貴音「身長なんて、要りません」 (31)
響「身長が欲しいぞ!」
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765プロ、事務所
貴音「はぁ……」
P「……」カタカタ
P(貴音がこの数日、ため息ばかりをついている)
P(……理由はわかっている)
~~~
響「あー! 棚の上の物が取れないぞ!」ピョンピョン
貴音「これですか?」ヒョイ
響「やっぱり身長が欲しいぞー!」
貴音「ひ、響、何を言っているのですか? この前、わたくしに言ってくれた言葉は……」
響「うぐ……、でもでも! 貴音がずるいのがいけないんだ! あんな高くに置いてあった物を簡単に取っちゃうなんて!」
貴音「わ、わたくしはただ響が困っているようでしたので」アセアセ
響「うー……、ずるいずるい! 貴音なんてもう知らないぞ!」
貴音「あ、響!」
~~~
P(なんてことがあった)
P(あれはどう考えても響の妬みなんだが、貴音のことだからきっと自分が悪いと思ってるんだろうな)
P(……ここは二人の仲を戻すために何か案を……)
貴音「あなた様」
P「うおっ!? いつの間に後ろに!?」
貴音「申し訳ありません。驚かせてしまいましたか」
P「びっくりした、何か……響のことか?」
貴音「はい」コクリ
貴音「わたくしは響にひどいことをしてしまいました」
P(あー、やっぱり思ってる)
P「あの時のことか、俺も見てたからわかるよ。それで、仲直りしてないのか?」
貴音「何度か試みたのですが、そっぽを向いて話すら聞いてくれませんでした」
P「あー……」
P(あいつ意地っ張りなところあるからな、仲直りするタイミングが掴めないんだろう。貴音に身長の事とか色々話した、直後だったもんな)
P(もう少ししたら響の方から謝ってくると思うけど、ここは話を聞くか)
P「俺でよかったら、相談に乗るぞ? というかそのつもりで話しかけたんだろ?」
貴音「はい」
P「とりあえず解決策を……」
貴音「そのことなのですが」
P「なんだ? もう考えがあるのか?」
P(さすが貴音、響と違って話が早い)
貴音「わたくし、身長を縮めたいと思っております」
P「はい?」
貴音「ですから、身長を縮めたいのです」
貴音「わたくしは考えました、響と同じ立場になればいいのでは? と」
貴音「それで、響と同じ身長になるのが、まず第一前提かと」
P「え? なんでそうなっちゃったの!?」
P(響はコンプレックスとして思っていたからわかるんだが、貴音がそんなこと思うってよっぽどだぞ!?)
P(……これは何かあるな)
貴音「それで、わたくしなりにここ数日努力してまいりました」
貴音「食事の量を減らすなどしたのですが……」
P「貴音が……減食……だと?」
貴音「やはり、響が成長期で身長が徐々に伸びるように、わたくしも徐々に身長が縮むのでしょうか?」
P「いやいや、それただのダイエットだから! 減るの体重だけだから! 身長はどうしようもないから!」
貴音「で、では響のように、靴でどうにかできませんか?」
P「それは絶対無理」
P「いいか? あれは踵の部分を分厚くして、身長を高く見せてるんだ。素足より低くする靴なんて、見たことも聞いたこともない」
貴音「そ、それでは他に方法は……」
P「一応あるが……」
P(この前、響とネットで調べた時に載っていた)
P「イリザロフ法……って手術なんだがな」
P「それは、背を伸ばすこともできるんだが、縮めることもできるんだ」
貴音「で、ではそれを……」
P(そこまでかよ……。まぁ、例のサイトを見せれば諦めるだろう)
~~~
貴音「……骨を、切る!?」
貴音「麻酔でも耐えられないほどの……激痛……」
P「……」
貴音「」ガクガクブルブル
P(やっぱりこうなるよな、まぁ、これで素直に自分を受け入れてくれれば……)
貴音「……やります」
P「え?」
貴音「わたくし、この手術を受けます」
P「え、お、おい! どこに行くんだ!」
貴音「病院です。それですぐにでも手術を」
P「ダメだって! 手術したら長期間アイドル活動ができなくなるぞ!」
貴音「! そ、それは……」
P「いいか、貴音、落ち着け、一回深呼吸するんだ」
貴音「はい」スーハースーハー
P「落ち着いたか?」
貴音「先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした」
P「まぁ気にするな、それより」
P「お前がそこまでしたいってことは、俺の知らない何かがあるんだろう?」
P「それを教えてくれないか?」
貴音「そ、それは……」
P「トップシークレットか?」
貴音「……」
P「そう思うなら、言ってくれなくてもいい。多分もう少しで解決するだろうからな」
貴音「……言います」
貴音「ただし、この話は他言無用でお願いいたします」
P「わかった」
貴音「あれは、響と一緒のお仕事を頂いた日、しーくれっとしゅーずを履いた響と会った日のことでした」
~~~
響「おーい、貴音!」
貴音「おや、響。ごきげんよう」
響「はいさい! で、貴音。自分を見てくれ!」
貴音「……?」
貴音「もう見ていますが?」
響「うがー! そうじゃないぞ!」
響「もっとよく見るんだ!」
貴音「は、はい」
貴音「……」ジーッ
貴音「ん?」
響「お?」
貴音「なにやら、響の目線が少し高いような気がします」
響「!」
響「すごいぞ貴音、一発で気がつくなんて!」
貴音「響のことでわからないことなどございません」ナデナデ
響「うー、また撫でてる……///」
貴音(はて? いつもより撫でやすいような……)
響「って、貴音に言いたいことあったんだぞ!」
~~~
貴音「それで、響から聞きました。「身長を伸ばして、貴音より背を高くして、撫でてあげたい」と」
P(なんか、それだけじゃ伝わらなくないか?)
P「ふむ、それでどう思ったんだ」
貴音「響の優しさに、わたくしは涙を流しました」
P(えっ!? それだけで伝わっちゃったの!?)
P「な、なるほど、それで続きを聞かせてもらえるか?」
~~~
響「うぎゃっ!? ど、どうしたんだ貴音、いきなり泣いたりして、どこか痛いのか!?」
貴音「違います、違うのです」ポロポロ
響「本当か? 大丈夫なのか?」
貴音「はい、あまりの嬉しさに泣いているだけです……」ポロポロ
響「プロデューサーの言った通り、いや、それ以上だぞ……」
響「よいしょっ」セノビ
貴音「響?」
響「貴音が泣き止むまで、撫でてあげる!」ナデナデ
貴音「ひ、響ぃぃぃぃぃ!」ダキッ
響「うわっ!? た、貴音!?」
貴音「あなたは、どこまで、どこまで優しいのですか」ギュー
響「ぐえぇ、く、苦しいぞ貴音ぇ……」
貴音「はっ! 申し訳ありません響、嬉しさのあまりつい……」
響「ぷはーっ、大丈夫だぞ!」
響「それで、自分思ったんだけどさ」
貴音「何をでしょうか?」
響「やっぱり、別に身長欲しくないなって」
響「こうやって貴音を少し頭上げてみるの悪くないし、プロデューサーにも可愛さは完璧って言われたからな!」ニコッ
貴音「!」ドキッ
~~~
貴音「あの時、響は言っていたのです。身長は欲しくない、と」
P「ふむ」
貴音「しかし、あの日、響は言ったのです。やっぱり身長が欲しい、と」
P「だなぁ」
貴音「それは全て、わたくしが原因なのです」
P「え?」
貴音「背が高いからこそ、響の苦難が理解できない。それが原因だと、気がつきました」
貴音「ですから、響と同じ気持ちを味わおうと、身長を縮めようとしたのです」
P(なんだか、貴音と響って似てる気がしてきた……)
P「なるほどな……。それは響が口を聞いてくれるようになったら、言えばいいと思う」
貴音「ですが、響は話してくれません……」
P「あいつも意地張ってるだけだって、心配すんな」スッ
貴音「!」サッ
P「避けた?」
貴音「あなた様といえど、それはなりませぬ」
P「す、すまん。女性の頭をいきなり撫でるなんてデリカシーが……」
貴音「わたくしの頭を撫でていいのは、響だけです!」
P「はい?」
貴音「いくらあなた様といえど、これだけは譲りません!」ゴゴゴ
P「わ、わかりました」
P(なんだか、すごく怖いんだけど……)
貴音「それと……」
P「それと?」
貴音「響の頭を、撫でたりすること、ありますよね?」
P「あ、あぁ……でも無理やりじゃないぞ?」
貴音「無理やりではないのはわかっています。響とあなた様が良い関係を築き上げているのは良い事です、しかし……」
P「?」
貴音「えっと……その……」
P(どうしたんだ? なんだか貴音らしくない、いや、減食の時点でそうだったんだが、それ以上に貴音らしくない)
貴音「今から言うこと……なのですが」
P「う、うん?」
貴音「引いたりしませんか?」
P「え? 引く? なんで?」
貴音「いいから、引くか引かないか、と聞いているのです!」
P「ひ、引かないよ!」
P(勢いで言っちまったけど、何言われるんだろう)
貴音「わたくしは、常日頃から、響の事をとても可愛いと思っております」
貴音「頭を撫でてあげた時の響の顔、柔らかな髪の感触」ウットリ
P「は、はぁ」
貴音「最初のうちは、ただ、可愛らしいだけだからと、わたくしも思っていました」
貴音「ですが……」
貴音「次第に、響が他のアイドルの仲間と楽しそうにしていたり、家族の話をしていると、心がもやもやとした霧に包まれるようになっていったのです」
P(もしかして? いや、流石にそれは……)
貴音「それはあなた様にも当てはまるのです、響の頭を自分以外の人間が撫でている。それが……嫌だったのです」
貴音「わたくしは、自分が嫉妬していることに気がつきました」
貴音「そして、その理由を考え、そして気がついてしまったのです」
貴音「……響に、恋をしているということを……///」
P「……」
P「え? それって好きってこと?」
貴音「す!? すすすすすす……!?」バンバン
P「痛い! 痛いから! 悪かった、あまりにびっくりしてストレートに聞いちまった!」
貴音「そ、それならば……」
P「いや、それにしてもなんというか……」
貴音「やはり、引きましたか」
P「え……」
貴音「いえ、むしろ引くな、などというのが無理な話でしたね。本来恋愛というものは異性同士でするもの。それを……」
P「それ以上は言うな」
貴音「……あなた様?」
P「これは俺自身の考えだから、押し付けだとは思うんだが……」
P「恋愛は自由だ、何がどうあれ」
P「もっとも、アイドルが恋愛は御法度ってのは、あるが」
P「でも、引いてなんかないよ。確かにこんなこと初めてでかなり混乱してる部分もあるけど」
貴音「あなた様……」
P「っと、危ない。頭撫でそうになった……」
貴音「台無しです」
P「げふんげふん、それでどうするんだ、今後」
貴音「と、言いますと?」
P「響に気持ちを伝えるかってこと」
貴音「……それは///」
P「難しい問題……だな」
貴音「考えはしました……」
貴音「しかし、思ってしまうのです。引かれるのではないかと」
P「それは……世間一般的に見れば反論できない」
貴音「今までの響との関係が崩れるくらいならば、現状のままで、とも思っていました」
貴音「響に、身長の事を伝えられるまでは」
貴音「あの時以来、わたくしはずっと悩んでいるのです。気持ちを伝えるか、伝えないか」
P「響は、優しいからな……」
P「やんわりと断るか、貴音を優先して、付き合うか」
貴音「両思い……という可能性は否定するのですね」
P「否定はしない……が、可能性を考えると、な?」
貴音「わかっています」
P「こればっかりは、口出しできない。アドバイスも、できるかどうか……くらいだな」
貴音「……」
P「とりあえず、だ」
P「まずは仲直りだろ?」
貴音「そうですね」
P「それ以降のことは、焦る必要ないと思うぞ。響もアイドルだし、恋愛が御法度ってことくらいわかってる」
貴音「ですが……何年も先を見越すと……」
P「……」
プルルルル
P「すまん、電話だ」
P「って……響?」
貴音「!」
P「出るぞ?」
貴音「はい」
P「もしもし、なんだ? ……え? 今いるけど」
P「ん、時間あるぞ。 このまま電話で伝えても……会って言いたい?」
P「わかった、本人に伝える。じゃあな」ピッ
P「貴音、響から伝言だ」
P「いつもの公園で、待っているから。もし、話してくれるなら、来て欲しいぞ、だそうだ」
P「まぁ、理由はわかってると思うが、あくまで響は直接会いたいらしい」
貴音「行くに決まっているではありませんか」
P「だよな」
貴音「それではすぐにでも行こうと思います。あまり待たせてしまっても不安を募らせてしまうでしょうし」
P「貴音も、優しいんだな」
貴音「わたくしは、響のように皆に優しいわけではありません」
P「響だってそうだぞ?」
貴音「え?」
P「……まぁ、いいから行ってこい!」
貴音「わかりました、それでは」
バタン
P「ふぅ……」
P「どうなるかな、今後の二人」
P「急展開が待ち受けてる……気がする」
~~~
貴音「ここですね、響は……おそらく」
貴音「あれは、響? べんちに座って……っ!」ダッ
貴音「響」ダキッ
響「ヴァ? だ、だがね゛ぇ゛?」
貴音「どうしたのですか、そのように泣いて」
響「グスッ……自分、貴音に、八つ当たりしちゃったから……」
響「何度も貴音が謝ってこようとしてたのに、意地になってそれを振り切って、気がついたらすっごく後悔してた」
響「でも、逃げちゃだめだって、プロデューサーに電話して、貴音に伝えてもらって……」
響「謝るつもり、いや、謝るんだ……けど、けど」
響「もう、許してくれないんじゃないかって思ったら、怖くなって」ポロポロ
響「もう、二度と口を聞いてくれなくなるんじゃないかって……そしたら涙が止まらなくって」
響「うわぁぁぁぁぁん!」
響「だがね、ごべんなざいー!」ダキッ
貴音「大丈夫ですよ、響」ギュッ
貴音「わたくしは、確かにショックは受け……その、色々してしまいましたが……」
響「?」
貴音「それでも、大丈夫です。響のこと、嫌ったりしませんよ?」
響「本当?」
貴音「はい、例え秘蔵のかっぷらあめんを勝手に食べられようと、嫌ったりしません」
響「ラーメン? こんな時にラーメンって、プフッ! 貴音らしいや!」
貴音「やっと笑ってくれましたね」
貴音(響は言いました。逃げちゃだめだと、それは、わたくしとて同じこと)
貴音「わたくしは、笑っている響が大好きです」
響「え?」
貴音「それだけではありません、話す響、ダンスを踊っている響、歌っている響、それとこれと……きりがありませんね」
貴音「一番響が気にしている点を言わせていただくと、わたくしより響の方が大きくなっても、大好きです」
貴音「なぜなら」
響「……」
貴音「わたくし、四条貴音は、我那覇響を愛しているからです」
響「あ? え?」
貴音「つ、伝わりにくかったですか?」
響「え? え? え?」
響「えええええええええええええ!?」
響「それって、あの、えっと……///」
響「わ、わわわっ! 自分! 自分!///」
貴音「こんなわたくしでよろしければ、よろしければお付き合いしてください」
響「わーっ! こっちは混乱してるのに! なんで話続けちゃうの!」
貴音「す、すいません。つい……///」
響(こんなに真っ赤な顔の貴音……初めて見た)
響「えっと……えっとな」
貴音「は、はい」
響「自分は、貴音のこと好きなのか……その、わからない」
貴音「そう……ですか」
響「でも!」
響「付き合ってみたら、いろんなことが分かるかもしれない、だから」
響「付き合おう、貴音」
貴音「ひ、響……」ウルウル
響「あー、泣いちゃダメだぞ貴音!」
響「貴音は自分の事を振り向かせないといけないんだぞ! 笑顔を振りまかないと!」
貴音「……そうですね」ゴシゴシ
響「それじゃあ、事務所行こう!」
貴音「なぜですか?」
響「プロデューサーに仲直りの報告さ! 今回の件で色々迷惑かけたしな!」
貴音「そうですね、では」キュッ
響「ど、どうしたんだ貴音。手なんか繋いだりして……///」
貴音「響を振り向かせる第一歩ですよ。響にはわたくしの魅力に気が付いてもらわないと」
響(貴音の手、自分の手より大きくて、柔らかい……包み込まれるみたいで、なんだか安心する)
響「……/// それじゃあ行くぞ!」グイグイ
貴音「ふふっ、そんなに急がなくても」
貴音(あなた様、どうにかうまく行きましたよ。今後はどうなるか……わかりませんが)
貴音(響を、必ず振り向かせてみせます!)
END
以上で終わりです。
後半タイトルと関係なくなっちゃった気がしますが、ひびたかを書きたくてこんな感じになっちゃいました。
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