あずさ「赤い洗面器?」 (42)
真「これは、ボクがお父さんから聞いた話なんだけどね」
春香「う、うん」
真「晴れた昼下がり、ある青年が道を歩いていると」
春香「……怖い話?」
真「違うよ、笑い話。……前の方から、赤い洗面器を頭に乗せた男の人が歩いてきたんだ」
あずさ「……」コソコソ
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春香「ふむふむ。それで?」
真「洗面器の中には水が入ってて、男の人はそれをこぼさないようにゆっくり歩いてたんだ」
春香「なんでお水……」
真「青年は勇気を出して、『すいません』って声をかけた」
あずさ「……っ」
律子「あずささーん」
あずさ「は、はいっ」
律子「ちょっと良いですか? 確認したいことがあって」
あずさ「分かりました」
真「あれ、あずささん。そこに居たんですか?」
あずさ「ええ、休憩をしていて」
春香「お疲れ様です、あずささん!」
真「お疲れ様でーす!」
あずさ「ありがとう、春香ちゃん、真ちゃん。ところで」
真「えっ?」
律子「あずささーん!」
あずさ「ああ、急がなくちゃ……ごめんなさい、なんでもないわ」
真「は、はい……?」
律子「OKです。それじゃあ、伊織を迎えに行ってきます」
あずさ「はい、気をつけてくださいね」
律子「ありがとうございます。一緒に来ますか?」
あずさ「え、えっと……いえ、今日は」
律子「ですよね、疲れてるかと思いますし。夜は生放送ですから、よろしくお願いしますね」
あずさ「はい」
真「――って!」
春香「あはは、なにそれ! すごく面白いっ」
真「でしょでしょ!」
あずさ「……あの、真ちゃん?」
真「あっ、どうしました?」
あずさ「そのお話、最初から聞かせてもらっても良いかしら」
真「もう、気になってたんですか?」
春香「あずささんも聞いてれば良かったのにー」
あずさ「隣ですごく面白そうなお話をしていたから、気になって」
真「しょうがないなぁ。トクベツですよ?」
ガチャ
P「真、いるか!」
真「ある晴れた……って、どうしたんですか、プロデューサー?」
P「大変だ、今日は1時から遊園地のステージの仕事が入ってたんだ!」
真「えっ!? もうすぐお昼ですよ!」
P「悪い、完全に俺のミスだ……春香も来てくれ!」
春香「え、私もですか!?」
P「申し訳ないけど、2人必要なんだ」
春香「分かりました、頑張ります!」
真「ごめんなさい、あずささん。また今度で良いですか?」
あずさ「ええ、頑張ってきてね、ふたりとも」
真「行ってきます!」
春香「行ってきまーす」
P「あずささん、事務所をよろしくお願いします」
あずさ「はい、気をつけてきてくださいね~」
ガチャン
あずさ「……洗面器を頭に乗っけた、男の人」
【青年は、勇気を出して男の人に問いかけました】
あずさ「それから先は、どうなるのかしら?」
あずさ「インターネットで調べても、出てこないわねぇ」
あずさ「ふたりが帰ってくるまで、しばらくかかりそうだし」
ガチャ
小鳥「ただいまでーす」
あずさ「そうだ!」ガタッ
小鳥「あれ、あずささんだけですか?」
あずさ「はい。おかえりなさい、小鳥さん」
小鳥「ただいまです。トイレットペーパーが安くて、買いすぎちゃいましたよぉ」
あずさ「ところで、小鳥さん」
小鳥「はい?」
あずさ「赤い洗面器の男の人の話、ってご存知ですか」
小鳥「赤い洗面器……?」
あずさ「真ちゃんが喋っていて」
小鳥「……ああ! 知ってますよ」
あずさ「本当ですか! あの、話してくれませんか」
小鳥「ええ、分かりました。それにしても珍しいですね」
あずさ「えっ?」
小鳥「あずささんが、笑い話を聞きたがるなんて」
あずさ「やっぱり、笑い話なんですね」
小鳥「やっぱり、って?」
あずさ「春香ちゃんが大笑いしていたんです。
それで、私も聞いてみようと思ったら、ふたりとも急なお仕事で」
小鳥「そっか、それでプロデューサーさんがメールを」
あずさ「メール、ですか?」
小鳥「はい。プロデューサーさんからメールをもらったんですけど、
手がふさがっていたからまだ読めてないんです」
あずさ「お仕事のことかもしれないですね」
小鳥「まあ、いいや。それじゃあ、お話しますね」
あずさ「はいっ」
小鳥「ある青年が道を歩いていると、
向こうの方から赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いてきました」
あずさ「うんうん」
小鳥「なんとその洗面器、水が大量に入っているではありませんか!
青年は勇気を出して、『あの』と男を呼び止めました」
あずさ「うんうん!」
小鳥「『あの、すみません。どうして貴方は頭に、赤い洗面器を乗せているんですか?』」
あずさ「そ、それでどうなったんですか!」
小鳥「すると」プルルル
あずさ「あっ……」
小鳥「はい、765プロです。……社長! どうされたんですか?」
あずさ「……」ソワソワ
小鳥「えっ、大変じゃないですか! 分かりました、すぐに連絡します」ガチャン
あずさ「あの、小鳥さん。どうされたんですか?」
小鳥「社長の話だと、フェアリーのみんなのお仕事が、急にキャンセルになったみたいで」
あずさ「そ、そんな……961プロですか!?」
小鳥「まだ分かりませんけど、ちょっとメールをしてみます」カタカタ
あずさ「分かりました……」
『星井美希の! シューティング☆スター!』
あずさ「あら、美希ちゃんのラジオの時間ね」
『ラジオネーム、リボン大戦争さんからのお便りなの。
美希ちゃん、こんにちは。こんな笑い話を知っていますか?』
あずさ「えっ……」
『うーん、ミキは知らないなぁ。でも、とりあえず読んでみるね』
あずさ「っ!」
『ある男の人が道を歩いていると、目の前に赤い洗面器を頭に乗っけたおじいさんが歩いてきた』
あずさ「間違いないわ、あのお話ね」
『男の人は気になって、おじいさんに尋ねたんだって』
『すみません、貴方はどうして、赤い洗面器を頭に乗せて歩いているんですか? ってね』
あずさ「それで、それでどうなったの……!?」
『するとおじいさんは、こう答えたんだって。……あはっ、これ面白いの!』
あずさ「どう答えたの、教えてっ、美希ちゃん」
『それは君の……あっ、ここでニュース速報が入ったみたいなの!』
あずさ「え……?」
『ここで臨時ニュースをお伝えします。アメリカの経済政策……』
あずさ「ど、どうしてオチが聞けないのかしら?」
小鳥「もしもし、765プロの音無と申します。はい、はいお世話になっております……」
――
伊織「何よ、そんなことで悩んでたの?」
あずさ「だって、誰もオチを教えてくれないから……」
伊織「全く。生放送の前に浮かない顔をしてると思ったら」
亜美「あずさお姉ちゃんらしいよね」
あずさ「ふたりとも、知っているの?」
亜美「亜美は知らないなー」
伊織「知ってるわよ、それ」
あずさ「本当!? 話してもらっても良いかしら?」
伊織「仕方ないわね。モチベーション上げるためなんだからね」
あずさ「ええ」
亜美「亜美も聞きたい!」
伊織「ある大学生が道を歩いていると、遠くから老人が歩いてきたの」
亜美「ほう」
伊織「その老人は、水が満杯に入った洗面器を頭に乗せて、ゆっくり歩いていたわけ」
亜美「なんで?」
伊織「だから、そこがジョークのオチなの。ちゃんと聞いてなさい」
亜美「りょーかい!」
伊織「大学生はすごく気になって、老人を呼び止めた」
あずさ「……」
伊織「『すみません。どうして赤い洗面器を頭に乗せて、歩いているんですか』って聞いたのよ」
亜美「うんうん」
あずさ「それで、どうなったの!?」
伊織「食い付くわね……。老人は指をピンと立てて、こう答えたのよ。『それは君の』」
ガチャッ
AD「竜宮小町さん、スタンバイお願いしまーす」
伊織「あっ、はーい」
あずさ「もう本番の時間?」
亜美「よーし、頑張ろう!」
あずさ「え、ええ……」
伊織「続きはまたあとでね、あずさ、亜美」
亜美「気になるけど、しょうがないよね」
あずさ「そ、そうよねぇ……」
伊織「さぁ、新曲『キミ*チャンネル』の初披露よ!」
亜美「765プロ、ファイトっ」
「「「オー!」」」
――
あずさ「ふぅ」
律子「お疲れ様です、あずささん」
あずさ「ありがとうございます……」
律子「……なにかお悩みでもありますか? すごくモヤモヤした表情ですよ」
あずさ「笑い話のオチが聞けなかったんです」
律子「はい?」
あずさ「赤い洗面器の笑い話、です。真ちゃんも、小鳥さんも、美希ちゃんも、伊織ちゃんも話してくれたのに」
律子「どうしてオチが聞けなかったんです?」
あずさ「ちょうどお仕事が入ったり、電話だったり、ニュース速報で」
律子「あはは、なんですかそれ」
あずさ「律子さんはご存知ですか、その笑い話?」
律子「ええ、一応知ってますよ」
あずさ「それじゃあ、話していただけたり……?」
律子「え? ああ、良いですよ、分かりました」
あずさ「本当ですか、ありがとうございます!」
律子「あ、でも確か、プロデューサーがもっと詳しく知っていた気がします」
あずさ「プロデューサーさんが?」
律子「ええ。……すみません、プロデューサー。ちょっと良いですか?」
P「おう、どうした?」
律子「実は……って、え…………?」
P「ん、なんだよ」
あずさ「あ、あのっ、プロデューサーさん」
P「はい?」
あずさ「どうして……その、頭に赤い洗面器を乗せているんですか?」
おわり
http://urx.nu/9Ftg に詳しく書いてあります。オチが知りたいです、ありがとうございました。
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