八幡「夏の終り」 (25)
初SS
事情によりスマホから
時系列は三年の夏
修学旅行終了後のif
また、夏が来た。
俺が奉仕部に行かなくなって、半年以上が経った。
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学年も一つ上がり、クラスも変わった。
・・・まあ、それでも俺がぼっちなのはいわずもがな。
由比ヶ浜とはクラスも離れ、もう顔も合わせてない。
そして、雪ノ下とは―――俺が奉仕部に行かなくなってから一度も会っていない。
平塚先生も始めのころは俺を無理やりにでも連れ戻そうとしていたが、俺の激しい拒絶を見て、最近では何も言ってこない。
まあ、愛想を尽かされた、とでも言うべきだろうか。フッ、と自嘲する。
小町も、時々何か言いたげな顔をするが、言葉には出さない。恐らく、俺の雰囲気を察してくれているのだろう。
でもまあ、誰に何を言われたところで、俺は奉仕部に戻る気は毛頭ない。いや、そもそも戻る資格など無いのだ。
なぜなら―――彼女達の心を酷く傷つけたから。
そう気づいたのは、今年の三月のことだった。
由比ヶ浜「・・・あたしは、比企谷君のことが好きです。付き合ってください・・・ッ」
八幡「・・・は?」
終業式のあと呼び出され、俺は由比ヶ浜に告白された。
八幡「・・・こんな俺の、どこに惚れる要素があったんだよ」
八幡「それに、あの時お前は。俺を、俺のやり方を、拒絶しただろうが」
由比ヶ浜「・・・あの時は、ヒッキーが、またあんな方法で自分を犠牲にしたから」
八幡「・・・別に、俺が自分を犠牲にしようと、お前には関係ないだろうが」
由比ヶ浜「・・・あるよ。関係あるんだよ。あたしは、あたしの目の前で、好きな人が傷つくのなんて見たくなかった」
八幡「・・・」
由比ヶ浜「・・・ヒッキーは、優しいから・・・。誰かのために犠牲になって、皆からひどいことされて。でも、そういう優しいところが、あたしは大好きになっちゃった」
八幡「・・・俺は、優しくなんて、ない」
由比ヶ浜「・・・ううん。優しいよ。それで、とっても強い。自分の弱いところを、人に見せられるから。私にはそんなこと、出来ない」
八幡「・・・」
由比ヶ浜「それに、ゆきのんだって、ヒッキーのこと」
八幡「やめろ」
由比ヶ浜「ううん。もう言っちゃう。ゆきのんだって、ヒッキーのこと、好きなんだよ」
八幡「・・・」
由比ヶ浜「あたし、ゆきのんに酷いことしてる・・・。でも、もう我慢できない」
由比ヶ浜「だから、後には引けない。・・・ヒッキー、もう一回言うよ」
由比ヶ浜「・・・あたしは、比企谷君のことが好きです。付き合ってください―――」
八幡「・・・無理だ。由比ヶ浜。俺なんかじゃ、お前と釣り合うとは、到底思えない・・・」
由比ヶ浜「・・・そっか。わかった。答えてくれて、ありがとう」
八幡「・・・」
由比ヶ浜「時間とらせて、ごめんね。・・・バイバイ、ヒッキー」
由比ヶ浜が去った後、俺はしばらくそこから動けなかった。
由比ヶ浜だけでなく、雪ノ下まで―――客観的に考えれば考えるほど、解ははっきりと出てきて、もはや俺にはそれを否定するだけの何かを持ち合わせていなかった。
そして、その時ようやく、俺は彼女達を傷つけたことを悟ったのだ。
八幡「・・・小町。俺、来週の土日、家空けるから」
8月後半のクソ暑いある日のことだ。
小町「え!?珍しいね、出かけるの!?受験勉強で朝から夜までずっと勉強してて、小町ちょっと心配してたんだけど。息抜きでもするの?」
八幡「・・・まあな。少し一人旅でもしようと思ってな」
小町「・・・お兄ちゃん大丈夫?ほんとにお兄ちゃんなの?勉強のし過ぎで目だけじゃなくて頭までおかしくなっちゃった?」
八幡「失敬な。おかしくなんかなってねーわ」
目がおかしいのは否定しませんけどね。なにそれ悲しい。
八幡「・・・ただの気まぐれだよ。どうせ日曜には帰ってくるし、勉強に支障は出ないだろ」
小町「・・・ふーん。まあ行ってらっしゃい」
初めての一人旅は、なかなか楽しめた。
割と行き当たりばったりなのが良かったのかもしれない。
電車を何本か乗り継いで、とある温泉街まで。
その途中で、いろんな景色を見たり、町並みを見たり、美味しいものを食べたり。
俺にしては有意義な時間の使い方だったんじゃないか・・・と思う。
しかしまあ、楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまうもので。
気がつけば、俺は帰りの電車に乗っていた。
ふと、窓の外を眺める。
そこには海が広がっていて、夕日が今にも沈もうとしていた。
八幡「・・・」
俺はその近くの駅で降りた。もうここまで来れば家はもうすぐだし、少し歩くのも悪くないと思ったのだ。
夕焼けに染まった砂浜のそばを、俺は歩く。
・・・
誰だよ少し歩くのも悪くないっつったのは。俺でした。
なかなか荷物重いじゃねえか。運動不足だな・・・。
そうしていると、もう夕日がほとんど見えなくなってしまっていた。
八幡「・・・まあ、いいか」
旅の余韻に浸りながら、俺はつぶやいた。
海風は徐々に弱まってきており、ほとんど無風状態だった。
しばらくすれば陸風が吹いてくることだろう。
少々疲れた俺は、砂浜に座って休むことにした。
暗くなりつつある空を見上げる。
星はまだ出ていなかった。
・・・
なんだっけ、あの曲。
暗い海を見つめながら、ふと考える。
八幡「もう誰の心も 引き裂くことなんて無い」
「この車もギターも 売り払い海辺の町」
「潮風と 波の音を 枕に ひとり暮らそう」
ダメだ、この曲は。そう思うが、心地よいメロディーが頭の中で流れ続けていて、自然と歌を口ずさんでしまう。
八幡「愛してくれた人 打ちのめすほど傷つけた」
「汚れた悲しいメロディー 身を切るように繰り返す」
「拍手と スポットライトと 報われぬ 涙の陰で」
視界が滲みはじめる。波の音がやけにはっきり聞こえた。
八幡「もう誰の心も 引き裂くことなんて無い」
「手に入れたものみんな 失ったって構わない」
「残された 僅かな時間(とき) 静かに ひとり暮らそう」
「潮風と 波の音を 枕に ひとり暮らそう―――」
気がつけば、俺は声を殺して泣いていた。
彼女らと決別してから、初めての涙だった。
エンディング曲 夏の終り/浜田省吾
カッとなって書いた。後悔はしていない。原作読んだこと無い。文才も無い。
あとは勝手に乗っとるなり埋めるなり放置するなりしてくれ
お目汚し失礼
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