【艦これ】日向「ふーん、三隈か。よろしく頼む」 (99)


日向「あー、暇だな」の続編というか番外編になります
読んで無い方は話分かんないです

SS書いている余裕なんて本当は無いのに書きました
現実世界のタスクが詰まって死にそうですが書きました
書いてる時は凄く楽しかったです

このSSをたった一人の三隈スキーに捧げます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400340541

艦娘
彼女たちは人型故に兵器と人間の対立軸の上において曖昧な位置付けにある。
感情の存在は事態をより複雑にする。
絶対の答えは存在せず、艦娘を運用する立場にある人間によって、彼女らの扱いは大きく変化する。

「提督が大好き」

言い方が直接であれ婉曲であれ、初期設定の艦娘は皆こう答える。
彼女たちは単なる兵器なのか、それとも別の存在なのか。
艦娘自身の内にも、その絶対の答えはありはしない。

10月15日

提督が私を執務室へと出頭させたのは、着任して三度ほど出撃を経験した時の事だった。

「お前は俺の事をどう思う」

何の脈絡も無く唐突に降って湧いた質問に対して私は即座に適切な回答を返す。

「三隈は提督の事をお慕いしていますが?」

こんな質問は深く考える必要も無い。正直に答えればいいだけだ。

「……分かった。話はこれだけだ。行って良し」

余程の捻くれ者でない限り好きと言われて気を悪くする人間は居ない筈なのに。

「……失礼します」

提督の眉間には何故か大きな皺が深く深く刻まれていた。

(私は適切な回答をした筈なのに)

何故提督は機嫌を悪くしたのだろう。不可思議だ。

「やぁ、三隈」

「日向さん。お疲れ様です」

この艦隊の古参であり唯一の戦艦である日向さんと帰り道でばったり会った。

「今日の出撃は御苦労だったな。よく当てた」

「いえ。日向さんの予測射撃が的確で敵を追い込めたからこその着弾です」

「むふふふ、おだてるなよ。嬉しくなってしまう」

「本当の事ですよ」

「ありがとう。現状、殴り合いの砲撃戦が出来る大型艦は私とお前だけだ。頼りにしているぞ」

「はい、私も一日でも早く日向さんに追いつけるよう頑張ります」

「そんなに固くならなくてもいい。気楽にしろ」

「ありがとうございます」

「三隈は執務室からの帰りか?」

「はい。提督から呼び出しを受けていたので」

私の返事を聞くと日向さんは口角を少し上げ成程な、と呟いた。

「お前は提督に何を言われたんだ?」

お前は、の部分が引っかかる。

「お前は俺の事をどう思う、と」

「あっはっは! それは新しいな!」

「三隈以外の皆さんも何か質問をされるたですか?」

「ん? ああ、まぁそんな所だ。質問の内容はそれぞれ違うがな」

「そうなのですか……」

「で、お前は何と答えたのだ」

「三隈は提督をお慕いしてます、とお答えしました」

「そうかそうか……。ま、それじゃ駄目だろうな」

駄目? 何故駄目なのだ? 私は正直に答えているのに。

「もしかして提督は少し捻くれた性格をお持ちなのですか……?」

「捻くれていると言うか、純粋な奴なんだよ」

「純粋」

尚更分からない。ならば一体何が問題だったのか。

「純粋故に、他人の嘘に敏感なんだ」

「なっ……三隈は嘘などついていません!」

「本当か?」

「本当です!」

「悪かった。嘘というのは適切な言い方ではなかったな」

「さっきのは流石に少し頭にきましたわ」

「お前は嘘つきでは無く、自分の本当の気持ちに鈍感なだけだ」

「……それはつまり三隈が未熟者であるという事ですか」

「馬鹿にしているわけじゃないぞ。単なる事実だ」

「……日向さんの言っている事が三隈には理解出来ませんわ」

「ま、誰だって着任したては未熟者さ。気にすることはない」

何なのだ。この人達は私に一体何を求めているのだ。

「考えてみましたが、全然分かりません。三隈に一体どうしろというのですか!」

「ヒントをやろう。自分で考える事こそが、提督がお前に与えた課題を解く手掛かりになる」

「……狸に化かされているような気分ですわ」

「私はそろそろ行くぞ。この後は提督と二人で酒を飲むんだ」

「……はい。では」

「ああ、じゃあな。自分で考えるんだぞ」

日向さんはそう言い残すと執務室の方へ行ってしまった。

「……何なんですの、一体」

私は虚空に向かって愚痴を吐いた。

10月22日

また提督に呼び出しを食らった。

「三隈です」

「入れ」

「失礼します」

提督は時雨さんと一緒に日々の処務を行っていた。

「三隈さんお疲れ様です」

「時雨さんこそお疲れ様ですわ」

「三隈、出頭御苦労」

「いえ……」

「どうだ。この艦隊にも慣れてきたか」

「はい。艦隊運動やフォーメーションも順調に覚えています」

「そうか」

「はい」

「僕もこの前一緒に出撃したけど、三隈さんの射撃、完璧だったよ」

「ほぅ、そういえば日向も三隈を褒めていたな」

提督の口元が少し緩む。

「い、いえ。そんな、三隈なんて大したことはありませんわ」

「はは! 照れるな照れるな。これからも精進しろよ」

「……はい」

「では、行って良し」

「えっ? もう終わりですか?」

「終わりだが、逆に何かあるのか?」

「……また前みたいな質問をされるのかと」

「ああ、あれはすぐに答えの出るような問題では無いからな。今は聞かんよ」

「答えは……もう出ています」

「それはまだお前の答えではない。今日はもう下がれ」

「提督!!!」

「……」

「三隈は、提督の事をお慕いしています! それが私の本当の気持ちです!」

途端に提督の顔が険しくなった。しかしそれは、怒りというよりも悲しみに満ちていた。

「三隈、お前は俺のどこが好きなんだ」

「……具体的にどことは言えませんが……初めて会った時から好きでした」

「つまり一目惚れか」

「……はい」

「お前が俺に最初の挨拶をした時に好きになったのか?」

「…………はい」

「執務室に入って顔を見た瞬間にか?」

「も、もう恥ずかしくて死にそうですわ! 何故このような質問をされるのですか!」

「三隈」

「はい?」

「お前の感情は刷り込まれたものだ」

「……えっ」

「お前の気持ちは本物じゃない」

「違います。三隈は……三隈は提督の事を……」

「三隈」

「……」

「他人を好きになるのは、そんな簡単な事じゃ無いんだ」

「三隈、お前は俺をどうしたい」

「……どうしたいって」

「一目ぼれした俺と、お前は一体何をしたいんだ」

「三隈は提督の命令に従って、戦う事が……」

「それだけか?」

「……」

「キスしたい、触られたい、褒められたい、もっと一緒に居たい」

「……」

「好意は副次的に様々なものを伴うのが一般的だ。なのにお前は命令に従いたいだけなのか」

「……」

「それがお前の本当の望みなのか」

「……」

「お前は自分自身の気持ちについて深く考えたことが無かったんじゃないか」

「違います!!」

「おかしな話だろう。初めて会った男を好きになって、命令を聞きたくなるなんて」

「それは!」

「なんだ」

「それは、その、言葉の綾のようなもので」

「では、お前にとっての好きとは一体何なんだ」

「……」

「そんな辛そうな顔をしないでくれ。俺は聞いているだけだ」

「……」

「自分の異常さに気付いて貰えたか?」

「……」

「考えろ、そして気付け」

提督が何を言おうとしているのか分かる

やめて、私は、そんなの聞きたくない

「お前の俺に対する好意は、他人から刷り込まれた偽物の感情だ」

「あ、気が付いた」

私の視界には白い天井と、覗き込む時雨さんの顔があった。

「三隈は……」

「覚えてない? 三隈さんは執務室で倒れたんだよ」

「あっ」

「全く、提督ももう少し別のやり方をすればいいのに。僕はちゃんと警告したのにさ」

「……時雨さん、ご迷惑をお掛けしました」

私の知らない場所で生まれ私の中に存在する感情。
私はそれが恐ろしかった。
目の前が真っ暗になってしまうほどに。

「『俺は聞いているだけだ』って、確信犯じゃないか。全く」

「……」

「あ、三隈さんの代わりに提督にはお仕置きしておいたから」

「お仕置き……?」

「でもね三隈さん、全部が全部偽物なわけじゃ無いんだよ」

「?」

「偽物だと認識できる自分は本物なのさ」

そう言って、時雨さんは笑った。

10月28日

私は海の上で踊っている。

「砲雷撃戦を開始する! 敵は小型艦だけだ! 散弾の面斉射で行動不能にしてやれ!」

「「「「了解!!!」」」」 「クマリンコ!」

日向さんの指揮の元、近海に侵出してきた敵の排除するための戦闘の真っ最中なのだ。

「艦隊運動、砲撃演算を私のものと同期しろ! ……準備はいいな? よし! 各自分担された空間へ斉射、始め!!!!」

日向さんから共有されたデータを基に、それぞれが砲撃を開始する。
数秒の空白毎に、まるで壁が迫るかのような濃密な散弾の弾幕が展開される。

前から順に一隻、また一隻と敵は落伍していく。

相手が大型艦であればまた戦い方も変わってくるが、小型艦のみであれば一定距離を保ち、近づかなければ良い。

「三隈! 狙いすぎるな!」

「く、クマッ!!!」

今日は調子が悪い、の一言で済ませば実に簡単である。

あの日から余計な事を考えすぎてしまう。視野モニターに示された宙域に向け射撃するだけで良い筈なのに、敵の動きを追いすぎる。つまり、狙いすぎる。

簡単な面斉射すら満足にこなせないのだから、より精密さを求められる点の射撃は言わずもがなである。

魚雷の調整は苦手だったが、砲撃に関しては密かに自信を持っていたのに。

「敵小型艦は全て撃沈、戦闘終了」

私のミスが響き敵の魚雷発射可能位置まで接近されかけたが、なんとか無傷で勝利した。

「さぁ、帰って風呂で反省会だ」

「帰りも気を抜くんじゃあないぞ」

「うっせぇ長月。んなこと皆分かってるよ」

「ムッキィィィィ」

大浴場

「あー、よっこらせー」

「クマリンコォ……」

「三隈さんは何と言っているですか?」

漣さんにはまだ私の言葉が伝わりにくいらしい。

「いい湯だなぁ、と言ってるんだよ」

時雨さんは理解出来るらしい。

「う~みだ女の艦隊勤務♪」

「「「「にちげつかーすいもくきんどー」」」」

「ふふ」

「あはは! 僕、この歌好きだよ」

「文月も好きぃ~」

「俺が作った歌もすっかり広まったな~」

「うわっ、これ木曾が考えた歌なんですか」

「魚雷馬鹿っぽい歌で良いと思うぞ。馬鹿な内容がピッタリだ」

「てめぇコラ長月オラァ」

「三隈、元気が無いじゃないか」

「すいません日向さん。今日も上手く砲撃が出来ませんでした」

「おいおい、私個人に謝ってどうするんだ。謝るなら皆に謝ってくれ」

「……」

「私達には心があるのだから調子が悪い時もある」

「……ありがとうございます」

「私が砲撃指南をしてやる。幾つか気になる部分もあったからな」

「にしてもいい湯だな」

「……はい」

10月29日

いつもの出撃の任務をこなした後、日向さんは私の練習に付き合ってくれた。

「三隈! お前は砲撃時の姿勢が悪いんだ! 重心を意識しろ!」

「クマっ!」

「ダミーとの速度差も意識して射撃しろ!」

「はいっ!!」

「お前は今まで無意識に行っていた調整が出来なくなっている!」

「はいっ!」

「理由は大体察しがつく。私も同じ事があったからな」

「……」

「だが、戦場で出撃班を危険に晒すわけにはいかん。何としても勘を取り戻して貰うぞ」

「……クマリンコ!!!!!」

「ふっ……ああ、そうだ。やろう! 三隈!」

「私達は艦娘だ。戦うために生まれた存在だ」

「はい」

「……例え一部がプログラミングされているとしても、存在意義を放棄していい理由にはならない」

「……」

「何もかも嫌になり戦う事さえ放棄してしまえば、私達の生きる価値は本当に無くなってしまう」

「……」

「今は辛いかもしれんが、絶対に諦めるなよ。生きていればいつか報われる」

「……はい」

「私はお前に居なくなって欲しくないんだ」

「……ありがとうございます」

砲撃の勘を失った事は否定しようも無い事実だ。

何かを得ることは何かを失う事であると誰かが言っていた。

では私は一体何を得ることが出来たのだろう。

その後、日向さんの指南の甲斐もあり、私の砲撃の腕は上達していった。

以前の私は何も考えずに砲撃をしていて、自慢でも何でもなくそれなりの腕前があった。

だが今はそれを基礎から見直し、意識すべき場所を考えられるようになってきた。

まだ以前ほどの腕前には届かないが、このまま練習すれば『それなり』を越えて成長できるような気がした。

11月17日

「三隈さん。こんにちは」

「クマリンコ!?」

五航戦の姉の方と通路で偶然出会った。

彼女は言葉遣いが丁寧で、優しげな印象を受ける。
同時に提督と妹の関係を取り持つために振り回され、いつもオロオロしている印象も強い。

昨日風呂場で日向さんと口論になり、泣いたという話を木曾さんから聞いていた。

日向さんが提督の事を好きなのは知っている。
提督がどうやら翔鶴さんに執心している事も私は知っている。

私は自分に親身になってくれる日向さんに感謝している。
気持ちで言えば日向派の艦娘だ。
日向さんを困らせる奴にどう対応すべきなのだろう。正直迷った。

「み、三隈に何か御用でしょうか」

「いえ、用という程のものはありませんがお見かけしたので」

「そうですの。それはありがとうございます。では、これで」

「……待って下さい」

「みくまっ!? ま、まだ何か?」

「私はもっと三隈さんとお話したいです」

「……」

「三隈さん。月が綺麗ですね」

「……ええ」

何故私は日向さんの敵である五航戦の姉と一緒に中庭で月を見ている。
何故こうなった。

「でも月は太陽が無ければ輝きもしない」

「……」

「月は儚くて嫌いです」

嫌いです。

翔鶴は確かにそう言った。彼女がネガティブな発言をするところを私は初めて見た。

「……翔鶴さん。あなたはお馬鹿さんです」

「えっ」

「もしもとか、その類の言葉はお馬鹿さんと不満を持った未熟者の使う道具です」

「……」

「過去があるから現在があるように、今があるから未来があるのです」

「……」

「えーっと、その、そうですわね、三隈が何を言いたいかというと」

「……」

「と、とにかく! 太陽が無ければ我々だって存在しません! だからもし太陽が無かったら、などとお馬鹿な想定はしない事です!」

「……」

「……と三隈は言いたかったのです」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「ふふっ……」

「……もう」

「ふふふっ!! あはははは!」

「……そんなに笑わないで下さいまし……」

「す、すいません! 三隈さんのおっしゃることが何だかおかしくて……!」

「……自分でも自覚していますわ」

「ふぅ」

「……貴女がそんなに笑う所は初めて見ました」

「三隈さんと二人でお話しする機会はありませんでしたものね」

「……そうですわね」

「三隈さんって、とてもユニークな方だったのですね」

「三隈はそんなつもりはございません!」

「何だか、胸のつかえが少し取れた気がします」

「……それは良かったですわね」

「三隈さんのお陰です」

「……」

「良かったらまたこうして二人でお喋りをしませんか」

「……構いませんわ」

「……ありがとう」

そう言って微笑む翔鶴さんはとても綺麗でした。

白い髪が月の光で濡れたように輝き、整った顔は笑っているのにどこか悲しげで儚げで、

この世のものと思えない程で、私は心の底から美しいと感じました。

内容なんてまるで無い会話でしたけれど、私と翔鶴さんの心の距離は今までよりぐっと縮みました。
二人で共に時間を過ごす行為は、とても良いものなのですね。

11月19日

「というわけで翔鶴を助けに行くぞ。明朝には出撃だ。出撃の準備をしてくれ」

「弾薬をケチるなよ。厳しい戦いになる」

「北の海か、懐かしいな。俺の庭だぜ」

「沈むなよ。心臓発作起こして死ぬぞ」

「はぁ!? 沈むわけねーだろ!?」

「まぁまぁ二人とも」

「戦うのは温かい海だ。だが念のため防寒着も持って行け」

明確な軍紀違反であるこの出撃に誰も反対しませんでした。
勿論私も。
そういう空気に強要されているわけでは無く、純粋に仲間を助けなければと思いました。
翔鶴さんを失うなど、考えたくもありませんでした。
最悪味方との戦闘になってでも取り返すつもりでした。

艦娘が、軍属の我々が一体何を言っているかと思われるかもしれませんが、あの時の私はそれ位の覚悟を決めていました。
他の方も多分同じでした。……というか同じだったらいいな、と思いますわ。

太平洋の波濤を乗り越え、乗り越え、何度かの補給を受け長い船旅もようやく終わろうかという時、

先頭を行っていた長月さんが「単冠が燃えている」と叫びました。

提督は即座に状況を理解し出撃班を奇襲班と救援班に分け、即座に攻撃を開始しました。

「むっ、おい君! 翔鶴を目視したぞ!」

「なにっ!? どこだ!」

「基地のすぐ傍だ。防空戦をしているようだが、圧倒的に不利だ。味方艦載機がもう居ない」

「三式弾で援護しろ。俺は駆逐艦で装備を届けに行く」

「駆逐艦では良い的だ。危険だぞ」

「お前らの砲撃の腕に期待しているんだよ。言わせるな」

「ふん」

「任せたぞ」

「……三隈、聞いていたな」

「……」

「私とお前の特訓の成果をついに見せる時が来たぞ」

「……」

「三式弾は知っているだろう? 中に焼夷弾子が詰まっていて、昔と違い指向性を我々で調整できる」

「……」

「これにより艦娘の主砲による対空戦闘は格段の向上を見た訳だが」

「……」

「今回は設定を少しでも誤れば翔鶴と提督に3000度の雨が降り注ぐわけだ」

「私はやる。提督も、翔鶴も、例え片方でも私は失うわけにはいかない」

日向さんは喋りながら砲撃に必要な緒元データを入力し微調整をしている。

「……失ってしまえば私は彼の隣に居られないからな」ボソッ

「? 今何と?」

「それにだ、翔鶴も我が艦隊の一員であるわけだから見捨てるわけにはいくまいよ」

「……ええ、おっしゃる通りです」

「三隈、やれるか?」

「はい! 必ずやり遂げます!」

絶対に守る。守り抜いて見せる。

「三式弾を撃った経験はあるか?」

「今日が初めてですわ」

「ふっ、初物とは縁起が良いな。以前三式弾を撃った時の私のデータを送る。参考にしろ」

「はいっ!」

戦闘時の艦娘同士のデータリンクは本当に助かる。
艤装が無いと使えない為日常生活では役に立たないが、戦闘時には抜群の効果を発揮する。

「大体分かりました」

「早いな。二秒かかってないぞ」

「いつも日向さんを見ていますから、大体想像はつきましてよ」

「軽口を叩く余裕があるのは素晴らしい。私はもう砲撃の緒元入力を済ませたが、お前はまだだろう。私と同期するか?」

「いえ、こちらでも今完了しました」

「砲弾は」

「装填済みです」

「……やるな」

私の心はただ穏やかでした。

目の前で聨合艦隊の存亡をかけた戦いが、仲間の命を左右する戦いが行われているとは思えない程に、穏やかでした。

燃える単冠基地、

少し離れた所で響く砲撃音と爆発音、

隣で砲を構える日向さん、

肌を撫でる北の海の冷たい風、

一緒に流れてくる磯の香り、

自分の胸の鼓動、

私の気持ち、

そして私自身

世界は全てが一つに繋がって、全てが私の中に入ってきて私はそんな全ての一部で

「てぇっ!!!!!」

今ここに確かに存在しているんだ、生きているんだ

「クマリンコ!!!!」

そう感じました

人工の雨は敵艦載機群のみに的確に降り注ぎ燃やし尽くした。

「うむ。我ながらいい着弾だ。そう思うだろう? 三隈」

「クマッ!」

「お前の着弾も素晴らしかったぞ。良くやった。もう私が教えることは何も無い」

「……はいっ! ありがとうございます!」

「さぁ、我々も敵と殴り合いでもしてみよう」

「……と話していれば、敵の方からいらっしゃいましたね」

「……」ニタニタ

「どれ、敵の新型戦艦……ワ、カ、ヨ、タ、……レ級でいいのか? 相手になろう!」

「クマリンコ……」

「よし、三隈、その意気だ」

敵の新型戦艦は極めて強力な存在だった。
まず艦載機を放ち、雷撃で我々を驚かせ、強力な砲撃、分厚い装甲、そして耐久力。
何もかもが凶悪なのだ。

「ちぃっ、砲撃するにも艦載機が鬱陶しい! まずは艦載機から何とかしなければ」

「ドーム状に三式弾を放ち一掃しましょう!」

「良いな!」

「演算は私がします! 日向さんは時間稼ぎを!」

「合点!」

対空砲の多い日向さんの方が、時間稼ぎには適任だろう。

「終わりました! 同期してください!」

「よし! ……うん、行けるな。いつでも言ってくれ!」

「はい! ……発射ぁ!」

背中合わせでお互いの三式弾を発射する。
撃ち出された三式弾は設定通りの場所で設定通りに展開し、光と熱のドームを形成した。
周囲を飛び回っていた艦載機の大半を巻き込むことが出来た。

「……綺麗だな」

日向さんは小さくそう呟いた。

「……」ニタニタ

熱をものともせず、ドームの中にレ級戦艦が突っ込んできた。
航空機に気を取られている我々の不意を突いた形で奇襲が出来ると考えたのだろう。
確かにゼロ距離であの口径の砲撃を食らえば私達でも即機能停止に陥る。

だが

「残念だな。三隈はお前の行動を読んでいたんだよ」

「クマリンコ」

「!?」

全門集中での一斉射。
日向さんには徹甲弾頭を使うよう、同期した時に伝えておいた。

爆音と閃光

発射した砲弾の実に八割が命中し、轟沈確実かと考えていたが、

「……!……!!!」

現実は甘くない。

レ級は苦しそうに悶えていたが、過大に評価しても中破、大破には到底及ばない。

……あれを食らってまだ動けるとは、信じられない。

「……!!」

苦し紛れに雷撃をされ、結局は逃がしてしまった。

失態だ。

「お、あの砲撃音は46㎝砲か。武蔵が出撃したようだ。反撃が始まるぞ」

「……」

「ふぅ、何とか守り切れたようだな」

「……」

「そう悔しそうな顔をするな。あんな化け物相手に引き分け以上の勝負をしたんだ」

「……ですが次にはもう同じ手は通じません」

「基地に帰ってから対策を練ろう。情報も時には強力な武器になる」

「……」

12月1日

返ってきた翔鶴さんはまるで別人のようだった。

以前は見えていた弱さがまるで無くなり、強くなったように見えた。

……それでも私は、そんな彼女の姿にどこか儚さを感じずにはいられなかった。

艦娘はそう簡単に変わらないという事だろうか。


「日向さん、ごきげんよう」

「あ、三隈さん。こんにちは」

「綺麗な満月ですこと」

「ええ」

「こんな月夜は、この三隈と少しお喋りなどいかがでしょう?」

「是非」

少し遠出して海辺のベンチを見つけ座った。

冬の海は風が寒いですが、艦娘には大したことはない。


「寒くても別に風邪を引くわけではありませんのに、寒さはしっかりと感じるのですね」

「その辺りは妖精さんのこだわりなのでしょう。……そうとしか説明できない機能が我々には多すぎます」

「ええ、私もそう思いますわ」

「……三隈さん。私を助けに来てくれてありがとうございました」

「そんな深刻そうな顔をせずに。私は望んで行ったのですから」

「三隈さん達が居なければ、私は今頃北の海に沈んでいました」

「だーから、翔鶴さん」

「?」

「仮定の話は無し、と以前お伝えした筈ですわよね」

「……確かに、そうですね」

「それに、助けに行ったのは私だけではありませんよ」

「……はい」

「単冠から帰ってきて、翔鶴さんは強くなったように見えますわ」

「……」

「でも何か困ったことがあれば、いつでも三隈に相談なさい」

「……三隈さんは何でも御見通しなのですね」

「的確な砲撃をするには未来を読む必要があるのです」

「ふふふ……そうなんですね」

「ええ、そうなんですわ」

ふと提督の言葉を思い出した

「お前の俺に対する好意は、他人から刷り込まれた偽物の感情だ」

悔しいけれど、提督は正しかった

日向さんに翔鶴さん

お調子者の長月さんに、ああ見えて意外と乙女な木曾さん

まだ仲良くは無いけど瑞鶴さん

文月ちゃん、皐月ちゃん、漣ちゃん、曙ちゃん

私はいつの間にかみんなの事を好きになってしまっている

今なら提督の言葉の意味が分かる

あの時の提督に対する好意が偽物であると気付けるほどに

私はこの艦隊が大好きだから

続編きてるじゃんいいぞーこれ!!!!

「翔鶴さん」

「何でしょう」

「月が綺麗ですわね」

「ええ」

「翔鶴さんは月がお嫌いですか?」

「昔は嫌いでしたが……今は、誰かが傍に居てくれるのなら悪くないなと思います」

「全く、前のように嫌いだとおっしゃれば論破して差し上げたのに……しかも答えをまで先読みするなんて」

「同じ答えを持っているとは奇遇ですね」

「貴女には敵いませんわ」

「こういうのは勝ち負けではないですよ」

「三隈はただ追いつきたいだけです」

「それは失礼しました」

「何て憎たらしい」

「……」

「……」

「ふふふ」

「うふふ」

月の女神は微笑む

儚げで、強く、優しく、命を抱き締めるかのように柔和な雰囲気を持った彼女は、私の心に静かな歓びをもたらす


彼女に私はどう見えているのだろうか

恥ずかしくてとても聞けないけれど

いつか聞いてみたい

聞けるような自分でありたい

そう思える私はここに居て、確かに生きている

海の匂いを私は感じた


END


相変わらず雰囲気がいいなぁ

>>50の日向さんは翔鶴さんの間違いかな?

後半の間違いラッシュが凄い。すまん。

日向さんじゃなくて翔鶴です

投稿スレに貼った方も載せときます

時折、夜に日向と囲炉裏の部屋で酒を飲むようになった。
誘うのは彼女からの時もあるし、俺からの時もある。
ちなみに今日は彼女からだった。

部屋では囲炉裏の火が唯一の光源になる。
火の温かみと独特の匂いを持ったこの部屋を俺は気に入っている。
多分、彼女もだ。

俺の隣に座り、口元に杯を運ぶ彼女は妙に艶やかである。
彼女は足を崩して胡坐をかいているが背筋はピンと伸び、だらしなさ一切ない。

「ん? 私の顔に何かついているか」

「……いや。それより今日の出撃はどうだった」

「まぁまぁだよ」

「まぁまぁ、か」

会話は途切れる。
静寂の中では膨張した空気が薪を割く音がよく響く。
会話の多さは関係の良さを保証するものではない。
少なくとも俺はそう思うし、彼女との静寂は苦痛ではない。
彼女にとっても静寂は苦痛でないと信じていた。
だからこそ二人で酒を飲めるのだと。

だが今日、彼女にとって静寂が俺と同じ意味を持つかどうか少し疑問になった。
何故なら、

「……君、海の匂いが分かるか」

と彼女は静寂に痺れを切らしたかのように、不意に俺に問うたからだ。

「磯の香りという奴だろう」

「違う。海の匂いだ」

「その二つは違うものなのか?」

「磯の香りは海の匂いの一部だよ」

「成程、内包しているんだな」

「海の匂いは……凄いぞ」

「凄い、とな」

「良いとか悪いとか、そんな次元のものじゃない。もう言葉で表せない」

「……へぇ」

日向は手元の杯を呷り、目を瞑る。
彼女なりの『私の話はこれで終わりだ』という合図だ。

ふむ。今のは口下手な彼女なりに精一杯喋った方だろう。

良い悪いを超越した次元にある匂い……想像もつかん。

普段ならこれで終わりなのだが、今回は気になる。興味がある。

「もっと説明が欲しい。全く想像できん」

彼女的に終わった話を掘り下げてみる。

「説明だと? 君は欲しがりだな」

俺の求めに対し、日向は意外そうに答える。

口元は少し笑みを湛えているような気もする。

妙に悔しい。

「君の為に付け加えると……人間にとっての母親の匂いって奴なのかな」

「それは確かに偉大だ」

「磯の匂い、戦う時の敵の匂い、味方の匂い、自分の匂い、機械とオイルの匂い、まだまだある」

「多いな」

「あーくそ、もう思いつかん。私は頭が悪いな」

「そんな事は無い」

「……ありがとう。で、そんな色々が混ざり合ったり合わなかったりする匂いが海の匂いだ」

「それは母親と言うより、お前が生の充足を感じる匂いだろう。俺には絶対に分からんじゃないか」

「君にも分かるとは一言も言ってないだろう」

「……確かにな」

「ふふっ」

彼女は一度杯を呷り、また続ける。

「四方を見渡してもすべて海、海、海」

「うん」

「自分なんて本当は存在しないんじゃないかと思う時がある」

「うん」

「そんな時、海の匂いを感じると自分が生きている、確かに存在しているなと思う」

「うん」

「匂いを感じる私は確かに存在しているからだ」

「見事な存在証明だ」

「茶化すなよ」

「本気で言っている」

「……なら良いが」

「あー、俺も海の匂いとやらを知りたいな」

「知れると良いな」

「しかし何故急に海の匂いの話を?」

「……この場で話す内容で唐突で無いものがあったか」

日向は少し不機嫌そうに答える。
これは妙だ。


「確かにいつも脈絡は無いが、それにしても急だったからな」

「いつも通りだ」

「いや、急だった」

「いや、いつも通りだ」

上記のような不毛なやり取りを十回ほど繰り返した後、彼女はようやく正直になった。

「君は本当にしつこい男だな。艦娘に嫌われるぞ」

「で、何故海の匂いの話をしたんだ」

「……海の匂いを感じたんだよ」

「……この場でか?」

「……ああ」

「……成程」

「……」

「案外、俺はもう海の匂いとやらを知っているのかもな」

「……どんな時に感じるんだ」

「日向と一緒に居る時とか」

「……君は恥ずかしい奴だ」

「お前もな」

彼女は照れ隠しに酒を飲む。

「……いつも君から話を振ってもらうし、今日は少し趣を変えようと思ったが失敗だった」

「そんな事を気にしていたのか」

「よりにもよって海の匂いの話などすべきではなかった!」

火の明りで照らされた彼女の顔は、心なしか少し紅潮して見える。
隙の無い彼女だからこそ、たまに見せる隙が実に愛らしい。

夜は静かに更けて行く。

ここのところ色々な事が手につかなくて困っている。
原因は分かっている。
提督にキスをされたからだ。
堤防から二人で海を眺めながら会話していた時、唐突にされた。

驚きすぎて前後にどんな会話をしていたかも忘れてしまった。
嬉しかったのだが、あのお堅い提督が? 何故?
あれから提督は何事も無かったかのように振る舞うが、私は平気ではいられない。

部屋のドアを叩く音がした。
在室を告げ、入室を許可する。

「木曾、少し話がある」

来客は長月だった。

「何だ」

「明日の出撃、私は出られそうにないから代わって欲しいんだ」

「代わるのは別にいいが……何かあったのか」

「艤装の調子が悪くてな。魚雷発射のタイミングが妙にずれる」

「妖精には?」

「今から言いに行くつもりだ。あいつら艤装全部レストアするから明日には間に合わない」

彼らならやりそうだ。妖精は少し細かいところが気になりすぎるのだ。

「俺も昔似た様な故障があったから、原因に心当たりがある。少し見てもいいか?」

「おお! それは助かる! 出来る事なら直してほしい」

「期待しすぎるなよ」

「なぁ長月」

艤装の魚雷発射管の反応が合わない原因は多分ここだろうな、という場所をいじりながら世間話をする。

「ん~」

「お前キスしたことあるか?」

「……はぁ?」

「……聞かなかったことにしろ」

「木曾、お前、誰とした」

「あ、これだ」

発射装置の一部が予想通りに故障していた。

「技官妖精にここの予備パーツを貰えばいつも通り動作する筈だ」

「ちょっと待て」

「何だよ」

「したんだろう」

「してないよ」

「司令官か! 司令官としたんだな!?」

「だったら何だよ」

「前から司令官はお前の事を他の艦娘とは違った目で見ていると思っていたが……」

「……そうなのか?」

「くぅぅぅ、司令官はこんなチンチクリンのどこが好きなんだ」

「お前にチンチクリンなんて言われたくねぇよ」

「うるさい馬鹿木曾」

「一方的に絡んでキレられても困る」

「……どうだったんだ」

「は? 何が」

「キ、キスだよキス! やっぱり唇にその、あれするんだよな」

「……まぁな」

「……気持ち良かったか?」

「艤装はもう直したし帰れ」

「やだやだやだ! 聞きたい聞きたい聞きたい!」

長月は意地でも帰るまいと背を床に付け手足をジタバタと振りまくる。

「戦闘中のお前にこの姿を見せてやりたいよ」

「それとこれとは別なんだ!」

「分かったから部屋から出て行ってくれ」

「……そうだ」

「何が?」

「私が木曾とすれば間接的に司令官とした事になる」

「ならねぇよ」

この駆逐艦はなんと馬鹿な事を言うのだ。

「頼む木曾! 今度私の戦果お前にやるから!」

「司令部への虚偽報告じゃねぇか」

「じゃあ諭吉! 一万円あげるから!」

「お前にとって戦果は一万円と同等かそれ以下なのかよ」

「くぅぅぅぅぅぅ」

「無駄無駄。とっとと帰れよ」

「……五連装魚雷発射管」

「えっ」

「私が持っている五連装酸素魚雷発射管装備をやる」

「なんでそんな高価なモン持ってんだ!?」

「私の虎の子だ。仲良しだった島風がここから転属する時に譲ってもらったんだ」

「装備の個人所有って認められてたか? 規律違反じゃないかそれ……」

「細かい事は気にするな」

61㎝五連装酸素魚雷

それは水雷屋の夢
あの酸素魚雷を、しかも一度に五本も発射できるのだ

「……」

「欲しいか欲しくないか、YesかNoかはっきりして貰おう」

「ほ、欲しい!! 俺は五連装装備が欲しい!!」

重雷装したって俺は所詮、一人の水雷屋なのだ。
どう足掻いても魚雷には勝てない。

「なら……自分がどうすれば良いか分かるよな?」

「……好きにしやがれ」

「ベッドで横になれ」

「……」

俺は屈辱を我慢しベッドに身を投げ出す。

「良い子だ」

長月はいやらしい笑みを浮かべながら俺の上へ馬乗りになる。
顔と顔が相対し、緑の柔らかな髪が下りてくる。彼女がいつも使う柑橘系のリンスの匂いがする。
機械仕掛けの心臓は緊張からか鼓動を強める。
長月も自分が作り出した異常な状況に興奮しているようで、眼差しは明らかに冷静さを欠いている。
見つめ合い、互いの荒い呼吸音だけの時間がしばらく続いた。

「……いくぞ」

「……うん」

最早どちらがより大型艦であるか等関係無かった。

柑橘の匂いをより強く感じた後、唇に柔らかな圧力があった。

提督のより柔らかい気がした。

よく分からない何かに「ごめんなさい」と心の中で謝罪した。

執務室のドアを叩く。

「入れ」

野太く力強い声が中から返ってくる。

「よう」

「おう、木曾か」

「今時間いいか?」

「ああ。十分ほどなら」

「十秒で良い」

「?」

「俺の顔を見ろ」

でもやっぱり、俺は提督とするほうが好きだと分かった。


小休止

木曾とキスをした。
理由はみなまで言うまい。
私自身、場の空気に当てられたとしか言いようのない行動だった。
自分でも理解に苦しむ。

「う~む」

であるからして目を瞑り腕を組み首をかしげ、語尾を上げて疑問形にした呟きの一つや二つ、出てもおかしくは無いわけで。

「結局、約束通り五連装発射管も持っていかれたし」

確かに木曾の唇は柔らかかったが、冷静に考えてあの行為が駆逐艦にとっての五連装発射管と同程度またはそれ以上の価値を持っていない事は確かである。

「すまない島風」

一時の快楽に身を任せ、思い出の品を失ってしまった事実を認め親友に詫びる。
だが島風よ心配するな。あんなモノ(形)が無くとも我々の仲は不滅だ。

「そういう問題じゃないか」

自分の中で弁解が不可能であると悟り一段落ついた時、

「ん?」

食堂に向かう私の前に、にゃあ、とばかりに猫が躍り出た。

「にゃあ~♪」

つい笑みと猫語が零れる。この生き物は愛らしくて実に好きだ。まるで私ではないか。

「お主は一体どこから来たにゃあ?」

足を止め膝を折り、猫を撫でながら問いかけるが、彼もしくは彼女はにゃあとしか答えない。

「にゃあにゃあ~♪」

「長月、何やってるんだい?」

「にゃっ!?」

「猫と喋ってたの?」

「猫と喋れるわけないだろう」

「いや、喋ってたじゃないか」

「聞き間違えだよ」

「ふーん」

「……」

「長月も意外と子供っぽい所があるんだね」

時雨の声は、目は、明らかな嘲笑の色を帯びていた。

「ぐ、ぐぐぐぐぐぐ」

「ま、可愛くて良いんじゃないかな」

私は確かに所詮駆逐艦だ。それでも誇りはある。
大型艦の奴らに軽んじられたくないし、同型艦からも尊敬されたい。

だから、こういうのは我慢ならない。

「見なかったことにしろ」

「え~、どうしよっかなぁ~」

「私は硬派で通っているんだ! イメージが崩れては困る!」

「……長月が僕のお願い聞いてくれるなら、考えてもいいよ」

時雨に1諭吉をカツアゲされてしまった。思わぬ出費である。

「だがしかし、これも私の硬派なイメージの為」

この艦娘は、カツアゲされる時点で硬派でない事に気付かない猫並の脳の持ち主である。

「お! 今日の夕飯はチーズカツか」

これは嬉しい誤算。チーズカツ、その他諸々をトレイに載せると足早に空席を確保する。

「~~~♪ ♪♪」

この駆逐艦はチーズカツが楽しみで仕方ないらしく、鼻歌交じりに食事を開始する。

「ご機嫌だな長月。相席してもいいかな」

「日向か、いいぞ」

「では失礼して」

いらぬ事に気付いてしまった。

日向のトレイの上にあるチーズカツは、私のカツより大きい。

……私も選びうる限り、周りと比べて大きいチーズカツを選んだつもりだったが。

日向のものは尚大きい。

もしかして戦艦と駆逐艦で食事にまで差がつけられるのか。

実は戦艦用には分量の多い食事が用意されているのか。

いや、そんな話は聞いたことも無い。だがしかし、現実にアレは私のものより大きい。

「……なんだ長月。私のチーズカツを熱心に見つめて」

「見てないぞ」

「ああ、欲しいのか?」

「いらん」

本当は欲しい。二枚食べたい。

「そうか」

日向は私の顔を見て、何故か微笑んだ。

「日向は今日何をしていたんだ」

「今日は非番だったから部屋でゆっくり寝ていた」

「へー」

「長月はどうだ」

「警備任務で二回ほど近海のパトロールだ」

「それは御苦労」

「上から目線でものを言うなよ」

「仕方ないだろう。お前が物理的に小さいのだから」

「そういう問題じゃない」

「冗談だよ」

「なんだ冗談か」

「長月、私のチーズカツをくれてやる」

「……施しは受けんぞ」

「私は今日動いてないから腹が空いてない。お前は働いて腹を空かせている」

「……」

「正直言うと私には食べられそうにない。だからお前が食べた方が合理的だ。そう思うだろ?」

「……確かに合理的だな」

「~~~♪」

「……」

幸せそうに二枚目のチーズカツを頬張る長月を日向は静かに見つめる。

「日向、何故笑っているんだ」

「……私はいま笑っていたか?」

「こっちを見てニヤニヤしてたぞ。私の顔に何かついているのか?」

「気にするな。私は頭がおかしいんだ」

「ああ、確かに」

「やっぱりチーズカツは返せ」

「なっ! さっきは食べられないって言ってたじゃないか! もう私のだからな!」

返さなくてもいいように、急いで残りを口に含む。

長月は頬一杯に食べ物を含み一生懸命咀嚼する。

「……やっぱり返さなくていい」

日向はその姿を見て、何か思う所があったようだ。

「まみももままえめむままま」(無い物は返せんからな)

「ぷっ……ああ、そうだな」

「もうま」(そうだ)

「味はどうだ。美味いか?」

「まま」(ああ)

「それは何よりだ」

日向は、また笑った。

午後十時を過ぎる頃、長月は明日に備えて床に就く。

「今日も色々な事があったな」

思い返すように一人で呟く。

「猫が可愛かったな。部屋で飼えないか司令官に相談してみよう」

鎮守府は原則的にペット厳禁である。

「時雨には危ない所を見られたが何とか威厳を保てた」

保てていない。

「戦艦の日向とも対等に会話することが出来ていた」

と思い込んでいる。

「チーズカツを二枚も食べる事が出来た!」

これは事実である。

「ここの艦娘は子供のような奴ばかりだからな、私がしっかりしないと」

頑張れ長月、負けるな長月。

「今日もいい一日だった。おやすみ!」


小休止


日向木曾長月の話は投稿スレ用にしてあるので、違う世界線の話だと思ってくれれば。

反応に感謝。

何か雑談スレの方が俺の話題で荒れてた。

面倒だけれど以前俺が喋った内容を見て欲しい。『』で括ったのが俺の発言な。


『結局お前らはどんな艦これSSが好きなんだ?』

『俺も日常ほのぼの系が好きです
少し前に終わった五航戦と日向が主役のSSは好きだった

シリアスほのぼのとクロスオーバーでおすすめあったら教えて欲しい
クロスオーバーはなるべく完結済みのを頼む』

↑読者の嗜好の調査と、単純に面白いSSを紹介して欲しかった。

流石に最初から自分のSS好きなんだが似た奴教えてくれ、とは言えなかった。

そんな事言えば誰もレスくれないのは空気読めない俺でも分かる。

でも好みの基準が必要になるし、自分の書いたSSを載せた。

ぼかして書いている辺りは良心のつもり。


『ワロス
そういうの嫌いじゃない

俺が書いたSSなんだが
【艦これ】日向「ああ、新しく入る五航戦姉妹か。よろしく頼む」
から続く話を読んで感想くれや

ぶっちゃけ最初に書いた日向五航戦云々は自分のSSの事なんだよ
自分で書いたのが自分の好みそのものだし、例として挙げたんだ』

↑個人的に自分のものと似ているコンセプトの作品をお勧めしてくれた奴が居たから、自分のも読んで欲しかった。

紹介されたのは艦娘の心に言及した作品で、中々興味深かった。テンションが上がった。

このレスの後、妙にスレが荒れて結局感想も書いて貰えなかった。



今回荒れて何が問題かって、正直、俺が何が悪かったのか全然分かってないのが一番の問題。

自分の書いたSSであると紹介しなかったら事が大きくならなかった事は分かるが、

それは結局感覚的に問題の回避の仕方を理解しているもので、問題の本質を俺は理解出来てない。

俺は一体何の問題を起こしたんだ? マナー違反だったらもう何も言えんが。

あと俺の事を「自分のSS好きすぎる君」と言った奴と、それに同意する奴らに言いたい。

俺は自分で好きだとも思えない自作SSを他人に見せる気はない。

お前らが自作SSに対してどういう意識を持っているか知らんが、お前ら基準でルール化したいなら雑談スレの最初に貼っておいてくれ。

後で不愉快な思いはしたくない。

君が気にすべきは作品に対するリアクションであって読者に対するスタンスではない。
俺は自作宣伝は何とも思わないしむしろ軽い作品解説ならば進んですべきだとも思う。確かに貴方は自演じみたことをしたかもしれないが議論を引き出す為であったのは分かるし事実望む方向の情報を得られた。
ただ、その後は荒れたと言える程か? 単純に話題が逸れただけのように見えた。
少し前から目に着いたが「話しは良いがお前が気に入らん」的な事を書かれて貴方は後半に目が行ってしまっているような気がする。
こんなろくな情報も得られない掲示板で相手の人格批判なんてちゃんちゃらおかしい。レス内容の的確な取捨選択した方が良いと思う。万人に好かれるなんてどだい無理、有用と感じたとこだけ見なよ。
読者にもっと鷹揚で居て良いと思うよ。
ま、要は応援してるってことだ。続きを期待してる

お前みたいな奴がすぐ反論してくれれば嬉しいんだが
ネットだと自分の都合の悪い意見ばかりが目について駄目だな……

有用な情報を本当にありがとう

期待に沿えるよう努力する

前のSSが終わってしまってからも未練がましく他に書いてる作品がないかと探してました。
また>>1さんのSSを読めて嬉しいです。応援してます。

ありがとう
俺も嬉しい

以前の作品の中で「ここの日向は本当にかわいいな」と言ったが訂正しよう。

ここの艦娘達は本当にかわいいなオイ

次は誰にスポット当てるのか知らぬが、俺みたいに>>1の作品を楽しみに待っている奴もいると覚えておいて欲しいぞ

乙クリマンコ
SS読む側(書く側もかもしれんが)に作者は常に平身低頭でいるべきだと思ってる奴らが必ず一定数はいるから「ん…悪くはない…良くもないがな」くらいに考えておけばいいんじゃね(適当)

じゃあ否定的な意見をいくつか
まず、自演臭いのが駄目だ
雑談スレ2の>>52>>71、アレはどう見たって擁護出来ないな
最初から自スレの宣伝だって言っとけば良かったものを、どうしてあんな形でやったんだ?正直理解に苦しむ
次に、レスの内容に癖があり過ぎると思う
投稿スレの>>869とか、本文でもないのに自分に酔ってる感じが凄まじい。あくまでも主観だけど
最後に、ここまで積極的に自スレを宣伝する奴が今までいなかったから、反発が強いってのもある
そもそもこの板は自薦が盛んに行われる環境じゃないしな
公共スレで、場所は違えど同じ物を二回も自薦したら嫌でも目に付く。事実俺は目に付いた訳で


ただまぁ、今までずっと現行で追ってきた位には>>1の作品は面白いと思ってるから、ぜひこれからも書き続けて欲しい

端から見たらなんか語りだしてて気持ち悪いから見るのやめよって感じ、と興味をもってスレを開いた自分の感想
速報に優しい人がいっぱいいてよかったね

自分の意見は上記の通りなんで。

投稿スレの>>869はうん。あれは。うん。酷い。テンション上がってたとしか言えない。

投稿スレで自薦したのはトリップがあるならつけて投稿してくれ、と言ってくれた人が居たから。
需要があったし良いかなぁと拡大解釈した。

俺自身、他の人から微妙な自演した人と思われて終わるのは嫌だったし。


投稿しているのが公共のスレという自覚が少し弱かった。

依頼出しちゃうか。
ま、次の作品に期待するよ。

>>1がもうこのスレで書かないって書き込んだわけじゃないんだし残しとけばいいんじゃない?書くつもりだったのに
HTML化されてたら困るだろうし

あ、次の奴すぐ立てるんで依頼出しました

こっちは元々三隈用でしたから

良かったら次スレへの誘導残してくださると嬉しいです。

了解です

今日の夜立て次第貼ります
このスレが落ちてなければ……


【艦これ】日向「さよなら」
【艦これ】日向「さよなら」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400591753/)

誘導こっちです。

HTML化を待って頂きありがとうございます。

>>1000でも行かない限り依頼だしても中々落ちないぜここは

それはそれとして新作!

乙です

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