男「僕は、僕の人生の幕引きの仕事をしています。」 (15)

面接官「それでは次…男さん」

男「はい、よろしくお願いいたします。」

面接官「えーそれでは、まずですね、この職を希望なさった動機をお話ください」

男「はい。僕は以前まで、僕の人生の舞台に立つ仕事をしていました」

男「舞台の仕事は、とても楽しかったです。それが…今から25年前ですね、その職についたのは」

男「舞台は順調に進んでいきました。次第にお客さんも増えて、毎日その仕事をするのが楽しかったです」

面接官「んん、…少し、質問をいいですか?」

男「はい、お答えさせていただきます」

面接官「順調、というのは、どのような形で進んでいったのでしょう」

男「はい、僕は実は、見ての通り冴えない男なのですが。少なくとも…そうですね、20年ほど前は違いました」

男「皆から愛されて、毎日かわいいかわいいと言われるような役をしていました。とびきりの主人公、とでも言えばいいでしょうか」

男「とにかく、その役について、しばらく舞台を進めている間は、そんなことを言われていました。」

男「なので、順調と申し上げました」

面接官「なるほど…続けてください」

男「次第にその役が型にはまらなくなったのが、…5年前くらいですかね。もう舞台に立つことは慣れっこで、お客さんもたくさん、たくさんいらっしゃってた頃です」

男「もう、一気に下がりました。モチベーションが。僕は関係ないセリフを口走ったり、動くべきところで動かなかったり、しました。なぜだかは解りません」

男「そのときは、突然やってきたのです」

面接官「ほう…それは、怖いですね」

面接官「ですが天災でもない限り、まあ…男さんの意見を否定するわけじゃありませんが、突然、なにもなくやってくるものはないはずですがね」

面接官「もう少し、考えてみてはどうですか?そのへんを」

男「はい…すいません。至らない発言をして、申し訳ありませんでした」

面接官「いえ。えーっと…それが、志望動機ですか?」

誰もいないかな?
ほんのちょっとはずす

男「はい、要約すると、以上になります。発言のお時間、ありがとうございました」

面接官「はい。ええー…じゃあね、我が社の規則と、仕事内容についてこれから説明していきますね」

男「はい」

面接官「それではまず、規則についてなんですが、これは簡単です」

面接官「私どもからご自分…つまり、舞台上のあなたは見えますが、舞台のあなたから私どもは見えません。20年前、そうでしたよね?」

男「え、ええ…そういえば、そうでした」

面接官「決して舞台のあなたは私どもを見ることができませんので、話しかけることは無理です。まず、上映中に話しかけることはそもそも無理なんですがね」

見てる

面接官「なぜ見えないかは、まあ、わかってると思いますが証明ライトがそこら中にあるからです。これが規則です」

男「はい、解りました」

面接官「それから、仕事内容なんですが、こちらはけっこう難しいです」

面接官「台本修正、大道具、小道具、照明、スケジュール管理、ほとんどに携わっていただきます。」

>>9ありがとうー

男「そうですか…それは、大変そうですね」

面接官「ええ。人によっては、何人ものスケジュールを管理しなくてはならないので、大変ですね」

男「それは、他の人のスケジュールも管理、ということでしょうか?」

面接官「…まあそうなりますかね。とにかく、この仕事の大変なところはここです」

面接官「私どもは前向きに検討していますが…どうですか?男さんとしては」

男「は、はい…まあ、このまま無人の舞台にずっと立ってるより、役に立てるなら。と思います…」

面接官「そうですか。えーそれでは、後日改めて、という形でよろしいでしょうか?」

男「はい。ありがとうございます」

面接官「他に何か、言っておきたいことはありますか?」

男「いえ、特にはないです。御社の規定に従わせていただきます」

面接官「そうですか。それでは、後日改めてご連絡いたします」

男「はい、ありがとうございました」



ーーー数日後



男「ああ、18年前か。こどもには無邪気に遊ばせている描写がいいな。ええっ…と」

7歳男「きゃっきゃっ。くらえードロばくだん!」ベシャ

男「あーあ、女の子に食らわせちゃったよ、こんなの台本になかったのになあ…いいや、適当に謝らせておこう」



男「おっ12年前か。中学生は好きなことやらせないと、輝かないな、よぅーし」

13歳男「ニコニコおもしれー…」

男「あ、あれ?部活動もやらないのかよ…くそっ、いったん幕引いてばん回しなくちゃな」

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