遊矢「エレベーター・パニック」(35)

ショッピング・モールにて……

柚子「早くこっちに来なさいよ、遊矢。何をモタモタしてるのよ?」

遊矢「お前な、こっちはこれだけ荷物持たされてんだぜ? 少しは待ってくれよ……てかマジで買い過ぎだろ、これ」

柚子「仕方ないでしょ? それ全部塾で必要なものなんだから。ウチの塾の生徒なら文句言わず持ちなさい」

遊矢「だからって何で全部俺が持たなきゃならないんだよ。柚子も半分持ってくれよ」

柚子「あ、エレベーター来た。ほら遊矢、早く入るわよ」

遊矢「人の話を聞けって」

エレベーター内……

遊矢「ふぅ、買い物はこれで全部だよな?」

柚子「ええ、後はウチまで運ぶだけよ」

遊矢「そうか、まだこれを塾まで運ばなきゃならないのか……あー、気が重い」ウンザリチュア

柚子「嘆かない、嘆かない。後で余ったお金でアイス買ってあげるから」

遊矢「報酬がアイスだけっていくら何でも安過ぎ……」

……ガタン!!

遊矢&柚子「!?」ビックリボー

柚子「え? 何これ? 急に静かになって照明も消えて……」アタフタキオン

遊矢「ていうか止まってないか、このエレベーター?」

柚子「こ、故障かしら? あ、電気点いた。でもさっきまでと何か違うわね」

遊矢「非常灯って奴だろ、点くのは初めて見るけど……それより柚子」

柚子「な、何?」

遊矢「そろそろ離れてくんないか? 正直胸が圧迫されて苦しいんだけど」

柚子「……あ///」

ハリセンパチーン!!

遊矢「……なあ、理不尽って言葉知ってるか?」ヒリヒリ

柚子「ご、ごめんなさい。それより遊矢、何だか落ち着いてるわね。こんな状況なのに……」

遊矢「ここで慌てても仕方ないからな。とりあえずここは落ち着いて非常ボタンを押してだな……」カチッ

シーン

遊矢「…………」カチカチッ

柚子「…………」

遊矢「…………」カチカチッ

柚子「……ウンともスンとも言わないわね」

遊矢「……ああ、気持ち良いくらい無反応だな」

柚子「ねえ、遊矢。もしかして私達ここに閉じ込められたの?」

遊矢「もしかしなくてもそうだろう。柚子、ケータイは?」

柚子「えっと……駄目、圏外になってる」

遊矢「当たり前だけど俺のケータイも同じだ。つまり外に助けを呼ぶ事も出来ないって事か」

柚子「どうしよう、遊矢?」

遊矢「……これだけの事になってるんだから多分外も大騒ぎになってるに違いない。ずっとこのままって事は無いはずだ」

遊矢「とりあえず救助が来るのを待とう。ただ何時来るか分からないから座って出来るだけ体力使わない様にしようぜ」

柚子「……うん」コクリ


…………

遊矢「…………」

柚子「…………」

遊矢「…………」

遊矢(……やばい、マジでどうしよう)

遊矢(柚子の手前何とか平気な振りしたけど、さっきから心臓がバクバクしてるよ……ちゃんと救助来るよな? ここから出られるよな?)

遊矢(だけど非常ボタン押しても無反応なんてよっぽどの事じゃないのか? 非常なのに非常時に使えないとか……まさか外は想像以上に大変な事に?)

遊矢(いや、落ち着け俺。ここでマイナスな事を考えても意味が無い、ただ気分が沈むだけだ。それに……)

柚子「……ごめんね、遊矢」

遊矢「え?」

柚子「私が買い物に付き合わせたせいでこんな事に巻き込ませちゃって」

遊矢「いや、別に柚子が悪い訳じゃ……」

柚子「それでも責任感じちゃうの……遊矢、本当にごめんなさい」

遊矢「柚子……」

柚子「…………」グスッ

遊矢「…………」

遊矢「……なあ、柚子」

柚子「何、遊……」

遊矢「ばあ♪」←変顔

柚子「!?」

ハリセンスパーン!!

遊矢「……何も顔面叩かなくても良いだろうに」ヒリヒリ

柚子「遊矢がいきなり変な事するからでしょ!? てかこの非常時に何ふざけてんのよ!!」プンスカブックス

遊矢「えっと、面白くなかった?」

柚子「全然。代わりに無茶苦茶ムカムカしてるわ」

遊矢「そ、そうか。だけどションボリするよりはそっちの方が良いかもな」

柚子「へ?」

遊矢「確かにこんな所に閉じ込められたら不安になるのも仕方ないと思う。だけど辛い時にただ落ち込んでてもさらに気分が沈むだけだ」

遊矢「辛い時だからこそ心は明るく、笑顔で行こうぜ。それに元気の無い柚子なんて柚子らしく無いと俺は思うし」

柚子「遊矢……」

遊矢「それとだ、さっき俺を連れて来た事に責任感じているとか言っていたけどそういうの本当に良いからさ。むしろ俺は連れられて来て良かった思うし」

柚子「え?」

遊矢「もし俺が居なかったら、柚子はここに1人で閉じ込められていたって事だろ? いや、本当にそんな事にならなくて良かった……お前の傍に入れて良かったよ」

柚子「そ、傍に入れられて良かったと……そんな恥ずかしい事言わないでよ!///」

遊矢「大分何時もの調子が戻って来たな」

柚子「あっ……」

遊矢「大丈夫、絶対に助けは来るから。俺と一緒にもっと気楽に待とうぜ。な?」ニコッ

柚子「うん……ありがとう、遊矢」


…………

遊矢(あれから大分時間が経ったけど未だにエレベーターは止まったまま……何の進展も無い)

遊矢(さすがにもうこの状況には慣れて来たが、今度は退屈で仕方ない。さすがに寝る訳にはいかないし……)

遊矢「なあ、柚子。しりとりでもするか?」

柚子「…………」

遊矢「柚子?」

柚子「えっ? な、何?」ビクッ

遊矢「いや、しりとりでもしないかって言ったんだが……」

柚子「し、しりとりね。うん、良いんじゃないかしら?」

遊矢(何だ、様子がおかしいぞ?)

遊矢「大丈夫か? もしかしてまだ不安なんじゃ……」

柚子「だ、大丈夫よ。もう平気ですから……うん、本当に大丈夫です。問題ナッシングであります」

遊矢「何か言葉遣いがおかしくなってないか?」

遊矢(良く見れば顔色も悪いな。それに膝も少し震えてる様な……)

柚子「…………」ブルブル

遊矢(まさかこいつ……)

遊矢「……なあ、柚子」

柚子「……何、遊矢?」

遊矢「どっちだ?」

柚子「ど、どっちって?」

遊矢「大きいのか? それとも小さいのか?」

柚子「な、何の話?」

遊矢「恥ずかしいのは分かるが正直に答えてくれ。ここは密室だから俺にも十分関係ある話だと思うんだ」

柚子「…………///」

遊矢「もう一度聞くぞ。大きいのか、小さいのか? どっちだ?」

柚子「……チイサイホウデス///」カオマッカカ

柚子「実はエレベーターに乗る前からちょっと微妙な所でして……///」

遊矢「何ですぐにトイレに行っておかなかったんだよ?」

柚子「し、仕方ないでしょ? こんな事になるなんて思って無かったんだから!」

遊矢「分かった、分かった。それで我慢出来そうか?」

柚子「……結構いっぱいいっぱい」アセダラダライダー

遊矢「……辛い時は笑顔だぞ、柚子」

柚子「ごめん……そんな事が出来る余裕が無いくらいにいっぱいいっぱいなのよ、遊矢」

柚子「どうしよう、遊矢。このままじゃ私……もう中学二年生なのに……」ガタブルーアイズ

遊矢「お、落ち着け、柚子! とりあえず深呼吸だ、気分を落ち着かせるんだ!!」

柚子「う、うん」スーハースハー

遊矢「救助はまだなのかよ……くそ、何かこの状況を打開出来る物は無いかな?」ガサゴソ

柚子「うぅ、そんな都合の良い物がある訳……」

遊矢「ん……柚子、これだ! これがあったぞ!!」







っ紙コップ

柚子「」

柚子「ちょっと待ちなさいよ! これで、これで何を何してどうするのよ!?」

遊矢「決まってるだろ? 尿検査の時みたいにこの中にシャーと……」

柚子「ここでしろと? 出来る訳無いでしょ、このアンポンタン!!」

遊矢「人が必死になって考えてやってるのにアンポンタンは無いだろ、アンポンタンは! てか仕方ないだろ、非常時なんだし!!」

柚子「無理! そんな恥ずかしい事絶対に無理!!」

遊矢「じゃあ漏らしても良いのかよ!?」

柚子「それも嫌!!」

遊矢「じゃあどうするんだよ? もう我慢の限界なんだろ? じゃあここから出れない以上、他に手は無いぞ?」

柚子「た、確かにそうだけど……やっぱり恥ずかしいし……遊矢も居るし……///」

遊矢「それはちゃんと見ない様にするし、音も聞かない様にする! それなら大丈夫だろう?」

柚子「で、でも……///」

遊矢「はい、壁の方を向きました! 耳も塞ぎました! さっさと済ませるんだ、柚子!!」クルッ

柚子(ほ、本当にやらないと駄目なの? でもこのままじゃ確かにお漏らししちゃうし……///)ゴクリ

柚子「…………」

遊矢「…………」

柚子「…………」

遊矢「…………」

柚子「……遊矢」

遊矢「何だ、柚子? 終わったか?」

柚子「しっかり聞こえてるじゃない、馬鹿!!」スパーン

遊矢「ぐはぁ!?」

柚子「信じられない! 遊矢の馬鹿、変態トマト野郎!!///」プンスカブックス

遊矢「わ、わざとじゃないんだ! 手で塞いでもどうしても少しは聞こえちまうんだよ、完全に音を遮断なんて出来ないし……」オロオロットン

柚子「もう、最悪1人なら覚悟決めて出来たのに……本当に何で傍に居るのよ! やっぱり遊矢を連れて来るんじゃなかったわ!!」←半泣き

遊矢「なっ、さっきは俺が傍に入れて良かったって言った時はホッとした顔してたじゃないか!?」

柚子「それはそれ、これはこれよ! 本当にもう……うっ!?」ビクッ

遊矢「ゆ、柚子?」

柚子「やばい……すっごくやばい……」サァー

遊矢「何か一気に血の気が引いた様に見えるんだが……だ、大丈夫か?」

柚子「大丈夫じゃない……さっきハリセン振るったせいで……無理、無理……これ絶対に無理……」ブルブルーアイズ

遊矢「ゆ、柚子ぅー!!」←こっちも半泣き

柚子「遊矢……わ、私……私……///」

遊矢「頑張れ、頑張るんだ、柚子! 希望を捨てるんじゃない!!」

遊矢(くっ、柚子のダムは最早決壊寸前だ! このままじゃ確実にこの場で悪夢の激流葬が発動されてしまう!?)

遊矢(笑わせるか? いや、これ以上刺激を与えるのはまずい……どうすれば? どうすれば良いんだ!?)

柚子「はぁ、はぁ……ゆ、遊矢ぁ……///」

遊矢(父さん、教えてくれ! 俺は一体どうすれば柚子を救えるんだ!!)

……ガタン!!

遊矢&柚子「!?」

遊矢(扉がゆっくりと開いて……!?)

救助員A「おい、居たぞ!」

救助員B「君達、大丈夫か!?」

遊矢「た、助かった……助かったぞ、柚子!!」

柚子「…………」

救助員A「遅くなってすまない。この辺り一帯が停電になったせいで救助に時間が掛かって……」

遊矢(やっぱり停電だったのか。何かの事故か?)

救助員B「そちらの女の子は大丈夫かい? 何だか顔色が悪い様だが……」

遊矢「そ、そうだ! スイマセン、すぐにこいつを……」

柚子「……お……おっ……」

遊矢「ゆ、柚子?」






柚子「おしっこおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


…………

柚子「……死にたい」ズーン

遊矢「そ、そんなに落ち込むなよ。良かったじゃないか、大惨事にならなくてさ」

柚子「だけどいくら限界だからってあんな言葉を大声で叫ぶなんて……色んな人に聞かれた……死にたい……」

遊矢「そんな、気にし過ぎだってば。救助の人も笑ってたじゃないか」

柚子「笑われたのよ。本当に悪夢だわ……もうお嫁に行けないよ」グスッ

遊矢「気にし過ぎだと思うけどな……まあ最悪その時は俺が相談に乗ってやるよ」

柚子「え?」

遊矢「それより暑い所に居て喉乾いただろ? ジュース奢ってやるよ」チャリンチャリン

柚子「……今日は何か疲れたから遊矢の優しさに素直に甘えるわ」

遊矢「甘えとけ、甘えとけ。ほら」

柚子「ありがとう、遊……」


っ紙コップに入ったレモンティー


柚子「……遊矢の馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」←マジ泣き

遊矢「えっ、何で!?」


…………

秘書「社長。電力の復旧と事後処理、ほぼ完了致しました」

零児「そうか」

秘書「しかし凄まじい力ですね。この辺りの電力を一気にショートさせるなんて……」

零児「ああ……だがそれだけの価値はあった」チラッ


『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』

『DD魔導賢者ガリレイ』

『DD魔導賢者ケプラー』


零児(ペンデュラム……この力、必ず俺のものにしてみせる)

<おわり>

読んでくれた人、ありがとうございました。今回は以前別作品を題材として書いたSSをアークファイブ用にリメイクしたものです。その為一部内容が類似していますのでご了承下さい。

またアークファイブのSSは他に『榊遊矢「アクションデュエルで童貞を捨てる」』や『遊矢「ペンダントをアナルに入れたら抜けなくなった」』などを書いているので何処かで見かけたらよろしくお願いします。ではでは。

>>25

…………

秘書「社長。電力の復旧と事後処理、ほぼ完了致しました」

零児「そうか」

秘書「しかし凄まじい力ですね。この辺りの電力を一気にショートさせるなんて……」

零児「ああ……だがそれだけの価値はあった」チラッ


『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』

『DD魔導賢者ガリレイ』

『DD魔導賢者ケプラー』


零児(ペンデュラム……この力、必ず私のものにしてみせる)

<おわり>

一応修正。最後の最後でやっちまった・・・もう少しアークファイブ勉強します(汗

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