【ハヤテのごとく】 マリア「私と家族になりませんか?」 ハヤテ「へ?」 (196)

■ハヤテのごとくが題材のssです。
 マイナー乙とは言わないで

■あえてのマリアさんルート
 ヒナギク以外認めない、アテナしかありえない、ナギだろjkという方は戻る推奨

■ムラサキノヤカタではなく、三千院家別宅に住んでいるという設定です。
 そのためハヤテ、マリア、ナギを除き、ムラサキノヤカタに住んでいた人物はほとんど登場しません。
 申し訳ないです。 

■R指定は特にありません。

■創作キャラはいます。多少は物語に絡んできます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399733516


※ここから下はssの更新についてなど、作品そのものには関係のない注意書きです。
 作品を読みたいだけ、コメントはしないという方は飛ばしてくださって問題ありません。

■ピクシブに投稿するときのタイトル字数制限など、諸事情があるので
 スレタイ末尾の【アスピオの人】はこれから付けないことにします。
 お騒がせして申し訳ありません。

■自分のssは全てピクシブに上げます。名前はスレタイのままです。
 ピクシブの小説カテゴリで、検索ワードにスレタイを入力していただければ、
 作者の作品は見つかると思います。
 読み直したいという方はどうぞご利用ください。

■ssの更新はツイッターでお知らせします。
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 ツイッターは主に報告用なので、返信やフォローについては期待しないでください。

■作者は基本的にコメントしてくださった方全員に返信をします。
 ただしスレの混乱を避けるため、乗っ取り、批判、
 作者やssに全く無関係なコメントなどには返信しません。

■以下は作者のこれまでのssです。
 ・ユーリ「俺、アスピオに引っ越すことにするわ」 リタ「へ?」(完結)
 ・ユーリ「飛ばしていきますか!」 リタ「小ネタ集!」(完結)
 ・【神のみ】  歩美「私と勝負しなさい」 桂馬「へ?」 【アスピオの人】(完結)
 ・【ハヤテのごとく】 マリア「私と家族になりませんか?」 ハヤテ「へ?」

■注意書きがガチすぎて引いたとは言わないで・・・

それでは投稿を開始します。

―――――――練馬区 三千院家別宅

ハヤテ「よし、掃除終了!」

三千院家の執事、綾崎ハヤテは屋敷の掃除を終える。
するとハヤテに向かって、1人の女性が歩み寄ってくる。

マリア「お疲れ様です、ハヤテ君
    夕食にしましょう」

ハヤテに歩み寄ってきた女性は三千院家のメイド、マリアであった。

ハヤテ「はい、マリアさん」

ハヤテとマリアは食卓に向かう。

―――――――三千院家別宅 食卓

ナギ「お、来たなハヤテ」

食卓の椅子には、屋敷の主である三千院ナギが腰掛けていた。

ハヤテ「お待たせしました、お嬢様」

ハヤテは椅子に腰掛ける。

マリア「もう少しで出来上がりますから、待っていてください」

ナギ「もう腹ぺこだぞ」

マリア「もう少しだけ辛抱してください、ナギ」

ハヤテ「マリアさん、何か手伝いましょうか?」

マリア「大丈夫です
    座ってお茶でも飲んでてください」

そう言ってマリアはキッチンに向かう。

――――

ハヤテ「うー寒い・・・
    もうすっかり冬ですね」

ハヤテは曇った窓ガラスを見ながら言う。

ナギ「ハヤテ、冬休みにはローマに行くぞ」

ハヤテ「ロ、ローマ?
    急にどうなされたんですか、お嬢様」

ハヤテはインドア派のナギの外出宣言に驚く。

マリア「私のためですって」

マリアは食卓に料理を運びながら言う。

ハヤテ「・・・マリアさんのため?」

ナギ「マリアがローマにあるマッジョーレ大聖堂を見たいって言うからな
   誕生日プレゼントということで連れて行くことにしたんだ」

ハヤテ「なるほど・・・
    それでローマに」

マリア「何もそこまでしてくれなくてもいいのに」

そう言いながらも、マリアは嬉しそうな表情を浮かべる。

ハヤテ「(・・・そういえば、
     まだマリアさんの誕生日プレゼントを何にするか考えてなかったな)」

――サンタさんより素敵なプレゼントをして下さいね
ハヤテはマリアの言葉を思い出す。

ハヤテ「(素敵なプレゼント、か・・・
     これは大分ハードルが高いな)」

マリアは悩んでいるハヤテの様子に気づく。

マリア「どうしたんですか、ハヤテ君?」

ハヤテ「へっ、いや・・・
    また一段とマリアさんが大人の貫禄を増したなと思いまして・・・ははは」

マリア「ふふふ、今日のハヤテ君は晩御飯抜きですね」

――――――ローマ

それから数週間後

ナギ「よし、着いたぞ」

マリア「何も5日も前に来なくても・・・」

3人はマリアの誕生日の5日前、12月19日にローマへ訪れた。

ナギ「いいじゃないか
   いろいろ観光したい場所もあるし」

ナギは和気藹々と話す。

ハヤテ「(・・・本当はマリアさんよりもお嬢様が来たかったんじゃ?)」

ナギ「それじゃあ早速マッジョーレ大聖堂に行くか」

――――――マッジョーレ大聖堂

ナギ「凄い装飾だぞ、この聖堂の中!」

ナギはマッジョーレ大聖堂の中ではしゃぎまわる。

マリア「もうナギったら」

ハヤテ「やっぱりお嬢様もまだ子供ですね」

そんなナギの様子をマリアとハヤテは優しく見守る。

ハヤテ「それにしても綺麗ですね、ここ
    マリアさんが来たいと思う気持ちも分かります」

マリア「確かに綺麗だから来たかったというのもあるんですが、
    1番の理由はこれを見たかったということです」

そう言ってマリアは1つの像を指差す。

ハヤテ「あれは・・・聖母マリア像ですか?」

マリア「ええ・・・
    私の名前の由来になった人の像ですから
    ・・・どうしてもキリスト教の本場、ローマで見たくなったんです」

ハヤテ「そうだったんですか・・・」

マリア「・・・ハヤテ君、マッジョーレ大聖堂の正式名称を知っていますか?」

ハヤテ「正式名称?
    ・・・分からないです」

マリア「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂・・・
    偉大なる聖母、マリアの大聖堂という意味です」

ハヤテ「・・・」

ハヤテはマリアの話を聞きながら思い起こす。
ある年の12月24日、赤ん坊であったマリアがとある教会の前に捨てられていたという話を

ナギ「おーい、二人とも
   何話してるんだ?」

マリア「なんでもないわ、ナギ」

ハヤテ「・・・」

――――――ホテル

3人は観光を終え、宿泊するホテルに来ていた。

ハヤテ「お土産たくさん買いましたね」

ハヤテはパンパンに膨れ上がった買い物袋を持ちながら言う。

マリア「それにしても、結構な間歩き回りましたね」

ナギ「そうだな・・・
   こんなに移動したのは久しぶりだ」

ナギはベッドの上でぐったりと寝ている。

ハヤテ「それじゃ、僕は自分の部屋に行きますね」

ハヤテは購入した物品の整理を終え、自分の部屋へ向かおうとする。

ナギ「あっ、ハヤテ
   その前に頼み事がある」

ハヤテ「はい、なんでしょう?」

ナギ「ミネラルウォーターを切らしたから、買ってきてくれ」

マリア「もうナギったら・・・
    それくらい自分で買ってきなさい」

ハヤテ「いいですよ、お嬢様もお疲れのようですし
    すぐに買ってきます」

マイナーではないだろ
支援

――――

数10分後

ハヤテ「よし、ホテルに戻るか」

ハヤテは買い物を終え、ホテルに戻ろうとしていた。

ハヤテ「(それはそうと、マリアさんの誕生日に何をプレゼントしようかな・・・)」

ハヤテが悩んでいると、ハヤテは突然走ってきた1組の男女とぶつかる。

ハヤテ「うおっ?」

ハヤテは思わず尻餅をつく。

男性A「済まない、大丈夫か?」

ハヤテ「え、ええ
    (・・・日本語を話してる?)」

ハヤテが見上げると、そこには日系の男女の姿があった。

女性A「ごめんなさいね、私たち急いでるからこれで」

ハヤテ「は、はい・・・」

男女は走り去っていく。

・・・は……にした方が良いよ

>>12
もう過去の栄光だろうな……

ハヤテ「(なんだろう、さっきの2人・・・
     どこかで見たような感じがしたな、特に女性の方・・・
     ・・・ん?)」

ハヤテがふと下を見ると、地面にあるものが落ちていることに気づく。

ハヤテ「(これはロケットペンダント?
    ・・・さっきの男女が落としたのかな)」

ハヤテはロケットを開き、中に入っている写真を見る。

ハヤテ「(これは・・・赤ん坊?
     まさか、あの2人は・・・)」

ハヤテがロケットの中の写真を見ていると、
突如怪しげな格好の男たちが現れ、ハヤテに話しかける。

怪しい男A「おい、ガキ
      さっき日系の男女が通り過ぎていかなかったか?」

ハヤテ「へっ?
    (また日系の人?)」

怪しげな格好の男たちは日本語でハヤテに問いかける。

怪しい男B「早く教えろ!」

ハヤテ「・・・いえ、見てません」

ハヤテの勘が、ここは嘘をつくべきだと告げる。

怪しい男A「ちっ!」

怪しい男B「行くぞ!」

怪しげな格好の男たちは走り去っていく。

ハヤテ「なんだったんだ一体?
    ・・・まさかさっきの人たち、追われているのか?
    ・・・嫌な予感がする」

ハヤテは走り出す。
先ほどの男女を追って

――――

それから約10分後

怪しい男A「観念するんだな」

男性A「くっ・・・」

先ほどハヤテとぶつかった男女は、怪しげな姿の男たちに路地裏へ追い詰められていた。

怪しい男B「ここで死んでもらう」

そう言って怪しい男は銃を取り出す。
そんな緊迫した状況の中、1人の青年が歩み寄る。

ハヤテ「そんな物騒なものはしまいましょうよ」

近づいてきたのは、ハヤテであった。

怪しい男A「!?
      ・・・さっきのガキか」

怪しい男B「なんだ?
      邪魔をするならお前も消すぞ」

男は銃口をハヤテに向ける。

ハヤテ「まぁまぁ・・・
    ここは落ち着いて話し合いましょうよ、ね?」

怪しい男B「黙れ!」

男は引き金に指をかける。

ハヤテ「・・・はぁー
    仕方が無い」

そう言った直後、ハヤテは目にも止まらぬ速さで男に接近し、蹴りを叩き込む。

怪しい男B「がっ!?」

男は吹っ飛んだ後、気絶する。

ハヤテ「ふぅー」

怪しい男A「こ、この!」

もう1人の男が銃を取り出そうとしたその瞬間、
再びハヤテは目にも止まらぬ速さで男に蹴りを入れる。

怪しい男A「ぐおっ!?」

男は地面に叩きつけられ、意識を失う。

ハヤテ「・・・これならうちのタマのほうが強かったな」

男性A「・・・」

女性A「・・・」

男女は驚きのあまり、言葉を失う。

ハヤテ「大丈夫ですか?」

男性A「あ、ああ・・・
    ありがとう」

女性A「・・・助かりました
    あなたは私たちの命の恩人です」

ハヤテ「いえいえ・・・
    さて、この人たちをどうしましょうか」

――――

それから約10分後

ハヤテ「・・・これでとりあえず大丈夫ですかね?」

女性A「(・・・どうして亀甲縛り?)」

ハヤテは怪しげな男たちを縛り付けていた。

男性A「本当にありがとう」

女性A「ご迷惑をかけました」

ハヤテ「気にしないでください
    ・・・それより、この人たちに狙われていた訳を教えてください」

女性A「!!」

男性A「・・・それはダメだ
    これ以上君を巻き込むわけにはいかない」

ハヤテ「命を救った代償に教えてください
    ・・・こう言ってもダメですか?」

女性A「あなたも私たちと同じように狙われかもしれないんですよ?」

ハヤテ「ご心配なく
    例え狙われても僕は死にませんから」

ハヤテは笑みを浮かべる。

男性A「・・・・・・
    どうしてもか?」

ハヤテ「はい、どうしても」

男性A「・・・・・・分かった」

>>15アニメ化されたの何年前になるんだろう……
ヤバイ、泣けてくるわ

男性A「実は、私はある大富豪の1人息子でね・・・
    元々日本にいたんだが、ある事情で日本を離れざるをえなくなったんだよ」

ハヤテ「ある事情?」

男性A「遺産相続の権利を巡る争いに巻き込まれてね・・・
    ずっと誰かが雇った殺し屋に命を狙われているんだ」

ハヤテ「(・・・なんだかもの凄く親近感の湧く話だな)」

女性A「それで私たち夫婦は、今の今まで逃げ回っているんです
    ・・・もう20年近くも」

ハヤテ「・・・それなら警察にかくまってもらってはいかがですか?」

男性A「以前はそうしてもらっていたんだが・・・
    私たちをかばってくれた警察官が何人も巻き添えをくらい、重症を負ってね
    幸い死者は出なかったが・・・」

ハヤテ「・・・」

女性A「私たちのせいで、他の人を巻き込むわけにはいかないですから・・・
    こうして国から国を移動しながら逃亡生活を続けているんです」

男性A「それでも奴らは私たちの居場所をつきとめてくるんだ・・・
    あらゆる手段を使ってね」

ハヤテ「・・・なるほど、分かりました」

ハヤテは先ほど縛りつけた男の1人を叩き起こす。

ハヤテ「起きてください」

怪しい男A「ん・・・
      なんだ、何があったんだ?」

ハヤテ「黙って質問に答えてください」

そう言ってハヤテは先ほど男から取り上げた銃を構える。

怪しい男A「て、てめえ・・・」

ハヤテ「あなたたちはどこの誰に依頼されて、この人たちを狙ったんですか?」

怪しい男A「!?
     ・・・誰にも依頼されてねえよ
     そいつらを狙ったのは自分たちの意思だ」

ハヤテ「・・・その表情は嘘ですね
    僕にごまかしは効きませんよ」

ハヤテは銃口を男に向ける。

ハヤテ「正直に言わないと撃ちますよ?」

怪しい男A「・・・言うわけねえだろうが」

男がそう言った直後、ハヤテが撃った銃弾が男のこめかみをかすめる。

怪しい男A「!!」

ハヤテ「・・・次は無いですよ?」

ハヤテは男を冷たい瞳で見る。

ハヤテ「(まぁ本当に殺す気はありませんが・・・)」

男性A「や、やめるんだ!
    私たちのために君がそんなことする必要はない!」

その言葉を聞いても、ハヤテは銃を下ろそうとしない。
それどころかハヤテの気迫は増すばかりである。

怪しい男A「・・・ちくしょう
      話せばいいんだろ、話せば」

――――

怪しい男A「・・・これでいいだろ」

ハヤテ「はい、ありがとうございました」

ハヤテは怪しい男から、夫婦の殺人を依頼した人物の居場所を聞き出していた。

男性A「なるほど・・・
    その男だったのか」

ハヤテ「知ってるんですか?」

男性A「ああ、私の親戚だよ・・・」

男性は悲しそうな表情を浮かべる。

ハヤテ「そうだったんですか・・・」  

怪しい男A「おい、これから俺たちをどうするつもりだ?」

ハヤテ「ん? 
    そんなのもちろん警察に連れて行きますよ」

怪しい男A「けっ、やっぱりそうかよ・・・
      だがな、俺たちが捕まったところでその夫婦は他のやつらに狙われるぜ」

男は不敵な笑みを浮かべる。

ハヤテ「ご心配なく
    こちらの方々はもう少ししたら狙われなくなりますから」

怪しい男A「は? どういうことだ?」

ハヤテ「僕があなたたちの依頼主を捕まえて、警察に突き出します
    それでおそらく解決です」

怪しい男A「なっ!?」

男性A「な、何を言っているんだ!?
    人殺しを雇うような危険な奴だぞ!?」

ハヤテ「大したことありませんよ、それくらい
    (・・・ていうか慣れてるし、そういう人たちと関わるの)」

怪しい男A「へっ、警察に突き出すなんて言っても逮捕のための証拠がないぜ」

ハヤテ「さっきあなたたちが言っていたこと・・・
    殺しを依頼されたという証言があれば十分です」

怪しい男A「証言だぁ?
      俺たちが法廷でそんなことするわけねえだろ」

ハヤテ「ああ、別に構いませんよ
    もう録音しましたから」

怪しい男A「へっ?」

ハヤテはどこからともなくボイスレコーダーを取り出す。

ハヤテ「僕はよく事件に巻き込まれる体質でしてね・・・
    こういうときのために小型カメラやレコーダーを常備しているんですよ
    もちろんさっきの会話も録音済みです」

男性A「(・・・この子どんな人生を送ってきたんだ)」

女性A「(・・・道理で幸薄そうな顔をしてると思ったわ)」

怪しい男A「(・・・つーか体質どうこう以前に、
       この件に関してはお前から巻き込まれに来たんだろうが)」

ハヤテ「というわけで、あとは依頼主を捕まえるだけですね」

女性A「いけません! 危険ですよ!」

男性A「そうだ、奴が雇った殺し屋に狙われるぞ!」

ハヤテ「大丈夫ですよ
    僕はちょっとやそっとじゃ死にませんから」

ハヤテは笑みを浮かべる。

男性A「私たちのために君にそこまでさせるわけにはいかない
    ・・・逮捕は警察に任せるんだ」

ハヤテ「でもそれだときっと警察の方々に負傷者が出ますよ?
    それが嫌だったから逃げてたんじゃないですか?」

男性A「それはそうだが・・・」

ハヤテ「多分僕なら1人でもほぼ無傷で捕まえられますから・・・
    止めても無駄ですよ、力ずくでも行きますから」

男性A「・・・・・・」

ハヤテ「ところで、このロケットに見覚えはありませんか?」

そう言ってハヤテは先ほど拾ったロケットペンダントを男女に見せる。

女性A「それは!
    ・・・私たちのものです」

ハヤテ「やっぱりそうだったんですね」

ハヤテはロケットペンダントを女性に手渡す。

男性A「ありがとう・・・
    君にはいくら感謝しても足りないな」

ハヤテ「いえいえ
    それより、そのロケットの写真に写ってる人について聞きたいんですが・・・」

――――

男性A「――というわけだ
    これでいいかい?」

ハヤテ「はい、ありがとうございます」

それから数分後、ハヤテはロケットの写真に写ってる人物の詳細を聞き終えていた。

ハヤテ「(やっぱり思ったとおりだ・・・)」

ハヤテの中で、何かが裏付けられる。

男性A「・・・本当に行くのか?」

ハヤテ「ええ・・・
    あっ、そうだ
    僕にあなたたちの連絡先を教えてください
    全てが片付いたら話したいことがありますし」

男性A「それは構わないが・・・」

――――――ホテル

マリア「遅いですねぇ、ハヤテ君
    ・・・買い物を頼んでからもう2時間は経ってるのに」

マリアは時計を見ながら言う。

マリア「また何か事件に巻き込まれてるのかしら・・・」

ナギ「・・・ぐぅ・・・すぅ」

マリア「・・・ナギも寝てしまいましたね」

マリアは寝息をたてるナギに布団をかぶせる。
その直後、2人の部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。

マリア「はい、どなたでしょうか?」

ハヤテ「遅くなりました、ハヤテです」

マリア「!!」

マリアはハヤテの声を聞くと、急いで部屋のドアを開ける。

マリア「大丈夫でしたか、ハヤテ君?
    何か事件に巻き込まれたりはしませんでしたか?」

ハヤテ「い、いえ、別に・・・
    はは・・・」

ハヤテは作り笑いをする。

マリア「(・・・・・・
     絶対何かに巻き込まれましたね)」

マリアは心の中で不憫なハヤテを哀れむ。

ハヤテ「・・・あれ?
    お嬢様は寝てしまわれたんですね」

ハヤテはベッドで寝息をたてるナギに気づく。

マリア「ええ、疲れていたようですし」

ハヤテ「そうですか・・・
    ところでマリアさん、聞きたいことがあるんですが」

マリア「はい、なんでしょう?」

ハヤテ「・・・赤ん坊だったマリアさんが拾われた場所についてです」

マリア「!?」

マリアはハヤテの予想外の言葉に驚く。

マリア「・・・どうして今そんなことを聞くんですか?」

ハヤテ「色々事情がありまして・・・
    どうしても今聞きたいんです」

ハヤテは真剣な眼差しでマリアを見つめる。

マリア「・・・何か訳があるんですね?」

ハヤテ「はい・・・
    今は言えませんが」

マリア「・・・・・・
    分かりました、ハヤテ君を信じて話します」

――――

マリア「――ということです
    ・・・これでいいですか?」

マリアは自分が拾われた場所の詳細をハヤテに告げた。

ハヤテ「はい、ありがとうございました」

ハヤテはマリアに頭を下げる。

ハヤテ「(・・・やっぱり間違いなかった)」

ハヤテの中で、何かが確信に変わる。

マリア「さてと・・・
    ナギも寝たことですし、ハヤテ君も休んでください」

ハヤテ「・・・マリアさん、僕は今から日本に戻ります」

マリア「え?」

ハヤテ「どうしてもやらなきゃいけないことがあるんです・・・
    必ずマリアさんの誕生日には戻ります」

マリア「・・・やらなきゃいけないこと?」

ハヤテ「はい」

マリア「・・・何かは秘密ですか?」

ハヤテ「・・・今は」

マリア「・・・またどこかの女の子とのフラグを回収しにいくんじゃないでしょうね?」

ハヤテ「またってなんですか、またって・・・
    ・・・違いますよ」

マリア「・・・はぁー
    分かりました、行ってきてもいいですよ」

ハヤテ「ありがとうございます」

マリア「・・・無事に帰ってきてくださいね」

ハヤテ「はい、必ず」

そう言った後、ハヤテは寝室を立ち去る。

マリア「・・・全く、本当に人を心配させる子なんだから」

――――

それから5日後

ナギ「おい、ハヤテ
   お前が捕まえた男のことが日本のニュースで取り上げられてるぞ」

ハヤテ「あ、本当だ」

ハヤテはテレビを見る。

ナギ「ついでにお前が倒した殺し屋たちのことも報道されてるな」

ハヤテ「倒すつもりはなかったんですがね・・・
    相手が問答無用で襲ってくるもんだから、ついやってしまいました」

ハヤテは日本に戻った後、夫婦の殺害を依頼した男を捕まえるため、
怪しい男から聞きだした場所に赴いた。
ハヤテはそこで殺し屋たちと激しい戦いを繰り広げた末、男を捕まえることに成功したのだった。

マリア「まさかこんなことに巻き込まれていたなんて・・・
    想像以上でしたわ・・・」

ナギ「まったく、無事だったから良かったものの・・・
   もし大怪我をしたらどうするつもりだったんだ?」

マリア「そうですよ、ハヤテ君
    死んでもおかしくなかったんですよ?」

ナギとマリアはハヤテを睨みつける。

ハヤテ「・・・済みません」

ナギ「次こんな無茶をしたら減給だからな」

ハヤテ「・・・それだけは勘弁してください」

――――――ホテル 宴会場

数時間後、3人はマリアの誕生日を祝うためホテルの宴会場に来ていた。

ナギ「それではマリアの誕生日を祝って・・・
   乾杯!」

ハヤテ「乾杯!」

マリア「乾杯!」

宴会場に3人がグラスを合わせる音が響く。

マリア「・・・それにしても、
    3人しかいないのに宴会場を予約する必要なんてなかったのでは?」

ナギ「いいんだよ、大した額はかからなかったし」

ハヤテ「(・・・確かここを予約するのに必要な値段って7桁を超えてたような)」

3人は運ばれてくる料理を食べながら、談笑を続ける。

――――

それから数時間後、マリアの誕生日祝いを終えた3人は寝室に戻っていた。

ナギ「・・・ぐぅ・・・すぅ・・・」

マリア「ふふ・・・もう寝ちゃいましたね」

マリアが優しくナギの頭を撫でていると、寝室をノックする音が聞こえる。

マリア「はい、どなたでしょうか?」

ハヤテ「ハヤテです」

扉の向こうからはハヤテの声が聞こえる。

マリア「どうぞ、入ってください」

マリアがそう言うと、ハヤテはドアを開け2人の寝室に入る。

ハヤテ「失礼します
    ・・・お嬢様はもう寝てしまわれたんですね」

マリア「ええ
    ・・・どうしたんですか、ハヤテ君?」

ハヤテ「・・・マリアさん、僕についてきてもらってもいいですか?」

マリア「へ?」

ハヤテ「マリアさんに会ってもらいたい人たちがいるんです」

――――

それから数分後、ハヤテはマリアをホテルの外に連れ出していた。

マリア「会ってほしい人って、一体誰なんですか?」

ハヤテ「それは会ってからのお楽しみです」

マリア「はぁ・・・」

ハヤテ「・・・着きました
    ここが待ち合わせ場所です」

マリア「・・・あの男女ですか?」

ハヤテ「はい」

ハヤテとマリアの視線の先には1組の男女が立っている。
それはハヤテが5日前に出会った夫婦だった。

男性A「・・・信じられない
    また会える日が来るなんて」

女性A「・・・夢でも見ているみたい」

夫婦はマリアに歩み寄る。

マリア「・・・この人たちは?」

ハヤテ「マリアさん
    こちらの方々、誰かに似ていると思いませんか?」

マリア「そう言われれば・・・
    誰かに似ているような・・・」

ハヤテ「・・・この人たちは今から約18年前、
    ある教会の前に赤ん坊を置いてきたらしいです」

マリア「えっ?・・・」

ハヤテ「その日は今日と同じ、12月24日だったとか」

マリア「・・・・・・」

ハヤテ「ここにいる夫婦はマリアさん・・・
    あなたの両親です」

マリア「!?」

マリアは目を見開く。

マリア「・・・・・・嘘」

ハヤテ「嘘じゃないですよ
    つい先日マリアさんの髪の毛とか拝借して、DNA鑑定も済ませましたから
    間違いないです」

マリア「・・・・・・」

マリアは驚きのあまり、言葉を失う。

マリアの父「・・・本当に済まなかった
      追っ手に狙われている最中に、君を教会の前に置いてきてしまったんだ
      ・・・私たちと一緒にいると、いつ死んでもおかしくなかったから」

マリアの母「本当は後で知人に赤ん坊のあなたを拾ってもらうはずだったんだけど、
      その前にあなたは知らない人に拾われていたの
      ・・・だから、今まであなたがどこにいるのか分からなかったわ」

マリア「・・・・・・」

マリアはただ立ち尽くしている。

マリアの父「許してくれなんて都合のいいことは言わない
      ・・・まして、私たちを親として扱ってくれなんて言うことも」

マリアの母「ええ、こうしてあなたの顔を見れただけで十分だわ」

マリア「・・・・・・
    お父さん、お母さん!」

マリアは涙を流しながら、両親に抱きつく。

マリアの父「!!
      ・・・私たちを親として見てくれるのか?」

マリア「・・・ずっと、ずっと会いたかった」

マリアの母「!!
      ・・・私たちもよ」

ハヤテ「(・・・さて、ここから先は親子水入らずですね)」

ハヤテはホテルに戻っていく。

――――

それから数10分後

ハヤテ「(さてと・・・
    僕もそろそろ寝ようかな)」

そう思った瞬間、ハヤテの寝室のドアをノックする音が聞こえる。

ハヤテ「はい、どうぞ入ってください」

ハヤテがそう言うと、部屋に1人の女性が入ってくる。

マリア「失礼します」

部屋に入ってきたのはマリアだった。

ハヤテ「マリアさん? どうしたんですか?」

マリア「・・・全部聞きましたよ、ハヤテ君
    私の両親を助けるために随分と無茶をしたらしいですね」

マリアは怒りの表情を浮かべる。

ハヤテ「!!
    ・・・はは、まぁ」

ハヤテは冷や汗を浮かべる。

マリア「・・・どうして私に話してくれなかったんですか?」

ハヤテ「ええと・・・
    心配をかけさせたくなかったというか・・・」

マリア「・・・」

マリアはハヤテを睨みつける。

ハヤテ「す、すみません」

マリア「・・・今度内緒でこんなことをしたら、許しませんからね?」

ハヤテ「・・・はい」

ハヤテは素直に頭を下げる。

マリア「・・・でも、ありがとう」

マリアはハヤテに抱きつく。

ハヤテ「えっ?・・・」

マリア「本当にありがとう・・・
    私の両親を救ってくれて・・・
    私を両親に会わせてくれて・・・」

マリアは涙を浮かべる。

ハヤテ「・・・誕生日には素敵なものをプレゼントするって約束しましたから」

マリア「・・・最高のプレゼントだったわ
    一生忘れない」

ハヤテ「そう言っていただけるなら嬉しいです
    ・・・あの、マリアさん」

マリア「はい?」

ハヤテ「その・・・そろそろ離れましょう」

ハヤテの顔は真っ赤になっていた。

~小ネタ 驚異の格差社会~

―A 超スゴイ―
・天王州アテネ

―B スゴイ―
・愛沢咲夜

―C フツウ―
・マリア
・瀬川泉
・西沢歩
・春風千桜
・水連寺ルカ

―D ダメ―
・鷺ノ宮伊宮
・桂ヒナギク
・綾崎ハーマイオニー

―E 超ダメ―
・三千院ナギ



ハヤテ「・・・なんの表ですかね、これ」

マリア「・・・なんでしょうね、一体」

ナギ「・・・・・・」

~終わり~

以上で第一章は終了です。
果たして需要はあるのか。


>>12
支援ありがとうございます。

>>14
ご指摘ありがとうございます。
今後は・・・を……にしてみます。

>>15
確かに同人誌編から人気落ちましたよね…

>>22
何年前でしょうね…作者も分かりません。
ちなみに、このssはアニメしか見てない人でも分かるように作ってます。
三期? CUTIE? 何それ

乙です この作品は原作の落ちぶれ方とメディアミックスの失敗が…

>>48
たしかに最近の畑先生はやる気をなくしてる気がしますね…
というかせめてアテナ編をアニメでやってくれよ…

需要があれば今後も執筆を続けます。
ちなみにこのssは大体第四章編成の予定です。

ハヤテがマイナーとかふざけてんのか
愛されすぎて逆にみんな気が引けてSSはあまり書かれないだけだ

酉つけないの?

>>50
ssの中ではマイナーと言いたかったのですが、誤解させてしまったようですね。
申し訳ない。

>>51
酉は乗っ取り防止用のアレということでいいでしょうか?
おそらく乗っ取られることは無いと思いますが、今後は念のためやってみます。
ご指摘ありがとうございます。

どうやら読んでくださる方々がおられるようなので、今後も投下を続けます。
書き溜めがないので完走するのがいつになるかは分かりませんが・・・

>>1俺も三期やCUTIEは無いものだと思っている
はい、一話切り余裕でした

お陰でアテナ編全然知らないんだよ!一期や二期で散々伏線出したんだからせめて回収くらいしろよ!!

三期の一話見た後見事にナニコレ状態だったわ!


長々すまんが>>1期待してる

>>54
作者も気持ちはよく分かります。
初めて三期見たときの置いてきぼり感はやばかったです
作者はアテナ編大好きなんですが、いつになったらアニメ化してくれるんだよと思っています。

>長々すまんが>>1期待してる
ご期待ありがとうございます。
皆さんが満足できるSSになるかは分かりませんが、完走だけはしてみます。

どうして>>1の誰々しか認めない云々にルカが入ってないんですかー!

あと続きはよ

サンデー系で唯一コミックス買ってるわ
失速もいいとこだけど結末が気になるから最終回まで追うつもり

アニメは1期の作画でアテナ編やれば良いと思うよ

>>56
本当はルカや西沢さんも入れたかったんですが、
書き始めるとキリがない気がしたので人気投票上位の3人に絞りました。申し訳ない。
>あと続きはよ
なかなか書く時間が作れないので、気長に待っていただけると幸いです。
全体の構成自体は既に練ってあり、後は書くだけなので立て逃げはありません。
そこだけはご安心ください。

>>57
同士よ……
>アニメは1期の作画でアテナ編やれば良いと思うよ
作者も第一期の作画のほうが良かったと思います。
ただ、正直どっちでもいいからとっととアテナ編放送してほしいですが……

メイヒロインの泉は?

だべってないではよ書けや

俺は無言投下が好きだけどエタらなさそうなのでこういう人もいいと思うよ

>>59
作者も泉が好きなんですが、このssではほとんど出番がありません。
申し訳ない。

>>60
返信にかかる時間は基本的に1分とかからないので、レスをしてたから投稿が劇的に遅れるということはありません。
そこはご安心ください。
ただ作者は自分のSSを読んでくれる人たちと話すことは、作品を書くことと同じくらい大切なことだと思っています。
作者が私である以上、まともなコメには必ずレスを返します。それだけはご理解ください。

>>61
ご安心ください。
作者は1人でも自分の作品を読みたいと言ってくれる方がおられれば、どれだけ叩かれようとエタるつもりはありません。
さすがに荒れすぎたら、スレを変えるなどの処置をしますが

マリアかわいいな

>>63
同士よ……
なんだかんだで作者は作中の女の子ほとんどが可愛いと思ってますがね。

お待たせしました。
それでは第二章、投下していきます。

―――――――???

ハヤテ「……あれ?
    ここはどこだ?」

気づくとハヤテはある建物の中に立っていた。

ハヤテ「ここは……
    僕が住んでいた借家?」

周囲を見回すと、ハヤテはそこが以前自分が住んでいた場所だということに気づく。

ハヤテ「……どうして僕はこんな所にいるんだろう?
    まぁいっか、帰ろう」

そう言ってハヤテは歩き出す。

ハヤテ「僕がいるべき場所はここじゃない……
    それに、ここにはいい思い出がないし」

ハヤテはかつて、この場所で共に暮らしていた両親のことを思い出す。
身勝手な都合で自分を売り払った両親のことを

ハヤテ「まったく、嫌なこと思い出しちゃったな……
    まぁでも、もうあの2人に会うことはないだろうけど」

???「それはどうかな?」

ハヤテ「!?」

ハヤテは突然聞こえた声に反応し、後ろを振り向く。

ハヤテ「…………
    父さんに母さん?」

ハヤテの目の前には、ハヤテの両親がいた。

ハヤテの母「つれないこと言わないでよ、ハヤテ君」

ハヤテの父「そうだ、私たちは親子なのに」

ハヤテの両親は不気味な笑みを浮かべる

ハヤテ「……僕はもうあなたたちと関わるつもりはない」

ハヤテはその場を立ち去ろうとする。

ハヤテの父「おおっと、そうはいかないよ!」

ハヤテの父はハヤテの腕を掴む。

ハヤテ「!? ……離せ!!」

ハヤテの父「離すわけないだろ、ハヤテ君
      君は私たちから…………





       逃げられやしないんだ




――――

ハヤテ「はっ!?」

ハヤテはベッドの上で起き上がる。

ハヤテ「……夢か」

ハヤテは自分が寝汗をかいていることに気づく。

ハヤテ「まったく、嫌な夢だったな……」

―――――――三千院家別宅 食卓

ナギ「まったく……ハヤテはまったく!」

ハヤテ「すみません、お嬢様」

ハヤテは食卓でナギに叱られていた。

ナギ「マリアの両親が見つかったなら、何故私に知らせなかった?」

ハヤテ「お嬢様もマリアさんと同様に驚かせようと思いまして……」

ナギ「そんな気遣いはいらん!
   ……まったく」

ナギは腕を組みながら不機嫌な表情を浮かべる。

マリア「まだ言ってるんですか、ナギ」

マリアはそう言いながら、食卓に朝食を運んでくる。

マリア「もうあれから何日も経っているのに」

ナギ「主の私にあんな重大なことを秘密にしていたんだぞ……
   これは減給も考えなければならんな」

ハヤテ「それだけは勘弁してください……」

ハヤテは涙目になる。

マリア「今回は大目に見てあげてください、ね?」

ナギ「……まぁ今回はお手柄だったから許してやる」

ハヤテ「!! ありがとうございます、お嬢様、マリアさん!」

ハヤテは涙ながらに感謝する。

ナギ「……ところでマリア
   お前はこれからもこの屋敷にいるつもりなのか?」

マリア「えっ?」

ハヤテ「ご両親と一緒に暮らしたいとは思われないんですか?」

マリア「……私はこっちの生活の方が慣れていますから
    それに、私にとってはナギも家族のようなものですし」

マリアはナギを見ながら微笑む。

ナギ「マリア……」

マリア「もちろんハヤテ君も」

マリアはハヤテにも微笑む。

ハヤテ「マリアさん……」

ナギ「……なんならこの屋敷でマリアの親に暮らしてもらうか?
   開いてる部屋なんかいくらでもあるぞ?」

マリア「そこまでしなくてもいいですよ
    会いたいときにはいつでも会いにいけますし……
    というかもう学校に行く時間では?」

マリアは時計を指差す。

ハヤテ「そうですね
    行きましょう、お嬢様」

ナギ「……マリアと両親の再会祝いということで、今日は祝日にしないか?」

マリア「早く行かないと夕食抜きにしますよ?」

――――

それから半日後

ハヤテ「ふぅ、ようやく執事の仕事も終わった」

ハヤテは学校から帰ってきた後、執事の仕事を終え自室に戻っていた。

ハヤテ「さて、今から学校の宿題やらないと……」

ハヤテが宿題にとりかかろうとしたそのとき、部屋をノックする音が聞こえる。

ハヤテ「はい、どうぞ入ってください」

マリア「失礼します」

ハヤテの部屋を訪れたのは、マリアであった。

ハヤテ「マリアさん?……
    どうしたんですか?」

マリア「今から宿題をするんですよね?……
    お勉強、手伝おうかと思いまして」

ハヤテ「本当ですか!?
    ありがとうございます!」

――――

ハヤテ「……もの凄く分かりやすいです
    さすがマリアさんですね」

マリア「ふふ、褒めるのが上手ですね」

ハヤテ「いやいや、お世辞なんかじゃないですよ
    ヒナギクさんと同じか、それ以上にわかりやすいです」

マリア「!? 
    ……へぇ、ヒナギクさんにも勉強を見てもらってるんですね」

ハヤテ「はい、よく」

マリア「…………よく、ですか」

ハヤテ「ヒナギクさんはなんだかんだ言っても優しい人ですからね
    僕が困っていると、必ず助けてくれるんです」

ハヤテは楽しそうに話す。

マリア「…………そんなにヒナギクさんがいいなら、
    ヒナギクさんに見てもらってください」

ハヤテ「えっ、ちょっ、マリアさん?」

マリアは不機嫌な表情を浮かべながら、早足でハヤテの部屋を出て行く。

ハヤテ「……何か僕、怒らせるようなこと言ったのかな?」

―――――――三千院家別宅 裏庭

マリア「はぁ……
    申し訳ないことをしてしまいました」

マリアは三千院家別宅、裏庭のベンチに腰掛けていた。

マリア「……でも、ハヤテ君もハヤテ君ですよ
    あんなに楽しそうに他の女の子の話なんかして」

マリアは不機嫌な表情で愚痴を言う。

マリア「……やっぱりあの日以来、
    どうしてもハヤテ君のことが気になってしまいますね」

マリアはつい先日訪れた自分の誕生日、クリスマスイブのことを思い出す。

マリア「反則ですよ、プレゼントが両親だなんて……
    本当に天然ジゴロなんだから」

マリアはためいきをつく。

マリア「……私がナギの恋敵になるわけにもいきませんからね
    いい加減、この気持ちは片付けますか」

ハヤテ「あの、マリアさん」

マリア「!?」

マリアはいつの間にか背後にいたハヤテに驚く。

マリア「ハ、ハヤテ君!?
    いつからそこにいたんですか!?」

ハヤテ「い、今来たばかりです……」

マリア「……そうですか」

マリアは落ち着きを取り戻す。

ハヤテ「……マリアさん」

マリア「はい?」

ハヤテ「その、さっきは怒らせるようなことを言ってしまったみたいで………
    すみませんでした!」

ハヤテは頭を下げる。

マリア「……頭を上げてください
    ハヤテ君は何も悪くありませんから」

ハヤテ「えっ?……」

マリア「……むしろ謝るべきは私の方です
    すみませんでした」

マリアはハヤテに向かって頭を下げる。

ハヤテ「い、いいですよ! 
    僕は気にしてませんから、頭を上げてください!」

マリアはその言葉を聞き、頭を上げる。

マリア「………ねぇ、ハヤテ君」

ハヤテ「はっ、はい!」

マリア「早く1人に決めないとダメですよ」

ハヤテ「え?」

マリア「それじゃ、おやすみなさい」

そう言ってマリアは屋敷に戻っていく。

ハヤテ「…………1人に決める?
    一体、なんのことだろう?」

ハヤテはしばらくその場に立ち尽くしていた。

―――――――三千院家別宅 リビング

翌日

ナギ「ハヤテー、ワタルのところにDVD返しにいってくれ」

そう言ってナギは大量のDVDを指差す。

ハヤテ「はい、分かりました」

ハヤテはDVDの山を袋に詰める。

マリア「ハヤテ君、私が行きます」

ハヤテ「えっ……いやでも」

マリア「ハヤテ君はよく事件に巻き込まれますから」

マリアはDVDの入った袋を持つ。

マリア「……凄く重いですね、これ」

袋の重量は10kgを超えている。

ハヤテ「マリアさんにそんな重たいものを持たせるわけにはいきませんから……
    僕が行きますよ」

マリア「でもなんだか心配ですから……
    そうだ、ハヤテ君についていくことにします」

ハヤテ「……なんかすみません」

――――

それから数10分後

マリア「無事帰ってこれましたね」

ハヤテ「いつも事件に巻き込まれてるわけではないですからね、はは……」

マリア「でも、ハヤテくんがトラブルに巻きこまれる確立は
    調子がいいときのイチローさんの打率を超えてますよ」

ハヤテ「(……言い返せない)」

ハヤテとマリアはDVDを返し終え、三千院家に向かって歩いていた。

マリア「……あれ、屋敷の前に誰かいますね」

マリアは三千院家の入り口の前に立っている男女に気づく。

ハヤテ「お客さんかな?
    僕、見てきますね」

ハヤテは男女に駆け寄る。


ハヤテ「この屋敷の主に何か御用ですか?」

ハヤテは男女に話しかける。

???「いや、用があるのは主じゃないよ……
    君だ」

ハヤテ「へ? 僕?」

男女はハヤテの方を向く。

ハヤテ「!?」

ハヤテは男女の顔を見た瞬間硬直する。




ハヤテの父「やぁ、元気そうで何よりだ……
      ハヤテ君」



そこにはハヤテの両親がいた。

ハヤテ「…………」

ハヤテはただ立ち尽くしていた。

ハヤテの母「会いたかったわ、ハヤテ君」

ハヤテ「……どうしてここに?」

陽気な両親とは対照的に、ハヤテは暗い表情を浮かべる。

ハヤテの父「どうしてって、君を引き取りに来たに決まってるだろ?」

ハヤテ「!?」

ハヤテの背筋が凍る。

ハヤテ「……よくそんなことが言えますね
    人を勝手に売り払っておいて」

ハヤテの母「あのときは本当にごめんなさい
      反省してるわ」

ハヤテ「…………」

マリア「あの……
    どなたでしょうか?」

マリアは遠くで暗い表情を浮かべるハヤテを心配し、ハヤテに歩み寄っていた。

ハヤテの父「おや? ハヤテ君の友人ですか?」

ハヤテの母「始めまして、私たちはハヤテ君の両親です」

マリア「!?」

その言葉を聞いた瞬間、マリアはかつてハヤテから聞いた話を思い出す。
約1億5000万の借金を返すため、ハヤテの両親がハヤテを売り払ったという話を

マリア「……なんの用ですか?」

マリアはハヤテの両親を睨みつける。

ハヤテの父「そんなに怖い顔しないでくださいよ
       僕らはハヤテ君を引き取りに来ただけです」

マリア「引き取りに?……」

ハヤテの母「ええそうです
       親子が一緒に暮らす……当然のことでしょう?」

マリア「…………」

マリアは怒りのあまり、体が震えている。

マリア「……よくもまあそんなことを言えますね
    ハヤテ君があなたちのせいでどれだけ苦労したか分かってるんですか?」

ハヤテの父「反省してますよ……
       今後は二度とそんなことはしません」

ハヤテ「…………嘘だ」

ハヤテの母「お願い、信じてハヤテ君」

マリア「……行きましょう、ハヤテ君
    話しても無意味ですわ」

マリアはハヤテの腕を掴み、引っ張る。

ハヤテの父「困りますよ、僕らの子供を連れ去られたら」

マリア「!? ……なんですって?」

ハヤテの母「誘拐ですよ、それ」

ハヤテ「!? マリアさんに向かってなんてこと言うんだ!」

ハヤテは激しい剣幕を見せる。

ハヤテの父「いやいや、ハヤテ君……
       君は僕らと暮らさなきゃいけないんだよ?」

ハヤテの母「そうよ、私たちにはあなたを扶養する義務があるんだから」

ハヤテ「……何が扶養だ
    さんざん僕が稼いだお金を搾り取っておいて」

ハヤテの父「悪かったよ、ハヤテ君
       これからは心を入れ替えるよ、ね?」

ハヤテ「…………」

ハヤテの母「だから一緒に暮らしましょう、ね?」

ハヤテ「…………帰れ」

ハヤテの父「ん?」

ハヤテの父「ん?」

ハヤテ「帰れって言ってるんだよ!!
    二度と来るな!!」

ハヤテの父「!!」

ハヤテの母「!!」

普段の温厚な様子からは想像できない大声を、ハヤテは発する。
ハヤテの両親はその声に圧倒される。

マリア「……これがハヤテ君の意思です」

ハヤテの父「……分かった、今日は引き下がろう」

ハヤテの母「でも必ずまた話をしに来るわ
       ……今度は弁護士を連れてね」

そう言い残し、ハヤテの両親は去っていった。

―――――――三千院家別宅

それから数10分後

ナギ「そうか、そんなことがあったのか……」

マリア「ええ……」

マリアはナギに、ハヤテの両親との会話内容を伝えていた。

ナギ「……困ったな
   確かに法律上、ハヤテは両親と暮らすべきだからな……
   もし裁判沙汰になったら勝てるかどうか……」

マリア「…………」

ナギ「こればっかりは、三千院家の力でどうこうなるものではなさそうだな……
   あの両親なら金さえつかませれば引くかもしれんが」

マリア「やめておいたほうがいいですわ……
    あの人たち相手だと、いくら払ってもキリがなさそうですし」

ナギ「そうだな……
   しかし、みすみすハヤテをあの親の元に行かせるわけにはいかないし……」

マリア「……私に考えがあります」

―――――――???

ハヤテ「ここは?……」

気づくとハヤテは暗闇の中にいた。

ハヤテ「……一体どこなんだ?」

???「やぁ、よく来たねハヤテ君」

ハヤテ「!?」

ハヤテが振り返ると、そこにはハヤテの両親がいた。
暗闇の中でも、何故かハヤテの両親の姿だけははっきりと見える。

ハヤテ「……何をしにきたんだ?」

ハヤテの父「何をって、君を取り戻しにきたに決まってるだろ?」

ハヤテ「……二度と来るなって言っただろ」

ハヤテの母「そんなこと言わないでよ
      家族でしょ、私たち?」

ハヤテ「…………知るか!」

ハヤテはそう言って走り出す。

ハヤテの父「おおっと、逃がさないよ!」

ハヤテ「!?」

ハヤテの父は突如地中から姿を現し、ハヤテの右足を掴む。

ハヤテ「は、離せ!!」

ハヤテの母「どこにも行かせないわ」

父親同様にハヤテの母も地中から姿を現し、ハヤテの左足を掴む。

ハヤテ「くっ……」

ハヤテの体は引っ張られ、地面の中に沈んでいく。

ハヤテ「くそっ……」

ハヤテの体は沈み続け、とうとう頭だけが地上に出ている状態になる。

ハヤテ「(……ここまでなのか?)」

ハヤテがそう思った瞬間、突如誰かの手がハヤテへ向かって伸びる。

ハヤテ「!?」

ハヤテは反射的にその手を掴む。

ハヤテ「(……この手は?)」

ハヤテはその手によって、地中から引っ張り上げられる。

ハヤテ「(……誰の手だろう?
    なんだか見覚えがあるような)」

ハヤテは自分が握っている手を見つめ続ける。

ハヤテ「……!?
    この手はもしかして、マリアさん!?」

そう言った直後、ハヤテは目を覚ました。

―――――――三千院家別宅 

マリア「ハヤテ君!」

ハヤテ「はっ!?」

ハヤテは起き上がり、周囲を見回す。
そしてハヤテはいつの間にか、リビングのソファで寝ていたことに気づく。

マリア「大丈夫ですか!?
    ……凄くうなされていましたよ?」

ハヤテ「…………」

ハヤテは大量の寝汗をかいている。

マリア「……もしかして、ご両親の夢を見ていたんですか?」

ハヤテ「!?」

ハヤテは動揺する。

マリア「……やっぱり」

ハヤテ「…………もう両親と関わることはないだろうと安心しきっていたんですがね
    甘かったようです」

マリア「ハヤテ君……」

マリアはハヤテの隣に座る。

ハヤテ「……やっぱり僕はとびきりの不幸体質のようですね」

マリア「…………」

ハヤテ「……僕、あの親の元に戻ります」

マリア「!? いけません!」

マリアは思わず叫ぶ。

ハヤテ「いえ……
    これ以上僕らの事情で皆さんに迷惑をかけるわけにはいきませんから」

マリア「そんな……」

ハヤテ「借金は必ずお返します……
    何年かけてでも」

ハヤテは天井を見上げる。

ハヤテ「短い間だったけど、僕はここで働けて幸せでした……
    お嬢様とマリアさんに出会えて本当に良かった」

ハヤテの目に涙が浮かぶ。

マリア「……泣かないでください、ハヤテ君
    ハヤテ君には笑顔が一番似合いますよ?」

マリアはハヤテの涙をハンカチで優しく拭く。

ハヤテ「マリアさん……」

マリア「……安心してください
    ハヤテ君は私が守りますから」

ハヤテ「……え?」

マリア「……ねぇ、ハヤテ君」

ハヤテ「は、はい?」









マリア「私と家族になりませんか?」 

ハヤテ「へ?」





――――

それから1週間後

ハヤテの父「着きました
      ここです、弁護士さん」

弁護士「……大きな屋敷ですね」

ハヤテの両親は弁護士を連れて、三千院家を訪れていた。

ハヤテの母「訴えれば、賠償金とかいっぱい取れますかね?」

弁護士「……それは詳しく話を聞かないと分かりませんね」

ハヤテの父「ささ、行きましょう」

―――――――三千院家別宅 客間

マリア「お茶、どうぞ」

弁護士「これはどうも……」

マリア「はい、あなたがたも」

ハヤテの父「……どうもありがとう」

ハヤテの母「(以前とは随分な態度の違いね……)」

ハヤテ「…………」

マリアは屋敷に訪ねてきたハヤテの両親と弁護士を、客間に招いていた。

ハヤテの父「……それで、ハヤテ君
       私たちと一緒に暮らす気になったかい?」

ハヤテ「……いえ
    僕はあなたたちの元に戻る気はありません」

ハヤテの母「……私たちは親子なのよ
       一緒にいるのが当たり前なのよ
       ね、弁護士さん?」

弁護士「ええ」

マリア「そうですね……
    親子、だったらの話ですが」

ハヤテの父「……ん?
       それはどういう意味で?」

マリアは1枚の紙を取り出す。

弁護士「それは……養子縁組の申し込み書?」

マリア「ええ
    これは役所に提出したもののコピーです」

ハヤテの父「養子?……
       どういうことだ、それは?」

マリア「分からないんですか?……
    ここにいるハヤテ君はもう、あなたたちの子供ではないんですよ」

ハヤテの父「!?」

ハヤテの母「!?」

マリア「私の両親がハヤテ君を引き取りましたから」

ハヤテの母「…………嘘でしょ?」

しばらくの間、周囲は沈黙に包まれる。

ハヤテの父「み、認められるか! こんなもの!」

ハヤテの母「そうよ! 私たちの同意も無しに!
       こんなの無効ですよね、弁護士さん!?」

弁護士「……いえ、無効ではないですね」

ハヤテの父「へ?」

弁護士「普通養子縁組の場合、当事者が15歳以上であれば、
    実父母の意思とは関係なく縁組が可能なんですよ……
    確かハヤテ君は現在17歳でしたよね?」

ハヤテ「はい」

弁護士「まだ家庭裁判所の審査が残ってるから成立自体はしてないですが、
    養子になるのに必要な条件は全部満たしていますよ……
    これは正直分が悪いですね」

ハヤテの父「なっ!?」

ハヤテの母「そんな!?」

ハヤテの両親は思わず立ち上がる。

弁護士「経済状況的に見ても、こちらの方がハヤテ君にとってはいいですし……
    何よりハヤテ君の意思が完全に養親側に傾いていますから……
    果たして裁判をしたところで勝てるかどうか……」

マリア「そういうことです
    ……もうお帰りになられますか?」

ハヤテの父「ふ、ふざけるな!
       そいつは……ハヤテは俺たちのものなんだよ!」

ハヤテの母「そうよ! ハヤテは私たちのために生きるのよ!」

ハヤテ「…………」

マリア「……これ以上揉め事を起こそうとするなら警察を呼びますよ?」

マリアは冷たい瞳でハヤテの両親を見る。

弁護士「……帰りましょう」

ハヤテの父「そんな……」

ハヤテの母「嘘よ……こんなの」

ハヤテ「……さようなら
    僕の親だった人たち」

ハヤテの父「…………」

ハヤテの母「…………」

その後しばらくして、ハヤテの両親は屋敷を出て行った。

―――――――三千院家別宅 裏庭

それから数時間後

ハヤテ「うっ……ぐすっ……」

ハヤテは1人裏庭のベンチに腰かけ、涙を流していた。

マリア「……ここにいたんですね」

ハヤテ「!? ……マリアさん」

マリアはハヤテの隣に座る。

ハヤテ「……なんででしょうね
    別れられてせいせいしたはずなのに……
    嬉しいはずなのに……」

マリア「……」

ハヤテ「……涙が止まらないんですよ
    悲しさとか辛さとか、いろんなものが湧き出てくるんです」

マリア「ハヤテ君……」

ハヤテ「あんな人たちでも、僕の親だったんです……
    本当は改心してくれれば十分だった……
    一緒に普通の暮らしができればそれで良かった……」

マリア「…………」

ハヤテ「……すみません
    こんなことを言ったら、引き取ってもらったマリアさんとご両親に申し訳が立たないですよね」

マリア「いいんですよ、我慢しなくても……
    言いたいことは言ってくれれば」

マリアはハヤテを抱きしめる。

ハヤテ「えっ?……」

マリア「私は何も形だけの家族になるつもりはありません……
    悲しいこと、辛いことを分かち合える本当の家族になりたいんです」

ハヤテ「マリアさん……」

マリア「あなたが困っていたらいつでも私が助けてあげます……
    ずっと私が傍にいてあげます……
    だから、1人で抱え込まなくていいんですよ?」

ハヤテ「…………」

ハヤテの中でせき止められていた何かが、崩れる。

ハヤテ「うっ……うああああ!」

ハヤテの瞳からは涙が溢れ出す。

マリア「……良く頑張りましたね」

マリアはハヤテの頭を優しく撫でる。
その後、ハヤテが泣き終わるまで、マリアはハヤテを抱きしめ続けた。

~小ネタ 忘れたわけじゃ~

クラウス「…………」

タマ「…………」

ハヤテ「……なんか2人とも随分と落ち込んでますね」

ナギ「このSSにおいて、2人の登場シーンは全くと言っていいほどに無いからな」

マリア「皆忘れたわけじゃないですから、ね?」

クラウス「……でも出番はないんですよね、お嬢様?」

ナギ「うむ」

クラウス「…………」

タマ「…………」

ハヤテ「(……SSどころか、最近原作やアニメでもほとんど出番無いしな)」

マリア「(……どうしましょう、かける言葉が見当たりませんわ)」

~終わり~

以上で第二章は終了です。
ここからは物語の後半に入ります。
第三章、最終章の投稿は5/16~18を予定しています。

本日は早く帰ってこれたので、書く時間が作れました。
これから第三章を投下していきます。

―――――――三千院家別宅 ナギの部屋

ナギ「それにしてもマリアは凄いな、ハヤテを養子にしてしまうとは……
   正直、予想外だったよ」

マリア「私の両親が、ハヤテ君なら是非と大歓迎でしたからね」

マリアはナギのベッドに腰掛けながら、微笑む。

ナギ「……ハヤテを救ってくれてありがとうな、マリア」

マリア「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」

ナギ「にしても、これでマリアとハヤテは兄弟になったわけだよな……
   そうすると私がハヤテと結婚した暁には、マリアは本当に私の家族になるな」

マリア「!!」

マリアはナギの言葉を聞き、動揺する。

ナギ「ん? どうした、マリア?」

マリア「い、いえ……
    なんでもありません……」

ナギ「……そうか」

マリア「(…………養子の件以降、ますますハヤテ君のことを意識してしまってますね
     はやくこの気持ちをどうにかしないと)」

―――――――三千院家別宅 食卓

ナギ「それではハヤテがマリアの家族に迎えられたことに、乾杯!」

ハヤテ「乾杯!」

マリア「もう、大げさな……」

ナギはハヤテがマリアの家族となったことを祝うため、宴を開いていた。
宴といっても食卓には3人しかいないが。

ナギ「いいじゃないか、こういうことは盛大に祝うもんだ」

ハヤテ「ありがとうございます、お嬢様」

マリア「……ただ騒ぎたいだけでしょう?
    まったく、まだ子供なんだから」

ハヤテ「まぁまぁ……
    さーて、今日は腕によりをかけて料理を作りましたよ!」

ナギ「よくやったぞ、ハヤテ」

マリア「まったく……
    でも悪くないですね、こういうのも」

――――

それから約10分後

ナギ「あっ! そういえば今日は私の好きなマンガが発売する日ではないか!」

マリア「なんですか食事中に……」

ナギ「いや、ずっと発売を楽しみにしてたもんだからつい……」

ハヤテ「僕が買ってきますよ、お嬢様」

マリア「ま、待ってくださいハヤテ君!
    私が行きますから」

ハヤテ「大丈夫ですって
    ここから本屋まで大した距離はありませんし、
    そんなに簡単にはトラブルに巻き込まれませんよ」

マリア「でも……」

ナギ「過保護すぎるぞ、マリア
   頼んでもいいか、ハヤテ?」

ハヤテ「はい」

マリア「…………」

――――

それから数10分後

ハヤテ「もう少しで売り切れるところだったな……
    危ない危ない」

ハヤテはナギに頼まれたマンガを購入し、帰路についていた。

ハヤテ「……ん? あれは?」

ハヤテがふと横を見ると、ボールを追って走っている子供の姿が目に映る。

ハヤテ「!? いけない! 
    あの子、赤信号なのに横断歩道に入ったぞ!」

ボールを追って走っている子供は横断歩道に入る。
子供は自分に迫ってくる自動車に気づいていない。

ハヤテ「なんなんだこのベタな展開は!
    くそ、間に合え!」

ハヤテは子供を助けるため全速力で走り出す。
そしてその直後、人と車が衝突し、周囲に大きな音が響いた。

――――――病院

ハヤテ「ん?…… 
    ここは?」

ハヤテは病院のベッドの上で目を覚ます。

マリア「!! ハヤテ君!」

ナギ「ハヤテ! 無事か!?」

マリアとナギはハヤテの隣にいた。

ハヤテ「え、ええ……」

マリア「……良かった、本当に」

ナギ「済まなかった、ハヤテ…… 
   やはりハヤテを1人で外に出すべきではなかったな……」

2人は目に涙を浮かべている。

ハヤテ「…………」

マリア「ハヤテ君が庇った子供は無事でしたよ
    安心してください」

ハヤテ「……あの」

ナギ「どうした、ハヤテ?」

ハヤテ「……あなたたちは、誰ですか?」

――――

医者「どうやら頭部に外傷を負ったせいで、記憶障害が起こったようですね」

マリア「治るんですか!?」

医者「……分かりません
   一時的なものか、長期的なものか……」

ナギ「そんな……」

医者「とにかく今は見守るしかありませんね……」

ハヤテ「…………」

―――――――三千院家別宅 ハヤテの部屋

数日後

ナギ「ここがお前の部屋だ……
   どうだ、何か思い出したか?」

ハヤテ「……すみません
    自分の名前以外のこと、ほとんど思い出せなくて」

マリア「…………」

マリアとナギは、退院したハヤテを三千院家に連れてきていた。

ナギ「そうか……」

マリア「……今日から寝泊りにはこの部屋を使ってください」

ハヤテ「いいんですか?」

ナギ「ああ……
   ここはお前の部屋だからな」

ハヤテ「ありがとうございます」

―――――――三千院家別宅 リビング

それから数時間後
マリアはナギと2人でリビングにいた。

ナギ「……私がハヤテにお使いを頼みさえしなければ、
   こんなことにはならなかったのに」

ナギの瞳に涙が浮かぶ。

マリア「ナギのせいではありませんよ……
    誰のせいでもなかったんです」

マリアはナギの頭を優しく撫でる。

マリア「むしろナギがハヤテ君をお使いに行かせたから、
    あの子供の命が救われたんです
    ……あなたは間違っていませんでしたよ」

ナギ「マリア……」

マリア「さぁ、くよくよしてるくらいなら、
    ハヤテ君の記憶を取り戻す方法を考えましょう」

ナギ「そうだな……」

―――――――三千院家別宅 リビング

数日後

ヒナギク「遊びに来てあげたわよ、ハヤテ君」

泉「やっほー、ハヤタ君!」

美希「よっ」

理沙「久しぶり」

愛歌「元気だった?」

千桜「無事で何よりだ」

歩「大丈夫、ハヤテ君?」

ナギ「ほら、全員お前の同級性だ
   皆わざわざお前のために来てくれたんだぞ」

ハヤテは女子たちに囲まれる。

ハヤテ「ど、どうも始めまして」

ハヤテは緊張した面持ちで話す。
まるで初対面の人間を相手にするかのように

ヒナギク「…………嘘でしょ?」

千桜「……本当なんだな、記憶障害の話は」

泉「……私たちのことも、覚えてないの?」

ハヤテ「……はい、すみません」

歩「…………うっ」

歩は思わず涙を流す。

ナギ「だ、大丈夫か?」

歩「ごめんね、本当に辛いのはハヤテ君の方なのに……
  でも、今は1人にして……」

歩はその場を立ち去る。

ヒナギク「……私、歩の傍にいるわ」

ヒナギクは歩を追いかけて行く。

ハヤテ「…………」

――――

それから数10分後、ハヤテは誰もいない部屋に1人佇んでいた。

ハヤテ「…………」

ハヤテは悲しげな表情を浮かべ、椅子に座っている。
そんなハヤテに1人の女性が歩み寄る。

マリア「……大丈夫ですか? ハヤテ君」

ハヤテに歩み寄ってきたのはマリアであった。

ハヤテ「…………ええ」

マリア「同級生の皆さんはもう帰ったんですか?」

ハヤテ「…………はい」

マリア「そうですか」

マリアはハヤテの隣に座る。

ハヤテ「……僕って本当にダメな奴ですね
    折角、皆が僕のために来てくれたのに……
    何一つ思い出せない」

マリア「自分を責めないでください……
    ハヤテ君は悪くありませんわ」

ハヤテ「…………」

マリア「……ゆっくり思い出せばいいんです
    それに例え記憶が戻らなかったとしても、
    これから新しい思い出を作っていけばいいんです」

ハヤテ「マリアさん……」

マリア「……ハヤテ君は笑顔が一番似合いますよ
    だから明るく楽しく笑いながら生きていきましょう、ね?」

ハヤテ「……はい!」

ハヤテはその日、退院して以来始めての笑顔を見せた。

―――――――三千院家別宅 リビング

それから数日後

ナギ「しかし大したものだな、ハヤテは
   記憶を失っても、執事の仕事は完璧にこなしているじゃないか」

ハヤテ「体が勝手に動いてしまうんですよ、はは」

マリア「……もはや達人の域ですね」

ハヤテは記憶こそ失えど、普段と変わらぬ仕事ぶりを発揮していた。

ハヤテ「さて、料理が終ったら次は掃除ですね」

ナギ「今日の掃除は無しでいい
   その代わり、後で咲夜と伊宮が来るから私と一緒にもてなせ」

ハヤテ「さ、咲夜さんですか……」

マリア「咲夜さんがどうかしたんですか?」

ハヤテ「……あの方、この前会うなり僕の頭を殴ってきたんですよ
    叩けば記憶が戻るって言って……」

マリア「…………」

ナギ「ハヤテ、それはボケというものだ」

ハヤテ「……いや、多分あれは本気でしたよ」

―――――――三千院家別宅 ハヤテの部屋

それから半日後

ハヤテ「さてと、今日の仕事は終ったな……
    よし、宿題始めるか!」

ハヤテがカバンからノートや筆記具を取り出していると、
部屋をノックする音が聞こえてくる。

ハヤテ「はい、どうぞ入ってください」

マリア「失礼します……
    さーて今日も見ましょうか、お勉強」

ハヤテ「いつもありがとうございます、マリアさん」

――――

マリア「よく頑張ってますね、ハヤテ君
    ほとんど記憶が無い状態からよくぞここまで」

ハヤテ「記憶障害ということで多少の特別扱いはしてもらっていますが、
    それでも白皇学園の授業についていくのは必死なんですよ……」

マリア「確かにあの学校は容赦が無いですからね……」

ハヤテ「……マリアさん、いつもありがとうございます」

マリア「ん? 何がですか?」

ハヤテ「色々とです
    勉強を見てもらったり、執事の仕事を教えてもらったり」

マリア「ああ、気にしないで下さい
    それくらい」

ハヤテ「……記憶を失ったときは本当に辛かった
    でも、マリアさんが傍にいてくれたから僕は立ち直ることができたんです」

マリア「えっ?……」

ハヤテSSなんて珍しいな
一期と二期面白かったから漫画集めたんだけど同人誌編の途中から買ってないなあ…
アニメは三期も途中で切っちゃったし…

ハヤテ「マリアさんが新しい思い出を作っていけばいいって言ってくれたから、
    僕は前に進めた気がするんです
    ……ありがとうございます、僕を助けてくれて」

ハヤテはマリアに微笑みかける。

マリア「……当然ですよ、私たち家族ですから」

ハヤテ「…………すみません
    未だに僕は自分の家族のことすら思い出せなくて……」

マリア「いいんですよ、気にしなくても」

ハヤテ「……でも、家族だからですかね?
    なんだかマリアさんと一緒にいると安心するんです」

マリア「えっ……」

ハヤテ「マリアさんの前では何も隠さなくてもいいというか……
    すごく朗らかな気持ちでいられるんです」

ハヤテは爽やかな表情を浮かべる。

マリア「そ、そうですか……」

ハヤテ「ずっと一緒にいてほしいなって、そう思うんです」

マリア「!?」

マリアの動悸が激しくなる。

ハヤテ「マリアさんみたいな人が彼女だったらな、なんて……
    ははは……」

マリア「なっ!?」

マリアは顔を真っ赤にする。

ハヤテ「何を言ってるんでしょうね、僕は……
    マリアさんは家族なのに……
    今の言葉は忘れてください」

マリア「………………あ、あの、ハヤテ君」

ハヤテ「はい?」

ハヤテ「はい?」

マリア「……私たちは家族と言っても、養子と実子の関係なんです」

ハヤテ「…………」

マリア「その……民法の上では、私たちは一応結婚することができるんです」

ハヤテ「…………」

マリア「いや、だからどうっていうわけじゃないんですけどね……
    ははは………」

ハヤテ「…………」

マリア「……あれ? ハヤテ君?」

ハヤテ「……ぐぅ……すぅ……」

ハヤテは寝息をたてる。

マリア「…………」

――――

マリア「これでよしっと」

マリアはハヤテをベッドに運んでいた。

マリア「会話中に寝るなんて……
    まったく、ハヤテ君はまったく!」

マリアはベッドの隣まで持って来た椅子に腰掛ける。

マリア「……本当にしょうがない人ですね」

マリアはハヤテの顔を見つめる。

マリア「……ハヤテ君
    私たち、色々あったんですよ?
    あなたが私の両親を救ったり、私があなたを両親から救ったり」

ハヤテは安らかな表情で眠っている。

マリア「そういえば、あなたを最初に見つけたのは私でしたね……
    クリスマスイブに1人雪の中立っていたんでしたっけ」

マリアはハヤテとの思い出を振り返る。

マリア「他にもお風呂で何度か出くわしたり、白皇高校の推薦書を書いてあげたり、
    一緒に旅行に行ったり、風邪のときに看病してあげたり……
    思い出すとキリがありませんね」

マリアは天井を見上げる。

マリア「ふふ、楽しい思い出ばっかりね……
    私、あなたに出会えて本当に良かった」

マリアはハヤテの手を握る。

マリア「ハヤテ君……私……
 









    あなたのこと、好きなの」

そう言い終えた直後、マリアの瞳から涙がこぼれ落ちる。

マリア「あれ?……おかしいですね……
    涙が止まらない……」

マリアの瞳から流れ落ちる涙の量が、増えていく。

マリア「…………うっ……
    忘れたなんて……言わないで……
    一緒に過ごした……あの日々を……」

そしてマリアは泣き崩れる。
その後、マリアはハヤテの手を握りながら眠りに着いた。

―――――――三千院家別宅 マリアの部屋

翌日

マリア「……あれ? 
    ここは……私の部屋?」

マリアは自分の部屋で寝ていることに気づく。

マリア「……たしか昨日はハヤテ君の部屋にいたような?
    いつの間にか戻ってきたのかしら……
    まぁ、いいですわ」

マリアが起床しいつも通りの生活を始めようとしたそのとき、
ナギがマリアの部屋に飛び込んでくる。

ナギ「大変だマリア! ハヤテの記憶が戻ったぞ!」

マリア「えっ?……」

―――――――三千院家別宅 リビング

マリア「ハヤテ君!!」

マリアは駆け足でハヤテのいる部屋まで来た。

ハヤテ「おはようございます、マリアさん」

マリア「き、記憶が戻ったって本当ですか!?」

ハヤテ「ええ、全部思い出しましたよ」

マリア「!!」

マリアはハヤテに抱きつく。

ハヤテ「!? マ、マリアさん?」

マリア「良かった……」

マリアの瞳に、涙が浮かぶ。

ハヤテ「……心配をおかけして、すみませんでした」

マリア「本当ですよ、もう……」

――――

ハヤテ「それではもう学校に行きますね
    早く皆に記憶が戻ったことを知らせたいですから」

マリア「ええ、行ってらっしゃい」

ナギ「さあ行くぞ! ハヤテ!」

ハヤテ「はい、お嬢様!」

マリア「ふふ、ナギがこんなに学校に行きたがるなんて」

ハヤテ「あっ、そうだ
    マリアさん」

マリア「はい?」

ハヤテ「昨日のことですが……
    僕も、ですよ」

マリア「!?」

マリアはハヤテの突然の言葉に驚く。

マリア「そ、それはどういう……」

ハヤテ「では行ってきます!」

マリア「ちょっと、ハヤテ君!」

慌てるマリアとは対照的に、ハヤテは落ち着いた表情で駆け出していった。

~小ネタ マリアさんじゅうななさい~

ナギ「ハヤテ、早口言葉でマリアさん十七歳って10回言ってみろ」

ハヤテ「え?……
    わ、わかりました」

ナギ「それではよーい……
   スタート!」

ハヤテ「マリアさん十七歳、
    マリアさん十七歳、
    マリアさん十七歳、
    マリアさんじゅうななさい、
    マリア三十――」

マリア「それ以上言うとジャンクにしますよ?」

~終わり~

以上で第三章は終了です。
次はいよいよ最終章となります。
次回の投稿は、5/16の夜を予定しています。

>>130
このSSはアニメ第二期まで見ていれば話の内容が分かるよう作っています。
マリアさんが好きなら是非見ていっていただければと思います。

>>45
マリアって結局どうなんだろうね。畑絵ではびっくりするくらい板な時もあれば普通に膨らんでいるときもある。同人誌では大きめに描かれているのが多いけど。

乙です

>>145
作者もマリアをどこに入れるかは大分悩みました。
ハヤテはフツウの女の人が好きらしいので、結局フツウに入れました。

>>146
ありがとうございます。
頑張って最終章書きます。

支援してくださる方々、お待たせしました。
最終章、投下していきます。
どうぞ最後までお付き合いください。

―――――――三千院家別宅 リビング

あれから数日後

マリア「…………」

――――僕も、ですよ
マリアはハヤテの言葉を思い出す。

マリア「……あれってどういう意味なんですかね」

マリアは窓から外を眺めながら、思いふけっている。

ハヤテ「ただいま戻りました、マリアさん」

マリア「!?」

マリアはいつの間にか背後にいたハヤテに気づく。

マリア「お、おかえりなさい……」

ハヤテ「では早速、屋敷の掃除を始めますね」

マリア「は、はい……
    あの、ハヤテ君!」

ハヤテ「はい?」

マリア「……やっぱり、なんでもないです」

ハヤテ「はい、分かりました」

マリア「(……今日も聞けませんでしたわ)」

―――――――三千院家別宅 キッチン

数時間後

ハヤテ「マリアさん、リゾットができました」

マリア「はい、ご苦労様です」

マリアとハヤテは夕食を作るため、共にキッチンにいた。

マリア「あれ?……
    ハヤテ君、ほっぺたにご飯粒が付いていますよ?」

ハヤテ「あぁ、味見したときについてしまったんですね」

マリア「……取ってあげます」

マリアはハヤテの頬に付いた米粒を指で取り、自分の口に運ぶ。

ハヤテ「!? マ、マリアさん……」

ハヤテの顔は真っ赤になる。

マリア「ふふっ、ごちそうさま」

マリアは慌てるハヤテとは対照的に、落ち着いた笑みを浮かべる。

ハヤテ「は、はい……」

ナギ「…………」

ナギは物影から、2人のその様子を見ていた。

―――――――三千院家別宅 ナギの部屋

数時間後
時計は午後11時を指している。

マリア「さて、そろそろ寝ますか、ナギ」

マリアはベッドに腰掛ける。

ナギ「……その前に、話がある」

マリア「話、ですか?」

ナギはマリアに真剣な眼差しを向ける。

マリア「どうしたんですか、ナギ?」

ナギ「マリア、お前…………




  ハヤテのこと、好きなんだろ?」



マリア「!?」

マリアは動揺を隠しきれなかった。

ナギ「……やっぱりか」

マリア「…………」

マリアは違うと言いたかったが、出来なかった。
自分の中で大きくなったその気持ちを、もはや誤魔化すことができなくなったいた。

ナギ「何年一緒にいたと思ってるんだ……
   気づかないはずがないだろう?」

マリア「…………」

ナギ「…………本当はお前がハヤテが好きなこと、とっくに気づいてたんだ
   気づいてて、私は今まで知らない振りをしてきた…………
   でも、それももう限界だった」

マリア「ナギ、私は…………」

ナギ「……今日は、別々の部屋で寝よう」

マリア「…………」

――――

翌日

ハヤテ「おかしいなぁ……
    マリアさん、どこにもいないぞ」

ハヤテは屋敷内でマリアを探し回っていた。

ナギ「おはよう、ハヤテ」

ハヤテ「あ、お嬢様
    マリアさんを知りませんか?」

ナギ「……マリアなら、昨日出て行ったよ」

ハヤテ「へ?」

ナギ「両親の元に戻ると言ってた」

ハヤテ「!?」

ハヤテは突然の知らせに驚く。

ハヤテ「そんな……だって僕には一言も」

ナギ「急用なんだとさ」

ハヤテ「…………そうですか
    ちなみにいつ戻ってこられるかはご存知ですか?」

ナギ「……多分もう、戻ってこないだろう」

ハヤテ「なっ!?」

一瞬、ハヤテの頭の中が真っ白になる。

ハヤテ「ど、どうして!?」

ナギ「……色々あるんだろ」

ハヤテ「ぼ、僕、屋敷に戻るようマリアさんを説得してきます!」

ナギ「待て、ハヤテ!
   私たちの都合で連れ戻すべきじゃない!」

ハヤテ「何を言ってるんです!?
    お嬢様はそれでいいんですか!?
    マリアさんは家族同然の人でしょう!?」

ナギ「…………」

ハヤテ「……僕にとってもかけがえのない家族なんだ
    行かせてください」

ナギ「……行かないでくれ」

ナギはハヤテの腕を掴む。

ハヤテ「お嬢様?……」

ナギ「私を……1人にしないでくれ……」

ナギの瞳に涙が浮かぶ。

ハヤテ「……マリアさんを説得したら、すぐに戻ってきます」

ナギ「それでも行かないでくれ……お願いだ……」

ハヤテ「………………分かりました」

――――

それから数日後

ハヤテ「お待たせしました、お嬢様
    飲み物買って来ましたよ」

ナギ「ありがとう、ハヤテ」

ある日の休日、ナギとハヤテは外に遊びに出ていた。

ハヤテ「それにしても珍しいですね
    お嬢様が外に出たいと言うなんて」

ナギ「流石に家の中でデートというわけにはいかないだろ?」

ナギはハヤテの手を握る。

ハヤテ「デ、デートですか?」

ナギ「そうだ
   さぁ行こう、ハヤテ
   2人だけで目一杯楽しもう!」

ナギはハヤテの手を引っ張る。

――――

数時間後

ナギ「今日も楽しかったな、ハヤテ」

ハヤテ「ええ、存分に楽しませていただきました」

2人はデートを終え、帰路についていた。

ナギ「……そうだ! 今日の夕食は私が作ろう!」

ハヤテ「!? ど、どうしたんですか、お嬢様?」

ナギ「まぁその……
   お前に手料理を食べさせてやろうと思ってな」

ナギは照れながら言う。

ハヤテ「お、お気持ちは嬉しいですが……その……」

ナギ「……安心しろ
   今度はきちんとレシピを見ながら作る
   少なくともポイズンクッキングにはしない」

ハヤテ「そ、そうですか……
    あれ、ここは……」

ハヤテは立ち止まる。

ナギ「ん? どうしたんだ、ハヤテ?」

ハヤテ「……ここは、僕が始めてマリアさんと会った場所なんです」

ナギ「!!」

ハヤテ「あの日はクリスマスイブでした……
    マリアさんからもらったマフラー、暖かかったなぁ……」

ナギ「…………」

ハヤテ「マリアさん、今頃どうしてるかな……」

ハヤテは切ない表情を浮かべながら、空を見上げる。

ナギ「…………」

ハヤテ「そういえば、お嬢様と出会ったのもクリスマスイブでしたね
    はは、懐かしいや」

ナギ「……そうだな」

―――――――三千院家別宅 リビング

数日後

ナギ「なぁハヤテ……
   突然なんだが、泥棒に盗まれた宝石を取り戻してきてくれないか?」

ハヤテ「ほ、宝石ですか?」

ナギ「あぁ……
   この世に1つしかないと言われるサファイアでな……
   三千院家が所有していたものを、泥棒に盗まれたんだよ」

ハヤテ「そ、それは一大事ですね!」

ナギ「幸い泥棒たちの居場所は分かってる……
   あとは取り戻すだけだ」

ハヤテ「分かりました!
    すぐに取り戻しに行きます!」

ナギ「……なぁ、ハヤテ」

ハヤテ「はい?」

ナギ「危険だと思ったら、すぐに逃げてもいいからな?」

ハヤテ「……お気遣いありがとうございます、お嬢様
    ですが大丈夫です
    僕はちょっとやそっとじゃ死にませんから」

ナギ「……そうか」

―――――――三千院家別宅 リビング

数日後
ハヤテは無事に泥棒たちから宝石を取り戻し、ナギに届けていた。

ハヤテ「無事奪還して参りました
    どうぞ、お嬢様」

ハヤテはナギに宝石を手渡す。

ナギ「……ご苦労だったハヤテ」

ハヤテ「いえいえ、大した苦労はしてませんよ
    実際泥棒たちは大して反抗することなく、宝石を置いて逃げていきましたから」

ナギ「そうか……きちんと手はずどおりにやったんだな……」

ナギは小声で言う。

ハヤテ「ん? 今何か仰られました、お嬢様?」

ナギ「いや、なんでもない」

ナギはハヤテから宝石を受け取る。

ナギ「……さて、お前にはこれを取り戻してもらった謝礼をせねばならんな」

ハヤテ「謝礼なんていりませんよ
    お嬢様の執事として、当然のことをしたまでです」

ナギ「いや、そういうわけにはいかん……
   そうだな、謝礼の額は……
   1億5000万だな」

ハヤテ「……へ?」

ナギ「このサファイア、オークションで競り落としたときの値段が15億なんだよ……
   10%だから謝礼としては妥当な額だろ?」

ハヤテ「……いっ、いや……それは」

ナギ「良かったじゃないか、ハヤテ
   今まで働いた分も合わせると、これでお前は借金を全部返し終えたことになるな」

ハヤテ「…………え?」

ナギ「お前はこれで自由だ……
   だから、行けよ」

ハヤテ「お嬢様、一体何を……」

ナギ「……気づかないとでも思ってたのか?
   お前のことは、誰よりも私が分かってるんだぞ」

ハヤテ「…………」

ナギ「お前が好きな場所に……
   お前が好きな人のところに行けよ、ハヤテ……」

ハヤテ「お嬢様…………」

ナギ「とっとと行けよ! ハヤテのバカ!」

ハヤテ「…………ありがとうございます、お嬢様!」

ハヤテは走り出す。

―――――――マリアの家 裏庭

マリア「今夜は月が綺麗ですね」

マリアは自宅の裏庭で、夜空を見上げていた。

マリア「……そういえば、彼と出会った日の夜空もこんな感じでしたね」

マリアは初めてハヤテと会った日のことを振り返る。

マリア「……今頃どうしてるのかな、ハヤテ君
    ナギとは上手くやっていますかね?」

ハヤテ「ええ、順調ですよ」

マリア「!?」

マリアはいつの間にか、背後に立っていたハヤテに気づく。

マリア「ハ、ハヤテ君!? 
    どうしてここに?」

ハヤテ「おや、知らないんですか?
    執事には神出鬼没のライセンスがデフォルトで備わってるんですよ」

マリア「……初耳ですよ、そんなこと」

ハヤテはマリアに歩み寄る。

ハヤテ「今日はマリアさんに伝えたいことがあってここまで来ました」

マリア「……伝えたいこと?」

ハヤテ「はい」

ハヤテはマリアの目の前に来る。






ハヤテ「好きです、マリアさん
    ずっと一緒にいてください」




マリア「!?」

マリアは驚きのあまり、しばらく沈黙する。

マリア「………………
    あーあ、せっかく今まで我慢してたのに」

マリアはハヤテに抱きつく。

ハヤテ「マ、マリアさん?」

マリア「そんなこと言われたら……
    もう抑えられなくなっちゃうじゃないですか」

ハヤテ「…………その言葉は、
    僕のことが好きだという意味で受け取ってもいいんですか?」

マリア「ええ
    ……責任、取ってくださいね?」

ハヤテ「は、はい! 喜んで」

ハヤテは背筋を伸ばす。

エンダァァァァァァァァ

マリア「さてと……それじゃあ早速両親に挨拶してもらわないと」

マリアはハヤテを抱きしめていた両手を離す。

ハヤテ「……養親とはいえ、自分の両親に挨拶っていうのも変な感じですね」

マリア「ふふ、そうですね
    ……手、繋いでください」

マリアはハヤテに手を差し出す。

ハヤテ「……はい!」

そしてマリアとハヤテは手を繋ぎ、共に歩き出す。

―――――――三千院家別宅 ナギの部屋

ナギ「…………」

ナギはハヤテが去った後、1人ベッドの上で仰向けに寝ていた。

ナギ「ひどいよな、マリアの奴……
   私がハヤテのことが好きだと知っていて、ハヤテを好きになるんだから……」

ナギは腕で両目を覆う。

ナギ「ハヤテもハヤテだ……
   私に告白しておいて、マリアを選ぶなんて」

ナギの瞳に、涙が浮かぶ。

ナギ「……………………
   うっ……ぐすっ……
   どこにも行くなよ、2人とも……」

ナギは枕に顔を押し当てる。

ナギ「ずっと私の傍にいろよ……
   私を1人にしないでくれ……」

徐々にナギの瞳から、涙が溢れ出す。

ナギ「うっ……うあああん!」

その後、ナギは眠りに落ちる寸前まで泣き続けた。

―――――――三千院家別宅 ナギの部屋

ハヤテ屋敷を去ってから2日後

ナギ「……朝か」

ナギはベッドの上で目を覚ます。

ナギ「あれからもう2日か……
   もう明日なんか来なくていいのにな」

ナギは再び眠ろうとするが、どうしても眠れない。
その上、ナギは空腹に悩まされる。

ナギ「……腹が減ったな
   仕方が無い、何か食うか」

ナギはキッチンに向かう。

―――――――三千院家別宅 キッチン

ナギ「……なんだ? 何か音がするぞ」

ナギはキッチンに入る。
そこには1人の青年が立っていた。

ハヤテ「おはようございます、お嬢様
    もうすぐ朝食ができあがりますから、食卓で待っていてください」

ナギ「…………は?」

ナギの視線の先には、一昨日屋敷を去ったはずのハヤテがいる。

ハヤテ「今日の朝食はサラダにハムエッグ、バターロールですよ」

ナギ「…………なんだ、私は夢を見ているのか」

呆然と立ち尽くすナギに向かって、1人の女性が歩み寄ってくる。

マリア「ナギ、起きたなら早く顔を洗ってきなさい」

ナギの目の前には、屋敷を出て行ったはずのマリアがいる。

ナギ「……………………
   間違いないな、夢だこれは」

マリア「夢かどうかは、顔を洗ってから判断してください」

ハヤテ「まぁ現実ですけどね、これ」

マリアとハヤテは、共にナギの目の前に来る。

ナギ「…………一体何をしてるんだ、お前ら?
   屋敷を出て行ったんじゃないのか?」

ハヤテ「だってお嬢様、仰ったじゃないですか
    好きな場所に、好きな人のところに行けって」

マリア「私も出て行けとは、一言も言われていませんし」

ナギ「……………………はぁー
   まったく、しょうがない連中だな
   どうせ、私がいないと寂しいんだろ?」

ハヤテ「あはは、バレちゃいました?」

マリア「まぁ、当たってますね」

ナギ「……仕方が無いから2人ともここに置いてやる
   感謝するんだな」

マリア「恩に着るわ、ナギ」

ハヤテ「ありがとうございます、お嬢様!」

ナギ「言っとくが、私の目の前でいちゃついたりしたら、屋敷から放り出すからな?」

ハヤテ「……はい」

マリア「……分かりました」

ナギ「ああ、それと……」

ハヤテ「はい?」

ナギは瞳に涙を浮かべる。

ナギ「……戻ってきてくれて、ありがとう」

そう言った直後、ナギは2人に抱きついた。

―――――――三千院家別宅 リビング

それから約1年後

ハヤテ「早いものですね……もうクリスマスイブですか」

ナギ「ああ……
   それよりハヤテ、例のブツは用意してあるのか?」

ハヤテ「ええ……」

ハヤテはポケットから小さなものを取り出す。

ナギ「……しょぼいな」

ハヤテ「そう言わないでくださいよ……
    これでも頑張ったんですよ?」

ナギ「ほれ、受け取れ」

ナギはそう言って、ハヤテにあるものを手渡す。

ハヤテ「こ、これは!……
    受け取れません、こんな高価なもの!」

ナギ「三千院家をナメるな
   その程度のものなら、腐るほど所有してるんだよ」

ハヤテ「でも……」

ナギ「私からの餞別だ、黙って受け取れ
   その代わり、それは私が貰っておく」

ナギはハヤテが持っている小さなものを掴み取る。

ハヤテ「……ありがとうございます、お嬢様」

ナギ「……上手くやれよ?」

ハヤテ「はい、必ず!」

ハヤテは駆け出す。

―――――――三千院家別宅 裏庭

マリア「今夜は月が綺麗ですね……」

マリアは裏庭のベンチに腰掛け、夜空を見ていた。

ハヤテ「……ここにいたんですね、マリアさん」

マリア「ああ、ハヤテ……
    ごめんなさい、わざわざ呼びに来させて」

マリアは立ち上がる。

マリア「さてと、それじゃあ屋敷に戻りますか」

ハヤテ「その前にマリアさん……
    僕からのプレゼントです」

マリア「えっ?……」

ハヤテは先ほどナギから手渡されたものを取り出す。

マリア「それは……指輪?」

マリアの目には、指輪が映る。
かつて、ハヤテがナギのために取り戻したサファイアの付いた指輪が

ハヤテ「マリアさん」

マリア「は、はい?」






ハヤテ「僕と家族になりませんか?」




ハヤテはそう言いながら、指輪をマリアに差し出す。

マリア「……ええ、喜んで」

マリアはその指輪を受け取り、左手の薬指に付ける。

ハヤテ「それでは、行きましょうか」

マリア「はい、ナギも待っていますし」

そして2人は手を繋ぎ、共に歩き出していった。









後に2人はこう語る。
2人が出会ってから結婚するまでの時間は、まるで一瞬
――ハヤテのごとくであったと

以上でこのSSは終了です。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

完結乙です

>>169
ほとんど間を空けず投稿していたのに、絶妙なタイミングで挟んでくるとは……
やはり天才か

>>184
ここまで読んでくださってありがとうございます。


余談ですが、作者が指輪の宝石にサファイアを選んだのには2つの理由があります。
1つはハヤテの髪の色を連想させるということ
2つはサファイアは司教の叙任の証など、キリスト教において神聖な物として扱われていること
この2つです。

今一気読みしてきた
乙です

>>186
>今一気読みしてきた
感謝感激です。
よければ次はじっくりと読んでいってください。

お疲れ良かったよ!

>>188
ありがとうございます。
もしよければ、今後より良いSSを書くためにどこが良かったか
もしくはどこが悪かったかなどを教えていただければ幸いです

完結お疲れさまでした
それぞれのキャラがいきいきとしていてたいへん魅力的でした
ただ一つ欲をいわせてください
伊澄さんの『ナギの身近な人間がハヤテを好きになってはいけない』という台詞をきいていたマリアさんが葛藤する描写があればなおよかったと思います
お疲れさまでした

>>190
>それぞれのキャラがいきいきとしていてたいへん魅力的でした
ありがとうございます。
ただこれについては作者の功績ではなく、魅力的なキャラを作り上げた畑先生の才能がものを言ったのだと思います。
>伊澄さんの『ナギの身近な人間がハヤテを好きになってはいけない』という台詞をきいていたマリアさんが葛藤する描写があればなおよかったと思います
作者がもっと原作を読み込んでいれば書けたかもしれませんね……
SSを書く前に、きちんと原作を読み直しておくべきでした。

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