「先輩、お話しましょう」『うん、いいよ』 (137)
「失敗は成功の母とよく言うけど、私はそう思いません」
『どうしてだい?』
「だって、自分の母親を失敗とは呼びたくないじゃないですか」
『えらく自分に自信あるんだね、きみ』
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「先輩は甲斐性なしですね」
『うん、よく言われるよ』
「冗談ですよ。先輩は不甲斐無いです」
『どっちも褒め言葉じゃないよね』
「お腹が空いたね」
『お腹が好くなんて、よっぽど美味しかったんですね』
「まだ食べてないんだってば」
「それ、鯖缶だよね」
『味噌煮じゃないですよ、醤油煮です』
「それは分かるけど、弁当がそれだけじゃあ少ないよね」
『ごはんは先輩のお弁当からいただきます。交換しましょう、鯖缶はもう一缶ありますから』
「二缶持ってくるならごはんも持ってこようよ」
「この話、前にどこかでしなかったっけ?」
『気のせいです、多分』
「多分って」
『思いついたら新しい話もしましょう』
「前にした話もあるんだ」
『はい』
「私、運動は嫌いなんですよ」
『そりゃまたどうして。身体にもいいのに』
「だって、長く続けてる運動をやめると太っちゃうって言うじゃないですか」
『それはよく聞くね』
「やめると辛いなんて麻薬と同じですよ」
『そんな意見は初めて聞いたなぁ』
「君は掴み所がないよね」
『セクハラですか』
「どう受け取ったらそうなるんだろう」
『私にだって掴めるくらいにはあります。掴んでみてください、わしっと』
「いや、ちょっと」
『先輩のも掴んでいいですか』
「人の話を聞こうか」
『さあ』
「正直な人って信用できるよね」
『私はご飯をおごってくれる先輩が好きです』
「君は自分の欲望に正直すぎると思うんだ」
『好きです』
「……今日は僕がおごるよ」
『大好きです』
「これってどっちがどっちの括弧なのかな」
『先に話し始めたほうが細い括弧でいいと思いますよ』
「じゃあ今回は僕が細い括弧で」
『私が太い括弧です』
「僕が細くて」
『私が太……私はスリムです』
「こういう形式のもので台詞の括弧を間違えるのは致命的だと思うんです」
「確かにそうだよね」
「どっちが喋ってるか分からなくなりますから」
「さて、僕はどっちだと思う?」
「私もどっちだと思いますか?」
「……」
『ごめん、待った?』
「はい、とっても」
「君は可愛いなぁ」
『先輩は格好いいですね』
「……」
『……僕はそんなこと言わないよ』
「私もそんなこと言いませんよ」
『君がやろうって言い始めたんだけどね』
「明日からテストですね、先輩」
『うん、そうだね』
「テストですね」
『うん』
「……」
『……』
「…………お昼おごりましょうか?」
『おごろうとする前にまず素直に教えてって言ってくれればいいのに』
「……何してるの?」
『イメージトレーニングです』
「勉強しようよ」
『私がテストで高得点を取っている未来がはっきり見えます』
「ねえ」
『勝利のイマジネーションです、いまーじねーいしょーん』
「イメトレ頑張ってね、僕は帰るから」
『待ってください待ってください』
「こんな時間だし僕はもう寝るよ」
『セクハラですか』
「これはもうれっきとした逆セクハラだよ」
『セクハラしあえる仲って素敵ですよね』
「それはどうなんだろう」
『こんな時間だしもう寝ましょう、私と』
「セクハラだよね」
『性交渉です』
「ドミノで勝負しましょう」
『どっちが先に完成させるか?』
「いえ、私にドミノを倒されないように組み上げられれば先輩の勝ちです」
『圧倒的に僕が不利だよね』
「安心してください。私は人差し指だけしか使いませんから」
『そいつは良心的だ』
「独特のふいんきが感じられるものっていいですよね」
『雰囲気に惚れたってやつだね。よくあるよ』
「先輩はどんなふいんきが好きなんですか?」
『僕はちょっと不思議な雰囲気が好きかな』
「告白ですか」
『どうしたの急に』
「中学の頃に不思議ちゃんって呼ばれてましたから」
『確かにそんな雰囲気だ』
「ふぃーん」
ひとまずここまで
「その括弧にその口調……もしや球磨川先輩?」
『いや、別人だからね』
「まあ知ってましたけど」
『確かにこの括弧でこの口調だと間違われちゃっても仕方がないかな』
「先方に迷惑をかけないためにもガラッと口調を変えてみましょう」
『僕は自分を曲げないよ』
「褒められて伸びる子なんです」
『それは偉いね』
「ほら、今伸びましたよ」
『何が伸びたの?』
「身長が伸びました」
『それは駄目だ』
「ああ、怒られたから少し凹んでしまいました」
『怒られても縮まないんだね』
「そろそろ夏だね」
『そろそろ夏だね』
「……」
『……』
「涼しい方が好きなんだけどなぁ」
『涼しい方が好きなんだけどなぁ』
「……」
『……』
「何してるの?」
『リツイートです』
「ロマンは大切ですよ」
『ロマンチストなんだね』
「ロマニストなんです」
『ギタリストみたいに言い直さなくても』
「ロマーをかき鳴らします」
『じゃーん、って?』
「ろまー、って」
『よく分からないなぁ』
「私のおじさん、デジモンなんですよ」
『藪から棒にどうしたの』
「先日ジョブレス進化したんだって言ってました」
『無職になったのを格好つけて言ってるだけだよね』
「私とジョグレス進化したいとも」
『警察って110番だっけ』
「まったく、どっちなのかハッキリして欲しいですよ」
『ハッキリしないのは困るね』
「実害がないのでまだ許せるんですけどね」
『ところで何に対して怒ってたんだい?』
「ナイアルラトテップです」
『ああ、ナイアル……え?』
「ないのかあるのか分からないじゃないですか」
『呼び方を変えればいいんじゃないかなぁ』
「どうしたの、こんな所に寝転がって?」
『斜に構えて物を見る人たちを斜に構えて見てるんです』
「90度刻みなんだ」
『さすがに鋭角じゃ立てませんから』
「ちなみに僕は今君を270度くらい斜に構えて見てるよ」
『なんと!』
「こんなことで君が初めて驚く姿を見られるとは思わなかったよ」
「不純異性交遊ってあるじゃないですか」
『あるね』
「不純な異性って動物の耳や尻尾が生えていたりする異性でいいんですよね」
『不純物が混ざった人間の異性って意味じゃないからね』
「あれ、急に不純異性交遊への興味が失せました」
『不純だなぁ』
「ああっ、駄目だ、ネタ切れだ」
『ネタは切れるのにネタのキレは悪いんですね』
「失礼な、それなりにはキレがあると自負してるよ」
『この程度の煽りでキレるんですか?』
「キレないよ」
『やっぱりキレないんじゃないですか』
「くるっとまわって、たーん」
『くるくる』
「たーんたーん」
『回る回る』
「先輩が撃たれてしまいました」
『ああ、そっちの』
「にゃんにゃんふふーんねこぐるまー」
『わんわんふふーんいぬみこしー』
「二匹で一つのねこぐるまー」
『二匹で一つのいぬみこしー』
「だけどあなたは犬が好きー」
『それでもきみは猫が好きー』
「わんわんふふーんわんふふーん」
『にゃんにゃんふふーんにゃんふふーん』
「人間だってコンセントで充電してるんですよ」
『そりゃあいつの間に』
「産まれたときはみんなお母さんとコンセントで繋がってるじゃないですか」
『十月十日で何十年も動くなんて高性能だね』
「でも再充電不可なんて所詮人間は不良品ですよ」
『手厳しいなぁ』
「先輩、お弁当を交換しませんか」
『君のそれ、コンビニ弁当だよね』
「中身は私の手作りです」
『ちょっとしたサプライズだ』
「でも早弁しちゃったからもう空っぽなんですよ」
『そんな二重のサプライズはいらないなぁ』
「えいやぁー」
『ちょっと待って、何やってるの』
「まだだー、えいやぁー」
『それ僕の箸だから』
「そぉーれぇー、えいやぁー」
『分かったから、チョップスティックはチョップするスティックだって認めるからやめて』
「分かればいいのです、えいやぁー」
「ん、何読んでるの?」
『新ジャンルです』
「懐かしいなぁ」
『今じゃ滅多に見ませんよね、新ジャンル』
「滅茶苦茶なジャンルも多かったけど面白かったよね」
『新ジャンル「先輩と後輩」』
「使い古され過ぎててもはや旧ジャンルだよ」
『「時代は変わったんだ、オールドジャンルは失せろ」ってやつですか』
「そこまでは言ってないから」
「安いよー安いよー」
『何を売ってるの?』
「恥ずかしがりを売ってます」
『ああ、恥ずかしがり屋さんね』
「お一人どうですか、安くしておきますよ」
『一人貰おうかな』
「まいどありー」
『で、その恥ずかしがりはどこに』
「私ですよ、ほら」
『堂々としてるなぁ』
「どんな色が好きですか?」
『うーん……緑?』
「緑色が好きなんですね」
『うん』
「一番先に無くなります。緑の私」
『待ってどうしたの急に』
「うーん、なんだったかなぁ」
『どうしたんですか?』
「ちょっと曲の名前が思い出せなくって。フォークダンスの時に流れてる曲ってなんだっけ」
『オクラホマバスターですよ』
「あぁ、それだ……いや、ちょっと違う気がする」
『オクラホマドライバーでしたっけ』
「違う、そういう系列なんだけど……」
『オクラホマのおたけび?』
「それは絶対に違う」
「生きる理由が見付かりません」
『みんな大体そうなんじゃないかな』
「でも死ぬ理由も見付かりません」
『そうそう見付かるもんじゃないからね』
「だからこうして先輩と話をしています」
『そう言われるとちょっと悔しいかな』
「第一回喧嘩の強そうなひらがな選手権ー、どんどんぱふぱふー」
『なにが始まったのこれ』
「『に』が強そうですよね。中心に入ってきた相手を三方向から突き刺す感じで」
『そんな凶暴そうには見えないけどなぁ』
「もしかして明朝体で見てないんですか?」
『そんな質問されたのは初めてだよ』
「先輩が居ないので私だけです」
「なので、ゆっくり沈んでいきましょう」
「暗くて、深いところへと少しずつ引き寄せられていきます」
「目を閉じて……静かなところへ……ぶくぶく……」
「…………」
『こんな所で寝てると風邪引くよ?』
「……あ、おはようございます」
「夢を見ていたんです」
「小さな先輩が沢山いて、私はそれを可愛いなぁと思いながらつまようじで潰していくんです。ぷちぷち」
「よく見るとそれは先輩じゃなくてエビの形をしたとうもろこしでした」
「とうもろこしはわれさきにと弾けてポップコーンになります」
「あ、美味しそうなポップコーン」
『それは僕だからつままないでくれるかな』
「お腹が空きました」
『そろそろご飯の時間だね』
「ところで晩ごはんの献立は」
『うちに食べに来る気満々だね』
「先輩だって私を食べに来てもいいんですよ」
『セクハラだよね』
「性交渉です」
「一昨日は七夕だったね」
『そうだったんですか、すっかり忘れてました』
「今から願い事を書いても間に合うかな?」
『間に合うんじゃないですか?』
「二日も遅れてるのに?」
『光だってたまには遅れますよ。電車だって毎日遅れてるんですから』
「なるほど」
「お年寄りには席を譲りましょう」
『いいことだね』
「だから今は私の代わりにおばあさんが私の席にいるんです」
『譲ったんじゃなくて押し付けたんだよね、それ』
「私より優秀でした」
『席を奪われたね』
「……はぁ、疲れた」
『……ぐてーん』
「君もお疲れさま」
『もうぐてーんですよぐてーん』
「ぐてーんだね」
『ぐてーんぐてーん』
「ぐてーん」
『てんぐのしわざじゃー』
「急がば回るんです」
『回るんだ』
「縦に」
『せわしないね』
「でも、逆回転もできるんですよ」
『高性能だなぁ』
「例えば、ここに山積みの原稿用紙があるとします」
「これは私が今まで書いてきたものが全部積み重なったものです」
『結構書いてきたんだね』
「これと同じ大きさの鉄の塊で人を殴るとどうなると思いますか?」
『多分死んじゃうんじゃないかな』
「それが継続は力なりというやつです」
『いーやそれは違うと思う』
「例えば、ここに山積みの原稿用紙があるとします」
「これは私が今まで書いてきたものが全部積み重なったものです」
『結構書いてきたんだね』
「これと同じ大きさの鉄の塊で人を殴るとどうなると思いますか?」
『多分死んじゃうんじゃないかな』
「それが継続は力なりというやつです」
『いーやそれは違うと思う』
「はいは一度でいい、って言うけどさ」
『はい』
「バイバイに対してバイは一度でいい、とは言わないよね」
『それはほら、売買ですし』
「それじゃあ売買?」
『そのばいは三度です』
「はいはいはい」
「川を流れていくだけの仕事があるとしましょう」
『うん、あるとしよう』
「いいですよね。涼める上にお金がもらえるんですよ」
『大雨が降った時は大変だよね』
「あっ」
『冬は寒いし』
「……ままならない世の中です」
「美味しいけど身体に悪いものがいいですか?」
『そう言われるとちょっと嫌かな』
「それとも不味いけど身体にいいものがいいですか?」
『不味いものも嫌だなぁ』
「わがまま言う人には毒にも薬にもならないものしかあげません」
『それならいっぱい食べられそうだ』
「カラオケかぁ」
『豆腐を買いましょう』
「なんで豆腐なのかな」
『豆腐が納豆で納豆が豆腐って言いますもんね』
「カラオケの話だったよね」
『桶屋がもうかります』
「なにがなんだか」
「お腹が空きました」
『もうお八つ時だしね』
「ぎゅるぎゅる」
『そんなにお腹空いてるんだ』
「空腹を紛らわせるために胃が高速回転しています」
『余計にお腹空かない?』
「リスがいます」
「ほっぺをつつきます」
「ドングリが口からいっぱい出てきます」
「これがジャックポットです」
「ほら、先輩も」
『食べてるときに頬をつつかないでくれるかな』
「じゃらじゃら」
「サクランボの種を舌で結べる人はキスが上手らしいですよ」
『種を』
「はい。あんなものを舌で結ぶなんて相当難しいですよ」
『そりゃあ球体だからね』
「球体……? あっ」
『サクランボの種の話だよね?』
「……」
『どうしたの、こっちに顔を近付けてきて』
「舌で先輩ののどちんこを結ぼうかと」
『ちょっと待って』
「お久しぶりです、先輩」
『昨日も会ってるんだけどね』
「私には千年前のように感じられましたよ」
『一日千秋の想いってやつかな』
「おかげさまで昨日植えたイチョウが大木になりました」
『そりゃあ凄いね』
「秋だけが千年続いたから家が落ち葉まみれで」
『落ち葉掻きなら手伝うよ』
「受験シーズンだね」
『受験戦争は大変です』
「僕の時も大変だったよ」
『私の時は反受験ゲリラが乗り込んできて』
「そうそう反受験……え?」
『私たちも筆記用具で応戦して難を逃れたんですけど』
「僕の知ってる受験戦争じゃないなぁ」
『戦争を知らない世代ですね』
「先輩が風邪をひいたと聞いてご飯を炊いてきました」
『炊飯器ごと持ってきたの?』
「はい。いっぱい食べさせてあげたいと思って」
『……なんで僕に食べさせるために持ってきたご飯を自分の口に運んでいるのかな?』
「風邪をひいている時はご飯よりお粥の方がいいと思いまして」
『待って』
「もぐもぐ」
「そういえば昨日はハロウィンだったね」
『あんなビッグイベントを逃してしまうとは一生の不覚でした。これじゃあハロウィンならぬハロルーズです』
「ハロルーズって」
『さしずめ私たちなんてハロルーザーですよ。これから一年間はハロウィナーたちに見下される日々が続きます』
「そんな滅茶苦茶な」
『悲しいことですがこれが世界のルールですから』
「あ、焼き芋屋さんですよ」
『いもいも言ってるね』
「先輩、買いに行きましょうよ」
『ごめん、今ちょっと手が離せないんだ』
「ほら、信号で止まってますよ」
『……用意するからちょっと待っててね』
「あーあー行っちゃいます早く早く」
『じゃあちょっとひとっ走りしてくるから待っててね』
「あ、私も行きます」
『この前勝手についてきて道に迷ってたよね』
「待ってます」
「……」
『あ、次入れてください』
「じゃあいいぐらいになったらストップって言ってね」
『はい』
「……」
『……』
「…………」
『…………』
「………………」
『あーあーあー』
「ちなみに僕はストップって言われるまで入れ続けるタイプだから」
『ストップ、ストップです』
「布巾取ってくるね」
「模倣って悪いことなんでしょうか」
『オリジナルを主張しなければ大丈夫なんじゃないかな』
「人間なんて所詮アダムとイヴの模倣品ですよ」
『えらく過激だね』
「私たちもアダムとイヴになりましょう」
『性交渉だよね』
「正攻法です」
「テスト終わったね」
『終わりましたね』
「結果はどうだったの?」
『テストで三点、笑顔は満点って感じです』
「ドキドキワクワクの連日補習だね」
『先輩直々の個人レッスンですか』
「なんでそうなるのかな」
『ドキドキワクワクしますから』
「えらくゆっくり歩くんだね」
『今日はアルデンテな気分ですから。歩くような速さで、です』
「そりゃあアンダンテだよ。アルデンテだと歯ごたえが残るからね」
『どっちでもいいじゃないですか。ゆっくり歩いて、歩きごたえが残ればいいんですよ』
「そんなもんかなぁ」
『そんなもんです』
「先輩、クリスマスです」
『そうだね』
「ということで先輩、部屋に私を住まわせましょう」
『……どういうことで?』
「クリスマスだけに、クリを住ますと――」
『今から寒空の下に出たいのかな』
「ごめんなさい」
『分かればよろしい』
「……」
『何してるの?』
「ロールプレイングです」
『役割を演じてるんだ』
「先輩の恋人を演じています」
『それにしてはいつもと変わらないけど』
「初めて会った時からずっと演じてますから」
『予想以上に演技派だね』
「自然体でいることがポイントです」
『なるほど。そりゃあ君にピッタリの役だ』
「先輩もやってみますか? 私の恋人の役割」
『その役割を演じるのは難しいかなぁ』
「ドーナツが好きなんです」
『そうなんだ』
「先輩も好きです」
『じゃあどっちの方が好き?』
「……」
「…………ドーナツになった先輩で」
『僕に大穴があけばいいのかな』
「白ストってあるじゃないですか」
『あるね』
「お味噌みたく赤ストもあるんでしょうか」
『赤ストは知らないなぁ。黒ストなら知ってるけど』
「それじゃあ白と黒の合わせストですね」
『合わせストって』
「ちなみに柄はゼブラじゃなくてマーブルです」
「2014年が終わりましたね」
『2015年の始まりだね』
「あっという間でしたね」
『それじゃあ改めて、あけましておめでとう』
「あっ待ってください、古い年を閉めるのを忘れていました」
『開けまして、じゃないからね』
「そうでしたか。じゃあ心置きなくおめでとうできますね、あけましておめでとうございます」
『……ところでその格好は?』
「ひつじですよ。ひつじ年ですから」
『羊じゃなくて雲にしか見えないなぁ』
「じゃあいいですよ、今年はくも年です。ひつじなんてお呼びじゃありません」
『君がなんと言おうと羊は干支の座を降りないだろうけどね』
「強情っ張りですね。おとなしくくもに席を明け渡すべきですよ」
『羊が強情張りなんじゃなくて君が強請ってるだけだよね』
「七草粥を作ってみました」
『にしては七草どころか一草も入ってないんだけれど』
「よく言うじゃないですか、無くて七草って」
『そんな屁理屈のような諺、言ったことも聞いたこともないよ』
「……無くてものぐさ?」
『まあ、やる気が無いからものぐさなんだろうね』
「“お客様は神様”という言葉がありますけど、あれってかなり的を射てると思うんです」
『あれ、君はそのワードを否定しそうなイメージがあったんだけど』
「だってあれ、“面倒事を起こされたくなかったら機嫌を損ねるな”って意味ですよね?」
『疫神だったかぁ』
「丁寧な対応をしてもデメリットがないだけですし、厄介極まりないですよ」
「僕は小さなことに喜びを感じるんだ」
『喜び過敏症ですね』
「そんな物騒なのじゃないよ」
『へっへっへ、こんなに喜んじまって』
「……」
『ごめんなさい』
「物分かりのいい君が好きだよ」
「春はおかしい人が増えるってよく言うよね」
『あれは間違ってると思います』
「そりゃあどうして」
『春はちょっと楽しくなるだけなんですよ』
「それじゃあ僕はここ最近ずっと春かな」
『春はおかしい人が増えるってよく言いますよね』
「それは間違ってると思うよ」
「私、小洒落た小説の登場人物に憧れてるんです」
『そうなんだ』
「だから好きでもないのに洋楽を聞いて、本心でもないのに世界をくそったれとか言って罵るんです」
『小洒落てる……のかな?』
「お母さんには小賢しいと言われました」
『一理あるね』
「ふぃーん」
「『や、やめろ、もうたくさんだ!』って台詞があるじゃないですか」
『攻められてる側の台詞だね』
「それに対して『“もう”じゃなくて“まだ”たくさん残ってるんですよ~』って攻め続けるのはどうでしょう」
『攻めてる側……ですかね』
「まあ、うん、好きにすればいいんじゃないかな」
ふっつーにミスった
「『や、やめろ、もうたくさんだ!』って台詞があるじゃないですか」
『攻められてる側の台詞だね』
「それに対して『“もう”じゃなくて“まだ”たくさん残ってるんですよ~』って攻め続けるのはどうでしょう」
『どうでしょうと言われても……それ、誰が得するの?』
「攻めてる側……ですかね」
『まあ、うん、好きにすればいいんじゃないかな』
「今日のお弁当はちょっと気合を入れました」
『へえ、そうなんだ』
「ケレン味たっぷりです」
『そういうの好きだよ』
「……えっ」
『うん?』
「ケレン味ですよ」
『ケレン味だよね?』
「……?」
「こざかなー」
「にざかなー」
「おさかなー」
『何やってるの?』
「なんだろう」
『そこはなにかなー、って答えてよ』
「なんでかなー」
『なんだかなぁ』
「先輩、新しい服を着てみました」
『結構似合ってるね』
「店員さんいわく『馬鹿には見えない服』だそうです」
『そりゃあ凄い』
「続けていわく『黙っていれば完璧』だそうです」
『口を開くと馬鹿丸出しだもんね』
「ふぃーん」
「相方ねぇ」
『麺の固さの一つですね』
「それはバリカタ」
『じゃあ2丁拳銃の近接格闘術ですか』
「それはガンカタ」
『たったひとつの冴えた』
「やりかた」
『先輩から見た私』
「うん……?」
『そこは相方って返してくださいよ』
「そうくるかぁ」
「類は友を呼ぶって言いますよね」
『言うね』
「だから私も格好いいんじゃないかって」
『じゃあ僕も不思議ちゃんなんだね』
「格好いい不思議ちゃんって属性過多じゃないですか」
『しかも可愛い』
「ふぃーん」
『ふぃーん』
「さて、ちょっと長話になっちゃったかな」
『私はまだ話し足りない気もしますけど』
「キリがいいし、今回はここまでってことで」
『今回ってことは次があるんですか?』
「どうだろうね」
『あってもなくても私はお腹が空いたので帰ります』
「どこか食べに行かない? 今日は僕がおごるよ」
『大好きです』
「じゃあ好き同士だ」
『……ふぃーん』
これにて終了です。1年+10分くらいの長話でした
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