エレン「俺達が死刑……?」(27)
エレン「死刑ってなんでですか!?巨人との戦いには勝利したはずでしょう!?」
総督「その通り、だからこそ貴様らを生かして置くことは民衆が黙ってはいないのだ」
エレン「俺達は人類の為に戦ったのにあんまりじゃないですか!」
総督「黙れ。口が過ぎるぞエレン・イェーガー。貴様のせいで何人が命を落とした?」
エレン「それは……しかし、犠牲無くして巨人達との勝利は無かったはず」
総督「そのような屁理屈で民を犠牲にしてよい理由にはならん」
総督「貴様ら兵士は王に心臓を捧げた身、その生死は王の采配によって決する」
エレン「ですが……どうしてミカサやアルミンまで」
総督「そうだな。罪状をそれぞれ詳しく述べてやろう」
総督「まず貴様からだ。エレン・イェーガー調査兵」
総督「先の巨人との大戦において多数の功績を残したのも事実である。しかし、104期訓練生卒業時上位10人に入ったにも関わらず、兵士として最大の名誉である憲兵団を志願せずに調査兵団に属した」
エレン「それは選択の自由があったはずでは!」
総督「確かに。しかし貴様はこの王政のあり方に疑問視を投げ掛け、むやみに同期訓練兵をそそのかしたと報告が上がっている」
総督「結果、優秀な兵士がその命を落とした。王政府に与えた人的な被害は見過ごせない」
エレン(どうしてだ!自分の意志を示したことが罪になるのか!)
総督「納得しかねる表情をしているな。しかし貴様は兵士である。兵士に自己の意志は必要ない。それができぬなら王を否定するも同じこと」
エレン(否定になるのか……疑問すら抱いてはいけなかったのか!)
総督「そしてリヴァイ兵士長やその部下を死に至らしめたのは、貴様自身の過信と未熟さがもたらした結果であると上層部は判断した」
総督「彼らも兵士だ。死は覚悟していただろう。しかし、その死に貴様の言動が絡んでいたのは事実である」
総督「巨人とも人間とも付かぬ存在である貴様が、生きたままいるというのは民の不安の種がいつまでも消え去らないことになる」
総督「よって戦争が終わり、過ぎた兵器となりうる貴様には死を持って本当の幕引きの礎となってもらう」
エレン「待ってくれ!そんな理不尽なことが認められるのか!!」
総督「既に決まったことだ。覆ることはない。貴様等は平和を望んで兵士になろうとしたのだろう?」
総督「これは残された人類の総意なのだ。未来に貴様等の存在は必要ないと」
エレン「ふざけるな!!俺達はこんな結末になる為に皆で戦って来たわけじゃない!こんな仕打ちはあんまりじゃないか」
総督「黙らせろ」
憲兵「はっ!」
エレン「ちくしょう!!ちくしょう!!こんな、こんな……」
総督「次に、ミカサ・アッカーマン」
ミカサ「はい」
総督「貴様は幾度も上官に逆らい、あろうことか刃を向けようとしたな」
総督「そのほとんどがエレン・イェーガー個人に対する、独善的で限りなく自己中心的な思い入れから来るものだったと報告が上がっている」
総督「戦時中ならばその人類側に対する兵士として失った場合の損失を考慮して、見逃されていた部分が多々ある」
総督「しかし、その戦が終わった今、エレン・イェーガーを処刑したこと逆恨みし、王政に牙を剥く可能性のある危険因子と判断した」
総督「さらには、トロスト区襲撃の際、一般人である商会の者を殺害しようとしたとの報告が来ている」
総督「これは兵士にあるまじき愚行である。救い方ならば他にあったはずだ」
総督「同時に、エレン・イェーガーを失ったという報告を受け、まともな判断を失い沢山の兵を先導し、巨人の被害を故意に増やした疑いもある」
総督「なにか反論や訂正はあるか?」
ミカサ「ありません。エレンが死刑になるのなら私がこの世界に生きる意味もありません」
総督「よろしい」
総督「次に、アルミン・アルレルト」
アルミン「はい」
総督「貴様はトロスト区奪還の際、自身や友人の延命の為に確実性もない作戦を持ち出し、兵士に甚大な被害を与えた罪がある」
総督「直接の指揮は今は亡き、ドット・ピクシスがとっていたが貴様に罪が全くないわけではない」
総督「そして、女型の巨人の件では貴様の作戦と判断ミスのせいで人的な被害を内地の人間に与えた。これは限りなく重罪である」
アルミン「しかし!そうしなければ捕らえることが出来なかったのは事実ではないでしょうか」
総督「民は犠牲を伴わぬ平和を望んでいる。貴様の考えはただの兵士としての考えでしかない」
総督「以上で104期卒業生で生き残った三人に対しての罪状だ」
総督「刑は明後日施行する。憲兵連れていけ」
憲兵「はっ!」
エレン「くそっ!ふざけるな!こんなことが罷り通るのか!!」
ミカサ「エレン、落ち着いて」
アルミン「エレン……」
――当日
エレン「こんな結末かよ……あれだけ皆で戦ってきて……こんな……こんなのってないだろ」
ミカサ「エレン、アルミン、聞いて」
アルミン「ミカサなに」
ミカサ「私がなんとかして目を逸らさせる。だから二人は逃げて」
アルミン「そんなことできるわけないよ」
ミカサ「出来る。してみせる」
アルミン「ミカサ!?」
エレン「俺がやる。舌を噛んで巨人化する」
カッ
憲兵「あいつ巨人化しやがった!!」
エレン「逃げるぞ!ミカサ、アルミン!」
ミカサ「エレン!」
アルミン「でもどこに!」
総督「まて、エレン・イェーガー貴様は巨人を憎み駆逐すると言ってそれを成したのではないのか」
総督「皆の目を見よ、巨人を見る目だ。貴様は忌み嫌った存在に成り果て、再び民衆の恐怖を煽ってまで生き延びたいのか?」
総督「兵士ならば死に際も兵士らしく死に、皆の記憶の片隅に残ろうとせんか」
エレン「お、れ……が巨人と同じ……」
憲兵「巨人化が解けたぞ!」
総督「やれ」
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その日、104期生最後の生き残りだった僕達の人生は幕を閉じた。
結局、壁の外を旅する夢は叶わずに消えた。人類は巨人の居ない世界を得たが、その戦争に最前線で命をかけた人々はほとんど残っていなかった。
巨人に勝ち、自由を手に入れたと思った僕達は同じ人間によって殺された。
完
エレン「俺達が死刑?」
ミカサ「重罪だって」
アルミン「そりゃ失敬」
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は?