のび太「ドーラえもぉ~ん!」ドーラえもん「40秒で支度しな!」(28)

<のび太の家>

のび太「ねえ、ドーラえもん」

ドーラえもん「なんだい、うるさいね!」

のび太「空を自由に飛べる道具出してよ!」

ドーラえもん「いきなりとんでもないことをいいだす小僧だ!」

ドーラえもん「40秒で支度しな!」

ドーラえもん「ったく、40秒っていったのに、40分もかかってどうすんだい!」

ドーラえもん「グズは嫌いだよ!」

のび太「ごめんごめん」

のび太「ところで、この大きな飛行機はなに?」

ドーラえもん「アタシの一家の海賊船さ」

のび太「どうして海賊なのに空を飛ぶの?」

ドーラえもん「細かいことはいいっこなしだよ! さ、とっとと乗りな!」

<海賊船>

ブルルルルル……

のび太「わぁ~、すごい! ホントに飛んでるよ、ドーラえもん!」

ドーラえもん「当然だろう! いちいち騒ぐんじゃないよ!」

「んもう、ママは人使いが荒いんだから~」

「いつもいきなりすぎるんだよなぁ」

「ガタがきてたから、整備してる最中だったっちゅうに……」

ドーラえもん「グチグチうるさい男どもだね! 黙って仕事しな!」

のび太「あの人たちはだれなの?」

ドーラえもん「アタシのバカ息子たちだよ!」

ドーラえもん「玉子にとってのアンタみたいなもんさ!」

ところが──

プスプスプス……! ガクガクガク……!

のび太「うわわっ!?」

ドーラえもん「どうしたんだい!?」

「ママァ~、舵がきかないよ!」

「こりゃあやべえ!」

「ドーラ、エンジンが燃えちゃうよォ!」

ドーラえもん「ふんばるんだよ! 根性出しな!」

「ダ、ダメだァ~!」

ヒュルルルルル……



ズガァァァァァンッ!!!

<墜落場所>

のび太「げほっ、げほっ、げほっ!」

のび太「これのどこが、空を飛べる道具なの!?」

ドーラえもん「うるさいね! 40秒も飛べたんだから、ありがたいと思いな!」

のび太「ドーラえもんの道具は、いつもこうなんだから!」

ドーラえもん「うるさいよ!」

ゴンッ!

のび太「あだだっ……!」

ドーラえもん「さ、帰ってドラ焼き食うよ!」



この日、ドーラえもんはドラ焼きを10個も平らげたという。

またある日のこと──

<のび太の家>

のび太「ドーラえもぉ~ん!」

ドーラえもん「どうしたんだい!?」

のび太「ジャイアンにいじめられたよ~!」

ドーラえもん「ジャイアン!? ああ、あの図体のでかい小僧かい!」

ドーラえもん「40秒で支度しな!」

<空き地>

ドーラえもん「さ、ぶっ飛ばしてきな!」

のび太「ええ、ぼくが!?」

ドーラえもん「当たり前だよ! アタシに殴られたくなきゃ行くんだよ!」

のび太「ひいっ!」



のび太「ジャイアン……しょ、勝負だ!」

ジャイアン「また性懲りもなくやられにきやがったか!」

ボカッ! ドカッ! バキッ!

のび太「や、やっぱりダメだった……」ボロッ…

ドーラえもん「よくもやってくれたねえ!」

ジャイアン「ゲ、ドーラえもん!?」

ドーラえもん「のび太のカタキは取らせてもらうよ!」

ドゴッ! バキッ! ガスッ!

ジャイアン「ほげえ……」ボロッ…

ドーラえもん「だてに50年、女をやってないよ!」



すると──

ジャイアン母「アンタ、またウチのタケシをいじめて!」ズンッ

ドーラえもん「ふん、アンタかい。今日こそ決着をつけようじゃないか!」

ドーラとジャイアンの母ちゃん。

互いに紛れもない“怪物”である。



二頭の雌が奏でる死闘は人智を超え、凄絶を極め、筆舌に尽くしがたいものであった。

まさに龍と虎の一騎打ち。

これを止める術を持つ人間など皆無であり、

周囲の凡愚たちは怪物同士の果たし合いをただ傍観するしかなかった。





やがて、永遠に続くと思われた死闘に、ついに終焉の刻がきた。

ドサァッ…… ドザァッ……



ドーラえもん「ハァ……ハァ……また決着はつかなかったかい」

ジャイアン母「フゥ……フゥ……そうだねえ」

ドーラえもん「今日のところは勝負を預けておくよ」

ジャイアン母「次こそアタシが勝たせてもらうからね!」

ガシィッ!



再戦を誓う二人の熱い抱擁に、観衆は熱い涙を流したのであった。

また別の日──

<のび太の家>

のび太「ドーラえもぉ~ん!」

ドーラえもん「なんだってんだい!? 男がピーピーわめくんじゃないよ!」

のび太「スネ夫が新しいラジコン買ったって自慢してきて……」

のび太「ぼくも欲しいよぉ~!」

ドーラえもん「ったく、世話の焼ける子だね!」

ドーラえもん「40秒で支度しな!」

<空き地>

スネ夫「ふんふ~ん」

ブロロロロロ……

スネ夫「今日もぼくのラジコンさばきは絶好調だね」

ブロロロロロ……

ドーラえもん「ちょいとアンタ!」ズイッ

スネ夫「ゲ、ドーラえもん!」

ドーラえもん「そいつをよこしな!」

スネ夫「や、やだよ!」

ボカッ!

スネ夫「ひええええ~っ!」タタタッ

ドーラえもん「どうだい、手に入ったよ!」

のび太「ドーラえもん、これじゃドロボウだよ!」

ドーラえもん「当たり前だよ!」

ドーラえもん「海賊が財宝を狙ってなにが悪いっていうんだい!」

ドーラえもん「アタシのものはアタシのもの、みんなのものもアタシのもの、さ!」

のび太「おっそろしい……」



その後、結局ラジコンを返すはめになったことはいうまでもない。

さて、また別の日──

<のび太の家>

のび太「ドーラえもぉ~ん!」

ドーラえもん「やかましいね! どうしたっていうんだい!?」

のび太「しずちゃんが、しずちゃんが出木杉と……」

ドーラえもん「しずちゃん? ああ、しずかのことかい」

ドーラえもん「あの子はアタシの若い頃にそっくりだ!」

ドーラえもん「ひっひっひ、今にアタシのような美人になるよ!」

のび太(絶対ウソだ……)

ピラッ……

のび太「ドーラえもん、なにか落としたよ」サッ

のび太「!」

のび太(写真……女の子だ! ……しずちゃん並みに可愛いぞ!)

のび太「ドーラえもん、この写真の女の子はだれ!?」

ドーラえもん「おやおや、懐かしい写真だね」

のび太「懐かしい?」

ドーラえもん「それは若い頃のアタシの写真だよ」

のび太「!?」ガーン!

のび太(そ、そんな……この可愛い女の子がドーラえもんになっちゃったの!?)

のび太(ってことは、しずちゃんもいずれ……!?)

のび太(そんなのいやだぁ!)

ドーラえもん「ところで、しずかと出木杉がどうしたんだい?」

のび太「いや……なんでもないよ……」

ドーラえもん「そうかい」

のび太(もうショックでそれどころじゃなくなっちゃったよ……)



のび太はショックから立ち直るのに、およそ三日を要した。

ついに別れの時が来た。

<のび太の家>

のび太「ええ~!? 未来の世界に帰る!?」

ドーラえもん「未来じゃないよ、ラピュタに行くのさ!」

のび太「ラピュタ!?」

ドーラえもん「アタシは海賊だからね。お宝のニオイがすりゃそこに飛んでいく!」

ドーラえもん「だからアンタとは今日でお別れさ!」

のび太「ぼく、ドーラえもんと別れたくない!」

ドーラえもん「泣かすことをいうじゃないか」

ドーラえもん「だが、アンタはもうアタシなしでもやっていけるよ!」

ドーラえもん「じゃ、達者でやんな!」



こうしてドーラえもんは一家とともに、空へ旅立っていった。

ドーラえもん……。



きみが帰ったらへやががらんとしちゃったよ。

でも、すぐになれると思う。



だから……心配するなよ、ドーラえもん。

数日後──

<のび太の家>

ドーラえもん「ふうっ、散々な目にあっちまったよ!」

のび太「ドーラえもん、どうしたのさ!?」

ドーラえもん「ラピュタにたどり着いたはいいが」

ドーラえもん「ムスカとかいう若造が好き勝手してやがってね」

ドーラえもん「そしたらそれに怒った天上人ってのが、ノア計画を発動しようとして」

ドーラえもん「なんとかノア計画をやめさせるため、裁判が行われることになって」

ドーラえもん「アタシらも裁判出るはめになってキー坊に助けられて」

ドーラえもん「天上人がバルスっていったら」

ドーラえもん「ムスカって奴は目が目がぁ~って落ちていって」

ドーラえもん「で、アタシらは逃げてきたってわけさ」

のび太「なんだかメチャクチャな話だなあ……」

ドーラえもん「というわけで、悪いがまた厄介になるよ」

のび太「じゃあさ、帰ってきたついでに宿題教えてよ!」

ドーラえもん「まったくしょうがない小僧だ!」

ドーラえもん「40秒で支度しな!」





おわり

これで終わりです!

ドーラえもんでググるとやっぱり同じ事を考える人はいるもんだとビックリ

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