雪ノ下雪乃はあと一歩が踏み出せない (21)
短いです
陽乃「雪乃ちゃん♪」ガサゴソ プシュー
雪乃「ね、姉さん? ちょっとやめなさい、この」
陽乃「これも雪乃ちゃんのためなんだよー」
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八幡「うす」
雪乃「こんにちは、比企谷くん」
よし、いつも通り出来てるわね。…全く、姉さんのいたずら好きには困ったものだわ。
絶対に油断しないようにしないと、何を言ってしまうか分からないわね。
今朝の放課なんて、
女子「雪ノ下さん! 噂の彼とは実際どうなの?」
雪乃「誰のことかしら?」
女子「ほら、えーっと……ヒ、ヒキタニっていう男子!」
雪乃「彼はヒキタニじゃなくて比企谷くんよ。間違えないでほしいのだけど」
女子「ごめんごめん、でどうなの?比企谷君との仲は」
雪乃「彼とはもう1年一緒にいる仲で私としても仲は良い方だと思うのだけれど。信頼のおける男子は彼くらいかしらね」
女子「う、うわー!雪ノ下さんがそこまで思いつめてたんだあ!比企谷くんは幸せ者だねー!私、雪ノ下さんのこと応援するから!」
雪乃「…」
…全く、思い返してもムカムカするわね。
おそらく朝、姉さんが私に吹きつけたスプレーが原因なのでしょうけど、普段なら言わないようなことまで話してしまったわ。
たぶん、あのスプレーには口が軽くなるとかそういう効果があるのでしょう。
いったい、姉さんはどこでそんな道具を手に入れたのかしら?謎だわ…
それからは、不用意なことを言ってしまわないようになるべく黙っていたのだけれど、いつもの様に昼休憩に由比ヶ浜さんと部室で食事をとる際は本当に大変だったわ。
……なぜ、彼女はあんなに比企谷くんの話題ばかり嬉々として話すのかしら?
結衣「でねー、ヒッキーが~~~」
雪乃「…」
結衣「ほんと酷いんだよ!ヒッキーが~~~」
雪乃「…」
結衣「~~~」
雪乃「…」
結衣「ゆきのん、聞いてる?」
雪乃「…ええ」
結衣「でねー、ヒッキーが~~~」
無心よ無心。合気道での経験を活かす時が来たわ。
由比ヶ浜さんの話す比企谷くんについての情報はクラスでの彼の様子を知らない私にとってとても有り難く貴重なものなのだけれど、今日ばかりは早く終わってくれと祈る気持ちで一杯だったわ…。
そして、放課後。
部活を休みにするか迷ったのだけれど、いつも通り活動することにしたわ。
由比ヶ浜さんは補習で休みなので、この空間には私と比企谷くんの二人きりなのだけれど、彼も私もお喋りが得意な方ではないので、静かに読書をしている。好都合ね。
時折ページをめくる音の他は何もない、落ち着いた雰囲気。
比企谷くんもこの雰囲気に心地よさを感じてくれてるのだろうか?
…比企谷くんを見る。
…やっぱり、読書している時の比企谷くんは真剣な表情をしていてかっこいい。
…早く私の気持ちに、この好意に気づいてくれないかしら?
今まで数々の依頼を一緒に解決してきて、いつのまにか比企谷くんから目を離せないように、そして気がついたら好きになっていた。
ずっとそばにいたい、と初めて思った。
……ええ、比企谷くんにこんなに口が悪くて受け身な女は釣り合わないと分かってるわ。
もっと、比企谷くんには素敵な相手がいるはず。
だけれど、私にとっては比企谷くん以外にはあり得ないわ。
……"付き合ってください"の一言さえ言えない臆病な私には、叶わぬ望みね。
気づけば、部活の終わりが近づいていた。
ふう、姉さんのいたずらにも困ったものだけど今日は私の勝ちのようね。
比企谷くんの方を見ると、なぜか顔や耳を真っ赤にして俯いていた。
どうしたのだろう?気分が悪いのだろうか?
開いていた本を閉じ、片付けをする。
比企谷くんは動かないままだ。
雪乃「比企谷くん、時間も来たし部活は終わりよ」
八幡「…そうだな」
比企谷くんは素早く本をかばんの中につっこみ、席を立つ。
八幡「じゃあな、雪ノ下」
雪乃「ええ、また明日」
八幡「じゃあな、雪ノ下」
雪乃「ええ、また明日」
いつものように車でマンションまで送ってもらう。
今日は神経使いすぎて疲れたわ。
そこに、どこからか見ているのではないかと思うようなタイミングで電話が鳴る。
陽乃「雪乃ちゃん、今日どうだった?」
雪乃「疲れたわ。言う事をごまかせなくてずっと無言でいなければいけなかったもの」
陽乃「へえ…。で、雪乃ちゃん。比企谷くんにちゃんと告白できた?」
雪乃「何を言ってるのかしら?私が彼にそんなことするわけないでしょう?」
陽乃「気づいてないなら、まあいいっか。朝に雪乃ちゃんに浴びせたスプレー、あれって心の中で思ってることを全部口に出しちゃう効果があるんだよね」
陽乃「つまり、変なこと考えてないなら問題ないんだけど」
……携帯の電源を切る。
今日起きたことを思い返す。
…
……
…………
授業中に注意されなかったし、昼休憩に由比ヶ浜さんと食事した時も何も言われなかった。
つまり、もしも姉さんの言ってることが本当ならとても小さな、注意しないと聞き取れないような声のはず。
雪乃「聞いていた、のでしょうね」
部室でのことを思い返す。
体中が熱くなる。
心臓がバクバクと動き、呼吸も早くなり、立っているも辛い。
比企谷くんに私の想いを知られたかもしれないということよりも、なによりも比企谷くんからの返事が無かったということに泣き出しそうになる。
聞かれてない…ということはないのでしょうね。
机に置いてあるパンさんのぬいぐるみを手に取り、ぎゅっと抱く。
心を落ち着かせるためだ。
明日からどう比企谷くんと接するべきか、なるべく冷静に考えられるように。
今日も由比ヶ浜さんは補習があるそうだ。
最後の授業が終わったあと、私は駆け足で2年F組に向かう。
八幡「げっ」
私を目にした途端、失礼な反応をした比企谷くん。
今度、何倍にも返してあげるわ。今日?今日は急いでるのよ。
雪乃「こっちに来なさい」
逃げられないように比企谷くんの腕を掴んで歩き出す。
向かう先はいつも放課後を過ごす部室。
部室に向かう間、様々な生徒にジロジロと私と比企谷くんを見られたけど気にしないわ。
八幡「なぁ、どうしたんだよ、急に」
比企谷くんがなにか言ってるのだけれど、無視して歩む。
あと少し、あと少し。
部室のドアを開く。
雪乃「座って」
八幡「あぁ」
紅茶を二人分と市販のクッキーを用意して窓際の椅子に座る。
八幡「わざわざお前が迎えに来なくても行くつもりだったんだが」
雪乃「あら、私と一緒に部室に行くのは嫌だったのかしら」
八幡「そんなこと言ってないだろ。いつもはこんなことしないし、いったいどうしたんだ?」
雪乃「昨日」
昨日、と言った瞬間比企谷くんがビクっとなったわ。
これで昨日聞かれていたことが確定ね…
雪乃「私はあなたに色々なことを話してしまったわ」
八幡「……あのな」
雪乃「待って」
八幡「……」
雪乃「昨日、私が言ったことはもちろん本心なのだけれども、面と向かって言うことは出来なかったから、今日はちゃんと言わせてね?」
深呼吸をし、比企谷くんの目を見る。
雪乃「私雪ノ下雪乃はずっと比企谷くんのことが好きでした。私と付き合ってください」
昨日達した結論。
比企谷くんなら私がアクション起こさなければ、なかったことにしてくれるかもしれないけれど、私は行動を起こすことにした。
告白して、どういう結果であれ自分の気持ちに整理をつける。
ずっと受身でいても比企谷くんはきっと振り向いてはくれないでしょう。
私は動く必要があった。あと一歩踏み出す必要があった。
姉さんの助力のおかげというのが癪だけれども、そのおかげで私は比企谷くんに告白する覚悟を持てた。
姉さんは今頃ほくそ笑んでいるのでしょうね。
さぁ、目の前で顔中が真っ赤になって挙動不審な動きをしている男はどんな返事を返してくれるのかしら?楽しみだわ
おわりですー
ありがとうございました
すまんがちょっと疑問に思ったことがあるんだが一年たってるんだよな?時系列で言えば知り合ったのが二年時の春で
だとすれば三年に進級してるのでは?野暮な疑問ですまないが二年F組に向かうとあったので
すいません 書きたいことは書いたのでこれで終わりです
>>17
約1年ということで勘弁
(ど忘れしてたとは言えない)
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