親族を招いて、お母様の誕生日会が我が家で行われているのです
あぁ、なんて退屈なのでしょう
顔と名前が一致しそうも無いあんな伯父様や伯母様に用はないのです
当然、私は二階にある自室に籠ります
えぇ、籠りますとも
昨日、高校進学のお祝いにお父様が買って下さったラジオからはスイングが流れています
近頃の若者はみんなこれで、気でも狂った様に体や頭をグワングワンと揺らすのです
ずっとそうしていれば良いのに
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私は皆様方が大嫌いです
そうですとも
どれもそれも皆々大嫌いなのです
そうすれば私とそれ等に壁が出来て、区別が付くのです
あぁ、安心と言うものはこうでなくてはなりません
不可侵と言う事はこうも心地よいのです
お母さん「こら、いい加減にしなさいな。聞こえているのでしょう?花子?」
お母様はまだキャンキャンとしたの階から私を呼びつけます
意地でも行くものですか
どうせ私なんかが、あの人たちの中に放り込まれれば
やれ、大きくなっただのキレイになっただの
そんな事を言って、あっという間に渦中の人となってしまうのですから
あぁ怖い
「じゃぁこっちにおいでよ花子ちゃん。おいでおいで」
ラジオからでした
さっきまで、使用も無いスイングなんかを垂れ流していたそれが
突然、私に話しかけて来たのです
「おいでよ。こっちに来てしまえば良いのさ」
不思議に思い、スピーカーの網々の隙間から中を覗きます
すろと、どういう事なのでしょう
中には黄色い目玉が二つ見えるのです
「まぁ!あなたは誰なの?何でそんな窮屈なところにいらっしゃるの?」
「ボクはねぇ…チェシャって言うんだ花子ちゃん。ソレにぼくはこんな所には居ないさ。どこにも居るし、どこにも居ない」
黄色い目の下から突然ヌゥっと現れた大きな大きな口がそう言います
「初めまして、チェシャさん。変わったお名前…外国の方なのですか?それに何を仰ってるのか私にはさっぱり…」
床に置いたそのラジオの中を見る為に、私は四つん這いで随分下品です。
「いいのさ花子。理解したかどうかなんて問題じゃぁない。フリも出来れば本当に分かった気になってしまう事だってあるんだから。大事なのは聞いたと言う事。そう、結局は君の中のお話」
チェシャさんはラジオの中から時々グルグルとまるで猫の様に喉なんかを鳴らしながら続けます
「さぁ、うんと言うんだ花子。それだけで君の退屈は吹き飛ぶ。全ての単位が出鱈目になった僕らの世界においでよ」
「それってどう言う…」
「さぁ!」
さっきまで猫撫で声だったチェシャさんの声が突然強くなります。
「怖いわ…チェシャさん…一体あなたは誰で、どこに行こうと言うの…」
その時です
「花子!いい加減にしないと怒るわよ。来なさい!」
お母様の声がしました
私は酷く安心して、さっきまであれ程いやがっていたのに二つ返事で
「はい!お母様!今行きます!」
とそう答えたのです
すると
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