希「私とウチ」 (27)
絵里「希ー、来たわよー」
希「待っとったよ」
絵里「外すごく寒いわね」
希「雪降ってるみたいやね」
絵里「12月だもんね」
希「お茶淹れるからくつろいでて」
絵里「わかったわ」
希「おまたせ」
絵里「ありがとう」
希「今日はありがとな」
絵里「希が勉強教えて欲しいだなんてめずらしいわね」
希「最終予選の前にテストあるやん、それにひっかかりたくないからね」
絵里「それを言うならにこも呼べばよかったんじゃない?」
希「こころちゃんが風邪ひいたらしくて、離れられないって」
絵里「それならしかたないわね」
希「にこっちとはまた今度やね」
絵里「そうね、そろそろはじめましょうか」
希「お願いな」
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希「ここがこうやからあーなるん?」
絵里「それだとここがおかしくなるでしょ」
希「ほんとや」
絵里「だから、ここをこうするのよ」
希「なるほどな」
絵里「結構やったし少し休憩しましょうか」
希「お菓子もってくるね」
希「おまたせ……ってえりちなにみとるん?」
絵里「写真よ」
希「これ、ウチとえりちが出会ったころの」
絵里「なつかしいわね」
希「そうやな」
絵里「いろいろあったわね」
希「いろいろな」
絵里「ええ、いろいろ」
希「今でもちゃんと覚えとるよ」
絵里「私もよ」
希「えりちと出会ったことで、ウチの運命が変わったんやで」
とりあえずここまで
次から時間が遡ります
絵里と出会ったときから、μ's結成までの二人の関係を希視点で書いていこうと思います
出来事などはいろいろオリジナルで作ります
設定はアニメSID混ぜた感じにします
更新ゆっくりになると思いますが、お付き合いお願いします
八話は希好きの自分としては最高でした
桜の花がきれいに咲いて、優しい風が頬をかすめる、ぽかぽか日和
今日は音ノ木坂の入学式、だけどウチにとっては特別なことじゃない
昔からそうだった、入学式と卒業式を同じ校舎で迎えたことなんてない
どうせ途中でここを離れる――意識することでもない
ただの一日――そう、ただの一日
機械的に式に出て、同じクラスの人にあいさつをする
それだけ――
いつ終わるか分からないこの生活を、また始めるだけのこと
そのことにウチはもう慣れてしまっていたんよ
だから、音ノ木坂での生活に期待なんてなかった
――彼女に出会うまでは
式も終わって、今はクラスでの自己紹介の時間
みんなはこの学校に入学できた喜びと期待に満ちた顔をしていて
自己紹介にもその思いが伝わってくる
好きな芸能人は誰か、趣味は何か、部活は何をやろうか
話の話題になるようなことを挙げて、自分をアピールしてる
それが正しいんやと思う、高校生活の最初からつまずきたくないもん
――だけどウチは同じことをしようとは思わないんよ
今さら友達が欲しいなんて思わない、それこそ下手に目立つ可能性だってある
ウチはこの学校での生活を平凡に過ごそうと思うんやから――
そんなことを考えているウチにもうすぐウチの番がやってくる
あたりさわりのないことを考えて自分の番が来るのを待った
前の前の人が終わり、ウチの前の人が席を立った
そして言ったんよ
「みなさん、初めまして。絢瀬絵里と言います。よろしく」
それだけ――ウチはその言葉を聞いたとき驚いた
この子は周りとの関係を自分から拒んでる、ウチにはわかったんよ
当然、みんなも驚いてた
だってそうやろ?モデル並みに可愛いのに、放った言葉があれだったんだから
ここでちょっと可愛いことを言えばすぐにでもクラスの人気者になるのを
この子はしなかった――いや、出来なかったんや
ウチはこの子の自己紹介が印象に残りすぎて、その後自分が何を言ったか覚えてないんよ
気づいた時には全員の自己紹介はとっくに終わり、初日の日程はすべて終わっていた
放課後になり教室を見渡すと既に何個かのグループができ、アドレスの交換などをしていた
ウチはあの子を探した――だけど姿はもうなかった
近くにいた人に聞いたら、終わったらすぐ帰って行ったみたい
あの子と話をしてみたい――ウチの直感がそう告げとった
だけど今日は無理みたい、日を改めるしかないみたいやね
――その後はクラスの人と少し話したりして、そのまま家に帰ったんよ
これがウチの高校生活初日――音ノ木坂での新しいスタートの第一歩
なんにも期待してなかった高校生活にちょっぴりの希望を持てた日
ウチはこの時あの子に――絢瀬絵里と言う人間に何かを感じていたんや
今日はここまで
こんな感じでやっていこうと思います
入学式から一週間が経った
結局ウチは絢瀬さんと話しをすることができないままでいた
何度も話しかけようとしたんやけど、うまくいかんかった
この一週間で絢瀬さんはクラスで孤立した
最初の方はよく話しかけられたり、遊びに誘われていたけど
「興味ないわ」
そんな風に接しているから次第に声をかける人もいなくなって
今ではいつも一人で過ごしてる
話をしてみたい、だけどウチは積極的に行動できるタイプじゃなくて――
少しの怖さすら感じていたんよ
そこでちょっと思った――あぁ、またいつも通り
せっかくの希望をなかったことにするのかって
――でも、今回は違った
諦めたくない、このまま終わらせたくない
友達なんかいなかった自分が
一人の人間にこんなに執着したのは初めてやった
自分でも不思議だった
絢瀬さん、ウチはあなたと――
そう思ったら自然と足が動いたんよ
授業はもう終わっていて、今は放課後
教室の中に絢瀬さんの姿はなかった
急いで荷物をまとめて教室を出る
廊下を走ることなんて普段はしないけど、この時は必死だった
もう帰ってしまったんだろうか
不安が頭をよぎった
そんなウチを見て、同じクラスの子が話しかけてきた
絢瀬さんはもう帰ったかと聞くと
図書室に向かうのを見たと教えてくれた
よかった、まだ帰ってはいないみたいやね
安堵したのもつかの間、お礼を行ってその子と別れる
図書室――行ったことはあるけど、こんなに遠かったかと感じた
はぁはぁ、やっと図書室の前まで来れた
絢瀬さんは――いた!
遠くからでも分かるきれいな金髪は今は探すのに一役買った
用が済み帰ろうとしていたのか、階段を下っていた
ちょっとだけ立ち止まる
心臓がドキドキいってるのがわかった
そうしている間にも絢瀬さんはどんどん遠ざかる
ウチは決めたはずや、諦めないって
――もう迷わない
そう心の中で誓った
「あのっ!」
大きな声を出した
「あなたは?」
よかった、ちゃんと聞こえたみたい
これでそのままスルーやったら精神的にきつかったかも
「あ、私……」
――どうしよう、話しかけることだけ考えてて何を言おうか考えてなかった
と言うか、あなたは?って聞かれるあたり名前覚えてもらえてなかったんやね
ウチは口ごもる
2、3秒の時間のはずなのにウチにはすごく長い時間のように思えた
アイスブルーの瞳が真っ直ぐこっちを見つめてくる
この機会を逃すわけにはいかない
だから考えた
絢瀬さんはあなたは?って言った
――だったら、自分の名前を言えばいいんじゃないか
それがウチなりの答えだった
クラスでウチは、自分のことを『私』って言ってた
親の転勤で関西の方にいたせいで口調はすこし変わっていた
東京の高校だし、なるべく標準語を使うようにしていたんよ
でも、ある意味これが初めての自己紹介
本当の自分で絢瀬さんと知り合いたかった
だから、ウチは精一杯の笑顔で
「ウチ、東條希!」
本当の自分を知ってもらうために――
この時から自分のことを『私』から『ウチ』って言うようになったんよ
「そう、私は絢瀬絵里。それじゃあ」
へ?そう言うと絢瀬さんはそのまま帰っていた
ウチはその場で立ち尽くした
――一筋縄ではいかないみたいやね
絢瀬さんとのファーストコンタクト
決してうまくいったとは言えない
だけど――初めて言葉を交わすことができた
そのことが嬉しかった
勇気を出してよかった、自分が変わったような気がした
これは最初、まだ本当の最初
ウチは思った――
明日も話しかけよう
今度はちゃんと何を話すか考えて
「ふふっ」
自然と笑みがこぼれた
学校からの帰り道、ウチの足取りは軽かった――
この日がウチと絢瀬さんの出会いの日
――始まりの日
今日はここまで
のんたんの誕生日までに完結できたらいいな
このSSまとめへのコメント
可愛いぃよな~♪んたん!