竜族男「ロリが俺と結婚するって言って聞かない」(101)

 


 竜族の里


白竜族の幼女「おじさんおじさん」トテテテッ

竜族男「おー、シロー、どうしたー?」

シロ「あのね、わたし……、」

竜族男「んー?」


シロ「おじさんとけっこんしたい!!」


竜族男「」ブフォ

シロ「おじさんのおよめさんになりたい!」

竜族男「」





 固有名が二つある。気にしないでくれると助かる。

 

シロ「だめ?」

竜族男「………き、気持ちは嬉しいけどな、結婚は無理だ。出来ない」

シロ「どうしてー?」

竜族男「結婚ってのはな、大人しか出来ないんだ。シロはまだ子供だろ?」

シロ「んー……じゃあ、おとなになったら、おじさんとけっこんできるんだね!やったあ!」

竜族男「あ、いや、」

シロ「ふへへへ~!おとなっ!おとなっ!はやくおとなになりたいな~!」タタタタッ

竜族男「ちょ、まっ……シロ……」

竜族男「……………」

竜族男「ま、まぁ、すぐに忘れるだろ。うん」

 

 数年後

 竜族の里


白竜族の少女「おじさんおじさん」タタタタッ

竜族男「おー、シロー、どうしたー?」

シロ「私、大人になった?」

竜族男「なんだそりゃ。んなのまだに決まってるじゃねーか」

シロ「だ、だって!あれからちょっと身長のびたし!力も強くなったし!」

竜族男「あれからって……わからん事を言うな」

竜族男「確かに赤ん坊の頃に比べりゃでかくなったけど、お前はまだ子供だ。完全にロリ」

シロ「ううー、じゃあまだ出来ないのかー。早く大人になりたいなぁ……」

竜族男「出来ないって……お前さ、何がやりたくて大人になりたい言ってるんだ。大人って何かと面倒なんだぞ」

シロ「何でって……大人にならないとおじさんと結婚出来ないでしょ?」


竜族男「」

 
シロ「私ね、早く大人になっておじさんのお嫁さんになりたいんだー」

竜族男「お、おおお前それまだ覚えて、つか本気でっ!?」

シロ「えー?本気だよー、私」

シロ「おじさんも覚えててくれてたから、彼女作らなかったんじゃないのー?」

竜族男「は!?おまっ、かの、彼女ってお前!そもそも結婚とかお嫁さんとか彼女とかそんなのどこで覚えてきたんだよ!んで俺が彼女作らないのは--」

竜族男「--じゃなくて!俺はお前とは」

シロ「あ、そうだ。おじさん」

シロ「大人にならないと結婚は出来ないけど、その前だったら大丈夫、なのかな?」

竜族男「な、なななな何が大丈夫だって……!?」


シロ「おじさん、どうか私をおじさんの彼女にしてくださいっ!!」


竜族男「」


シロ「私、おじさんのためなら何でもするから!お願いっ!」


竜族男「」

 

竜族女「きゃあああ!おまわりさん早くうう!!いたいけな少女がロリコンの魔の手にぃー!!」


竜族男「!!ちがっ!」

竜族女「違うの?」ニヤニヤ

竜族男「違うわ馬鹿!あのな!シロ!彼女は無理!俺はロリを彼女にする趣味はない!」

シロ「!!お、おじさんは……私のことが嫌いなの……?」グスッ

竜族男「!!?……な、泣くなって……ほら、お前のことは嫌いじゃない。むしろ好きだって。--だけどお前ロリだし、」

シロ「じゃあロリじゃなくなったら彼女にしてくれるの?結婚しておじさんのお嫁さんに私はなれるの?」

竜族女「」ニヤニヤ

竜族男「ただ駄目です!年の差考えろ!」

シロ「竜族は長命だから、年の差は関係無くなるってみんな言うよ。ね、女さん」

竜族女「そうよねぇ~、身体さえ成長してしまえば年の差なんてねぇ~あ、ロリ体型の方がお好みで?」ニヤニヤニヤニヤ

竜族男「なわけあるか!お前はもう黙ってろ!」

シロ「おじさん、私が大人になるまで待っててくれる?」

竜族男「~~~、駄目だ駄目だ駄目だ!!結婚も嫁も彼女も却下!!却下だああああああ!!!」ズダダダダダ

 
竜族女「あ、逃げた」

シロ「逃げられちゃった」

竜族女「………………」

シロ「…………女さん」

竜族女「なあに?シロちゃん」

シロ「おじさん、本当は私が知らないだけで彼女とかいたりするのかな。私が知らないだけでお嫁さんがいたりしたらどうしよう」

竜族女「ふふふ~、大丈夫よ。奴は現在完全なフリー!一つだってバツはついて無いわ!」

シロ「よしっ、じゃあこのまま頑張らなきゃ!」

竜族女(シロちゃん可愛いし男は面白いし!今後が楽しみ楽しみぃ~!!)ニヤニヤニヤニヤ





 竜族の里
 木の下

黒竜族の少年「…………」キョロキョロ

黒竜族の少年(--いた。……また木の上で寝てるのか……)

 
黒竜族の少年「…………」スルスルピョイ


 木の上


シロ「…………」zzz

黒竜族の少年「起きろシロ。格闘術の時間だ。先生がお前を探している」

シロ「……うぅー……くろー?」ムニャムニャ

クロ「起きろ」

シロ「んー、……おはよー」パチッ

クロ「サボリはいかん。行くぞ」

シロ「どこにー?」

クロ「訓練所。格闘術の時間だ」

シロ「……嫌だ。格闘術楽しくない」

クロ「何でだ。楽しいだろ、格闘術」

シロ「楽しくないよ。痛いの嫌だし、」

クロ「おかしな奴だな。痛いのが嫌なら相手が手を出してくる前に殴り倒せばいいだろう」

 
シロ「相手が痛いのも嫌だ」

クロ「面倒な奴だな」

シロ「……おかしな奴で面倒な奴だよ、私はー」ゴロン

クロ「…………」

シロ「…………」

シロ「……行かないの?格闘術の時間なんでしょー?」

クロ「俺はお前を探して連れて来いと言われた。お前がサボるなら俺もサボるしかない」

シロ「わざわざ付き合わなくても良いのにー」

クロ「……俺は邪魔か?」

シロ「うん」

クロ「…………………………………そうか」

シロ「だってクロがいるのに一人でお昼寝は出来ないじゃん」

クロ「…………」

シロ「あ、じゃあクロも一緒にお昼寝しようよ。ここは涼しくて居心地が良いよ」

クロ「…………」

 
シロ「ほらほら!クロも寝転がって!大丈夫だよ、この木の枝は大きくて丈夫だよー?」クイクイ

クロ「……………」ゴロン

シロ「ふへへー、おやすみー、クロー」ニコッ

クロ「……………」ジー

クロ(何でこうも無防備なんだこいつは)ジーーー







竜族女「あやらだ、シロが男と仲良くお昼寝」

竜族男「あ?」ギロッ

竜族女「ほら男。こちらに上がってご覧なさいな、あの巨木の上--二人仲良く枝にごろんよ」ニヤニヤ

竜族男「誰だコラ、うちのシロに手ぇ出したら張り倒すぞ。--って、あれクロじゃねぇか」

竜族女「そう、クロ君。一族の長の子だし身元はしっかり--」

竜族男「長の子だろうが何だろうが添い寝とか許すかよ!早い!まだ早い!!シロは子供なんだぞ!とりあえずちょっと摘んでくるわ!!」ヒュン

 ダダダダダッ

 
竜族女「もうあんな所に。男はやーい」ニヤニヤニヤニヤ







 竜族の里


クロ「--ああ、どうも。おはようございます。男さん」ザワザワ

竜族男「お、おう。おはよう」ビクッ



竜族男「--ってな感じで、最近やたらクロに殺気飛ばされるんだが」

竜族女「そりゃあアンタがクロ君の邪魔するからよー」

竜族男「邪魔?んなのした覚えはない」

竜族女「何言ってんのよ。シロちゃんと仲良くお昼寝してたのをつまみ出したじゃない」

竜族男「お昼寝?--ああ、あの時の。……昼寝っていったってクロの奴起きてたし寝てるシロの顔微動だにせずガン見してたんだからつまみ出されて当然だろ」

竜族女(ぶふっ……ガン見……クロ君ガン見してたのね……)フルフル

 
竜族男「例えガキ相手でも……いや、ガキ相手だからこそか……野郎と二人っきりって時点でアウトにしたいぐらいだな」

竜族女「ちょ……ぶふっ……過保護……あんたどんどん過保護に……あんたも野郎でシロと二人っきりとかざらのくせに……」ケラケラ

竜族男「俺はシロの後見人だからいいんだよ」

竜族女「そうねー。あんた、シロを頼むーって言われちゃってるし」

竜族男「そうだな……だから、あいつが駆除したくても出来なかった悪い虫は俺が代わりに駆除してやるんだよ」キリッ

竜族女「ぶぶっ……まったく、怖い怖い!!」ケラケラ







 竜族の里

 墓地

シロ「……お父さん、お母さん、ごめんなさい」

シロ「私、また格闘術の訓練さぼっちゃった」

シロ「だってね、嫌なんだ。自分が痛いのも、相手が痛いのも」

 
シロ「闘いは嫌いだ。私はのんびりぼーっとしてる方が好き」

シロ「……でも、サボリ続けるのは駄目だよね」

シロ「サボリ続けて何も出来ない子になって、それでおじさんに嫌われちゃうのは嫌だなぁ……」

シロ「うん、おじさんのお嫁さんになるためにも頑張らなきゃ」

シロ「--!あ、これってまさか『花嫁修行』ってやつかな」ピコーン

シロ「よしっ!頑張ろう!!」キラキラキラ







 竜族の里

 訓練所

竜族の少女「シロちゃーん」トタタタッ

シロ「あー、少女ー」

少女「えっと、これ格闘術の訓練だけど、大丈夫?だってシロちゃん、私達と違って闘いとか嫌いだから……」

 
シロ「全部サボるわけにはいかないから。嫌だけど、何も出来なくなるのはもっと嫌だ」

少女「シロちゃん……!わかった。……あのね、この時間、また私と組むってことで良い?」

シロ「うん。お願いします」ヘラリ

少女「誰が来ても私が殴り倒すから安心してね!シロちゃんは私が守るから!」グッ

シロ「少女が倒したら私の訓練にならないよー」

少女「じゃあ私が瀕死に追い込むからシロちゃんがとどめを!」

シロ「少女はバイオレンスだー」ニコニコ







クロ「…………」ジー

クロの友人「『シロを守るのは俺だ』なーんて、思ってたり?」

クロ「……役目だ」

クロ友「役目ねぇ……、俺はさ、お前が一族の直系だってのは関係なく、ただ単にお前自身がシロちゃんのことが好きだか バキッ らぶっ!?」

クロ「違う」ザワザワ

 
クロ友「……いきなり……裏拳とか……酷いだろ……!!」フラフラ

クロ「格闘術の訓練中だ。酷くはない」キリッ

クロ友「訓練中じゃねぇ……!正しくは訓練前だ、まだ先生来てないだろうが!」

クロ「………………そうだな。悪かった、時間外に手を出してしまって」

クロ友(なんだよ……やけに素直だな……)
クロ友「そ、そうそう!素直に謝ればいいんだよ!」

クロ友「でもさー!仏頂面のまま謝られてもこーまーるー!もっと申し訳なさそうにだなー!」ニヤニヤ

クロ「……………」

クロ友「つかさー、お前シロちゃんのことずっと見てるのバレバレなんだけどー、やっぱ好 バキッ!! ぶっしゃあ!!」ズザザザザ

クロ友「……い、ててて……おまっ、マジでひでえ……っ!?」ハッ

クロ「……悪かった」ユラリ

クロ友(や、やべぇ……)タラタラ

クロ「時間外に手を出してしまって」ゴゴゴゴゴ

クロ友「そ、そうくるー?」ヒィヤァアア

 

 数分後!


少女「せんせー!せんせーが来る前にクロが友を殴り倒しましたー!友は見事に気絶してまーす!」

格闘術の先生「そうか!では気にせず格闘術の訓練を始める!!」キリッ

シロ「友くん隅っこに放置……何があったかは知らないけど……なむなむ」







 竜族の里


クロ「…………」テクテク

シロ「…………」テクテク

クロ「……ここ最近は、真面目に訓練に出るんだな」

シロ「うん。……みんなは嫌なら出なくて良いって言ってくれるんだけど」

シロ「あ、先生は出なさいって言うなー。やっぱ先生だもんね」

 
シロ「--まぁ先生は置いといて、真面目に訓練するのも花嫁修行の一つかなー、って」

クロ「!!」ピタッ

クロ「……シロ」

シロ「んー?」

クロ「今、花嫁修行と言ったか」

シロ「言ったよ」

クロ「いったいそれはどういう--」


竜族男「……………」スタスタスタ


シロ「!!」ハッ
シロ「おじさーん!!」タタタタッ


竜族男「?」
シロ「おじさんおじさん!」キラキラキラ

竜族男「おー、シロー、どうしたー?」


クロ「…………」ザワッ

 
シロ「えっと……、ちゃんと宣言しておこうと思って」

竜族男「何を?」

シロ「私、格闘術や、他の訓練だって頑張るよ。みんなと同じように、ちゃんと強くなる」

竜族男「……そうか。無理はするなよ」

シロ「花嫁修行の一貫。早くおじさんが認めてくれるように!」

竜族男「へ、」


クロ「!!?」


シロ「強くなって、早くおじさんの彼女になれるように!!」キラキラキラ


クロ「」


竜族男「いや、あの、シロ、お前さ、ちょいとそれは--」

シロ「?」キラキラキラ

竜族男(やめろ……やめてくれ……!そんなキラキラした笑顔で俺を見ないでくれ……!!)

 
クロ「----」ザワザワザワザワザワザワ


竜族男(おまけにクロはやたら濃い殺気飛ばしてくるし!いったい何だってんだよ!?)





 訓練所


クロ「………」ザワザワザワ

クロ友「おまっ……かなり荒れてるな。魔力だだ漏れだぞ」

クロ「………」ザワザワザワ

クロ友「いったいどうしたって言うんだよ」

クロ「俺は、強くなる」ザワザワザワ

クロ友「ああ、うん。うちの一族の直系だし、魔力に身体能力は発展途上とは思えない高さだし、」

クロ友「お前は強くなるよ。一族どころか、竜族でもトップクラスに入ると思う」

クロ「…………」ザワザワ

クロ友「ま、俺達は竜族で一番強いとされる黒竜族だ。その中で上なら全ての竜族含めてー、なんてもんはいらないか」

 
クロ「すぐにでも、強くならないと」ザワザワ

クロ友「何でだよ。俺達はまだガキだぜ?ガキの身体じゃそこまで上には、」

クロ「強くならないと、ロリコンに負ける」ギリッ

クロ友「は?」

クロ「ということで、友。組み手の相手をしろ」ユラリ

クロ友「え、嫌だすげぇ嫌だ」アトズサリ


格闘術の先生「よーし、今日も訓練開始だー!みんな二人一組になってるかー?なってるなー!」


クロ友「なってませんなってません!!俺フリー!!俺フリーです先生!!」ハイハーイ

格闘術の先生「お前はクロと組め」

クロ友「嫌です先生!今のこいつの相手超嫌!マジで嫌!!俺絶対痛いだけ!!」キョヒキョヒ!

クロ「…………」ザワザワ

格闘術の先生「お前はクロと組め。これは決定事項だ!」

クロ友「決定事項!?何でですか先生!!理由は!?」

 
格闘術の先生「面白いからだ!!」キリッ

クロ友「理不尽!」

 ガシッ
クロ友「ひぃ!!腕掴まれたぁ!!」ビクッ

クロ「諦めろ」ニタリ

クロ友「嫌だー!!誰か助けてえええ!!!」バタバタ ウワァァアン


 十数分後!


少女「せんせー、友が半泣きで呪文のような物を叫び続けています」

格闘術の先生「そうだな。やはり友は面白い」ウム

格闘術の先生「クロは直系だからな、同世代で相手が出来る者は限られる。それこそ白か--」

シロ「白……」ポツリ

少女「先生、」ザワッ

格闘術の先生「!!--今のは気にするな。悪かったな、シロ」

シロ「…………」

 
格闘術の先生「あー、それでだな、本来クロは大人が相手をしなきゃならん。強すぎるからな」

格闘術の先生「だが、友は……まぁ、ズタボロになってるがクロにぶつけても大丈夫なぐらいは強い」

格闘術の先生「クロと……お前もだな、シロ。お前達二人を除けば、あいつがこの世代のトップだ」

少女「…………」ムスッ

格闘術の先生「あれはまだまだ伸びるぞ。だから面白--」



クロ友「タスケテケスタ!タスケテケスタァアアア!!」キャアアアア

クロ「はははっ!!友は避けるのが上手いよなあ!!ははははははは!!!」ヒャッハー



格闘術の先生「…………」
少女「…………」

シロ「あー、うん。友も、クロも、面白い!ってことで」

外見ネタはもう少し進行したらちょっとやる。けど外見イメージ。
竜族は通常時人型、竜化モードで二足歩行リザード寄りに特徴出て翼出せば飛べる。
完全竜化で外見テメレアとかアンヘルとかサフィラとかそんな知性の高い戦うドラゴン系怪獣イメージ。ボリスは丸々してるしキングギドラは頭三つあるからちょっと違う。完全竜化すると口からビーム出せるそんな感じ。

 
 竜族の里

 墓地


竜族男「親友、まずいことになった」

竜族男「俺、お前の娘に求婚されてるんだけど。しかもちょっと本気で」

竜族男「--いや、大きくなったら忘れるだろ、とか楽観的でいたいけどさ」

竜族男「なんつーか、俺自体そんな気は無い、毛頭無いとは言い切れるんだが……いかんせんお前等の娘だからな……その、世間体が……」


竜族女「そうねぇ、シロちゃんは親友君の娘であり……ずっと片思いをしていた元婚約者、友ちゃんの娘でもある」


竜族男「…………」

竜族女「おまけにシロちゃんは……色が違うにしても、母親友ちゃんの生き写し。このままだと世間体がちょーとばかし悪くなっちゃうかも?」ケラケラ

竜族男「……まぁ、母親似だよな。見た目は」

竜族女「手え出しちゃ駄目よー?」ニヤニヤ

竜族男「ばーか、百パー無いってわかってるくせにお前は。--あいつらの子なら、俺の子同然なんだよ」

竜族男「それにシロの奴は……見た目はそりゃあ母親だが……中身はまるっきり父親なんだよ……あの馬鹿親友そのままなんだよ……」ハァ

 
竜族男「シロのあのゆるゆるした雰囲気な、もう親友そっくりで……未だに間違えそうになる時がある……」

竜族女「確かに、そっくりかも。のんびり屋で、見ないと思ったら木陰で昼寝タイム。挙げ句の果てに竜族とは思えない程非好戦的だった」ケラケラ

竜族女「対して友ちゃんはいつもキリッとしてたもんなぁー、基本仏頂面で眉間に皺寄せてさ、……時々友ちゃん脳みそまで筋肉じゃないかって思えたりして」ズーン

竜族女「クロ君もそうだけど、一族の直系に近い子ってみんなああだったわよね。これが遺伝なのかしら」ハァ

竜族男「そこだけは似なくて良かったわ……戦闘ヒャッハーなシロは見たくない」

竜族女「なーんか、今考えても、面白いわよね。戦闘ヒャッハーな友ちゃんとのんびりゴロゴロな親友君、正反対な二人がゴールインとか」

竜族男「正反対でも、お似合いの二人だった。……俺さ、一度だって嫉妬しなかったんだよ。婚約者は俺だったのに、あの二人が仲良くしてても」

竜族男「あるべき形、っていうかさー……二人が一緒にいる方が正しい気がした」

 
竜族女「…………そっか」

竜族男「本当に正しいのは、アイツ等がシロの側にいてやることなんだけどな」

竜族女「…………」

竜族男「…………そろそろ、ちゃんと話さないと、って思ってる」

竜族女「……本当のこと、まだ知らなくていいと思うけど。だってシロは……まだ子供よ?」

竜族男「子供だが、馬鹿じゃない。自分の特別扱いに気付いてるさ」

竜族男「俺達大人が話さないから……困らせたくなくてあえて訊かないんだよ」

竜族男「……黒竜族--俺達一族だけが住むこの里で、何故自分だけ白いのか」

竜族男「それは、自分の両親が死んだことと何か関係があるのか、とか、な」

 
 竜族の里

 書庫


シロ「…………」ルンルン

少女「シロちゃん」

シロ「…………」ルンルン パラリ

少女「シロちゃんってば」ツンツン

シロ「!--ごめん少女。本に夢中になってて気付かなかった」

少女「謝らなくていいよ、……ねぇ、読んでる途中で悪いんだけど、何読んでるのか訊てもいい?」

シロ「うん。何度も読んだ本だし、……本を読むのは好きだけど、少女と話す方が好きだから」パタン

少女「シロちゃん……」キュン

シロ「これはね、外の世界についての本。里の外について書かれてる」

少女「人間とか、魔族とか?」

シロ「そうだよ」


クロ友「あ、二人共何話してるんだ?混ぜてくれよ」テクテク

 
クロ「…………」テクテク


シロ「クロ、友」

少女「友が書庫にいるとか……明日は雪が降ったりして」ニヤニヤ

クロ友「うるせー、俺だって本ぐらい読むっての。将来戦うインテリ系イケメンになって女の子にモテたいからな!」

少女「……インテリ系イケメン」
シロ「……インテリ系イケメン」
クロ「……インテリ系イケメン」

クロ友「そこだけ抜き出すなよ!なんか胸張って言ってる自分が恥ずかしくなるだろ!」

クロ友「~~~、でさ、少女。お前はどうせ魔法学の本目当てだろ?あーあ、いいよな、魔法得意な奴は。俺魔法とは相性悪くてさー」

少女「はいはい、ヒトには向き不向き」
少女(……こっちだって友の身体能力が羨ましいのに)

クロ「--シロ。それは外の世界の本か」

シロ「そうだよ。私、竜族しか知らないから。何時か……出来る事なら、他の種族のヒト達に会ってみたいなーって」

クロ「……『出来る事なら』」

少女「…………」
クロ友「…………」

 
シロ「無理ならいいよ。高望みはしてないってー」ヘラリ

クロ「高望み?何を言っている。里から一生出ない気か、お前は」

シロ「えー?私って里から出ちゃ駄目なんじゃないの?」ニコニコ

少女「それは……!」

クロ「誰が決めた。出れるに決まっている。武者修行は竜族の伝統だ」

クロ友「ちょ、えー、クロさーん?なにその古い伝統ー?」

クロ「身体が成長して一人前になったら、武者修行の旅に出る。お前もな」

シロ「いや、私修行とかはちょっと」

クロ「修行が嫌なら俺に付いて来るだけでいい。お前は他種族と会える、俺は他種族の強者と闘える。一石二鳥だ」キリッ

シロ「闘わなくていいのー?それならいいかもー」ヘラリ

少女「よくない!全然よくない!!私も一緒に行く!クロになんか任せられない!」

クロ「何でだ」

少女「あなたが戦闘馬鹿だからよ!驚きの脳筋だからよ!」

クロ友「うん、これは俺も同行を志願したい。だってお前には『気を使う』というスキルが足りない!」

クロ友「この里にいる間でなんとかって考えてもお前の女の子に対する気遣いスキルが伸びる未来が欠片も見えない!」

 
クロ「気遣い……スキル……学問の分野なら習得出来ないわけはないと思うが」

クロ「そもそも俺は武術一辺倒というわけでは」

クロ友「気遣いスキル……それは座学では学べない日常で培われる実践的なスキル……」

少女「なんかもう記憶でも何でも一度完全リセットしてどこか違う環境に放り込んで初めて習得の可能性が見えるそんな感じ」

クロ「そこまで言うか」

シロ「ふへへ、少女と友が一緒なら、凄く楽しい武者修行になるねー」

クロ友「武者修行するのはクロだけだけどな」

クロ「!?友……お前何しに外へ!?シロはわかるがお前が強者探しをしないとは……!」

クロ友「うん、確かに俺は竜族だから好戦的っちゃ好戦的だけどお前並みにヒャッハーしないしそもそも基本仏頂面なお前の驚愕顔をここで見せられると俺お前の将来が心配でちょっと泣きそう」

少女「シロちゃん、私達はいちゃいちゃしながら色んな物見て回ろうね!」

シロ「楽しみだ~」ニコニコ

シロ「あ、でも」

少女「?」

シロ「おじさんと離れるのは寂しいかも、なぁ」

クロ「おじさん」ボソッ

 
少女「ああ、男さんと離れるのが--!!?」

クロ「…………」ザワザワザワ


少女「ちょ、友!クロ何であんなに殺気立ってんのよ!」コソッ

クロ友「何があったかは知らないけど、あいつ男さんの事ライバル視してるらしいんだよ」コソッ

少女「はぁ!?いくらクロでも力量わきまえなさいよ!男さんって現状一族の最強なのに!」コソッ

クロ友「俺だって男さんと挨拶する度に殺気が混じるあいつ見てて戦々恐々してんだよ!マジ何があったっていうんだよ」コソッ


シロ(少女と友は内緒話)


クロ(……男さんがいないと、寂しい、か……)ザワザワザワ


シロ(クロはクロでまた魔力の制御が甘くなってる。だだ漏れだー)

シロ(保有魔力は成長につれて跳ね上がるから、増えた魔力の制御、大変なんだろうなぁー)ノンビリ

 
 竜族の里


シロ「おじさん」

竜族男「……!?」
竜族男(何か、思い詰めたような……緊張している表情)

竜族男「シロ!何かあったのか!?」

シロ「……訊きたいことがあって」

竜族男(まさか……白について、)

竜族男「そろそろ……話そうと思ってたんだ、」

シロ「!!私がなかなか訊かなかったから……言い辛かったんだね」

竜族男「…………」

シロ「でも、訊くよ。将来に関わる事だから」

竜族男「ああ、」

シロ「おじさんの好みのタイプについて」

竜族男「そうだな、好みのタイプについて話さないと--」

シロ「まだ遅くないよね、私、おじさんの好みのタイプに成長するから!」

 
竜族男「」

シロ「子供だからって甘えちゃ駄目なんだ、私だって努力しないと!おじさんの好みの外見に近付くように!」

竜族男「」

シロ「おじさんおじさん!どんな女の子が好みなの?」

竜族男「」

シロ「教えて教えてー?」キラキラキラキラ

竜族男「」










竜族女「--で、何て答えたの?」

竜族男「…………」

竜族女「……私だって心情は察するわよ。からかうつもりは無いわ」

 
竜族男「……話す覚悟は出来てたさ。問題はそっちを話す覚悟じゃなかった」

竜族男「それはそれは可愛らしい顔で訊いてきた。きらきら輝く瞳、純粋すぎる視線。予想だにしない質問に内心大パニックな俺」

竜族女「…………」

竜族男「多分シロには不可能な答えをどうにか返そうとだけ考えたんだろうな」

竜族男「巨乳」

竜族男「そう答えてしまった」

竜族女「…………」

竜族男「いっそ笑ってくれないか」

竜族女「男……さすがの私も笑えない……」ホロリ

竜族男「あんな子供に巨乳なんて返答をした自分が……もっと言い方があったろ……」

竜族男「仮にも娘みたいに思ってる子供に……あいつ等の子供に……俺は……」ズーン

竜族女「……巨乳、か」

竜族男「唯一、自分へのフォローを言うとしたら……シロは巨乳にはなり得ないということか……」

竜族女「それは、友ちゃんが……その……小さめ、だったから?」

竜族男「ああ。あいつは小さいなんてもんじゃない。最早まな板だった……」

 
竜族女「馬鹿ね、男……乳の大きさが全て親の大きさと比例するなんて間違いよ……」

竜族女「友ちゃんの母は巨乳だったわ……なのに友ちゃんは、突然変異か!?って言われる程……ぺったんこだった」

竜族男「!!!」ハッ

竜族女「隔世遺伝ってのもあるのに……シロちゃんが将来巨乳にならない可能性なんて……!」

竜族男「」

竜族女「男……がんば」

竜族男「」







 竜族の里

 木の上

シロ「あれ?クロ?」アシ ブラブラ

クロ「………」

シロ「魔法の訓練の時間はもう少し先だよ?」ブラブラ

 
クロ「そうだな。もう少し先だ」

シロ「あ、迎えに来てくれたの?」

クロ「…………ああ」

シロ「そっか。じゃあ時間までちょっと話そうよ。ここに座ってさ」ポンポン

シロ「私、クロに訊きたいことがあるんだー」

クロ「…………」ストン
クロ「訊きたいこと、とは」

シロ「巨乳」

クロ「…………」
クロ(聞き間違い、だろうか)

クロ「悪い、今なんて……?」

シロ「クロは巨乳についてどう思う?」

クロ「…………巨、乳」

シロ「おじさんは巨乳が好みなんだー」

クロ「男さん、が、」ザワッ

シロ「どうしたら巨乳になれるんだろう……」

 
クロ「巨乳が、好みだと、言ったのか」ザワザワザワ

シロ「クロはさー、巨乳って好き?」

クロ「」

シロ「好き?」

クロ「俺は……俺は、どっちでも、というか……」

クロ「その……そのままの、お前が……一番だと思う」ボソボソ

シロ「……そっか!」

シロ「じゃあ、私が巨乳になっても、嫌いにはならないんだね」

クロ「あ、いや……」

シロ「私、頑張るよ。巨乳になるよ!」ムンッ

クロ「………」

シロ「おじさんの彼女になるために!!」

クロ「…………」ザワザワザワザワザワザワザワザワザワ

 

 訓練所--の隅


クロ友「…………、」セイザ

クロ「…………」セイザ

クロ友「…………」

クロ「……巻き込んで悪かった」

クロ友「だよな。俺、魔法苦手だし、お前の暴発に近い魔法なんて止められねぇよ」

クロ友「お前が訓練所の壁吹き飛ばすもんだから、俺まで仲良く隅っこで正座する羽目になった」

クロ友「おまけに訓練後も継続中。誰もいない訓練所ってすげぇ寂しく感じるよな。壁に穴開いてるから、入り込む風がまた」

クロ「……すまん」

クロ友「……あのさ、何でそんなムシャクシャしてたんだよ」

クロ「……友、お前……巨乳についてどう思う?」

クロ友「世界の宝だと思う」キリッ

クロ「…………」

クロ友「で、巨乳がどうしたんだよ」

 
クロ「ロリ巨乳……」ギリッ

クロ友「!!?」

クロ「敵は、どこまでも……!」ザワザワ

クロ友「お前……まさか……シロちゃんに何か言われたのか……!?いや、何か言ったのか!?」

クロ「…………俺は、そのままのお前が、一番だと、言ったのに……」

クロ友(え、何それ告白?告白したの?)

クロ「……………」

クロ友(まさか……失言かましてフラれたのか?なぁ、どうなんだよくそっ!)

クロ友(わからねぇ、わからねぇよ……!)

クロ「今日は下手したが、次は上手くやる。魔法も完璧に扱えるようになって、」

クロ「強くなって--そして、」

クロ「阻止しなければ……一度彼女になってしまえば……残すは結婚のみ」ザワザワ

クロ友「ん?」

クロ「結婚など……まだ早い!早すぎる!」ギリッ

クロ友「ごめんちょっと俺何から訊いてお前のその発言の違和感をどこから訂正すればいいかわからなくなったからもう思考放棄するな」

年と外見の成長に関しては作中でやる。
投下分の最後でageるようにしてた。けど基本sageだからうっかりする事もある。すまん。
今回投下分辺りとほのぼの挟んで最期だけ文体少し変化するけど気にしないでくれ。

 

 竜族の里


シロ(なんだろう、嫌な感じがする)
シロ(里の外れ--あの方向から、何か近付いてくるような)ジー

クロ「----」ジー

少女「シロちゃん。さっきから里の外れの方睨んでるけど、どうしたの?」

クロ友「お前もだな、クロ。何見てんだ?」

シロ「わからない。ただ、気になって」
クロ「……………、わからん」ジー

少女「?」
クロ友「わからん、って……」

クロ「少し、様子を見てくる」

クロ友「あ、ちょ、待てって。俺も行く」

シロ「私も行く。……あ……、行っても、良い?」

クロ「…………」

少女「クロ、外に出るような距離じゃないわよね」

 
クロ「ああ。そこまで遠くに様子を見に行く酔狂さは無い」

少女「わかった。私も行く。シロちゃんも、行こ?一緒に」

シロ「ありがとう、少女」

クロ友「まぁあれだ。みんなで散歩ってことでさ。四人で行くか」

クロ「…………」

クロ友「いいだろ?クロ」

クロ「わかった。四人で行こう」







 竜族の里--の外れ
 森林


 大陸を人間領、魔族領と分割された世界。
 人間領に点々と存在する竜族の里は、隠れ里の体を成していた。
 この里も同じく、外界から隔絶された山中に存在している。
 土地柄、空気中の魔力濃度は外界に比べ圧倒的に高い。

 
 魔力耐性の低い者にとって、この空間に長く留まる事は死を意味する。
 通信や転移魔法の類はこの高い魔力濃度によって阻害され、その役目を成す事は難しい。
 これといって採れる物も無く、魔物すら現れるこの土地に割って入る者など--


クロ友「……可能性1、同族」


 巨木の陰に隠れ、四人はその一団の様子を窺っていた。


少女「無いわね。見てわかるでしょ。全員は確認出来ないけど、あいつ等ほとんど人間よ?」

シロ「……人間、初めて見る。私達と違って、耳、本当に尖ってないんだね。耳以外は似たような物だけど……人間だから、竜化は出来ない」

クロ「……十人以上はいるな。ホロ馬車で隠れて正確な人数は確認出来ない」

クロ友「あーあ、同族ならせめて、俺達んとこじゃなくここから一番近い里が目的地で、うっかり道間違えちゃったのかなー、とか考えられるんだけど」

クロ友「人間じゃ、なぁ……」


 ここからなら、一時間歩かずとも里へ辿り着いてしまう。それ程までに、近い。


少女「……可能性2。この山突っ切ったらどっかの国への近道、とか、聞いたことある?」

 
クロ「無いな。近道どころか、ここを通れば遠回りになるらしい」

クロ友「やっぱ目的地はうちの里、ってとこか?」ハァ

クロ「そう見ていいだろう」

シロ「----」ジー

少女「問題は目的ね、」

クロ友「あー、可能性3。商談とやらで来た」

少女「実際見たこと無いけど、あのホロ馬車に積まれてるのが商品で私達は商人です、って言われたら……んー」

クロ友「アポ無しってのもなー、外部からあの人数が来るってなったら里の大人が黙ってるわけないし」

少女「里って基本自給自足で充分足りてるしね……里で手に入らない物は、大人が外に出て買ってくるもの」

クロ友「ま、俺達ガキにはわからない美味い話があったりしてもさ、これは--」

クロ「ふむ、ここまで来たというのなら、魔力耐性の高い人間という事……まさか噂に聞く道場破りか」ジー

クロ友「……冗談だよな」

クロ「冗談だ。--俺は真っ当な人間を見たことは無いが、奴らが真っ当だとは思えない」

クロ友「この状況で変な冗談言うなよ。一瞬、あ、コイツ引き返せないバカかもって思っ、」

 

シロ「--『本当に、この先に竜族の里があるんだろうな』」


クロ「!」


シロ「『あるさ。黒竜族ばかり集まった竜族の里がな』」


少女「……シロちゃん、聞こえるの?」

シロ「今、やっと声を拾えた。ここから一番近いあの男、隣の男、二人分だけ」

クロ友(魔法で盗聴しているわけじゃない、俺達の聴覚が人間より高いと言っても限界がある)

クロ友(それに、この環境。空気中の魔力は音すら鈍く伝達させる、)

クロ友(やっぱ、白なんだな……。身体が魔力に馴染みすぎてる。感覚を溶かしたのか、この環境に)


シロ「『引きこもりの種族だ、特に子供は後生大事に里に隠す』」

シロ「『まぁ、里の外にいる大人を--ってわけにはいかない。強すぎるからな、傭兵に雇った方が手っ取り早い』」

シロ「『竜族はやたらプライドが高い奴が多い、扱い難いのが本音だ』」

シロ「『だから、子供が高値で売れる。竜族は幼年期が長いからな、じっくり調教するには都合が良い』」

 
シロ「『普通の竜族の子でさえ、市場に出れば高値確実なんだ、その子供が--』」

シロ「『黒、なら……いったいどんな値がつくことやら』」


少女「…………、」
クロ「…………、」

クロ友「やだー、俺達が商品じゃないですかー、やだー」

クロ友「とか、言ってる場合じゃないな……」ハァ

シロ「続ける?『黒竜族って竜族一引きこもりな一族だから、もう世界一引きこもり一族でいいんじゃないか』、とか言われてるけど」

少女「酷い言われようよね」ハァ

クロ「いや、もういい。目的はわかった。この場から早急に離れる」

クロ友「よし、殴ろう。とか言わなくて安心したよ」ケラケラ

クロ「失礼な奴だな。そこまで馬鹿じゃない」

少女「里の大人が俺達の身柄を取引に使うとは思えない。となれば……私達子供は、アイツ等に無理やり--あのホロ馬車にでも積まれるのかもね」

シロ「それは嫌だなぁ」

クロ「とにかく、この件は大人に任せるぞ」

 
クロ「奴らは足を止めている。里に戻るのは俺達の方が--」


 ぷつりと、言葉は不自然に止まった。
 クロは慌てたようにその一団へ視線を向ける。


クロ友「どうした?」

クロ「俺達は、確かに、里から出たことは無い。--が、知識はある」

クロ「里も近い、この距離。発言通り子供が狙いなら、闇夜に紛れるため日が暮れるのを待っているとも考えられる。が、」

クロ「魔物も出る土地だ、慣れているはずのない土地だ。にも関わらず、全員が一塊になりああも無防備になれるだろうか」

友少女「!!」

クロ「すでに里に偵察を出している可能性、俺達が認識しているあの一団以外の誰かがこの周辺にいる可能性」

クロ「そして、その誰かに、」


 --竜族は強い。それは、子も同様。
 人間で言えば、ようやく十に届いたような子供でも、大の大人を圧倒する。
 だが、その対象はただの大人に限定されていた。
 技術も能力も、何も持たない--または低い、大人だけだ。

 
シロ「----」ザワッ


 溢れた魔力は、色濃い警戒。
 見開いた目、縦に伸びた瞳孔。半開きの口からは、獣のような唸り声。
 それは警戒を最大まで強めた竜族が、戦闘体制に移行した時に見せる、姿。
 好戦的でないシロが初めて見せた、竜族としての顔だった。


シロ「出て来い、」



「--ああ、気付かれてしまったか」



クロ友少女「「「!!!」」」」ザワッ


 膨れ上がる存在感。
 何も感じ無かったそこに、誰も存在しなかったはずのそこに。
 男が、一人、


男「どうも、こんにちは。初めまして--ヒト攫い、です」


 現れ、笑った。

 
クロ(--その誰かに、すでに捕捉され、尚且つ)

クロ「手に負えない程、強い、可能性」ボソッ


男「--おっと、動いちゃ駄目だからね。お兄さん、強いよ」

男「勇者って知ってる?すごーく強い人間のこと。お兄さんはその強ーい勇者の候補に名前が挙がったことがあるんだ」

男「まぁ、勇者なんてやりたくなかったから……俺から、話を蹴ってやったんだけどね」


シロ「……………」グルルル


男「怖がらないで、大丈夫。おとなしくしてくれたら……この剣で刺しちゃうとか、そんな痛い事はしないから」ニコニコ


クロ「友」

クロ友「?」

クロ「やっぱり言う」


男「?」


少女「!!」

クロ友「ははは……了解、」


 --そして、三人が同時に動いた。


男「!!!?」


 次の瞬間には、呆気なく男は地に伏していた。


少女「……私達が気付けなかったのが逆に良かったみたいね。ああも油断して、」


 その一瞬、少女は魔法を使った。
 簡単な魔法だ。
 少し、ほんの少しの間、足下の植物が男の足に絡みつく。
 両足の動きを封じたその一瞬は、二人にとって充分すぎた。


少女「でも、私の助けなんていらなかったのかも」

クロ友「いや、ありがたいって。万全目指すならやれる事はやらないと」

クロ「……よくわかったな。あれだけで」

クロ友「長い付き合いだろ。わかるって。少女も、な」ケラケラ

少女「さっき言ってた事だしね」

 
クロ友「そうそう。『よし、殴ろう』だろ?」


 その一瞬、男は二人分の拳をその身に受けた。
 殴っただけだ、二人で。それだけで男は昏倒した。

 --竜族は強い。
 だが、その中で、黒とも呼ばれる一族は一線を画する。それは、子も同様。
 黒である彼等にとって、技術も能力も、何も持たない--または低い、大人の範囲はさらに広まるのだ。


クロ「気付かれない距離で気付かれないよう仕留められなかったコイツの負けだ」

シロ「…………」グルルル


 --だから、疑問だった。


少女「シロちゃん?もう大丈夫だよ、あっちの一団にも気付かれてないし」

シロ「違う」


 シロが何故、こうも警戒しているのか。

シロ「そいつじゃない……!」

クロ「----」ゾクッ

 
 感じたのは寒気。続いて、視線。

 その方向。木々の間に大きな影を見た。
 ヒトではない。ヒトの形をしていない。
 魔物の類に近い--が、その形状に見覚えがあった。


クロ友「なんだあれ……同族か……?」

少女「竜族、にしては知性が感じられないんだけど、」


竜「…………」グルルル


 それは、完全に竜化した竜族によく似ている。似ているとしか言えないのは、淀んだ目にヒトを感じないからだ。
 竜化出来るからといっても、竜族はヒトだ。ヒトを感じない竜は魔物と同義とされる。


シロ「あれだ……嫌な感じの、原因」

クロ(……そうか、あれが、あの嫌な感覚の……)グルルル

クロ友「…………」グルルル
少女「…………」グルルル

クロ「……逃げるぞ。おそらくアレは、」

クロ「俺達の手には負えない」

 
人間「……お、おい!ガキがいるぞ!」

人間「黒--黒竜族だ!黒竜族のガキだ!!」


クロ友「まずいな、人攫いさん方に気付かれた」

少女「まぁ、魔力も隠せてないし変なのは見てるし、この距離で気付かない方が馬鹿でしょ」


竜「………………、」


シロ「----」

クロ(……竜に形状を似せた魔物、ではない。確証はない、が)

クロ(あの竜は、竜族、)

クロ「--シロ、少女、友……行け、里に戻れ」

クロ友「お前、俺は残る、とか言うつもりじゃないだろうな」

クロ「俺達がここにいる理由を作ったのは俺だ。俺が様子を見に行くと言い出したから、」

クロ「あの竜さえ止められればお前等は無事戻れる。こいつらも、」


人間「あのガキ……目が金だ!いいか、あのガキは絶対逃がすな!!」

 
人間「黒竜族の直系だ!!竜族の最高血統だ!!」

人間「あのガキは俺達全員が一生遊んで暮らしてもお釣りがくる--莫大な金になる!!」


クロ「俺の価値を知っているなら足止めになる。安心しろ、死ぬつもりも攫われるつもりもない。時間を稼ぐだけだ」

クロ友「お前……!!」

クロ友(馬鹿野郎、わかってない、お前はお前の価値を全くわかってない!!)

クロ友(この場合、一番に逃がさないといけないのはクロ、お前だ!)

クロ友(だってお前は……一族の直系、最後の生き残り……!!)

少女「--わかった。私達は戻る」

クロ友「少女!?」

少女「私はあなた達より弱い。それに、誰かが必ず大人を呼ぶために里に戻らなきゃならない」

少女「だから、」フォン

クロ友「魔法?--それは、俺の、」

少女「あんた、里と違ってこの環境下じゃ上手く魔法使えないでしょ。武器一つ出せないんじゃ戦力半減もいいとこ」

少女「あんたがいつも使ってる剣、模倣して構成した。受け取って」スッ

 
クロ友「悪いな、ありがとう」

少女「私が剣を貸したのよ、絶対、上手くやって。大人がここに来るまで必ず無事でいて」

クロ友「了解、」

クロ「俺は、お前にも戻ってほしいんだがな」

クロ友「そう言うなよ相棒、剣術に関しちゃ自信があるぜ。お前よりな」

クロ「…………確かに、そうだな」


少女「シロちゃん、行こう」

シロ「行けない。戻れない」

少女「お願いシロちゃん。わかって。ここはクロ達に任せて、」

シロ「駄目なんだ、あの竜が言ってる」

少女「……え?」


竜「…………」グルルル


シロ「『白、白、あの方の器』」

シロ「『黒、黒、憎き、黒、白を生んだ、一族、』」


クロ「!!」
クロ友「それ、は……」
少女「違、違うの、シロちゃん、」


シロ「『白、白、白は--』」

シロ「『生きていてはならない』」


クロ少女友「----!!」


シロ「少女、行って。私は、行かない。行けない」

シロ「私は--やっぱり、」

シロ「里にいちゃ、いけない子だったんだね」ヘラリ


少女「そんな、こと、ない、」

クロ「--行け、」

少女「そんなことない、そんなことないよ……!」

クロ「行け少女!男さんを呼んで来い!!」

少女「--っ!!わかっ、た」タタタタッ


人間「女のガキが逃げたぞ!」

人間「放っておけ!直系がいればいい!大人が来る前に片付けるぞ!!」

人間「直系の他にも黒がいるんだ!おまけに珍しい色をしたガキもいる!捕まえりゃ俺達は貴族にすらなれるぞ!!」


クロ友「シロちゃん、」

シロ「…………」

クロ「シロ」

シロ「…………」

クロ「薄々気付いていた事だろう」
クロ友「おい!クロ!」

クロ「だが、お前はまだ真実を知らない。自分が何者かも、自分が里から出れないと考えた訳も」

クロ「全部知らないまま終わらせる事は許さない」

クロ「お前は俺が守る。だから、生きて、この場を切り抜けるぞ」

クロ「そして、自分の口で問え。男さんは全部知っている」

シロ「……ははっ、……わかった。わかったよ、クロ」

 
 森林。


少女(--シロちゃん、)

 思い出す。
『私は、やっぱり--里にいちゃ、いけない子だったんだね』
 そう言って、シロは笑った。
 やっぱり、とも言った。

 --やっぱり、そう思われていた。

 泣きそうになってしまう、
 そんな状況ではない、危ないのは残した三人だ。


少女(ああ、誰か私を追ってる、)
少女(構っている暇は無い、)
少女(シロちゃん、シロちゃん、)


 駆けながらも、竜化は進む。
 目つきは鋭く、角は現れ、手足は竜のそれへと変化する。


少女(届く、ここからなら、)


 小さな竜人は、口を大きく開け--咆哮した。

 
 大気を震わし遠く響き渡るはずのそれは、この環境下外での話。
 高濃度の魔力に満たされたこの環境は、音を鈍らせ本来の距離の半分も伝えない。

 だが、半分でいい。
 半分でも届く。耳に入りさえすれば、一瞬だ。

 --ほら、

 黒影が頭上を過ぎ去った。


竜族女「うちの子供に手を出す馬鹿野郎はアンタ?」グルルルル


少女(--来た)


 少女と同じく竜化を進めた女は、追っ手らしい人間の男の頭を掴んだ。そのまま大きく振りかぶり、投擲。
 木々の間を抜け、人間は里へと投げ飛ばされた。


竜族女「方向はこの先で合ってる?」

少女「はい!お願い、します……!!シロちゃんが、みんなが……!!」

竜族女「わかった。少女ちゃんは里で待機ね」

 
 --黒影が、次々と頭上を過ぎ去る。
 進行方向は、里へと投げ込まれた人間その投擲位置直線上。


竜族女「黒に喧嘩売って来た意味、私もわからせてくるわ」


 女の姿は、次の瞬間には黒影の一つに混ざり森林の奥へと消える。


少女(--大人は、みんな、怒っていた)

少女(咆哮は悲鳴。求めたのは助け)

少女(助けて、シロちゃんが、クロが、友が、危ない)


 大人達は間に合うだろう。この距離だ。

 置いてきた三人の実力は知っていた。
 白であるシロ。直系のクロ。
 直系で無いながらも--その強さは、当時から群を抜いて強かった男の幼年期と同等とされる、友。


少女(……三人は無事、絶対に)

少女(けど、シロちゃんは、)

少女(……シロちゃんは、何も悪くない、のに……)

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