千早「夢日記」 (53)
「そろそろ寝ようかしら」
千早はベットに向かい枕の横にノートとペンを用意する。もちろん夢日記のためだ。
「さあ今日はどんな夢が見えるかしら」
千早は眠りについた。
ここで千早の夢日記の話をしよう。彼女がそれを始めたのは数ヶ月前、偶然ネットで存在を知ったからである。最初はちょっとした好奇心で始めたのだが記録をしているうちに夢中になり、現在では毎日のように明晰夢を見るようになっていた。
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眠りに入って数分後、落ちたはずの千早の精神は自身の夢の中で覚醒した。
「ここは ………」
千早は辺りを見回す。見慣れた風景。
自身のいる場所は765プロの事務所である事が分かった。
「まあ、見慣れてる場所ではあるけど。人がいない所なんて見たことなかったから逆に新鮮ね」
千早の夢は大きく3つに分かれる。
第一に登場人物が千早しかいない場合
第二に他人が最初から登場してる場合
第三に本当に少ないが千早が知らない人物や風景が登場する場合である。
「新鮮さを感じてるのも時間の無駄だし、とりあえず春香を呼び出しましょうか」
千早が春香の事を考えると、目の前に春香が現れた。このように千早は自分の夢を改変することができた。千早が空を飛びたいと思えば自由に飛び回ることができる、欲しいものなら何でも手に入れることができた。
もちろん、夢の中での話だ。
ジリリリ…ジリリリ!!
目覚ましの音で目が覚める。千早は眼をこすりながら目覚まし時計の音を止め、すぐに枕の横に置いてあるノートに本日見た夢の内容を記録した。
こうしておけば夢の内容をいつでも思い出せる。そして、思い出せさえすれば好きな時に続きから見ることできた。
「これで良しと」
今回は昨晩の春香との夢の記録する。
これが千早の日課であった。
「おはようございます」
事務所のドアを開き挨拶をするとPと音無さんの声が返ってきた。ソファに座って観察して見ると二人は書類を確認しながパソコンの画面を除き混んだり、手帳に書き込んだりしている。
(今日は遅くなるかもしれないわね)
二人を見てそう思った。
「おはようございます!!」
突然、事務所中に新たな声が加わる。
千早にとってはとても聞き覚えのある声だ。
声の主に二人と挨拶を交わすと千早の座っているソファに近づいてくる。
「おはよう春香」
「おはよう千早ちゃん。今日も仕事頑張ろうね」
春香はそう言って千早の隣に腰掛けた。
たわいない親友同士の会話である。
春香は親友で彼女との会話はいつも驚きに溢れています。それは彼女が純粋な心で世界を見ていて、発見や出来事を私に教えてくれるからです。本当に私にはすぎた友人だと思います。
しかし、今日の会話にはいつも感じる。新鮮さをあまり感じる事は出来ませでした。理由は分かっています。私が夢の中で春香とたくさん会話をしたので今日初めてではなく、昨日からずっと会話を続けているように感じてしまっているからです。
「千早ちゃん。それで今度の土曜日の予定なんだけど」
「朝9時に公園に集合よね。覚えてるわよ」
「え!?そんな話したっけ!?」
ハッ!!
「ごめんなさい。これは夢の話だったわ。実は今朝、春香とこんな風に会話している夢を見たから………」
恥ずかしくて心臓が飛び出しそうでした。夢日記をつけ出してからというもの夢の記憶がハッキリしすぎて現実と間違う時があります。
気をつけなければ変な人だと思われてしまいます。
とりあえず誤魔化せは出来たようですが、その出来事を一日中引きずってしまい春香との会話は普段に比べ少しだけぎこちなくなってしまいました。
理由は理由ですし、春香に非はありません。それ以前に謝るような問題でもありません。そのため、モヤモヤした気持ちが私の心に残りました。
こういう時は早く寝るのが一番です。
私はいつもより早くベットにもぐり込みました。
朝、起きると目覚ましを止めノートに夢の内容を記録します。
その内容は、四条さんではありませんがここではトップシークレットなので書くことは出来ません。ヒントを上げるとすれば私にとって本当に幸せな時間だったという感想くらいです。
しかし、いつまでも幸せに浸っているわけにはいきません。今日も仕事があるのですから着替えて事務所に向かわなければいけません。
家を出るときふとカレンダーが目に入りました。
春香と遊ぶ約束をしている日にち大きく丸が書かれています。
今日は6月22日 空は雲ひとつない晴天です。
(春香との約束 25日)
「千早さん‼︎おっはよーございます‼︎」
事務所に到着すると掃除をしていた 高槻 やよい さんから挨拶されました。
「おはよう 高槻さん。いつも、掃除してくれてありがとう。事務所が綺麗なのは高槻さんのおかげね」
(高槻は今日もかわいいわね)
私はソファに座って今度の発表する新曲の楽譜に書き込みをしていく。しかし集中する事が出来ません。それはそうでしょう。あんなに可愛らしい天使のような存在が目の前にいるのですから。
「千早さん。隣座ってもイイですか?」
「えっ高槻さん⁉︎」
正直、信じられない発言で気絶しそうになりました。
「ハッ⁉︎ここは?私の高槻さんは⁉︎」
状況を確認すると今いる場所が自分の家でありベットの上である事が分かりました。さっきまでの光景は私の夢の中での出来事だったようです。
時間を確認すると、起床時間より一時ほど早い事が分かりました。しかし、完全に目が覚めてしまったのでしかたなく身仕度を始める事にしました。
時間がいつもよりあるのですTVを見ながらゆっくりと朝食をとることにしました。
「栃木県にお住まいの波平さんが本日、255歳の誕生日を迎えました………」
私はあまりニュースを観ないので知りませんでしたが、ここ一年間ほどで平均寿命が200歳ほど伸びたようでした。
「今日はゆっくり朝食も取れたし気分がイイわ」
私は家出る前にカレンダーを確認しました。
当たり前ですが本日も6月22日
夢の中と合わせて2度目の出勤です。
事務所にはPが朝から忙しそうにしています。
その顔には疲れが見えて目のクマなんてお風呂のカビのように真っ黒です。
「また、徹夜ですか?Pも私たちの事だけじゃなく自分の事も考えて休んで下さい」
「ありがとう。でも大丈夫まだ67時間ほどしか働いてないからな」
私はその言葉に安心しました。最近出来たばかりの労働基準では連続就業時間は120時間までは適正とされているからです。
「しかし、ずっとPCを見てると目が疲れてくるな。千早、そこにあるサ○ポールとってくれないか?」
私がサ○ポールを渡すとPは目を開き数滴垂らしました。すると目のクマは消え真っ白になりました。
「ふぅやっぱ効くわー」
Pは大きく伸びをしています。
私はサ○ポールが目薬にもなることを知りませんでしたが。しかし、パッケージを見て見ると確かに【トイレの黄ばみと目の疲れに‼︎】と書かれていました。
私も帰りにドラックストアで買ってみることにします。
「おはよっあっ‼︎」ドンガラガッシャン‼︎………
春香が挨拶と同時に転んでパーツが飛び散りました。彼女はサイボーグなので、こんなことは日常茶飯事です。
私は足元に転がってきた腕のパーツを春香に手渡します。
「ありがとう千早ちゃん‼︎いつもゴメンね」
「イイわよ。迷惑をかけてるのはお互いさまだし私たち親友じゃない」
春香は腕パーツを元の場所に差し込むと私の隣に座ってお喋りを始めました。彼女は話では最近エキストリーム出勤にはまっていて今日は中国の万里の長城を見てから出勤してきたそうです。
「千早ちゃんもサイボーグになりなよ。楽しいよ」
私はあまり改造にのりきではないので断りました。
「ええ、千早ちゃんと一緒に日本一周してから出勤。絶対楽しいと思うんだけどな」
今日の仕事はTVドラマの撮影でした。
このドラマは視聴率がよく140%を超えています。そのため監督のこだわりは強く何度もカットを繰り返します。
そのため時間がかり終わる頃には辺りが暗くなっていました。私は監督に挨拶しようと探しましたが見つかりません。
「お疲れさま、千早ちゃん今日もよかったよ」
突然、監督の声がしました。声がした方向を見ると大きなクマのように大きな毛玉が監督の声で喋っていました。
私は忘れていた事を思い出しました。監督は全身の毛が伸びやすい体質らしく一日でクマのように毛むくじゃらになってしまう事を………
「今日もありがとうございました」
私は監督とスタッフに挨拶をして現場を後にしました。
私は今事務所に入れずにいます。
もちろん、事務所の鍵は空いていますし、中に人もいます。しかし、私は事務所に入れずにいます。
理由はドアを開けて見るとわかります。
ドップン、
肉の壁に阻まれて中に入る事が出来ません。
そうです。中にはあずささんがいるのです。
彼女の胸は世界中の誰より大きく彼女一人で事務所が埋まってしまうほどです。そして胸が大きい過ぎるため顔が埋まっていて誰も顔を見た者はいません。
「お疲れさまです‼︎」
私は中に聞こえるよう大きな声で挨拶して事務所を後にしました。仕事を終えた………つまりは楽しみな夢の時間です。
私の今夜の夢は予想と違いとても奇妙な物でした。
なんとサイボーグのはずの春香が人間になっていたんです。私は直ぐに夢だと気づきました。
そして改変しようと思考錯誤したのですが上手くいきませんでした。ちょっと調子が悪いみたいです。
「千早ちゃん大丈夫?今日、なんか変だよ」
夢の中の春香が私を心配しています。
私はこれが夢だと分かっているので
「私は大丈夫よ。春香こそ何時ものメタリックボディはどうしたの?らしくないわよ」
とちょっと強気で言いました。
「??」
春香は何のことだか理解が出来なかったようです。しかしありませんよね。彼女は夢の住人。私が作り出した空想に過ぎないのですから………
そして夢の中での一日が終わりました。
夢の中で寝ると言うのも変な話ですがいつもと同じようにノートとペンを枕元に置いて就寝の準備をしました。そのとき、ふと気になることがありました。
「そう言えばここは何日なのかしら?」
カレンダーを確認すると6月23日でした。
今日は6月23日
春香との約束は明後日です。
本日の仕事は我那覇さんと一緒のようです。
私が現場に先に到着して待っているとしばらくして彼女が到着しました。
「今日もありがとな。グリ実」
我那覇さんはペットである。グリフォンのグリ実に労いの言葉をかけています。そして、グリ実は大声で鳴くと大きな翼を広げて何処かに消えてゆきました。
「我那覇さん。ピク蔵おはよう」
「千早、おはよう」「ピピ」
私が挨拶をすると我那覇さんとその肩に乗っていた妖精のピク蔵が答えます。私は我那覇さんがいつもどうりな事に安心しました。
それは昨日の夢が奇妙だったため。
もしかすると今も夢かもしれないと言う不安定があったからです。どうやら私の考えて過ぎであったようです。
我那覇さんとの仕事を終え今度は四条さんとのラジオの収録です。最初、この企画を聞いた時正直盛り上がりにかけると思った自分がいました。
しかし実際始めて見ると自然体で自分を出すことが出来て、ラジオCDも結構売れているそうです。
「そう言えば気になるニュースがあったのだけど」
「はて?なんでしょう」
「最近、近場で起きている謎のクレーター事件ってのがあるのですけど四条さん知ってますか?」
「いえ、あまりニュースは見ない物で」
「そうですか。それでは話題を変えて四条さん。もし美味しい料理を出してくれるお店を発見したらどうしますか?」
「そうですね。料理とはその環境も合わせて一つの料理だと思っていますので、お店や土地ごと一飲みで平らげてしまします」
四条さんは少し天然のようです。
事務所に戻ると雪歩と真が二人で何かを話しあっていました。
「ここのままだと硬い岩盤に当たちゃうかも」
「そうだね、じゃなこのルートはどうだろう」
私は二人の会話を邪魔する事は出来ません。なぜかと言うと実はこの世界の滅亡までのカウントダウンが始まっていて、世界政府は地球の未来をこの二人にかけたからです。
二人の役割は雪歩が穴を掘り、真がその補助です。
雪歩の腕は連日の穴掘りのため。牛の胴体ほどの太さになっています。 何度か真が「電子式のドリル変えた方が」などと言っていましたが、スコップにはロマンがあるらしく今でもスコップ一つで地下帝国を建設しようとしています。
そして真のほうは、補助とは言いましたが。仕事力では雪歩よりも上です。それはそのはず、雪歩が掘り出す何百万トンもの土をあなの外に運はなければならないのですから…
それは人間の体では不可能なことであったようで、現在真は人間の体を捨て去り5段階ほど変形をして戸愚呂(弟)の妖怪変化時のような姿になっています。
地球の終わりまで後300億年
命運は彼女らにかかっています。
やっと仕事が終わり家に着きました。
現在、午後47時
かなり早く仕事が終わったので早めに帰宅することができました。私は最初に同居人である高槻さんに挨拶をしました。
「千早お姉ちゃん、大好き」
この笑顔を見ると本当に癒されます。ここまで本当に長い戦いでした。私が昔から唱えてた高槻 やよい天使説が近年 学会で発表され、ついに高槻さんの量産化が始まったのです。
今では一家に一人づつ、愛玩用の高槻さんと虐待用のPが飼われていることが当たり前になっています。
「そう言えばこんな話を聞いたのだけど」
「なになに千早お姉ちゃん?」
やよいは私の話にいつも最高の笑顔で聞き入ります。
「実は音無さんがまた婚活に失敗したそうよ」
「またですから」
音無 小鳥
男に振られた数のギネスを持つ女。現在47278532944回連続で振られている。生まれてから一度も彼氏が出来たことがなく彼氏いない歴299年ももちろんギネス記録である。
決して性格、プロポーションと悪くないのだが世界の男性人の中では彼女を振ることステータスとなっている。
なんて会話をしつつ如月 千早の
6月23日が終わった………
夢の中で目が覚めるた。
そして現実と違う感覚に気づく。
「はあ、またこの夢か………」
感覚で昨日見た夢の続きだとわかった。
二日づづけてなんて本当についてない………
努力して見たが夢を改変することは出来ない。
千早は諦めて再び眠りにつこうとした。
しかし、中々眠れない。
それはそうだ。現実での千早は現在寝ている状態。夢の中でまで寝るなんてどうかしている。
それでも千早は眠ろうとした。
途中で携帯が鳴っていたが電源を落として邪魔されないようにした。
本日は 6月24日
「千早が来ていない。何か知らないか?」
とPさんに尋ねられた時、私は昨日の千早ちゃんがおかしかった事を正直に話した。
「春香がサイボーグ?なんだそりゃ?からかってたんじゃないのか?」
「いいえ。あの時の千早ちゃんは本気でした。それにPさんも分かってるじゃないですか。千早ちゃんは冗談を言うような娘じゃありません‼︎」
「確かにそうだな。それに千早の事だ無断欠勤なんてありえない。ここは………」
Pさんが言葉を飲み込む。しかし
「千早ちゃんに何かあったのでしょうか……」
「そ、それは………」
私は不安を言葉にしました。Pさんも同じ心配をしているようです。二人はしばらく無言のまま時間だけが過ぎていきました。
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