サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」(58)


・前作『サシャ「キスの味、私に教えてください」』の続編です

・キャラ崩壊というか展開に注意

・ネタバレほんわかとあり


ライナー(あれから何度か、サシャがキスをねだってくるようになった)

ライナー(誰もいない場所と時間帯を、よくもまああんなに狙い打てるもんだと感心する)

ライナー(ただ、十七センチという身長差は、キスをするには少し遠い距離だ)

ライナー(だから、最近は俺が何かに腰掛けて、膝の上にサシャが乗るという体勢に自然になっていた)

ライナー(ぎくしゃくした動きで「……失礼します」と顔を耳まで真っ赤にして座るくせに)

ライナー(いざキスをするとなると、貪りつくように舌を絡めてくる)

ライナー(そんな態度に振り回されていた、ある日のことだった)

――夜、とある物陰

ライナー「……おい、そろそろ離れろ。人が来るぞ」

サシャ「まだ大丈夫ですよ」

ライナー「お前なあ……あーもういい。好きにしろ」

サシャ「やったー……」



サシャ(あ、鎖骨に汗が……)

サシャ(そっか、まだお風呂入ってないですもんね)

サシャ(サラサラした汗ですね……お肉の脂とは違った滴り方です)

サシャ(……お肉…………骨付き肉……?)

サシャ(おいしそう――)







ぱくっ


ライナー「――!?」 ドンッ!

サシャ「いたっ!」ドサッ




ライナー「! ――わっ、悪い、突き飛ばしちまったが大丈夫か? 手は捻ってないか?」

サシャ「いえ、私こそすみません……変なことしてしまいました」

ライナー「いや、俺のほうが悪い。突然で手加減できなかった。本当に大丈夫か?」

サシャ「大丈夫ですから。本当に。大丈夫です。すみません」

ライナー「サシャ、」

サシャ「今日はここまでにしましょう。ね?」ニコッ

ライナー「……ああ」

――夜、女子寮

サシャ「……」

クリスタ「んにゃ……さしゃー? あかりけしてからねてねー……zzz」

サシャ「あっ、はい……わかりました」フッ





サシャ「……」モゾモゾ

サシャ「……」

サシャ(突き飛ばされたところが、痛い……)ズキッ

サシャ(あれ、全力でしたよね……)

サシャ(やっぱり、嫌だったんでしょうか)

サシャ(……当然ですよね。今まで付き合ってもらえたことのほうが奇跡です)

サシャ(そもそも、最初の私の動機からして不純でしたし)

サシャ(……そうでした、最初は誰でもよかったんです。そうでした)

サシャ(それで、ライナーは、いい人ですから……それに甘えさせてもらっていただけです)

サシャ(いつも、自分の怪我より他人の怪我の心配をして)

サシャ(……そうですそうです、ライナーは優しい人なんです)

サシャ(女の子扱いされて、ちょっと浮かれていただけです。それだけです)

サシャ(そうですよ、なんともありませんよこんなの)

サシャ(ライナーなんて……)ズキッ

サシャ(…………違いますよ、これは)ズキズキ

サシャ(胸が痛いんじゃありません、おなかが痛いんですよ)ズキズキ

サシャ(明日ご飯を食べたら治るに決まってるんです。きっとそうです)ズキズキ

サシャ(だから全然痛くないんです。大丈夫です。大丈夫……)ズキズキ




サシャ(その夜は、泣かないようにと強く噛んでいた下唇がずっと痛くて)



サシャ(寝返りを打つ度に、全力で拒否されたことを思い出して)



サシャ(突き飛ばされた胸が、まだ痛いような気がして)



サシャ(これは空腹の痛みだと、自分を誤魔化すことに必死で)



サシャ(そういうことを繰り返しているうちに、いつの間にか夜が明けていて――)

――朝、女子寮

サシャ(……)

サシャ(……ああ、最悪です)

サシャ(結局、眠れませんでした……)ギュッ



クリスタ「さしゃー? ごはんだよー?」ウツラウツラ

サシャ「……起きたくありません」

ユミル「寝かせておけよ、芋女なんてさー」アクビ

クリスタ「さしゃってばー? ごはんはー?」ウツラウツラ

サシャ「……いりません」

クリスタ「そっかー、じゃあさきにいってるねぇー?」ウツラウツラ

ユミル「だよなー、今日休みだしなー」アクビ



サシャ(……)ズキズキ

サシャ(……なんで、まだ痛いんでしょう……)ズキズキ

――朝、食堂

エレン「おはようクリスタ、ユミル。結構遅かったなー」

クリスタ「うん、おはようえれん……」ウツラウツラ

ユミル「ミカサとアルミンは?」アクビ

エレン「それが、朝から二人とも見ないんだよな。ところでサシャはまだ寝てるのか?」

クリスタ「うん、ごはんたべたくないんだってー」ウツラウツラ

ユミル「ああ、まあ今日休みだしなー」アクビ

エレン「へー、サシャがメシ抜きでいいなんて珍しいな」

クリスタ「……?」

ユミル「……?」





クリスタ・ユミル「……!?」ガタッ

クリスタ「そうだよ……サシャがご飯抜きでいいだなんて……! どうしよう病気かも! 伝染病かも! 死んだらどうしよう!!」ガタガタガタガタ

ユミル「おおおおおお落ち着けクリスタ、まずは深呼吸三回だ、それで世界は平和になる!」アタフタアタフタ

エレン「……お前らちょっと落ち着けよ」

クリスタ「エレンはサシャのことなんかどうでもいいって言うの!?」クワッ!

ユミル「お前最低だな!」クワッ!

エレン「あーあーわかった。わかったから目を覚ませ」

―― 十分後

ユミル「よく考えたらメシ持って行ってやればいいんだよなー」モグモグ

クリスタ「だよねー」モグモグ

エレン(なんだこいつらのテンション……)

エレン「あ、そうだ。俺ライナーに頼まれてたんだった」

クリスタ「お使い?」

エレン「ああ。サシャを見かけたら教えてくれって言われてたんだよ」

ユミル「……へーえ?」ニヤリ

エレン「というわけでちょっと行ってくる」ガタッ

ユミル「……待ちなエレン。ついでに私からの伝言も言付かってくれよ」

エレン「俺はメッセンジャーじゃないんだが……まあいいや。なんて伝えればいいんだ?」

ユミル「『面会したいなら十二時まで』、だ。ライナーならそれでわかるだろ」

エレン「? わかったよ」スタスタ

クリスタ「……どういうこと?」キョトン

ユミル「今日は午後から出かけるんだろ? 午後は女子寮に入る手引きしてやれないからな」モグモグ

ユミル「さーて、ライナーはどんな顔で頼みに来るかな」ククク...

クリスタ「ねえユミル。一生懸命悪い顔しようとしてるのはわかるけど」

クリスタ「なんだか楽しそうだよ?」

ユミル「そりゃあこんなに楽しいイベントはそうそうないからねぇ」ニヤニヤ

クリスタ(……なんだかんだ言って、ユミルもサシャのこと考えてるんだよね)クスッ

ユミル「ん? 今笑わなかったか? クリスタ」

クリスタ「んーん。全然」フルフル

――昼、女子寮

ユミル「無事に入れてよかったねえ王子様。女の花園へようこそ」ニヤニヤ

ライナー「手引きには感謝しているが……このトレイはなんだ?」

ユミル「芋女の朝メシと昼メシだよ。それを持ってきたって言えば体裁つくだろ?」ニヤニヤ

ユミル「トレイはその辺の机の上に置いておけばいい。因みに一番散らかってる机が芋女のだからな?」ニヤニヤ

ユミル「まっ、私はクリスタと食堂にいるからさ。終わったら声かけてくれ」ニヤニヤ

ユミル「それと、誰もいないからっておっぱじめたりすんなよ?」ニヤニヤ

ライナー「それはない。あいつは味にしか興味がないらしいからな」

ユミル「…………はぁ? 味ぃ? あんた干物だったのか?」

ライナー「どうやら肉らしいぞ。サシャによれば」

ユミル「……あんたも大変だなライナー」

ライナー「いや、これくらいの関係でいいんだ。あまり深入りしすぎても、な」

ユミル(……ディープキスは深くねーのか? ってツッコミはしないほうがいいんだろうな)

ユミル「あっそ。……じゃ、ごゆっくり」ヒラヒラ







クリスタ「どうしたのユミル? 変な顔して」

ユミル「……あいつらの行動原理が、私にはわからん」

クリスタ「?」

サシャ(今、何時でしょう……)グー

サシャ(おなか空きました……)クスン

サシャ(外の光も眩しくなってきましたし……)ゴロン

サシャ(でも……)モゾモゾ



     ...バタンッ  コツコツコツ...



サシャ(……? ユミルでしょうか)

サシャ(それにしては、歩幅が広いような……というか、ちょっと重いような……?)

サシャ(あれ……この足音、どこかで聞いた覚えが――)





                   ギシッ...

サシャ(!?)

サシャ(ベッドの上に、誰か座ってる……?)

サシャ(え? え?? 誰ですか??)


「――サシャ、起きてるか?」


サシャ(~~~!!)

サシャ(み、耳の上……!? く、くすぐったい……)

サシャ(というか、この声って……)


「――午後は立体機動の訓練場にいる」

「――じゃあな」


       ...ギシッ   コツコツコツ...



     ...バタンッ





サシャ「……」




サシャ「……」





サシャ「……」


サシャ「……」ムクリ

サシャ「……」

サシャ「…………いま…………」




     ...ガチャッ




サシャ「!!」ビクッ!!

クリスタ「あー! サシャ起きたの? おはよう!」

ユミル「やーっと起きたか。もう昼だぞ?」

サシャ「あ……あの、おはようございます」

サシャ「えっと……いま……」

サシャ「今、誰か……来ませんでしたか……?」

クリスタ「? ライナーとお話ししたんじゃないの?」キョトン

サシャ「……!!」

サシャ「ライナーがいたんですか? なんで?」

クリスタ「ご飯持ってきてくれたんだよ、ほら」ユビサシ

サシャ「…………じゃあ、さっきのは」

サシャ(夢じゃなかったんですね……)

ユミル「どうしたー? 変な顔してるな?」ニヤニヤ

サシャ「あ、いえ……そんなことは……」

サシャ「……」



ユミル「――ていうかいつの話してんだよ? あいつが来たのもう一時間も前だぞ?」



サシャ「……え?」

サシャ(ということは、あの後私寝ちゃったんですか……?)

サシャ(……)

クリスタ「サシャ? どうしたの?」

サシャ「ちょっと出かけてきます!」バサッ

ユミル「着替えくらいしてけよー。あと顔も洗えー」

サシャ「わかってますよぅ!」ヌギヌギ

サシャ「えーっと……えーっと! そうだ髪、髪直さなきゃ……!」バタバタ テキパキ

サシャ「服着て……髪結って……顔は行きがけに洗うとして……よしっ!」

サシャ「じゃあ行ってきます!」バッ!!

ユミル「敬礼してないで早く行けよ」ニヤニヤ

サシャ「あっ……そ、そうですね……」カアアアアア



サシャ(……そうだ)

サシャ「えっと……これをこうして……」シュッシュッ

サシャ「よしっ、じゃあ行ってきます!」



クリスタ「いってらっしゃーい」フリフリ

ユミル「狼に気をつけろよー」ニヤニヤ

ユミル「あー面白かった。飽きないなーああいうの見てると」マンゾク

クリスタ「……ふふっ、ユミルも意外と優しいところあるよね」ニコニコ

ユミル「はあ? 私が? なんで?」

クリスタ「だって、サシャが起きるまで待とうって提案したのはユミルだよ?」

ユミル「いやいや、そりゃ買いかぶりだよクリスタ。私はあいつが慌てふためく様を見たかっただけだって」

クリスタ「……じゃあ、そういうことにしといてあげる」クスッ

ユミル「ったく……ところで芋女、香水なんて持ってたのか? 確かかなりの高級品だろ?」ヒョイッ

クリスタ「はじめて一緒に町に行ったとき、一番最初に買ってたよ。ご飯抜きの時に匂い嗅ぐんだって」

ユミル「……理由が芋女らしいな。色気が全くねえ」キュッ クンカクンカ

ユミル「ってか甘ったるっ! なんだぁこの匂い?」

クリスタ「ハチミツの匂いなんだって」

ユミル「……あいつは熊でも狩りに行く気なのか?」

クリスタ「? どうして熊なの? ユミル」

ユミル「いや、童話であっただろ? くまの……くまのナンタラさん」

クリスタ「ナンタラー?」キョトン

ユミル「……まあいいや。遅くなったけど私たちも出るぞ」

クリスタ「はーい。じゃあ準備するねー」トテトテ

――昼、教官室

サシャ「すみません! 立体機動の練習したいので許可ください! 許可!!」バンッ

モブ教官「おっ、ブラウス熱心だな-、上位者たちは休日返上で偉いな。うんうん」

サシャ「た、たち? たちってことは、私以外にもいるんですよね!?」

モブ教官「ああ。ライナー・ブラウンが結構前に来たな。他にも――」

サシャ「ありがとうございます! それじゃっ!」ダダダダダ

モブ教官「お、おお……? やる気満々だな……」

モブ教官「それにしても、今期の訓練生は自主練習する奴が多くていいなぁ。感心感心」ハッハッハ

――昼、立体機動訓練場

サシャ(勢いでここまで来てしまいましたが……)キョロキョロ

サシャ(私、何しにここまで来たんでしょう)

サシャ(まずは謝って……それで、許してもらえなかったら……)

サシャ(……)

サシャ(……いえ、悩んでるのは性に合いません)グッ

サシャ(取り敢えずライナーを探しましょう)タタタタタ....

サシャ「つ、疲れた……」フラフラ

サシャ「そういえば、お昼も朝も抜きでしたぁ……」フラフラ

サシャ(でも、これ以上ライナーを待たせるわけには……あっ)ガッ

サシャ「あいたぁっ!」 ベチャッ

サシャ「うう……転んじゃいました……泥だらけぇ……」ウツブセ



サシャ(……)

サシャ(……帰りましょう、か……)

サシャ(そもそも、合わせる顔がないですよね……)グスッ

サシャ(でも、起き上がるのが億劫です……)



「――サシャ?」



サシャ「……」

ライナー「おい、今顔面から転んでなかったか?」

ライナー「……そもそも、どうしてお前は立体機動の訓練場で走ってるんだ? 立体機動は飾りじゃないぞ?」

サシャ「……」

サシャ「…………あ、あのっ」    グー キュルルルルルルル

サシャ「……」

サシャ「……~~~!!///」カアアアアアアア

ライナー「サシャ……お前メシ食ってこなかったのか?」

サシャ「や、その……えっとほら、ごはんはみんなで食べた方がおいしいじゃないですか!」アタフタ

サシャ「だからあとで食べようかなーって思いまして!」アタフタ

ライナー「なんだ、そうだったのか。じゃあ俺が持って行かなくてもよかったな」

サシャ「いっ、いえっ、決してそんなことは……!」アタフタ

ライナー「それで、いつまでそこに寝そべってるんだ?」

サシャ「……お腹が空いて動けないだけです、ほっといてください」プイッ

ライナー「そういうわけにもいかんだろう。――どれ」ヒョイッ

サシャ「わっ……」ストンッ

サシャ(立たせられました……)

ライナー「あー……泥だらけじゃないか」バシバシ

サシャ(!? 何の躊躇いもなく払い落とし始めましたよ!?)

サシャ「そ、そうですね……」コウチョク

ライナー「替えがないなら今日中に洗濯しないとな。明日の訓練に間に合わないぞ?」バシバシ

サシャ「そ、そうですね……」プルプル....

ライナー「――よし、まあこんなもんだろ。……サシャ?」

サシャ「ソ、ソウデスネ……」プルプルプルプル....

サシャ(完全に小さい子扱いされてます……)グヌヌ

ライナー「腹が減ってるのに立ち話させるのはどうもな……その辺に座るか」スタスタ

ライナー「――この辺でいいか。よしサシャ、こっち来て座れ」

サシャ「え……あの」

サシャ「隣、いいんですか……?」

ライナー「人の膝の上にいつも座ってるのに、今更何を言ってるんだ」

サシャ「そ、それもそうですねっ……///」テレッ

サシャ「えと……失礼しますっ」スタスタ...ストンッ



ライナー                                サシャ



ライナー「……遠すぎるぞ」

サシャ「そ……そうですか? 気のせいじゃないですか?」

サシャ(またお腹の音聞こえたら嫌ですからね……)

ライナー「……」スタスタ...

ライナー「座るぞー」ドスッ



                               ライナー サシャ



サシャ(ち……っ近い近い近い近い近い近い!!?)

サシャ(拳一個分もありませんよ!? 近い近い近い近い!!)

サシャ(お腹の音絶対聞こえちゃいますよ! なんで? なんで!? 馬鹿ですか!? ライナーは馬鹿なんですか!? あっでも私のほうが成績悪かった!!)



ライナー「……昨日は悪かったな」

サシャ「」ビクッ

サシャ「いえ……あれは私が悪かったので」

ライナー「いや、どう考えても女に手を挙げた俺が悪い。すまなかった」

サシャ「……私を殴る人は結構いますよ? 主に私が悪いからですけど」

ライナー「だからって手を挙げてもいい理由にはならん。……それと、悪いと自覚しているなら直せ」

サシャ「無理です」キリッ

ライナー「ならせめて直す努力をしろ。他人のメシを奪おうとするんじゃない」

サシャ「直せるなら昨日みたいなことしませんよぅ……それに、ご飯が目の前にあるとどうしても止まらないんですよね」

ライナー「止まらないって……俺はお前のメシじゃないんだが」

サシャ「いえ、昨日のライナーは特別おいしそうだったんですよ!」グッ

サシャ「こう……汗が首筋からタラーッと垂れていってですね、そこから鎖骨に向かって」ミブリテブリ

ライナー「やめろ! 説明せんでいい!」

サシャ「だって言わないと伝わらないじゃないですか! ――ところでライナーはハンバーグ食べたことありますか?」

ライナー「!? 話が突然飛んだな……まあ、何度かはあるが」

サシャ「あのですね、おいしいハンバーグは真ん中がほっこり膨らんでてー、中心を割ると透明な肉汁がじゅわーって溢れ出すんですよ? この前はそれを思い出しちゃって」

サシャ「フォークを刺したらじゅわーって……じゅわじゅわ……じゅわわ……ぐへへへへへ」ヨダレダラー

ライナー「待て待てサシャ想像するな涎が垂れてる!」

サシャ「ハッ!」 ...フキフキ

ライナー「ったく、空腹の時にメシの話をする奴があるか」

サシャ「あはは……すみません。それで何の話してたんでしたっけ?」フキフキ

ライナー「……サシャは悩みがなさそうでいいな」

サシャ「むっ、失礼な。私にだって悩みの一つや二つくらいありますよ」ムー...

ライナー「あっても食べ物関連だろう?」

サシャ「……否定はしません」グヌヌ

ライナー「だと思ったよ。この前もそうだったしな」

サシャ「でもそれだけじゃないですもん……昨日は色々考えすぎて眠れませんでしたし……」ムー...

ライナー「食べ物以外でか? 珍しいな」

サシャ「食べ物以外でです!」エッヘン

ライナー「何について悩んでたんだ?」

サシャ「それはですね……」

サシャ(昨日はえっと……確か、お腹が痛くて)エーット

サシャ(で、お腹が痛いのは……いや、最初はお腹が痛かったんじゃなくて)

サシャ(ライナーに押されたところが……痛くて……)

サシャ(それで…………)

サシャ(……)

サシャ(……あれ? あれれ?)

サシャ(もしかして私、……一晩中ずっとライナーのこと考えてたんですか?)





サシャ「……」

サシャ「……~~!!///」ボンッ!!

ライナー「おい、顔が真っ赤だぞ!?」

ライナー「そんなに深刻な悩みだったのか……! 言え、今すぐ言ってみろ!」ユサユサ

サシャ「い、言えません! 言いたくないです!」ブンブン

ライナー「遠慮しないで話せ、ちゃんと聞いてやるから!」

サシャ「遠慮じゃなくてですね、その……~~!!///」カオマッカ

サシャ(い、言えません……! 絶対言えません……!!)

ライナー「そうは言ってもだな……顔も真っ赤だし、お前考えすぎで熱でも出てるんじゃないか?」

サシャ「ひっ、人には言いたくないことの一つや二つあるんですよ!」

サシャ「ならライナーは昨日私を突き飛ばした理由言えるんですかっ?」

ライナー「……」

サシャ「……」

ライナー「……」

サシャ「……」

サシャ(だ、黙っちゃわないでくださいよ……)

サシャ(というか勢いで追求してしまいましたけど、もしライナーが話したら私も話すって流れになりますよね!?)

ライナー「……なあ、サシャ」

サシャ「」ビクッ

サシャ(やばいやばいやばいやばい!!)

ライナー「俺がもし――」

サシャ「ふんっ!」ズツキッ!!

ライナー「ぐおっ!?」ゴチンッ!!

サシャ「言わなくていいです! いいですから!」ヒリヒリ

ライナー「だからって頭突きをする奴があるか!」ヒリヒリ

サシャ「だってそうでもしないと喋っちゃったじゃないですかぁっ!」ヒリヒリ

ライナー「お前が話せって言ったんだろう!?」

サシャ「話せとは言ってませんっ! 誰にでも話したくないことがあるってことを言いたかったんです!」

サシャ「ライナーだって例えば……そうだ、ベルトルトにも言えないことだってあるでしょう!?」

サシャ「だから、話したくないことは話さなくていいんですっ! 本音全開で生きてるのはエレンぐらいで充分ですよ!」

ライナー「……」

サシャ「……」ゼエゼエ

ライナー「そういうものか?」

サシャ「そういうもんです!」キッパリ

ライナー「話したほうがいいことでもか?」

サシャ「もう……、そんなに私を突き飛ばした理由を話したいんですか? それともそんなに私の悩み事が気になるんですか?」

ライナー「そう聞かれるとそこまででもないな」シレッ

サシャ「ここまでしておいてそれですかぁ!?」ガーン

ライナー「お前を見ていると飽きないなあ」ハッハッハ

サシャ「……まあ、ライナーなら今すぐ私の悩みを解決できますよ」

ライナー「おお。ならどうすればいいんだ?」

サシャ「……えっと」

ライナー「?」

サシャ「……あのですね……その……」



サシャ「昨日の続き、したい、です……///」カァッ



サシャ「その……ライナーが、嫌じゃなかったら、ですけど」

ライナー「……」

サシャ「……」

ライナー「それだけでいいのか?」

サシャ「……」コクン

ライナー「……わかった。好きにしろ」

サシャ「え……いいんですか?」パァッ...

ライナー「けど絶対に歯を立てるなよ? あと……使わないとは思うが、爪も立てようとするな」

サシャ「噛むわけないじゃないですか。血抜きしてない肉なんておいしくありませんし」キッパリ

ライナー「……俺は食べ物じゃないんだがな」

サシャ「ふふっ。――でも色々言ってる割にやっぱり優しいですよね。ライナーお兄ちゃん?」

ライナー「……ここでそれを使うか」

サシャ「えへへー」ニコッ

サシャ「あのですね、ライナー……実は私、特技があるんですよ」

ライナー「人からメシを奪うのは特技とは言わないぞ?」

サシャ「違いますよ! えっとですね……汗の味で、その人がウソをついてるかどうかわかっちゃうんです」

ライナー「そんな特技あるわけないだろ」

サシャ「あるんです。あることに決めました。今」

サシャ「だから……ライナーが話したくなったら、話してもいいですよ? なーんでも」

サシャ「誰にも言っちゃいけないことでも、こっそり話しちゃってもいいですよ?」

サシャ「いくらでもウソ、吐いちゃってもいいですよ?」



サシャ「全部こうやって……私が見破っちゃいますからね?」



ぱくっ

ミカサ「そしてサシャはライナーの首筋にキスをした。きちんと数えていないけれど十四回くらいだったと思う。それに、あれはよく見えなかったけど恐らくはキスではなくて甘噛みというもの」

エレン「ふうん」

ミカサ「更にライナーはその後、サシャの上着を肘までずり下げるようにして脱がすと、シャツとブラジャーの紐を掴んで肩を露出させ」

アルミン「ミカサ。ミカサ待って。ストップ」

ミカサ「どうしたのアルミン」

アルミン「質問があります」

ミカサ「なんでも聞いてほしい」キリッ

エレン「お前訓練場で何してたんだよ。練習するなら俺も誘ってくれたらよかったのに」

ミカサ「私はエレンを合法的に拘束するためのワイヤートラップを仕掛けていた。だからエレンを誘っていけなかった。ごめんなさいエレン」シュン

アルミン「合法的な拘束ってあるかなぁ。あとごめんなさいのベクトルたぶん間違ってるよね」

エレン「別にいいけどさ……二人ともいなくて俺ずっと暇だったんだぞ」

ミカサ「私も超寂しかった。もうこれからは放さない。そのための仕掛けもバッチリ」サムズアップ

アルミン「うん。明日の訓練がはじまる前にそれは全部取り外しに行こうね。僕も手伝うから」

エレン「この前も思ったけど、よくお前それで二人に気づかれなかったよなぁ」モグモグ

ミカサ「今まで黙っていたけれど、私の母はニンジャの家系。だから、気づかれずに忍び寄るのは造作もないこと。そして、ニンジャは縄の扱いが得意」ギュッ

アルミン「ここで設定を盛らないでよ。あとその麻縄はしまって」

ミカサ「いえ、これは必要な説明。こうすることによって私の行動に説得力が出る」キリッ

アルミン「ないからね。これまでの君の行動に説得力なんてこれっぽっちもないからね」

アルミン「というか、それってミカサの見間違いってことはないの? ていうか見間違いだったんじゃない? もしくは夢とか」

ミカサ「それはない。私がその場面に行きあったのは、エレンの名前が聞こえたから」

アルミン「君の耳にはエレンの名前探知器でもついてるの?」

ミカサ「脊椎反射だから仕方がない」

アルミン「じゃあ食堂で話しちゃったのも脊髄反射?」




食堂    シーン ・ ・ ・

ミカサ「そう。情報は早く話さないと鮮度が落ちる。ので、今話した」

アルミン「新鮮だね。それついさっきの話だもんね。三時間くらい前?」

ミカサ「正確には二時間四十八分前」

アルミン「へえそうなんだ。すごいね」

アルミン(ライナーめっちゃこっち見てるからね、本当なんだろうね)

アルミン(すごいよ……そんなに見られたら僕の胃に穴が開いちゃうよ……やべえよ……やべえよ……)

アルミン(そしてこれまた都合よくサシャがいないときたもんだよ……どういうことだよ……)



サシャ「突撃っ! 今日のよるごはーん♪」ガラッ



食堂    ビクッ!!

サシャ「待ちに待ったご飯の時間ですよー! 今日は朝昼抜いた分モリモリ食べちゃいますよー!」イエーイ

ライナー「……」ガタッ

ベルトルト「……僕のパンも持ってく? ライナー」

ライナー「いや……大丈夫だ」

サシャ「今日のご飯はなんですかねー?」ワクワク

ライナー「サシャ、ちょっと来い」グイッ

サシャ「えぇー……またですか?」

ライナー「ああ。まただ」

サシャ「そんなぁ……今日は一日まともなご飯はなしですか?」

ライナー「俺のパンもやるよ。外に行くぞ」

サシャ「もう、わかりましたよ。じゃあ寮から持ってきたトレイだけでも置いてくるので放してください」

ライナー「ああ、行ってこい」パッ

サシャ「はーい、いってきまーす」トテトテ

サシャ「トレイ、置いてきましたよライナー」

ライナー「ああ。いつもの場所に先に行っててくれ」

サシャ「はぁーい」トコトコ バタンッ





ライナー「……ミカサ」

ミカサ「どうしたの、ライナー。早く行かないとサシャが待ちくたびれてしまう」

ライナー「後で話しあいをしよう。物理的に」

ミカサ「――受けて立とう。私は負けない。戦わなければ……勝てない!」ギラッ



アルミン(やめて)

アルミ胃ン(マジでやめて)

サシャ「ああー……幸せです……! パァンだいすき……!」モグモグ

ライナー「そうか、よかったな」

サシャ「……ライナーはよくなさそうな顔してますね?」モグモグ

ライナー「わかるのか?」

サシャ「わかりますよ。最近、いつも近くで見てますからね」モグモグ

ライナー「この前の話も収まってないってのに……どうして次から次へとこうなるんだ」アタマカカエ

サシャ「嫌なんですか?」

ライナー「……ああ、うんざりだな。もうやめちまうか。こんなこと」

サシャ「本当に? 本気で言ってます?」

ライナー「本当だ。ウソなんか吐かん」

サシャ「……」ムー...

サシャ「……えいっ」パクッ





サシャ「この味は! ……ウソをついてる味ですね」ニコッ



おわり

終わりです。読んでくださった方、レスしてくださった方ありがとうございました!
サシャに最後のセリフを言わせたかっただけなのにどうしてこうなった

※彼らはまだ手も握ってないしそもそも付き合ってすらいません


みんなも甘噛みする時は相手に一言断ってからにしましょうね
絶対噛むなよ! 歯を立てるなよ!!

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