私が嫌いだった他人へ(16)

すごく短くなってしまうと思われますがよろしくお願いします

「この世の中に存在する全ての物に感謝して生きなさい」

これは私を育ててくれた人の口癖だった。
その人は別に聖職者なわけではなかった。

その人はいつもそんなことを言う癖に虫が嫌いで

「虫ってなんでこの世の中にいるのかな?」

って言っていた。
他の人からするとそういうところが憎めないそうだ。
でも私には理解できなかった。

いつも笑顔で明るい元気な人だった。
だから周りには自然といろいろな人が集まった。

その人と純粋に友達になりたい人
相談に乗ってほしい人や、つき合って欲しい人,etc.
中には騙そうと近づいてくる人もいた。

私はその人と違っていろいろな人から嫌われていた

「あの子は本当にあの人の子どもなの?」

「あなたはどうしてあの人に似なかったのかな?」

と言われる事もあった。
その人に似てない理由はわかっている。
私はその人の本当の子どもでは無いから。

じゃあなぜ私が嫌われているのか
その答えは知らない

私を育ててくれた人は

「嫌われるのは、アナタにも何か原因があるはずよ」

と言っていたが私には、嫌われるようなことをした覚えは無かった。

私はどうして嫌われているのだろうか?
私はどうして恨まれているのだろうか?

私は羨ましかった。
私と違ってみんなに好かれる貴女が

憎かった。
私と違って助けてくれる他人がいて。

私と対極に存在する貴女の存在が

その存在を消してやろうかと思った時もあった。

こんな事を考える私は歪んでいると誰だって思う。
自分でも歪んでいると思う。

でも私はその人が本当にこの世から消えて欲しかった。

そんなことを思って日々を過ごすと
ある日私を育ててくれた人は動かなくなってしまった。
正直私は嬉しかった。

もう私は貴女と比べられることはないと

その人が死んだのに泣かない私を見てみんなは

「何で自分を育ててくれた母親が亡くなったのに泣いてないの?」

とか言ってた。
私を育ててくれたあの人は本当の母親では無いから、悲しい訳が無いだろう
と思った。

それから長い年月が経った。
年々私はその人のことを忘れていった。

そしてその人の事をほとんど忘れてしまった頃に
その人の机から一通の手紙を見つけた。
それは私に宛てた手紙だった。

そこにはこう書いてあった

『最愛の娘へ
 お元気ですか? これを読んでいると言うことは、アナタが20歳になった頃だと思います。
 もう家から出て働いている頃でしょうか?
 アナタは私の事を嫌っていたようですが、今はどうですか?
 私は今も昔もアナタの事が大好きです。
 アナタと過ごしたこの20年間はとても楽しかったです。
 たまには家に帰ってきてもらえるととても嬉しいです。
 
 最後に……

 お誕生日おめでとう。
 そして私はアナタの帰りをいつでも待っています。
 
 アナタの嫌いな他人より』

その人の手紙は嘘だらけだった。

なのに私はこの手紙を読むとなぜか涙が止まらなくなてしまった。
記憶の断片でしか存在しなかったはずなのに……
とても嫌いだったはずなのに……

家でなんて待って無いくせに……
20年も一緒に過ごして無いくせに……

貴女はなぜ逝ってしまったの?
まだありがとうも言ってないんだよ?
ごめんなさいだって言って無いんだよ?

「お母さん……」

私は初めてその他人の事を『お母さん』と呼んだ……

「育ててくれてありがとうございました……」

「そしてごめんなさい……」

私は初めてその人に泣かされたのだった。

~fin~

これで終わりです。

こういうのを書くのは初めてで
あまり良くできていないように感じます。

やっぱり重いのより可愛いのが書きやすいな……

質問などがありましたら遠慮無く聞いてください。

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