穂乃果「汚れた世界」 (115)
鬱要素有り
ほのうみです
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プロローグ
海未「・・・あ・・・あ・・・」
この世界は汚れている。
現在進行中で急速に汚れて行く。
クローゼットの隙間から見える私の透明だった世界は茶色や黒の絵の具で容赦なく汚されて行く。
ついさっきまで、私達は真姫の別荘で楽しくお喋りをしていたのに。
この男達が私達の世界を悪意を持って容赦無く壊した。
みんなは裸にひん剥かれて、虚ろな目で空虚を見ている。
そこに何かある訳では無い。
ただ、この悪夢が早く去ってくれるように感情を殺して時が経つのを待っているんだ。
この男達はそんな事お構い無しにみんなの体を観察し触れて舐めて強姦する。
私は運が悪かった。
みんなとこの苦しみを共有出来たらよかった。
穂乃果がたまたまクローゼットの近くにいた私を閉じ込めさえしなければ、私はこんな酷い世界を見ずに済んだ。
助けたい。
みんなを助けたい。
非力な私にどうか力を下さい。
神様、お願いします。
時間を巻き戻したい。この男達を念じるだけで殺せる力が欲しい。
「なんでさっきからクローゼットの方ばっか見てんの?」
穂乃果を強姦してた男が不意に言った。
穂乃果はただ首だけを横に振った。
ニヤリと笑う男。
私は目を閉じて、祈る。
神様。この人達を殺してと・・・。
甲高い叫び声が体に浸透した。
何か、聞きなれない音が聞こえた。
その次に何かが倒れる音。
恐る恐る目を開けると、穂乃果がナイフを持って立ち尽くしていた。
段々と私の心が壊れて行ってるのが分かった。
痛みは無く、感情はどこかに飛んだ。
思えば私の祈りが通じたのかも知れない。
感情さえ無くなってしまえば、私は見ても何も感じず聞いても何も感じない。
男達が穂乃果を突き飛ばす。
ただ、ヒステリックな声を出すことり。
嘔吐する花陽。
そして、穂乃果は自分が刺した男のように腹部を刺される。
海未「穂乃果・・・穂乃果・・・」
私は今息をしているのだろうか。
心臓は動いているのだろうか。
わからない。
熱い血液が私の体を駆け回る。
神様が叶えてくれた願いは不完全だったみたいだ。
怒りの感情だけを残して神様は私の世界ひ散らかしニヤリと笑って玄関の戸を閉めた。
Chapter1
ことり『汚れた世界』
ことり「穂乃果ちゃん。私、もう27歳になっちゃった」
穂乃果ちゃんのお墓に花を供え。
毎日やってきたように、お墓を優しく撫でる。
ことり「あと三年経てば30だよ。時間って20歳過ぎたら凄く早いんだね。毎年、そう思うよ。でも、あの頃も早かったよね。スクールアイドルもっかいやりたいなぁ・・・またみんなで」
あの日、私達が強姦された事をふと思い出した。
ことり「あはは・・・毎日同んなじ事言ってるね。でも、本当に時間は女の子の敵だよね!」
ふと、自分の事を女の子と呼んでいる事に気付いて恥ずかしくなる。
もう、そんな年じゃないのになぁ・・・。
あの日、私達が強姦された事をふと思い出した。
ことり「穂乃果ちゃん。毎日ケーキじゃ飽きたでしょ?だから今日はお酒!持って来たよ!」
あの日、私達が強姦された事をふと思い出した。
ことり「私、穂乃果ちゃんとお酒飲むの夢だったんだよ?何でもいいから、ドラマの話とかでも映画の話とかでもいい。楽しくお喋りして、軟骨の唐翌揚げ食べながらお酒飲むの夢なんだよ」
あの日、私達が強姦された事をふと思い出した。
ことり「だから、自分への誕生日プレゼントとして今日はちょっと飲ませて?」
あの日、私達が強姦された事をふと思い出した。
震える手でコンビニの袋からワンカップを取り出して一気に飲み干す。
ことり「っぷはぁー!あはは・・・何か恥ずかしいなぁ。よくおっさんみたいだって言われる」
ことり「ねぇ?一ヶ月前ぐらいに釈放されたんだって、私達を強姦したあの人達。少年法さえ無かったら・・・ね?」
正直、私はあの男達を殺してやりたい。
あの人達のせいで、私もミューズのみんなもめちゃくちゃだ。
あんな酷い事をしたのに。
数年間、檻の中で規則正しい生活をしてれば自由なんてそんなの許せない。
私達は本当なら感動的な卒業式を迎えて、大学へと行き。
みんなと、学校は違えど交流は続いて行って、誰かが結婚したら結婚式へ行ってブーケトスに全力を尽くし。
美味しいスイーツ屋を見付けたら、みんなに教えて休日に食べに行きそこで愚痴とか恋愛相談なんかを日が暮れるまでしていたはずなのに・・・。
ことり「穂乃果ちゃん・・・」
私は目を閉じて、深く息を吸う。
毎日、穂乃果ちゃんのお墓の前でやっている儀式なような物だ。
息を止める。
鳥が鳴いて風が墓と墓の間を抜け私の身を包む。
ことりちゃん!
穂乃果ちゃんが私を呼ぶ声がした。
勿論、幻聴だと分かっている。
でも、もしかしたら目を開けると穂乃花ちゃんがお墓から復活してるかもしれない。
墓石の後ろから顔だけ出して、久しぶり!なんて事があるかも知れない。
目を開ける。
光景は穂乃果ちゃんの墓石とそしてにこちゃんの姿だった。
にこ「ことり・・・何してんの?」
ことり「ううん。目を開けたら穂乃果ちゃんが復活してるかもと思って」
にこ「・・・それ有り得ないけど。いいわね」
ことり「うん、有り得ないけどね」
にこ「仕事は?順調?」
ことり「うん。順調だよ。順調。にこちゃんは?コンビニ楽しい?」
にこ「楽しくないわよ。毎日低い時給でコキ使わされて、お客様からありがとうを貰う仕事?はぁぁ!?って感じよ。ほら、どいて穂乃果に花をお供えするから」
ことり「あ、うん。ごめんね」
にこ「謝りたいのはこっちのほうよ・・・本音を言えば私はみんなと会いたくないのに・・・」
ことり「・・・ううん。にこちゃんのせいじゃないよ」
にこ「私がブログに真姫ちゃんの別荘で合宿するだなんて投稿しなければ、奴らは場所を特定なんかできなかった・・・」
ことり「ううん。そんな事ないよ。そんな事ない・・・」
にこ「・・・だからあんた達とは会いたくないのよ!」
ことり「にこちゃんは悪くないよ」
にこ「なんでことりはそんなに優しいの?なんでみんなはそんなに優しいの?怒ってよ!殴ってよ!」
ことり「大丈夫。大丈夫だよ」
にこ「うぅ・・・ぐすっ。あんた達が優しいから私はずっと逃げてしまいたくなるのよ・・・罪悪感で死にたくなるのよ・・・」
ことり「死ぬのはダメだよ。1日に2回もお墓参り大変だよ。・・・こうやって何かと理由付けてにこちゃんを死なせないから死なないでねにこちゃん」
にこ「当たり・・・前よ!当たり前よ・・・」
ことり「じゃあ・・・またね」
にこちゃんから早く逃げたい。
私だって、みんなとはもう会いたくない。
何かされたわけじゃ無い。
こんな私を見て欲しくないからだ。
日々、酒を煽り。
あの日の事を忘れ、いつの間にか重度のアルコール中毒者となった私を見て欲しいわけがない。
ほら、また。
あの日の事を思い出す。
太陽が沈み始め、街に悲壮感を漂わせる。
あぁ、私の世界はあの日から汚れてしまったまんまだよ。
穂乃果ちゃんどうか私を助けて。
Chapter2
絵里『汚れた世界』
誰もいない協会で私は佇む。
大きなステンドグラスの下には、私を見据え両手を大きく広げたマリア像。
優しさに満ち溢れて見える。
私達が今やる事さえも許してくれそうな気がした。
絵里「生きている者は死ぬべき事を知っている。
しかし死者は何事をも知らない。
また,もはや報いを受けることもない。
その記憶に残ることがらさえも、ついに忘れられる。
その愛も憎しみもねたみもすでに消えうせて、彼らはもはや日の下に行われるすべての事に永久にかかわることがない。
すべてあなたの手のなしうる事は、力をつくしてなせ。
あなたの行く陰府には、わざも、計略も、知識も,知恵もないからである」
そう、穂乃果は私達の事をもう忘れてしまっている。
私達の思い出も愛も全部忘れてしまって、生きている私達にはもうかかわる事がない。
それは、私達も同じだ。
それはとっても悲しい事で私達はこの悲しみを忘れてはならない。
陰府・・・つまり死者が行く所に行けばこの悲しみは忘れてしまう。
だから死ぬ前に私は・・・私達は復讐をするんだ。
だって死んでしまえばこの怒りも穂乃果の事も忘れてしまうって事でしょう?
それだけじゃない。
私達が過ごした。
スクールアイドルとしての思い出も希と出会ったあの日の事も全て忘れてしまうって事でしょう?
全て忘れたら救われる確かに・・・。
[ピーーー]ば確かに救われるけど穂乃果が救われてるなんて私は微塵も思っちゃいない。
馬鹿馬鹿しいとさえ思う。
強姦され殺されていった穂乃果は都合よく全てを忘れ土の中でぐっすり眠ってるだなんて有り得ない。
きっと、私達と同じように壊れて砕けて散って。
その中から生まれた黒い怪物に寄生されている。
肉体があるから、怪物は自由に私達を動かせるだけ。
ただそれだけの違いだ。
絵里「・・・これから私達がやる事を神様は許してくれますか?」
マリア像は何も答えない。
知ってて言った。
神様はいつだってそうだ。
そうやって、沈黙を決め込み。
私達の行く末を両手を広げてバカにしながら見てる。
だって、そうじゃない。
仏もマリアも笑って見てる。
この汚れた世界をスラッシャー映画を見てるみたいにヘラヘラしてる。
絵里「さようなら」
日の光を背に浴びながら、扉を開ける。
待たせていた花陽がこちらに気付いた。
花陽「終わった?」
絵里「えぇ」
花陽「神様は許してくれそう?」
絵里「穂乃果がそれを決めるわ」
花陽「そうだよね。うん、そうだよね・・・」
絵里「もうすぐ、夜になるわね・・・凛は大丈夫かな」
花陽「大丈夫だよ。凛ちゃんは必ずやってくれるよ。だから今はにこちゃんとことりちゃん迎えに行こ?まだ知らないと思うから」
絵里「そうね。あの二人は私達を避けてるようだし連絡が回らなかったものね。でも、見つかったし行きましょっか」
花陽「うん」
Chapter3
希『汚れた世界』
うち・・・また[ピーーー]なかった。
この自家製の絞首台を見る度に死のう死のう思うてるんやけど・・・。
あの日から自殺を何回繰り返してるかわからんようになってきた。
手首には躊躇い傷ばっかやし、うちは思っとたより臆病やんな。
昔、えりちキリスト教に入ってたから何かわかるやろ思って聞いてみたんよ。
そしたらえりち子供ながらになんかようわからん言葉言っててな。
その時はなんも印象に残らんかったんやけど、あの日。
急に思い出したんよ。
[ピーーー]ば全てを忘れるってな。
今日はここまでにします
明日か明後日までには完結させます
希「はぁ・・・」
[ピーーー]ば全てを忘れられる。
それはとっても幸せな事やとうちは思う。
嫌な事も全部忘れて、うちはもう一度人生をやり直したい。
みんなが壊れてうちらの世界が汚れてしもうたあの日。
思い出せば嗚咽。
男を見れば鳥肌。
ライブの映像を見れば泣いてしまう。
幸せだった日々はもう遠い昔。
毎日、起きて食べて寝ての繰り返し。
うちは思う。
これから私達は別々の悪路を進み続けるんやろうなって。
ハッピーエンドに向かって走っても辿り着かないんやろうなって。
向かう先はそれぞれのバッドエンド。
私達に救いなんて無い。
だから私は自殺未遂を繰り返してるんや。
今、自[ピーーー]ればまだマシなバッドエンドになる。
このまま生きて行けばとてつもない嫌なバッドエンドになる。
どちらがマシかわかるやろ?
もう私達に救いなんて無いのは分かってる。
奇跡なんて起こせない事も知ってる。
アホみたいに笑える日々は来ないって勘付いてる。
それでも、何かいい事が起こるんじゃないかって思い続ける自分もいる。
その確かな矛盾に気が付いてるんやけど理解していないフリをする。
プルルルルル。
飾られた写真立てを見る。
プルルルルル。
もう一度自殺を試みようと思った。
プルルルルル。
希「あ、電話や・・・エリちから・・・なんやろ」
希「もしもしエリち?どうしたん?」
絵里「今夜、捕まえるわ。私達を強姦した男を」
希「あぁ、そうなん・・・?」
絵里「希も来ない?絶対捕まえる事が出来るから・・・復讐したいでしょ?」
ほら、うちはが言った通りや。
みんなバッドエンドに向かっている。
希「うちはやめとく。エリちも・・・」
絵里「止めてもやるわよ私達は」
希「・・・」
絵里「希来て・・・お願い」
希「いやや・・・」
怖いんやうちは。
みんなが復讐する姿を見るのが怖いんや。
この写真に写ってるみんなが壊れた表情で感情を剥き出しにしてる姿を見たく無いんや。
あの頃の綺麗なみんなはもう死んだ。
絵里「希・・・来て・・・」
希「いやや!」
絵里「穂乃果はあいつらに殺されたんよよ!?希忘れたの!?」
希「もう・・・終わりにしよ?全て終わりにしよ?」
絵里「だから今日終わりにするの!復讐して・・・終わりにするの・・・やっと安眠も出来るのよ?全て終わらせてまたやり直そ?ね、希お願いお願いだから来て希がいないと私・・・私・・・」
希「もう無理。もう無理。もう無理。もう無理もう無理もう無理もう無理もう無理!!!何も終わらない」
スマートフォンを壁に思いっきり投げ付ける。
ヒビ割れ光を失った画面。
それはまるでうち達のようで、私は絞首台に登る。
垂れ下がる縄。
あぁ、みんなもうおしまいだ。
それぞれがバッドエンドに向かっている。
私はやっと決心が付いた。
輪っかを頭から通し頬に涙が伝う。
この紐を引っ張れば足元が開き私は死ぬ。
まだ未練はある。
やりたいこともある。
食べたい物も、話したい事も。
しかし、このまま生き続ければあの時死んでればよかったって私は思う。必ず思う。
私は楽な道を選んで死ぬ。
希「エリち・・・好き」
思いっきり紐を引っ張った。
ガタンッ。
そして意識は遠のいて、恐怖よりも安堵感が私の身を包み。
全てを忘れた。
Chapter4
凛『汚れた世界』
ホテル街。
ラブホテルとは男と女がセックスする目的で行きそこでお互いを貪り合う。
ここは凛が知ってる限りもっと汚れた世界で私自身もその汚れに染まっている。
凛はたちんぼって言ってここで男達に体を売ってお金を貰っている。
言わばビジネス。
売り買いの世界なんだ。
人はこの仕事を何故か嫌っている。
馬鹿みたいに、声を荒げて売春はダメだと言う人もいる。
何がダメなのか?
さっき言ったけどこれはビジネス。
例えばお笑い芸人は自分の芸でお金を貰っているし手品師は手品の腕でお金を貰っている。
凛は凛の体でお金を貰っている。
ただそれだけの違いだ。
でも、実際凛はセックスはそこまで好きではないし始めての体験でのトラウマもある。
じゃあなんでたちんぼになったのか?
何と無く成り行きで・・・。
結構多い理由の一つだ。
凛は最初は風俗店で働いてた。
けど、一年で辞めた。
見ず知らずの男に奉仕するのは嫌だ。
だけど、結構給料は高い。
でも、男は選びたい。
汚いおっさんより若くてかっこいい男を相手にした方がいいに決まってる。
だから相手を選べるたちんぼになったわけだけど全く稼げない。
そりゃそうだよね。
たちんぼなんて今の時代あんまりいないもん。
だから出会い系と併用でやってる。
そういえばさっき汚いおっさんに声を掛けられたけどくさいあっちいけー!って思った。
で、凛には今日目的がある。
私達をレイプした男がこのホテル街でたちんぼを漁ってるらしいとの情報だ。
正直言おう。
あの日の事は結構どうでもいい。
いや、良くないか。良くないけど、みんなよりも吹っ切れてる。
殺された穂乃果ちゃんの事を考えると胸が苦しいけど、他のみんなよりは苦しさはずっと軽めだ。
それはきっと私が風俗嬢だった頃。
もっと酷い境遇の子を何人も見て来たからだ。
例えば、自分が酷い目に合っててその向こうでさら酷い目に合ってる人がいるとする。
そしたら私よりあの人の方が可哀想だと思い、今自分受けてる痛みはグッと軽くなる。
そんな感じだ。
人間はドライで他人の苦しむ姿に涎を垂らすものなんだ。
だから私はみんなより割りかしまともだ。
凛「あ!ねぇーお兄さん!ちょっとちょっと!」
考え事をしてるとターゲットが通り過ぎて凛は慌てて呼び止める。
何で通り過ぎた?
凛に魅力が無かったの?
ターゲットは立ち止まり、私を見る。
大丈夫。
髪も伸びてるし化粧もしてる。
とてもあの頃レイプした凛とは思わないはずだ。
そして、私は必ずこの男をホテルへ連れて行ける必殺の一言を言った。
凛「お兄さんかっこいいにゃー!・・・タダでしない?」
乗ってくる。
あとは、簡単だ。
凛「じゃあ・・・あっちのホテルいこ?」
この事言葉を言ってしまえば着いて来ない男はいない。
考えは全て下半身に集まり・・・セックスしたいしか考えられなくなる。
タダより怖い物はないのにね。
馬鹿だ。
ホテルの部屋選びを男に任せながら、かよちん達に渡された睡眠薬をポケットの中で強く握りしめた。
はぁ、失敗したらかよちんになんて言おう?
そもそも、凛がこの計画に参加した訳は他でもないかよちんの為だ。
かよちんはあの日からみんなと同じようにおかしくなっててこの復讐が成功してまた元通りのかよちんに戻ると思うと凛は何だか凄く嬉しい!
また、かよちんと昔のように遊んで笑って過ごせる。
それだけで、やる価値はある。
凛「208号室・・・ここだね」
部屋に入るやいなや男は服を脱いで凛に一緒にシャワーを浴びようと提案したけど凛は断った。
やることがあるからだ。
男はしつこく凛に迫ったけど、帰るよ?って言ったら仕方なく一人でシャワーを浴び始めた。
財布を盗まれないか心配だっんだろう。
でも、凛が今やることはそれ以上に残酷だよ?
冷蔵庫から一つ300円もするコーラとコーヒーを取り出す。
その内のコーヒーのキャップを開けて睡眠薬を混ぜる。
コーラも開けて一口飲む。
炭酸が喉を刺激したのと同時に男はバスルームから出て来た。
早い。
凛「早かったね。はいコーヒー!どっちも飲みたかったから両方開けちゃった」
男は怪しむ事もなくコーヒーを飲む。
普通、怪しんで断るこの状況。
この男の頭は性欲で支配されてる。
完全にわかる。
凛「うわっ!」
男はいきなり私を押し倒す。
凛「い、痛いよ~落ち着いてゆっくりしよ?凛はそっちの方が・・・んむぅ?」
キスをされた。
凛はこう言う状況はもう慣れてるけど、やっぱりレイプした男にキスをされるのには本当に嫌だった。
凛「眠いでしょ?」
目がトロンとして来ている。
凛「コーヒー睡眠薬入れたよ」
バタリと凛の体に覆いかぶさる。
凛「うぅ・・・重いにゃー!」
もう遅いので今日はここまでにします
Chapter5
花陽『汚れた世界』
男をハイエースへと乗せる絵里ちゃんと凛ちゃんを見てよくあんな汚い物を触れるなぁと感心する。
絵里「ラブホテルの人怪しんでなかったかしら?」
凛「大丈夫大丈夫。怪しんでもそんなに深く関与して来ないよ!」
絵里「本当に大丈夫?」
凛「だから大丈夫だってー。ラブホテルは犯罪の宝庫だよ?酒を飲ませた女を無理矢理連れ込んだり薬を飲ませてセックスしたり援助交際だって日常だよ?私達はただ眠ってる男を送ってくだけ、そんな風に思われるんじゃないかな?」
絵里「だといいんだけど・・・」
花陽「それより、絵里ちゃん早く行こ?ここの空気汚いよぉ・・・」
凛「あはは・・・相変わらずだねかよちんは」
花陽「よくこんな所に毎日いられるね凛ちゃん」
凛「もう!その潔癖性絶対治したほうがいいよ!」
そう、私は潔癖性だ。
世の中には汚い物が溢れている。
例えば、このホテル街の空気。
もう、足を踏み入れただけで汚れているのがわかる。
そして、凛ちゃんも汚れている。
だって売春婦って・・・世間一般の常識で考えても汚れているのに潔癖性の私から見たらそれがどんなに汚れているか・・・。
それを抱く男も汚れているし、出来れば近付いて欲しくないのが本音だ。
ここに来て何回アルコールティッシュで手を拭いたか分からない。
そう考えてる今も手袋を外してアルコールで汚れを除菌する。
あぁ汚い汚い。
私をこんなにした男に復讐出来るから我慢してるけど、普通ならシャワー浴びて体洗って湯船に浸かって体を洗っていた。
絵里「じゃあ行きましょうか」
凛「う、うん。ねぇ?この男今からどうするの?」
絵里「拷問」
凛「り、凛は帰っていいかなぁ?」
花陽「何で?何で帰るの?」
凛「え、だって・・・凛はそういう事したくないし・・・そ、それにこの男を誘って眠らせるって約束だったよ?だから・・・」
絵里「そうね。凛にも生活があるものね・・・」
花陽「ダメだよそんなの」
凛「えっ?」
花陽「考え方が汚いよ」
凛「だ、だって・・・」
絵里「花陽・・・凛には」
絵里ちゃんが私の肩を叩いて体中に鳥肌が立ち思わず叩き落とした。
花陽「や、やめてよっ!!!さっきその男を触った手で私を触らないでっ!」
絵里「ご、ごめんなさい・・・」
花陽「アルコールティッシュもうなくなりそうなんだよっ!?私が潔癖性なの知っててなんで触るの!?」
絵里「ごめんなさい・・・」
凛「か、かよちん落ち着いて・・・」
花陽「凛ちゃんも凛ちゃんだよっ!あの日の事を思い出して悲しくならないの?穂乃果ちゃんはこの人に殺されたんだよ!?私達はその復讐で今こうやって汚い所にも我慢して行ったのに今更帰るだなんて・・・自分だけ聖者にでもなったつもりなの!?」
凛「そ、そんな事ないよ!凛だって凛だって・・・」
花陽「凛だって・・・なに?私達はみんなこの人のせいで崩壊したんだよ!?」
凛「凛はただかよちんの助けになればなぁって・・・」
花陽「私じゃなくて穂乃果ちゃんの助けになってよ!!!」
凛「ごめん・・・なさい・・・。分かったよ。凛も着いて行くよ」
絵里「そ、そう・・・ありがとう」
花陽「ことりちゃんもにこちゃんも来ないって言ってたから凛ちゃんありがたいよ」
凛「・・・かよちんもしこの復讐が終わったらまた昔みたいに仲良しになれるかな?」
花陽「・・・それは無理だよ。凛ちゃんが汚れているのは抜きにして、この人を殺してまた昔みたいに仲良しになろうだなんてそれは無理だよ。この人を殺しても私の潔癖性が治らない。みんなも汚れた世界で汚れたまま生きて行く」
ハッピーエンドなんかない。
凛「そんな・・・」
絵里「凛も分かるでしょ?やっぱり私達はみんな壊れてしまっているのよ。あの日からみんな壊れてしまってるのよ」
凛「じゃあなんで凛達は復讐するの!?復讐したらみんな仲良しになるんじゃないの!?」
花陽「もう戻れないよ。これは神様のが私達に仕掛けた試練なんかじゃないんだよ・・・ただの悪意がある悪戯」
凛「いきなり神様とか言われても凛わかんないよ!凛は凛はまたみんなと仲良くしたいって思ってる!」
花陽「そんなの私もだよ!昔みたいにラーメン食べに行ったりしたいよ。だけどもう私達は一緒には走れない」
凛「・・・」
絵里「悲しいけどね・・・凛が言う事も分かる。その話は全てが終わってからみんなで話してみんなで決めましょう」
ことり「・・・そうだね」
絵里「えっ!?こ、ことり?いつからいたの?」
ことり「ずっと前からいたよ。それよりもにこちゃんは復讐なんかしないって言ってた。真姫ちゃんは絶対に参加させたらダメだから私達で・・・」
花陽「うん・・・穂乃果ちゃんの為に」
ことり「うん・・・」
そして、それぞれの鬱憤を晴らす為に私達はこの男を[ピーーー]。
みんなは言葉にはしていないけどこの復讐はもうただの自己満足だ。
Chapter6
真姫『汚れた世界』
真姫「はい、今日のご飯はシチューよ。穂乃果」
穂乃果「うわぁ!やったー!」
先に言っておくけど、この子は死んだ穂乃果ではなく私の子供だ。
そして、性別は男だ。
でも、男で穂乃果って名前も中々イケてるでしょ?
全然おかしくない。
真姫「はいじゃあ。おててを合わせていただきます」
穂乃果「いただきます!」
私は思う。
この子は天使なんだって思うようにしてる。
正直言うと、最初はこの子を産みたくはなかった。
だってレイプされて出来た子供だなんて誰だって産みたくはないはずだ。
だけど、この子が私のお腹を蹴った時。
一瞬で考えが変わった。
この子と二人で生きて行こうと思って産んだ。
今じゃもう小学生。
育ち盛りで育児も大変。
だけど、この仕事はどんな仕事よりも遣り甲斐があって希望に満ち溢れてる。
父親のいないこの子は時々苦労して生きて行くのだろうけど、私が何とか支えになってあげなきゃ。
真姫「美味しい?」
穂乃果「うん!美味しい!」
何だか本当に穂乃果に似てきたような気がする。
穂乃果「あ!スクールアイドルの人今日みたよ!」
真姫「本当?」
穂乃果「うん!なんか凄かった!」
真姫「学校に来てたの?」
穂乃果「ううん。帰り道でたまたま見た!」
真姫「良いものがみれたわねー」
穂乃果「うん!」
スクールアイドルだった事はこの子には隠している。
あの日の事をこの子に知られたらこの子はきっとショックを受ける。
だから言わない。
真姫「ほら、シチュー食べないと冷めるわよ」
穂乃果「うん!」
そう言えばみんなは何をしてるんだろう。
今日久しぶりに海未を見たけどやっぱり相変わらずだった。
他の母親達に話してるの見られたらマズイから話しかけてはいないけど、誰か彼女を助けてあげて・・・。
穂乃果「そう言えばスクールアイドルのスカートめくった!」
真姫「・・・うん?スカートがどうかしたの?」
穂乃果「スクールアイドルのスカートめくったんだよ!白!」
真姫「は?」
穂乃果「あっ・・・ごめんなさい」
真姫「何でそんな事したの?やっちゃダメって言ったじゃない」
穂乃果「ごめんなさい・・・」
真姫「ごめんじゃないわよ!!!」
頬をビンタした。
真姫「なんで!なんでするのそういう事!」
倒れるテーブル。
熱いシチューがこの子の太ももに零れる。
穂乃果「熱い・・・熱いよっ!」
真姫「うるさい!なんでしたの?言いなさいよ!」
ビンタビンタビンタ。
泣き叫びながら謝る。
ちゃんと教育してあげなきゃいけない。
この子はレイプされた男の血が混じっている。
だから、ここでキチンと教育しないとこの子が大きくなった時、誰かをレイプする。
ビンタビンタビンタ。
ごめんなさいをひたすら繰り返す。
真姫「はぁ・・・はぁ・・・」
穂乃果「うぅ・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
真姫「言って。女の子のスカートをめくった事がどれだけ悪いか言って」
穂乃果「はい・・・」
ビンタ。
穂乃果「はい!・・・女の子のスカートをめくると言う事はとても悪い事です。それに、女の子の体を断りもなく触る事も悪い事です。だから僕は悪い子です。お仕置きされて当然です」
真姫「はい、良く言えたわね。じゃあごちそうさまですしましょう?」
穂乃果「・・・」
真姫「ごちそうさまですは!?」
穂乃果「ご、ごちそうさまでした!」
真姫「じゃあ。汚れたからシャワー浴びてきなさい。火傷してたら教えてね。軟膏持って来るから」
穂乃果「うん・・・」
大丈夫。
私はこの子を犯罪者なんかにしたりしない。
Chapter7
絵里『汚れた世界』
樹海。
木々が風に揺られ鳴く。
花陽「・・・これ触るの?」
凛「私がやるよ」
凛の手にはハチミツ。
そして、その先には樽の中に顔だけ出した男の姿。
ガムテープで口を塞いでいたが、何を言ってるのか大体検討が付く。
出してくれ!
出してくれ!
出してくれ!
男は恐怖に怯えた表情でそう何度も繰り返しているように思える。
ことり「これ、考えたの絵里ちゃん?」
絵里「えぇ、樽の中に男の頭だけ出して顔にハチミツを塗るの。そしたら、虫が集まって来て男を刺す。きっとその痒みや痛みは想像を絶するでしょうね。樽の中で排泄もするからそれがどんどん溜まっていって男の体はどんどん腐って行くわ。きっと凄く苦しいわよ」
花陽「汚いよ・・・」
絵里「大事なのはこれからよ。これから二日に一回この男に食事を与えなくちゃダメなの。排泄出来ないからね。みんな協力してくれる?」
凛以外頷く。
絵里「凛。もうここまで来てしまったから凛も協力して」
凛「分かった。分かったよ・・・」
絵里「穂乃果・・・やっとこの時が来たわよ。私達をレイプしてあなたを殺した男達の内一人に同じように苦しみを味わせる事が出来る」
凛「ねぇ?穂乃果ちゃんはこんなこと望んでいるのかなぁ」
絵里「分からない。でも、望んで無くても私はやってた」
花陽「凛ちゃん・・・言わないよね?」
凛「・・・えっ?」
花陽「この事、警察に言わないよね?」
凛「い、言うわけないよ!」
花陽「よかった・・・あ、最初の食事運びは私がやるよ」
ことり「・・・ねぇ?」
絵里「どうしたの?」
ことり「うん。あのね。私、ずっと復讐したいって思ってた。ずっとずっと。でもやっぱり私達は間違ってるよね。復讐しても満たされないと思う・・・なんでこうなっちゃったんだろうね」
ことりは泣いていた。
花陽も凛も・・・みんな泣いていた。
絵里「みんな・・・私ね。思ってた。将来はみんなと一緒にロシアに行ってロシアの素敵な所いっぱい教えてやるんだーって」
ことり「わ、私はみんなに洋服沢山作ってあげるのが夢だった!衣装じゃなくて洋服!みんな私が作った洋服着てみんなをコーディネートしてみたかった!」
凛「凛は・・・ラーメン屋さんになりたかった。ラーメン屋さんになってみんな招待してμ'sが良く来るラーメン屋って言われるようになるの!そしてそしてね。みんなのサインがお店の中にドーンって飾ってあるの!それを見て凛はあぁみんなと会えて良かったなぁって思うの!」
花陽「私は農家になりたかった。私が丹精込めて作ったお米をみんなに食べて欲しいから・・・。もちろん無農薬だよ!で、お山に登って山頂でおにぎりを食べる!きっと凄く美味しいんだろうなぁって」
何で急に私達は夢の話をしたんだろう。
分からない。
ただ一つ確実な事はもうこの夢は絶対に叶わないって事だ。
絵里「・・・みんなごめんね」
これから数ヶ月。
私達はこの男に復讐をする。
きっと、私達の結末は悲惨な物になるだろうけど・・・いつか死んで全てを忘れたとしたら。
もう一度生まれ変わってやり直そう。
Chapter8
にこ『汚れた世界』
あの日のニュースを見た時は流石にびっくりしたわよ。
みんな捕まるだなんて。
信じたくは無かった。
それも・・・拷問した男が全く無関係の男だったなんて・・・。
にこ「救いは無いのね・・・」
断っておいて良かったと言う安心感と言葉では言い表せないない胸のムカつき。
こころ「お姉ちゃんただいまー」
にこ「おかえりなさい」
こころ「なに見てるの?」
にこ「アルバムよ。ほら、あっち行きなさい」
拷問した男無関係だった人と知った時。
みんなはどんな顔をしていたのだろう。
その時、何を思ったのだろう。
もし、先に知っていれば希のように自殺していたかも知れない。
無関係の男を拷問して殺してしまった彼女達の罪は確かに大きい。
それを、私が癒してあげる事が出来るのなら何だってする。
でも、それは死んだ穂乃果を生き返させる事よりも難しい。
この圧倒的な悲惨。
やってる事自体が間違ってたと言う事実。
アルバムの中のみんなはどれも笑顔で輝いてる。
綺麗な世界で息をして吐いて感じて笑って泣いて怒っている。
全ての元凶の私が何でまともな暮らしをしているのかが分からない。
中卒フリーターだからまともとは言えないけど、マシだ。
みんなに比べたら、マシだ。
私があの日。
ブログに別荘の写真とここで合宿をするにこ!だなんて投稿しなければ男達は場所を特定出来ずに世界は汚れてなんかいなかった。
確実に。
罪悪感で死にたくなったりもする。
だけど私は綺麗に生きる。
惨めでもバカにされても綺麗に生きる。
それを穂乃果は望んでいるだろう。
だから、私は汚れた世界で綺麗に生きる。
最終Chapter
海未『世界』
どこにいるのか分からない。
私は探している。
あの日、私達を強姦した男達を。
いつもこうやって、包丁を上着で隠しているから何処で会っても殺せる。
そして、経った今見付けました。
あいつ。
あいつが。
あいつがそうです。
ちゃんと覚えいます。
間違いないです。
今からちょっと行って来ます。
男は気付いていません。
私に、気付いていません。
やっと殺せる。
そう、思うと私は解放された気がします。
思えば私が穂乃果を殺したようなものです。
変わりに私が[ピーーー]ば良かったと思います。
自分でも分かります。
私は狂っているんだと。
自覚も無しに口から穂乃果穂乃果。
何か喋ろうとしたら穂乃果穂乃果。
いつの間にか穂乃果しけ喋れなくなってしまいました。
私は包丁を手に取ります。
男はすぐ近く。
男の背中に包丁を突き刺す。
飛び出る血液。
倒れる男。
私は馬乗りになって何度も刺します。
ふいに穂乃果の声が聞こえて来ました。
きっと幻聴でしょう。
グサッ。
穂乃果「きっと私達は」
グサッ。
海未「・・・穂乃果」
グサッ。
穂乃果「きっと私達は」
グサッ。
海未「穂乃果っ!」
グサッ。
穂乃果「きっと私達は・・・」
グサッ。
海未「穂乃果っ・・・ほのかっ!!!私はっ!」
穂乃果「きっと私達はどこへだって行ける。そんな気がするよ!」
海未「穂乃果・・・・・・・・・」
ずっと前から愛していました。
穂乃果「汚れた世界」
END
このSSまとめへのコメント
この作者精神の病気か何か患ってんのか?
なんつーか、まあ、うん
ストレス溜まってたんだろうなと思ったな