穂乃果(今日も帰りは一人…)

穂乃果(海未ちゃんがいないせいだ…)

穂乃果(海未ちゃんのバカ…親友のくせに…)

～

穂乃果「海未ちゃーん！今日は一緒に帰れるよね！」

穂乃果「クレープ食べてこうよ！」

海未「あっ…ごめんなさい穂乃果」

海未「今日も絵里の家によって行くので…」

穂乃果「またなの？」

海未「ええ、作詞の事でどうしても絵里にお話を聞きたくて」

穂乃果「…そう」

～

穂乃果(…)

穂乃果(今更実感した…)

穂乃果(やっぱり一人の帰り道は寂しい…)

穂乃果(明日は…引っ張ってでも一緒に帰りたい…)

穂乃果(最近、穂乃果には異変が起きてる…)

穂乃果(よく眠れない)

穂乃果(嬉しい事を素直に喜べない)

穂乃果(そして)

穂乃果(いつも胸がちくちくする…)

穂乃果「前まではこんなことは無かったのになぁ…」

穂乃果(そう…この異変はつい最近穂乃果の身に起き始めた)

穂乃果(スクールアイドルを始めて)

穂乃果(『あること』を実感してから…)

穂乃果(自分で言うのもなんだけど)

穂乃果(穂乃果の中にこんなにも醜い感情があったなんて…)

穂乃果(海未ちゃん…)

穂乃果(いつも穂乃果と一緒にいてくれた一番の友達)

穂乃果(お母さんのお腹の中にいたときからの腐れ縁)

穂乃果(それが…)

～

穂乃果「うーみちゃん！今日ね！この後カラオケに…」


海未「もう！わかりましたから！」

絵里「ほんとに？じゃあ早速行きましょう？」

海未「もう！強引なんですから！」

絵里「だってどうしても一緒に行きたかったんだもの！」

絵里「きっと海未に似合うなって思ったから、どうしてもね」

穂乃果「あっ…」

絵里「あら…？穂乃果じゃない！」

海未「穂乃果！」

絵里「そうだ！穂乃果も一緒に行きましょうよ！」

海未「そうですね！大勢の方が楽しいですし」

絵里「とっても可愛い服屋さんを見つけたのよ！」

海未「もちろん、穂乃果も行くでしょう？」

穂乃果「あっ…穂乃果は…」

穂乃果「穂乃果は…」

海未「ん？」

穂乃果「穂乃果は…い、行かない…」

海未「え？」

穂乃果「行かないから…」ﾀﾞｯ

～

穂乃果(海未ちゃんはスクールアイドルを始めて、たくさんの出会いをして…)

穂乃果(いろんな人と話すようになった)

穂乃果(きっとそれは海未ちゃんにとって良いこと…)

穂乃果(なのに…)

穂乃果(穂乃果には喜べなかった)

穂乃果(だって海未ちゃんが離れていく気がしたから)

穂乃果(海未ちゃんの世界が広がる度に…)

穂乃果(穂乃果と海未ちゃんの距離までも広がっていく気がして)

穂乃果(それが穂乃果の胸を痛くする)

穂乃果(海未ちゃんの中で穂乃果の優先順位がどんどん下がってると考えると…)

穂乃果(恐怖さえ覚える)

穂乃果(辛い…)

穂乃果(そう…)

穂乃果(穂乃果は嫉妬してるんだ)

穂乃果(海未ちゃんを取り巻く環境に…)

穂乃果(穂乃果は本当に自分勝手)

穂乃果(海未ちゃんは穂乃果だけの海未ちゃんでいて欲しいなんて…)

穂乃果(黒いこと考えてる…)


穂乃果「うぅ…」ﾁｸｯ

穂乃果「うぅぅぅ…」ﾁｸﾁｸ

穂乃果「はぁ…」

穂乃果「出来るだけ海未ちゃんの事は考えないようにしよう…」

穂乃果「辛いよ…」

翌日

海未「押しますよー！」ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞ

凛「うぅぅぅ！」

海未「始めに比べると大分柔らかくなりましたね」

凛「そうかにゃ？」


穂乃果「…」

穂乃果「…」ｽﾞｷｽﾞｷ

穂乃果「ううっ…」

穂乃果「はぁ…っ…」

ことり「穂乃果ちゃん？どうかしたの？」

穂乃果「はぁ…はぁ…何でもないよ」

ことり「…」

ことり「そう…」

穂乃果「はぁ…」

ことり「最近、元気ないね」

穂乃果「そう…？」

ことり「うん、そう見えるよ」

穂乃果(相談…しようかな)

穂乃果(そうすれば…少しは楽に…)

穂乃果(…)

穂乃果(いや…やめよう)

穂乃果(親友だと思ってた人が別の人と親しくしている…)

穂乃果(それだけでこんなにも胸が苦しくなる…)

穂乃果(こんなにどす黒い感情…ことりちゃんに知られる訳にはいかないよ…)

穂乃果「そうかなぁ？穂乃果は元気だよ！」

穂乃果「むしろ元気だけが取り柄なんだから！」

ことり「あはは、なにそれー」

ことり「…」

雪穂「おねーちゃん、ご飯だよー」

穂乃果「ああ、雪穂」

穂乃果「ちょっと気分が悪くて…いらない」

雪穂「大丈夫なの？」

穂乃果「寝てれば治るよ」

雪穂「そう、お大事にね」

穂乃果「…」

穂乃果「…はぁ」

穂乃果「今日は…特に胸が痛い」

穂乃果「おかしいな…今日は海未ちゃんを独占出来たのに…」

～

穂乃果(今日は無理にでも海未ちゃんと帰りたい)

穂乃果「う、海未ちゃん！」

海未「穂乃果」

海未「あれ？顔色悪くないですか？」

穂乃果「き、気のせいだよ」

穂乃果「それより一緒に帰ろ？」

海未「はい」ﾆｺｯ

海未「久しぶりですね」

ｽﾞｷｽﾞｷ

穂乃果「…！」

穂乃果「はっ…ぁ…」

海未「どうかしました？」

穂乃果「何でもないよ！」

海未「そうですか…」

海未「では行きましょう」

～

穂乃果「おかしい…」

穂乃果(親友の海未ちゃんが他の人と仲良くするのを見て嫉妬して)

穂乃果(こう…胸がちくちく…してた)

穂乃果(でも、さっきは…)

穂乃果(穂乃果の独占欲は満たされていたのに…)

穂乃果(海未ちゃんの優しい笑顔を見て…)

穂乃果(胸が苦しくなった…)

穂乃果(この胸の痛みは嫉妬じゃないの？)

穂乃果(もう、自分でもわからない)

穂乃果「なんだろう…この気持ち…」

穂乃果「もう…寝ちゃおうか」

・・・・

穂乃果「…」ﾌﾗﾌﾗ

ことり「穂乃果ちゃん？」

穂乃果「なに…ことりちゃん」

ことり「大丈夫？ふらふらしてるよ？」

ことり「休んだほうが…」

穂乃果「大丈夫だよ」

穂乃果「それに…練習を休むわけにはいかないよ」

穂乃果「ほら、行こう」

ことり「…」


海未「真姫、これを」

真姫「これは？」

海未「新曲の歌詞です」

真姫「出来たのね、お疲れ様」

海未「いえいえ」


穂乃果「はぅっ…」ｽﾞｷｽﾞｷ

穂乃果「はぁ…はっ…あっ…っ…」

ことり「穂乃果ちゃん！？」

穂乃果「あっ…」ﾌﾗｯ

ﾊﾞﾀｯ

ことり「穂乃果ちゃん！？穂乃果ちゃん！」

・・・・

穂乃果「んっ…」

ことり「穂乃果ちゃん！」

穂乃果「ここは…？」

ことり「保健室だよ！穂乃果ちゃん倒れたんだよ」

穂乃果「そっか…」

ことり「穂乃果ちゃん、最近まともにご飯食べて無いでしょ」

穂乃果「えっ…」

ことり「だいぶやつれて見えるよ」

ことり「ちゃんと睡眠もとってる？」

穂乃果「…」

ことり「穂乃果ちゃんはスクールアイドルμ'sのリーダー」

ことり「一人の体じゃないんだから…」

穂乃果「ごめん…」

ことり「ねぇ、穂乃果ちゃん」

ことり「何かあったの？」

穂乃果「え…」

ことり「いや、何かあったのはわかってる」

ことり「何が穂乃果ちゃんを苦しめているの？」

ことり「教えて」

穂乃果「べ、別に…」

ことり「…」

ことり「いい加減にしてよ…」

穂乃果「！」ﾋﾞｸｯ

ことり「そうやって一人で抱え込むの？」

ことり「そんなの穂乃果ちゃんらしくないよ…」

ことり「いつもみたいに…巻き込んでよ…ことりの事」

穂乃果「…ごめん」

穂乃果「でも、こんな気持ち始めてだったから…」

ことり「うん、教えて」

穂乃果「穂乃果の事…幻滅しちゃうかもしれないけど…」

ことり「大丈夫、ことりはどんな穂乃果ちゃんでも受け入れる」

ことり「親友でしょ？」

穂乃果「ことりちゃん…ありがとう」

穂乃果「あのね…」

穂乃果「穂乃果…苦しいの」

穂乃果「海未ちゃんが」

穂乃果「親友の海未ちゃんが…他の人と仲良くするのを見ると…」

穂乃果「それに嫉妬して」

穂乃果「胸が苦しくなって…」

穂乃果「どんどん黒くなっちゃう…」

穂乃果「辛いよ…」

ことり「穂乃果ちゃん…」ﾀﾞｷｯ

ことり「その気持ち…ことりも痛いほどわかる…」

穂乃果「えっ…」

ことり「ことりは穂乃果ちゃんと海未ちゃんを一番側で見てきたから」

穂乃果「…」

ことり「二人の間にことりは完全には入り込めない…」

ことり「どうして、初めからこの町に生まれなかったんだろう」

ことり「どうして、ことりは二人ともっと早く出会えなかったんだろう」

ことり「考え出したらキリがない 」

ことり「友達同士なのにね…」

ことり「二人の仲に嫉妬することなんてたくさん」

ことり「ことりも大好きな二人に嫉妬するなんてって…苦しい思いをしたこともあるよ」

穂乃果「…そうだったんだ」

ことり「でもね、」

ことり「それって当然の事じゃない？」

穂乃果「当然…？」

ことり「そう」

ことり「大好きな人が自分から離れて行っちゃう気がして…」

ことり「それを嫌だなぁって思うこと…」

ことり「それって悪いこと？」

ことり「人として、当然の感情じゃないかな」

穂乃果「そう…なのかな」

ことり「これはきっと誰もが持ってる感情だよ」

ことり「きっと恥ずかしい事でも、後ろめたい事でもない…」

穂乃果「…！」


穂乃果(ことりちゃんの言葉を聞いて…)

穂乃果(どす黒い雲が立ち込める穂乃果の心に…)

穂乃果(光が差した気がした…)

穂乃果「心が少しだけ軽くなった気がする…」

穂乃果「でも…わからない事があって」

ことり「それも…ことりに話してくれる？」

穂乃果「うん」

穂乃果「昨日…海未ちゃんと一緒に帰ったんだけど」

ことり「うん」

穂乃果「海未ちゃんを独占出来て…とっても幸せで…」

穂乃果「嫉妬する気持ちも…出てこない…はずなのに…」

穂乃果「海未ちゃんの笑顔を見ると…胸が苦しくて…」

穂乃果「壊れそう…なの」

穂乃果「この気持ちは…なに？」

ことり「…」

ことり「それは…」

ことり「きっと…」

穂乃果「きっと…？」

ことり「…」

ことり「その気持ちはことりには…わからない気持ち…」

ことり「だけど…とても大事な気持ちだってことはわかるよ」

ことり「穂乃果ちゃん」

ことり「その気持ちはきっと自分で気づかないとダメなんだよ」

穂乃果「自分で…」

ことり「うん」


ﾀﾀﾀﾀﾀ

ことり「あっ…きた」

ｶﾞﾗﾗｯ


海未「穂乃果！」

穂乃果「う、海未ちゃん！」

海未「すいません！遅くなりました！」

海未「穂乃果、体は大丈夫ですか！？」

穂乃果「う、うん」

海未「もう、バカ…」ﾀﾞｷｯ

海未「心配をかけさせないでください…」

海未「穂乃果にもしもの事があったら…私は…」

穂乃果「ごめんね、海未ちゃん」

ことり「海未ちゃん、ことりは用事があるから、先に帰るね」

ことり「穂乃果ちゃんをお願い」

海未「ええ…」

穂乃果「ことりちゃん、ありがとう」

ことり「うん」

ことり「頑張ってね」ﾎﾞｿｯ

穂乃果「…」



海未「穂乃果」

海未「一体どうしたんですか？」

海未「急に倒れるなんて…」

海未「病院に行ってないってことは…大事ではないんでしょうけど…」

穂乃果「ちょ、ちょっと睡眠不足で…」

海未「睡眠不足…？」

海未「…」ﾑｯ

海未「バカ！」ﾄﾞﾝｯ

穂乃果「！」

海未「何時もあれほど睡眠は大事だって言ってるのに！」

海未「さっきも言いましたけど！私はぁ！」

海未「穂乃果の身に何かあったらと思うと！」

海未「うぅ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

海未「くぅぅ…穂乃果のバカぁ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

穂乃果「海未ちゃん…ごめんね」

海未「ゆ…許しません…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

穂乃果「ごめんね…」

海未「バカぁ…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ


・・・・

海未「…ｸﾞｽﾞｯ」

海未「穂乃果、そろそろ帰りましょう…」

穂乃果「うん」

海未「鞄は？」

穂乃果「ここにあるよ」

海未「それじゃあ…はい」

穂乃果「え？」

海未「おぶってあげます」

海未「一応穂乃果は倒れた身ですから…」

穂乃果「…ありがとう」

ｺﾂ ｺﾂ

海未「最近、日が落ちるのが早くなりましたね」

穂乃果「そうだね」

海未「穂乃果」

穂乃果「なに？」

海未「もうちょっと体をくっつけてもいいんですよ？」

穂乃果「ああ、うん…」

穂乃果(それは無理)

穂乃果(だって高まった心臓の鼓動の音を聞かれたくないから…)

穂乃果(海未ちゃんの髪の匂い…)

穂乃果(手の温もり…優しい声が伝わってくる…)

穂乃果(今までの胸の痛みとは似てるけど違う…)

穂乃果(そんな胸のチクチクが穂乃果を襲う)

穂乃果(このチクチクは何だか嬉しい気持ちになる)