凛「海未ちゃんなんて嫌い」 (55)




あまのじゃくな凛のお話。





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きっと海未ちゃんは凛のことが嫌い。

だから凛も海未ちゃんのことなんて嫌いだ。




海未ちゃんは厳しい。


海未「ワン!ツー!スリー!フォー!」 パンパン

海未「凛!ちょっと速いです!」

凛「はいにゃ!」

海未「凛!今度は遅すぎます!」

凛「っ……。」


海未ちゃんはいつも凛にばかり注意する。

凛だって自分なりに頑張ってるのに。

きっと海未ちゃんは凛のこと嫌いだから注意するんだ。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは理不尽。


凛「っ……はぁ、はぁ……」

海未「ほら、凛!階段まだ5往復残ってますよ!」

凛「……分かってるにゃっ!」

希「ふぅ、ふぅ……」


ユニット練習がこんなに厳しいのは海未ちゃんがリーダーだから。

凛が他のユニットのメンバーだったらこんなにきつい思いをすることもなかったのに。

おかげで凛に足りなかった持久力がついてきたのもシャクだ。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは飴と鞭。


凛「はぁはぁ……終わったにゃ……。」

海未「凛、頑張りましたね!」

海未「ベストタイムを更新ですよ!」

海未「凄いです!」 ナデナデ

凛「べ、別に普通にゃ……//」


いつもは理不尽なくらい厳しいけど、こうやって凛が何かをした時には褒めてくれる。

頭を撫でてくれる手が気持ちいい。

ずるい。こんなんじゃまた頑張りたくなっちゃうじゃん。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは忙しい。


海未「今日は弓道部に顔を出してきますね」

海未「真姫、新曲の歌詞です」

海未「絵里、今度のライブに向けての練習メニューについてですが……」

海未「生徒会の書類は大体まとめておきましたよ」


μ’sだけじゃなくって、弓道部、作詞、生徒会……

それら全部、手を抜かずに毎日こなしている。

そんなこと、凛じゃ絶対無理なのに。

「私はできる女ですよー」って言われてるみたい。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは格好いい。


海未「………。」 ギリギリ…

海未「ふっ!」 シュッ……バンッ!!

海未「ふぅ……。」


弓道の練習をしてる時の真剣な表情に、見とれてしまいそうになる。

いつもはなかなか見られない髪を縛った姿も、どこか凛として格好いい。

弓は何度射ってもど真ん中。

μ’sの練習の時はただの鬼教官なのに、弓道をする姿はこんなに格好いいなんて。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは可愛い。


海未「みんなー!今日はありがとー!」

海未「らーらららー♪」

海未「みんなのハート、撃ち抜くぞー!」

海未「ばーん☆」


海未ちゃんは一人きりになるとよくアイドルの練習をしている。

鏡に向かって可愛い笑顔の練習をしたり、誰もいない部室で必殺技の研究をしてたり。

その時の海未ちゃんは、凄く可愛い。

格好いいくせに可愛いなんて。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは完璧だ。


先生「園田はほんと優秀だなー」

先生「成績は良好、部活も弓道部でいい成績を残しているようだし」

先生「何よりスクールアイドルとして、このオトノキを守るために頑張ってくれている」

先生「うちの生徒みんなああだったら苦労しないんだけどなー」


海未ちゃんは頭がいいし、運動神経も凛と同じくらい抜群。

それに見た目はとっても綺麗だし。

なんにも欠けたところが見つからないじゃん。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは後輩に人気。


一年生「園田先輩って格好良いよねー!」

一年生「弓道もすごく上手だし」

一年生「スクールアイドルの時は打って変わって可愛くなるのがまたいいよねー」


凛のクラスの子たちは、海未ちゃんの話をよくする。

みんな、海未ちゃんのことよく分かってない。

海未ちゃんは、ただ厳しくて、理不尽で、ちょっと優しくて、格好いいだけなのに。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは鈍感。


生徒「そ、園田さん!こ、これ…受け取ってください!」

海未「ありがとうございます」 ニコッ

生徒「///……スクールアイドル、頑張って下さい!」

海未「やはり、応援してくださる方が居るのは嬉しいですね」


あの子は……海未ちゃんの隣のクラスの子かな。

海未ちゃんは、一スクールアイドルに向けたただのプレゼントと思ってるみたい。

凛でも分かるのに……その子が本気な事。

きっと海未ちゃんは誰からの好意にも気付いてくれないんだ。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは誰にでも優しい。


海未「花陽、お腹が空いたのですか?少し私のお弁当を分けてあげます」

海未「穂乃果、また傘を忘れたのですか?…この折りたたみ傘を使ってください」

海未「絵里、疲れているでしょう?後は私に任せて休んでください」

海未「ことり、その荷物思いでしょう?私が持ちます」


海未ちゃんは誰にでも分け隔てなく優しい。

いつもみんなが困ってる時に助けてくれる。

だから凛に向ける優しさだって、みんなと変わらない物。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは人の事をよく見ている。


凛「うーん……」

海未「あ、やはりそこで引っかかりますか」

海未「ここは、この公式から……」

凛「なるほど……」


例えば凛が勉強を見てもらっている時。

凛が詰まったら質問する前に分からないところを教えてくれる。

まるで凛がどこが分からないのか知っているみたいに。

そのくせして、人からの好意にだけは気づかない。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは恥ずかしがり屋。


海未「こ、ことり?この衣装は……?」

ことり「次のライブで着る衣装だよ?」

海未「少々布が少なすぎませんか……?」

ことり「海未ちゃんなら絶対似合うよぉー!」

海未「は、恥ずかしいですっ!///」


ことりちゃんが少し露出度の高い衣装を作ってくると、決まってこの反応をする。

海未ちゃんは綺麗でスタイルもいいんだから、自信持てばいいのに。

自分の魅力には、ちっとも気づいていないんだ。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは、自分を過小評価してる。


海未「私はその…可愛げがありませんし」

海未「私はそんな大層な人間じゃありませんよ」

海未「貴方には及びません」


海未ちゃんは、人から褒められるといつも否定する。

自分はそんなに凄い人じゃないって。

凛は海未ちゃんより凄い人、これまでに見たことなかったのに。

自分はちっぽけでつまらない人間だと思ってるんだ。

海未ちゃんなんて嫌い。




本当は分かってる。

凛が海未ちゃんのこと、好きなことぐらい。

でも、海未ちゃんはきっと凛のことが嫌い。

だから、凛も海未ちゃんのことなんて嫌いだ。




海未ちゃんには幼馴染がいる。


海未「もう!穂乃果は!また生徒会の仕事をほったらかしにして!」

海未「今日という今日は許しませんからね!」

穂乃果「ひぃ~!」

ことり「海未ちゃん、そのくらいに……」


海未ちゃんは穂乃果ちゃんとことりちゃんという幼馴染がいる。

3人はいつも一緒にいて、いつも仲がいい。

凛の入り込む余地なんて無いんだ。

凛はもう海未ちゃんのことしか考えられないのに。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは、絵里ちゃんと仲がいい。


絵里「海未ー、生徒会はどう?」

海未「穂乃果が仕事をサボるので大変です……」

絵里「でも、穂乃果なら許しちゃうんでしょ?」

絵里「好・き・だ・か・ら」

海未「もう!辞めてください、そんなんじゃないですから!」 アタフタ


海未ちゃんと絵里ちゃんはμ’sで一緒になってから急に仲良くなった。

あんなふうによく冗談を言い合っている。

あんな事言われて、海未ちゃんも満更じゃない顔しちゃってる。

海未ちゃんなんて嫌い。


海未ちゃんは凛のことが嫌い。


海未「凛!そのすぐテンポが早まる癖を直してください!」

海未「凛!静かにしてください!」

海未「凛!勉強も疎かにしてはいけないと言ったでしょう!」


海未ちゃんは凛にばっかり厳しい。

ことりちゃんとかには優しいのに。

きっと凛が嫌いだからこんなに厳しくするんだ。

もっと海未ちゃんに認めて欲しいのに。

海未ちゃんなんて―大嫌い!


凛は海未ちゃんのことが嫌い。

海未ちゃんはきっとあの3人の誰かが好きで。

凛なんかのこと嫌いで。

だからこの気持ちも届くわけなくて。

それなら、凛も海未ちゃんのことが嫌い。

そう思い込もうとした。

でも。


凛は海未ちゃんのことが好き。

名前を呼んでくれる透き通った声が好き。

流れるような青くて長い髪が好き。

さりげない優しさが好き。

頭を撫でてくれる温かい手が好き。

海未ちゃんのこと、誰よりも……大好き。


凛が本当に嫌いなのは……凛自身だ。

何にも出来ない凛が嫌い。

海未ちゃんに嫌われる凛が嫌い。

自分に嘘をついて逃げる凛が嫌い。

こんな凛なんて……嫌い嫌い嫌い嫌い、大っ嫌い!!


凛「海未ちゃん……」


海未ちゃん。

凛のこと、どうしたら好きになってくれるの?

教えてよ。

じゃないと……凛このまま、死んじゃいたいよ。


今日も、練習が始まる。


海未「ワン!ツー!スリー!フォー!」 パンパン

海未「凛!また早くなっています!」


ほら、また。


海未「テンポが早まる癖を直してくださいと言ったでしょう!」


もう、嫌だよ。

もうやめて。

これ以上、海未ちゃんの「嫌い」が伝わるのは嫌。

もう耐えられないよ。


海未ちゃんは凛のことが嫌い。

凛は海未ちゃんのことが嫌い。


凛「もうやめてよ……!」

海未「凛?」

凛「そんなに凛のことが嫌いならはっきり『嫌い』って言えばいいじゃん!!」

凛「凛だって……」


やめて。


凛「凛だって海未ちゃんのこと……」


そんなこと言いたくない。

凛は海未ちゃんのこと……




凛「世界で一番……大っ嫌いだっ!!!」


世界で一番大好きなのに……!!




凛「うっ……ぐすっ……」


ついに言ってしまった。

これでもう、海未ちゃんと関わることはもうない。

もう苦しむ必要なんてないんだ。

だって、海未ちゃんは凛のことが嫌い。

凛は海未ちゃんのことが嫌い。

それで……いいんだ。


凛「あはは……もう凛、μ’sにもいられないかな」


練習中に、勝手に怒って、勝手に飛び出して。

みんなには大きな迷惑をかけた。

それに、μ’sには海未ちゃんがいる。

μ’sのみんなは、海未ちゃんを必要としてる。

だから凛は、いらないんだ。



「凛!!」


やめてよ。

なんで追いかけてきたの。

その声で凛の名前を呼ばないで。



凛「……。」

海未「凛!私も言い過ぎたことは謝ります!」

海未「だから話を聞いてください!!」


もういいでしょう。

海未ちゃんに凛なんて必要ない。


凛「だって海未ちゃんは凛のこと嫌いなんでしょ!!」

凛「だから凛も海未ちゃんのことなんて大嫌い!!」

凛「それで良いじゃん!!」

凛「それで……」


さよなら、海未ちゃん。

嫌い嫌い嫌い嫌い…………大好き。




海未「良いわけないでしょう!!!」




え。


海未「良いわけ……ないじゃないですかぁ」 ポロポロ


なんで。

なんで海未ちゃんは泣いてるの。

凛のこと嫌いじゃなかったの?

どうしてそんなに悲しい顔をして泣くの。


海未「凛が私のことを嫌いでも……私が凛のこと嫌いなんてありえませんっ……」

海未「凛は、活発で…皆に元気を与えて……」

海未「でも誰よりも女の子らしくて、可憐で……」

海未「そんな素敵な凛が私は誰よりも大好きなんですっ……!」

海未「愛しているんですっ……!」


海未ちゃんが凛なんかを好き……?


海未「だからもっと素敵になって欲しくて…ついつい厳しくしてしまうんです」

海未「貴方しか…見えていないから……」


凛しか見てなかったから、凛ばっかり怒ってたの……?


海未「そのせいで貴方を苦しめていたのなら、謝ります」

海未「だから……お願いです」


海未「嫌いにならないでっ……!」


あの海未ちゃんが、目から涙をぽろぽろこぼして、泣いてる。

そんなに凛のこと、好きだったんだ。

ごめんね。海未ちゃん。

嘘ついて、傷つけて、ごめんね。

凛も、素直になるから。


凛「海未ちゃん……ごめん」 ポロポロ

凛「凛も、ちょっと厳しいけど、優しくて、格好よくて、可愛い海未ちゃんが大好き」

凛「世界で一番大好きだよ……!」

凛「嘘ついてごめんね……!」

海未「凛っ!」 ギュッ

凛「海未ちゃん!」 ギュゥゥゥゥ


あったかい。

海未ちゃんと気持ちが通じることが、こんなに幸せだったなんて。




海未ちゃんは凛のことが大好き。

凛も、海未ちゃんのこと……大、大、大好き!




海未「結局、二人ともとんでもなく不器用なだけだったんですね」

凛「凛、ほんとに海未ちゃんに嫌われたと思ってたんだよー?」

海未「その件は本当にすみませんでした」

海未「でも……」 チュッ

海未「私は、凛を本当に愛していますからね?」 ニコッ

凛「~~っ///」 カアアッ

凛「お返しにゃ!」 チュッ

海未「わわっ!///」カァァァァァァ


凛「みんなに、謝りにいかないと……」

海未「練習も中断してしまったみたいですしね……」

海未「その後は、特訓ですよ!」

海未「凛の癖を矯正します!」

凛「え、ええええ!?」


やっぱり厳しい海未ちゃんは嫌いにゃああああ!!


おしまい。

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