてくるが、こういう肝心な時にいつも居ないのだ。


掃除が終わる頃になってようやく同居人が店に現れた。
まだ眠そうな様子だったが、身だしなみはキチンとしている。


「もうココアさん。遅刻ですよっ」

「ココアは本当に朝が弱いなぁ」


ココアと呼ばれる少女とは別の女の子が、呆れたように言った。
名前は天々座理世。彼女もこの店で働いている。
長髪ながらもボーイッシュな雰囲気を持っている女の子だ。


寝坊したのが智乃の同居人の保登心愛。
人懐っこい性分で、たちまち『ラビット・ハウス』に馴染むほど。
智乃を妹と可愛がり、溺愛している。


「ごめんね~。お布団が気持ちよくって~」


ポヤポヤした様子で頭を下げたが、下げた頭がフラフラしていた。



――カラカラ……


扉の鐘がなり、だれかが来店したことを告げた。
入ってきたのは珍しいことに男性だった。

それもサングラスを掛け、黒いトレンチコートの、少女たちには刺激の強い出で立ちだった。


(り、リゼちゃん! こ、怖い人がーーー!!)

(落ち着けココア! 見た目で判断しちゃだめだ!)


パニックになる少女たちをよそに、男は智乃とその頭に乗っているうさぎに目を向ける。



「お、おじさん。隼人おじさん……?」

「……え?」


智乃の思いもよらない言葉に、二人の動きが止まった。
男はサングラスを外す。
サングラスに隠れて見えなかったが、顔に幾つもの傷が浮いていた。


彼は眩しそうに店内を見渡してから言った。


「大きくなったな。お母さんによく似ている」




あの日と変わらぬ香りが漂う。
それは、彼が護り、みんなが守った、とても大切なものだった……



読んでくれてサンクス

ここまで読んでくれた人には「これ別にゲッターとのクロスじゃなくてもいいよね?」と言う事ができる権利を差し上げます

一応なんでこれかっていうと、戦い続きの彼らにも、なにか拠り所となる場所があったかもしれない
そんな感じで妄想が膨らんでいったわけですわ
そんでチノ父はリゼ父同様軍か傭兵かで活躍した時期があったらしいので、これに決まった次第で

話の一部分しか切り取ってない上に、クロスらしいクロスはしてないから、そう言われるのも当然ちゃあ当然だね


今回は「荒くれ男も安らかな夢を見たい」って言うことで一つ……

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