とある日の第六駆逐隊 (37)
キャラ崩壊に注意(特に響)
あとお酒入るので注意
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【雷ちゃんと提督】
雷「司令官、お茶が入ったわ」
提督「ありがと、お礼はちゃんと言えるし」
雷「ふふ、暁の真似ね」
提督「電ちゃんの時やったら、めっちゃ困ってた」
雷「それ、私に相談してきたわよ」
雷「『私、どう反応すれば良かったのかなぁ』って」
雷「あんまり困らせないであげてね」
提督「いっそ罵倒してください」
雷「あの子にそんなこと、できると思う?」
提督「無理。電ちゃん……というか、特Ⅲ型の子は皆天使だから」
雷「もう、司令官は大げさね」
雷「あ、お茶が冷めちゃうわよ。おしゃべりはお休みしましょ」
提督「そうだな、いただきます……」
青葉「いや~、よく見えますねえ」
青葉「司令官も好きですよねえ、駆逐艦とか、胸の薄い子」
衣笠「そうね、でも私たちとも仲は悪くないと思うけど」
青葉「スキンシップがダンチですよ」
青葉「好きな子には触れたくなるものでしょ?」
衣笠「そうね……でも、青葉の提督好きも大概よね」
青葉「いいの、青葉には取材っていう名目があるから」
青葉「それに、好きな人を追っかけるのは、いけないことかな」
衣笠「えっと……ストーカーみたいなのは、良くないと思うなぁ」
青葉「人聞きの悪いこと言いますね!」
青葉「青葉は断じてストーカーじゃないです!」
青葉「追っかけですよ、追っかけ!」
青葉「司令官を遠くからみてるだけで、幸せなんです!」
衣笠「……だといいんだけどね」
青葉「青葉、衣笠みたいに、司令官のシャツを嗅いだりしてませんし」
衣笠「そそそ、そんなことしてないし!」
青葉「ふふふ、論より証拠ですよ」
衣笠「なんで撮ってるのよ! 寄こしなさい!」
青葉「嫌ですよ! むっつり衣笠さーん!」
衣笠「部屋一面に写真貼ってるあんたに言われたくないわよ~!!」
提督「なんだか外が騒がしいな」
雷「この声は……衣笠さんかしら」
提督「また青葉と喧嘩かな? 仲良いなあいつらは」
雷「そうね……ねえ、ケンカするほど仲がいいっていうじゃない」
提督「ああ」
雷「私たち姉妹はあまりケンカしないけど」
雷「それでも、仲は良いでしょ?」
提督「見てるだけで幸せになるよ」
雷「ケンカするほど仲がいいって、嘘なんじゃないかしら」
提督「んー……そうだなぁ……」
雷「ケンカしない方が、仲がいいと思うんだけど」
提督「俺の勝手な解釈だけど、聞いてくれるかな」
雷「わかったわ」
提督「本音をぶつけても、壊れない関係である」
提督「ってことだと思うんだよ」
提督「雷ちゃん、たまに、暁と言い争いしてるだろ?」
雷「あ、あれは暁があんまり雑にレディを語るからよ」
提督「責めてる訳じゃないからね」
提督「暁ちゃんはだいたい言い負かされていじけるけど」
提督「雷ちゃんと険悪になったりしないだろ?」
雷「あ、当たり前じゃない! 大事な姉妹だもの」
提督「それなら、『ケンカするほど、仲がいい』んじゃないかな」
雷「そうね……けれど、本音を言っても、言い争いにならないのが一番だと思うわ」
提督「みんなが雷ちゃんみたいだったらなぁ」
雷「でも、私みたいな暁なんて嫌よ」
提督「……俺がますます駄目人間になるね」
雷「大丈夫よ。暁はまだまだお子様だから」
提督「あれが普通だと思うよ……雷ちゃんはしっかりしすぎ」
雷「そうかしら?」
提督「だからいつも助かってるよ。ありがとう」
雷「い、いいのよ! 私がしたくて、してるんだから」
【居酒屋鳳翔、威力偵察! その壱】
電「何かいいことでもあったのですか?」
雷「いいこと? そうね、あったわ」
電「司令官さんと、何かあったのですか?」
雷「すごーい! どうしてわかったの?」
電「雷ちゃんの妹ですから。それに、今日の秘書艦は雷ちゃんですし」
雷「そう言われるとそうね」
電「プレゼントでも頂いたのですか?」
雷「そうね……でも、物じゃないわ」
電「どういうことですか?」
雷「ふふ、私ってば単純ね!」
電「ちゃんと教えてほしいのです……あ、司令官さんなのです」
電「今日は隼鷹さんとお出かけみたいですね」
雷「鳳翔さんのとこでしょ。いいわね、お酒飲める人は」
電「私たちには、まだちょっと早いのです」
雷「そうね。きっと酔っ払いになっちゃうわ」
雷「……そういえば司令官、最近、隼鷹さんとは仲良いわよね」
雷「ロリコンさんなのに、おかしいわね」
電「この前、司令官さんが言ってたのです」
電「あんまりしつこいから、抵抗するのは諦めたって」
雷「金剛さん並に積極的だものね。だから、なのかしら」
雷「でも、司令官自らスキンシップをとるのは見たことないわ」
雷「ってことは、いつもべったりな私たちがまだリードしてるわ」
電「わ、私もですか? あっ」
雷「どうしたの?」
響「ДобрЫй вечер. おそろいだね」
暁「これからはレディの時間よ。お子様は帰りなさいっ」
雷「……それじゃ、一緒に帰りましょうか」
暁「ひ、引っ張らないでよ! 私はお子様じゃないんだからっ!」
響「雷、離してあげてくれ。今から鳳翔の所に行くんだ」
電「暁ちゃんもお酒を飲むのですか!?」
暁「当然よっ。レディのたしなみなんだからっ」
雷「どうせジュースみたいなのしか飲めないでしょ」
響「ふふっ……」
暁「う、うるさいわね! 響もなに笑ってるのよ!」
響「さっきのやりとりを思い出してね……」
響「『私、苦いのとか絶対むりだから……甘いのがいいわ、とっても甘いのね』」
響「私も、思わず苦笑いさ」
雷「相変わらずの棒読みね。声は似てるわ」
電「とっても暁ちゃんらしいのです」
暁「し、仕方ないじゃない……響みたいにウォッカ飲む人と一緒にしないでよぉ……」
響「すまない、いじめすぎたね。雷、電、それじゃ」
暁「おやすみ、二人とも」
電「おやすみなさい、なのです」
雷「ちょっと待って!」
響「どうしたんだい」
雷「私も行くわ」
雷「ええっ!?」
響「私は別に構わないが……暁、どうする」
暁「構わないわ。レディのなんたるかを教えてあげるんだからっ」
雷「教えられるのはどっちかしらね!」
響「どうして、そうケンカ腰なんだい……」
電「響ちゃん、心配なので、私も行っていいですか?」
響「ああ、電が居れば心強いな。行こうか」
電「でも、お酒は遠慮するのです……大丈夫ですよね」
響「勿論だよ。君は、その方がいいさ」
【居酒屋鳳翔、威力偵察! その弐】
隼鷹「だーかーらー……それが駄目なんだって!」
提督「俺は石頭だ、諦めろ」
隼鷹「あ~!! わかんねー奴だなー!」
提督「鳳翔さんすみません、うるさくて……」
鳳翔「大丈夫ですよ、他にお客様も居ませんので」
隼鷹「ほら、鳳翔が良いってんだから」
提督「あまり煩いと、帰るぞ」
隼鷹「それは卑怯だろ! ったく……そんなにあたしと飲みたくないなら帰っちまえ、ばかぁ」
提督「嫌なら来てないだろ、ばか」
隼鷹「そんじゃ、もうちょっと優しくしてよぉ」
提督「はいはい……」
隼鷹「だからさー、提督さぁ……」
鳳翔「いらっしゃい……あら」
響「ДобрЫй вечер. 」
暁「こ、こんばんは!」
鳳翔「かわいいお客さんたちですね。いらっしゃいませ」
電「雷ちゃん、あそこ……」
雷「やっぱりここだったわね」
電「盛り上がってるみたいですね」
鳳翔「響ちゃん、姉妹揃って来たんですね」
響「すまない。来る途中に偶然会ったんだ」
響「二人が一緒でも大丈夫かな」
鳳翔「ええ、構いませんよ。こちらのお座敷へどうぞ」
暁「お、お構いなく……あれ、司令官?」
提督「呼ばれた気が……暁? なんでここに」
隼鷹「ちょっと……て、駆逐艦の子たちじゃん」
電「こんばんは、なのです」
雷「こんばんは、司令官、隼鷹さん」
提督「こんばんは……って何普通に挨拶してんだ」
雷「じゃあほっぺにキスとかしたほうがいいの?」
提督「えっ!」
暁「は、破廉恥だわ!」
響「欧州の挨拶か。確かに普通ではないね」
電「司令官さん、顔が怖いのです……」
隼鷹「あたしもしたげよっか、へへ」
提督「ここ、日本、OK? それより、第六駆逐隊揃い踏みだけど……」
暁「あたしたちも、れっきとしたお客よ!」
響「暁がどうしても聞かなくてね」
隼鷹「お子様には早いんじゃないの? なー提督」
提督「まあ、響はいいとして……三人は大丈夫なのかい?」
暁「とっ、当然よっ!」
雷「暁に飲めるなら、私も飲めるわよ!」
電「わ、私はジュースがいいのです。お酒はちょっと……」
提督「そうか……しかし、うむ……」
響「やはり心配かい?」
提督「まぁ……でも俺に止める権利はないし、飲みたきゃ、飲んでくれ」
隼鷹「提督もいるし、大丈夫だいじょーぶ」
提督「それには同意だが、お前に言われると不安になるな」
隼鷹「ひどっ! ふれくされるぞ……」
提督「……」
雷「だ、誰の真似かしら」
隼鷹「ちょっと、せめて反応くらいしてよぉ」
提督「いや、思ったよりやるじゃん、隼鷹も」
隼鷹「へへっ。なんだよ~もっと素直に褒めなよ~」
鳳翔「あの、提督、皆さんで一緒に飲まれてはどうですか」
提督「そうですね、皆がよければ、そのほうが」
隼鷹「あたしはいいよん」
暁「あ、暁も構わないわ」
電「みんな一緒の方が、楽しいのです」
雷「そうね。気を付けないといけない人もいるし」
暁「それって、暁の事!? ねえ!」
響「いいじゃないか、暁。それより早く席に着こう」
鳳翔「ふふふ、賑やかでいいものですね」
提督「不安もありますけど……でも、楽しみましょう。鳳翔さんも」
鳳翔「わ、私はお料理の準備もありますし」
提督「それもそうか……それじゃ俺と一緒に、ノンアルでどうです」
鳳翔「ええと、それなら……大丈夫かしら」
提督「俺は飲みませんから、その……心配しないでください」
鳳翔「心配なんて、そんな……」
提督「……」
鳳翔「ええと……」
隼鷹「な~んか、アヤシイ雰囲気じゃね、おふたりさん」
提督「いや、そんなことはないから、早く席に着こう、な」
隼鷹「どう見てもアヤシイって! 後で詳しく教えてもらうからね」
提督「そんなことより飲もうぜ隼鷹!」
隼鷹「誤魔化そうったってそうはいかないぜ、覚悟しなよ~」
【おやすみ隼鷹】
隼鷹「いや~、あん時は本当に頑張ったよ~」
隼鷹「ご褒美早く欲しいなぁ、提督~」
提督「お前、ひとりで喋りすぎだ。みんな困ってるだろ」
提督「褒美なら明日やると言っただろう」
隼鷹「そういやそうらったね、へへへ……」
提督「お、おい……寝ちまった」
響「まだまだだね」
提督「響たちが来る前から飲んでたしな。結構ハイペースで」
雷「隼鷹さんって、ほんとお酒好きね」
提督「仕方ない奴だよな、ったく……」
提督「よっと……ちょっと部屋に置いてくるよ」
鳳翔「その方がいいかもしれませんね」
電「いってらっしゃい、なのです」
暁「はやくもろってきてね!」
雷「暁、あなたも相当きてるわね」
響「まだ一杯目なのにね。隼鷹の次は、暁を運んだほうがいい」
暁「ひびき、まらわらしはらいじょうぶよ!」
電「あ、暁ちゃん、オレンジジュースなのです」
暁「ちょっと! お子様じゃないって言ってるでしょ!」
雷「それはちゃんと言えるのね」
響「飲んでおきなよ、暁」
暁「う……わかっらわよ」
響「これ以上はお酒禁止だよ」
暁「んく……ふぅ……わかっれるわよ……ひっく」
響「司令官が戻ってくるまで、起きていられるといいね」
電「これ以上飲まなければ、きっと大丈夫なのです」
雷「そうは思えないけど……」
暁「うー……ひっく!」
【ふたりは知ってる】
雷「結局、私の思った通りになったわね」
暁「……zzz」
電「ですね。でも雷ちゃんは平気みたいですね」
雷「だって、お子様じゃないもの」
暁「おこさまいうな……」
響「寝言でも言うなんて、余程だね」
鳳翔「暁ちゃんは、どうしてそこまで拘るんでしょうか」
雷「どうしてかしらね……わからないけど」
響「前、司令官が言ってたよ」
響「『姉妹が皆大人っぽいからだろ』って」
雷「そりゃ暁よりは大人でしょうけど」
電「私なんてまだまだ子供なのです」
響「そう思えるなら、暁よりは大人だね」
提督「ただいまー」
鳳翔「お疲れ様です。大丈夫でしたか?」
提督「ええ、よだれを垂らされた以外は」
雷「だから着替えてるのね」
響「それ、久しぶりに見たよ」
提督「ああ、久々に着たからな。いつだっけ、響と飲んだの」
響「二週間前だよ。ほら、探信儀を開発できた日」
提督「あー、そうだった。頑張ったご褒美な」
響「うん」
提督「しかし響は強いよなー……ってなんだ、怖い顔して」
雷「響ばっかりずるいわ」
提督「ずるいと言われてもなあ……」
響「雷も司令官と飲めばいいさ」
雷「飲めばいいさって言われても……」
響「別に特別なことじゃないよ」
響「大人は皆飲んでるから。ね、鳳翔」
鳳翔「そうですね、ご一緒するときもありますよ」
提督「またゆっくり飲みたいですね」
鳳翔「ふふ、そのうちまた、ここをお休みしなくてはいけませんね」
雷「……置いてけぼりにされた気分」
電「仕方ないのです、私たち、まだ子供ですから」
雷「響だって子供じゃない!」
電「そうですけど……でも、大人みたいにお酒が飲めるのです」
雷「……悔しいわ」
響「何がだい?」
雷「二人きりでお酒を飲むときの司令官を、私は知らないもの」
雷「でも、響と鳳翔さんは知ってる」
雷「それが悔しいの」
響「そうか……」
提督「雷ちゃん……」
雷「これじゃ子供のわがままよね、ごめんなさい」
雷「私も、早く飲めるように頑張るわ」
雷「司令官、その時は付き合ってくれる?」
提督「俺はいつでもいいよ。なんなら明日でも」
雷「ありがと、司令官。嬉しいわ」
雷「でも駄目よ」
提督「えっ」
雷「特別な日のご褒美にしてもらわないと、駄目」
雷「だって……そうじゃないと、毎日求めちゃうもの」
鳳翔「あらあら……」
響「司令官も、隅に置けないね」
提督「つらい……雷ちゃんが天使すぎて……」
【お家に帰ろう!】
提督「しっかし暁はかるっこいな」
電「私たちの中で一番軽いのです」
雷「でも、そんなに変わらないわよね?」
提督「ちゃんと食うもん食ってるか」
響「人並みには食べてるよ。大丈夫」
提督「それならいいけど」
響「うん」
提督「……流石にこの時間は、静かだな」
提督「日中はあんなにやかましいのにな」
響「こういう夜、私は好きだな」
電「とっても落ち着いた感じなのです」
雷「私は騒がしい方が好きだわ」
雷「司令官はどう?」
提督「そうだなあ……わからん」
雷「それはずるいわよ」
提督「ズルいのが大人なんだ、ごめんな」
響「ふふ……相変わらず優柔不断だね」
提督「頭が固くなって、そう簡単に変われないんだよ」
提督「でも、そうだな……」
提督「皆が居ないラバウルは、きっと淋しいだろうから」
提督「騒がしくても静かでも、ここに居てほしいな」
雷「答えになってないわよ、もう」
響「『大丈夫よ、私が居るじゃない』」
電「声はそっくりなのです」
響「『とっ、当然よ』」
提督「棒読みなのが、如何ともしがたいがな」
雷「ほんと覇気が無いわね、ウチの次女は」
【人前でそんなこと……!】
電「すみません、こんな夜分に……」
提督「ああ、構わないよ。まだ寝る気分ではないし」
提督「むしろ電ちゃんが来てくれて嬉しいよ」
提督「ひとりで訪ねてくるなんて珍しいからね」
提督「何かあったのかい」
電「あの、実はその……司令官さんにお願いがあるのです」
提督「うん、何かな。欲しい兵装があるとか、そういうことかな」
電「そうじゃなくて、えっと……」
提督「あ、ごめんね、続けて」
電「あの……私もお酒が飲みたいのです!」
提督「おー」
電「わ、私も本当は皆と一緒に飲みたかったのです」
電「最初は飲みたく無かったのですけど……」
電「皆さん、楽しそうだったから、飲んでみたくなって」
電「でも、お酒を飲むと、変な私になるかもしれないと思って……」
電「それが怖くって……」
提督「……なるほど」
提督「隼鷹みたいになっちゃうかもしれないと思ったわけだ」
電「そ、そういう訳ではないのです、けど」
提督「本当に?」
電「……少し思いました」
提督「はは、正直でよろしい」
提督「でも、いいのかい?」
提督「もしかしたら、変な電ちゃんを、俺に見られるかもしれないよ?」
電「だ、大丈夫なのです!」
電「えっと、本当は大丈夫じゃなくって、とっても恥ずかしいのですけど……」
電「でも、きっと大丈夫、なのです」
電「変な私を見ても、司令官さんは嫌ったりしないでくれるって思ったのです」
電「きっと、馬鹿にしたりもしないのです」
提督「いかん、目頭が……」
電「あの、司令官さん?」
提督「電ちゃんが天使過ぎて……つらい……」
電「て、天使なんて、大げさなのです……」
提督「いーや、電ちゃんは天使だよ。自信もっていい」
提督「でも、自分で天使とか言っちゃ駄目だよ」
提督「そうすると、那珂ちゃんみたいな事になるからね」
電「そ、そんな事言うと、那珂さんが可哀想なのです」
提督「そ、そうだね。ごめんね那珂ちゃん」
提督「……よし、許された」
提督「まあ、それはそれとして」
提督「雷ちゃんたちも、嫌ったりしないでしょ。仲良し姉妹なんだから」
電「でもやっぱり、恥ずかしいのです」
電「それに……」
提督「まだ、何かあるのかい?」
電「い、いえ、何でもないのです」
電「危なかったぁ……」
提督「えーと……とりあえず、お酒を飲むんだよね」
電「はい、なのです」
提督「強いお酒は無理だろうから……チューハイかな?」
電「えーと、ウォッカがいいのです」
提督「ウォッカ!?」
【二人目の来訪者】
提督「で、響さんは何の用でございますか」
響「ひどいな。『ちゃん付け』で構わないよ」
響「『天使すぎる雷ちゃん』に、そうするみたいに」
提督「ウォッカをストレートで呷る子が何を言うか」
響「それはそれ、これはこれさ」
提督「……電ちゃん探しに来たのか」
響「うん。ふと目が覚めたら居なくてね」
響「少し待っていたけど、戻ってこなかったから」
響「ふふ、ぐっすり眠っているね」
響「……?」
響「司令官、電からウォッカの匂いがするよ」
提督「誤解しないでくれよ、説明するから」
響「釈明の間違いじゃないのかい?」
提督「俺は無実だ。憲兵さんの出番じゃない」
響「わかってるさ。司令官は何もしてないよ」
響「だって、ウォッカの香りがするのは雷だけだ」
響「酔っていない司令官よりは、電のほうが勇敢なくらいさ」
提督「……なんかいつもよりツンツンしてないか」
響「そうかな。自分ではわからないけど……」
響「きっと、お腹が減っているからじゃないかな」
響「……そうだ、いい考えがある」
響「司令官、一杯どうかな」
提督「待て、小腹でも満たすかって流れだろう」
響「自分でもわかってるよ」
響「真っ直ぐ言うのが恥ずかしかっただけさ」
提督「本当に照れてるのか、ポーカーフェイスすぎてわからん」
提督「というか、電ちゃん連れて帰った方がいいんじゃないか?」
響「そうか……そんなに私と飲みたくないのか」
提督「飲みたい! 響ちゃんと飲みたいです!」
響「静かに。電が起きちゃうよ」
提督「ぐ……」
提督「言っておくけど、飲んだら電ちゃん運べないからな」
響「大丈夫、私が監視してるから」
提督「それは、響もここで寝るってことだよな」
響「うん。勿論さ」
響「ウォッカを浴びるほど飲んで、司令官がべろんべろんになった頃にベッドインして、足を絡ませて寝るよ」
提督「監視って何だっけな……」
提督「ま、俺が床に寝ればいい話だ」
響「待って、司令官にそんな真似させられないよ」
提督「しかしなあ……」
響「司令官は、酔ったまま私とベッドインすると、都合の悪いことでもあるのかい?」
響「まさかヘタレの司令官が、私の未成熟な身体に欲情して暴走してしまうとか」
響「そんな事は無いよね」
提督「だ、大丈夫、たぶんへたれるから……」
【ジェラシーの響き】
響「本当に、鳳翔とは何も無かったんだね」
提督「押し倒しちゃったけどな……」
響「そこで押し切れないのが、司令官だね」
提督「いや、大事な何かを失う気がしてな」
響「鳳翔は嫌がっていたのかな」
提督「……」
響「……そうか」
響「でも、それで良かったかもしれないよ」
響「何処かで聞いたことがある。向こう(ソ連)だったかな……」
響「『一時のテンションに身を任せる奴は、身を滅ぼすんだよ』ってさ」
提督「俺のソ連のイメージと違うんだが」
響「細かいことはいいさ」
響「あと怪しいのは……金剛か」
提督「いやいや、金剛はあり得ないって」
響「ひどいな。彼女が聞いたらなんて言うだろうね」
提督「あんな真っ直ぐな子、邪な目で見れるか」
提督「そんなことしたら罰が当たるよ」
響「確かに、提督と居る時はいい子だね」
提督「えっ……」
提督「待て、怖いこと言うなよ」
響「『フフフ、怖いか?』」
提督「怖い。天龍どころか龍田より怖いです」
響「煽り過ぎたかな……」
提督「おい」
響「大丈夫。此処の子たちは、いつも自然体だよ」
響「私の知っている限りはね」
提督「ちょっと酔いが醒めたぞ、まったく……」
響「そうか、まだまだいけるね」
響「はい、グラス持って」
提督「そういう意味じゃないってのに」
書き溜め投下終わり
この後は特に考えてないので、ご希望と需要が無ければ終了
提督「ヒラリヒラリと舞い遊ぶように、姿見せたアゲハ蝶~」
響「どうしたんだい、酔いが回ってきた私でもさすがにビックリするよ」
提督「ごめん、響より酔ってるかも」
響「今のは私の知らない歌みたいだけど……」
響「急に歌い出すなんて、何かいいことでもあったのかい?」
提督「いいことも何も……さっきから、ずっと響と飲んでるだけだろう」
響「……ふうん、そうか」
提督「待て、そういう意味で言ったんじゃない、にやけるな」
響「……ふうん、そうか」
提督「露骨にそんな顔すんなよ……俺が近寄った時の霞みたいだ」
響「大丈夫。好感度は雲泥の差があるから」
提督「あ、ありがとう……ってやっぱり霞は」
響「冗談さ。霞だって、司令官は嫌いじゃないよ」
提督「好きでもないんだな……いや、アレで好かれてるんだったら、むしろ困惑するけどさ」
響「ここに居ない霞のことは、いいじゃないか」
響「それより、私の好感度のことには触れないのかな」
響「司令官を嫌いじゃない霞が、泥だよ」
響「つまり、雲の私は……わかるよね」
提督「……」
響「偶には、うっかり口を滑らせてもいいよ、司令官」
提督「蝶を見てると、無性に悲しくなってしまうんだよ」
提督「宙を舞う姿……身軽にひらひらと、色を振りまいて踊る姿は」
提督「それはそれは美しいものだろう?」
提督「特にな、ヘレナモルフォってのが綺麗なんだよ」
提督「綺麗と言っても、羽根の片側だけなんだけどな」
提督「羽根を閉じている時はわからないけど、開いた時、飛んでいる時にな、青というか銀というか……とにかく美しい部分が見えるんだよ」
提督「……大事なのはここじゃなかったな、すまない」
提督「そんな素晴らしいものを見ていても、何故虚しい気持ちになるのかって言うとな……」
響「ちょっと待って、司令官」
提督「どうしたんだ、ここからが核心なのに」
響「わかってるよ。ごめん」
響「その前に、司令官の隣に行きたいんだけど、駄目かな」
提督「……ああ、構わないよ。おいで」
響「うん、спасибо」
響「司令官は意外と手が小さいね」
提督「……響の手は温かいな」
響「そうかな。確かに体温は高い方だけど」
提督「……蝶は美しくて、近くまでは飛んで来てくれるけれど……触れることは出来ない」
提督「もし触れたいなら、網を使って、無理やり捕まえるしかない」
提督「自分の欲求を満たすためにそうすることは、許されるのかな」
提督「彼らは、囚われの身になる為に生まれてきた訳じゃないのに」
提督「美しい蝶は、眺めているだけに留めるべきなのか、ってね」
響「それは、蝶だけの話じゃないね」
提督「そう思うかい」
響「司令官は、ポエマーでもなりたいのかな」
響「言っておくけど、似合ってないよ。詩を書くなら、風情漂う風貌じゃないと」
提督「……もっとはっきり言えと、そう言いたいのか」
響「司令官がへたれなのはわかってるから、いいさ」
響「言っておくけど、私たちは、蝶なんかじゃないよ」
響「本能のままに行動する彼らと違って、私たちには意志がある」
響「だから、こうして手を握っているのも、自分の気持ち」
提督「……そうか」
響「わかってくれたかな、杞憂だってこと」
提督「ああ、独りよがりだったかもしれないな、俺は」
響「よがるのはベッドの上だけにしないと」
提督「……」
響「正直、すまない」
響「そういえば、今思い出したよ」
響「司令官は、虫が苦手なはずだったよね」
響「ほら、この前執務室に出た虫……何と言ったかな」
提督「ああ……『ゲジ』な。思い出したくもない」
提督「つい足元を確認してしまうよ。名前を聞いただけでもね」
響「あと、私たちと散歩してる途中に、大きな『蛾』が飛んできたよね」
提督「あー……なんでだろうな、すげーまとわりついてくるよな」
提督「暁に馬鹿にされまくったな、そういえば」
提督「自分だって、同じ目にあったら慌てまくるだろうに……」
提督「それで、虫が苦手なのがどうかしたか」
響「少し考えればわかるよ、話の流れでね」
提督「んー……蝶の話してたんだよな……あ」
響「ふふ、そんなに虫が苦手なのに、蝶は好きなんだね」
提督「まあ……蝶は綺麗だからな」
響「……もしも、私たちが出会った時に」
提督「ん?」
響「司令官にとって、美しくなかったとしたら……」
響「存在を拒絶されてしまっていたのかな」
提督「……」
響「良かったよ。少なくとも、司令官にとっての『ゲジ』や『蛾』でなくて」
響「もしそうだとしたら……」
響「こうして晩酌に付き合うことも、出来なかったかもしれないからね」
提督「……妙なこと考えやがって」
響「仕方ないさ……もうこのグラスも、何杯目かもわからないもの」
提督「お前はな……いや、お前たちはな」
提督「大日本帝国海軍が誇った、歴戦の軍艦なんだ」
提督「美しくない訳がないだろう」
提督「それこそ杞憂だ。響は美しいよ、昔からずっと」
響「……ふふ、司令官は、昔の私を見たことはないはずだよ」
提督「写真でしか見たことはないよ……でも、生で見たかった、本当に」
提督「出来ることなら、タイムマシンに乗って、見て来たいくらいだ」
響「もう100年経っても、それは叶わないと思うよ」
響「申し訳ないけれど……今の私だけで我慢してもらえないかな」
響「昔の私より、物足りないかもしれないけどね」
提督「……そうだな」
提督「でもこうやって腕に収まる響が、俺にとっての響だから」
提督「海を往く姿も、戦う姿も、惚れ惚れするくらい格好良い」
提督「きっと、前の響きにだって負けないさ」
提督「たとえ、身体は小さくなったとしてもね」
提督「それにな……ロリコン提督にはこっちの方が良かったかも、なんてな」
響「……困った司令官だね、まったく」
響「本当に、困った人だよ……」
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