モバP「……今日は休みか」 (31)

医師「典型的なワーカーホリックですね。環境が変わった事で不安がストレスに繋がっているのでしょう」

医師「不眠症はスタミナドリンクの飲み過ぎもあると思います。モバPさんが普段口にしているスタミナドリンクには、通常よりも多くのカフェインが含まれていました。大変でしょうけど、これ以上は控えるように」

モバP「はい」

医師「抗鬱剤と不眠症のお薬出しておきますね」

モバP「よろしくお願いします」


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医師「今モバPさんに必要なのは精神を休ませること。スケジュール関連もあるのでしょうけど、気を張りすぎです。休暇を取って一日何もしないで過ごすというのも大事なんですよ?」

モバP「わかってはいるんですけどね……はは」

医師「まずは一日だらだら過ごして、気が向いたら釣りやハイキングでも積極的に行なってみましょう。趣味を持つことがモバPさんには一番の薬かもしれません」

モバP「明日は久しぶりの休日なので、酒でも飲んでだらだら過ごしますよ」

医師「いいですね。携帯スマホの電源はオフにして、外のことは忘れましょう」

モバP「それが仕事柄難しいんですよね……。常に仕事のことしか考えていませんでしたし」

医師「まずは実践です。次回のカウンセリングは来週の水曜でいいですか?」

モバP「夕方なら大丈夫です」

モバP「今晩は飲むか」

使用済みの手頃なマグカップに息を吹き掛ける。埃を飛ばし、ウイスキーを注いだ。
人目もなければグラスや氷など必要ない。

バスローブに着替え、窓からの眺めを視界に収める。

トップアイドルを多く輩出し、有名になるにつれて自然と面子を気にする必要が生まれた。
住む場所は豪華になっていく。

ここまで来るのには、多くの困難があり、思い返して見ても自分一人では到底辿り着けない道程であった。

アイドルの知名度と比例して、仕事量は増え、自分一人では事務所は回らない状態が続いた。

しかし、資金面では既に余裕があったので、自分が厳選した新米の女性プロデューサーを何人か雇った。
ちひろさんはスタドリ片手に満面の笑みを浮かべていた。

俺が今でも直接担当しているのは、渋谷凛、島村卯月、佐久間まゆ、神谷奈緒、北条加蓮、双葉杏の6人だけ。

最近まで本田未央も担当していたのだが、彼女は今フランスで活躍している。
杏はただ新米の手には負えなかった。

本当は全員を担当したいのが本音だ。
しかし今の仕事量では到底無理なのである。
なので、年長組とは飲みに行ったり、雪美など年少組とはできるだけコミュニケーションを取るようにしている。


この夢が覚めないで欲しい。
いつまでも皆と共に光の道を歩いていきたい。

長かった。
冷蔵庫にある千本近いスタドリ。

モバP「趣味か……」

そういえばないな。
どれほど考えてみても、自分にプライベートなどなかった。

ただ精一杯、我武者羅にプロデュースを続けてきたのだ。

酒の力で何もかも忘れ、意識は遠ざかっていった。

ちひろ「モバPさんの住所?」

卯月「私と凛ちゃんも今日休みだから、プロデューサーさんのおうちに遊びに行こうって話していたんです」

凛「そういうことなんだ。やっぱり迷惑かな?」

ちひろ「うーん、アイドルが休日に男性の部屋に遊びに行くのは……あまりお勧めはできないんですけどねぇ」

卯月「そう……ですよね。残念だけど諦めよう、凛ちゃん」

凛「プロデューサーに悪いもんね」

ちひろ「あ、いや!ダメとは言ってません。休日にわざわざ事務所に顔を出してくれたんだもんね」

ちひろ「そうですね、ならこの書類を届けて貰えますか?私のお使いのついでなら、多少寄り道しても問題ないでしょう。……戻ってこなくていいからね」ニコ

卯月「ちひろさん!ありがとうございます!」

凛「ありがとう。今度お礼するから」

ちひろ「期待して待ってますね」

凛「ここが、プロデューサーのいるマンション」

卯月「大きい!凄いハウスですね!」

凛「……なんからしくない感じだよ」

卯月「プロデューサーさんも立場があるから」

凛「わかってる。別に嫌なんじゃないよ」

卯月「さあ、オートロックを外してもらお」

モバP『ふぁい……』

卯月「プロデューサーさんのお部屋ですか?卯月です!開けて下さい」

モバP『はあ!?え?なんで?』ガチャ

凛「これからプロデューサーの部屋行くから」

卯月「上のほうですね」

モバP『おい!』

卯月「エレベーター大きい」

凛「プロデューサーっぽくないよね」

卯月「たしかにね」

凛「あ、この部屋だ」

卯月「プロデューサーさん!来ちゃいました!」

モバP「……頭痛い」

凛「失礼だよ、プロデューサー」

モバP「あ、違う違う。昨晩飲み過ぎてさ……」

凛「お酒臭い……」

卯月「こんなこともあろうかと!ファブ〇ーズ!」シュッシュッ

凛「用意周到」

モバP「何しに来たんだ」

凛「あー、プロデューサー。こんなにお酒飲んで……体壊すよ」

モバP「医者には飲めって言われたけどな」

凛「言い訳無用。卯月!」

卯月「はい!」ジョォォォ

モバP「おぃぃぃ!人のウイスキー勝手に流しに捨てるんじゃない!」

凛「プロデューサーを想う私たちの愛の鞭だよ」

卯月「顔洗ってきてください」

凛「ご飯は?」

モバP「まだだけど……」

凛「食材は買ってきたから私と卯月で何か作るよ」

モバP「お、おう」

卯月「……抗鬱剤?こっちの紙には不眠症予防薬処方って……」

凛「……プロデューサー、どういうこと?」

モバP「あ…………。いや、言わないぞ?余計な心配掛けたくないし。自分のアイドルに相談するプロデューサーなんかいな……」

凛「もう掛けてるよね?心配。私たちに遠慮なんかしないで相談くらいしなよ」

卯月「そうですよ!私たちの絆はそんなヤワじゃありません!プロデューサーさんは、たまには私たちに甘えてください」

凛「どんな悩みでも受け止めてあげるからさ」

モバP(二人の愛が重い……)

モバP「俺、最近前線から退いただろ?プロデューサー業をさ」

凛「担当アイドルは減ったけど、トップアイドルをプロデュースしてるんだから退いてはいないんじゃ……」

卯月「なんか私たち老兵みたいでイヤです」

モバP「言い方が悪かった。俺は何事も全て一人でこなしたいんだ。事務所のアイドル全員をプロデュースしたい。でも、限界がきた」

モバP「二百の夢が6の夢になり、それがどんなに頑張っても俺の限界なんだって。いや、それは甘えであって、今でも100人くらいならプロデュースはできるはずなんだ」

モバP「慕ってくれるのは有難い。でも、これ以上担当を増やせば、アイドルたちのモチベーションは下がる」

凛「そうかな?」

モバP「今でも俺のワガママで6人を特別扱いしてるようなものだ。これ以上増えたら、「どうして私はプロデュースしてくれないの?」って不満が募るだろ?いや、既に不満を抱えているだろうさ。口にしないだけでな」

凛「まあね。私も担当アイドルから外されていたらそう思ったかも。…………人数は関係ないけどさ」

モバP「年少組は誰かをプロデュースすれば贔屓になる。みんな仲間外れは嫌なんだ」

凛「なら全員プロデュースすればいい。酷なこと言うけど、プロデューサーなら私はできると思う」

モバP「俺もそう思っていた。しかし限界だ。スケジュールが頭から抜けてしまうんだよ」

凛「そんなに私たちが信用できない?スケジュール管理くらい自分たちでできるよ」

モバP「そうだ。わかってんだよ。俺のワガママだって。お前たちが自分を完璧に管理できたら、俺はもう必要ない存在になっちまう。アイドルの仕事を取ってきてくれる便利なお兄さんだな!」

卯月「なんですかそれ?必要ないなんて誰が言ったんですか?私たちに仕事を取ってきてくれることが、プロデューサーさんのお仕事じゃないんですか?それは大事な事じゃないんですか?」

凛「今のプロデューサーはおかしいよ。支離滅裂で何か焦ってるみたい」

モバP「トップアイドルのスケジュールにミスは許されない。俺は完璧でなくてはならないんだ」

卯月「……プロデューサーさんは何を恐れているんですか?」

凛「私は最後までプロデューサーじゃなきゃ嫌だ。他の人が担当についたらアイドル辞める」

モバP「子供っぽいとこあるよな、凛は」

凛「いいよ、子供でもさ。それでプロデューサーといられるなら」

卯月「私のプロデューサーも一人だけです。それはきっと皆も同じ。でも、プロデューサーさんに迷惑を掛けたくないから」

卯月「だから、皆は何も言わないんだと思います。それはプロデューサーさんのことが大切だから」

凛「皆大人だね。私より全然大人だ」

モバP「……はぁ、俺もまだまだ未熟ってことか……。情緒不安定気味なのかもしれないな……。悪かった……今までのは全部失言だ、忘れてくれ……」

凛「卯月、ご飯よろしく」

卯月「うん。凛ちゃんはプロデューサーさんをお願い」

凛「ねえ、プロデューサー?今から膝枕してあげる」

モバP「は?」

凛「はい!寝る!」パンパン

モバP「あ……ああ」

凛「気持ちいい?」

モバP「……最高だ」

凛「ゆっくりおやすみ」ナデナデ

モバP「…………」Zzz

凛「もう寝たみたい。何が不眠症よ」

卯月「やっぱりプロデューサーさん、疲れていたんだね」

凛「こんなに追い詰められるくらい悩んじゃって。ほんと、らしくないよ」ナデナデ

卯月「今でも全員のプロデュースしてるのにね」

凛「本人は6人しか担当してないつもりなんだよ」

卯月「新しいプロデューサーさんにいっつも口出してるの皆知ってる」

凛「それが皆が大好きなプロデューサーなんだよ」

卯月「うん」

卯月「……え?……凛ちゃん、冷蔵庫のなか……」

凛「スタドリでいっぱい……」


凛「こんなものに頼ってまで……いつもありがとう」チュッ

卯月「あーっ!凛ちゃんずるい!」

凛「私は正妻だからいいんだよ」

卯月「なら、私は愛人で!」ニコッ

凛「浮気だめ絶対」

卯月「英雄色を好むだよ、凛ちゃん」

凛「ぐぬぬ……」

卯月「私は側室ね?」

凛「仕方ない。三人で幸せになろう。あとでプロデューサー襲おうか」

卯月「いきなり3人はちょっと……」

凛「物は試しだよ」

卯月「……初めてだけど頑張るよ」

モバP(愛が……重い……)

こんな苦労をしている全国のプロデューサー諸君に朗報だ。

なんと13人同時プロデュース体験が可能なアイドルマスターワンフォーオールが、本日バンダイナムコさんから発売されるぞ!

これであなたのプロデュース能力をシミュレーション!

みんなが君を待っている。

PS3で、プロデューサーをしてみないか?


凛「私は予約したよ」

卯月「私もです!」

医師「カウンセラーもイチオシさ!」

モバP「くぅぅ~疲れた……」

凛「あ、起きたんだ」

卯月「プロデューサーさん!3Pですよ!3P!」

モバP「PS3だけにな」

おしまい

そうなんだすまない



大事なことだから二度言いました

一人でも多くのプロデューサーに手を取って貰いたい

アイマスよ永遠なれ

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