島村卯月「夢のチカラ (23)



 アイドル。

 アイドルって……なんだろう?

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卯月「おはよーございますっ!」

P「おはよう卯月、今日も元気いっぱいだな」

卯月「私ってば頑張ることしか取り柄ないですから……えへへ」

P「何言ってんだよまったく……ほら、凛も未央もなにか言ってやってくれよ」

凛「卯月は可愛いよ。ほら、まさにアイドルって感じで」

未央「そうそう! 笑ったところもー泣いちゃうところもー超可愛いから!」

卯月「も、もうみんなして……ほら、プロデューサーさんレッスンの時間じゃないですか?」

P「ん、そうだな。よし凛と未央は車で待っててくれ、俺は卯月にちょっと話をしたら行くから」

未央「なになに? ひょっとして……」

凛「ほら未央、邪魔しないの」

未央「あーうー」


卯月「あはは……えっと、お話ってなんですか?」

P「……ふむ」

卯月「えっと……?」

P「なぁ卯月。卯月はアイドルになりたくて養成所に通っていたんだよな」

卯月「はい、そうです」


P「今まで聞いたことなかったけど。どうして卯月はアイドルになりたかったんだ? うちのアイドル第一号としていろいろあって、忙しくてこういう話した事なかったよな」

卯月「ぁ……」

P「ん、時間は大丈夫だぞ、車にはトレーナーさんに待機してもらってるから。もう二人とも出発したんじゃないかな。……ってわけで午後にちひろさんが帰ってくるまで俺と卯月の二人っきりだ」



 アイドル。

 私にとっての、アイドル。


P「なぁ卯月。二年間いろいろやってきたよな。ニュージェネレーションとしてのユニットやアニバーサリーイベント、冬に水着着てみたり、ワンダフルマジックの時なんか俺さ、帰ってからまた泣いちまったんだぜ? だいの大人がやんになっちゃうよな、ハハ」

卯月「…………」

P「卯月?」

卯月「……プロデューサーさんは、夢って叶うものだと思いますか?」


P「そりゃこんな仕事やってる身だ、もちろん思ってるよ」

卯月「そう、ですか。……ですよね。……私がアイドルになりたい理由、これは凛ちゃんや未央ちゃん、ちひろさんや社長にだって話したことはありません。もちろんプロデューサーさんにもないです」
卯月「私ですね、その……小さい頃いじめられてまして」

P「いじめ!?」

卯月「あぁえっとそんなテレビとかで取りただされるようなのじゃないですよ。ただその日はちょっといつもよりエスカレートしていたんです。……そんな時にあの人が現れました」


P「あの人?」

卯月「プロデューサーさんも知ってますよね、伝説のアイドル日高舞さん」

P「日高さん……」

卯月「いじめから解き放ってくれたのが舞さんでした。学校にすぐ連絡して両親にも話をしてくださって。まぁ謝罪で終わりましたし私も引っ越しちゃったので、あんまり後ぐされみたいなのはないんですけどね」

P「その、ゴメンな。無理に聞いたりしちまって……」

卯月「いえいいんです、そのうちお話しないといけないなって私も思っていましたから」


卯月「その、ですね」

P「うん?」

卯月「笑わないでもらえますか?」

P「何言ってんだよ、こんな大事な話で笑うか」

卯月「えへへ、ありがとうございます。……私がアイドルになりたいと思ったのはそれなんです。当時の私は何を言ってもやめてくれないいじめに何もできませんでした。先生や家族に言うとかも、できませんでした。それなのに舞さんは現れた次の日には解決しちゃったんです」


卯月「私は舞さんに聞きました、なんでこんなあっさり……って」

P「日高さんはなんて?」

卯月「アイドルのチカラよって」

P「アイドルの、チカラ……」

卯月「だからその……もちろん今となってはわかるんです、それは別にアイドルのチカラとかじゃなくて大人の世界で話があったんだなって。でも当時の私はすっかり信じてしまって……えへへ」

P「そんなことがあったのか……」


卯月「高校からは養成所に通ってオーディションを受けたりして。だからプロデューサーさん、それにちひろさんや社長さんにはとっても感謝しているんです」

卯月「夢を叶えさせてもらいましたから」

P「なぁ卯月。俺から見たらさ、もう卯月は輝きすぎてて俺が隣にいなくてもいいんじゃないかって気がするんだ。ワンダフルマジック公演で言ったよな、あの階段も輝きで照らしてくれたら嬉しいですって。もうすごいんだよ卯月、俺から見たらさ凛も未央も輝きがさ」

卯月「……」


P「だから最近たまに思うんだよ。本当に俺が魔法をかけたのかって。ただ本当は卯月が自分自身の力で、血のにじむようなレッスンをしてきたからこそ、ここまでのアイドルになれ━━」

卯月「━━んっ、……えへへっ、ファーストキスですよプロデューサーさんっ」

P「なっ!? おま、お前いきなりなにしてっ」


卯月「私と最初にあった日の事、覚えていますか?」

P「は? そ、そりゃ覚えてるよもちろん。事務所にアイドル志望で電話をくれて面接に来てくれた時だよな」

卯月「なら、これも覚えていますか?」

P「髪ゴム……あぁ覚えてるよ。もう一個の髪ゴムプレゼントされてたって聞いて、もらった人教えてくれなくて。なら俺もって卯月にプレゼントしたんだよな」


卯月「それ実は舞さんからもらった髪ゴムなんです。アイドルになれるように願掛けですね」

P「なんだそうだったのか……って、そうじゃなくて卯月さっきのは」


卯月「私ワンダフルマジック公演の時、こうもいったはずですよ?━━プロデューサーさんが現れて、私の物語は始まりました。プロデューサーさんは、私に素敵な魔法をかけてくれましたよね! キラキラした世界で、私をアイドルにしてくれました。夢を、夢のまま終わらせないで、形にしてくれた。でも、夢はもっと大きいんです」


卯月「だからプロデューサーさん、私の夢、これからも一緒に叶えてください!……って。プロデューサーさんが見せてくれる魔法、大好きなんです。だって私、力強い歌声も、天性の魅力も持ってませんでした……でも、私の笑顔をほめてくれる人がいたんです。最初に見つけてくれたのはプロデューサーさん、あなたでした」


  
  アイドル。

  私にとっての、アイドル。

  笑顔のアイドル。世界中のみんなを笑顔にできるようなアイドルに。

  そしてやっぱり最初のあなたに、私のワンダフルマジック届けばいいなっておもうんですっ!

これにておしまいです。
卯月がアイドルに憧れた理由ってそういえば……。

ありがとうございました。

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