狩宿巴の記録より
永水女子麻雀部は、私を残すのみとなってしまいました。
その私に残された時間も、もう僅かもないでしょう。
しかしその残された時間で手を小招いているわけにはいかない。
次の犠牲者を出さないためにも可能な限り情報を残して逝くべきだと考えました。
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まず断っておきたいのは、私は決して狂ってなどいないと言うことです。
それに、これを読んでいるあなたが私のことを狂人だと決めつけても、事実が揺らぐことはありません。
むしろ狂ってしまえばどれほど楽であったか。
半端に強い私の精神力と、我が身を守護する五芒星石(スター・ストーン)を今では呪っています。
しかし今、五芒星石を投げ捨てるわけにはいかない。そうしてしまえば、私の精神はおろか肉体までも危うくなる。
戸口の向こうでは今もなお、名状しがたいものどもが蠢いているのだから。
急いでこれを書き終えてしまわなければ。
「小蒔ちゃんに邪神を降ろしてみましょう」霞さんのこの言葉がすべての始まりでした。
「邪神ですか?」私は尋ねました。
「ええ。正直相手を格下に見てしまっていたと団体戦で感じたの。ですから個人戦では最初から本気のほうがいいと思って」
「霞さんが降ろしているものですか?」
「いいえ、それよりももっと強力な、名前を呼ぶのも躊躇われるほどの――」霞さんは戸惑うように僅かな間を置き、「“C”を喚びます」と言いました。
「それはいいですね!」ハッちゃんが歓喜の声を上げました。「“C”がいれば絶対に敵なしですよ!」
霞さんとハッちゃんは二人で盛り上がっていましたが、私は“C”という神様を知りません。
「あまり深く知らないほうがいいわ。ただこれだけは言える。小蒔ちゃんは今までにないほど強くなるわ」霞さんは詳しいことは教えてくれませんでした。
「それで、その“C”を姫様に降ろすにはどうすればいいんですか?」
「明日の試合直前に降ろしましょう。詳しいことは明日話すわ」
「わかりました」
「そうそう。今のうちに、みんなにこれを渡しておくわね」霞さんは薄緑に輝く星形の石を人数分取り出すと、全員に配りました。
「うわあ、なんですかこのヒトデみたいなの! 気持ち悪い!」ハッちゃんがわめきたてました。
「これは?」私は尋ねました。なんだか今日は尋ねてばかりな気がします。
「これは五芒星石。邪神よりの脅威と敵意を祓ってくれるわ。明日は必ずこれを持ってきて。でなければ精神を犯されかねないわ」
私はぞっとしました。“C”とはそんなにも恐ろしいものなのかと。そこまでする必要があるのかと。
今思えば、霞さんはあのとき既に精神を犯されていたのかも知れません。
ふと思いついて息抜きに書いたものです。
いあいあ
エロと猟奇ですかー
短編を投下していこうと思ってるので、そのうち書くかも
翌日、姫様の試合が始まる少し前に、降霊――この場合は降神と言うべきか――の儀式をしました。
儀式に用いた呪文は、唱えるだけで精神を持っていかれそうでした。
その呪文を記すこともできなくはありませんが、日本語ではないため表現し難く、なにより世に広まらないほうが良いと考え記述は控えます。
「ひいいいいいいいいいいいい!」儀式終了直後、ハッちゃんが奇声を発して倒れました。
なんとハッちゃんは、霞さんから預かった五芒星石を身につけていなかったのです!
試合時間が迫っていたので、姫様には試合に行っていただき、ハッちゃんは残った私たちが介抱することにしました。
ハッちゃんの意識は戻りませんでした。
試合に関しては姫様が勝利しましたが、その理由は姫様が強くなったからなどとは無縁のものでした。
なんと試合開始から十分と経たないうちに、対戦相手全員が意識を失ったのです!
ハッちゃんのことといい、“C”が原因であることは想像に難くない。姫様が戻り次第すぐに〈祓い〉の作業に取りかかりました。
春ちゃんが倒れました。
“C”の〈祓い〉は失敗に終わり、姫様に変化はありません。私は今にも泣き出しそうです。
「私に移しましょう」霞さんが言いました。
「移す?」
「小蒔ちゃんに降りる邪なる神を、代わりに宿すのが私の役目。私を依り代にして小蒔ちゃんを目覚めさせます」
“C”を霞さんに移す儀式のあと、姫様は意識を失いました。次に目覚めたときには元の姫様に戻っていると信じて、霞さんに目を向け――
「ああああああいいいいいいああああああ!」霞さんは奇声を発しながら私を見ていました。あのときの表情は今でもまぶたの裏によみがえります。
恐怖のあまり凍りついたかのように体が硬直しましたが、霞さんが落ち着いたのを確認すると、なんとか声を絞り出して「大丈夫ですか?」と尋ねました。
「ええ、大丈夫よ」霞さんは心ここにあらずと言った様子で答えました。
翌日、霞さんは行方不明になりました。
それから一週間経った今も、霞さんの行方は知れず、姫様の意識もまだ戻りません。
私はと言えば、日々精神を削られています。外出すると何者かにつけられている気がするのです。もう三日前から一歩も外に出ていません。
嗚咽の日々に疲れ、己の死期を悟ると、今回の出来事を記録しようと思い立ちました。
どうか姫様を救ってください。それだけが私に残された最後の願いです。
さて、そろそろお別れの時間が迫っているようです。霞さんから預かった最後の五芒星石にひびが入りました。
私はどうなってしまうのでしょう。怖いですが、皆と同じところへ行けると思うと少しは安心し――
いや、そんな、なんだあれは! 知らない! あんなものは知らない!
燃えるような赤い目が三つ! ああ、窓に! 窓に!
「さすが巴ちゃん。予想以上に強い精神でした。我が〈友人〉ながらあっぱれですよー。
さあ、これで“奴ら”の石はすべて消滅しました。後は好きにやらせてもらいましょう。
姫様、もし目覚めることがあれば、二度と再び千なる異形の私に出会わぬことを、自身の神様に祈るがよいですよー。我こそは這い寄る混沌、ナイアルラトホテップなれば」
カン
完全に脊髄で書きました。
こんな感じでさくっと読めるのを投下できれば思います。
が……!
他はまだ考えがまとまらないので、気が向いたら書きに来ます。
そんなのんびりな感じのスレ。
霧島神鏡を覆う影
「ダルくないの!?」
二言目にはダルいと呟くのが癖なほど面倒くさがりやのシロが、海に行きたいと言ったのには驚愕せざるを得なかった。
インターハイ二回戦に敗北し苦汁を舐めていたところ、同じく敗れた永水女子の面々に海水浴に誘われ、我々宮守女子は鹿児島県に位置する霧島神鏡の海を訪れたのだ。
いくら共に卓を囲んだ友人たちの誘いとはいえ、わざわざ遠く離れた鹿児島に赴くなど正気の沙汰ではない。が、シロとエイスリンがどうしてもと言って聞かなかったのだ。
今思えば二人の様子はあのときからおかしかった。全力で反対すべきだったと後悔している。
海水浴自体は楽しいものだった。宮守のみんなとはもちろんはしゃぎ、永水のみんなとも仲良くなった。共に卓を囲み、しのぎを削った〈悪石の巫女〉薄墨初美とは、今や手を繋いで飛び込む仲である。
問題はその後。
海水浴を終え帰宅してから、シロとエイスリンは時おり上の空で外を見つめるようになった。
「帰りたい」
心配して声をかけると、そんなことを呟くのだ。
インターハイで敗北したことがよほど堪えているのか。このときの私はそう思った。
ある日、学校にシロが来なかった。連絡がなかったのでこちらから携帯に電話すると、何度目かの呼び出し音ののち、気だるそうな声が出た。
「もしもし塞?」
「シロ? 今日学校来ないの?」
「ああ、ごめん。今日は休むよ」
「風邪?」
「ううん。ただちょっと、帰りたいなと思って」
「え、家にいるんじゃないの? 今どこ?」
「海に向かってるとこ」
「はあ!?」
「じゃあ」
「え、ちょ――」
それっきり通話は途絶えた。
私は胸騒ぎを覚え、衝動的に学校を飛び出して海を目指した。
今日はここまでです。
のんびりし過ぎて気づいたら一ヶ月経ってた……。
塞ぐさんの台詞って、「メンドくないの!?」でしたね。
間違えました。
この辺りで海と言えばあそこだろうと見当をつけて一目散に目指す。
浜辺に駆け込むと予想通り。シロを発見した。
しかし安心する暇などなかった。シロは今まさに私の眼前で海に入ろうとしていたのだ。しかも服を着たまま! 明らかに様子がおかしい。
大声でシロの名を呼んだが、シロはそれに反応することなく海水に浸かっていく。
慌てて駆け寄り、その白い腕を掴んだ。
「シロ!」
「塞、なにしてるのこんなところで?」
「こっちの台詞だよ! なんでこんな時間に海に来て、しかも服を着たまま海に入ろうとしてるの!?」
シロは自分の服装を確認すると、なにかに納得したように服を脱ぎ始め、呆気に取られている私の眼前で、シロは瞬く間に一糸纏わぬ姿へと変貌した。
「ってなんで脱いでるの!?」
「確かに服着たまま海に入るのは変かなって」
「裸で入るのも変だよ! せめて水着を――いやそもそも、なんで海に入ろうとしてるの?」
「帰るため」
「……よくわからないけど、とにかく服来て。家に帰ろう。このままじゃ風邪引いちゃうよ」
「私の家は向こうにある」
シロはそう言って海の遥か彼方を指差した。意味がわからない。
無理矢理に服を着させ、引っ張って帰ろうとしたところ、シロは意味不明な言葉を喚き立てて抵抗した。
こんなに必死なシロを見るのは初めてで戸惑ったが、明らかに異常な状態であり、とても抵抗を許すことなどできない。無理矢理シロの家に連れ帰った。
一週間後、シロは精神病院に入院させられた。
エイスリンにも同じようなことが起きた。
「ウミ……スキ……ウミ……」
ひたすら海に対して好意的であることを唱える日常。
さらにはシロと同様、海へ赴き潜ろうとする。止めようとすると癇癪を起こして何事かを喚き立てるのだ。
間もなくエイスリンもシロと同じく精神病院へ入院となった。
今日はここまでっす!
二人が失踪したのはそれから十日後のことだ。
報せを受けてすぐ海へ向かったが、二人の姿は見つからず、靴や服といった類のものもなかった。
警察にも既に依頼しているが、書き置きや遺言などなに一つ残されていなかったため、捜査は難航しているようだ。現時点で有力な手掛かりはない。
二人のベッドに大量の鱗が付着していたことが、さらに捜査を難航させる要因となっている。
カン
霧島神鏡が全然舞台になってないけど気にしないでおこう。
次は夢の国の話でも書こうかなと考えてます。
いつになるかは未定(白目)
幻夢への旅
「ん……おしっこ」
昨晩飲んだココアによるものだろうか。突然の尿意により目が覚めた。
窓の外はまだ暗い。時計は見なかったがおそらく二時か三時くらいだろう。早く用を済ませて夢の続きを見よう。
「にしても夢の中でまで怜たちと麻雀か。ほんま好きやな」
友人たちの顔を思い浮かべて微笑みながら用を足し、洗面所へ向かう。
手を洗い、顔をあげると鏡面世界の自分と目が合った。
まだ少し意識がぼうっとする。覚醒仕切っていない今眠れば、本当に先ほどの夢の続きが見られるかもしるない。
そんなことをぼんやり考えながら、無意識に友人の名を呟いた。
「怜……」
「呼んだ?」
「――!?」
本当に突然の出来事に夢かと疑う間もなく、驚きに声を上げることすらできなかった。
なんと怜の声が聞こえたかと思えば、鏡にも映っているではないか!
振り返っても確かに怜の姿がある。ただしそれはいつも見ている容姿ではなく、インターハイ準決勝大将戦で見せた、あの〈枕神〉の姿であった。
「はーっ、びっくりしたー!」
「ごめんごめん。でも呼んだんは竜華やで」
「呼んだわけやないんやけどな」
「そんなー」
私は完全に落ち着きを取り戻すと、怜に向かって言った。「まだ夜中やし、ちゃんと寝んと明日に響くで」
「ちゃんとかどうかはわからんけど、寝とるよ」
怜の言葉の意味を理解しかねた私は首をかしげた。
「つまりな、体は家のベッドで寝とって、魂だけここにおるんや」
「なにそれ怖っ! 幽体離脱ってこと?」
「正確には体外離脱って言うたほうがええんかもしれんけど、面倒やからそれでええわ」
「どうしよ! 怜が死んでまう!」
「死なへん死なへん」怜は取り乱した私をなだめるように言った。
「ごめん取り乱して。でもほんまに大丈夫なんそれ?」
「たまにやるけど本体に異常でたことないし、大丈夫やろ。一巡先を見るほうがしんどいくらいやわ」
「それならええけど……ええんかな?」
「それに、気づいてないみたいやけど、竜華も今離脱してるで」
「なに言うてんの?」私は怜に疑惑の眼差しを向けた。
「うわ、疑いの目。部屋戻ってみたらわかるわ」
言われるがまま部屋に戻り、その戸口を開けた。
なんと驚愕すべきことに、そこには私と瓜二つの人間が私の代わりに眠っているではないか!
いや、わかっているのだ本当は。目の前で眠っているのは私の偽者でも自己像幻視(ドッペルゲンガー)でもなく、紛れもなく私自身だということを!
魂の脱け殻となった私の!
いったんここまでなのよー。
枕神怜ちゃんはリダンツァーなのではと妄想したらこうなってた。
いったんここまでなのよー。
枕神怜ちゃんはリダンツァーなのではと妄想したらこうなってた。
生存報告
忙しすぎて続き書く暇もないです
読んでくれてるかたいたら、もう少し待っててほしいです
「わあっ!」
突然、見えない力が働き、私はベッドで眠っている本体へと引き寄せられた。
反射的にそれに抗う。
「なにこれ! 引っ張られてるみたいや!」
「掴まって竜華!」
そう言って伸ばされた怜の手を掴み、引っ張ってもらう。
部屋から出て戸口を閉めると、本体からの引力は消え失せた。
「はーびっくりした! なんなん今の?」
怜は首を横に降り、わからんと答えてから仮説を唱えた。
魂は本来、体の中にあるもの――と我々は思っている――であるため、自然な状態に戻そうと見えざる力が働くのではとのこと。
「離脱時に引っ張られる感覚は私も経験あるし、よく聞くけど、こういうパターンもあるんやな」
なにやら一人で納得している。
「元に戻れるならええことなんちゃうの?」私は聞いてみた。
「そんなもったいない。折角離脱できたんやからもっと楽しもうや。どうせ戻ろう思たらいつでも戻れるんやし」
「なら安心やな。なにして遊ぶ?」
「……凄い適応力やな」怜は呆れ気味に言った。
「だって怜のこと信じてるもん。怜は何度も経験してるんやろ? なら大丈夫や」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ。よっしゃ、先輩として色々教えたるわ」
そうして怜から幽体離脱の世界のこと、更には壁抜けや空中浮遊など技術的なことを教わった。
「竜華は筋がええな」
「怜の教えかたが上手いんやって。それに楽しいしな」
怜から教わることは、肉体があっては決して体験しえないことであり、かつてないほどの悦楽に浸るのは当然と言えた。
「覚醒しそうになったら地面に手をついて、こっち側に意識を集中するんや。そしたらもう少しこっち側に留まっていられる」まあまずは常に冷静でいることやけどな、と怜は付け加えた。
……レクチャーは終わったのだろうか。
「これからどうするん?」私は尋ねた。
「着いてきて。この前おもろいもん見つけてん」
怜に着いていって見たものは、地下へと続く階段だった。
「なにこの階段? どこに続いてんの?」
「降りたことないからわからんけど、うちの予想が正しかったら、もっとおもろいとこに続いてるで」
「どこ?」
「夢の国(ドリームランド)や」
また聞きなれない単語が出てきた。夢の国? 千葉の浦安にあるあの鼠の王国だろうか。
「著作権に厳しい舞浜のテーマパークとちゃうで」
「心を読むな」私はツッコミを入れた。
「人は皆夢を見るやろ? 夢の国って言うのは通常の浅い眠りの中で見るもんやのうて、深い眠りの中で見る夢みたいなもんや、簡単に言うたらな。この階段を下りたところに『深き眠りの門』言うのがあって、そこを潜ると夢の国に行けるんや」
「あれ、でも夢って眠りが浅いときしか見れんもんちゃうの? 『レム睡眠』やったっけ?」
「そう。普通の人間には意識を保ったまま深い眠りにつくことはできん。ただし一部それができる人間がおる。それが〈夢見人〉」
「〈夢見人〉……」私は怜の言葉を繰り返した。
「うちは体外離脱者(リダンツァー)こそがその〈夢見人〉やないかと考えとるんや」
一旦ここまでです。
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