何気ないイタズラのつもりで放たれたであろう一言を、私はチャンスだと思った。
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雪歩「うん、いいよ」
私はあえて普段と同じトーンでそう言った。
真美「うぇぇ!?」
雪歩「な、なんで真美ちゃんが驚くの?」
真美「だ、だって……まさか本気にするって思わないっしょ……」
『チュー』という単語を聞いて私が慌てふためくところを見たかったのだろう。
いかにも思春期の女の子が考えそうな、可愛らしいイタズラだと思う。
真美ちゃんにしては珍しく小声で本音を漏らしたが、私は聞こえない振りをした。
雪歩「いやぁ、それにしても……真美ちゃんからそういうふうに言ってくれるなんて、嬉しいなぁ」
真美「う、嬉しいって……なんで?」
雪歩「えへへ、だって私―――」
雪歩「―――真美ちゃんのこと、好きだから」
真美「えええぇぇぇぇ!?」
突然の告白に狼狽して、真美ちゃんは赤面する。
歳相応の反応が微笑ましく、可愛らしい。
真美「そ、そんなの……いきなり言われても困るし……」
雪歩「……そうだよね」
私は俯いて、少し悲しげにふるまってみる。
雪歩「真美ちゃんは、私なんかに好きだって言われても困っちゃうよね……」
真美「あ、えと……ゆ、ゆきぴょんだからってワケじゃなくってさ、イキナリだったから……」
雪歩「じゃあ、真美ちゃんは私のこと……好き?」
真美「ゆ、ゆきぴょんのことは……なんていうか、キライじゃないっていうか」
雪歩「やっぱり……真美ちゃんは、私のことなんか好きじゃないよね……」
真美「ち、ちがうんだって~! 真美、ゆきぴょんのことは好きだけどさ~……」
真美「たぶんだけど、真美の『好き』は、ゆきぴょんの言ってる『好き』とは違うかなって……」
雪歩「……」
真美「で、でも、ゆきぴょんが真美のこと好きだって言ってくれるのは嬉しいし、その……」
雪歩「……ふふっ」
真美「……な、なんかヘンなこと言っちゃった?」
雪歩「ううん、ただ真美ちゃんは優しいなって」
真美「……うぅぅ」
雪歩「私ね、真美ちゃんのそういうところ、大好きだよ」
真美「ゆきぴょんのいじわるぅ……」
真美ちゃんは普段されない褒め方をされたせいか、恥ずかしがって目を合わせてくれない。
飄々としているようで、意外と照れ屋なのかも。
真美「あのさ、ゆきぴょん……」
雪歩「なに? 真美ちゃん」
真美「ホントに真美なんかでいいの? もっとさ、まこちんとかお姫ちんとか……」
真美「ゆきぴょんにお似合いの人、他にいるっしょ? それに真美なんか5つも年下だし……」
雪歩「年の差なんて関係ないよ……私は他の誰でもなくて、真美ちゃんのことが好きなの」
真美「ゆきぴょん……」
雪歩「……」
真美「……ズルいよ……そういうふうに言われちゃったら、真美だって―――」
雪歩「……?」
真美「あっ……や、やっぱなんでもない」
真美ちゃんは、ノドまで出かかった言葉を呑み込んだ。
雪歩「……」
真美「……」
私が目を合わせようとすると、真美ちゃんはバツが悪そうに目を逸らしてしまう。
普段は活発なイメージがあるだけに、恥じらいのある態度はギャップのせいかとても魅力的に映る。
雪歩「ねえ、真美ちゃん」
真美「な、なに?」
雪歩「……キス、しよっか?」
真美「あう……そ、それはもういいって……」
雪歩「もとはと言えば、真美ちゃんから言ってきたんだよ?」
真美「そ、そうだけどさぁ」
雪歩「自分の言葉には、責任を持たなきゃ……ね?」
真美「うぅぅ……」
あともうひと押し、かな?
雪歩「……そっか、やっぱり真美ちゃんは私なんかとじゃ……」
真美「う、うあうあー! だからそうじゃないってばぁ!」
雪歩「だって、私とするのはイヤなんだよね……?」
真美「……あぁーもう、わかったよっ! やればいいんっしょ、やれば!」
思ったとおり……真美ちゃん、意外と押しに弱いみたいです。
雪歩「……ふふっ」
真美「なにさぁ……」
雪歩「えへへ、なんでもないよっ♪」
雪歩「真美ちゃん……目、つぶってくれる?」
真美「う、うん……」
雪歩「……」
真美「ね、ねえ、ゆきぴょん」
雪歩「どうしたの?」
真美「……真美、初めてだからさ……やさしくしてね」
雪歩「……えへへ、もちろんだよ」
真美ちゃんはすごくドキドキしているようです。
この距離からでも伝わってくるほどに……
真美「……」
雪歩「いくよ、真美ちゃん」
真美「ん……」
ついにこの時がやって来ました。
私は、目をつぶってじっとしている真美ちゃんに、音を立てずゆっくりと接近する。
そうして、そっと―――
―――指を構え、無防備な眉間に向けて、ピンッと会心の一撃を放った。
真美「あだっ!?」
予想外の攻撃に苦悶の声を上げる真美ちゃん。
真美「ちょ、ちょっとゆきぴょん……なにすんのさ~!」
雪歩「えへへ、ごめんね? 真美ちゃんがカワイイから、イタズラしたくなっちゃったの」
真美「……んも~」
真美ちゃんはオデコを手でさすりながら、目を逸らして恥じらいの表情を浮かべる。
なんとなく腑に落ちないと言いたげなその表情は、ほのかに私の嗜虐心を刺激する―――
―――要するに、カワイイのでもっとイジメたくなってしまう。
真美「……ゆきぴょんって、意外とSっぽいところあるよね……」
雪歩「え、そうかな?」
真美「まったく……これじゃ真美、ドキドキさせられ損じゃん……」
雪歩「ごめんね真美ちゃん……でも、私が真美ちゃんのことを好きなのは本当だから」
真美「……」
雪歩「それにね、キスはもう少しお互いのことを知ってからのほうがいいって思うの」
雪歩「まだ真美ちゃんの気持ち、はっきり聴けてないし……」
真美「……」
雪歩「……ね?」
真美「……う、うん」
雪歩「それとね、真美ちゃん」
真美「な、なに?」
雪歩「私、気づいたんだ」
真美「気づいたって……何に?」
雪歩「それはね―――」
雪歩「―――好きだから、イタズラしたくなるんだって」
雪歩「えへへ……だから、これからは私から真美ちゃんにイタズラしちゃうかもね」
私はそう言って、指でデコピンの形を作ってみせた。
真美「うあうあ~! ゆ、ゆきぴょんのくせに~……」
真美ちゃんの反応が可愛くて、もっとイジメてあげたくなってしまう。
私も年上として、いつまでも真美ちゃんにリードされているわけにはいかないもんね。
ゆくゆくは、私がリードして―――今度こそ、私のほうから、キスを迫ってみようと思います。
おしまい
誰もゆきまみSSを書いてくれないので自給自足
地の文は初めて導入したので拙いけどご勘弁
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