進撃の訓練兵団2(319)


――はじめに――

進撃の巨人ssです。

進撃の訓練兵団の続編になります。

進撃の訓練兵団
進撃の訓練兵団 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1369218907/)


完了まで長期間かかりそうなので、トリつきで失礼します


――姿勢制御訓練――


―――アンタも一言多いんだよ


ライナー(そうだったな。すまないアニ)

ベルトルト「ライナー」

ライナー(オレの悪い癖だ…)

ベルトルト「ライナー」ポンポン

ライナー「…あ…すまない。考え事しちまった」

ベルトルト「教官の話を聞いていないのバレたら減点対象だよ」

ライナー「ああ」


キース「これは立体機動装置を使うための最初の姿勢制御訓練である」

キース「見てのとおり、ここの高台の100m先にも同じ高台が設置されている」

キース「二つの高台の間にはワイヤーが張ってあるが…まず諸君らには、このワイヤーから吊り下がってもらう」

キース「そこで腰の立体機動装置を噴かして滑空し向こう側へと渡り、折り返して戻ってきてもらう」

キース「本来は移動目標に向ってワイヤーを射出し向かうわけだが、本訓練ではワイヤーは使わない」

キース「これは滑空状態に慣れることを目的とする訓練である」


キース「なお、立体機動装置の出力は全員一律だ。折り返し点および着地点には衝撃吸収マットが用意されている。質問はあるか」

キース「…よろしい。それでは一番手になる者は進み出よ」


<この台…結構高くないか>
<いきなりスピード出て激突しそう>
<一番手はちょっとな…>


ライナー「いきます」

キース「ブラウン訓練兵か」


――

ライナー「…オオオオ!?」

ライナー(こ、これは)

ライナー「う…ぐ…」

キース「戻ったか。どうであった」

ライナー「ハァッ…ハァ…スピードが乗った分、姿勢制御の適正判断の吊り下がりよりも筋力を使いました」

ライナー「特に首、手足の先は後方に持っていかれがちになります」

ライナー「バランスを安定させるためには前かがみになって、背後から腰を押してくる力に寄りかかるようなイメージを持つのが良いと感じました」

キース「…ほう」

キース「初めてにしては上出来だな、ブラウン訓練兵」

ライナー「ありがとうございます」

キース(個人の感想というよりは、次に続く者のためのアドバイスのようだ。ライナー・ブラウンとはそういう者か)


キース「それでは第一グループ、先頭から順にいけ。次はイェーガー訓練兵だ」

エレン「はい」

エレン(ライナーの言ったとおりにいけばいいだな。よし…)

エレン「操作装置を起動して……ガッ…うわああああ!」

ミカサ「エレン!」


――ドン!


アルミン「対面のマットに激突した……」


キース「イェーガー訓練兵!返事をしろ!」

エレン「…ハッ、大丈夫です。折り返します」

ミカサ「よかった」

キース「全身に込めた力が十分でないと、今みたく突然かかるgに手足を持っていかれる。皆もよく注意せよ」

エレン「ハァァ!」


――ズン!


キース「…帰りは少し良くなったな。コツさえ掴めば問題ないだろう。次、アッカーマン訓練兵!」

ミカサ「ハッ」


ミカサ「……」


――バシュッ


キース「む…」

アルミン「すごい…」

ジャン「すげぇ安定感だ」

ライナー「鋭く速い。皆同じ出力のはずだが…」


ミカサ「……」チャキ


――クル…バシュ!


エレン「なっ…」

アルミン「対面の直前でガスを止めて…」

ジャン「宙返りで体をひねって…」

ライナー「マットを蹴って跳躍…加速して再噴射だと…」

キース(それだけではない。あの両手の握り方…ブレードの抜刀状態をイメージしたものか)



――……トン


キース(それでいて静かな着地だ)

キース「すばらしい…さすがだな。アッカーマン訓練兵」

ミカサ「ありがとうございます」

ジャン「…マジかよ」

エレン「クソ…」


エレン(本当になんでも簡単にこなすな、オマエ…)

エレン(何かひとつでもいい。ミカサを超えたい)

エレン(何か……)


――対人格闘術訓練――


エレン「アニ、オレと組んで格闘術を教えてくれないか」

アニ「痛いのは嫌なんじゃなかったっけ?」

エレン「技術を学んで強くなりたい。頼む」

アニ「まぁ、いいけど」


ミカサ「……」


――

エレン「とりあえず、蹴り技から知りたい」

アニ「蹴りね……いろいろあるけど、アンタは初心者だから回し蹴りからやるのが覚えやすいかもね」

エレン「体をひねるやつか」

アニ「そう。基本は軸足のカカトを上げてスネで蹴る。まずは踏み込みをして…」

エレン「…こうか?」

アニ「はっ、違うよ。こう」


ミカサ「……」


――

アニ「基本はそんなところだね。まずはローキックを効かせて相手のパンチ力とキック力を奪う」

エレン「そうか」

アニ「体重とスピードを乗せたローは、簡単に相手の戦闘力を削げるから」

エレン「アニのロー貰うとまともに立ってらんなくなるよな」

アニ「まぁね。だけど、やり方だけ教わったからって、そんなのすぐにできるようになることじゃないよ」

エレン「ああ。練習あるのみだな」


――

アルミン「ミカサ、どうしたの?」

ミカサ「……」

アルミン「…ミカサ?」

ミカサ「アルミン…」

アルミン「すごく戸惑った顔をしてるからさ」

ミカサ「なにかモヤモヤする…」


アルミン「モヤモヤって…どういうこと?」

ミカサ「私もよくわからない。こんなこと初めて」

アルミン「そうなんだ。気分が悪いの?やれる?」

ミカサ「だいじょうぶ」

アルミン「そう…じゃあ、次はミカサが暴漢役だよ」

ミカサ「うん」

アルミン「……」


――

アニ「蹴りばっかりやってもダメだよ。威力はあってもコントロールが悪いからね。急所を突くならパンチさ」

エレン「……」シュバ

アニ「ダメだね、そんなんじゃ。踏み込みは良いけど脇がしまってない」

エレン「……」シュボ

アニ「拳は目の高さ。肩を内側にひねり込む。こう」

アニ「……」ボッ

エレン「すげぇ」

アニ「ほら、どんどん打ってきなよ」

エレン「ああ!」


――

エレン「良い練習になったぜ。次もまた頼む!」

アニ「アンタも物好きだね」


ミカサ「……」

アルミン(ああ、そうか。エレンは今までミカサ以外の女の子と仲良くしてたことなんて、殆どなかったから…)

アルミン(初めて湧く感情に戸惑ってるんだね。ミカサ、それはたぶん嫉妬だよ)


――夜・食堂――


ミカサ「エレン、疲れてない?体痛めたところはない?」

エレン「いや、大丈夫だぞ」

ミカサ「少し多めに食べて力をつけたほうがいい。これあげる」

エレン「いいって。ミカサこそちゃんと食べろよ」

ミカサ「私は大丈夫だから」

エレン「どうしたんだよ。今日は嫌にひっついてくんな」

ミカサ「心配なだけ」


ジャン「……」イラ



エレン「…ったく。オマエはほんと母さんかよ。そんなに心配されるほどヤワじゃねぇって」

ミカサ「でも」

エレン「さすがにうっとおしいぞ」

ミカサ「……」シュン

アルミン「まぁまぁ、二人ともそのへんにして早く食べよう」


ジャン「……」ギリ


ジャン「おう、エレン。相変わらず心配ばっかりしてもらえていいなぁ。お姫様かぁ?」

エレン「……んだと!」ガタ

マルコ「ちょっとジャン」

ジャン「そうやってすぐ熱くなって動くから心配されんだよ。目が離せない…ってな」

エレン「てめぇ」

アルミン「やめなよ、エレン。とりあえず座って。また教官がきちゃうよ」

エレン「あ、ああ。そうだな」


エレン「で、いつもいつも何のつもりだ。ジャン」

ジャン「…オマエ、少しはミカサの気持ちも汲んでやれよ」

ミカサ「……」

ジャン「他人をずっと気遣い続けるって、結構きついんだぞ」

マルコ「ジャン……」

エレン「ああ?」

ジャン「……ッ!てめぇがいっつもそんなんだからオレは…ッ!」


ミカサ「もういい。ジャン、あなたもやめて」

ジャン「ミカサ!」

ミカサ「私のことは気にしなくていいから」

ジャン「だ、だけどよ」

ミカサ「いいの。ありがと」

ジャン「……く」ギリ


ジャン(なんで、ここまでアイツのことを)

エレン「なんだってんだよ……」

ジャン(ああ……このアホヅラ殴りてぇッ!チクショオォォ)


サシャ(ずっと見てましたが…ジャンって、じつは結構優しいんですかね?)モグモグ


―――

――


またidが変わってる。なんなんだろう。
いったん投下ストップします。


強烈な支援をありがとうございます
また少し投下いきます


ジャン「なぁ、ミカサ。なんでそんなにエレンを気にかけるんだ?」

ミカサ「……」

ジャン「アイツに、そんなに惚れこむとはよお」

ミカサ「…そ、それは違う。エレンは家族」

ジャン「そうか?そんなふうには見えねぇぞ」

ミカサ「ずっと家族だから…エレンもそう思ってる」

ジャン「ふーん…姉貴って感じか」

ミカサ「……」


ジャン「だが、そういうことならオレはミカサに言いたいことがある」

ミカサ「?」

ジャン「オ、オレさ…」

ミカサ「なに?」

ジャン「いや…その……」

ミカサ「……?」

ジャン「……」ゴク


ジャン「ミ…ミカサを最初に見たときから…その、好きだったんだ」

ミカサ「好き?」

ジャン「惚れ…ちまったんだ。一目惚れだったんだ」

ミカサ「……」

ジャン「だから、もし…いま相手がいないなら、オレと付き合ってくれないか。ミカサ」

ミカサ「……」

ジャン「……」


ミカサ「……」

ジャン「…ダメか」

ミカサ「…かまわない」

ジャン「…………は?」

ミカサ「私で良ければ、かまわない。付き合う」

ジャン「な!?」


ジャン「なにいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


ミカサ「どうしたの?」

ジャン「い、いや…まさか受けてくれるとは思わなかった…から」

ミカサ「そう」

ジャン「は…はは……」

ミカサ「エレン以外の男性とくっつくのは初めてだけど…」トン

ジャン「!?」

ミカサ「いつも気にかけてくれて、感謝してた」スリ

ジャン(う、うぉぉぉぉ……!おぉぉぉぉ!?)

ミカサ「ありがとう、ジャン」


―――

――


ジャン「ぐおおおおお…」

マルコ「ジャン?」

ジャン「ぐ…お…」

マルコ「ジャン、朝だよ」

ジャン「お……?」


マルコ「うなってたけど、大丈夫?」

ジャン「あ、マルコか……ミカサはどこいった?」

マルコ「ミカサ?何を言ってるんだい」

ジャン「……」

マルコ「今日は馬術からだから、寝ぼけてると落馬するよ」


ジャン「夢かよ…くそ」


ジャン「……だよな」ハァ


――馬術基礎訓練――


キース「――以上が頭絡と鞍の作りだ。その装着は――」

ジャン(眠ぃ…)

キース「――といった様々な扶助によって馬の操作は行われる。では質問がなければ、次は各自で馬に乗ってもらう」

キース「まず一番手は…」

サシャ「はい!」


キース「貴様か、ブラウス訓練兵……大丈夫なんだろうな」

サシャ「大丈夫です。村にいた頃は時々乗ってました」

キース「ほう」

サシャ「馬さーん。いきますよー」


サシャ「では、手綱を引きましてっと……ハ…ハ……ハッ……」

キース「!」

キース「……ま、待て!」

サシャ「ぶえっくしょーーい!!」


――ブヒヒヒヒーン!


サシャ「ああああ!待ってぇぇ!」

キース「……」


クリスタ「大変!私がつかまえてきます」

キース「レンズ訓練兵か」

クリスタ「はい!……馬さん、お願いします……ハッ!」



キース「ほう…」

ジャン「おお」


マルコ「すごい乗りこなしてる。かっこいい」

ユミル「さすが私のクリスタ」

ライナー「いつオマエのものになったんだ(…惚れた)」

ユミル「ああ?」

アルミン(…天使)

キース「訓練中である。静粛にせよ」


――

クリスタ「戻りました」

キース「よくやったな…ご苦労であった」

サシャ「へへ…どうもありがとうございます。神様」タラ

キース「ブラウス訓練兵。貴様はもう少し…」

サシャ「ハッ!申し訳ありませんでした!」

キース「……く、まぁいい。今のように馬は非常に臆病で繊細な動物であるから、各自それをよく覚えておくように」

キース「乗る前には声をかけるなどして警戒心を解くことだ」


――

ジャン「……」

ジャン(臆病か…)

ジャン「お、クリスタ。さっきの凄かったな。オレにも乗馬のコツを教えてくれよ」

クリスタ「私でよければ…あれ?でもこの子…」

ジャン「ん?」

クリスタ「すっかり安心して落ち着いてる。ジャンに慣れたみたい」


ジャン「そんなことわかるのか」

クリスタ「うん。ジャンの優しい気持ちが、この子に伝わったんだよ」

ジャン「なんだそりゃ」

クリスタ「ふふ…ごめんね。でも、馬と心を通わせる事より上手く乗れるコツなんて無いから…頑張って」

ジャン「お…おう。サンキュー」

クリスタ「いいえ」

ジャン(優しい気持ち……?)


マルコ「……ジャン」ニコ


――兵站行進――


ミーナ「……ハァハァ」

エレン「ミーナ、大丈夫か?」

ミーナ「…うん」

エレン「背嚢(はいのう)重量だけで15キロぐらいあるんだ。急にきつくなったよな」

ミーナ「……うん」

エレン「お、おい。本当に大丈夫かよ」


ミーナ「エレンだって…きついでしょ」

エレン「まぁ…な。だけど、ここでへこたれているワケにはいかないし」

ミーナ「強いね、エレンは」

エレン「オレは…絶対に巨人を許さない。駆逐するためなら何だって耐えてみせる」ギリ

ミーナ「そっか。私ももっと頑張らなきゃ」

エレン「……」


エレン「ミーナ」

ミーナ「ん」

エレン「そろそろ林道を出るようだけど、今日は直射がきつい」

ミーナ「うん」

エレン「首筋を直射に晒してると日射でやられやすくなるぜ」

ミーナ「そうなんだ」

エレン「ああ、このタオルやるよ。予備に持ってきたからまだ使ってない」

エレン「暑いだろうけど、それ首筋にかけとけよ」

ミーナ「…ありがとう」


――

ジャン「結構きっちーな」

マルコ「………うん…」

ジャン「足もだが…肩がやべぇ…」

ジャン「マルコ…水飲むか?」

マルコ「いいよ。ジャンの水筒だって殆ど残ってないよね」

ジャン「まぁな。だがあと少しでゴールのはずだ。やるから飲んどけよ」

マルコ「いや、いいよ。それより……ん?」

ジャン「あん?」


マルコ「前列から誰か下がってきてるね」

ジャン「…あれは…ミーナか?」

マルコ「ミーナだ」

ミーナ「……」

ジャン「ヘッ、どうしたよ。脱落か?」

ミーナ「……ハァ…ハァ…」

ジャン「おい、おい。ほんとにやべぇのか?」ガシ


ミーナ「……ジャン?」

ジャン「ああ。とりあえずこの水飲んどけ」

ミーナ「う…ん…」


ミーナ「……はぁ」

ジャン「このタオルはなんだ?」

ミーナ「エレンがくれたの。首筋を晒してるとバテやすいからって」

ジャン「そうか。それちょっと貸せ」

ミーナ「?」


ジャン「マルコ。わるいな」

マルコ「ん?」


――トポトポ


マルコ「水筒の残りの水…ああ、そうか」

ジャン「タオルを濡らせて絞れば少しは違うだろ。ほらよ」

ミーナ「ひんやりする。ありがとう」


ミーナ「…私はダメだなぁ」

ジャン「?」

ミーナ「エレンの隣にいたけど、結局頑張れなかったの」

ジャン「……」

ミーナ「私もあのくらい強い気持ちがあれば頑張れたのかなって」

ジャン「……」

マルコ「……」


ジャン「あのヤロウがおかしいんだ。そんなこと気にすんな」

ミーナ「え」

ジャン「頑張れなかった?そんなことねぇだろ。今オマエは下がらずにここに留まってるんだ」

ジャン「大事なのは続ける事だろ。そのためならちょっとぐらい休憩したって、手を抜いたっていいんだよ」

ミーナ「…うん」


ジャン「それにあのヤロウは、いつも無理しながら全力でやってるがな。真似しないほうがいい」

ミーナ「どうして?」

ジャン「人間でも機械でも、常に全力稼動してると痛むのが早いからだ。八割ぐらいの力で余裕持たせながらやりゃいいんだ」

ジャン「余裕がないといつか折れちまうぞ。既にもう何人か訓練兵団から脱落したの知ってるだろ」

ミーナ「そうだね…」


ジャン「へっ……アイツはいつまで持つのかね。ま…卒業までうまくやろうぜ、ミーナ」

ミーナ「うん」ニコ

マルコ「改めてよろしくね、ミーナ」

ミーナ「よろしくね、マルコ。ジャン」

ジャン「おう」



ジャン(エレンには不思議と人を惹く力がありやがる。ミカサもそうやって調査兵団に巻き込むつもりかよ)

ジャン「……」ギリ


――兵法講義――


教官「――このように人間が多く集まっている場所ほど巨人が群がってきやすい」

アニ「……」

教官「したがって、壁の東西南北に配置されている街は、他の部分に巨人が向わないための囮である」

教官「巨人達が攻撃を仕掛けるのは、これらの街に限定されるため……」

教官「我々も人員と資材を集中することができ、効果的な防衛が可能となっている」

アニ「……」


教官「……ここまでで何か質問がある者は?」


――シ…ン……


アルミン「はい!」

教官「アルレルト訓練兵。何か」

アニ(!……アルミン…)


アルミン「壁は我々の防衛の要であります」

アルミン「しかし、これの建築技術が失われている現在は、修繕が精一杯で補強や増築はできません」

教官「うむ」

アルミン「ですが壁に直接手を加える以外の方法…」

アルミン「…例えば街の周囲だけでも、場外に掘を張りめぐらすといった防衛形式は取れないのでしょうか」


教官「良い質問だ。それができない理由はいくつかあるが……主には次の三つである」

教官「一つめ。壁外での作業中に巨人が現れた場合、人夫の安全が保障できないこと」

教官「二つめ。堀の掘削の影響で、壁に傾斜や損傷などがでる恐れがあるため、中央の許可が下りないこと」

教官「…なお、二つめの理由によって、壁の内側にも防衛目的の堀をめぐらすことはできないでいる」

教官「三つめ。これは次の講義内容にもなってくるが、壁上固定砲による戦闘形式によるものである」

アルミン「戦闘形式…」


教官「対巨人戦闘において最も効果的な攻撃方法は、立体機動による格闘術であるが…」

教官「もう一つの攻撃方法として砲撃という手段がある」

アルミン「はい」

教官「固定砲の弾種は二つ…ぶどう弾と榴弾だ。」

教官「ぶどう弾は支援砲撃用だ。広範囲に子弾をばらまき、巨人の体に損傷を与えることで足止めを狙う」

教官「これによる殺傷は期待できないが、近接攻撃の支援には有用である」


教官「対して榴弾は殺傷を目的としている。これが巨人の弱点である首筋に命中すれば一発で仕留めることができる」

教官「だが砲自体の精度も悪く、動く目標に対しての命中率は非常に低い。通常であれば、効果は殆どないと言える」

アルミン「はい」

教官「…しかし、効果的な砲撃のできる瞬間が一つだけある」

アルミン「……?」


アルミン「……あ!」

教官「気づいたかね。言ってみなさい」

アルミン「巨人が……壁にとりついた時……ですか」

教官「そのとおり」

教官「壁にとりついて動きの止まった巨人は、真上から見ると弱点が露呈したままの的だ」

教官「そして現在の改良が施された壁上固定砲は、真下に撃ちおろすことができる」


教官「つまり、わざと巨人を壁に取り付かせることで砲撃による撃破を狙う。これが堀を作らない三つめの理由となる」

教官「…壁が破られることのなかった頃の戦術だがな」

アニ「……」

教官「他に何かあるかね?」

アルミン「ありません!質問に答えていただき、ありがとうございました!」


アニ(なよなよしたヤツかと思っていたけど、ハキハキとしたよく通る声としゃべり方…)

アニ(誰も手を挙げない静まった教室で、物怖じしないでの質問)

アニ(アルミン……アンタ結構、芯が強くて真っ直ぐなヤツだったんだね)

アニ(嫌いじゃないよ。そういうの)


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※ 戦術についてはコミックスに描かれている設定資料から勝手に想像しました。

公式ガイドブック等は持っていないので、もし別の公式資料に戦術の記述があり、内容の食い違いがあった場合は容赦願います。

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遅れましたが支援感謝です。


支援がたくさん…嬉し恥ずかし…

とても励みになります。ありがとうございます。


――対人格闘術訓練――


ミカサ「エレン。たまには私とやろう」

エレン「いや、約束があるからダメだ」

ミカサ「…またアニとやるの?」

エレン「ああ。おかげで最近だいぶ上達してきた気がするからな」

ミカサ「そう」


エレン「お、アニ。行こうぜ」

アニ「ああ、いいよ」


ミカサ「……」

アニ「…なんだい」

ミカサ「別に」


サシャ「あ、いたいた。ミカサ、一緒にやりましょう」

ミカサ「コニーは?」

サシャ「なんか今日はユミルに連れていかれましたよ」

ミカサ「?」



コニー「なんだ突然オレとやろうって。クリスタはいいのか」

ユミル「クリスタはあっちでミーナとやるってさ」

コニー「ハッ、そうかオマエふられたんだな!」

ユミル「いーや違うね。私はアンタが気になるのさ」

コニー「はぁ?何言ってんだいきなり。意味わかんねーぞ」


ユミル「つまりアンタのこの頭だよ…」ペチ

コニー「なっ…」

ユミル「この坊主頭が手触り良さそうだからさ」ゾリゾリ

コニー「や、やめろ…気持ち悪りぃぃぃ。うおぉぉぉ!」


ミカサ「……」

サシャ「……」


サシャ「た、確かにあの頭の感触はちょっと気になるかもしれませんね」

ミカサ「どうでもいい。さっさと始めよう」

サシャ「は…はい」

ミカサ「いつでもかかってくるといい」スッ


サシャ「やるからには本気でいかせてもらいます。今日こそあなたの手を地面につけさせますから」

ミカサ「無駄」

サシャ「言いましたね?なら、あなたが倒れたら夕食のパンを半分いただきます」

ミカサ「…どうぞ」

サシャ「私をあまりあなどらないほうがいいですよ」



アニ「打撃系はずいぶん良くなってきたね」

エレン「そ、そうか!」

アニ「そろそろ投げ技も覚えたほうがいいよ」

エレン「例えばどんなのがあるんだ?」

アニ「基本的なとこだと背負い投げ…こうして相手をつかんで」

エレン「うぉ」ズン


アニ「……」

エレン「どうした?」

アニ「さっきからこっちを見て、にらんでるヤツがいるからさ」

エレン「…ミカサか。気にしないでいこうぜ」

アニ「ふん」



ミカサ「……」

サシャ「ひ……ッ」

サシャ(パンが賭けられたら凄い形相に。やはりミカサもご飯には弱いんですね)

サシャ「いきます!」

ミカサ「……」


サシャ「……!」ゾク

サシャ「…私の勘って……結構当たるんですよ」フッ

ミカサ「そう。あなたの勘はよく当たる……主に悪い方にだけ」


――その後エレン達は見た

――ドヤ顔で砲弾のごとく飛んでゆくサシャの姿を


――運の悪いライナーが下敷きになったおかげで、彼女は無事だったようだ


――ある日・夕刻――


エレン「このへんに座るか」

アルミン「うん。芝生が気持ち良さそうだね」

エレン「ふぅ。今日も一日疲れたな……よっと」

アルミン「風が気持ちいい」

エレン「ああ。夕日も綺麗だな」


アニ(……あれはアルミンとエレン?)


アルミン「今日は技巧術でマルコと一緒に整備したんだ」

エレン「おー。アイツも真面目なヤツだよな」

アルミン「うんうん。それでマルコがさ、立体機動でどうしても右側に傾くって悩んでてね」

アルミン「よく見たらマルコの体って、姿勢を正すと右側がちょっと低くなるんだ」

エレン「へえ」

アルミン「骨格のゆがみってよくある話だからさ。それでマルコの立体機動装置をこう調整して……」

エレン「はー……そんなことできんのか」

アルミン「そうなんだよ!それでさ」


アニ(よくもまぁ、あんなキラキラしながらしゃべれるもんだね)


エレン「――オレもこないだアニにカウンターを教わってさ」


アニ「……!」


エレン「すげーんだ、これ。相手の不意をつくっていうかさ」

アルミン「へえ」

エレン「ほら、攻撃中って防御の意識が一瞬なくなるだろ」

アルミン「うんうん」

エレン「そこを突くように相手の攻撃に自分の攻撃をあわせるんだ。でもすっげぇ難しい」


アルミン「どんどん強くなるね、エレン」

エレン「ああ。なんたってアニとやる格闘訓練は楽しいからな!」


アニ「……ッ」


アルミン「そうなんだ。良いことだと思うよ。楽しそうなエレンを見てると、ボクも元気を貰った気分になるよ」

エレン「そうか!でもアニもあの時間は楽しそうな感じだぜ。なんとなくわかるんだよな、最近」

アルミン「ははは。……でもあんまり仲良いと、またミカサの機嫌が悪くなるよ」


エレン「…オレが誰と仲良くたっていいじゃねぇか、なぁ?」

エレン「だいたい、そうならオレとアルミンの仲はどうなんだっていうやつだろ」

アルミン「いやぁ…ボクらは別に。ほら、ミカサは女の子だからさ」


アニ(ホント……眩しいねアンタらは。羨ましいよ……)


エレン「わっかんねーなぁ」ゴロン



エレン「……お?」

アルミン「ん?」

エレン「後ろのほうで座ってるのアニじゃねぇか?」

アルミン「本当だ」

エレン「おーい、アニー!」


アニ「!」


エレン「そんなところで一人で何してんだよ。暇ならこっち来いよ」



アニ「いや、私は一人でいいよ」


アルミン「そんなこと言わないで、アニも一緒に話そうよ」


アニ「私がそっち行くと、またミカサが暴れるだろ」


エレン「ミカサは今、ジャガイモの皮むき役でいないんだよ。大丈夫だって」

アルミン「そうそう」


アニ「そうかい。じゃ…」


アルミン「そんな端っこに座らないでさ。ほら、真ん中においでよ」

アニ「……ッ! い…いいって」

エレン「いいから、ほらよ」

アニ「まったく、強引だね。アンタらは」

アルミン「あはは」

アニ「……」

アルミン「? ……どうしたの。ボクの顔に何かついてる?」


アニ「…太陽みたいだね」ボソ

アルミン「ん?」

エレン「あん?」

アニ「あ……ほ、ほら。夕焼けが凄いからさ」

エレン「ああ」

アルミン「うん、とても綺麗だ」

アニ「…そうだね」


アニ「綺麗だよ」


―――

――


第23話でアルミンを見たアニの目があまりに印象的だったので…

今日はここまでです。


支援感謝です。

一パートだけ投下。


――ある朝・食堂――


ライナー「お、ジャン。今日はオマエ達の班が休みなのか」

ジャン「ああ、1班から25班まで休みだぜ。ここのテーブルにいるのは、みんなそうだ」

マルコ「うん」

コニー「おう」

ユミル「よっ、ライナー」

クリスタ「おはよー」フリフリ

ライナー「…おう、おはよう……じゃあ、またな」

ジャン「またな」


ライナー(私服のクリスタ…良い)



ミーナ「おはよう。ジャン、隣あいてる?」

ジャン「ミーナか、珍しいな。空いてるぞ。座れよ」

ミーナ「ありがと……ふふ」

マルコ「……」

ユミル「……」

クリスタ「……」

コニー「?」


ジャン「しっかし休みはいいけど今日どうすっかな。マルコは何すんだ?」

マルコ「ボクは図書館に行くよ」

ジャン「ふーん。クリスタは?」

クリスタ「私はユミルと手芸屋さんに行くの」

ジャン「ほう……縫い物か?」

クリスタ「うん。服とかほつれてきちゃった所があるから、アップリケでもしようかなって」

ジャン「ははっ、クリスタらしいぜ。ユミルもやんのか?」

ユミル「いや、私はただの暇つぶしに付いて行くだけだ」

ジャン「そうか」


ジャン「コニーはどうすんだ?」

コニー「オレかー。どうすっかな」ギコギコ

ジャン「…おい。あんまりのけぞってると倒れるぞ」

コニー「大丈夫だって。このイス結構安定感あるんだ」ギコギコ


ミーナ「ねぇ、ジャン」

ジャン「ん?」

ミーナ「今日暇だったら一緒に買い物いかない?」


ジャン「ああ、かまわねぇぞ。何か重い物でも買うのか」

ミーナ「んーん、そうじゃないけど」

マルコ「……」

ユミル「……」

クリスタ「……」


コニー「ちぇ、じゃあ予定が無いのはオレだけかよ」

ジャン「なんだ、コニーも行くか?」

ミーナ「…!」

コニー「あー…パスパス。荷物持ちなんてゴメンだ」


クリスタ『ねぇ、ユミル…これって』ヒソヒソ

ユミル『へっ…ジャンも隅に置けないね』ヒソヒソ



サシャ「みなさん、おはようございます!」

ジャン「おう、おはよう。そうか、オマエも休みか」

サシャ「へへ、そうですよー」

マルコ「可愛く着込んでお出かけかい?」

サシャ「んもう、マルコったらお上手ですね!そうです。スイーツが私を呼んでいるんです」


コニー「んだよ。結局オマエは食い物かよー。ホント色気がねーな」ギコギコ

サシャ「ほう…あなたに言われたくありませんねぇ」ジョリジョリ

コニー「ば……やめろ! 何でみんなオレの頭を触るんだ!」


ユミル「……プ」

クリスタ「…クス」


コニー「だからやめろって…………あ!」グラ

ミーナ「あ……」

ジャン「あ……」


――ガッターン! バタン


コニー「……ってぇ」

サシャ「……」


ミーナ(コニーが後ろに倒れて…)

ジャン(顔がサシャのスカートの下に…)


コニー「……あ?」

サシャ「……ッ!」


クリスタ(……うわぁ)


サシャ「……コニー?」プルプル

コニー「…オレ……天才だから……感じろとしか言えん」


ユミル「ぶわっはっはっは!」

ジャン「コニー! 朝から何してんだよ!!」

ユミル「ダーハッハッハ! バカじゃねーの! ……天才? 感じろって…オマエ」ヒー

クリスタ「ちょ…ちょっとユミル」カァ


サシャ「その天才の頭で感じてますか?」ゴリゴリ

コニー「痛ぇ! オレが悪かった!」

サシャ「……」グリグリ

コニー「踏まないでくれ! 鼻が潰れる!!」



コニー「よっと……はぁ、朝から散々だ」グス

サシャ「泣きたいのは私のほうなんですが」プンスコ

コニー「だから悪かったって」

ユミル「で、どうだったんだよ。芋女の足は」

クリスタ「ユミル!」


コニー「結構キレイだった……下着は地味でライトブラウ……」

サシャ「……」グッ


――スパーン!


コニー「ってぇ! ……あ、サシャ! それは残りもんじゃねぇ!」

サシャ「慰謝料です!!」モグモグ

コニー「オレのパン!!」

ユミル「ギャハハハハ」


ミーナ「…お似合いなお二人さんね」

マルコ「そ、そうだね」

ジャン「なんつー顔してんだよ、マルコ」プ

クリスタ「ユミル、ふざけすぎだよ」


サシャ「……」ゴックン

コニー「あーー」

サシャ「コニーのバカ」ベー


―――

――


コメありがとうございます。

下ネタ失礼。


――同日午前・手芸屋――


クリスタ「わぁ…このフェルトもいいね」

クリスタ「刺繍糸も足りなかったんだっけ」

クリスタ「ラインストーンも欲しいけど…贅沢は言えないよね」

ユミル「クリスタ。こっちにフェルトの12色セットがあるぞ」

クリスタ「あ、こっちのが安い。ユミル、お手柄ー!」

ユミル「そうだろ、そうだろ」

クリスタ「あ…スナップ見るの忘れてた」



ユミル「…なぁ、ちょっと買う物をしぼらないと…まずいんじゃないか」

クリスタ「そうだよね……支給の手当てそんなに無いし…」

ユミル「……」

クリスタ「これと…これも諦めよ…」

ユミル「……」


ユミル「クリスター。このレース可愛いぞー!」

クリスタ「……ユミルのいじわる!」



クリスタ「あれ?」

ユミル「お?」

クリスタ「お店の前を歩いてるの…サシャとマルコだよね」

ユミル「…なんでアイツら一緒にいるんだ?」

クリスタ「さぁ」

ユミル「マルコは図書館行くって言ってたよな」

クリスタ「うん」

ユミル「んー?」

クリスタ「んん?」

ユミル「まぁ、いいか」


――同日午後・女子宿舎――


ユミル「はー…上手いわ、早いわ。クリスタは裁縫上手だね」

クリスタ「~♪」チクチク

ユミル「アップリケばかり…ずいぶんできたな」

クリスタ「作ってたら楽しくて。ユミルの分もあるからね」

ユミル「そ、そう。何があるんだ?」

クリスタ「好きなの選んでいいよ」


ユミル「イヌ、ネコ、クマ、ブタ、サカナ、ニワトリ、インコ…」

クリスタ「お星様とかお花や木もあるけど……ハートとかにする?」

ユミル「い、いや…そうだな、じゃあ木でいいわ」

クリスタ「うん。あとで縫っておいてあげるね」チクチク

ユミル「今は何を作ってんだ」

クリスタ「サシャにもひとつあげようと思って……こんなのどうかな」ピラ

ユミル「……ぶっ」


ユミル「クリスタ…あんた良いセンスしてるよ。アイツにお似合いだわ!」

クリスタ「え……なにがおかしいの?可愛いと思うんだけど…」


クリスタ「お肉のアップリケ」


ユミル「ぎゃははは。そういう天然なところも愛してるぜ、クリスタ」

クリスタ「なによ、もう!」



ユミル「しっかし、よく飽きないな」

クリスタ「うん」チクチク

ユミル「ちょっと寝るよ。夕飯前に起こしてくれ」

クリスタ「うん」チクチク


クリスタ「……んー」

クリスタ(クマが余っちゃった…どうしよう)


クリスタ「!」


――

クリスタ「……」キョロキョロ

クリスタ「…いた」

クリスタ「アルミン」

アルミン「ク、クリスタ?」

クリスタ「今日はジャガイモの皮むき当番なんだ?」

アルミン「うん。クリスタもそうなのかい」

クリスタ「ううん」

アルミン「そっか」


クリスタ「……」ジー

アルミン「な、なにかな?」

クリスタ「アルミンのエプロンって、お腹のところにちょっと穴あいてるよね」

アルミン「ああ、これね。引っかけちゃって」

クリスタ「そうなんだ」


クリスタ「今日ね。アップリケ作ってたんだけど、これがひとつ余っちゃったの」

アルミン「かわいいクマだね」

クリスタ「ふふ。ありがと」

アルミン「はは」


クリスタ「ねぇ、アルミンのエプロンの穴のとこにコレつけてみない?」

アルミン「ええ!?」

クリスタ「だ、だめかな…」

アルミン「え、あ…い…いや…嬉しいけど……いいの?」

クリスタ「うん! じゃあ、ちょっとエプロン脱いで貸して」

アルミン「う…うん」

クリスタ「ありがとう。すぐ終わらせるね」


クリスタ「~♪」チクチク

アルミン(は…早い…)


クリスタ「できた」

アルミン「ええっ! もう?」

クリスタ「着てみて」

アルミン「うん」


アルミン「どうかな?」

クリスタ「わぁ…すごく良いよ!」

アルミン「…ボクには可愛らしすぎないかな?」

クリスタ「そんなことないよ! すごく似合ってる」

アルミン「そ、そっか」


アルミン(なんか複雑な気分だけど……うっ、周りの人の視線が痛いや)


クリスタ「もらってくれてありがとう」

アルミン「いや、こちらこそどうもありがとう。大事にするよ」

クリスタ「じゃあ、またね」

アルミン「うん、またね」


アルミン(……でも凄く嬉しいな。宝物にしよう)


ライナー「よお、アルミン。見てたぜ」

アルミン「やぁ…ライナー…」

ライナー「……」

アルミン「な…なにかな…」

ライナー「いや、すまん。なんでもない」

アルミン「そ…そう」


ライナー(結構似合ってる……羨ましい)


――同日夜・男子宿舎――


アルミン「やぁ、マルコ」

マルコ「やぁ、今日も一日お疲れ様」

アルミン「なにか嬉しそうだね。良いことでもあったの?」

マルコ「わかるかい? いや、じつは今朝ね…」


――

サシャ「マルコは今日なにか予定あるんですか?」

マルコ「うん? 図書館に行こうと思ってるんだけど、どうしたの」

サシャ「マルコって、たしか甘いもの好きでしたよね」

マルコ「うん。ああ、そういえばサシャはスイーツ食べに行くんだっけ」

サシャ「そうなんです!」


サシャ「最初は一人で行こうと思っていたんですけど、チラシをよく見たらですね…」

サシャ「なんと二人で行くと割引があるんですよ!」

マルコ「へぇ」

サシャ「だからマルコ。図書館に行く前にちょっとお茶して行きましょう」

マルコ「え…ええ? 嬉しいけど、ボクでいいの? コニーは暇そうだったよ」

サシャ「誰ですか、それ。知りません」


マルコ(まだ怒ってるんだ)


マルコ「それにしても二人で行くと安くなるなんて変わってるね。どんなとこなの?」

サシャ「これですよー」ピラ

マルコ「……」


マルコ(カップル割引!?)


マルコ「サ…サシャ……これって……」

サシャ「はいはい。そんなこと気にしてたって腹はふくれないんです」


サシャ「さぁさぁ行きましょう」グイグイ

マルコ「わ、わ、わ」

――


マルコ「――ということがあってさ」


アルミン(うわぁ…マルコ、顔が真っ赤だよ…ほんとにキミはピュアだなぁ)


アルミン「それでその後はどうしたの?」

マルコ「うん? 食べたあとは普通に別れて図書館に行ったよ」

アルミン「そうなんだ…」


アルミン(そんなところもやっぱりマルコだね…)


マルコ「アルミンも今日は良い事があったんじゃない?」

アルミン「え」

マルコ「男子の間で噂になってるよ。クリスタのクマさん」

アルミン「は…はは。それがさ――」

――

アルミン「――というわけなんだ」

マルコ「あはは。それも羨ましいなぁ」


アルミン「……今日はお互いに」

マルコ「良い一日だったね」

アルミン「そうだね」

マルコ「じゃあ、おやすみ」

アルミン「うん、おやすみ」


アルミン(そういえば最近エレンは、さっさと自分の寝床に入って動かないなぁ)

アルミン(寝てるわけでもなさそうだけど、何をしているんだろう)


―――

――


無自覚なサシャ、 おバカなコニー、 ピュアなマルコ

この三人って結構いじりがいがあります。

今日はここまでです。
支援ありがとうございました。


コメありがとうございます。

本日分の投下いきます。


――別日・午後休憩時間――


マルコ「アルミン」

アルミン「あ、マルコにジャン」

ジャン「おう」

マルコ「今ちょっと時間あるかな」

アルミン「うん。大丈夫だよ」


マルコ「……最近エレンの様子がおかしくない?」

アルミン「あ…うん。そうだね」

アルミン「寝不足みたいでさ。こないだから目の下にクマ作って、疲れている感じなんだ」

ジャン「あのヤロウが体調不良とかは、ぶっちゃけどうでもいいけどな」

マルコ「ジャン、そんな言い方は無いよ」

ジャン「へいへい」


マルコ「こないだは食堂でミカサに抱えられて外に出て行ってたし」

アルミン「うん」

ジャン「け、相変わらず、おんぶに抱っこなこった」


マルコ「今朝なんか一体どうしちゃったんだい」

マルコ「最初は一緒にいたけど……途中からエレンがテーブルを変えて、ミカサと離れたよね」

マルコ「お昼もエレン一人だけ離れていたし……ケンカでもしてるの?」


ジャン「……ケンカっつー感じでもなかったな」

ジャン「エレンのほうがミカサを引き剥がすように距離を置いてるような」

ジャン「いよいよミカサがうっとおしくなっちまったのか?」

アルミン「……あれはボクもびっくりしたよ」

ジャン「今までに無かったようなことか」

アルミン「うん」


ジャン「だが……それからのミカサの顔がよ……」

ジャン「さすがに見てらんねぇぜ……クソッ…あのヤロウ!」


アルミン「とりあえず、エレンの寝不足の原因はわかっているんだ」

マルコ「なんなの?」

アルミン「このまえ宿舎で本を拾ったらしくてね。それがエレンのベッドに置きっぱなしになってるから」

アルミン「…それを読んでいるんだと思う」

マルコ「へぇ」

ジャン「アイツ…本なんか読むんだな」


アルミン「いや、自分から読んだのは今回が初めてじゃないかな」

マルコ「どんな本?」

アルミン「以前ちょっと話題になったヤツでさ。少年と少女の闘病物語なんだけど」

マルコ「ああ、それこの前ボクも図書館に探しにいったやつだ」

ジャン「ほー」

アルミン「そうだったんだ」


アルミン「それからかな。エレンがちょっとおかしくなったの」

ジャン「……」

マルコ「読んだ内容で考え事でもしてるのかな」

ジャン「らしくねぇな」


アルミン「…昨日の夜さ。アルミンは好きな人いる? だなんてエレンに質問されたんだ」

アルミン「ひょっとしたら……エレンに好きな人ができたのかも」

マルコ「え」

ジャン「……はぁっ!?」


ジャン「……ッ!」


ジャン「ざっけんじゃねーぞ、あのヤロウ! ミカサはどうなるんだよ!!」


マルコ「え!?」

アルミン「ええ!?」


マルコ「ジャ…ジャン?」

ジャン「なんだよ」

マルコ「ジャンってその……ミカサの事が好きなんだよね?」

ジャン「ああ?」

マルコ「違うの?」

ジャン「い、いや。そうなんだけどよ」


アルミン(普通ならチャンスのハズなのに)


ジャン「そうだよな……チクショウ……これはチャンスだ」


ジャン「……」


ジャン「……あぁっ? あのミカサの顔が忘れらんねぇ! ざっけんな、あの死に急ぎヤロウ!!」


アルミン「ジャン…キミは…」

マルコ「ジャン…」

ジャン「おい、アルミン! なんとかしてやれ!」ユサユサ

アルミン「え……ちょ……う、うん」

ジャン「頼んだぞ!」


――後日朝・食堂――


ジャン「……」

マルコ「……」

ミーナ「何あれ……どうなってんの」

マルコ「仲直り…したのか……な?」


ジャン「おい、マルコ…向こうのテーブルは今どうなってる……」

マルコ「エレンとミカサが…ぴったりくっつきあって座ってるね…」

ジャン「そうか……」


――ダン!


ミーナ「ひっ」

マルコ「ジャ、ジャン」

ジャン「……ぐ」


ジャン「なんだか、これはこれで気にいらねぇなぁ……」ググ

ミーナ「ジャンはホントにミカサが好きなんだね……」

ジャン「……」


ジャン(エレンはミカサを避けていた……なのに今のはどういうことだ)

ジャン(アルミンの口利きひとつで急変したとは思えねぇ)

ジャン(ミカサが耐え切れなくなって、エレンにしがみついたのか…?)



――おい、ミカサ。もうちょっと離れようぜ


ジャン「……」ピク


――嫌


ジャン「……」ピクピク


ジャン(やっぱりそうじゃねぇか! アイツにはその気がないのに、ミカサはまだそれを追って…)

ジャン(しがみついたんだろう!? いたたまれなくってよ!!)


ジャン「……ぬ…あぁぁぁぁぁ!」


――ガンガンガンガン!


ミーナ「ちょっと…ジャン!」

マルコ(柱に頭を打ちつけて…)

ミーナ「お願いやめて! ひたいが割れてるよ…血が出てるから!!」

ジャン「はぁはぁ」

マルコ「ジャン、血が流れてる。手当てしないと」

ミーナ「救護室につれていってくるね」

マルコ「うん」


ミーナ「ほら、ジャン。いきましょう……キャ!」ドン

コニー「おあ! 悪りぃ。ぶつかった」

コニー「って…うぉ!?」

ジャン「……あぁ?」

コニー「ジャンが血の涙を!」

ジャン「バカヤロウ! 泣いてねぇよ!」


ちょっと投下を中断します。


続きの投下いきます。


――後日夜・食堂――


アルミン(エレンとミカサが教官命令で救護室泊まりになっちゃった)

アルミン(……今日からボクひとりか)


ジャン「おい、アルミン」

アルミン「…ジャン」

ジャン「一人か? こっちのテーブルに座れよ」

アルミン「う、うん」


マルコ「やぁ」

ミーナ「こんばんは、アルミン」

アニ「……おつかれさん」

アルミン「やぁ、みんな…アニまで。珍しいね」

ミーナ「そんなことないよ。私とアニはよく一緒にいるもん」

アルミン「そうだったんだ。気がつかなかったな」


ジャン「で、だ…」


ジャン「あの二人…何がどうなったのか説明してくれよ」

アニ「……」

アルミン「あ……えっと」


アルミン「エレンにはやっぱり好きになった人がいたんだ」

ジャン「そうか……」

アルミン「ただ…好きになった相手が……その」

ジャン「誰だ」


アルミン「…ミカサ……だった」

ジャン「」


アニ「……ッ!」

マルコ「……え」

ミーナ「ええ!?」


ジャン「…おい…冗談もほどほどにしてくれないか」

アルミン「本当のことさ」

ジャン「どういうことだ…アイツこの前はミカサを避けていたじゃねぇか」


アルミン「今まで家族だと思っていた相手がそういう対象になって…」

アルミン「…気持ちの整理がつかなかったんだと思う」

ミーナ「それはわかるかも」

マルコ「そうだったんだ」

ジャン「マジなのか…」


マルコ「じゃあ、二人が今いないのは?」

アルミン「詳しい経緯はよくわからないんだけど、訓練で動きが悪かったのを教官が見て…」

アルミン「二人に病気の疑いがかけられて救護室に隔離されたとか」

ジャン「おま……」

ミーナ「それって…」


ジャン「何が病気だ! 恋の病じゃねーか!」

アルミン「し…しらないよ。そんなこと言われたって」

ジャン「ああ? ってことは何だ。今頃アイツはミカサと二人でイチャコラしてるってことか!」

アルミン「さ、さぁね…」


ジャン「……ぶっころす!!!」



――キィー…ガチャ


キース「…今しがた大きな声がしたようだが…誰か説明してもらおうか」

ジャン(やべぇ!)

アルミン「はい!」

アニ(アルミン……!)

アルミン「迫る巨人との戦いを思い、つい興奮してしまいました! 申し訳ありません!」

キース「……そうか。ほどほどにな」


――バタン


ジャン「危なかった……アルミン、わるい」

ミーナ「もう、ジャンは興奮しすぎだよ」

アルミン「いや、いいよ。エレンにはボクもビックリさ」

ジャン「しかし、まぁ…ミカサは喜んでんだろうな」

アルミン「そりゃあ…ね。エレンもだいぶ…」


ジャン「……ッ! アイツは許せねぇ。やっぱりぶっこ…」

マルコ「ジャン」

ジャン「…ちっ。羨ましい…クソが」

ミーナ「……」ズキ


アニ「…だけど、あの二人がくっついちまったなら……アルミン、アンタ一人だね」

アルミン「え? ……あ、うん」

アニ「寂しいかい」

アルミン「うーん…昔からそうあって欲しいなとは思っていたし…」

アルミン「二人が親友なのは変わらないから……嬉しいよ」

アニ「そう」

アニ「アンタもつくづく人が良いね」

アルミン「それは…ど、どうも」


ジャン「ちっ。とりあえず今日はもう寝るぜ」

マルコ「解散だね」

ミーナ「うん」

アニ「おやすみ」

アルミン「おやすみ」


―――

――


また中断ですが、今日中に間に合えば続きます。

支援コメに感謝します。


間に合いました。投下します。


――後日朝・食堂――


ユミル「さーて飯にすっか」

クリスタ「おはよう、サシャ、コニー」

コニー「おう、おはよう」

サシャ「おはようございます。先にいただいてますよ」モグモグ

コニー「はぇぇよ!」


ユミル「おー、あれってエレンとミカサじゃん?」

コニー「ほんとだ。病気治ったのか」

クリスタ「最近おかしかったみたいだけど、なんかいろいろ元通り?」

サシャ「そんな感じですね」


クリスタ「なぁんだ。二人がついに付き合いだしたのかと思っちゃった」

ユミル「そんな展開を期待してたのか」

クリスタ「えー、だって素敵じゃない」

ユミル「じゃあ、私と付き合うかぁ。クリスタ」

クリスタ「もう…ユミルはそればっかり」

サシャ「速攻でふられましたね」

ユミル「うっせぇ」

コニー「んー??」モグモグ


――

ジャン「クリスタ達はあの事を知らないようだな」

マルコ「そうみたいだね」

ライナー「あの事ってなんだ?」

ベルトルト「?」

ミーナ「あー、ライナー達も知らないんだ」


――アルミンに報告がある


ライナー「お、エレンがなんか言うみたいだぞ」

ミーナ「顔真っ赤だねー」


――

サシャ「やっぱり何か雰囲気おかしいですよ。あそこ」

コニー「エレンがもじもじしてるな……トイレか?」

ユミル「違うだろ」

クリスタ「いいムード……何? 告白?」キャー

ユミル「クリスタ……」



――オレとミカサな

――ここを卒業したら結婚することにしたんだ


サシャ「ぶほっ!?」

ライナー「な…」

ベルトルト「!?」



――ほ、本当かい、ミカサ?


マルコ「ええ…」

クリスタ「え、え、え?」


――……はい


アニ「……ッ!?」

ミーナ「う…そ……」

ユミル「おいおい…」



<マジかよ! おまえらーーー!!>

<うおおおお!>

<大事件だ!>


エレン「……え」

エレン「てめぇら……全部聞いてたのか!」



<聞いてたよ! チクショー>

<やったじゃねぇか、エレン!>

<やったね! ミカサ!>

<おめでとう!>

<おめでとう!!>


エレン「お、おまえら…」

アルミン「あ、あはは。おめでとう…エレン、ミカサ」

エレン「あ…ありがとう」

ミカサ「ありがとう」ニコ


ジャン「……」

ライナー「お、おい。ジャン」

マルコ「ジャンが…真っ白になってる……」

ミーナ「ジャン。しっかりして」ユサユサ


ジャン「……お、おう」

ベルトルト「生き返った」

ジャン「ちょっとビックリしちまった」


ジャン「…よっと」


ジャン「……おい、エレン」

エレン「なんだよ、ジャン」

ジャン「オマエ…卒業後に結婚するって……兵団はどうするんだ」

エレン「変わらねぇよ。オレは調査兵団に行く」

ジャン「なんだと! ミカサも一緒なんだろ?」

エレン「そうだ」

ジャン「てめぇ! 調査兵団がどんなとこだか知らねぇとは言わせねぇぞ」

ジャン「……二人揃って死ぬ気かよ!?」


エレン「ジャンはオレ達にも内地に行けって言いたいのか?」

ジャン「そのほうが安全に暮らせるだろうがよ」

エレン「根拠の無い安全だな」

ジャン「なんだと!」

エレン「なら聞くけどな、内地に行ったら何年間安全に暮らせるんだ? 五年か? 十年か?」

ジャン「調査兵団なんかに行ったら五年だって怪しいだろうが」


エレン「もうどこだって変わらねぇんだよ」

ジャン「なに?」

エレン「内地だって、前触れもなく突然襲撃を受けるかもしれない」

エレン「どこにいたってもう安全に暮らせる場所なんか無いんだ」

ジャン「……」


エレン「だったらオレ達は……調査兵団に入って、一日でも早く巨人を駆逐する手がかりを探す」

エレン「オレ達が安心して暮らせる世界を手に入れるためにもな!」

ジャン「なんだって……」


ジャン「…待て。今、オレ達と言ったな」

エレン「ああ」

ジャン「ミカサも同じ気持ちなのか?」

ミカサ「そう。どうせ逃げていても、このままだといつか巨人に殺される」

ジャン「そうかよ…」

エレン「……」


ジャン「へっ! 死に急ぎヤロウだと思っていたが…」

ジャン「…今度はとんだ生き急ぎヤロウだ」

エレン「なんだと。それはどういう…」


ジャン「エレン、オマエ達のことを応援してやるよ。みっちり訓練して、せいぜい強くなるんだな」

エレン「言われるまでもねぇよ」


ジャン「エレン」

エレン「なんだよ」

ジャン「……負けるなよ。そしてミカサを離すなよ」

エレン「……ああ」


ジャン「はっ! おめでとさん。そろそろ訓練時間だ…遅れんなよ。じゃあな!」

エレン「おう!」


ミーナ「ジャン……」


ライナー「……」

アニ(エレン…ホントあんたって……さ)


―――

――


今日はここまでになります。

読んでくれて、ありがとうございます。


コメント感謝です。

またちょこっと投下します。


――ある夜・女子宿舎――


ミカサ「……」


―――ミカサって笑うとすげぇ可愛いのな


ミカサ「エレン……」


―――もっと笑って見せてくれよ


ミカサ「……」


ミカサ(私…あのとき、どうやって笑ったのか……)


ミカサ「手鏡……」

ミカサ(あった)トン


ミカサ「……練習する」


ミカサ「……」グニ

ミカサ「……」ムニュ

ミカサ「……」グニニ


ミカサ「……」


ミカサ「……こわい」シュン


ミカサ(なにか楽しかったこと……)


―――ミカサ……オレはオマエが好きだ


ミカサ「……私も」


ミカサ「……」ニヘラ


ミカサ「……」


ミカサ「……きもちわるい」グス


ミカサ(笑うと可愛い…)

ミカサ(笑ってないと可愛くない……?)

ミカサ「……がんばろう」


ミカサ「……」ニィ

ミカサ「……」

ミカサ「……」クス


ミカサ「……もうちょっと」


ミカサ「……」ニコ

ミカサ「……」

ミカサ「……」ニッコリ


ミカサ「……!」

ミカサ「良かったかも」


ミカサ「……」

ミカサ(……恥ずかしい)


ミカサ「……?」


ミカサ(鏡の隅に何か…)


サシャ「……」

ミカサ「……」


サシャ「あ…あの……何をしているのかなって……思いまして」

ミカサ「……」


サシャ「……あは…えーと……」


ミカサ「……」ゴゴゴ

サシャ「ひっ」


ミカサ「……アナタは何も見ていない」

サシャ「……へ?」


ミカサ「何も…見ていない」ゴゴゴ

サシャ「は、はい。何も見ていません!」


ミカサ「そう、それでいい。アナタはいま私と挨拶をしただけなのだから」

サシャ「はい」ガクガク


ミカサ「じゃあ、おやすみなさい」

サシャ「お…おやすみなさいませ!」ビシ


サシャ(ヘビににらまれたカエルって、こういうことを言うんですね)


―――

――


――ある日朝・食料庫脇――


サシャ(あそこにいるのはミーナですよね。コソコソと何をしているのでしょうか)

サシャ(……はっ。まさか食料庫に潜入を!?)

サシャ(抜け駆けはなりませんよ……追跡です!)



ユミル(なんだあの怪しいヤツは……)

クリスタ『ユミル。あれってサシャだよね』ヒソヒソ

ユミル『だな』

クリスタ『忍び足で……何してるんだろ』

ユミル『つけてみるか』


サシャ(あり? こっちは食料庫の裏手ですよ?)

サシャ(止まって……物陰から何かをうかがっていますね)



サシャ「ミーナ。何してるんです?」

ミーナ『あ、サシャ……シーッ』

サシャ「?」

サシャ『何か見えるんですか』ヒョコ



ユミル「……おい。おまえら」


サシャ『ユミル……クリスタ……シーッ! 静かにしてください』

クリスタ『建物に隠れて何を見てるの?』ピョコ

ユミル『んー?』

クリスタ『向こうの木陰に誰かいるね』

ユミル『……ミカサと…エレンだな』



エレン「ミカサ……」

ミカサ「エレン……今日も無理しすぎないでね」

エレン「ああ。オマエもだぞ」

ミカサ「……うん」



ユミル『……これって覗きじゃねぇか』

クリスタ『ダメだよ。こんなことしちゃ』

サシャ『そ…そうですよ、ミーナ。まったく何をしてるかと思えば』

ミーナ『サシャだって一緒に覗いてたじゃない』



エレン「……」

ミカサ「……」

エレン「……ミカサ」ギュ

ミカサ「……ん…エレン」ギュ



クリスタ『あ……はわわわ……』

サシャ『あばばばば』

ミーナ『わっ…わっ…わっ……』

ユミル『ヒュー』



エレン「……」ナデナデ

ミカサ「……」ギュウウ

エレン「……」

ミカサ「……」



サシャ『こ…これはドキドキします……ね』

クリスタ『も…もう行こうよ……いけないよ、こんなの』

ミーナ『うわぁ……』

ユミル『……』



エレン「……頑張ろうな」

ミカサ「うん」

エレン「……ん」チュ

ミカサ「……んっ」チュ



クリスタ『キャーーー!』タタタ

ユミル『ぉぅ……ふ。あ……待て、クリスタ』ザザ

サシャ『ほ…ほわーー! はわはわはわ』ダダダ

ミーナ『ま…ままま……待ってー、みんな』ダダダ



エレン「……」スッ

ミカサ「……は…ぁ」


エレン「……ん。ミカサ」

ミカサ「?」

エレン「向こうから誰かくる」

ミカサ「誰」


エレン「……」

ミカサ「……」

エレン「アニだ」


アニ「……」

エレン「アニ。よくここがわかったな」

アニ「アンタらが食後にこっちに歩いて行くの見えたから」

エレン「そうだったのか」

アニ「お取り込み中すまないね」

エレン「見てたのか」

アニ「何も見てないよ。私はアンタに見つかるように来たつもりだけど?」

エレン「そうか」


アニ「今日の対人格闘術練習はどうするの? まだ私とやるのかい」

エレン「ん? できればお願いしたいんだが、何かあんのか」

アニ「私は別に……ただ婚約者様と組んでヘソ曲げるヤツがいたら、とばっちりだからさ」

ミカサ「……私のこと?」

アニ「……」

ミカサ「私は別にもうかまわない。エレンとは心がつながっているから」

アニ「……そ」


アニ「じゃ、そろそろ時間だから行くよ。アンタも遅刻しないようにね」

エレン「ああ。行こうか、ミカサ」

ミカサ「うん」


――

ユミル「おい、クリスタ待てって。どこまで行くんだ」

クリスタ「あぁ……もうビックリしちゃった」

サシャ「私もビックリです」

ミーナ「ハァハァ……みんなとばしすぎ」


クリスタ「……でも…いいなぁ……」

サシャ「ちょっとドキドキしましたね」

ミーナ「サシャでもそう感じるんだ」

サシャ「む……それはどういう意味ですか」


ユミル「つーかさ……オマエら……そろそろ訓練時間なんだが」

クリスタ「あ!」

ミーナ「いけない」

サシャ「おおう?」


クリスタ「そうだよ、浮ついてる場合じゃないよ。私たち兵士だもん。ちゃんとしなきゃ!」

クリスタ「気持ちを切り替えていきましょう」

ユミル「おう!」

ミーナ「…うん!」

サシャ「はい!」

クリスタ「みんな今日も一日よろしくね」


―――

――


今日はここまでです。

支援に感謝。


コメントありがとうございます。

この時点でのアニの心境は複雑そうです。

とりあえず、この話は一作目の エレン「なんだこの本?」 とつながっているので、エレミカは確定事項でした。
アニ派の方には申し訳ないです。


――対人格闘術訓練――


エレン「ちょっとオレのシャドーを見てくれよ!」

アニ「いいよ」


エレン「……」スッ

アニ「……」


アニ(キレイなフォーム……)


エレン「……」キュッキュッ


アニ(キレのある動き)


エレン「ハッ! ヤッ!」シュ

アニ「……!」


アニ(力強さが全身からあふれてる)


エレン「……」スッ

エレン「……ッ!」パンッ


アニ(速い!)


エレン「どうだ」


アニ「……なんだか…変わったね、アンタ」

エレン「ダメだったか?」

アニ「良い動きだったよ」

エレン「そうか!」


アニ「フッ……やろうか。かかってきな」

エレン「おう!」


アニ(私が教えた事をどんどん吸収する)


エレン「ツァッ!」

アニ「!」パシ


アニ(楽しそうに…自分でも技を磨いて毎回挑んできて)


エレン「ハッ」ザッ

アニ「……っと」


アニ(教えがいがあるってもんさ…私も楽しいよ)


エレン「セヤッ!」ガッ

アニ「……!」


アニ(強くなった…確実に私に追い迫ってきてる)


エレン「……」ジリ


アニ(……なのに)


エレン「ヤァッ!」

アニ「……」ズザッ


アニ(アンタが遠い……)


エレン「ははっ…今のは危なかったんじゃないか?」

アニ「まだだね」シッ


アニ(私はこいつの事が好きだったんだろうか……)


エレン「うぉっ」ズン

アニ「一本だね」


エレン「いてて……やっぱすげぇな、アニ」

アニ「ハッ……一年やそこいらで追いつかれちゃたまんないよ」

エレン「卒業までに追い抜いてみせるぜ」

アニ「言ってな」


アニ「……」


アニ(いつだってコイツは真っ直ぐで前しか見てなくて)


エレン「……」


アニ(でも…復讐の憎しみか……どこかに暗い陰はあった)

アニ(私と近しいモノ……)


エレン「……アニ?」


アニ(澄んだ瞳……アンタは変わったよ……)


アニ「……」


アニ(……ちょっと眩しすぎる…かね)


エレン「アニ。どうしたんだ」

アニ「……なんでもないよ」

エレン「具合でも悪いのか?」

アニ「ちょっと暑くてさ」


エレン「ああ…今日は日が照ってる」

アニ「眩しいね」

エレン「ハハッ! こうして手をかざしてれば眩しくないのにな」


アニ「……だけど届かないよ」

エレン「ん」


アニ「アンタはお日様をつかめるかい」

エレン「何言ってんだ、アニ? 太陽がつかめるわけないだろ」


アニ「そうだね。お日様はつかめないさ」


エレン「やっぱり今日おかしいぞ、アニ」

アニ「ハッ…心配かい?」

エレン「頭を打ったなら心配だ」


アニ「……そうさ…頭を打ったんだ」

エレン「なに?」



アニ「アンタみたいなヤツには……」

アニ「きっと……か弱い乙女の気持ちなんて」

アニ「……わからないだろうさ」


エレン「何言ってんだ」

エレン「…大男を空中で一回転させるような乙女は、か弱くねぇよ」

エレン「バカ言ってねぇで、頭打ったんなら救護室いくぞ」


アニ「いや、いいよ」


エレン「よくねぇよ。オマエに倒れられたら困るんだよ」


アニ「……!」


エレン「ほら、来い」グイ

アニ「ったく、相変わらず強引だね」

エレン「うるせぇ」


アニ「大丈夫だから続きいくよ」

エレン「本当だろうな」

アニ「……本当さ」


アニ(それでも……私はいつかアンタを……エレン)

アニ(……アンタらを……アルミン……)


アニ「……ごめんなさい」


―――

――



予定だとそろそろ終幕に近いのですが、挿し込むべき話が増えて、終わりが遠くなってしまいました。


パートごとの乙コメありがとうございます。

本日分、投下一回目いきます。


――立体機動訓練――


ライナー「エレンが変わった?」

アルミン「うん。今までと振る舞いが違うんだ」

ライナー「……どういうことだ」



エレン「なぁ、どうやったらそんなに深く斬撃を叩き込めるんだ?」

ミカサ「エレンは斬る時に腕の力に頼りすぎてる」

エレン「立体機動でスピードをのせて振るんじゃないのか」

ミカサ「それだけじゃない。もっと体全体を使う感じで……体中の慣性をブレードにのせる」

エレン「そうか。体ごと当たっていくのか」



ライナー「……確かにな」

ライナー「あんなふうにミカサにアドバイスを求めたことはなかったかもしれん」

ベルトルト「そうだね」

アルミン「今まではミカサに対抗意識があったと思うんだけど、それが無くなってるんだ」


アルミン(自分自身の力とミカサの力を……素直に受け止めてる)

アルミン(これは……)


ライナー「オレ達もうかうかしてられないな、ベルトルト」

ベルトルト「うん」

ライナー「よし、負けずにやるか! 行くぞ」バシュ

ベルトルト「ああ。ライナー」バシュ


アルミン(二人がどんどん先に行く……)


エレン「ミカサはターンもうまいよな。何が違うんだ」

ミカサ「ワイヤーの巻き取り方向と、ガスの噴射方向が異なっているとき、エレンは体が流れすぎてる」

エレン「つまり?」


ミカサ「回転しようとする力に身を任せるのは、ターンの半分ぐらいまで」

ミカサ「それ以降は姿勢を戻しにかからないとタイミングが遅れる」

エレン「理屈はわかるんだけどな……」

ミカサ「近くを見すぎてる。カーブの軌道をイメージしながら進行方向の先を見ないと」


エレン「なるほど……やっぱりすげぇな、ミカサは」

ミカサ「エレンもやればできる」

エレン「おう。やらないとオマエの死角をカバーできないもんな」


ミカサ「……! 私もエレンを精一杯支えられるように頑張る」

エレン「頼りにしてるぜ。行こう」バシュ

ミカサ「うん!」バシュ



アルミン(ボクだって……負けていられないんだ)

アルミン「……」バシュ


アルミン(ボクは体が小さいぶん、小回りが効くから)バシュ

アルミン(こまめに最短ルートを……)バシュ

アルミン(二人を見失わないように)バッ


アルミン「!」


アルミン(アンカーの刺さりが……しまっ……)


――ズサッ


アルミン「落ち…る……受身を!」

アルミン「……うっ」


エレン「……!」

エレン「ミカサ。待て!」

ミカサ「?」

エレン「アルミンが落ちた」

ミカサ「えっ」


ミカサ(……気づかなかった)


エレン「戻るぞ」

ミカサ「うん」ピッ


ミカサ「!」

ミカサ(小枝……マフラーに傷が……不覚)



――アルミン、アルミン


アルミン「……エレン…ミカサ」

エレン「立てるか? ほら」

アルミン(エレンの手……)


アルミン「……あ…」


アルミン(ボクが倒れるたび、いつも差伸ばされる手……)


アルミン(昔からそうなんだ。不良にからまれたときも)

アルミン(心配そうに見下ろす二人に…見上げるボク)

アルミン(二人はいつだって強かった)


アルミン「立てるさ……大丈夫だよ、一人で」

エレン「そうか。痛めたところは無いか?」

アルミン「うん。受身取れたし……なんともないみたい」

ミカサ「よかった」


エレン「ああ。アルミンはオレ達のブレインなんだから、しっかり頼むぜ」

アルミン「……え」


エレン「ほら、もうじき個人じゃなくて今度は班ごとの戦闘単位での訓練に変わっていくだろ」

エレン「ミカサは別になるけど、アルミンはオレと一緒の班になるらしいからさ。参謀役っつーか」

ミカサ「ずるい」

アルミン「……ずるい?」

ミカサ「私もアルミンの意見は欲しい。エレンばっかりずるい」

エレン「いよいよアルミンの本領発揮じゃん。怪我されたら困るんだ」


アルミン「そうか…そうなんだね」

エレン「当たり前じゃんか。オレ達をサポートしてくれよ」


アルミン(エレンはミカサの力だけを受け止めていたわけじゃなかったんだ)

アルミン(ボクも……いや、恐らく皆の長所をまとめようとしている)

アルミン(エレンの視野が急速に拡がっているのを感じるよ)


アルミン「任せてよ。こんなところでしくじってられないさ」

エレン「おう!」


アルミン(エレンは今までの自分の殻を破ったんだ)


ミカサ「行きましょう」

アルミン「うん」


アルミン(ボクも自分の力を信じていこう!)


―――

――



サシャ(以前にミカサから教わったお花……)

サシャ(ついに種を採ることができました!)


サシャ(こまめに見守ったかいがあるってもんです)

サシャ(この種をいろんな所に播くべし播くべし)

>>249

コピペミスしました。
再度貼りなおしします。


――ある日・午後休憩――


サシャ(以前にミカサから教わったお花……)

サシャ(ついに種を採ることができました!)


サシャ(こまめに見守ったかいがあるってもんです)

サシャ(この種をいろんな所に播くべし播くべし)


サシャ「ふんふんふん」


サシャ(種が小さいですから……)

サシャ(播いてから水をかけたら流れてしまうかもしれません)

サシャ(こういう場合は先に地面に水をまくのです)


サシャ(ってミカサが言ってました……さすが野菜を作ってた子だけありますね)


サシャ「ふふん」


サシャ(水筒の水をこぼしまして)

サシャ(水がしみ込んだらちょっと土を掘って……5ミリぐらいですかね?)

サシャ(種ぱらぱらっと)

サシャ(……埋め戻しておわりです)


サシャ「元気な芽が出ますように!」パンパン


サシャ(さぁさぁ次の場所にいきましょう)

――


サシャ(おや? あそこにいるのは……)


フランツ「ハンナ」

ハンナ「フランツ」

フランツ「愛してるよっ」チュウウ

ハンナ「私もっ」チュウウ


サシャ「……」ジー

サシャ(ミカサ達と同じ事してるのに、この二人のを見てもちっともドキドキしません)

サシャ(なんでですかね? まぁいいです。次いきます)

――


サシャ(おおっと、あっちにいるのは……)



エレン「――な、付き合ってくれ。頼むよ」

クリスタ「うん。いいよ!」



サシャ(!?)


サシャ(な…ななな……なんですか……付き合う?)

サシャ(ハッ……浮気…浮気ですか、エレン!?)

サシャ(これは大変な現場に出くわしてしまいました!)


エレン「じゃ、今度の休みは二人きりで……」

エレン「誰にも見つからないようにしてくれ」

クリスタ「うん。そうするね」



サシャ(これはミカサに知れたらエライことになります)

サシャ(クリスタもクリスタですよ!)

サシャ(あの二人って交流無いと思ってたのに、いつの間に……)



エレン「じゃ、またな」

クリスタ「またねー」



サシャ(ど、どっちかつけましょう。ええっと……エレン!)

――


コニー「今日も助かったぜ、ライナー」

ライナー「おう。気にすんな」

ユミル「お、クリスタ。どこに行ってたんだ」

クリスタ「ちょっとね、えへへ」

ユミル「?」


クリスタ「それより私もライナーにお礼言わなきゃ」

クリスタ「今日、危ないところを助けてくれてありがとう」

ライナー「ああ…」


コニー「しかし、ライナーはすげぇよ。訓練でいっつも一番に危険な役を引き受けるし」

クリスタ「なかなかできないよ」

コニー「ああ、同じ事やれって言われても、ちょっとオレには自信ねぇぞ」

クリスタ「頼りになるよね」

ライナー「そ、そうか」


ライナー(……結婚しよ)


ユミル「なんだ、ライナー。私のクリスタにそこまで言わせて、そっけないな」

ユミル「あぁ、女には興味のないクチか」

ライナー「なっ! ちが……」

ユミル「だははは」

クリスタ「ユミル!」

コニー「意味がわからん」


――


――同時刻・ラウンジ――


サシャ(ラウンジに入っていきますね)

サシャ(何食わぬ顔で私も入ります)


ミカサ「探した、エレン。どこ行ってたの?」

エレン「ああ、ちょっとな」

エレン「で、どうしたんだ」

ミカサ「今度の休暇に一緒に出かけたい」

エレン「悪い。用事があるから無理なんだ」


サシャ(……)


ミカサ「そう……何するの?」

エレン「何でもないさ」

ミカサ「手伝えることなら手伝う」

エレン「いや、そんなんじゃないから気にしないでくれ」

ミカサ「……うん」


サシャ(ミカサが寂しそうな顔を……酷いです、エレン!)


エレン「じゃ、そろそろ行くぞ」

ミカサ「エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「今夜、夕食後に一緒に散歩…」

エレン「すまん。それも用事があって無理だ」

ミカサ「……そう」

エレン「悪いな。じゃあ」

ミカサ「うん」


サシャ(なんでミカサに隠すんですか。やましい事だから言えないんですか)

サシャ(うう……ミカサ)


――


ちょっと中断します。


――ラウンジ外――


エレン「……サシャ」

サシャ(ビクッ)

エレン「……ずっとオレをつけているな?」

サシャ「なっ……」

エレン「クリスタと話していた所からいただろ」


サシャ「なんでわかったんですか。後ろに目でもついてるんですか」

エレン「なんでだろうな」


サシャ「……浮気ですか?」

エレン「……」

サシャ「許せませんよ、それは」


エレン「黙っていてくれないか」

サシャ「私が聞くと思いますか」

エレン「頼む」

サシャ「……」

エレン「頼むよ」


サシャ「……あなた最低です」

エレン「すまん」

サシャ「うう……」


――


――夜・女子宿舎――


ユミル「サシャ」

サシャ「はい?」

ユミル「クリスタがどこ行ったか知らないか」

サシャ「いないんですか」

ユミル「ああ」

サシャ「……」


サシャ「わからないですね」

ユミル「そうか」

サシャ「……」



ミカサ「……」

サシャ「…ミカサ?」

ミカサ「なに?」

サシャ「どうしたんです。枕なんか見つめて」

ミカサ「なんでもない」


サシャ「またマフラー巻いて寝るんですか」

ミカサ「! ……なんでアナタがそれを知っているの」ズズ

サシャ「だってあんな毎晩してるんだから、私にだってわかりますよ……って」


サシャ(まずい予感がします。鬼ミカサが出ますか……これ)


ミカサ「もうできない」

サシャ(……あれ? 元気ないですね。珍しく悪い予感がハズレました)


サシャ「できない?」

ミカサ「使いすぎてほころんできてしまった。穴もあいてる」

サシャ「ははぁ。もういいかげん、新しいの買ったほうがいいんじゃないですか?」

ミカサ「それはダメ。これはエレンから貰った思い出のマフラーだから」

サシャ「!!」


サシャ(それでずっと……)

サシャ(でも、そのエレンはたぶん今……)


サシャ「そうだったんですか」

ミカサ「そう」


サシャ(うぅ、つらいです。ミカサ)


――


――次の夕方――


ミカサ「エレン、今夜…」

エレン「悪い。また一人にしてくれないか」

ミカサ「……わかった」

エレン「……」

ミカサ「……?」

エレン「いや、なんでもない」

ミカサ「?」


――


――女子宿舎――


ミカサ(エレンが何かを隠してる)

ミカサ(私やアルミンにも知られたくない悩み……?)


ミカサ「……」


ミカサ(暑い…窓を開けよう)


ミカサ「!」


ミカサ(下にいるのは…エレン? 女子宿舎裏にどうして?)


ミカサ「!?」


ミカサ(あれはクリスタ……二人で何を)


ミカサ「……」


ミカサ(どこか行ってしまった。そういえば昨夜もクリスタがいなかった!)

ミカサ(追う……!)


ミカサ「……」


―――また一人にしてくれないか


ミカサ「……」

ミカサ「……わかった。追わない」


――

勘違いなんだろうとわかっても辛い


――休日午前・女子宿舎――


サシャ「あれ? ミカサ、こんなところで一人で何してるんです?」

ミカサ「……お掃除」

サシャ「偉いですねぇ。みんなは遊びに出かけてるのに」

ミカサ「……」

サシャ「どこも行かないんですか?」


ミカサ「エレンを誘ったけど断られた」

サシャ「……ぁ」

ミカサ「昨日の夜も、一昨日の夜も断られた」

サシャ「そう…ですか」

ミカサ「一人にして欲しいって。でも」

サシャ「でも?」


ミカサ「昨日の夕方、エレンがクリスタとどこかに行ったのを見た」

サシャ「!!」


ミカサ「たぶん今も……」

サシャ「ミカサ! エレンを探しましょう!」

ミカサ「なぜ?」

サシャ「なぜって……おかしいじゃないですか! 一人にして欲しいって言って、なんでクリスタといるんですか!」

ミカサ「……」

サシャ「探してちゃんとワケを聞きましょう」


ミカサ「ダメ」

サシャ「え」

ミカサ「エレンは一人にして欲しいって言った。私はそれを守る」

サシャ「なんでですか! エレンのほうは、言ってる事とやってる事が違うのにっ」


ミカサ「私がエレンを信じなくてどうするの?」

サシャ「なっ……!」


ミカサ「マフラーには穴があいても、私とエレンの絆には穴があかないはず」

サシャ「そんな……」


サシャ「だったらどうして…どうしてアナタはそんな悲しい顔をしてるんですか……」

ミカサ「……」

サシャ「ミカサ……」


――


――同日午後・ラウンジ――


ミカサ(掃除も洗濯も整頓も終わってしまった)

ミカサ(アルミンはマルコと出かけたっきり)

ミカサ(エレンは……)


サシャ「ミカサ、ここにいたんですね」

ミカサ「……」


サシャ「!」


サシャ「マフラーはどうしたんですか……なんでしてないんですか!?」

ミカサ「……」


ミカサ「さっきエレンがここに来た」

サシャ「え!?」

ミカサ「……マフラーを持って…出て行った」

サシャ「えええ!?」


――



エレン「おーい! ミカサ」

サシャ「エレン!」

エレン「あれ? サシャ。こんなところで何してんだ?」

サシャ「何してんだじゃないですよ! アナタこそ!」

クリスタ「あれ? サシャもいたんだ」

サシャ「クリスタ!」


ミカサ「……」

エレン「ミカサ、何を驚いてるんだよ」


エレン「それより見てくれ。このマフラー」


――ファサッ


エレン「穴とかほころびとかあったけど……もう殆ど目立たないだろ?」

ミカサ「……!?」


クリスタ「頑張ったもんね、エレン」

サシャ「……どういうことですか?」


エレン「いや、ミカサがオレのマフラーをずっと大事にしてくれてたけどさ」

エレン「こないだも枝に引っかけてたし、だいぶほころんでいたのがわかってはいたんだ」

エレン「そのままにしてたら、そのうちダメになるだろ?」

エレン「でもミカサは、自分から手を加えようとはしないし」


ミカサ「あ…」


エレン「で、前にアルミンにクリスタが裁縫上手だって聞いてたから…」

エレン「オレが繕って直せばミカサも納得するかなって思って、教えてもらってたんだよ」


ミカサ「あ……」

サシャ「……」


エレン「さすがに裁縫なんてちょっと恥ずかしくてさ、みんなに内緒でやってたんだけど」

エレン「サシャにはすぐにバレたかと思って焦ったよ」


エレン「……でもなんか、えらい勘違いされてたな」

サシャ「あ、あは……あの、そのぅ……」


エレン「けど、ミカサはちゃんとオレを待っていてくれたもんな。やっぱミカサだよな!」

ミカサ「……うん……ありがとう」


ミカサ「とても嬉しい……」ギュウ

エレン「なんだよ、ミカサ。こんなところで……」ナデナデ

ミカサ「うん」グス


クリスタ「はぁ……いいな」

エレン「クリスタ。ありがとうな」

クリスタ「ううん。よかったね」クス


サシャ「あぅあぅ」

サシャ「私はなんてことを……二人に合わせる顔がありません」

エレン「いいって。オレが悪かったよ」

ミカサ「私はエレンを信じてた……問題ない」

サシャ「……ありがとうございます…」


エレン「ほら。じゃあマフラー巻いてやるよ」

ミカサ「……」コク


エレン「なんかこれ懐かしいな」

ミカサ「……うん」


ミカサ「エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「隣に座っていい?」

エレン「おう」


ミカサ「エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「肩貸して……」トン

エレン「お、おう……なんか恥ずかしいな」


クリスタ「……はわわ」

クリスタ「あ…あの……じゃあ私は戻るね! またね!」

サシャ「私も戻ります。ごゆっくりー!」

エレン「またな! サンキュー!」


――


サシャ「あ、あれって肩枕とでも言うんですかね?」

クリスタ「わ…わかんない」

サシャ「や、やっぱりあの二人のを見てるとドキドキしますね……」

クリスタ「……うん」


―――

――


本日はここまでになります。
コメありがとうございました。

>>277
やっぱりバレバレですよね。
ハッピーエンドが大好きなもので……


本日分です。
最終パートの投下になります。


――とある休日・市街――


エレン「気持ちいい天気だな」

ミカサ「うん」

エレン「こうして大通りを歩いてるだけで、結構いろんなヤツとすれ違うもんだ」

ミカサ「駐屯地にいても暇だから…みんな街に出る」

エレン「まぁ、そうか」


――


エレン「あそこの店先にいるのユミルとクリスタじゃん」

ミカサ「手芸屋?」

エレン「ああ。ほんとに好きなんだな……お、店に入ってった」

エレン「……そういや、あれからマフラーどうだ?」

ミカサ「すごくいい。ありがとう」

エレン「ならよかった」


――


エレン「ん……そこの本屋で立ち読みしてるのって」

ミカサ「アルミン」

エレン「夢中になってるな……おーい、アルミン!」


アルミン「やぁ…エレン、ミカサ」

エレン「新刊か?」

アルミン「うん、すごく面白いんだ。買って帰るから今度エレンにも貸すよ」

エレン「サンキュー。じゃ、またな」

アルミン「またね」


エレン「……あれ以来、オレまで本を読むようになっちまった」

ミカサ「良いことだと思う」


――


エレン「なぁ、あの店の二階の窓際にいるヤツら……」

ミカサ「……サシャとコニー」

エレン「その奥にマルコとトーマスもいる……窓際の二人は何やってんだ」

ミカサ「なにか争ってる」


エレン「大皿のスパゲティを取り合ってるな……」

ミカサ「……」

エレン「ったく、よくやるよ」

ミカサ「あの店は四人の注文をまとめると安くなるから」

エレン「そうなのか。じゃあ今度だれか二人誘って行ってみるか」

ミカサ「うん」


――


エレン「右奥の店のテーブル席見てみろよ」

ミカサ「?」


エレン「アニだ。一人で雑誌読みながら茶飲んでるぜ」

ミカサ「……」

エレン「アイツにあんなことする趣味があったのか」


ミカサ「膝にネコを抱えてる」

エレン「マジだ……あの店のネコかな」

ミカサ「たぶん」

エレン「ずいぶんアニに慣れてるな。行きつけの店だったのか」


エレン「そういやアニってなんかネコっぽいよな。似た者同士なのか、動物好きなのか」

ミカサ「……」

エレン「ははは」


――


エレン「ライナーとベルトルトもいた」

ミカサ「どこ?」

エレン「向こうの川べりに座ってる」

エレン「二人で釣りしてんのか……これもすげぇ意外だ」


ミカサ「エレンは最近いろんな物によく気づく」

エレン「なんか勝手に見えちまうんだよ」

ミカサ「周りがよく見えるのは大切なこと。羨ましいと思う」

エレン「オマエにもオレにそう思うことがあるんだな……」

ミカサ「いろいろある。エレンが知らないだけ」

エレン「……そうだったのか」


――


エレン「お?」


ジャン「よぉ、デートかよ。お二人さん」

ミーナ「やっほー。ミカサ、エレン」

ミカサ「こんにちは」

エレン「ジャン…ミーナ……な、なんだ? 腕なんか組んで歩いて」


エレン「……あーー! オマエらひょっとして!!」


ミーナ「ふふっ」

ジャン「エレンも鋭くなったじゃねぇか。まぁ、そういうことだ」


エレン「なんだよ、バカにしやがって…ははは……チクショウ、お似合いだぜ! 二人とも」

ミカサ「うん」

ミーナ「ありがと!」


ジャン「へっ、そっちもやっぱりお似合いだ」

エレン「そ、そうか。なんか照れるな」


ジャン「呼び止めて悪かった。じゃあ、行くぜ」

エレン「おう、またな!」

ミカサ「また」

ミーナ「またねー」


エレン「……アルミンには悪いけど、今度あの二人を誘うか。さっきの店」

ミカサ「たまにはいいと思う」


――


エレン「今日は意外な発見が多いもんだ」

ミカサ「うん」

エレン「アイツら腕組んでたな」


ミカサ「……私たちもする」

エレン「そ、そんな恥ずかしいことできっかよ! 人前で」

ミカサ「……」

エレン「そんな顔すんなって……」


ミカサ「……」

エレン「……あー…そういやジャンと初めて会った日だったな。手つなぐのやめたの」

ミカサ「……うん」

エレン「また…つなぐか……?」

ミカサ「! ……ぁ…」


エレン「な…なに赤くなってんだよ。腕組もうとしたくせに」

ミカサ「……」

エレン「やめろよ、オレまで恥ずかしくなってきただろ」

ミカサ「エレンも真っ赤」


エレン「うるせぇ! ……何してんだよ、ほら」

ミカサ「……」ギュ

エレン「早く行こうぜ」

ミカサ「うん」


エレン「ずっと一緒に……歩もうな」

ミカサ「うん……うん」



エレン「あぁ……気持ちのいい風だ」





おわり


――おわりに――

第104期訓練兵団の三年間の日常物が、どうしても読みたかったので書きました。

でもやっぱり公式物で出て欲しいなと思います。


大好きなキャラの一人はジャンです。

なにかジャンに良い目を……と、最初と最後に登場してもらいました。

なので、じつは進撃の訓練兵ジャンな内容でもあります。


間は空きましたがパート1から数週間。

読んでくださった皆様方、日々のご支援を本当にありがとうございました。


それでは、またどこかで。

――――

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