妖精「騙されてゴリラを買わされた……」ゴリラ「ウホッ」 (92)

戦乱の時代も終わりを告げて早数年
大きな戦が無くなっても人々の欲望は消えない
例えば……なんかよくわからないが色々です!

そんな時代ッ!!一人の妖精さんが立ち上がったッ!!


妖精「いいですか勇者さん。貴方はなんか私より偉い妖精さんから加護を受けた正式な勇者なんです責任をもって……」

ゴリラ「ウホッ、ウホホ」モグモグ

妖精「……」


これが私と勇者さんですッ!!

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妖精「ハァ……この方は本当に勇者なのでしょうか」トボトボ

ゴリラ「ウホッ」モグモグ

妖精「やっぱり完全にただのゴリラさんですよねぇ……ハァ……」


時を遡ること数時間前



―――
――――――


妖精「むぅ、近頃悪い人達ばかりなのですね。歩きタバコしたり脇見運転したり」トコトコ

妖精「こんな平和な時代だからこそそこら辺のマナーはしっかりしないといけないというのに!」

妖精「ハァ……困ったものです……」


「ちょいと待たれいそこなお嬢さんッ!!」バッ


妖精「?誰ですか貴女?」

偉い?妖精「私ゃ巷でちょいと名の通った偉い妖精さ。アンタよりも上位だぞオラ」

妖精「偉いって……サングラスとマスク付けてて怪しさ全開なんですけど」

偉い?妖精「まぁンな事ぁ気になさんな。ファッションだよファッション」

妖精「じぃ……」

偉い?妖精「疑うのは自由だけど……それよりもお嬢さん、この時代に憂いているようですねぇ」

妖精「ッ!な、なぜそれが!」

偉い?妖精「ハッハッハ、上位妖精ともなれば読心術もお手の物って事さ!」

妖精「う、疑ってすみませんでした!」ペコペコ

偉い?妖精「フフン!崇めよ崇めよ」

偉い?妖精(へッ、チョロイな)

妖精「?何か言いました?」

偉い?妖精「いやいやいや!何でもないよ何でも!」

妖精「そ、それで私にどういった御用で?」

偉い?妖精「なに簡単な事さ。純粋無垢なアンタにちょっとしたご褒美を上げようとおもってね」

妖精「ご褒美?」

偉い?妖精「ヘイ!カモン!マイスレイッッッヴ!」パチンッ

ドドドドドド

妖精「な、何が始まるんですか!?」

偉い?妖精「まぁ見てなさいな」

ゴリラ「……ウホッ」

偉い?妖精「おー、来た来た。餌付けで飼いならした甲斐があったよ。指を鳴らすと来る!うぅん単純明快!」

妖精「えっと……ゴリラさん?このゴリラさんがどうしたのですか?」

偉い?妖精「シャラーーーーップ!コイツをただのゴリラと思うことなかれ!」

偉い?妖精「コイツはな!偉くありがたーい私の加護を受けた正真正銘の勇者なんだよ!」

妖精「な、なんだってー!!」ガーン

妖精「あれ?でもそういうのって女神さまや精霊さまが与えるものでは……」

偉い?妖精「分かってないねぇお嬢さん、妖精ってのは大自然の化身なんだ。火や水といった自然の中から生まれてくる神秘の……」

妖精「私、パパが人間でママが妖精のハーフですよ?」

偉い?妖精「……」

妖精「……?」

偉い?妖精「ま、それはそれとして。力を持った妖精ってのはそういうことが出来るんだよ」

妖精「ほえー、なるほどー」

偉い?妖精(下手に喋るとボロがでそうだなこりゃ)

偉い?妖精「それでだ!キミはこれからこのゴリ……勇者と一緒に世界平和の為に活動する事を許された選ばれし妖精さんなのだよッ!!」

妖精「わ、私がですか!?」

偉い?妖精「そう!私の目に狂いは無い!アンタはコイツと共に世の為人の為に尽くすのだ!!」

妖精「むむむ……選ばれてしまったからにはやらないわけにはいきません!私!全力を尽くします!」

偉い?妖精「よぉぉぉく言った!!それに当たって私が経営する会社への寄付とそこのゴリ……勇者にかかった費用を……」ボソッ

偉い?妖精「まぁ難しい事は抜きにここにサインを」

妖精「はーい!」ワクワク

――――――
―――



妖精「ってな感じで勇者さんを引き取ったのですが……」

ゴリラ「ウホホ」ポリポリ

妖精「よく考えてみると凄く胡散臭いです」

妖精「さっきからバナナ食べてるだけだったり今は寝転がってお尻かいてるだけですし」

妖精「……いけないいけない!そこで疑いをかけてはダメです!パパとママに教わりました!疑うより先に信じろ!」

妖精「きっとゴリラさんなのには理由があるのです!意思疎通が出来ない分は私がフォローしなければ!」

妖精「さぁ町につきましたよ!勇者さん、先に町長さんにご挨拶に向かいましょう。仮にも勇者なのですからまずは挨拶からです!」

ゴリラ「ウホッ?」

妖精「早くいきますよー!動いてくださーい!」グイグイ

衛兵「お、こんにちは。何かお困りかい?」

妖精「あ、衛兵さんこんにちは。実は勇者さんがここから動いてくれなくて」

衛兵「……勇者?このゴリラが?」

妖精「はい、話せば長くなるのですが……」

妖精「ともかく!町長さんに!ご挨拶させたいので!移動を手伝って!ください!」グイグイ

ゴリラ「ウホッホ」ポリポリ

衛兵「あーはいはい、手伝うよ」グイグイ

妖精「ふぃー、ありがとうございます」

衛兵「はは、このくらいはね。ほーらさっさと歩いた歩いた」ポンポン

ゴリラ「ゴギャーッ!!」バキッ

衛兵「!?」ゴキャッ

妖精「え、衛兵さーん!!」


1(中) ウホ=ホ・ホ・ホ .324 4 74
2(一) ドンクライ(泣くのはおよし)・ゴリラ.308 8 86
3(三) Gorilla gorilla(ネイティヴ・ダンス) .361 40 168
4(左) ???(動物界脊椎動物門脊椎動物亜門哺乳網サル目真猿亜目峡鼻下目ヒト上科ヒト属ヒト種 金本) .001 0 0
5(捕) 城島健司 .330 34 119
6(右) ゴリリリリ・ウッホウッホ .287 25 89
7(二) スーパー・ゴリラ・キャッスル .269 25 67
8(遊) おさるのジョージ .278 21 60
9(投) ゴリラはゴリラでもゴリゴリなゴリラってバ~ナナ? 18.57 0勝104敗
333377775555年、「ウホホホ・ポコの大移動」により人類が滅亡した以降の世界では神聖ゴリラ朝ウッホホ帝国の台頭により「全てはバナナにより規定される」という一元的な価値観の下で統治が成された。
帝王であるウッホホゴリラⅣ世が提唱したゴリラ=ウホホ=バナナの三位一体改革により工業力は飛躍的に上昇し豊かな経済力と繁栄を手にしたゴリラ達は生き残っていた一人の人間(???)から野球という旧文化を取り入れ発展させていった。
帝国の威信をかけて結成された阪神は怪我とレフトの弱体により4位に終わり面目が潰れた皇帝グレゴリラウス=ウホ=バナナⅨ世は選手を処刑し「選挙権が欲しければバナナになり給え」と暴言を吐き、これに激怒した産業資本ゴリラや労働ゴリラは暴動を起こし帝政は倒れた。

衛兵「」

妖精「勇者さん!なんてことをするんですか!善良な一般市民ですよ!!」

ゴリラ「ウホッ?」

妖精「ウホッ、じゃないですよ!!衛兵さん!息してください!衛兵さーん!!」ペチペチ

ゴリラ「ウホホ」バンバン

妖精「ちょっ!?何背中叩き出してるんですか!?死にそうなんですよ!?」

ゴリラ「ウゴゴ!!」ゴキッ

衛兵「ッ!?ケホッケホ!?」

妖精「あ!息が戻った!」

衛兵「あれー?死んだはずのおばーちゃんが見えていたぞー?俺は何をしていたんだー?」クラクラ

妖精「え、衛兵さん!気を確かに!」

ゴリラ「ウホ」


……


衛兵「なんつーか、その……」

妖精「勇者さん、ひょっとして突然触られてビックリしちゃったんですか?」

ゴリラ「ウホ」コクコク

妖精「申し訳ありません衛兵さん!勇者さんの過失は私の責任!償いをさせていただきます!何でもしますのでどうか勇者さんだけは!」ペコペコ

衛兵「ん?今何でもするって言ったよね?」

妖精「言葉の綾ですよ!?」

衛兵「まぁゴリラが蘇生も行ったからそれでいいよ。幸い怪我もないし、寧ろ身体が軽くなったみたいだ」クラクラ

妖精「それ、絶対危ない状態ですよ」

ゴリラ「ウホッホ」

妖精「まぁとりあえず勇者さん、改めて町長さんの所に向かいましょう!」

衛兵「あー、俺も行くよ。なんか危なっかしいし」

妖精「あはは……ビックリさせなければおとなしいと思いますよ……多分」

衛兵「それよりさ、知ってる?最近妖精族の詐欺師が出たって」トコトコ

妖精「えー?ひょっとして私を疑ってるんですかー?」トコトコ

ゴリラ「ウマッ、ウマ」モグモグ

衛兵「違う違う!キミが小さい時からよく知っている仲なんだ、そんな疑いかける訳ないだろう」

妖精「えー、じゃあ何ですかー?」

衛兵「気を付けてって事。キミ、お人よしですぐに人の話信じちゃうだろ?だから心配でさ」

妖精「エヘヘ、そこらへんは大丈夫ですよ!悪い人とそうでない人の分別くらいつきますから」ニコッ

衛兵(キミの場合、過去に何度も同じような手に騙されてるから心配してるんだけど)

ゴリラ「ウホ」ホジホジ

妖精「あ、それじゃあその妖精さんの特徴とか教えてもらえますか?もしかしたら私と勇者さんで捕まえちゃったりなんかしちゃって……」

衛兵「確か……偉い妖精という触れ込みで人に話しかけてきて……」

妖精「うんうん……ん?」

衛兵「サングラスとマスク着用でいかにもって風貌。伝説の生き物だの特別な力を持っているだのでやたらと動物を押し付けてくるらしいんだ」

妖精「へぇー……」

衛兵「受け取ったらもう思う壺。変な誓約書か何かにサインさせられてどうにもならなくなるって寸法」

妖精「……」

衛兵「そういや選ばれし勇者だなんだのって売り文句もあったなぁ。で、これが似顔絵なんだけど……」ハラッ

衛兵「あー、よく出来てるなぁ。この顔にピンときたら……あれ?どうしたの?」

妖精「」

ゴリラ「ウホホッ!!ウホウホ!!」ワサワサ

衛兵「え?なに?何でこの絵を見て喜んでるの?」

妖精「」

衛兵「ちょっと!?こっちはどうした!?白目剥いてるよ!?」

妖精「私はダメな子です私はダメな子です私はダメな子です私はダメな子です私は……」

衛兵「おーい!?帰ってこーい!?」

――――――
―――



衛兵「それで……このゴリラを押し付けられたと」

妖精「シクシク……どうしてこう私は……」

ゴリラ「ウホウホ」ポンポン

妖精「慰めてくれるんですか?優しいんですね……」

ゴリラ「ウホッ」

衛兵「お前が原因だって事分かっていってる?」

衛兵「それで、結局町長の所に着いちゃったけど」

妖精「亀の甲より年の功、どうにかならないか相談してみましょう」

衛兵「長に聞くのも一つの手だね」

妖精「町長さーん、お邪魔しまーす」ガチャ

ゴリラ「ウッホ」ドスドス

衛兵「……お前も入るんだな」

町長「おおいらっしゃい、どうしたんぢゃ今日は?」

妖精「町長、実はご相談……」

町長「ウム、まぁとりあえず座っていてくれ。お茶でも出すよ」

衛兵「あ、どうも……」

ゴリラ「ウホ」

町長「ほほお、こりゃ大きなお客さんじゃわい。見ない顔じゃがどちらさんで?」

衛兵「町長、言葉が通じる相手に見えますか?」

町長「いやいや、世の中意思の疎通が出来ないと思われているものにだって言葉が交わせるだけの知能を持ち合わせている可能性だってあるんじゃ。決めつけはいかんよ」

ゴリラ「ウホッホホ」

妖精「それはどうでしょうか……」

骸骨騎士「旦那様、お茶をお持ちいたしました」コトッ

町長「ウム、ご苦労ぢゃ」

衛兵「なッ!?」

妖精「こ、こんなところに魔物!?どうしてッ!?」

ゴリラ「ウホ?」

町長「あー、待ってくれ。彼はワシの家のお手伝いさんぢゃ。そう身構えないでくれ、案外いい人ぢゃぞ」

骸骨騎士「数日前からここで雇われています。以後お見知りおきを」

妖精「ほえー、随分礼儀正しいんですねぇ」

町長「ああ、大金出して買ってしまったのぢゃ。このくらいはしてくれんとのぅ」

衛兵「買ってしまった?」

町長「……」

妖精「えっと……何か訳アリで?」

町長「気の……迷いだったのぢゃ」プルプル

衛兵「あ、嫌な予感が」

町長「あの妖精め……おっぱい大きくて腰回りがスラッとした色白美人のお手伝いさんを雇わせてくれると言われたから買ったのに……ッ!」プルプル

町長「ウチに届けられたのは胸回りの骨がガッシリとした真っ白い健康そうな骨だけの魔物ぢゃった!!しかも男ぢゃ!!」

町長「契約書にサインしてしまったが最後、解約できないわ金は帰ってこないわ……」プルプルプルプル

妖精「あー……それは」

衛兵「ご愁傷様です」

ゴリラ「ウホッ」グイグイ

町長「なんぢゃ?このバナナ、くれるというのか?」

ゴリラ「ウホ」コクン

町長「お主……ワシを慰めてくれるというのか」プルプル

ゴリラ「ウホ、ウホ」ナデナデ

町長「おお……女神ぢゃ……あ、大胸筋大きい」スリスリ


衛兵「しばらく放っておくか……」

妖精「というか町長さんも騙されてしまったみたいですねー」

妖精「というより、貴方私たちの言葉わかるし喋れるんですよね?」

骸骨騎士「他の種族の魔物よりも優れておりますゆえ、近々我々の種族も貴方たちと同様市民権を貰える手筈となっております」

衛兵「魔物も許可が下りて登録されりゃあ俺たちと同じ人間扱いになれるからなぁ」

妖精「そこまでの知能があるのにどうして詐欺の片棒を担ぐようなことを?止められたハズですよ!なのにこんな人身売買じみた事を……」

骸骨騎士「……私にも養わねばならない家族がいるのです。あの妖精の口車に乗せられた事は深く反省しております」プルプル

衛兵「あー、よしよし。泣いてもいいんだぞ、あのゴリラの胸の中で」

妖精「人の弱みに付け込んで……!!同じ妖精として見過ごすわけにはいきません!!」ガタッ

妖精「勇者さん!!」バンッ

ゴリラ「ウホ?」

妖精「本物の勇者になる気はありませんか?」

ゴリラ「??」

衛兵「ね、ねぇ流石にそれは……」

妖精「します!!してみせます!!こうなりゃ女の意地です!!あの人が色んな人から騙し取ったお金、全部取り返します!」

町長「なぬ?それではお主も……」

妖精「いいえ私は違います!本物の勇者さんを受け取りましたから!!」

ゴリラ「ウホッ!!」ガッチリ

妖精「衛兵さん!」ギュッ

衛兵「お、おう!?」

妖精「手伝ってくれますか?」

衛兵「へ?あ、ま、任せろ!」

ゴリラ「ウホッ、ウホッ」バンバン

衛兵「ちょっ!痛い!?やめろよ叩くの!?」


町長「ああ、強い子ぢゃ……いざ行け勇者一向よ!この世に悪をのさばらせてはならん!」ビシッ

骸骨騎士「わ、私は用済みなのでしょうか……?」プルプル

町長「……何とかしてあげるから泣かないで」



妖精「よっしゃー!勇者パーティ結成です!この町に潜む邪悪を根源から断ち切りますよ!」

ゴリラ「ウホ!」


こうして、私たちのとても短い物語が始まるのでした

――――――
―――


妖精「とは言ったものの……」

衛兵「神出鬼没、情報は皆無。出るときは出てきて出ないときは全く出ない。嵐のような奴だ」

妖精「勇者さん、ほらこう匂いとかで分からないんですか?」

ゴリラ「ウホ?」モグモグ

衛兵「ゴリラじゃそこらへんは期待できそうにないな……」

衛兵「そういえば、最近別件で悪の組織がこの町にのさばっているってのも聞いたことがあるな」

妖精「悪の組織て……」

ゴリラ「ウマッウマッ」モグモグ

衛兵「ゴミの日に分別してなかったり迷惑駐車で進路妨害してたり」

妖精「それただの迷惑行為なだけじゃないですか」

衛兵「それを組織立ってやっているからタチが悪いんだ。そいつらなら関係者か、あるいは何か知っているかもしれん」

ゴリラ「アムッハフハフ」モグモグ

妖精「すぐにコンタクトが取れるのなら調べてみた方がいいですねー。ところで勇者さん?さっきから何食べてるんですか?」

ゴリラ「ウホ?」モグモグ

衛兵「……弁当?」

妖精「と、林檎飴……」

ゴリラ「ウマッ!ウマッ!」

「オアアーッ!?私の分の弁当どこ行ったーッ!?ってオヤツまでなくなってるじゃねーかコンチクショウ!!お前か!?お前が食ったのか!?」

「ウキュ!?」ブンブン

「さっきゴリラが持って行ったぞ」モグモグ

「ゴリラぁ!?ンなもんこんな町中にいる訳ねぇだろ!?お前が食ったのか!!」

「ちょ、ちょっと人目があるから落ち着こう?ね?」


妖精「……」

衛兵「……」

ゴリラ「ホホッウホ!」モグモグ

衛兵「行こう、大事になる前に」グイグイ

妖精「そうですねー、今立ち止まる訳にはいきませんからねー」グイグイ

……

妖精「勇者さんダメじゃないですか!人の物を勝手に盗ってしまったら!」

ゴリラ「?」モグモグ

衛兵「四六時中何か食ってないかコイツ?」

妖精「むぅ……手持ちのバナナが切れてしまったのですか。食費をなんとかしないとなぁ」

衛兵「いや、キミが面倒を見る義理はこれっぽっちも無いと思うけど」

衛兵「で、そうこうしているうちに着いたよ」

妖精「え?どこにですか?」

衛兵「さっき話してた悪の組織の本部」

妖精「……普通の事務所にしか見えませんけど」

衛兵「隠れるのには都合がいいんじゃないかな?しかし安そうな建物だなぁ」

ゴリラ「ウホッ!ウホホ!」

妖精「え?早く入ろうって?こういうのって手続きとかしなくちゃいけないんじゃなですか?」

ゴリラ「ウホッ!」ドン

妖精「まぁ頼もしい!」

衛兵「これは……会話が成立してるの?」

妖精「多分『心配なさるな、俺がお前さんたちを守ってやるよ』って言っているんだと思います多分!多分!!」

衛兵「三回も多分て言わなくていいから……ま、まぁそういうことにしておくよ。それじゃあ俺が先陣切るんだね」

妖精「はい!勇者さんもそういっていますし、早速中へ入ってみましょう!」

衛兵「うん、それじゃ……」ガチャ

ゴリラ「ムッキャーッ!!」


ガシャーン!!
ゴロゴロ!!

メリメリッ!!

バリバリッ!!

ニャーッ!!ゴリラーッ!?

ギャーッス


衛兵「」

妖精「」

衛兵「……一人で窓から過激に突っ込んでいったけど」

妖精「あるぇ?お話出来てると思ったんですけどねー?」


ゴリラ「ウホッ、ウホッ」ズリズリ


妖精「あ、帰ってきました」

衛兵「何か持ってるぞ」

ゴリラ「ウホッ」ポイッ

オーク娘「うにゃー……」ドサッ

妖精「この人は……?」

衛兵「あー、手持ちの資料に書いてある。悪の組織の幹部の一人だってさ。主にピンポンダッシュで迷惑行為に勤しんでいるらしい」

妖精「ンマ!悪い人ですね!立派な犯罪行為ですよ!」

衛兵「まぁ他に目立ったことはしていないし、何より近所付き合いが良好だから"毎度の悪戯"程度に見られてるみたい」

オーク娘「うう……酷いにゃ。事務所をこんなに滅茶苦茶にして……大家さんに怒られてしまうのにゃ」

衛兵「悪の組織なんて名乗っているからそういう目に合うんだよ。たまにはあるだろ、こういうことも」

オーク娘「無いにゃ!!ゴリラが襲撃してくる何て夢にも思わなかったにゃ!!」

妖精「でしょうね……」

衛兵「他の構成員は?キミだけか?」

オーク娘「みんな布教活動で出払っているにゃ。人員足りてないからボスも一緒に行ってるにゃ」

妖精「ボスまで?」

衛兵「ここの組織は彼女を含めて構成員3人しかいないんだ」

オーク娘「本気で世界を狙っているのに誰も相手にしてくれないのにゃ、世知辛い世の中にゃ」

妖精「色々と突っ込みどころ満載ですけどそれは置いておきましょう」

衛兵「それで、聞きたいことがあるんだけど……」

オーク娘「手短に頼むにゃ。ボスが帰ってくる前にこの惨状をどうにかしたいにゃ」

妖精(ちょっと無理じゃないかなー……)

衛兵「最近ここらへんで詐欺を働いている妖精の噂、聞いたことは無いか?ひょっとしてここの組織が関与している、なんてことも……」

オーク娘「にゃに!?そんな酷い事をウチの組織がする訳がないにゃ!!」

妖精「悪の組織の"悪"って字、いっそ取っ払いませんか?」

衛兵「嘘をつくと自分の為にならんぞー?」

ゴリラ「ウホッ!ウホッ!」メリメリ

オーク娘「痛い!?痛いにゃ!?キャメルクラッチは危ないからやめるにゃ!!ギブ!ギブ!!」バンバン

妖精「本当に知らなさそうですねぇ」

衛兵「ハズレか……しょうがない、他を当たってみるか」

ゴリラ「ウホ」ポイッ

オーク娘「ガフッ」

衛兵「これに懲りたらもう変な悪戯なんてやめろよー」テクテク

妖精「お大事にー」トコトコ

ゴリラ「ウホッ」モグモグ


オーク娘「……酷い濡れ衣だったにゃ……」

オーク娘「……」

オーク娘「ってあのゴリラ今何食ってた!?人のウチの冷蔵庫勝手に漁って持っていきやがったにゃ!!犯罪だにゃ!!」

ガサガサ


オーク娘「うにゃ?」

詐欺妖精「ちょいとちょいと。そこなお嬢さん!オーク訛りの強いアンタだよ!」コソッ

オーク娘「誰にゃアンタ?」

詐欺妖精「いやー、見てましたよ。ひどい目に会いましたねぇ」

オーク娘「全くだにゃ!迷惑極まりないにゃ!」

詐欺妖精「そーれーでー!この事務所をあっという間に綺麗サッパリに出来る凄腕の建築士をご紹介したいと思っているんですが!」

オーク娘「にゃに!?それは好都合だにゃ!!ボス達が帰ってくる前に治すのにゃ!」

詐欺妖精「つきましてはこっちの書類にサインをですね……」

オーク娘「わーい!」カキカキ

……

妖精「他に何か詐欺妖精さんと通じてそうな人とか場所とかないんですか?」

衛兵「詐欺をけしかけている人選も分からないし、何より狙って現れるなんて都合のいいことは無いからねぇ。地道に聞き込みかな」

ゴリラ「ウホッウオッホ!」

妖精「何かヤル気満々ですね」

衛兵「お腹がいっぱいになったんじゃないかな?血の気が盛んなのは勘弁してよ、さっきの俺みたいな被害者が出ても困るから……」

妖精「それより衛兵さん、職務は大丈夫なんですか?つき合わせてしまった私が言うのも変な話ですが……」

衛兵「ん、構わないよ。詐欺師捕まえるのだって立派な仕事だよ。それにサボってる訳じゃないんだ、声をかけられれば」


「あのー……この町の兵士さんですか?」


衛兵「ほら来た。はい、何か?」

「ちょっと人を探しているのですが……」

衛兵「ではその人の特徴を教えていただけますか?」

妖精「おお!なんか『らしい』ですね!」

ゴリラ「ウホッ!ウホホ!」

(何でゴリラさんが町中にいるんだろう……)

精霊「あ。私、ここからずっと遠くに暮らしている精霊なのですが。私のお友達の妖精さんが最近この町に逃げ……遊びに来ているらしくて」

妖精「ほえー、精霊さまですかー。初めて見たー」

衛兵「妖精の種族の方ですか。他に特徴は?探すにしても妖精族はこの町に大勢暮らしていますので」

精霊「えっと、凄く可愛いんですけど目つきがとんでもなく邪悪で、女性を見ると風俗に居れようとしたり変な業者とつるんでいたり……」

衛兵「碌な事無いですね……他には」

精霊「あ!特徴かどうかは分かりませんが、ひょっとしたらサングラスとマスクをかけて人を騙しているかもしれません!」

衛兵「」

妖精「」

精霊「それと、ちょーっと抜けてる人を狙って商売しているかもしれません!っとと、そうなる前に連れ戻すんだった」


衛兵「あ、もしもし、有力な証人を見つけたから今から帰る、うん、準備しといて」

妖精「抜けてる人を狙う……」プルプル

衛兵「気を確かに、キミはもう変わったんだ。気にしない気にしない」

妖精「なんかもう根っからのそっち系の人でしたね。見つけたら容赦無しで叩きましょう。お願いしますね勇者さん」プルプル

ゴリラ「ウホ」コクリ

精霊「あとそれからそれから……」

衛兵「もう大丈夫です。見つけたらそちらに引き渡し……あ、いえ、た っ ぷ り と 保護した後に連れてきますのでご安心を」

精霊「まぁ!ありがとうございます!」

妖精「見つけたら私たちの所に連れてきてくださいね!絶対ですよ!」

精霊「?はい?」

衛兵「とりあえず一緒にご同行願います」

精霊「はぁ……」

衛兵「ともかくだ、今は人手が欲しいから俺は一旦詰所に戻って仲間たちに声をかけてくるよ。この町を拠点にしている事はハッキリしたし、すぐに動いてくれると思う」

妖精「お願いします!私はこのまま勇者さんと町を散策しますので!」

ゴリラ「ウッホ」ポリポリ

衛兵「……やる気、あるのかな」

ゴリラ「ンゴッンゴ」ポリポリ

妖精「さぁ……」

妖精「とりあえず、どこから探しましょうか?人目に付くところには流石にいないとは思いますけど」

ゴリラ「ウホッウホッ」チョイチョイ

妖精「どうしたんですか?」

ゴリラ「ウホウホ」


「うわーん!」


妖精「あら泣いちゃってる。あの子が気になるんですか?」

ゴリラ「ウホ」コクン

頭かちわりに来たのか

妖精「どうして泣いてるのかなー?お姉さんに話してみて?」

「エグッ、私の風船が木に引っかかっちゃったー!」

妖精「ホントだ。ちょっと待っててね、お姉さんがあそこまで飛んで取ってきてあげるから!」

「ホント?」

妖精「任せなさい!すみません勇者さん、ちょっと待っててもらえますか?」

ゴリラ「ウホ、ウホ」

妖精「え?取りに行くって?確かにゴリラさんは木登りとか得意ですけど……」

「お姉ちゃん?」

妖精「大丈夫大丈夫!ちゃんと取ってきてあげるからね!」

妖精「んー、それじゃあ勇者さん、お願いします」

ゴリラ「ウホッ」ノソノソ

妖精「ほら見てて、あのゴリラさんが風船持ってきてくれるからね」

「わーい!」


ゴリラ「ムンッ!!」

メリメリッ

バキィッ!!

ドサッ


「……木が……」

妖精「わー、ダイナミックー……」

ゴリラ「ウホ」スッ

「あ、ありがとう……」


「うわあああ!!敷地の木が……変な妖精に無理やり植えられて大金盗られた果物の木が……」


妖精「……ああ、こんなところにも被害者が……」

「そ、それじゃあ」

妖精「あ、はい。今度は手を離さないようにね」

ゴリラ「ウーホー」モグモグ

妖精「……勇者さん?ひょっとして、成っていた果実を食べたかっただけじゃないでしょうね?」

ゴリラ「……」フイッ

妖精「私の目を見てください」

妖精「ハァ……なんかため息ついてばっかりだな今日……」

ゴリラ「ウホウホ」モグモグ

妖精「誰のせいだと思ってるんですかもう……」


ワーワー


妖精「あ、また子供ですね。あんな道路の真ん中で遊んじゃって!危ないじゃないですか!注意してきます!」

ゴリラ「ウホー」

ブロロロロロロ……

妖精「あ、トラックが!子供が危ない!!」

ゴリラ「ッ!ウホ!」バッ

「うわあああああ!!」

「ッ!クソッ!危なっかしい!」バッ

妖精「あ!誰かが助けに向かいました!勇者さん、大丈夫で……」


キキーッ!!


ゴリラ「ウッホッ!!」ベキィッ!!

妖精「ショルダータックル!?」


ゲギャギャギャ

ドゴーンッ!!

ギャーッ!!


妖精「わー、弾き飛ばしたトラックが助けに向かった人を巻き込んで飛んでったー……」

「ありがとう!ゴリラさん!」

ゴリラ「ウホウホ」ナデナデ

妖精「まぁ、ともかく人命の方が大事ですよね、うん」


「救急車呼べー!!」

「人がーッ!!通りかかったリザードマンが巻き込まれたぞーッ!!」

「妖精印の運送会社……?おい!このトラック違法な品物を積んでたぞ!!」


妖精「あーあー!聞こえなーい聞こえなーい!!」

……


妖精「まぁ先に気が付いておくべきだったというか何というか……勇者さん、あなたトラブルメーカーですね」

ゴリラ「ウホ?」

妖精「いえ、なんか関係者や被害者発見率は凄いんですけど……」

妖精「もうちょっとこう……なんとかしましょうよ。動くたびに別の被害が大きくなっている気がするんですが」

ゴリラ「ゴーガー」ノソノソ

妖精「はぁ……やっぱり意思の疎通は出来ないのでしょうか。詐欺妖精さんを捕まえる前に私がどうにかなってしまいそうです……」トコトコ

妖精「……あれ?ここって……」

ゴリラ「ウホ?」

妖精「いえ、さっき来た所ですよね?悪の組織さんの事務所があった……」

ゴリラ「ウホッウホッ!」ドンドン

妖精「そんな何もない空き地だからって暴れないでくださいよもう!」

オーク娘「」

妖精「あ、さっきの。ということはやっぱり……おーい、どうしたんですかー?」

ゴリラ「ウッホー」

オーク娘「あぁ……さっきの……」

妖精「どうしたんですか?口から魂抜けそうですよ?」

オーク娘「どうしたもこうしたもないにゃ……全部片付けられてしまったにゃ……」

妖精「へ?」

オーク娘「変な妖精が後片付けをしてくれるって言ったから契約書にサインしたにゃ、そうしたら凄い速さで事務所の物持っていかれた挙句取り壊されてしまったにゃ……」

妖精「えっと……それって」

オーク娘「終いには何故か身に覚えのない多額の請求書……もう終わりにゃ……この世の終わりなのにゃ……」ドサッ

妖精「あーあーあー……私たちがいなくなっていた間に被害者がまた一人……って!?この空地さっき事務所が立ってた場所ですか!?」

ゴリラ「ウホ」コクコク

妖精「しかし、頭の弱い人を狙っているのは本当のようですね。悔しいことに」

オーク娘「弱いとはなんだにゃ!私は腕っぷしは最強にゃ!!」

妖精「はいはい……まだ近くにいるかもしれません!勇者さん!近くを探しましょう!」

ゴリラ「ウホ!」

オーク娘「あはは……今日はどこで眠ればいいんだにゃー……ボスたちになんて伝えればいいんだにゃー……」

妖精「そんな落ち込んでいる暇があったら貴女も探すのを手伝ってください!このままだと被害者が増える一方なんですよ!」

オーク娘「ええい!もうどうにでもなれにゃ!!アイツ見つけて盗られたお金以上にふんだくってやるにゃ!!悪の組織なめんなー!!」ダダダダ

妖精「立ち直り早ッ!?」

パチンッ


ゴリラ「ッ!!」

妖精「どうしたんですか勇者さん?」

ゴリラ「ウホッ!!ウホホッ!!」ダダダダダ

妖精「えぇーっ!?勇者さんまで!?ちょっと待ってくださいよー!!」テトテト

――――――
―――


詐欺妖精「うっしゃしゃしゃしゃしゃ!!儲かる儲かる!こりゃよだれが止まりませんわ!!」ワシャワシャ

詐欺妖精「いやーここら辺の地域は戦争にも巻き込まれず平和ボケが続てるって話は本当だったねぇ!」

詐欺妖精「かつてないほど人間騙せるよまったく!あーおかしくって腹痛いわぁー!」

詐欺妖精「さーてこの溜まった資金でも使ってまた商売でも始めるかねー。あ、投資とか株も捨てがたい……」

ドンドン

詐欺妖精「おっと、上が騒がしいな。嗅ぎまわっている連中がいるみたいだけど。ま、私のいる場所がわかる訳ないんだけどね」

詐欺妖精「フフフ、灯台下暗し!町の地下に隠れ家をいくつも作っているなんて誰も気が付かないだろうさ。あー人の不幸でワインがうめぇ」

詐欺妖精「大改装して快適っちゃ快適だけど、世話係がいないってのがちょいと不便だねぇ」

詐欺妖精「こう、指をパチンと鳴らすだけで駆けつけてくれるような召使を雇ってみるのもいいかもね☆」パチンッ

ドドドドドドドド


詐欺妖精「ん?」


バリバリッ!!ガシャーンッ!!


ゴリラ「ウホウホッ!!」バッ

詐欺妖精「あ、ちょっと何やってくれてんだテメェ!!人がせっかく大枚はたいて作った隠れ家を……」

詐欺妖精「ってなんでお前ここに来てんだ!?売りつけたハズだろ!!」

ゴリラ「ウホッ!ウホッ!」

詐欺妖精「え?なに言ってるかわかんないよ……って」

詐欺妖精「だあああああ!!しまったああああ!!指ならしで餌付けしてたから反応して来やがったのか!!つーかここ地下だぞ!?」


妖精「勇者さーん、まってくださーい」ヘロヘロ


詐欺妖精「あ、ヤベッ!見つかっちまう!」

ゴリラ「ウホウホ!」ユサユサ

詐欺妖精「分かった分かった!ほらバナナやるから離せって!」ポイ

ゴリラ「ウホッ!!」バッ

詐欺妖精「ったくこの地獄耳霊長類め。いいか、私ゃ逃げるから適当に時間稼げよ!?クソゴリラ!」

詐欺妖精「お、ちょっと荷物重いけどまぁいいか。んじゃ!!」ダダダダ

ゴリラ「……」モグモグ

妖精「ハー!やっと追いついた!もう勝手に行かないでくださいよ!」プンプン

ゴリラ「ウホ」ペコペコ

妖精「ふぅ、もう……あれ?ここ何ですか?やけに豪華な部屋になっているみたいですけど……」

ゴリラ「ウホ、ウホ」ピラッ

妖精「えっと、これは……ッ!?」

妖精「け、契約書です!!しかも明らかに滅茶苦茶な内容が書かれた!!」

ゴリラ「ウホホ」ハラハラ

妖精「これも、こっちもだ!植木の契約書に……あ、こっちは町長さんの名前も書いてある!」

妖精「あ、証明写真付きの……ホネ・ホネオ……?これ、あの骸骨騎士さんでしょうか。何と安直な……」

妖精「ここひょっとして……あの詐欺妖精さんの隠れ家って奴ですか!」

妖精「んー、でも私の契約書が無いですね……持っていかれてしまったのでしょうか」ショボン

ゴリラ「ウホ……」ガサガサ

妖精「……」

妖精「勇者さん、そんな顔をしないでください」

ゴリラ「ウホ?」

妖精「騙されちゃったのは私の責任です。勇者さんは何も関係ありません、ですからもっと堂々としていてください」

妖精「探して取り返しましょう!悔やんでいるよりも、それが解決への一番の近道ですから!」

ゴリラ「……」

ゴリラ「ウホッ!」

――――――
―――



「見つけたー!!」

「あそこだ!追えー!!」


詐欺妖精「ちっくしょう!!何で私の潜伏場所が的確に分かるんだよ!!」


「こっちだ!」

「あそこの地下道にも隠れ家があった!先回りして封鎖しろ!」


詐欺妖精「私の行動を理解している奴がいるってのか!?だとしたら……ええい!まさか精霊のせいか!!」

スチャッ

衛兵「ここです!見つけました!」

精霊「やっぱりあなたの考えはいつも通りですねぇ。やっと見つけましたよ、妖精さん」ニコニコ

詐欺妖精「ヒィッ!?見つかっちまった!?」

精霊「森から逃げ出して何をしているのかと思ったらまたこんな事をして」ニコニコ

詐欺妖精「アッハハ……いやぁあの森って何かと不便じゃないですか、この集めたお金も森の為に寄付しようと考えて……」

精霊「この金の斧と銀の斧、どちらでド頭叩き割られたいですか?」ニコニコ

詐欺妖精「待てやあぁ!?精霊がやっちゃいけないことだろそりゃ!!」

精霊「神罰です」バッ

詐欺妖精「ええい!ままよ!これでもくらええええい!」シュババッ!!

精霊「わっぷ!?」

衛兵「こ、これは……金だ!?」

詐欺妖精「貧乏人のテメェら!!この金くれてやるから私を助けろおおおお!!」シュバババッ!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

衛兵「ッ!?」

バクシーシ!!
バクシーシ!!
バクシーシ!!
アッサラーム!!

衛兵「ちょ!?大群が押し寄せて……!って何語だよ!?」

精霊「もう!だからあの子にお金を持たせたらダメなんですよ!」


詐欺妖精「ダーッハッハッハッハ!社会の荒波に揉まれて出直すんだな!私はこのまま退却させてもらうよ!!前世で会おうぜー!!」ダダダダ

「そうはいきませんよ」

詐欺妖精「何ッ!?」ドンッ

骸骨騎士「さて主様、ここらでおいたはやめにしませんか?」ジャキン

詐欺妖精「あっテメェ!契約違反だぞ!私にかかわらないって約束もあっただろう!契約書にも……」

骸骨騎士「コレの事でしょうか?」ピラッ

詐欺妖精「ゲェッ!?何で持ってるんだよ!?」ゴソゴソ

詐欺妖精「うわあああ!?半分しか手元にない!?落としてきたかーちくしょう!」

詐欺妖精「だーけどな!お前私を裏切ったら就職先なくなっちまうんだぞ?それでもいいのか?ああん?」

骸骨騎士「幸い、町長様に新しい働き先を見つけていただいた為あなたとの約束は必要なくなりました」ビリッ

オーク娘「見つけたにゃ詐欺師め!!ここで成敗してやるにゃ!!」ドゴンッ

詐欺妖精「うわあっぶね!?そのアホみたいにデカいハンマーが当たったらどうするつもりなんだよったく!」

オーク娘「知るか!この際お前をコロコロして私も死んでやるにゃ!!……アレ?何で私が死ななきゃいけないにゃ?」

詐欺妖精「頭の悪さ全開だなもう!!ああ次から次へと鬱陶しい!!どういうこっちゃ!!」


妖精「この世に悪が栄えたためしがないからですよ!!」バーンッ!!

ゴリラ「ウホッ!!」


詐欺妖精「うわテメェゴリラ!時間稼げって言ったろ!なに協力なんてしてんだ!!まさか契約書コイツらに渡したのもテメェか!?」

ゴリラ「フンス!」

妖精「この方を誰と心得ますか!正真正銘の勇者さまなのです!あなたが私に売りつけた由緒正しき勇者さまなのです!!」

詐欺妖精「ハッ!クソゲー掴まされてそれをクソと認めたくないから必死で擁護してるやつと同じだよアンタは!」

妖精「そ、その例えはよくわかりませんが……ともかく成敗です!」

ゴリラ「ウホッ!」

衛兵「やっと追いついた!」

精霊「さぁ覚悟を……」スチャ


詐欺妖精「クッ!ここまでか!」

ガラガラ

詐欺妖精「ん?」

ウホッ……?あっ(察し)
まーたホモかぁサジェスト汚染しなきゃ(使命感)

ドゴンッ


骸骨騎士「何ッ!?」

衛兵「地面が崩れた!?」

詐欺妖精「ダーッハハハ!掛かったな貴様ら!これが私の逃走経路だ!貴様らはこの私との知恵比べに負けたのだッ!」

精霊(知恵比べ……?)

オーク娘「うにゃにゃ!!さっき強く叩きすぎたにゃ!!メンゴメンゴ☆」

衛兵「メンゴじゃねーよ!?クソッ、逃げられちまう……あれ?」

詐欺妖精「フンヌ!フンヌ!」ジタバタ

詐欺妖精「うおおおおおお!」バタバタバタ


妖精「……大穴空いた地面の上で羽を必至で動かして静止してますね」

精霊「妖精ちゃーん?何をしているんですかー?」

詐欺妖精「も、持ってる荷物が重すぎて飛べない……!このまま落下したら普通に死んじまう!」バタバタバタ

骸骨騎士「自業自得ではないですか」

衛兵「この空いた大穴も、アンタが地下にいろいろ作っていたせいで地盤が弱くなっていたんだ。因果応報って奴だよ」

詐欺妖精「ちょ……助け……」バタバタ

オーク娘「むぅ、ちょっと可哀想にゃ」

衛兵「そうかな?最後まで反省の色も見られなかったし……」

詐欺妖精「ご、ごめんなさい。反省しています、お金も契約書も全部皆様に返しますから……」

精霊「信用できません!私が何度あなたに裏切られたことか……」シクシク

詐欺妖精「ちょ!マジやばいって!!早くなんとか―――」

妖精「いけない!ホントに落ちちゃう!」

詐欺妖精「あ――――――」

ゴリラ「ウホッ!!」ガッ

妖精「ゆ、勇者さん!」

オーク娘「間一髪で背負っていたカバンをつかんだにゃ!」

衛兵「ゴリラ、お前……」

詐欺妖精「アンタ……何で……」

ゴリラ「ウホッ、ウホホ」

妖精「詐欺妖精さん、勇者さんは仮にもあなたと共に過ごしていたんです。いろいろ思うところもあるでしょう」

妖精「勇者さんはきっとこう言いたいハズです。『キチンと罪を償って、真っ当に生きてほしい』と」

詐欺妖精「結構酷くアンタを扱っていたのに……それでも私を助けてくれるの?」

ゴリラ「ウホッ!」ニコッ


骸骨騎士「美しきかな主従愛……いや、あの勇者の心意気」プルプル

衛兵「涙もろいんですね、あなた……なにはともあれ、一見落着かな」

オーク娘「あのゴリラ、中々見どころあるにゃ!」

精霊「それじゃあ妖精さん、警察にいって罪を償いましょう。そしてやり直しましょう、私がずっと傍にいてあげますから」

詐欺妖精「精霊様……ありがとうございます。じゃあゴリラ、とりあえずこのまま引き上げてもらって……」


ゴソゴソ


詐欺妖精「……ん?」

妖精「……勇者さん?詐欺妖精さんのカバン漁って何やってるんですか?」

ゴリラ「ウホッ!」ヌッ

妖精「……バナナ?」

詐欺妖精「あー……餌付け用のやつが一本残ってたなそういや……」

ゴリラ「ウッホ」ポイッ

詐欺妖精「ちょっ、あーーーーーーーーーーーーーー」


ヒューーーーーーーーーーーー



















プチッ


ゴリラ「ウマッ!ウマッ!」モグモグ

妖精「」

衛兵「」

精霊「」

骸骨騎士「……お腹」

オーク娘「……減っただけだったかにゃ」

――――――
―――


その後、かろうじて原型を留めたまま回収された詐欺妖精さんは、警察病院で厄介になった後
保釈金を支払い、包帯ぐるぐる巻きのまま精霊さんに引きずられたまま森へ帰って行ったそうです
密売やらなにやら大量の余罪があったそうですが、全てお金で解決したそうです
世界って理不尽だ


詐欺妖精「覚えてろ……あのクソゴリラ……」ズリズリ

精霊「はいはいまだ完治してないんですから安静にしていてくださいねー」


改心するどころか復讐を心に誓い、この町を去っていきました
出来ればもう来てほしくは無いです

悪の組織の人は上司のボスさんにこってり怒られた後、組織ごと町を出て行ってしまいました
何でも、取り壊された事務所はもう元には戻らないんだとか


オーク娘「なんでにゃ!!他の被害者たちはしっかりとお金が返ってきたのに!」

「馬鹿者!無くなった事務所が帰ってくるワケないだろ!……グスン」


悪の組織のボスさん、小さい女の子でした
というか、風船が木に引っ掛かって泣いていた子でした
世間は狭いですね

骸骨騎士さんはその優秀な剣捌きを見込まれて衛兵隊に入隊しました


町長「何故……ワシの案内した仕事を蹴ったのぢゃああああ!!」プルプル

骸骨騎士「いえ……その……」


町長さんに勧められた風俗のビラ配りの仕事は丁重にお断りしたそうです
よかった、本当に

そして、私たちは……


妖精「勇者さん、行ってしまうのですか?」

衛兵「ここに居てもいいんだぞ?町長が許可出したんだし……」

ゴリラ「ウホウホ」フルフル

妖精「きっと勇者さんはこう言っています、『俺がいるには小さすぎる町だ、もっとビッグになる為にここから発たなくちゃいけねぇのさ……』と」

衛兵「キミが代弁して正しかった試しは一度も無いよね?」

ゴリラ「……ウホ!」フリフリ

妖精「お元気で!」

衛兵「決心が堅いのなら仕方がない……じゃあな!」

妖精「寂しくなりますね……」

衛兵「案外、すぐに帰ってきたりね」

ゴリラ「ウホ」クルッ

妖精「あれ?」

衛兵「なんかこっち見てるね……」





ゴリラ「ウーーーーーーーーーーーーーーーホーーーーーーーーーーーーーーーー!!」ドンドンドン

妖精「ッ!?」ビクッ

衛兵「ッ!?」ビクッ

ドドドドドドドドドドドド


妖精「えっと……」

衛兵「いい予感は……しない」









ゴリラA「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラB「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラC「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラD「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラE「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラF「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラG「ウホウホッ!ウホッウホ!!」

ゴリラH「ウホウホッ!ウホッウホ!!」


妖精「」

衛兵「」

旅立つどころか、沢山の仲間を引き連れてきました
この平和な町が"ゴリランド"と名前を変えるようになったのは、それから数か月後の事でした

妖精「あはは……まぁ、悪気はないですよね?平和の証です!」

衛兵「はぁ……管理する身にもなってよ……」


ママー
ヘイ、ビッグマム

妖精「あれ?」

衛兵「……ママ?」

ゴリラ「ウホッ!」


どうでもいい余談ですが、勇者さん、メスだったそうです

……なんか締まらないですけど、このまま世界に平和が訪れるといいな!終わり!


衛兵「……この町、出ようかな」

妖精「……私も、正直逃げたいです」



妖精「騙されてゴリラを買わされた……」ゴリラ「ウホッ」 おわり

>>12
これすき

終わった
昨日の夜に夜のテンションとやらで書きあげたから内容ほぼ覚えてない

もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

過去作
http://blog.livedoor.jp/innocentmuseum/

乙です!

乙乙!
なんか妖精が吐き気を催すのと今明かされるのの要素を加えたガチクズと化してる(誉め言葉)

詐欺妖精がチルノに見えた

>>12
ドンクライすき

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