モバP「バカには見えない衣装」 (32)

~CGプロ・応接室~

業者「……というわけで、当社の新素材をライブ衣装に使っていただければと思います」

P「生地サンプルありますか? 実際に見てみたいんですが」

業者「ええ、もちろん。こちらになります」

P(……?)

P(サンプルAと書かれたタブを見せられたが、肝心の生地が見当たらない)

業者「どうです、この光沢! 角度によって微妙に色が変わって見えるんです」

業者「しかも耐久性、伸縮性共に非常に優れていますので、激しいダンスでも動きを妨げることはないでしょう」

業者「あっ、ぜひ触ってみてください」

P(触ってと言われても触るものがないんだが……)

業者「ただ一つだけ欠点がありまして……実はこの生地、バカには見えないんです」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403955649

P「え!?」

P(本当はここに生地があるのか? そして見えてない俺はバカなのか!?)

P「へ、へぇ~……そんなことがありえるんですか?」

業者「ええ、実は偶然開発できたものでして、どうしてもこの欠点をなくすことは出来なかったんです」

業者「ただ、当社で調査した結果、全く見えないのは約一割程度でしかないんですよ」

P「約一割の……バカには見えない…………」

P(その一割に俺も含まれているのか……)

P「いやしかし、少ない割合とはいえ見えない人がいるのは……」

P「その人達からはアイドルが裸でライブしているように見えるということですよね?」

業者「そこも考えてあります。誰にでも見える素材で作った見せ下着を着ておけば良いんですよ」

業者「九割の人には、全く新しい新素材の衣装でライブしているように見えますし」

業者「残りの一割の人からは、ちょっとセクシーな衣装でライブしているように見える」

業者「採用していただけるなら、見せ下着とセットで製作させていただきます」

P(見せ下着……当然ステージ衣装として使うものだからオーダーメイドになるな)

P「…………ちなみに、一着おいくらぐらいで?」

業者「そうですねぇ……だいたい、このぐらいで」

P(相場よりちょっと高いぐらいか)

P(新素材ということを考えれば妥当な金額だな)

P(でもなぁ……俺には肝心の衣装が見えないしなぁ)

P「実際に着ることになるアイドル達にも見せていいでしょうか」

業者「ええ、もちろん」

P「ちょっと呼んできます。少しお待ちください」





業者「かくかくしかじか……という素材なんですよ」

川島瑞樹「バカには見えない……スゴイわねぇ」

瑞樹(目を凝らしても何も見えないんだけど……私ってそんなにバカだったのかしら!?)

業者「ぜひ触ってみてください」

瑞樹「え、ええ、そうですね……」

瑞樹(このへん? このへんにあるの? 他の皆は見えてるのかしら!?)

業者「……ところで、はだかの王様って聞いたことあります?」

P「そんな人がいるんですか?」

業者「みなさんご存じない?」

島村卯月「聞いたことないです」

諸星きらり「初耳だにぃ」

瑞樹「私も……有名な人なんですか?」

業者「あっ、いえいえ、知らないならいいんです。深い意味はありませんので!」

瑞樹「もし見えなくても、そこに透明な何かある、っていうのは分かるんですよね?」

業者「いえ、触感もなくなるようです。でも今ちゃんと見えてるでしょう?」

業者「それなら普通の布と同じに扱っていただければ良いですよ」

瑞樹(なにそれぇー!? どんな超技術なのよ。触感を頼りに探すことも出来ないじゃない!)

卯月「肌触りとかどうですか?」

卯月(瑞樹さんには見えてるのかなぁ……私ってやっぱりバカなんだ…………ううっ)

瑞樹「そ、そうね……あー、えっと……シルクみたいにとっても滑らかよ(たぶん)」

瑞樹「ほら、卯月ちゃんも触ってみて」

卯月「あー……わぁ……本当に色が変わって、綺麗ですね(たぶん)」

きらり「ねぇ、Pちゃん……」

P「どうした?」

きらり「きらり、なんにも見えないよ……。おバカさんなのかにぃ……?」

P「そ、そうか。見えないのか……」

P「でもな、それを打ち明けるって、きっとすごく勇気がいると思うんだ」

P「俺だったら、バカには見えない素材です、なんて言われたら」

P「バカって思われたくないから、本当は見えてなくても見えてるふりしてしまうぞ、きっと」

P(自分で自分にダメージが……っ!)

瑞樹(耳が痛い……!)

卯月(うう、辛い……)

きらり「そっかなぁ?」

P「きらりはそんなつまらない見栄を張らなかったんだ。すごく立派だよ」

きらり「うぇへへ……Pちゃん、ありがと」

瑞樹(もうやめて、私のライフはとっくにゼロよ!)

P(俺にこんなこと言う資格ないけどな……!)

卯月(きらりちゃんを褒めてるはずなのに、私が非難されてるみたいだよ~)

~後日~

新田美波「あ、あの、Pさん……試着してみましたけど、どうでしょうか?」

美波(誰にでも見える素材で極薄の裏地つけてくれてるから、着替えには困らなかったけど……)

美波(衣装なんて着てなくて、下着姿を晒してるとしか思えません)///

美波(ちゃんと衣装着てるように見えてるのかしら)

美波「変じゃないですか?」

P「あ、ああ……バッチリだよ」

P(俺には見えないけどな……!)

P(見せる前提の見せ下着とはいえ……いつもの事務所にアイドル達が下着姿で集まっている)

P(なにこの非日常的なエロさ)

高森藍子「あの……本当にこの衣装でライブするんですか?」

藍子「見えてない人がいるかもしれないと思うと、やっぱり恥ずかしいです」

藍子(そもそも私自身、衣装が見えてないし……)

藍子(うう~、Pさんにはちゃんと衣装見えてますように!)

P「うーん、もう制作してもらっちゃってるしな……」

P(共通デザインの見せ下着だが、やはり細部はそれぞれで違うようだ)

P(藍子はホットパンツとスポブラ風、美波はビキニ風)

P(だがそれを言ってしまうと、衣装見えていないことがバレてしまう!)

P「それに、調査によると本当に見えないのは一割程度らしいからさ」

美波(その一割に……)

藍子(自分が入ってるなんて……)

P(バラしたくないなぁ……)

藤本里奈「衣装が見えない人ってバカなんでしょ?」

里奈「だったら他人と違うものが見えてることにすら気づかないんじゃね?」

里奈「まっ、アタシはヨユーで見えないけどね! アハハ!」

P(見せ下着がガールズブリーフってこともあって、すごく男前に思える)

P(いっそ里奈のようにバラしたほうがこんなに悩まないで済んだのだろうか……)

美波(今更じつは見えませんでした、なんて言うのも恥ずかしい……ううう)

藍子(見栄張らなければよかった……ハァ)

大沼くるみ「おはようございましゅ……あれぇ?」

P「おはよう、くるみ。どうかした?」

くるみ「ぷろでゅーしゃー……どうしてみんな下着姿なのぉ?」

P「えっ、ああ、くるみにはまだ話してなかったっけ。バk」

P(待てよ……バカには見えない衣装と言ってしまうと)

くるみ「ふぇぇ……くるみ、お衣装からもバカって思われてるんだぁ……ぐすっ」

P(となってしまう!)

P「みんなは大人にしか見えない衣装を着てるんだ!」

くるみ「そうなんだぁ、すごーい」

くるみ「くるみ、おっぱい大きいけど……やっぱり子供なんだねぇ、えへへ」

P(子供扱いが嬉しいようだ)

P(胸のせいで、どうしても素直に子供扱いしてもらえないからな……)



P「……ということもあったので、バカには見えない衣装、と言ってしまうと見えない人が傷つくので」

P「今後は『大人にしか見えない衣装』と呼称します」

P「若葉には衣装見えるかな?」

日下部若葉「も、もちろんですよぉ~! 私は大人ですから!」

若葉(本当は全然見えないけど~!)

P「本当は大人かどうかじゃなくて、バカかどうか、なんだけどな」

若葉「あっ……! い、いえ、バカでもないですから!」

~情報番組~

司会「○月×日にシンデレラガールズのライブが行われます」

司会「今日は島村卯月ちゃんと高森藍子ちゃんに、ライブの告知に来ていただきました!」

司会「……が、登場していただく前に視聴者の皆様にお知らせしなければいけないことがあります」

司会「当日実際に着用する衣装を着てきてくださったのですが」

司会「今回の衣装は、なんと大人にしか見えない素材で出来ているそうです!」

芸人A「つまり、もし衣装が見えなかったら、それは自分が子供であると」

司会「そういうことです」

芸人B「いやー、それは間違っても見えないなんて言えないですねー」

司会「それではあらためて、登場していただきましょう。どうぞ!!」

卯月「こんにちは~」

藍子「よろしくお願いしますー」

司会(こんな至近距離で下着姿の女の子が……!)

芸人A(他の人からはちゃんと衣装着ているように見えているはず!)

芸人B(平静を装わなければ……)

卯月(下着姿でテレビ出演なんて恥ずかしいよぉ~)///

藍子(衣装見えているつもりで……衣装着ているつもりで……)///

司会「ようこそお越しくださいました」

司会「早速なんですが、今回の衣装は、そのー、新素材だそうで」

卯月「はっ、はい。そうなんですよ。見る角度によって色が変わるんです!」

芸人A「着心地はどうなの? 今までの衣装と比べて」

卯月「すごく良いですね。シルクのようななめらかな肌触りです」

卯月(って瑞樹さんが言ってたけど、本当かなぁ……)

卯月(私は触れないし見えないから、当たり障りないことしか言えないです)

芸人B「大人にしか見えないってことだけど、撮影した映像はどうなるんだろうね?」

藍子「撮影しても変わらないみたいですよ」

藍子「見えてる人はやっぱり見えるし、見えない人はどう頑張っても見えない」

芸人B「ということは、視聴者の中には」

芸人B「うおーっ、卯月ちゃんと藍子ちゃんがなんかエロい格好してるー!」

芸人B「って思ってる人がいるかもしれないんだ」

卯月「あ、あはは……そうですね」

卯月(私自身もそうなんですけどね……)

芸人A「いやー、それは……悔しいですねぇ。僕はどうして大人なんですかねー」

藍子「でも私思うんですけど、例えば40代くらいの人が、『見えません』って言うのは」

藍子「かなり恥ずかしいんじゃないかと」

卯月「そうだねー」

司会「何だこいつ大人じゃないのか、って思われるのもありますが」

司会「『衣装見えません』って言った時点で、『下着姿は見えるぞ』って言ってるようなものですからね」

司会「普通にセクハラになります」

卯月「もしかしたらみなさんも見えてなかったり!?」

芸人B「あはは、まっさかぁ! 僕たちは全員大人ですので!」

芸人B(その前振りで『見えません』なんて、いくら美味しくても言えない!)

司会「逆に、お二人は衣装見えてるんですか?」

司会「大人と子供の中間くらいの年齢ですが」

卯月「個人差あるみたいです。きらりちゃんは見えないそうです」

芸人A「見えないわけないでしょ。だって、もし見えなかったら」

芸人A「下着姿でこの番組に出演してることになるんですよ」

芸人B「そんなんアイドルじゃないですよ。ただの露出狂ですよ」

藍子「露出狂じゃないですよ~。ちゃんと見えてます!」///

司会「ですよねぇ~」

藍子(もう絶対『見えません』なんて言えない!)

~ライブ本番・客席~

ワーワー
ファンA「今回の衣装、今までで一番良いね!」

ファンB「うん。かっこよさと可愛さの両立が神がかってる」

ファンC「でも、さ。バカな人には今回の衣装見えないんだよね?」

ファンA「それ非公式だから。公式には、大人にしか見えない衣装、ね」

ファンB「……なんか、そういう新素材で、どうしてもその欠点を消せなかったんだって」

ファンA「そんなSFみたいな話が現実になるとは思ってなかったよ」

ファンC「ま、まあ、私はちゃんと衣装見えてるけど!」

ファンA「見えてない人なんて滅多にいないって。あ、もちろんアタシも見えてるよ!」

ファンB「見れなかったら一生後悔するレベルの神衣装だからね……大人でよかったよ、ホント」

ファンABC(((本当は見えてないけど、言わないほうがいいよね!)))

~楽屋~

佐久間まゆ「Pさん、ちょっといいですか?」

P「まゆの出番には……まだ余裕あるな。どうした?」

まゆ「……やっぱり」

P「なにが?」

まゆ「Pさん、本当は衣装見えてないでしょう?」

P「!? な、何言ってるんだ? 俺にはちゃんとまゆが衣装着てるように見えてるぞ?」

まゆ「そんなはずないんですよ。だって、今衣装着てませんから」

P「えっ!?」

P(あらためてまゆの姿を確認すると……ビキニパンツにキャミソール風の見せ下着)

P(衣装を着ていれば見えるはずの、極薄の裏地は見えない。ということはまゆの言うとおり……)

まゆ「これまで衣装が見えていれば、声をかけた時点ですぐ気づくはずですから」

P「ご、ごめん、隠していて」クルッ

まゆ「向こう向かなくてもいいですよ。どうせ今までもこの格好見ていたんでしょう?」クスッ

まゆ「そもそも見せる前提の見せ下着ですし」

まゆ「それに謝る必要もないです。隠していたのはまゆも同じですから」

P「隠していた、って……」

まゆ「本当はまゆも衣装見えないんです」

P「そうだったのか!? でもどうしてこのタイミングでその話を……」

まゆ「うふふ、特に意味はありませんよ。気づいたから確認したかっただけです」

P「よく気付いたよなぁ、一応見えるふりしてたのに」

まゆ「だってまゆは、いつもPさんのこと見てますから」

まゆ「……お話してたら緊張がほぐれました。それじゃ、行ってきますね♪」タタッ

P(俺が衣装見えていないことを見破ったまゆも、同じく衣装が見えないんだよな)

P(『バカには見えない』の基準が分からない)

P(もしかして、そもそもそんな衣装存在しなかったりして……)

P(いやいや、それこそ、そんな『バカな』だよな)

~???~

業者「どうなってるんだ……バカには見えない衣装なんて存在しないのに」

業者「2~3人ならともかく、マスコミで大々的に紹介されても、誰も下着姿に疑問を抱いていない!」

業者「まるで本当にステージ衣装を着ているような反応ばかりだ」

業者「こんなことありえない……信じられない!」

??「分からないなら教えてあげましょう」

業者「なにっ!?」

??「アイドルとは夢を与える仕事」

??「たとえステージ衣装が見えなくても、そこにあると思えば、着ていると信じて演じれば」

??「周りを芝居に巻き込むことなど、トップアイドルにとって朝飯前ですッ……!!」

業者「知ったふうなことを! 何者だ!?」

??「悪党に名乗る名前はありません!」ビシッ

業者「ぐわっ! く、くそぉっ……」ドサッ

??「ふぅ。童話と同じ手口の詐欺が成立するなんて」

??「……いえ、地球人はきっとウサミン星人と少しだけ考え方が違うんでしょう」

??「シンデレラガールズ……これからも、陰ながら応援させてもらいますね!」

以上で終了です
ランジェリー・フットボールのノリでライブやっても良いと思います

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