誤表記が多すぎたので立て直しました。
誠に申し訳ありません。
最初のほうは前スレのものと同じものなので、最新の更新は夜をお待ちください。
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「ああ、良い気持ちだ。とても、良い気持ちだ」
ある青年が、眠りにつきました。
「銀河ステーション 銀河ステーション」
その青年は、気付いたら、夜の軽便鉄道に乗っていました。美しく光る窓の外には、白や青色の星ぼしが輝いています。
「この列車は、どこにゆくのですか」
「地図をみてごらん。載っているだろう」
青年はコートのポケットから、黒く透きとほった黒曜石の地図を見つけました。
「ええと……」
列車は、青年をのせて銀河をはしってゆきます。
窓の外にはきらきらと輝くプリオシン海岸や、鷺がたくさんとまっている天の川の岸辺が過ぎていきます。
やがて、列車は金色に光るお月さんへと、吸い込まれて行きました。
「わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です 」
春と修羅 序より
Fate/extra ー宮沢賢治と月の聖杯ー
序章 午后の教室
「……ですから、この地層は1500万年も昔の物だということが実証できるのです」
教師は黒板にかりかりと断層の図を書き付けています。其を生徒たちは集中してノートに写していて、シャープペンシルの音がしづかな教室に響いています。その様子を教師は優しく微笑みながら眺めているのでした。
教師はそうしながらいままでのことを思い起こしていました。
彼の名は宮沢賢治。岩手の裕福な家に生まれ、詩や童話を作りながら農学校で教師をし、教師を辞めた後は、農民のみんなの肥料の調合の相談を受けたり、会を設立して、芸術を通して村を明るくしようとして過ごしましたが、遂に肺病に倒れ、若いうちに死んでしまった筈でした。しかし、気付いたらこの学園で地学と生物を教える先生になっていたのでした。
彼の頭のなかにはこれまでの世界がたどってきた道筋と、聖杯戦争についての知識、自分が宮沢賢治の記録を元に構成されたNPCである事などが入っていて、賢治は最初は仰天しましたが、次第にその事実を受け入れ、この月海原学園で教師として過ごすことと決めました。彼の記憶が正しければこれから聖杯戦争が始まるはずでした。
賢治は授業を終えると、暫くは暇ができたので中庭で景色を眺めてました。皆が授業から解放されて、廊下を歩きまわっているのが見えます。すると、同じ教師である大河先生がやって来ました。
大河先生「宮沢先生、何をされているんですか?」
賢治はいつもの微笑みをしながら大河先生の方に向き直ります。
賢治「こうして中庭を眺めているんです。あの花壇は私が作ったんですよ」
大河先生「へえ、もしかしてこの中庭って宮沢先生が管理なさっているんですか?」
賢治「ええ、肥料などを少しやったり、よく日が当たるように邪魔な葉を切ってやったりしています」
大河先生「それはご苦労様です」
二人はしばらくむごんのままでいましたが、大河先生が不意に賢治に質問しました。
大河先生「そういえば、宮沢先生ってあの宮沢賢治みたいですよね」
賢治は一寸ぎくりとしましたが、よく言われますと言ってやり過ごしました。
賢治はこの学園では、宮沢賢の姓はそのままに、別の名前を名乗っています。
賢治は次の授業がある大河先生を見送ると、本当に彼女はNPCなのだろうかと疑いました。それほどに違和感のない振る舞いだったからです。そうして自分がそもそもNPCだと言うことを思いだし、少し笑いました。
賢治は、楽しそうに話す生徒を見ていると、決まってきゅうと胸が締め付けられる気持ちになりました。あの子達のなかで何人が死んで行くのだろう、と考えてしまうからでした。賢治にはなにか彼らに出来ることはないかと考えましたが、賢治にはせめて楽しく、面白い授業をすることしかできまん。ですが、そのために彼の授業は大変人気がありました。
賢治は、学校の敷地の一角に四畳半の、小さな茅葺きの小屋をもち、そのそばの畑で野菜を育てていました。
そうして出来た野菜を、食料を欲しがっていた、病弱な生徒として通っている桜のところに届けたりしていました。というのも、賢治は他のNPCとは違い自我がしっかりとしていて、それは、聖杯戦争が始まった後に何やら重要な役割を果たす桜とにている存在らしかったので、賢治と桜の間には親交がありましたが、聖杯戦争が始まると彼女はマスター達に弁当を支給しないといけないそうで、そのための練習に必要だったからでありました。
保健室にいる桜のもとへ、ざるに取れたての人参なぞを入れてもって行くと、彼女はとても喜ぶのでした。賢治は嬉しくなってにこにこ笑いました。
その日も、賢治は水道のみずで洗ったほうれん草を桜のもとへ届けにいきました。そうしてあれこれ話していると、どうやら聖杯戦争の予選はもうすぐ終わると言うことを桜は言いました。
賢治はつい悲しくなってうつむきました。
賢治「たくさんの人が、死にますね」
桜はそのようすに少し驚いたようでした。
桜「悲しいのですか」
賢治「ええ、これももしかしたらNPCの仕組みに組み込まれたことなのかもしれません。でも、悲しいです」
桜は黙ったままでいます。
賢治「もし、私がいま皆に真実を明かしてまわったら、どうなるのでしょう」
桜「恐らく、貴方の存在は消えることとなります。それに、そもそもできないでしょう」
賢治「何故です」
桜は寂しそうに笑いました。
桜「何故って、貴方はNPCでしょう。そもそもそんなことを考えることがおかしいんじゃないですか」
賢治は黙ってしまいました。
桜「それに…どちらにせよ残るのは一人だけなのですから、変わりませんよ」
桜はお野菜ありがとうございました、と礼を述べると、別れ際にこういいました。
桜「貴方は、さもすれば私とも違う存在なのかもしれません…」
賢治は、なにもできない悔しさを、いつもの微笑みで隠しながら廊下を歩いて帰りました。
その夜は、賢治はある生徒に肥料の計算方法について講釈していました。その生徒は賢治のことを慕っていて、庭仕事や農作業なんかをよく手伝ってくれる人で、賢治も目をかけていて、花や野菜の苗、種をあげたり、こうして求められれば講義をしてあげたりしていました。今日もそうしていましたが、日にちが変わる時間帯になったので、さすがにいけないと思って賢治は生徒を家に帰らせることにしました。
生徒は小屋を出たあと、暫くは空を見上げていました。
賢治は、生徒が星空に感動しているのだと思いました。実際、ここの星空はセラフの電脳空間の幻とはいえど、条件さえよければ、賢治の出身地であった岩手の、鈴原高原や小岩井に並ぶ美しさを見せました。今日は特にきれいな日で、本当に牛乳を流したように白く光る天の川や、青白かったり赤かったりする星ぼしが、沢山、空一面を覆っていました。
賢治「今日は、きれいな星空ですね」
生徒は賢治の方を向くと、言います。
生徒「すべて、思い出しました」
賢治「思い出したって、まさか」
賢治は生徒が、以前の記憶を取り戻したことを察しました。
生徒「でも、遅かったようです」
生徒は光る粒に変わっていき、足の方からきらきらと輝きながら、消えていきます。
生徒「…あなたといた時間は、とても、楽しいものでした」
生徒が消えていくのと同時に、星空を0と1の記号がおおっていきます。
生徒「……本当に、ありがとうございました」
やがて、星空が完全に0と1の記号に駆逐されてしまった頃には、生徒は完全にいなくなってしまいました。
生徒がいた場所には、いつか賢治が生徒にあげた花甘藍の種のみが残っています。
これが。聖杯戦争が、本格的に始まった合図でした。
賢治は、生徒が大切に持っていた種を黙って畑の一角にまき、水を少しやりました。
そして、小屋で布団に入って寝ました。
賢治は、やがて自分が泣いていることに気づきました。
夜は、星に代わって点滅する記号とともに、しづかに更けてゆきました。
翌日、賢治は桜のもとへ、自分のNPCとしての役割を確認するためにむかいました。
廊下にいつも溢れていた生徒はまばらになり、賢治は、いなくなってしまった人たちのことを考えて悲しくなりました。
保健室にいた桜は衣装が代わり、マスターのサポートという役割を果たしていました。
賢治は軽く挨拶をすると、今日の分の野菜を渡します。
賢治「聖杯戦争が始まりましたか」
桜「ええ、これから私たちNPCはマスターのサポートに当たることになります。私はマスター達の怪我の治療、食料の配給。貴方はマスター達のメンタル面でのサポートをよろしくお願いします」
賢治「……殺し合いを助けるのですか」
桜「……それが役割ですから」
賢治は再び悲しくなりました。
賢治はその日の弁当を食べるために屋上に来ていました。するとどうやら二人の生徒が話し合っているようでした。賢治は、二人の会話が終わるのを待ってから話しかけました。
賢治「やあ、こんにちは」
すると、少女は驚いたように振り返りました。
「っ、NPCね…」
賢治は微笑むと頷き、自分の役割を説明します。少女は納得したようすです。
凛「これから宜しく、宮沢さん」
賢治「ええ、よろしくお願いします」
男の方は岸波白野といいました。賢治はふと、食べようとしていたお握りのことを思いだし、二人にあげることにしました。
賢治「どうぞ、お食べください」
凛「いいの?」
賢治「私には多いですから」
賢治は実際お握りを作りすぎていました。桜にあげようと余分な二個を持ってきていたのだですが、渡しそびれてしまったのでそのままになっていたのでした。
そのあと三人はお握りを頬張りながら話をしました。凛にとっては他のマスターと一緒に食事することなど論外でしたが、賢治の不思議な穏やかさによって、このときばかりは警戒を解いていました。
賢治「私は、実のところ辛いのです」
凛「なにが?」
賢治「人を沢山殺す、手助けをすることが」
凛は少し驚いたようすです。
凛「それがいやなの?」
賢治「ええ、役目ですが、ほんたうはやりたくないです」
凛「NPCにすぎないAIがムーンセルの命令に反発するなんて…そんなことありえるのかしら」
白野は、この会話に聞き入っています。
凛「もしかしたら、精神構造が役割のために、他のAIよりも高度に再現されているのかも…、もしくは、バグか」
賢治は黙ってお握りを食べ終わり、そして考え込んでいる凛に声をかけました。
賢治「ともかくも、わたしは役目をはたします。なにか相談事があったら遠慮なく私の小屋に来てください」
そういって賢治は、微笑みました。
二人と別れた賢治は、帰る途中にある男と出会いました。
彼の名は言峰。この聖杯戦争を監督する役割を持った神父でした。
言峰神父「やあ、宮沢さん。仕事は順調かね」
賢治は、微笑んで会釈をします。
賢治「お陰さまで、まだ相談に来る生徒はいませんが」
言峰神父「……明日には人が沢山来るようになるだろう」
賢治はうつむきます。明日には、沢山の、人とサーヴァントを殺した生徒が出てくるはずだったからです。賢治は、それらの生徒達に一種の哀れみを抱きました。
また、自らが望まずにマスターとなった人もいるでしょう。そんな、生きるために罪を背負わされた生徒が、賢治はひどくかわいそうに思いました。
言峰「明日からは頑張ってください。では」
そういって言峰神父は去っていきました。
賢治は、明日までに死ぬ生徒と、罪を負わされて生きることとなる生徒を想いました。そして、この悪魔のような戦争を、心の奥で恨みました。
もしたくさんのいのちの為に、
どうしても一つのいのちが入用なときは、
仕方ないから泣きながらでも食べていい、
そのかはりもしその一人が自分になった場合でも敢えて避けないとかう云うふのです。
宮沢賢治「ビヂテリアン大祭」より
第一章 ポラーノの広場
翌日、早速小屋の賢治のもとへ、三人のマスターがやって来ました。三人とも、アリーナに居た敵マスターを殺した人たちでした。皆俯いて、暗い目をしていました。
三人とも賢治に、自分が敵マスターを殺したのは正しい事だったのだろうか、と尋ねました。
賢治は、自分が生きるために仕方がなく殺したのだからしょうがない。だから、もし聖杯を手にいれたのなら、彼らの死を無駄にしない、人々が皆幸福になるような使い方をしなさいといいました。
彼らは、皆、夜空に赤く燃えるさそりなのだと賢治は思いました。
彼らは、自分が生きるために他の生物を殺し、その結果罪の意識に苦しんでいました。
さそりとその他の虫けらと、人間と人間では違うと云う考えもありましたが、いのちの価値というのは優劣が着くものなのだろうかと賢治は考えていました。賢治にとっては、毎日鳥の肉を食べるのも、人を殺すのも同じことだったのでした。賢治は、すべてのいのちに対して平等でした。
賢治には、そもそも生きること自体が罪に思えました。その上、人を殺して聖杯を手に入れて、自分の願望を叶えようとするのだから、賢治にはマスターたちは酷く強欲で、恥知らずに思えました。そうして、その手助けをしている自分が、酷く醜く見えました。
賢治は、畑に降りて桜にあげる野菜を収穫して、水道で洗っていました。洗っている最中に、自分も罪を重ねながら生きているのだと感じられて、先程までマスターを醜く思っていた自分が、酷く滑稽に思えました。これでは、懲役が五年の囚人が、懲役が十年の囚人を嘲笑っているのと同じことです。生きるために生物を殺す自分と、聖杯を手にいれるために人を殺すマスターとでは、そこまで差はなかったのだと賢治は思いました。
廊下を通りかかると、どうやら対戦相手の発表が行われているようで、賢治はその人混みのなかに昨日の白野の姿を見つけました。しかし、話しかけることはできませんでした。そして、いつものように保健室にむかい、桜に大根を届けました。彼女はにこにこして礼を言っていましたが、賢治にはどうしても其それを素直に喜ぶことができませんでした。
小屋へ帰る途中、賢治は凛に会いました。凛はいつものように気丈に賢治に接します。
凛「ちょっと、どうしたのよ、辛気臭い顔して」
賢治「……貴方たちマスターは、どんな思いで戦争に望んでいるのですか?」
凛「そりゃあ……勝って聖杯を手にいれてやると思ってやっているわよ」
賢治「では、負けたときはどうするのですか」
凛「その時は、大人しく死ぬこととするわ。……私の命をもってして、その人を生かす」
凛はそういって笑います。
凛「そうして、その人に思いを託すの。託し託されてきた思いの繋がりが、聖杯を手にする力になるのよ」
凛は、勿論最後に聖杯を手にするのは私だけどね、とつけたして、去っていきました。
賢治は、凛の理論に、自分の考えを重ねて、納得しました。
「もしたくさんのいのちの為に、
どうしても一つのいのちが入用なときは、
仕方ないから泣きながらでも食べていい、
そのかはりもしその一人が自分になった場合でも敢えて避けないとかう云うふのです」
宮沢賢治「ビヂテリアン大祭」より
賢治は学校の物置で探し物をしていました。
それは黒く光る、ガラスでできた星座早見でした。埃まみれのそれを賢治は探しだすと、これをつかって星空を見上げてみたいと思いましたが、今は星空は記号におおわれてしまい、なくなっています。聖杯戦争が終わると同時に賢治はいなくなってしまうはずでしたから、もうあの星空を見ることはできないのかと思って、少し悲しくなりました。
賢治は、星座早見を綺麗な布巾でよく拭いたあと、小脇に抱えて小屋に持ち帰って、壁際に飾りました。
次の日、賢治は図書館で本を読んでいました。特に特殊相対性理論と鉱物についての本を読んでいます。鉱物の本には、色鮮やかな写真が入っており、賢治の目を喜ばせました。
すると、其を横から覗きこむ可愛い四つの目がありました。
その少女たちはまだ幼く、ふんわりとした色違いのドレスで身を包み、まるで童話の本から飛び出してきたかのような感じを賢治は受けました。
賢治は二人に話しかけられました。
「お兄ちゃん、何読んでるの?」
「宝石のご本?」
賢治「これは、鉱物についての本です。ええと、女の子が好きそうなのは…アメヂストやオパールですかね…」
賢治はふと思い立って、名も知らぬ二人に、アメヂストとオパールが載ったページを見せてあげます。
「きれい!」
「素敵!」
どうやら喜んでくれたようです。賢治はなんだか嬉しくなって、そのあとも翡翠やら琥珀やらのページを三人で見ました。そして楽しく話し合いました。
そうしているうちに、一日は過ぎて行きました。
やがて、猶予期間の四日目になりました。賢治のもとには顔を見せるだけのマスターや、事情を抱えたマスターが沢山来ました。そんな彼らに賢治は、優しく接しました。しかし、賢治は聖杯戦争という仕組みが、内心いやになっていました。うまく使えば皆を幸福にできる聖杯でしたが、聖杯戦争の参加者の中でそんな願いを抱くマスターは希で、皆自らの欲望のために聖杯を求めていました。そんな彼らが、凛達とは違って、やっぱり醜く見えるのでした。同時に、その俗っぽさに、人間性を煮詰めたような物があるのを感じとり、ああ、彼らはまさしく人間なのだなと思いました。同時に、無欲で、欲に対して潔癖とも言える自分の有り様を鏡で写してみたような気分になって、彼らの人間性を受け入れられない自分が、少し悲しくなりました。
はい、ここまで
続きは今夜です
少しやります
くらしが少しぐらゐらくになるとか
そこらが少しぐらゐきれいになるとかよりは
いまのまんまで
誰ももう手も足も出ず
おれよりもきたなく
おれよりもくるしいなら
そっちの方がずっといいと
なんべんそれをきいたらう
宮沢賢治「火祭」より
賢治は、生前村で羅須地人会という会をやって、農民の人達に芸術を推奨したり、肥料をより良いものにしたりして、村を少しでも明るくしようと試みました。しかし、それはとうとう最後まで受け入れられることはありませんでした。村の人たちの、閉鎖的な考え方は中々変わるものではなく、賢治は、決して村の人たちから疎まれることはなかったけれども、一人疎外感を強く感じていました。そして、人の俗っぽさを受け入れられない自分を発見し、苦しみました。
しかし、賢治は諦めてはいませんでした。まだ彼は希望を持っていました。
賢治は、人を殺した罪悪感に苛まれているマスター達に、人々の幸福を願うように、説得を続けていました。
「こんどは場所と方法をまったく変えへてもう一度やってみたいと思って居ります」
賢治は、羅須地人会の活動が挫折を迎えたあと、病床でこう言っていました。彼にはまだ、希望がありました。
今度こそ、賢治は、命のやり取りに励むマスター達の心を、明るく照らして見せたかったのでした。
賢治「……だから、殺した人の死を、生きている人々を幸福にするのに役立てるのです。それが、せめてもの罪滅ぼしになるんじゃないでしょうか」
賢治はどこか晴れ晴れとした顔つきになったマスターを見送ると、ゆっくりと椅子に座ります。賢治は、たしかな手応えを感じていました。
賢治の活動が聖杯戦争を少しずつ変えていっています。
賢治の言葉は、人を殺したマスター達の心の暗闇を照らす、まるで、月の光のようなものでした。
とうとう神父の放送が響き渡り、すべての組のマスター達の決闘が終了したことを告げました。それは何十人もの人が死んだという合図でもありました。賢治は小屋にいながらにして、黙祷を捧げました。目の前で大量に人が死んで行くのは、直接見ていなくても、辛いものが在りました。
やはり賢治にとって、聖杯戦争とは酷く残酷なものでありました。賢治は、やっぱり聖杯戦争は間違っている事だと確信しました。
とりあえずここまで
こまったな、イベントが相変わらず思いつかない……
翌日、賢治はいつものように桜へ野菜を届けたあと、廊下を歩いていると一人の少女とで出会いました。褐色の肌をした、可愛らしい眼鏡の少女です。彼女は誰かを探しているようでした。
「宮沢という人を探しているのですが…」
賢治「私が宮沢です。どうかしましたか?」
「貴方はマスターのメンタルを補助する存在だと聞いた。NPCのようだけども人間の精神を持っている。人間性の参考にしたい」
彼女は名前をラニ
と言い、人間性というものをホムンクルスのため持っておらず、そのため賢治のそれを参考にしたいということでした。賢治は少なからず力になりたいと思いました。
賢治「わかりました、私なんかでよければ力になりましょう」
賢治とラニは賢治の小屋に来ていました。賢治は机の引き出しからいくつかの鉱物を取り出すと、ランプの光で透かして見せました。
緑青色にアマゾストンが光り、トパァスは辺りを金色に照らしました。
賢治「綺麗なものを綺麗と感ずる心も人間性の一部です。このトパァスなんかは本当にきれいでしょう?」
ラニ「綺麗…感じる…心…」
ラニは、トパァスとランプの光りが起こす現象をじっと見つめていると、心が何だかざわつくような、気分が少し高翌揚する感覚を覚えました。それは紛れもなく、「綺麗と感じる心」の作用によるものです。ラニは早くも人間性の一欠片を、賢治から受け取ろうとしていました。
賢治はなんだか楽しくなって、かけてあった星座早見を取り外しましたが、肝心の星空は見ることができないことを思い出して、少し残念そうな顔をしました。賢治にとって一番感動する景色は、やはり空気のすんだ日の、大空に散った星ぼしの姿でした。
賢治「星空はもっと綺麗なのですけれども、残念ながらもう見ることはできませんね…」
ラニは、顔をあげて賢治を見つめると、何やら作業を始めました。暫く彼女はぶつぶつと何かを唱えながら端末をいじってたかと思うと、突然彼女を中心として草原が広がり、小屋は空には満天の星の姿がある空間へと変貌しました。
ラニ「ムーンセルの記録していた星空のデータを元に構成しました」
賢治は突然の事に驚いていましたが、ラニにとっては占星術を学ぶ上では飽きるほど見た物でした。
賢治「あれは蠍ですね、赤く燃えている。あの大河は天の川だ。綺麗だなあ」
賢治は星座早見をくるくると回しながら見ていましたが、ラニの方を向いて空の一点を指差すと、星座を使って、即興で物語を作って語って見せました。ラニはその話を聞くと、また胸がざわざわして、ついついその続きを頼んでしまいます。ラニは不思議と、時間がたつのを忘れて、賢治と話をしました。
ラニは、この時初めて「楽しい」という感情を覚えたのでした。
ラニ回でした
ここまでー
今夜10時からやりますー
あわわ…
すみません11時からにします
賢治は翌日、気まぐれに、教会へとやって来ていました。その壇上には、二人の女性が居ます。彼女たちは「魂の改竄」といって、サーヴァントの能力をあげる役割を持った人たちでした。賢治は彼女らから話しかけられました。
「……サーヴァントが一人でここに来るなんて珍しい」
賢治「サーヴァント?私はNPCですよ」
「え?……そうか、いや、なんでもない」
賢治「はは、精神構造が人間に近くて驚きましたか」
話しかけてきた彼女は橙子と言い、その傍らにいたのは青子と言う人でした。賢治は彼女の発言に少し首をかしげましたが、一人で納得しました。
賢治は二人に軽い自己紹介をして、そのあと世間話などをしました。主に日々の暮らしや聖杯戦争についての事を話しました。
橙子「この先、貴方はここに再び来ることになるだろう」
賢治が教会を出るとき、橙子はそう意味深なことを賢治に言いました。
賢治は、なんだか不思議な人だったと思いました。
賢治はその後、売店でサイダーを買い、飲んでいました。今では普通の農家の人は、一昔前の、貧困にあえいでいた農民とは違い、人並みの生活を送り、他の商人や勤め人とあまり大差ない生活を送れているとのことだったので、賢治は、貧しい農民の人々に負い目を感じ、贅沢をすることを過敏に避けていた時とは変わり、人並みの贅沢はするようになっていました。でも、西欧財閥がもたらしている飢餓や貧困に心を痛めていることは間違いないことでありました。
賢治はサイダーの瓶を覗きながらそんなことを考えていると、まあるい瓶の底が地球に見えて来ました。賢治は暫くその小さで青くすきとほった地球を眺めています。
そして、できることならばもう一度、地上で生きてみたいと思って、寂しく笑いました。
11時半からやりますー
賢治がそうしていると、やがて白野がやって来ました。彼は賢治にようがあって来たようでした。
彼は賢治に悩みを打ち明けました。
賢治「……聖杯に願うことがない…ですか」
白野「……」
白野は記憶喪失らしく、気付いたら聖杯戦争のまっただ中にいたようで、その為これまでに生き残るために戦ってきたが、本当にそれでいいのか悩んでいるとのことでした。
賢治は瓶をことりと音をたててそばに置くと、しづかに口を開きます。
賢治「…それは貴方がこれからの人生のなかで知っていくものです。私にはそれを教えることはできません」
白野「そう…ですか」
賢治「でも、貴方がもし正しく、人々のさいはいになる願いを抱くのならば、私は貴方を応援させてもらいますよ」
賢治はそう言って目を閉じます。白野は賢治に少し励まされたようでした。
賢治は黙って売店でサイダーを二本買い、彼と彼のサーヴァントの、狐耳の少女にあげました。二人は仲良くそれを飲みました。そのようすを、賢治は優しく笑って眺めていました。
賢治はその夜、自分の小屋のなかで、なすの漬け物と玄米ご飯と、納豆を夕食にして食べていました。賢治は酷く粗食で、同時に、ベジタリアンでした。それは、賢治の中の、他者への過剰なまでの罪悪感と言う、ある意味では病気とも言えるべきものが引き起こしていました。
(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい)
宮沢賢治「よだかの星」より
賢治はその夜、夢を見ました。この世界に来て始めてみる夢でした。
夢に出てきたのは、あの、賢治のことを慕っていた少女でした。賢治は、口を動かしますが、声は出ず、少女に触れるとふっと金色の粒に変わって消えてしまいます。
辺りに風が吹いて金の波をざあっと起こします。賢治はいつの間にか、きんいろにかがやく小麦畑の中央にたっていました。
賢治は暫くその場に立っていましたが、やがてしづかにその場を去ることに決めました。
賢治が数歩踏み出すと夢はどんどんかき消えていって、やがて目が覚めました。
今日はここまでー
キャス狐さん初登場だったりする
サンテグジュペリとストパン……
なんでもない
某星の王子さまの作者とストライクウィッチーズを掛け合わせたら楽しそうだと思っただけなんだ。うん。
11時から始めます
彼郵便飛行の飛行機乗りで戦間期を郵便積んで飛んで第二次世界大戦で偵察機乗って偵察しにいって行方不明になった人だもの
何故か頭に胸熱展開が浮かんでくるんだ
国柱会は出そうかな…どうしよう…
賢治はその次の日、再び教会へと足を運んでいました。この間の橙子の言葉が気になったからでした。しかし姉妹は居らず、代わりに白髪白髭の男性が、熱心に祈りを捧げていました。
彼は祈るのをいったんやめ、賢治の方を振り向きます。賢治は軽く会釈をして挨拶しました。
「マスターか」
賢治「いえ、NPCです。宮沢といいます」
彼はダンという名前でした。彼は賢治の目を覗きこむと、しづかに体を前に戻しました。
賢治は急に、彼について興味が湧きました。老人のマスターとは、学生の程度の年齢の人が多いこの聖杯戦争で、珍しかったからでした。
賢治は、いつも自分のもとへとやってくるマスターにそうするように、ダンに問いかけました。
賢治「……貴方は聖杯に何を願うのですか?」
ダン「……それをいきなり聞くかね」
ダンは苦笑します。賢治は、役割上癖になっていてしまって、と言い訳しました。ダンは、いいさ、と言って顔を上げます。
ダン「……死んだ妻を、取り戻したい」
賢治は、突然ダンから突き放されたような気がしました。
ダンは、賢治の目を覗きました。
ダン「……本当に、NPCとは思えないよ。私と、何処か似た目をしている」
ダンはそう言って教会を去っていきます。賢治は、後に残されて、ダンの言葉を、頭のなかでぐるぐると考えていました。
賢治は、誰かを特に愛すると言うことをしない人間でした。賢治は、自分が愛するもののために、誰かが不幸になることが嫌だったのでした。勿論自分が幸福になってしまったがために、他の人が不幸になってしまうのも嫌だったので、自らの幸いを求めようとも思いませんでした。それゆえに、愛する妻を取り戻したいというダンの言葉は、賢治の胸に突き刺さりました。賢治は、ダンに拒絶されたような気分を抱きました。
賢治が、そのような考えに至ってしまったのは、一重に村の閉鎖的な環境と、自分の家が古着商で質屋だったことが原因でした。
村の人々が貧しくなればなるほど、自分の家の店に金を借りに来て、自分の家は益々富みました。賢治は、いつしか、誰かが幸福になれば、不幸になる人が必ず出てくるという考えを持つようになってしまいました。彼の考えは、ある意味では歪んだものでした。
それでも、賢治は、誰もが幸福になれる未来を夢見ました。
この聖杯戦争は、生き残るために人を殺さなければいけないという、賢治にとって地獄のような場所でした。けれども、彼は皆が幸福になれる未来を望んだのでした。
そして、賢治の夢は、確実に皆の心に芽を出していました。
今日はここまでー
第二章 もう少ししたら始めます
「とし子とし子
野原へ来れば
また風の中に立てば
きつとおまへをおもひだす
おまへはその巨きな木星のうへに居るのか
鋼青壮麗のそらのむかふ 」
宮沢賢治「風林」より
第二章 業の花びら
いったん中断します
やっべ資料が紛失した…
もう少しお待ちください
始めます
賢治は夢を見ていました。
瞼のうらの暗闇がだんだんと明るくすきとほり、賢治の目の前に風景を描き出します。
そこは町のようでした。建物は皆粗末で、土を固めて作った建物に、ぼろをまとった人々が住んでいます。すると、王さまのような人が、御輿に担がれてやって来ました。皆道端に平伏して迎えます。
すると、そのうちの誰かが粗相をしたらしく、取り巻きの兵士に引っ立てられて行きました。周りの人々は、平伏しながらも視線をそちらにやり、気の毒そうにしています。
賢治(ああ、此れは現代の事ではないな…紀元前の、オリエンタルの何処かの情景だな…)
風景は目まぐるしく変わり、何処かの都市になりました。建物は先程とは違い、石でできています。人々の服装もやや良くなっていました。
すると、賢治が眺めていた場所を、人だかりが通過してきました。人々は大きな十字架を担ぎ、そこには可憐な少女がくくりつけられています。人々は口々に彼女を罵り、石を投げつけます。
賢治(あれは西洋の魔女狩りと言うものだろうか、ひどいことをする)
やがて、景色はまた変わり、そこの建物は立派な石と煉瓦の作りになっていました。
人々はそれぞれ銃や旗や剣を振りかざしながら兵隊と衝突します。
賢治(あれは、何処かの革命だろうか。人がいっぱい死んだのだろうなあ)
賢治はそこまで思って目を覚ましました。
辺りはまだ薄暗く、賢治は冷たい空気を胸一杯に吸い込みます。そうして、小屋から出て、畑仕事をしに出掛けていきました。
賢治はその日の昼、珍しく食堂にいました。たまには滋養をつけなければならない。以前のように粗食ばかりして体を壊してはいけないと思って、好物の天ぷら蕎麦を食べていました。横を見ると、監督役の神父がまっかな麻婆豆腐を食べています。賢治は、其を横目で見ながら天ぷらを頬張りました。
すると、賢治の横に座る少年がいました。彼は鮮やかな金髪をしており、賢治は思わず目をひかれました。
少年は賢治に話しかけてきました。
「お初にお目にかかります。マスターのレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイと申します。よろしくお願いします。宮沢さん」
賢治はその名前に覚えがありました。NPCとして入力された記憶の中に、彼の名は、世界を支配する西欧財閥の次期当主としてありました。
賢治は思わず目を見開きます。
賢治「あなたが…でもなぜ…」
レオ「西欧財閥は聖杯が一般人の手にわたることを危惧していましてね」
賢治「そうですか…」
賢治は、妙な心持ちになりました。
賢治は西欧財閥に恨みがあるわけではありません。しかし、凛の話を聞く限りでは、西欧財閥は徹底的な管理社会を構築し、人々を縛っていると言っていたので、賢治は彼からいい印象は受けませんでした。しかし、彼から発せられる謙虚さは、賢治の心に働きかける何かがありました。
賢治は彼に聞いてみたいことがありました。
賢治「貴方は…世界をどうしたいと考えているのですか」
レオ「…皆幸せに生きることの出来る世界にしたいと考えています」
賢治「それが、人々を徹底的に管理するということで実現されるのですか」
賢治はそう言って蕎麦を啜ります。レオは少し考えているようでした。
レオ「いまのところはそうです。今地上では紛争が頻発しています。それだったらきちんと管理をして、人々が不幸せになることのないようにするべきでしょう。でも、変化が必要だとは思っています。管理社会のせいで、技術や文化は停滞してしまっていますからね…」
賢治は、レオに対する印象を改めました。彼は彼なりに、人々の幸福とはいかなるものなのかを、きちんと考えていたのでした。
アラムハラドが云いました。「そうだ。私がそう言おうと思っていた。すべて人は善いこと、正しいことをこのむ。善と正義とのためならば命を棄てる人も多い。おまえたちはいままでにそう云う人たちの話を沢山きいて来た。決してこれを忘れてはいけない。人の正義を愛することは丁度鳥のうたわないでいられないと同じだ。セララバアド。お前は何か言いたいように見える。云ってごらん。」
小さなセララバアドは少しびっくりしたようでしたがすぐ落ちついて答えました。
「人はほんとうのいいことが何だかを考えないでいられないと思います。」 」
宮沢賢治「学者アラムハラドの見た着物」より
賢治は、レオがサーヴァントを引き連れて居なくなったあと、延びてしまった蕎麦を食べながら考えていました。
賢治(時代時代によって、人々が考える幸福というのは変わるものなのだ。彼のその考えを否定することは私にはできないのだ)
今の、地上の管理社会は、賢治が今朝見ていた夢の延長線上にありました。賢治が見た夢の中の三つの都市の人々が考える幸福は、みなちがっていたのでした。
一つめの都市の人々は、王さまに支配されることこそが幸福と信じ、
二つめの都市の人々は、信じる宗教の法典にかかれていることが幸福だと信じ、
三つめの都市の人々は、上の二つの物事の、どれにも支配を受けない事こそが幸福だと信じていました。
世界の人々の考えというのは、それほどに目まぐるしく変わるもので、また、絶対に正しいというものはないのです。
賢治は、そこまで考えて、天ぷらをかじりました。
「………ちょっとこの本をごらん、いゝかい、これは地理と歴史の辞典だよ。この本のこの頁はね、紀元前二千二百年の地理と歴史が書いてある。よくごらん紀元前二千二百年のことでないよ、紀元前二千二百年のころにみんなが考へてゐた地理と歴史といふものが書いてある。だからこの頁一つが一冊の地歴の本にあたるんだ。いゝかい、そしてこの中にかいてあることは紀元前二千二百年ころにはたいてい本統だ。さがすと証拠もぞくぞく出てゐる。けれどもそれが少しどうかなと斯う考へだしてごらん、そら、それは次の頁だよ。紀元前一千年 だいぶ、地理も歴史も変わってるだらう。このときには斯うなのだ ………」
「銀河鉄道の夜」第三稿より
とりあえずここまで
レオ初登場でした。
>>1は塩かけて食いますねー
今夜辺り続きをやります
「fateは文学」はではなく「fateと文学」というスタンスでやっていきたいです
シリーズにしようか検討中です
10時から始めます
やがて決闘の日は過ぎ、またマスターの数が減ってしまいました。マスターである白野は、ダンと戦い、彼の生きざまに深い感銘を受けたようでした。
賢治は、ダンが祈りを捧げていた教会へと足を向けます。早朝であったためか、教会には誰もいません。賢治は、ダンが座っていた椅子のところへと腰かけると、目をつむりました。
朝の日の光がきらきらと光っています。
賢治の瞼の裏に浮かぶのは、ダンの優しい眼差しでした。
賢治は、その朝の光を目で追って、一枚の手紙を見つけました。宛先は賢治の名前になっています。賢治は立ち上がって手紙を読み始めました。
手紙には、軍規に忠実な兵士としての人生、妻と接してやれなかった後悔が、綴ってありました。
ダン「後悔は轍に咲く花のようだ。歩いた軌跡に、さまざまと、そのしなびた実を結ばせる」
ダン「しかし、生きてきた意味というものもまた、歩いてきた道に咲くものなのだ」
ダン「私は、少年にこの先の道を示すという形で、花を咲かせることができた」
ダン「どうか、彼を見守ってやってほしい」
賢治は、ここまで読んで、手紙を胸元に押し付けて声をあげて泣きました。
今日はここまでー
お付き合いくださりありがとうございます
23時から始めます
賢治は、手紙を大事に懐にしまって、教会を出ます。視界はまだ涙でぼやけていました。
賢治は空を見上げます。見上げながら、今頃、ダンとその奥さんは天国で会っているのだろうか、幸せになっただろうかと考えていました。
賢治は仏教徒でしたが、このときばかりは、ダンが熱心に信仰していた基督教で考えていました。
賢治はある決意を胸に秘めていました。自分の中で今まではマスターの死から、目をそらしていたのではないかという疑惑が生まれたからでした。賢治は、こらからはマスターの死をきちんとこの目で見届けるのだ、と決意しました。
賢治は、小屋に帰ると、手紙を引き出しの奥にしまいました。大切な人の形見がまた増えたことを感じて、賢治はまた悲しくなりました。
悲しさを紛らそうと朝飯代わりにトマトをかじりますが、壁にはった、断層の図が目に入ると、あの生徒のことが思い出されて、塩もつけていないのにトマトがしょっぱくなりました。
小屋の外では、花甘蘭の花が風に揺れて、さわさわという音を賢治に届かせました。
今日はここまでで
みじかくてすみません
困ったな…胸熱展開が書けない…
賢治さんのキャラ設定ミスったな…
このぐだぐだでは読者もつかないのは必定
となれば…書き直すか…
どっちにしろ設定に粗いところがあったのでこのスレで書き直すことにしました。今後ともよろしくお願いします
>>1は「ポラーノの広場」が一番好きです
いや書き直すのはやめにしよう
今からでも軌道修正できる
今日の夜からやります
暫くお待たせしてすみませんでした
申し訳ない…
明日まで待ってくださらぬか…
すまぬ…
11時から更新です
下ノスレッドニ居リマス
この猶予期間中、ラニは賢治の元によく訪れました。そして、鉱物や星の話をしました。ラニは錬金術や占星術を話し、賢治は農業や故郷について話しました。ラニは賢治とはなしている間は、居心地がよく、安心しました。彼女には、少しずつ人間の心が育ってきていました。
その時のラニの対戦相手は凛でした。賢治は、そのどちらにも面識がありました。そんな二人が殺しあうのは、賢治に耐えられることではありませんでした。賢治は、もう誰も失いたくはなかったのでした。
しかし、賢治にはどうしようもありませんでした。
賢治は、その後、ラニがどうなったかを聞く勇気はありませんでした。しかし、凛と白野の様子から、ラニが死んだことを知りました。
賢治「……ラニさんは、死にましたか」
凛「………ええ……自爆だったわ」
賢治「彼女は、どんな様子でしたか」
凛「どんな……様子?」
凛は思い出そうとするが、先に口を開いたのは白野でありました。
白野「………泣いてたよ。少し、泣いてたよ」
賢治は目を伏せました。
ラニには、感情が芽生えていました。彼女はただの人形ではなかったのでした。
賢治は、ただひたすらに悔しく思いました。
「野原へ来れば
また風の中に立てば
きつとおまへをおもひだす
おまへはその巨きな木星のうへに居るのか
鋼青壮麗のそらのむかふ 」
宮沢賢治「風林」より
賢治は、ラニの涙の意味を考えていました。考えながら、星座早見を回して、天井を見上げていました。もう、ラニの映す星空を見ることは叶いませんでした。
今日はここまで
話が進まんなあ
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