面接官「それでは次…男さん」
男「はい、よろしくお願いいたします。」
面接官「えーそれでは、まずですね、この職を希望なさった動機をお話ください」
男「はい。僕は以前まで、僕の人生の舞台に立つ仕事をしていました」
男「舞台の仕事は、とても楽しかったです。それが…今から25年前ですね、その職についたのは」
男「舞台は順調に進んでいきました。次第にお客さんも増えて、毎日その仕事をするのが楽しかったです」
面接官「んん、…少し、質問をいいですか?」
男「はい、お答えさせていただきます」
面接官「順調、というのは、どのような形で進んでいったのでしょう」
男「はい、僕は実は、見ての通り冴えない男なのですが。少なくとも…そうですね、20年ほど前は違いました」
男「皆から愛されて、毎日かわいいかわいいと言われるような役をしていました。とびきりの主人公、とでも言えばいいでしょうか」
男「とにかく、その役について、しばらく舞台を進めている間は、そんなことを言われていました。」
男「なので、順調と申し上げました」
面接官「なるほど…続けてください」
男「次第にその役が型にはまらなくなったのが、…5年前くらいですかね。もう舞台に立つことは慣れっこで、お客さんもたくさん、たくさんいらっしゃってた頃です」
男「もう、一気に下がりました。モチベーションが。僕は関係ないセリフを口走ったり、動くべきところで動かなかったり、しました。なぜだかは解りません」
男「そのときは、突然やってきたのです」
面接官「ほう…それは、怖いですね」
面接官「ですが天災でもない限り、まあ…男さんの意見を否定するわけじゃありませんが、突然、なにもなくやってくるものはないはずですがね」
面接官「もう少し、考えてみてはどうですか?そのへんを」
男「はい…すいません。至らない発言をして、申し訳ありませんでした」
面接官「いえ。えーっと…それが、志望動機ですか?」
誰もいないかな?
ほんのちょっとはずす
男「はい、要約すると、以上になります。発言のお時間、ありがとうございました」
面接官「はい。ええー…じゃあね、我が社の規則と、仕事内容についてこれから説明していきますね」
男「はい」
面接官「それではまず、規則についてなんですが、これは簡単です」
面接官「私どもからご自分…つまり、舞台上のあなたは見えますが、舞台のあなたから私どもは見えません。20年前、そうでしたよね?」
男「え、ええ…そういえば、そうでした」
面接官「決して舞台のあなたは私どもを見ることができませんので、話しかけることは無理です。まず、上映中に話しかけることはそもそも無理なんですがね」
見てる
面接官「なぜ見えないかは、まあ、わかってると思いますが証明ライトがそこら中にあるからです。これが規則です」
男「はい、解りました」
面接官「それから、仕事内容なんですが、こちらはけっこう難しいです」
面接官「台本修正、大道具、小道具、照明、スケジュール管理、ほとんどに携わっていただきます。」
>>9ありがとうー
男「そうですか…それは、大変そうですね」
面接官「ええ。人によっては、何人ものスケジュールを管理しなくてはならないので、大変ですね」
男「それは、他の人のスケジュールも管理、ということでしょうか?」
面接官「…まあそうなりますかね。とにかく、この仕事の大変なところはここです」
面接官「私どもは前向きに検討していますが…どうですか?男さんとしては」
男「は、はい…まあ、このまま無人の舞台にずっと立ってるより、役に立てるなら。と思います…」
面接官「そうですか。えーそれでは、後日改めて、という形でよろしいでしょうか?」
男「はい。ありがとうございます」
面接官「他に何か、言っておきたいことはありますか?」
男「いえ、特にはないです。御社の規定に従わせていただきます」
面接官「そうですか。それでは、後日改めてご連絡いたします」
男「はい、ありがとうございました」
ーーー数日後
男「ああ、18年前か。こどもには無邪気に遊ばせている描写がいいな。ええっ…と」
7歳男「きゃっきゃっ。くらえードロばくだん!」ベシャ
男「あーあ、女の子に食らわせちゃったよ、こんなの台本になかったのになあ…いいや、適当に謝らせておこう」
男「おっ12年前か。中学生は好きなことやらせないと、輝かないな、よぅーし」
13歳男「ニコニコおもしれー…」
男「あ、あれ?部活動もやらないのかよ…くそっ、いったん幕引いてばん回しなくちゃな」
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