京太郎「うわぁ、でっかい家ですねっ!」
照「わざわざ神代家にお願いしたからね」
京太郎「こんなところに泊まれるなんて…でも、なんで俺だけなんですか?」
照「……」
照「貴方には妹がいつもお世話になっているから、今日から少しは休んで欲しいって清澄の部長に頼まれた」
京太郎「そ、そんなこと…でも、お姉さんとご一緒できて嬉しいですっ!」
照「……」
照「ありがとう。さあ入って、もてなすから」
ここは小薪の本家から少し人里離れた土地、所謂別邸というやつである。
そう広さは小さな島一つありそうな位で、京太郎は目眩と同時にこれから始まる楽しいであろう夏休みに心を踊らせていた。
京太郎「し、失礼しますっ!本日からお世話になりますっ!!」
照「畏まりすぎ、気楽にしていい。ここには貴方が顔見知りの女子しかいないから」
京太郎「はぁ…」
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建物内を進むと京太郎は更に固唾を呑む。
豪華な装飾、趣きがある調度品、そして何より外観よりも広い。
京太郎「いいんですか、本当にこんな広い…」
照「かまわない。こんなことで動揺していたら先がもたない、自分の家だと思ってくれればいい」
そんな自分の家と言われても、京太郎は一般家庭の生まれだ、畏まざるしか術はなかった。
しかし今では全国強豪校として名を轟かせている清澄唯一の男子部員である、その適応力は相当なものだろう、すっかり寛ぎ始めた京太郎は辺りを見渡すと一言告げた。
京太郎「あ、他の皆さんは?」
照「……」
照「いろいろと女の子には準備があるから、もう少ししたらば来ると思う」
京太郎「えっ、女の子には準備って…」
照「…どうかした?顔、赤くなってるけど」
京太郎「いっ、いいいえっ!ただ近くに海岸あるし、皆で海にも行きたいなーって…」
照「……」
京太郎「あっ、いや…少し思っただけなんで気にしないで下さいっ!」
照「…皆が集まったら行こう、水着も持ってきたから」
京太郎「はっ、はいっ!」
照「それじゃぁ、皆に声かけてくる。お茶で良ければそこの急須に、お湯を注いだばかりだから後で飲んで」
急須と湯飲みを指差し伝えると照はその場を後にした。
京太郎「……」スズッ
京太郎「それにしてもお姉さん遅いな…やっぱり咲と同じく迷子になってるのだろうか?」
最初はお茶を啜っていた京太郎だが三十分、一時間と経てば流石に不安になってくる。
やはり姉妹かこれだけ広い邸なら迷子になる確立は高いだろう、そして迎えに行こうと立ち上がった瞬間ーーー
京太郎「…ん、なんだろ?眠く、なってーーー」
つい先程まで静かながらも人の気配がしていた部屋には、もう誰もいなくなっていた。
京太郎「…んんっ、あれ?…俺、どうして」
ゆっくり瞼を開いた京太郎、その口振りは寝起きのそれそのもので良く働かない頭で考えるが何も思い浮かばないようだ。
京太郎「ここは…っ!はぁ!?どっ、どうして!?」
しかしそれでも徐々に鮮明になってきた意識は周囲を冷静に分析し出したのである。
だからこそ気づいたといえよう、気づかなくて良いならどれ程良かった悪夢に。
思わず京太郎は叫んだ。
服はなくなり下着一枚になった挙句、まるで囚人宛ら分厚い手錠と鎖で壁に繋がれていたのだから仕方ないだろう。
京太郎「だっ、誰か、誰かっ、居ませんかっ!?」
こんな状態だ、恐怖心と早く外にと云う焦燥感が彼を襲った。
そしてその日、彼の声は誰にも届かなかった。
ここまで、続きは後日。
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