絵里「希の魅力といえば、やっぱりふくよかなこの体よね」

絵里「でもこんなに凍ってちゃそれがわからないわ」

絵里「水をかけてちょっとずつとかすといいんですってね」

絵里「それにしても、あなたのご両親もひどい人よね…」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

絵里「希を燃やして骨だけにしようだなんて」

絵里「そんなの、このエリーチカが許さないわ」

絵里「ここならずっと一緒に暮らせるわね、希」

絵里「はぁ…冷たい」

絵里「もう、希のねぼすけさん」

絵里「もっと私のことを見てくれてもいいじゃない」

絵里「今起こしてあげるわ」ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ

ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ…

絵里「…どうして」

絵里「ねえ、どうして」

絵里「これだけ水をかけてるのに起きないの？」

絵里「…」

絵里「やっぱり、お風呂にいれてあげないとだめかしら」

ｼﾞｬﾎﾟｯ…

絵里「ふふっ、うちのお風呂、久しぶりでしょ？」

絵里「ゆっくりつかっててね、希」

絵里「…」

絵里「…ねえ、希」

絵里「せっかくあったかいお風呂に入れてあげたのよ？」

絵里「なのになんで…」

絵里「なんでお礼も何も言わないのよ！」

絵里「ねえ！もう！なんとか言いなさいったら！」ﾕｻﾕｻ

絵里「はぁ…はぁ…」

絵里「そう…それならいいわ」

絵里「希は今日、私のベッドで寝かせてあげない！」

絵里「ベランダにでも出てなさい！」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

～次の朝

絵里「…ん」ﾊﾟﾁ

絵里「いつの間にか寝てしまったわね…もう、希のばか…」

ｷﾞｬｱ…ｷﾞｬｱ…

絵里「ん…何かしら」

ｶﾞﾗｯ

カラス「ｷﾞｬｰｯ!ｶﾞｧｰｯ!」ﾊﾞｻﾊﾞｻ

絵里「なっ…！」

絵里「こらーっ！」

カラス「ｸﾞﾜｧｰｯ!ｶﾞｧｰｯ！」ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻ

絵里「ま、まちなさいっ！」

絵里「このばかぁっ！希の…希の目を返してっ！」

絵里「希っ！」

絵里「ごめんなさい…ごめんなさい希…」

絵里「私がベランダに出ててって言ったばっかりに…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

絵里「すぐ真姫のところで診てもらいましょう、きっと大丈夫よ…」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

絵里「…」ﾋﾟﾀｯ

絵里「…待って、真姫は…」

絵里「希のことを燃やすの、賛成してたんじゃ…」

絵里「うん…確かそうだったわ」

絵里「希の、お別れの会…」

絵里「何がお別れの会よ！冗談じゃないわ！」

絵里「あれに出てた人なんてみんな敵よ！」

絵里「希…あなたは私が、ちゃんと手当してあげるから…」

絵里「もう少し、ここに隠れていようね」

絵里「何があってもあなたを火あぶりになんてしないから！」

絵里「私が、希のことを守ってあげるの！」

絵里「とりあえず…包帯巻いてあげるね」

絵里「これでよし…っと」

絵里「でもどうしよう…希、これじゃ私のことを見てくれない」

絵里「ううっ…希のあの目は、もう…」

絵里「…」

絵里「…そういえば、人間の目って…ふたつあったわね」

絵里「ふふ、ふたつあるってことは、ひとつはこういう時のためにあるんじゃないかしら」

絵里「ね、希」

絵里「安心して、すぐにあなたの目は用意してあげるから！」

絵里「すぅ…」

絵里「んっ！」ｻﾞｸ

絵里「っ！ああああああああっ！」ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

絵里「ああああああがぁっ！ああああああああーっ！」ﾎﾞﾀﾎﾞﾀ

絵里「いい痛い…痛いぃ…」ﾄﾞｸﾄﾞｸ

絵里「ふふ…ふふふふ…」ｶﾞｸｶﾞｸ

絵里「はぁ…はぁ…」

絵里「はい…あげるわ、これ…」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

絵里「はめてあげるわね…」ｸﾞｲｸﾞｲ

絵里「ふふっ…私とおそろいね、希」

絵里「私の目で私のことを見てくれるなんて…変な気分…」

絵里「…あれから何日経ったかしらね」

絵里「ね、希」

絵里「最近顔色が悪いわよ、どうしたの？」

絵里「それになんか…ひどいにおい」

絵里「やっぱり、ちゃんとお風呂に入った方がいいんじゃない？」

絵里「さて…」ﾌﾗｯ

絵里「ふふ、なんか私も…ふらふらするの」ﾊｧﾊｧ

絵里「熱でもあるのかしらね」

絵里「ほら希、立って」ｸﾞｲ

ｸﾞｼﾞｭ

絵里「…」

絵里「あ…あぁ…」

ｸﾞｼﾞｭﾙ…ｳﾈｳﾈ

絵里「なに…これ…」

絵里「ちょっと！希になにするの！」ｸﾞﾁｬ

絵里「希はあんたたちがいていいところじゃないのよ！」ｸﾞﾁｭｯﾌﾟﾁｯ

絵里「離れなさいよこのうじむしっ！」ﾎﾟｲﾎﾟｲ

絵里「はぁ…はぁ…全部いなくなったかしら…？」

絵里「早く…お風呂に入って、全部すっきりさせましょう、希」ｽﾞﾙﾙ

絵里「はぁ…なんだか体が…こんなに、重かった、かしら…」ﾌﾗｯ

絵里「…」ﾄﾞｻ

絵里「はぁー、はぁーっ…」

絵里「だめ…なんか…体が…動かない…」

絵里「すっごく…熱い…」

絵里「希…ごめんね…」

絵里「私、こんなんじゃ…」

絵里「だ…め…」

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

海未「絵里、どうして…」

穂乃果「…」

ことり「ひっく…ひっく…絵里ちゃん…」

海未「お葬式会場から希を連れ出して…」

海未「自分の目をえぐって、それがもとで敗血症…」

海未「私には、絵里が何を考えていたのかわかりません…」

穂乃果「…勝手すぎるよ」

穂乃果「ほんとに勝手すぎるよ…絵里ちゃん…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

海未「はい…私もそう思います…」

海未「残された私たちが…いったいどんな気持ちになるか…」

海未「考えられなかったあなたではないでしょうに…っ」

ことり「うぐっ…うわぁぁぁん…」

ﾊﾞﾀﾝ

花陽「たっ、大変ですーっ！」