竹井久「一雀士に一体『須賀京太郎』」 (230)
<長野県 某所 大ホール>
ザワザワザワ……
洋榎「っと……うちの席は……」
洋榎「ここか。……ん?」
洋榎(隣に座っとるこの女……確か永水の)
洋榎「なあ、アンタ。石戸霞やろ」
霞「え?」
霞「あら、貴女は姫松の愛宕洋榎さん……よね?」
洋榎「せやっ! なんや随分と奇遇やなあー。まさかこないな場所で再会出来るとは思っとらんかったわ」
霞「ふふっ、そうね。でも、ここには各地の麻雀部員が集っているから……こういうことがあっても不思議ではないわ」
洋榎「やな。見る限りやと……」チラ
ワイワイ
洋榎「かなーり、賑わっとるみたいやしな」
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霞「部員全員を引き連れて来ているところもあると聞きます。このホール、かなり規模は大きいと思うけれど……この分だと、直ぐに埋まってしまいそうね」
霞「私の所は他の皆が神事にかかりきりで忙しくて。結局、出席できたのは私だけだったのよ」
洋榎「へえー、アンタ、なんやあの中ではかなり位の高い感じやったけど……。そのアンタに一番暇が出来とるってのは意外やな」
霞「うふふ、買い被り過ぎよ。姫様と比べてしまえば、私の身分なんてあってないようなもの……」
霞「それに、お祓いの腕前で言えば、私以外の皆も超一流ですから。私はあくまで、姫様の『代わり』になれるというだけの話よ」
霞「だから、別にここに来るのは誰でも良かったのよね。こう見えて一応物事の理解に強い私が、講演に赴くには最適だ、という話になっただけのことであって」
洋榎(なんやこいつ。聞いてもおらんのに急に身の上話語りはじめおったで)
霞「愛宕さんこそ、他の部員さん達を連れていないようだけれど……」
洋榎「ん? おー、まあ、その理由はアンタの方と大方一緒や。招待された時は皆来る気マンマンやったんやけど」
洋榎「ちょい前、急にメンバーの一人に用事が入ってしもうて。そんで更に、次々と他の奴らにも用事が、って感じになってな」
洋榎「結局、残ったのがうちだけやったって訳や」
霞「あら……それは災難だったわね。なまじ皆で行くことが決まっていた分、残念の度合いも大きかったでしょうに」
洋榎「せやな。確かにえらい落ち込んだわ。うちも、他の皆もな」
洋榎「でもまあ、これも天から降ってきた災いや思って諦めましたわ。気にしたってしゃあないことはしゃあない訳やし」
霞「成程ね……。何というか……とても心の強い人なのね、愛宕さんは」
洋榎「な、なんやいきなり……。照れくさい台詞吐きおってからに」
霞「ふふ、ごめんなさい。でもこれは正直な感想よ?」
霞「――あら?」
ゾロゾロ・・・
透華「――立――すわ!」
衣「――も目――!」
一「――」ハア・・・
純「――」オイオイ
智紀「……」カタカタ
洋榎「おっ……騒がしいんが来た思うたら、あれ龍門渕やないか」
霞「日本中の私立高校を見ても特に規模の大きく、名門中の名門と名高い龍門渕高校……」
霞「その理事長の娘までここに来ているのね」
洋榎「うちみたいな『凡人』しかけえへんことは無いとは予想しとったけどな……」
ザワザワザワザワ……
洋榎「あん? 今度はなんやワラワラと……って、嘘やろ!?」
小鍛治健夜「この――ため私――」ブツブツ
瑞原はやり「みんなー! はやりだよー☆!」
キャーキャー
戒能良子「はあ……。瑞原プロは行く先々全てがマイステージだとでも思っているのでしょうか」
野依理沙「迷惑!」プンプン
三尋木咏「プロ精神に溢れてて良いんじゃないかなー。知らんけど。ま、むしろそれでこそハヤリさんだとも言えるけどねぃ」
良子「フッ。アイシンクソートゥー。その通りですね」
藤田靖子「カツ丼……」フラフラ
洋榎「今を時めくトッププロ共が勢ぞろいやないかっ!? ここに来んのは高校生だけやとばかり」
霞「彼女達も招待を受けたのね。今が一番忙しいでしょうに……」
霞「少なくとも、彼女達全員の予定が丁度良く空く日、何てこの時期には存在しないはず」
霞「それはつまり、お金の入らない・宣伝にもならない『発表への参加』を事務所側が許したということ。今回の発表は、思った以上に重要視されているようね」
洋榎「ほえー。きっとすごい発表になるんやろなとは元からうちも漠然と思っとったけど。やっぱ半端ないんやなあ」
霞「ええ……。『凄いという感じ』を目に見える形で示された、とでも言うのかしら」
霞「漠然としたイメージを思い浮かべるのと、こうして実感するのとでは、天と地ほどの差があるわ。百聞は一見にしかず、ね」
洋榎「せやなぁ。ま、発表自体はまだ聞いても見てもおらんのやけど」
霞「ふふっ、それもそうね。表現としてはちょっぴり不適当だったかしら」
それから、数十分後……
ワラワラ
洋榎「おー、席も殆ど埋まったみたいやな。開始予定時刻まであとちょっと……」
霞「いよいよといった感じね。周りの皆さんの顔にも緊張の色が浮かんできているわ」
洋榎「さっきまでミーハー共が群がっておったプロ席のあたりも、今はかんさーんとしとるわ。まあ当然っちゃ当然か」
洋榎「この期に及んで騒ぐようなアホは――」
透華「静かになった今だからこそ、あえて大声を上げる!! これぞ目立ちテクニックですわー!!」
衣「衣も目立つぞー!!」ワーイ
純「――」オ、オイ
一「――せん! すみ――!」ペコペコ
智紀「……」カタカタ
洋榎「……おったな」
霞「あらあら。こんなに距離が離れているというのに、あの人たちの声、とてもよく聞こえるわ。このホール、音の通りも良いのね」
洋榎「それを悪用するマヌケがぴったり二名、あそこにおるけどな」
洋榎「あんなん、超名門の理事長の娘じゃなけりゃとっちめられとるところやろ」
霞「そうね……。でもああいうのも個性的で、なんだか雀士らしいとは思うけれど」
洋榎「あー……。いや、流石にあいつらと同類扱いされんのは気に食わんわ」
霞「ふふ……」
霞(正直なところ、大会中のあなたの試合での言動も、龍門渕さんのそれと大差ないと思うけれどね……)
気づいたらもうこんな時間になっていたので、短いですが今日はここまで。
今回も長めなんだろうか まだ見えないけど期待
>>4 修正
洋榎「でもまあ、これも天から降ってきた災いや思って諦めましたわ。気にしたってしゃあないことはしゃあない訳やし」
霞「成程ね……。何というか……とても心の強い人なのね、愛宕さんは」
洋榎「な、なんやいきなり……。照れくさい台詞吐きおってからに」
霞「ふふ、ごめんなさい。でもこれは正直な感想よ?」
霞「――あら?」
ゾロゾロ・・・
透華「――立――すわ!」
衣「――も目――!」
一「――」ハア・・・
純「――」オイオイ
智紀「……」カタカタ
洋榎「おっ……騒がしいんが来た思うたら、あれ龍門渕やないか」
霞「日本中の私立高校を見ても特に規模の大きく、名門中の名門と名高い龍門渕高校……」
霞「その理事長の孫娘までここに来ているのね」
洋榎「うちみたいな『凡人』しかけえへんことは無いとは予想しとったけどな……」
>>7 修正
霞「あらあら。こんなに距離が離れているというのに、あの人たちの声、とてもよく聞こえるわ。このホール、音の通りも良いのね」
洋榎「それを悪用するマヌケがぴったり二名、あそこにおるけどな」
洋榎「あんなん、超名門の理事長の孫娘じゃなけりゃとっちめられとるところやろ」
霞「そうね……。でもああいうのも個性的で、なんだか雀士らしいとは思うけれど」
洋榎「あー……。いや、流石にあいつらと同類扱いされんのは気に食わんわ」
霞「ふふ……」
霞(正直なところ、大会中のあなたの試合での言動も、龍門渕さんのそれと大差ないと思うけれどね……)
>>14
今回は短くなると思います。
他にも矛盾点を見つけたら、ご指摘お願いします。
投下しますね。
その後も暫く、洋榎と霞の他愛の無い話は続いた。
この発表で主催者が見せてくれるものは何であるかという予想から、好きな食べもののことまで。
どんな些細で中身の無い話も、今の彼女達にとっては黄金だ。
育ってきた環境も所属する学校も、性格までもまるきり違う二人だが、それでも共通点はある。それは、同い年であるということと、妹を持つ者同士であるということ。それ以外には無い、たった二つの、ほんのちょっとした共通点。
けれど、それでも彼女達の間に友情を芽生えさせるには十分だった。
そうして、いつの間にやら彼女達は、まるで旧来の親友と談笑するかのように、目の前の新しい友と親しげに話すようになっていた。そこにはもう、よそよそしさは存在していない。
丁度、霞が自分の妹――石戸明星という名前らしい――のことをべた褒めしている時だった。ステージの上にかけられた大時計の針が、一二時を指す。それと同時、ホールの照明が全て落とされた。
予告なき――とは言え、発表が12:00から始まることは事前に知らされてはいたのだが――事態に、辺りからざわめきの声が漏れる。
だが当然、それだけでは終わらなかった。客の困惑を他所に今度は、ステージの中心にスポットライトが当てられる。大分明るいライトだが、ステージ全てを覆うには至らない。
しかし、そのライトがステージを明るく照らすためのものでは無い事は、直ぐに判明した。ライトが当てられた部分の床が縦に割れ、そこから足場がせり上がって来たのだ。
そして、その足場には一人の少女が立っていた。
会場の全員が息を呑む。目に映る光景を信じることができない、という風に。なぜならその少女の顔も、名前も、この場に居る全員にとって既知のものであったからだ。
そう、彼女は――
ザワザワ・・・
???「……」
スゥー
ガチャンッ
洋榎(……ぶったまげた)
霞(こんなの、予想外にも程があるでしょう)
???「……」スゥ ハァ
???「――皆様。ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます」
???「この度皆様をここにお呼びしたのは、他でもありません。世紀の大発明である『あるもの』をお見せするためでございます」
???「……え? そんな回りくどい言い方はせずに、とっととその『あるもの』が何かを教えろって?」
???「ふふっ、申し訳ありません。こちらにも手順というものが存在しますので、その内容を申し上げるのはもう少し先となってしまいます」
???「ですが、ご安心ください。私達の発明は、それこそ超ド級。この世の全てを覆さんとするもの。なれば、それにまつわる説明さえも、とてつもないものとなってしまうのは必然」
???「皆様が退屈なさるようなことは決して無いと――」
竹井久「この清澄高校麻雀部が部長 竹井久が、しっかりと保証致します」
――竹井久。
清澄高校麻雀部を、部長としてインターハイ優勝へと導いた人物。
『悪待ちの女』竹井久本人であった。
洋榎「なあなあ、霞はん。うちの目おかしなしゅうなりましたんやぁ……ってなワケやないよな」
霞「ええ、その筈よ……。彼女の姿は私の目にも、しっかりと映っているわ」
ザワザワ・・・
久「えっと……。どうやら皆様、予想以上に困惑なさっているようね」
久「それなら、先に言っておかなければならないでしょう……」
久「そう、今回の発表会を主催したのは私……」
久「並びに、清澄高校麻雀部のメンバー、全員」
ザワ・・・
久「もしかしたら皆様の中には、インターハイの団体戦を優勝した私たちの姿が、このホールのどこにも見当たらないことに疑問を抱いた方もいらっしゃるかも知れませんが、
これがその理由です」
久「私達のような学生が主催者であることに、ちょっとした不安を覚えてしまうのは当然でしょう。発表に対する皆様の 期待が、今この瞬間も、急速に低下しつつあるのを肌で感じることができます」
久「とはいえ、私達もチンケな学芸会をやるために皆様をお呼びした訳ではありません。この世にいる無数の学者達がたどり着けなかった領域……。
そこへの道を開拓させることが出来たからこそ、私はこうして皆様の前に、自信に満ち溢れた表情で立てているのです。
今はどうか不安な気持ちを抑えて、最後まで私の話を聞いて頂ければと思います」
洋榎(……ほお。随分と自信満々に言い放つやないか)
霞(ふふ。期待できそう、かしら?)
久「さて、突然ですが皆様は、『クローン人間』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?」
ウン……
ソリャ……
マア……
久「……はい。殆どの方が頷いてくれましたね」
久「そう、今や『クローン人間』は、誰もが知るワードとなっています」
久「それは、勿論ウッドデッキィ・アレンウォーカーの『図鑑No.097』の様な、クローン人間を扱った作品が増えてきたことによる影響も強いですが」
久「何より、私達の社会の関心が再生医療の進歩を背景として、クローン技術に向き始めているから、というのが大きいでしょう」
久「しかし、クローン技術の発展は停滞を迎えているというのが現状で、世間一般には、クローン技術は不安定で未熟な技術であるという認識が
広まってしまっています。特に、クローン人間の製造はとてつもなく成功率の低い、また法律で禁止された行為であるので実行しようとするのは論外であると」
久「私も、この意見に真っ向から反論をぶつけようとは思いません。むしろ、今のクローン技術が不安定なものであるというのには、完全に賛成の立場をとっております」
久「ただそれは、私がクローン技術を『否定する立場』に立ったことを意味してはいません。あくまで現状を見て、世間がそう思ってしまうのも仕方が無い、と考えているというだけのことです」
久「今の技術が駄目ならば……そして、このままじっとしていても、その技術に進歩が見込めないのなら……。自分自身が能動的に動いて、そのせき止められた川に新たな路を与えていくしかないでしょう」
久「そう。だからこそ、私達は行動を起こしたのです。世間の認識を覆すため、クローン技術の有用性を証明するため」
久「そして、幾度もの挑戦を試みていった末に……私達はとうとう、成功を手にすることができました」
一同「!!!」
ザワザワ・・・
洋榎「そ、それってつまり……クローン人間の栽培に成功したっちゅうことか!?」
久「はい、その通りです……。愛宕洋榎さん」
久「しかも、只のクローン人間ではありません。そのはるか上を行く……究極のクローン人間」
ザワッ!
霞「究、極……?」
久「それが如何なるものであるのか。その辺りはぐちぐち説明するより、実際にその目でご覧頂く方が断然いいでしょうね」
久「そろそろ本題に入れと思っている方も多くいらっしゃるでしょうし……それに」
久「こちらが余計なことを言わずとも、優秀な雀士である皆様には、その凄さを十二分に理解していただけると思いますから」
久「和! あれを!」指パッチン
カラカラカラカラ・・・
原村和「……」
透華(は、原村和!!)
衣「あーっ! ノノカだ! トーカ、あそこにノノカが居るぞ!」
透華「ええ……」
透華「私よりも目立つなんて……許せませんわ!」
一「ちょ、二人とも……」アセアセ
洋榎(清澄のデジタルピンクか……絹が世話んなったなぁ)
霞(原村さんが押している荷台に乗っているもの……。布に覆われていて中を見ることは出来ないけど、あの大きさからして恐らく……)
霞(それと、さっきから気になっていたのだけれど)チラッ
すこやん ブツブツ
はやりん ニコニコ
のよりん プンスコ
かいのーさん ヒソヒソ
うたたん ウンウン
靖子「……カツど」
霞(プロ勢の顔に、全く動揺が表れていないのは一体何故? 幾ら精神の強い人でも、竹井さんの話を微塵の驚きも無しで聞くのは不可能のはず)
霞(だというのにあの人たちは……まるで元から発表の内容を知っていたかのように、平然としている……)
霞(何かある、のかしら……)
霞(それと、さっきから気になっていたのだけれど)チラッ
すこやん ブツブツ
はやりん ニコニコ
のよりん プンスコ
かいのーさん ヒソヒソ
うたたん ウンウン
靖子「……カツど」
霞(プロ勢の顔に、全く動揺が表れていないのは一体何故? 幾ら精神の強い人でも、竹井さんの話を微塵の驚きも無しで聞くのは不可能のはず)
霞(だというのにあの人たちは……まるで元から発表の内容を知っていたかのように、平然としている……)
和「どうぞ、部長」
久「ん。ありがとね、和」
久「……さて、皆様。今和が持ってきてくれたこれ。布で覆い隠されてはいますが、中身のご想像はもうついていることかと思われます」
久「なので、勿体ぶらずにちゃっちゃとこの布、取っ払っちゃいましょう!」
ばさっ
一同「!!」
須賀京太郎?「……」スゥスゥ
洋榎「あ、あれは……!」
霞「え? え? 彼は確か清澄のマネージャーさんよね?」
霞「あんな拘束具みたいなものに縛り付けられて……」
霞「まさか、彼が――」
健夜「キタァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」ガタッ!
一同 ビクッ
健夜「京太郎くぅぅううううん、だぁああああああああ!!!」
健夜「京くんだぁぁぁああああああああああああっはぁぁあああああああん!!!!!!」
健夜「ぃぃいいやっっふぅうううううううう!!!!」
健夜「ひゃあもう我慢できないよ!!」シュンッ
健夜「京くぅん……カッコいいよぉ」ナデナデ
久「え!?」
和「!?」
来場者「!!??」
久(ちょ、この人どうやって一瞬でステージに)
健夜「あのね、京くん。驚かないで聞いて欲しいんだけど……」
健夜「私、京くんに救われたあの日からずっと……あなたのことを想い続けてたんだよ? ラヴ的な意味で」
健夜「だから、この愛をあなたに思いっきりぶつけたい! んだけど……」
健夜「私、恋愛方面にはとんと疎いから……いざこうやって目と目を合わせて話そうとすると、言いたいことも言えなくなっちゃうんだ……」
健夜「今だってほら、聞いて? 心臓がバクバクして破裂しそう」
健夜「あっ! だ、だからって勿論、こんなちょっとした会話で終わらせるつもりは無いよ!?」アセアセ
健夜「恋愛あがり症の私が、どうすればあなたに思いのたけを伝えられるか……」
健夜「それをある日一晩中考えてた時にね、ふと、すっごい良いことを思いついちゃったんだ」
健夜「それはね……えっと」ガサゴソ
健夜「じゃじゃーん! これです! カセットレコーダー!」
健夜「これに私の想いをあらかじめ込めておけば……いざって時にも安心してそれを伝えることが出来るって気付いたんだ……」
健夜「そっからは毎日毎日、いい台詞を思いついては録音し直し、思いついては録音し直しを繰り返していった。全部合わせたら、
数え切れないくらいの回数になるんじゃないかな」
健夜「仕事だって全然手に付かなかったよ……」
健夜「でも、それもこれも全ては今日という日の為……」
健夜「京くんとこうして話している、今この瞬間の為にやってきたことなんだよ!!」
健夜「だから、聞いてください……」
健夜「私の、思いを――!」カチッ
カラカラ・・・
カセットレコーダー『水着』
カセットレコーダー『と』
カセットレコーダー『ネコミミ』
カセットレコーダー『が』
カセットレコーダー『似合う』
カセットレコーダー『アラサー』
カセットレコーダー『実家暮らし』
カセットレコーダー『だよ』
カチッ
健夜「……」
須賀京太郎?「……」スゥスゥ
久「……」
和「……」
来場者「……」
健夜「……」
健夜「……ふ」
健夜「福与ぉぉぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおあああああああ!!!!!!」
咏「はーいはい。スコヤさん、早く席に戻りましょうねぃ」ガシッ
健夜「イヤだ、嫌ぁぁあああああ!」
健夜「こんなの、こんなのってないよぉおおおお!!」
理沙「観念!」ガシッ
良子「カームダウン。話なら向こうで沢山聞いてあげますから」ズリズリ
健夜「あああああああ……」ズリズリ
はやり「皆さん、お騒がせしましたー☆」
靖子「カッツ丼どんぶらこっこよいよいよい、アソーレ♪」
靖子「……」
靖子「……」キセルスパー…
靖子(飽きたな……)スタスタ
今日はここまで
ありがとうございました
投下していきます
久「え、えっと」
久「おホん。それでは気を取り直して、続きといきましょう」
久「この、装置に縛り付けられている金髪少年……見覚えのある方もかなりいらっしゃる筈です」
久「そう、彼は我らが清澄高校麻雀部の男子マネージャー、須賀京太郎君です!」
久「……ただし、『本物』ではありませんが」
洋榎「ん成程。じゃあそこに縛りつけられとるのは、その須賀京太郎のクローンっちゅうわけやな?」
久「はい、その通りです」
久「あっ、そうそう。言い忘れていました。もし私の話の節々に疑問な点が生じた場合、質問なさるのは大いに結構なんですが」
久「その時は、席に備え付けられている赤いスイッチを押してからにしてください」
洋榎「え? あ、これか……前の席の背中に付いてる……」
洋榎(席の背部の色が保護色んなってて気付かんかったわ)
霞「ふんふむ。そういう用途のものだったのね、これ」
久「そうすれば、その横からマイクが出てくる筈です」
久「質問の内容は会場の人全員が把握しておくべきものですし、何より後ろ側の席に居る人が気軽に質問できないというのは不公平ですからね」
久「ただし、所構わずガンガン質問されるのも困りものですので、私が『良い』と思うまではマイクは出てこない仕組みとなっております」
久「ただ勿論、私の話の最中でも、『あれ? ここちょっと良く分からないから質問したいわね』と思ったのならどんどんスイッチを押してくれて構いません」
久「どの席のスイッチがいつ押されたか、という情報はこちらで管理させて頂いておりますので、そのような人たちには質問の時間に入った際、優先的に質問権が与えられることとなっております」
久「余りにも質問者の数が多すぎて、進行に影響が出てしまうということが無ければ、なるべく全ての人の質問を聞いていくつもりですので、ご安心を」
ヘー…… ザワザワ
洋榎「なんや、えらいハイテクやな」ヒソヒソ
霞「これだけの数の席全てにそのようなギミックが付けられているって、半端なことではないわよね……」ヒソヒソ
久「本来ならば、これは事前に説明しておくべきことでした。不甲斐ない運営を代表して、謝罪します」ペッコリン
久「さて、この須賀君のクローンですが、今はまだ休眠状態にあります」
久「……あっ、今どなたか質問ボタンを押してくれましたね。おそらく休眠状態がどういうものであるのか、という内容の質問でしょう」
久「えっと、休眠状態というのはつまりですね。生命活動の維持に絶対に必要な身体機能以外を全て停止させている状態にあるということです」
久「植物人間モードに入っている、とでも言えば分かりやすいでしょうか」
久「ああ、あと勘違いなさっている方が多数いらっしゃるようなので、一応弁明させてもらいますけど」
久「休眠中の彼の体を負担無く支えるのにこの装置が適していたというだけで、決して彼が暴れるからこうやって無理に拘束しているというわけではありませんよ?」
久「なので今すぐにでも起こしてあげたいところですが、休眠状態から活動状態への移行を急に行ってしまうと、彼の脳に大きな負担がかかってしまいます」
久「それを避ける為には、微弱な電気信号を彼の脳に送り続けて、徐々に、優しく、覚醒させてあげなければいけません」
久「なので、動いている彼を見るのはもう少しだけ先の話となってしまいますね」
久「とは言え彼を起こそうとしている間中、皆様に暇をさせる訳にはいきません」
久「そこで、この須賀君クローンについての映像を幾つか、ご覧頂きたいと思います」
久「まこ! スクリーンお願い!」
カタッ・・・
ウィーン・・・
洋榎「おー、でかいスクリーンやなあ」
霞「何もかもが規格外ね、このホール……」
カタッ
久「まこ、上映の準備は? ……うん、うん。よしっ」ボソッ
久「皆様、お待たせいたしました。準備が整いましたので、さっそく上映の方へ移らせていただきます」
久「先ずは序章として、須賀君クローンの身体能力と知能がどれほどのものであるのかの紹介映像から流していきましょう……」
テレレーン
~タイトル:京太郎クローン 脅威の身体能力~
<どこかの荒野>
洋榎(荒野!?)
久『えー、テステス。ん、マイクはオッケーかしら』
久『カメラはどう、咲? 背景まできちんと映ってる?』
<ダイジョウブデス
久『よしっ!』
洋榎(うお、マジで荒れ果てとる。ここ、絶対日本やぁ無いな……)
久『えー、皆様。おはようございますこんにちはこんばんは。あ、発表は12時からだから、一応こんにちはが正しい挨拶になるのかしら』
久『まあいいわ。それで、本日はこの……』
京太郎クローン1『ウッス!』
久『須賀君クローンを使って幾つか実験をしていきたいと思います』
久『先ずは、筋力の測定から始めましょう』
久『私の後ろに大きな岩が二つ並んでいるのが見えるでしょうか?』
久『今から片方の岩を染谷まこに、もう片方を須賀君クローンに、それぞれ素手で殴りつけてもらいます』
久『それじゃあまこ、お願い』
まこ『はいよ』
まこ『……ふうぅぅぅぅぅ』コォォォ
まこ『はあぁぁぁぁぁ……』
まこ『――!』キッ
まこ『今じゃッ!!』
洋榎(岩相手に今も昔もないやろ……)
まこ『どりゃあああああ!!!』ドゴォッ!
パカッ
久『はい、見事に真っ二つね。岩が』
オオー
ザワザワ……
霞「あらあら、すごいわねぇ……」
洋榎「ほえー。中々のもんやな」
久『次、須賀君クローン』
京太郎クローン1『ウッス!』
京太郎クローン1『ウッス!』ドゴッ!
京太郎クローン1『ウッス!!』ジタバタ
久『はい、見事に真っ二つね。拳が』
久『このように、須賀君クローンに筋力は余りありません』
久『もし、千万が一、須賀君クローンが抵抗するようなことがあっても、雀士の皆様なら簡単に力で押さえつけることが可能でしょう』
久『次に、知能の測定』
久『この測定では、須賀君クローンに幾つか簡単な問題を解いてもらいます』
久『準備はいいかしら?』
京太郎クローン1『ウッス!』
久『よし。じゃー、制限時間は5分で、よーい、始め!』
京太郎クローン1『ウッス!』カリカリ
~5分後~
久『はい、終了。答案を見せてくれるかしら?』
京太郎クローン1『ウッス!』スッ
久『ありがとう。えっと、どれどれ……』
―京太郎クローンの答案―
問一 次の式の?の部分に当てはまる数字を答えよ
1×1=? 解答:2
問二 雀士が雀技を使用する際に必要となるエネルギーの名称は何か答えよ
解答:ウッス!
問三 今年のインターハイの優勝校はどこか答えよ
解答:ウッス!
問四 世界一可愛いのは? 答えよ
解答:ウッス!
問五 こんな質問にも答えられないなんて、生きてて恥ずかしくないんですか? 答えよ
解答:ウッス?
問六 バーカバーーーカwwwwwwwwwwww答えよ
解答:は?
問七 だから、貴方はバカで間抜けで生きてる価値なしのゴミだと言っているんです答えよ
解答:殺す
問八 死ね。答えよ
解答:お前が死ねや
久『ちょっと和ー?』
久『えっと。以上のように、須賀君クローンには筋力も知能も余りありません』
久『ただし、それはあくまで初期段階の話』
久『入念な訓練を重ねさせれば、とてつもない働きを見せてくれるようになります』
久『という訳で、この次の映像では入念な訓練を受けた須賀君クローンの姿をご覧頂きましょう』
久『それではまた。ごきげんよう、さようなら。2XXX年 ○月□日 竹井久 記録終了』
プツン
ザワザワ・・・
洋榎「……?」
洋榎「え、こんなようわからんもんを実験と呼んでええんか?」
霞「あまり中身のないビデオだったわねえ……」
久「はい。いかがでしたでしょうか? これだけではまだ正直、須賀君クローンの凄さは伝わって来なかったかと思います」
久「でも、今のはただの前準備のようなもの。次に訪れる驚きをより強調させるための調味料に過ぎません」
久「では、次の映像へと移りましょう」
テレレーン
~タイトル:京太郎クローン 千里山での一日~
ザワザワ・・・
洋榎(千里山やと!? 浩子達も関わっとったんか……)
園城寺怜『なあー、りゅーかー……膝枕してぇなー』
清水谷竜華『だーめや。何度も言っとるやろ? 膝枕は一日三回までやって』
怜『むぅ』
怜『……うっ! か、体が重い! これは、竜華の介抱が必要やなぁー』チラッ
竜華『病弱アピールしても駄目なもんはだーめ! というか、具合悪いならなおさら駄目やん。私にパワー与えすぎて病状悪化したらどないすんの』
怜『うー、竜華のケチンボ』
怜『いいもん。私には京ちゃんの腕枕があるからな』
怜『きょーちゃん! 腕枕お願いするわ』
京太郎クローン2『はっ! どうぞ、怜様』スッ
怜『ん、サンキューや』
京太郎クローン2『お加減はいかがでしょうか?』
怜『んー……最高やぁ』ヌクヌク
怜『京ちゃんの筋肉が丁度いいアクセントになっとって、竜華の柔っこいだけの膝枕より断然ええわー』
竜華『むっ!』カチン
竜華『ちょい、須賀君! 怜のことそんな甘やかしたらアカンやろ!』
京太郎クローン2『竜華様。申し訳ありません。しかし、千里山の方々に快適を提供するのが私の務め』
京太郎クローン2『怜様が私の腕枕にくつろぎの時間を求めているというのなら、私はそれに従うまでなのです』
竜華『むぅー! 融通の効かんやっちゃなあ!』プンプン
京太郎クローン2『竜華様。そんなにお怒りになると、折角の美しさが台無しとなってしまいますよ』
竜華『えっ!? う、うつくし……!?』
京太郎クローン2『ここは竜華様も、私の腕枕でおくつろぎになっては如何でしょうか?』
竜華『はあっ!? そ、そんなん要らんわ!』
京太郎クローン2『そう、ですか……』シュン
怜『あー、竜華が京ちゃん凹ましたー。いけないんやー』
竜華『え、い、いやそれは……』
京太郎クローン2『……』ショボン
竜華『……む』
京太郎クローン2『……』ショボボン
竜華『……むむ』ウズウズ
京太郎クローン2『……』ショボボンボン
竜華『……あー!』ウガー
怜『っ!?』ビクッ
京太郎クローン2『りゅ、竜華様?』
竜華『分かったわ、分かった! そんなに言うんなら、須賀君の腕枕、味わわせてもらおうやないか!』
京太郎クローン2『そ、そうですか!』パァ
京太郎クローン2『さ、どうぞ竜華様! じっくりとご堪能ください』サッ
竜華『ん』
竜華(……あ、結構ええ感じ……)
怜『どや? ええやろ、京ちゃんの腕枕』
竜華『あー……確かに駄目んなるわ、これ……』
京太郎クローン2 ニコニコ
久『はい。教育を重ねさせれば、こんな風に完璧執事を演じさせることもできちゃいます』
久『でも、これだけではありません』
ワイワイガヤガヤ
怜『あ、皆来た見たいやな』
竜華『せやな。須賀君、そろそろ腕枕も終わりにしよか』
京太郎クローン2『かしこまりました。では私はいつもどおり、皆様の為に雑用に徹するとしましょう』
京太郎クローン2『ステルスモード、発動』スゥゥゥ
ガララッ
二条泉『あっ、園城寺先輩に清水谷先輩! 相変わらず早いですね!』
江口セーラ『泉、察したれや。コイツらが早々に部室に来とんのは、二人きりでイチャコラするために決まっとるやろ』
泉『あ、成る程……』
船久保浩子『何アホな事言うてはるんですか江口先輩。部室に早く来る言うことは、それだけ部活動に熱心いうことや』
浩子『お二人が不純な動機で早く来てるだなんて、まさかそんな……』
竜華『浩子、露骨な点数稼ぎはせんでいいで』
浩子『ヒッヒッヒ……』
竜華『ったく……。可愛い後輩達のために、忙しいながらもわざわざ来てやってるいうのに、まさかそれを仇で返されるとは思っとらんかったわ』
浩子『あら? 私達のことは気にせず勉強の方に専念して頂いても、全然構いませんことよ?』プププ
竜華『うっ……』
セーラ『べっつに、竜華はなんも心配することないんやないか? 元から成績は抜群にええんやし、麻雀だって強いわけやし』
セーラ『大学に進学するにせえプロ行くにせえ、ハッキリ言って選択肢には困らんやろ』
竜華『それ、セーラにも言えとることやけどな。まあ、勉強の成績はちょっとアレやけど……』
セーラ『ほっとけぇ!』
怜『あー、二人はええなあ……。殆ど進路確定しとるようなもんやもん……』
竜華『そいや、怜はこの先どうするつもりなん? うちは正直、怜ならプロ行けるや思うけど……』
怜『プロなぁ……。それもええかもな……。でも、今のトッププロたちも下積み時代は過酷な生活送っとった思うと、なんや不安に思えてくるんや……』
竜華『初めの時期がつらいいうんはどの職種にも言えることや思うけど、怜は実際病弱やからなあ……』
竜華『確かに、怜の未来視を悪用しようとするような事務所にぶちあたったら、まずい事になるかもな……』
怜『……ん、まあそこらはおいおい考えてく予定やわ』
スッ
京太郎クローン2『皆様、お茶が出来上がりました』
セーラ『ん……。ま、辛気臭い話は終わりにしようや。で、今日はどないする?』
泉『そうですね……。久々にネトマでもやりません? ここ最近手ぇつけてませんでしたし』
泉『あっ、このお茶おいしい……』
京太郎クローン2『静岡県産の茶葉を使用しておりますので』
泉『ふーん。どうします? やりますか?』
竜華『せやなあ。うちはええと思うで』
セーラ『俺もや。久々にパソコンで打つ感覚を味わうか』ワキワキ
浩子『データ収集のしやすいネトマは、私からしたら宝物庫みたいなもんですわ。大賛成や』
怜『私は反対やー。ネトマやと、一巡先も見えへんのやもん』
竜華『何言っとんや。普段の麻雀でだって、未来視はそんなに使ってへんやろ?』
セーラ『つうか、使わせとらんな。竜華が』
竜華『当たり前や! あない危険な真似、そうホイホイとさせるわけにはいかん!』
怜『りゅーか……』ウルウル
竜華『怜……』
セーラ『うぇー! はいはい、そこまでにせーや。んじゃ、今日はネトマっちゅうことでええな?』
一同『おー!』
京太郎クローン2『パソコンの準備はしておきました』スッ
竜華『んー。よっしゃ、始めるでー!』
洋榎「……なんや、これ。殆ど存在を感じることが出来とらんっちゅうことか? すごいな……。でも、千里山の連中が演技しとるっちゅう可能性も……」
霞「……いえ。ステルスを発動してからの、千里山の人たちの反応が『自然すぎる』わ。彼女達はあくまでただの高校生。大俳優では決して無い」
霞「彼女達が演技をしているとは考えづらいわね」
久『……どうでしょう? 分かりましたでしょうか?』
久『この映像には、須賀君クローンの存在感を強調する効果が施されておりますから、皆様にもしっかりと須賀君クローン2の姿を見ることが出来たと思います』
久『しかし、千里山の人たちはそうはいきませんでした。須賀君が「ステルスモード」に入ったその瞬間、今まで直ぐそばに居た園城寺さんや清水谷さんさえも、その存在を感知することが出来なくなってしまったのです』
久『勿論、須賀君クローンの言葉は彼女達の脳に届いていますし、映像の通りそれへの返答も一応は行っています。ですが、やはり存在の感知には至っていない』
久『これが、須賀君クローンの「真価」。訓練次第では、このような特殊能力を身につけさせることも可能なのです』
久『次の映像……最後の映像となりますが、そこではその特殊能力にどのようなバリエーションがあるのかを紹介していきます』
久『それでは。ごきげんよう、さようなら。2XXX年 ○月×日 竹井久 記録終了』
プツン
今日はここまで
ありがとうございました
本人の許可を得ているとは考え辛いな...。
あとまこが岩を真っ二つにしたことにツッコミが無いのは何で?
>>56 修正
久「え、えっと」
久「おホん。それでは気を取り直して、続きといきましょう」
久「この、装置に縛り付けられている金髪少年……見覚えのある方もかなりいらっしゃる筈です」
久「そう、彼は我らが清澄高校麻雀部唯一の男子部員、須賀京太郎君です!」
久「……ただし、『本物』ではありませんが」
洋榎「ん成程。じゃあそこに縛りつけられとるのは、その須賀京太郎のクローンっちゅうわけやな?」
久「はい、その通りです」
久「あっ、そうそう。言い忘れていました。もし私の話の節々に疑問な点が生じた場合、質問なさるのは大いに結構なんですが」
久「その時は、席に備え付けられている赤いスイッチを押してからにしてください」
洋榎「え? あ、これか……前の席の背中に付いてる……」
洋榎(席の背部の色が保護色んなってて気付かんかったわ)
霞「ふんふむ。そういう用途のものだったのね、これ」
>>81
雀士にとっては決して不可能なことではないけど、能力を全く使わないでやるのは『結構凄い』、ということです。
クローン技術云々に関しては、正直僕自身も何書いてるのか分らない位ですから、あまり気にしないで頂けると……
投下していきますね
>>72 の続きから
久「ふふふ。どうですか? ちょっと面白くなってきたでしょう?」
オー!
久「ありがとうございます! さあ盛り上がってきたところで、次の映像……と行きたいところです、が」パンッ
久「ここで一旦質問の時間とさせて頂きます」
久「さて、話の最中にボタンを押してくれた方は……。2人、居ますね」
久「先ずは2階MM-4番席の方から、どうぞ質問をお願いします」
東横桃子<ハイっす>ガタッ
桃子<私は鶴賀学園の1年、東横桃子っていう者っす>
桃子<その金髪さんのクローン、訓練によっては様々な能力を獲得することが出来ると言ってたっすけど>
桃子<その能力というのは、一体どのような基準で差別化されていくんっすかね? 育てる雀士の持つ能力か、環境か……>
桃子<そこのところを詳しくお願いするっす>
久「……」
桃子<……? あの、質問への回答を……>
久「……あら? いらっしゃらないのかしら?」
桃子<は?>
久「おっかしいわねえ……。確かにスイッチは押されてるんだけど……」
久「申し訳ありません。どうやら質問者がどこかへ行ってしまった様なので、次の質問へと移らせていただきます」
桃子<は? は? おかしくないっすか? ちゃんとマイク使ってるんっすよ? ほら、あー! あー!>
久「では、一階B-3番席の方、質問をお願いします」
桃子「……」
桃子「……」
桃子「うわぁぁぁん!! せんぱーーい!!」ダキッ
加治木ゆみ「うぉっ!? も、モモ!? どうしたんだ一体」
桃子「うぅぅ……」
久「……ん?」
文堂星夏<あ、あの……>
久「あ、ああ! ごめんなさい。それで……あなたは風越の文堂星夏さんよね?」
久「質問は何かしら」
文堂<あ、はい。竹井さんは、須賀君のクローンは訓練次第で様々な能力を獲得できると仰ってましたけど>
文堂<その能力というのは、一体どういう基準で差別化されてくるんですかね? 育てる雀士の持つ力か、育つ環境か……>
文堂<ちょっと性急な質問かなとは思ったのですが、気になったので一応>
桃子「!?!?!?!?」
桃子(丸かぶりなんてレベルじゃねえっすよ!?)
久「ありがとうございます。能力の分化条件についてはこの後話す予定でしたが……それを今に回しても別に影響は無いでしょう」
久「須賀君クローンの能力はずばり、育てる雀士の『雀力の性質』によって決まってきます」
久「ご存知の通り雀士は皆一人ひとり、違った性質の雀力を有していまして、一般には全く同じ性質の雀力を持つ雀士は二人として存在しないとも言われますね」
久「なので、育てる雀士が違えば須賀君の能力はまるきり変わってきます」
久「先ほどの須賀君クローンの『ステルスモード』ですが、実はアレ、人工雀力を投与することによって作り上げた紛い物の能力でして」
久「例えば鶴賀の東横桃子さんの様な、『存在感の薄さ』を雀力の性質としている雀士があの須賀君クローンを育てていれば、『ステルスモード』はより完璧なものとなっていました」
桃子「!?」
久「つまり、須賀君クローンは自分を育ててくれる雀士の性質を“遺伝”する、というわけですね」
文堂<な、成る程! ありがとうございました!>
久「いえいえ」
久「えっと……。質問のある方はもういらっしゃらないようですね」
久「では、早速最後の映像を見ていきましょう」
テレレーン
~タイトル:京太郎クローン 千里山での一日 その2~
洋榎「またかいな!?」ビシッ
霞(鋭いツッコミ……やはりこの人、できるわね)
カチャカチャ……
プツッ
竜華『えっと……これ、ちゃんと映っとるんかな?』
浩子『スイッチはきちんと入っとるし、設定も完璧やからな。バッチリですわ』
泉『な、なんや緊張してまいますね……。自分の姿をビデオで撮ったことが無い言うわけや無いんですけど……これをいろんな人たちに見られる思うと』
セーラ『べっつに気にすることやないやろ。インハイとかでもテレビに映ったりはしてるんやしな』
怜『……』カミガタチェック
竜華『えー、会場? にお越しの皆様、こんにちは。千里山高校麻雀部の……まあ、もう殆ど引退したよなもんですけど、一応部長の清水谷竜華です』
怜『同じく引退を間近に控えた部員、園城寺怜です』
セーラ『江口セーラや』
浩子『船久保浩子』
泉『二条泉です』
竜華『えっと、今日は皆様に、ある実験を見て頂く……らしいで?』
セーラ『なんでそこで疑問形なんや』
怜『いうても、私らもあんましよく聞かされとらんからなあ……』
浩子『とりあえず、須賀に入ってきてもらいましょうや。あいつがおらへんとやれることもやれんし』
竜華『せやな。おーい、須賀君! もう入ってきてええでー』
ハイ!
ガララ・・・
京太郎クローン2『失礼します』
京太郎クローン2『えっと……私はどうすれば?』
浩子『とりあえず、このカメラに向かって自己紹介してくれや』
京太郎クローン2『カメラ……ですか。かしこまりました』
京太郎クローン2『どうも、須賀京太郎です。千里山高校麻雀部の皆様にお仕えする執事……と思っていただければ結構でしょう』
京太郎クローン2『普段はお茶汲みや雑用に徹しておりますが、偶に部活動の練習に参加したりもします』
京太郎クローン2『……これでよろしいでしょうか』
浩子『ん……まあ、ちょいバカ真面目すぎる気もするけど、良いと思うで』
竜華『よっし。じゃあ、須賀君。早速やけど実験に付き合ってもらうで』
京太郎クローン2『え? 実験……ですか?』
怜『私らもよくわからんのやけどな。なんか、このスイッチを押して京ちゃんがどうなるかをカメラに収めればええらしいんや』
京太郎クローン2『スイッチ、ですか……。何か危険な香りがしますね……』
竜華『ま、竹井さんがくれたもんやし、そない大したことにはならんやろ』
竜華『この後皆でスイーツ店行く訳やしな。ぱぱーっと終わらせちゃおうや!』
浩子『ですね。んじゃ、早速……』
浩子『ポチっとな』ポチッ
京太郎クローン2『……ん?』ピクッ
竜華「お?」
京太郎クローン2『……あ、あ?』ブクブクッ
竜華『え? 須賀君?』
京太郎クローン2『あ、あっ、ああっああああっああ?』ブクブクブクブク
セーラ『は? な、なんやこれ!! 須賀がどんどん膨れ上がって……!!』
京太郎クローン2『あ、あ、ああぁぁあぁあぁああああ!!!!』ブクブクブクブク
泉『ちょ、これアカンやつですよ!!! 京太郎くん死んじゃいますって!!!』アセアセ
怜『す、スイッチ! フナQ!! そのスイッチにこれ止める方法とか書いてないんか!?』
京太郎クローン2『あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ』ブクブクブクブク
浩子『だ、駄目や!! うちが今押したボタン以外、何も付いとら――』
パァンッ!!
ドチャ
ビチャチャ・・・
>>101 修正
京太郎クローン2『……あ、あ?』ブクブクッ
竜華『え? 須賀君?』
京太郎クローン2『あ、あっ、ああっああああっああ?』ブクブクブクブク
セーラ『は? な、なんやこれ!! 須賀がどんどん膨れ上がって……!!』
京太郎クローン2『あ、あ、ああぁぁあぁあぁああああ!!!!』ブクブクブクブク
泉『ちょ、これアカンやつですよ!!! 京太郎くん死んじゃいますって!!!』アセアセ
怜『す、スイッチ! フナQ!! そのスイッチにこれ止める方法とか書いてないんか!?』
京太郎クローン2『あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ』ブクブクブクブク
浩子『だ、駄目や!! うちが今押したボタン以外、何も付いとら――』
パァンッ!!
ドチャ
ビチャチャ・・・
ザワザワ・・・!!
霞「なんてこと……!」
洋榎「は? マジか、これ……」
竜華『……え?』
怜『う、嘘やろ……京ちゃん……』
セーラ『あ、あああぁ……』カタカタ
泉『――!』ペタン
浩子『……あ? ……血?』
浩子『……っひ、ひぃ。い、いや……』
浩子『いやぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!』
浩子『う、うう、うち、うちが押したぼぼ、ボタンでぇぇええ……はじけ、はじけたあ』
浩子『こ、殺した……? うち、が……殺したぁ……? 須賀を? うちがぁ……』
浩子『う、嘘や! こんなん嘘やぁぁあああああああ!!!!』ガタガタ
セーラ『ひ、浩子! しっかりせえや!!』ガシッ
浩子『だだ、だって……し、死んだんやで、ああぁ……須賀、うちのせいでし、しし』
浩子『こ、ここんな、まさかこないことなるなんてこれっぽっちも思っとらんかった、思っとらんかった』カタカタ
浩子『す、スイッチ、ただのスイッチや思ったんやぁぁ。うち、それ押しただけで……でも、須賀はそれで死んで……』
セーラ『大丈夫や、大丈夫……。浩子は悪くない』
浩子『でも、でもぉ……』チラ
グチャア・・・
浩子『あ、ああああぁぁぁぁ……』
セーラ『しっかりせえ!! 浩子が殺したわけや無い! これだけはしっかりと言える!!』
セーラ『須賀を殺したんは、あのスイッチを渡した竹井の奴や!!』
浩子『ぅぅぅぅ』ガタガタ
竜華『こ、これ……どういうことなん? 須賀君、ホンマに死んじゃったんか……?』
竜華『あ、はは。な、なんかの間違いやろ。あんだけ完璧なおもてなしが出来る須賀君なんや。きっとこれも演技だったりするんやろ……? なあ怜?』
怜『わ、私が一巡先をみとけば……防げたのに……』
竜華『……怜?』
怜『ごめんなぁ、京ちゃん……私が間抜けなばっかりに、こんなぁ……』
竜華『あ、ああぁぁ……。怜ぃ……。そんな。現実なんや、これ、現実なんやなぁ……』
竜華『ホンマに須賀君……』
泉『いやや、見たくない、見たくない……』カタカタ
セーラ『皆……』
セーラ『……竹井。こうやって須賀の命弄びおったんも、俺らの精神滅茶苦茶にしおったんも、全部あの女……!!』
セーラ『竹井ぃ……!! お前の事や。今も俺らの姿眺めてほくそ笑んどるんやろ!? あぁ!?』
セーラ『ぶっ飛ばしたる……。覚悟しときぃ……!! その顔、絶対にぶん殴ったるからな……』
セーラ『竹――』
ウゾ・・・
セーラ『……井?』
ウゾウゾ・・・
セーラ『……は? なんやこれ……う、動いとんのか?』
怜『……え。え? きょ、京ちゃんの肉片が、うぞうぞと蠢めいとる……』
ウゾウゾウゾ・・・
浩子『あああぁぁぁ……。なんや、なんなんやぁ。うちにこんな幻覚まで見せて……もう、嫌ぁ……』
竜華『い、いや、浩子! あんただけやないで……。うちにもこれ、ちゃんと見えてるわ……!』
泉『……?』カタカタ
ウゾウゾウゾウゾ・・・!
セーラ『さ、さっきよりも動きが激しくなっとる……』
怜『ま、まさか! 京ちゃん、生き返ろうとしとるんちゃうん!?』
セーラ『は? ん、んなアホなことがあるわけ……』
怜『私の未来視だって、本来ならできてはいけんことや。でも、雀力を通してならそれを実現させることができるっ……! できてまうっ……!』
怜『京ちゃんも結構長いことここに居とるから、その間に私らの雀力とかも色々吸収してたんや!』
怜『京ちゃんは今きっと、必死で死の運命から抗っとる! 死ぬまい死ぬまいとして、肉片になってもなお、僅かな雀力駆使して生きようとがんばっとるんやっ!』
竜華『そ、そうか……! 須賀君はまだ死んどらんのやな……!』
ウゾウゾ
泉『……え? きょ、京太郎くんまだ生きとるんですか!?』バッ
浩子『……生き、とる……? 須賀、が……?』
竜華『ああ、みたいやで! 肉片にこそなっとるが、魂までは召されておらんかったようや……!』
セーラ『は、ははっ。しぶといやっちゃな……。しゃーない! ここは俺達の雀力を送り込んで、再生を早めさせたろう!』
怜『やな。いつまで京ちゃんが現世に留まっていられるかは分からへん……。三途の川渡りきってまう前に再生させたらな。皆、早速応援や!』
怜『京ちゃん、頑張れー!』パァァ
ウゾ
竜華『須賀君、ファイトー!』パァァ
ウゾウゾ
セーラ『こんなところで死ぬんやない! 須賀、頑張れ!』パァァ
ウゾウゾウゾ
浩子『す、須賀……。須賀っ! うちの雀力、受け取ってっ……!』パァァ
ウゾウゾウゾウゾ
泉『少ないけど、これ使って頑張ってやっ……!』パァァ
ウゾウゾウゾウゾウゾ・・・
ウゾ…
ウゾウゾウゾウゾウゾウゾ!!!
セーラ『あ、ああっ! 須賀の肉片が人の形になってく……!』
浩子『が、頑張れっ! 須賀ぁっ!』
竜華『す、すごい……。須賀君すごいわっ!』
泉『麻雀ってなんでもアリなんですね……すごい』
怜『京、ちゃ――』
カッ!
京太郎クローン2×5『……』シュウウウウ
怜『ん……って、ん?』
泉『あれ? なんか大分増えてません?』
セーラ『お、おう……。5人になっとるな』
京太郎クローン2×5『『『『『ん、ん……』』』』』
京太郎クローン2×5『『『『『あれ、皆様、どうなされたので……』』』』』
竜華『す、須賀君……』
京太郎クローン2×5『『『『『……ん? 何か変ですね。自分の声がいくつにも重なって聞こえてくるような……』』』』』
京太郎クローン2×5『『『『『って、あれぇっ!!?? お、俺!? ちょ、何で俺がこんなに増えてるんですか!?』』』』』
セーラ『うぉ、ちょいキャラ崩壊したな。まあ、自分がこんなんなってんの見たらそうもなるか……』
京太郎クローン2×5『『『『『えっと、事情のせつめ……』』』』』
京太郎クローン2×5『『『『『……これ、ちょっと流石にうっとうしいですね』』』』』
怜『ま、まあ確かに……』
京太郎クローン2A『えっと、じゃあ俺……じゃない、私が代表して喋ります』
京太郎クローン2BCDE『『『『た、頼んだ』』』』
京太郎クローン2A『それで……あの後一体何があったので? 浩子様がスイッチを押されたところまでは覚えているのですが』
竜華『そ、それがな……』
~説明中~
京太郎クローン2A『……はあ。そのようなことが……』
竜華『うん……。うちらも、最初はめちゃめちゃ驚いたわ』
京太郎クローン2A『なんと……。申し訳ありません。皆様にくつろぎを提供するのが私の役目であると言うのに……』
京太郎クローン2A『そのような凄惨な場面を、不可抗力とは言えお見せしてしまったなんて……』
怜『いやいや、京ちゃんが謝るようなことやない。それいうんやったら、竹井の奴にまんまハメられた私らの方が謝るべきやしな』
京太郎クローン2A『寛大なお言葉、深く心に染み渡ります……』シミジミ
泉『でもまあ、何はともあれ良かったんやないですか? ちょっと想定外の事態は起こってまいましたけど、結果的に京太郎くんは生き返ったわけやし』
セーラ『やな。ただ、問題はこっからどうするかやけど……』
怜『増えた京ちゃんについてはどうやって対処してけばええんやろな……』
京太郎クローン2BCDE『『『『これ以上の面倒を皆様にかけるわけにはいきません』』』』
京太郎クローン2BCDE『『『『後のことは全てAに任せ、私達はどこかの焼却炉にでも……』』』』
竜華『はあっ!? あ、あかんあかん! んなの絶対ゆるさへんで!』
怜『せや。増えた4人の京ちゃんの内、一人として死なせたりはせんからな』
京太郎クローン2BCDE『『『『しかし、それ以外に方法は……』』』』
浩子『……引き取ればええ』
竜華『え?』
浩子『須賀は今合わせて五人……うちらも合わせて五人……』
浩子『人数的にはぴったしや……。それなら、部員一人につき一人の須賀を割り当てて、持ち帰ればええ……』
京太郎クローン2BCDE『『『『!?』』』』
京太郎クローン2A『なっ……。そんなことをすれば、皆様に迷惑が……』
浩子『他のみんなが無理や言うんやったら、うちが四人引き取ったる……。残った一人には今までどおり部室の手伝いをしてもらうっちゅう形にすれば、なんら問題はあらへん』
京太郎クローン2A『浩子様……』
浩子『元はと言えば、うちがスイッチ押したのが悪いんや。こう見えて洞察力にはまあまあ長けとるつもりやったけど、何だかな……』
浩子『……で、皆はどうや? うちの案に乗ってくれる奴はおるか?』
泉『あ、私は別にかまへんですよ。京太郎君なら何かしてくる心配もないでしょうし、家の手伝いとかしてくれんやったらむしろ歓迎や』
京太郎クローン2A『いや、そんなあっさり……』
竜華『言われてみればせやな……』
竜華『この時期、部屋の整理とか疎かにしてしまいがちやもんな。須賀君が全部やってくれるんやったら、それほど楽なことはないわ』
怜『京ちゃんのマッサージ気持ちええしな……』
セーラ『うーん……部屋の整理……掃除……全部やってくれる、か……』
浩子『おいしい食事付き』ボソッ
セーラ『最高やな! よし決めたわ。俺んところも須賀を迎え入れたる』
京太郎クローン2A『は、はあ……?』
京太郎クローン2A『いや、ちょっと皆さ――』
京太郎クローン2B『まあ――良いんじゃないか? 正直、皆様に引き取ってもらう以外にはこれといった方法は無いだろ』
京太郎クローン2C『確かに……。それに、俺達が千里山の皆様に対して欲情することは無いんだし』
京太郎クローン2D『うん……』
京太郎クローン2E『言えてるな』
京太郎クローン2A『うーん……。言われて見れば、なあ』
竜華『そっちの方の意見も纏まったみたいやな』
泉『一緒に住むとかいうと何や如何わしく聞こえますけど、実際には使用人と雇い主の関係になる言うわけですからね。そう思うと意外になんとも無いかもしれません』
セーラ『お前、エグいな……』
アハハハハ……
久『えっと……はい。すみません。なんか、千里山の人たちに全く情報が行き渡っていなかったようで、予想以上に長く時間がかかってしまいました』
久『能力のバリエーションにどんなものがあるのかについては殆ど説明できませんでしたけど……』
久『こんな風に、「完全再生能力」と「分裂能力」の合わせ技、とでも言うのでしょうか。そういうトンデモな能力も身につけさせることができます』
久『この須賀君クローンの場合は既に「ステルスモード」というメイン能力を身につけて居たので、「再生・分裂能力」の方は余り強力とはいえないものに仕上がっていましたが』
久『そちらの方の能力に重点を置いた須賀君クローンならば、また違った様相を見せてくれます』
久『それでは皆様。映像はこれで最後となりますが、この後も引き続き私達の発表をお楽しみ下さい』
久『ごきげんよう、さようなら。2XXX年 ○月△日 竹井久 記録終了』
今日はここまで
ありがとうございました
投下していきまーす
ザワザワ・・・
洋榎「っはぁー! ビビッたわー。竹井も人が悪い。そんじょそこらのスプラッター映画より性質の悪い映像見せおって」
霞「でも、千里山の人たちも須賀君クローンも、皆無事な様で良かったわ」
洋榎「ん、まあな。いや、あれから千里山にこき使われまくってるやろう須賀のクローン共が、果たして無事なんか言われたら首ひねるところやけど」
霞「うふふ、それは確かにね……」
久「はい。何か、随分とグダグダした映像をお見せしてしまいましたが……」
アハハハハ
久「まあ、中々にスリリングではありましたので、多少はお楽しみいただけたと思います」
久「えっと、須賀君が起きるまでは……。まだ、あとちょっとありますね」
久「それでは、質問の時間へと移らせて頂きます――」
コソッ
桃子「……」
エー、ソレデハ1カイセキ――
ハイ――
桃子「よし、バレてはないっすね」
桃子(竹井のお姉さん……。私を無視したはおろか、更に恥までかかせに来た……)
桃子(許せないっす!!!)
桃子(……って言うほどまあ、怒ってはいないっすけどね。『存在感が薄い』ことが私の能力なわけっすし)
桃子(恥をかかせに来たって言っても、竹井さんは単純にその事実を述べただけ……)
桃子(うん。だから実際は全然怒っちゃいないっすね。怒りゲージゼロっす)
桃子(でも、ステージにあがっちゃった以上はもう、引き返せないっす。いや引き返せるけど、気持ち的にね?)
桃子(うーん……といっても、特にやることはないんっすよね)
桃子(竹井さん本人に悪戯するってのはちょっとやり過ぎな気もするし……)
桃子(さて、どうしたものっすかねえ……ん?)
スイッチ「……」ポツーン
桃子(あ、あれはっ!?)
桃子(ま、間違いないっす……。さっきのビデオに出てきたスイッチ……)
桃子(なぜこれが舞台裏に……?)
桃子(あ、もしかして……。この金髪さんクローンの能力が『完全再生能力』ってことなんっすかね?)
桃子(んで、その能力のすごさを私たち来場者にも見せようとしたとか?)
桃子(……)ソワソワ
桃子(だ、大丈夫っすよね? ビデオだと、ちょっとスプラッタな破裂を見せた後5人に分裂しただけだったし……)
桃子(いくらそれをメイン能力としているといっても、精々再生速度がかなり早まってるという程度の差に収まる筈っす)
桃子(それに、金髪さんクローンを破裂させるのがプログラムの予定に組み込まれているんなら、このスイッチはどの道押される運命にある訳っすし)
桃子(……よし、決めたっす。私は一度決めたことは覆さない女……というわけで)
桃子(ポチ――)スッ
>>138 修正
桃子(……)ソワソワ
桃子(だ、大丈夫っすよね? ビデオだと、ちょっとスプラッタな破裂を見せた後5人に分裂しただけだったし……)
桃子(いくらそれをメイン能力としているといっても、精々再生速度がかなり早まってるという程度の差に収まる筈っす)
桃子(それに、金髪さんクローンを破裂させるのがプログラムの予定に組み込まれているんなら、このスイッチはどの道押される運命にある訳っすし)
桃子(……よし、決めたっす。私は一度決めたことは覆さない女……というわけで)
桃子(ポチ――)スッ
和(……おや?)
和(あそこの舞台裏の辺り……。誰か、居ますね。でも、輪郭が全体的にぼやけていて正体が分からない……)
和(……私にも殆ど見えないとなると、かなり強力なステルス能力者である筈。例えば、東横さんのような……)
和(そういえば先ほど、質問ボタンを押したのに何故か質問自体はしてこなかった方がいましたが……)
和(その人の席は確か、鶴賀の加治木さんの隣にありましたね)
和(私も遠くに居たので良くは見えませんでしたが、いま思うとあれは東横さんだったのでしょう)
和(来場者全体はおろかあの席の隣に居た人さえも誰一人として、質問者が居なくなってしまったことに『疑問』一つ抱いていない様子だったのは少しおかしいと思いましたが……成る程)
和(それをやったのが東横さんであるというのなら、納得です)
和(しかし、東横さんは舞台裏で一体何を? 正直この発表は私にとってそこまで重要ではありませんし、舞台裏を覗く、位なら勝手にしてもらっても構わないのですが……)
和(……あれ? でも確かあそこには、須賀君の『スイッチ』が置いてあったような――)
和(え、まさか東横さん、あのスイッチを押そうと!?)
和(ありえない話ではありませんっ。むしろ濃厚っ! 質問を無視された腹いせとして、こちらに嫌がらせを仕掛けようとしてきているのでしょう!)
和(いけない、早く止めないと!)ダッ
和「と、東横さん!! ダメです、それを押してはいけません!!」
久「っ、え? 和? ちょ、一体なに――」
桃子(――ッとな!)ポチッ
和「ああっ! そ、そんな!」
久「ちょ、和!? 何だっていうのよ一体!? まだ発表の途中なのよ!?」
和「そ、それどころじゃないんです!」
京太郎クローン「ッ!」ビクッ
洋榎「……お? なんや口論しとるな。トラブルか?」
霞「らしいわね。それに今、須賀君のクローンの体が一瞬はねたような……」
京太郎クローン「ッ! アッ! アアッ!」ボコッ
久「……え? 膨張が始まってる? ちょっ、まさか」
和「そのまさかなんです!! 質問を無視されたことに怒った東横さんが、腹いせにあのスイッチを押したらしくて……」
久「はぁぁ!? なっにやらかしてくれてんのよあのステルスゥ!?」
桃子「……」
桃子「お二人のあの動揺っぷり……。なんかまずいことしちゃったみたいっす」テヘペロ
桃子「まあヤバイことになるかなー、とは予想してたっすけどね。『再生速度がかなり早まってるという程度の差に収まる』とはもとより思っては居なかったっすし」
桃子「自分が今からやろうとしていることへの言い訳? 的な? やつっす。ハハハ」
桃子「……」
桃子(むっちゃん先輩は何があっても死ぬことは無いし……、かおりん先輩も持ち前の超マジヤバ激運でなんとかするだろうし……)
桃子(蒲原元部長もああ見えて、グランドキャニオンの谷底に炎上したワゴンカーで突っ込んでいったその翌日、何時も通りにワハハと笑いながらピンピンして部活に来た猛者っすし)
桃子(……)
桃子(加治木先輩かついでとっとと逃げるっす!!)スタコラサッサ
京太郎クローン「ア、アアア、アアアアアアアアアア!!!!」ボコボコボコ
洋榎「ちょ、待てやあれ。さっきのビデオん中でもあいつ、あんな風になっとらんかったか!?」
霞「え、ええ。まるきり同じだわ……。もしあのビデオが本当なら、彼ももうすぐに破裂するでしょうね……」
洋榎「あー、でも。雀力の供給が無かったら分裂まではいかんのとちゃうか?」
霞「……どうかしら」
洋榎「あん? それどういうことや?」
霞「竹井さんの動揺ぶりから考えても、これが予定ないこと……つまり、予期せぬトラブルであることは確定だけれど」
霞「果たして本当に、『破裂』だけでおさまるのかしらね?」
洋榎「それって……」
霞「ビデオの中の須賀君とあの須賀君は、外見こそ同じものの中身は全くの別物」
霞「ビデオの最後で竹井さんが言っていた『完全再生・分裂能力』をメイン能力とするのが、まさしくあの須賀君であるという可能性も否定はできないわ」
霞「それに、もし『破裂』という現象が彼を無理やり覚醒状態に移行させたら? その先一体何が起こるのか、誰が予測できるというのかしら」
霞「覚醒状態への移行の瞬間に脳に莫大な負荷がかかり暴走……。そして、その暴走した須賀君が幾人にも増えて皆を襲っていく、という最悪のシナリオが紡ぎ出されないとは言い切れないわ」
洋榎「ああ、確かにせやな……。んじゃどうする? 逃げた方がええ気もするけど……」
霞「……」
霞「いえ。私にいい考えがあるわ」
洋榎「……良い考え?」
霞「聞いて頂戴。あのね……」
ちょい短すぎる気もしますが、今日はここまでで
ありがとうございました
これって破裂する時須賀はどれくらい痛いんやろか
良子「どうやらかなりマズイ事態になっているようですね」
健夜「……そうかな? 私はそうは思わないけど」
良子「ワット? どういう意味ですか、小鍛治プロ」
咏「何か考えでもあるんですかねぃ?」
健夜「うん……。さっきの映像の内容から考えるに、これからあの京くんは“増える”」
健夜「ねえ。それって凄い……チャンスだって思わないかな?」
良子「……チャンス? ああ、なるほど……」
はやり「あー、そうかも☆ うんうん。確かにチャンスだね☆」
理沙「時は訪れた!」
咏「わっかんねー! 全てがわかんねー!」ウズウズ
良子「そのフェイスを見る限りだと、全然分かっていないようには見えませんが……」
咏「あはは、気のせいだって、気のせい」
靖子「……」
久「あー……もう、嘘でしょ!」
和「ど、どうしましょう!?」アタフタ
久「こうなったらもう止める術はない……」
和「そ、そんな……」
和「そ、そもそも部長があのスイッチをここに持ってきてさえいなければ、こんな事態にはならなかったのではないですか!?」
和「あんなもの、発表中に使う予定も無かったんですから!」
久「その辺りには色々と事情があるのよ……」
久「とにかく、今は来場者の皆さんを一刻も早く避難させないと」
和「え? ひ、避難ですか?」
久「ええ。須賀君クローンは休眠状態から無理やり覚醒させられると、理性を失ったケモノと化してしまうのよ」
久「一度目にしたものを追い続け……捕食しようとする、半端ない凶暴性を有したケモノ……」
久「それが今、“何十体にも増えた状態で”檻から抜け出そうとしている」
和「は、はあっ!? なんですかそれ、一大事じゃないですか!」
久「だから避難させなきゃって言ってるの! 私だって内心すっごい焦ってるんだからそんなに大声出さないでよ!」
久「み、皆様! 一刻も早く左右の非常口、または後ろの出口から避難してください! 予期せぬトラブルがこちら側で発生しました!」
ザワザワザワ!
霞「やはりね……」
洋榎「後は、霞の読みが当たっていることを祈るばかりやな」
桃子「先輩、にげるっすよ!」ガシッ
ゆみ「なっ!? も、モモ!? おい、どこに連れていくつもりだ!?」
桃子「説明してる時間はないんっすよぉ!」ダダッ
ゆみ「う、うわぁ!? モモ――」
蒲原「……ん? ユミちんはどこいったんだー」ワハハ
佳織「さ、さあ……。さっきまではここに居たと思うんだけど……」
佳織「睦月さんは? 加治木先輩がどこ行ったか分かる?」
睦月「うむ。加治木先輩なら、つい13秒前に桃子が連れ去っていったけど」
蒲原「そうなのかー」ワハハ
蒲原「これがうわさの逃避行ってやつだな。ドラマで見たぞ」ワハハ
佳織「ち、違う気がする。何がやましくて逃避行なんてするの……」
久「今、須賀君クローンは非常に危険な状態にあります!」
ザワ
久「休眠状態から無理やり覚醒状態へと移行させられた須賀君クローンは、目に映るもの全てを破壊しようとする化け物になってしまうのです」
久「このまま膨張が進み破裂、更に分裂してしまえば、その須賀君クローンが何十体にも増えることになります」
久「そうなれば、皆様の命も危ういかもしれません!」
ナ、ナンダッテー!!
久「繰り返します! 左右の非常口、及び後ろの出口から一刻も早い避難を――」
京太郎クローン「ア、アアアアアアァァァァァァァ!!!」ブクブクブクブク
久「え? 嘘でしょ!? もう破裂段階!? ちょっと早すぎ――」
パァンッ!
ビチャビチャ……
キャアアアアアア!!
ウワアアア!?
ヒィィィ
久「そんな……!」
和「うっ……」
洋榎「う、うおぉ……。見てて気持ちええもんやないなあ、やっぱ」オェ
霞「え、ええ。私も、生でああいうのを見るのは少し」ウッ
洋榎「映像と生とじゃあ、全然ちゃうもんなんやなあ……」
洋榎「んでも、そうやってリアルを感じるからこそ分かるっちゅうもんもあるな」
洋榎「あの破裂、人の形したもんにやらせていいことやない。あないモルモっちゃんみたいに扱われて……なんや、滅茶苦茶可哀想やわ。須賀はブチ切れてもええ……」
霞「そう、ね。幾らクローンだからといっても、やっていいことと悪いことがあると思うわ」
霞「だからこそ、私達が救い出してあげなければならないのよ」
洋榎「せやな! 姫松パワーをばっちしどっぷりぽっきりと見せつけたるわ!」
霞「ぽっきり、はどうなのかしらね……」
久「み、皆様! クローンのことは気にせずに早く避難を!」
ヒィィィ
アアアアア
イヤァァァ
久「落ち着いて下さい、皆様! 一刻も早く避難をお願いします!」
ワーワー
久「み、皆様! 本気で非常時なんです! 早くひな――」
ギャーギャー
久「っく! 何やってんのよこの人たちは……」
和「全然効果ナシですね……」
久(何!? 何なの!? こっちが必死に呼びかけてるって言うのに、さっきから殆どの人が立とうともしてないじゃない!)
久(このワーワーギャーギャーっていう叫び声はどこから上がってるのよ!?)
久(あーもう! 成程ねぇ! 自分の実力に自身アリって訳!?)
久(これがどんだけ危険な状況なのかまるで分かってない癖にぃ!)
久(――ってダメ、ダメよ、久。元はといえば、悪いのは全て私なんだから。あんなスイッチを持ってこなくても良い様に私が須賀君クローンを安定させておけば、こんなことにはならなかったんだから)
久(あくまで私は司会進行として、成すべきことを成すだけよ)
久「譲り合っての避難をお願いします! (現在大部分を占めている)ご着席の方々も、どうか避難を――」
ズズ……
ズズズズズズズズ!
良子「他人による雀力のプロヴィジョンを受けてもいないのに、再生のスピードが映像の方の京太郎君クローンとは段違いに速くなっていますね」
健夜「うん……。それに、ごく僅かな肉片からも『本体』が作られようとしてる」
健夜「増える個体数もかなり多くなってきそうだね……」
咏「久々に死線潜り抜けることになるんかなー? 知らんけど」ウズウズ
理沙「バトル!」プンスコ
ズズズズズズズ……ズズ……ズズズ
久(数十の肉片が既に、それぞれ須賀君を形成しかけている……)
久(完全再生まであと3秒、といったところかしら)
和「部長! どうするんですかっ! ぶちょう!」
久(もう駄目、ね……)
カッ
ここまでです
ありがとうございました!
>>150
スイッチを押した際、自爆(破裂)命令と同時に脳と神経との繋がりを遮断する電気信号も発せられるようになっていますので、須賀君クローンは膨張している時も破裂する時も、全く痛みを感じていません。
竹井さんは女神ですね。
なんか気づいたら大分間が空いてましたね。申し訳ない。
これで終わりじゃないです
投下しままーす
>>159から
京太郎クローン×60「……」シュウウウ
ザワザワ
久「やはり、多い……」
久(軽く見積もって30体……。いえ、40は行っているわ。多分)
和(ぴったし60体ですか……。予想以上の数です……)
洋榎「うぉっ!? 吃驚仰天やな。ステージ埋め尽くすくらい増えおったで……?」
霞「何人かはステージの縁にしがみついているわね……。こういってはなんだけど、ちょっとみっともない感じだわ」
洋榎「向こうさんも必死なんや……察したれ」
衣「……うみゅ。……む?」パッチリ
衣(起きてみたら、キョータローが舞台の上に累々としている……)
衣(こ、これは一体? 衣の寝ている間に何が……)
透華「あら、衣。起きたんですの?」
衣「う、うむ。何やら辺りが喧騒としてきたと思ってな」
衣「それにしても、これは一体? 流石の衣にも、この状相を理解できる気は毫程もしない……」
一「あ、そっか。衣は説明とか何にも聞いてなかったもんね」
純「んじゃあ簡単に説明するとだな……。あそこに沢山居る須賀……は分かるよな?」
衣「うんっ! ハギヨシがよく、莞爾とした面持ちをしながらキョータローの話をしてくれるからな」
純「……そうか、うん」
衣「純?」
純「いや、何でもない。それで、あの須賀達は本物の須賀じゃなくてそのクローン……つまり人造人間らしいんだわ」
衣「人造人間っ!? すごいっ! 浪漫に溢れる響きだっ!」
純「お、おう。んでまあ、始めはあの須賀も一人だけだったんだけどな。そっから……いろいろあって。今に至るって訳だ」
衣「……? その色々が肝要ではないのか?」
透華「ええ。まあ……色々としか言えない感じですわね……」
智紀「……複雑な事情があるから」コクリ
衣「……? 変な皆だ」ウーン
一「あはは……」
純(……それにしても)チラッ
京太郎クローン×60 ゴゴゴゴゴゴ
純(この光景、ハギヨシがみたらきっと歓喜するんだろーなあ……)
__________________
________________
___________
時は少し戻り、発表当日の3日前
<龍門渕家 屋敷>
ハギヨシ「――休暇、ですか?」
透華「その通りですわ! 明々後日の日曜日に、私達が発表を聞きにある場所へと赴くのは知っていますわよね?」
ハギヨシ「はい。勿論存じております。しかし、何故それが私の休暇へと繋がるのでしょうか……」
一「実はさ。ってのが、男子禁制みたいなんだよね」
透華「だから、ハギヨシに付いて来てもらっては困るんですの」
ハギヨシ「男子、禁制……ですか。初耳ですね」
一(まあ、嘘だしね)
ハギヨシ「成る程。確かにそれでは、私がずっと付き添う訳にはいきませんね」
ハギヨシ「……かと言って、私にやれることが一つも無いことは無いかと思われます」
ハギヨシ「お出かけの最中透華お嬢様達に危険が及ばぬよう、せめて送迎だけでも……」
透華「ダメですわ! 明々後日、ハギヨシは休暇を取る……。これは決定事項ですのよ」
透華「それに、わたくし達も雀士の端くれ。身に降りかかる危険くらい、自力でどうにかできますわ」
ハギヨシ「しかし……」
透華「聞こえませんでしたの? これは、決・定・事・項ですわ。貴方を主の命令に従わないような不忠義者に育てた覚えはありませんけれど……?」
一(育てた……?)
ハギヨシ「……。了解しました。お言葉に甘えて、明々後日は休養をとらせて頂きます」
透華「それでいいですわ! 久々の休暇でしょうから……しっかり体を休めて下さいまし」
透華「勿論、屋敷での家事や雑務も禁止ですわよ? 明後日はぜぇーったいに、働いてはいけません! いいですわね?」
ハギヨシ「……はっ。ご好意に感謝いたします」
一(こんな脅すような真似しなくたって、最初から休んで欲しいって言えばきちんと伝わると思うんだけどなあ……)
<廊下>
ハギヨシ(……さて。透華お嬢様に休暇を言い渡された訳ですが……)テクテク
ハギヨシ(正直な所、何をしていいのか全く分かりませんね)
ハギヨシ(屋敷での仕事に従事するのが私の『日常』でしたから……)
ハギヨシ(勿論、仕事合間のティータイムや夜の『お楽しみタイム』等、くつろぎの時間は私にもありますが)
ハギヨシ(丸一日がぽっかりと空く、というのを経験したことは一度もありませんからね……)
ハギヨシ(……そうだ、あの方を誘って食事にでも――)
ハギヨシ(いえ、いけません。あの方にもきっと用事がある筈。あの方のことですから、私なんかの誘いを断るのにも心を痛めてしまうでしょう)
ハギヨシ(そんな手間を取らせてしまうのは、龍門渕家の執事として余りに礼を欠いています)
ハギヨシ(……かと言って、他に思いつく事もありませんが。取り合えず今日明日のところは仕事に専念して、その合間にでも予定を――)
純「あれ、ハギヨシ? どうしたんだよ、思いつめた様な顔して」
ハギヨシ「……? ああ、井上さんですか」
純「ハギヨシがそんな顔してんの、初めて見たかも知れねえな。なにかあったのか?」
ハギヨシ「ええ……実はですね」
~説明後~
純「はー、透華が休暇を、ねえ」
純(あの発表に男子部員が来ちゃいけないってな決まりなんてあったっけか? んー、まあそういうことならあるんだろうな。実際オレもよく知らねえし)
ハギヨシ「はい。しかし、その休暇をどう過ごせばいいのかが悩みどころでして」
純「あー。確かにヨッシーが休みとってる所なんて、オレは一度も見たことねえな」
ハギヨシ「ええ。実を言いますと、私はこの龍門渕家で働かせて頂くようになった日から一度も、休日というのを経験したことがないんです」
純「はあー? 一度も……って、そりゃマジかよ。んじゃあこの十数年ずっと、ここで働き詰めだったって訳か?」
ハギヨシ「それが執事としての当然の務めですから。それに働き詰め、という訳ではありません。一応、くつろぐ時間は十二分にとっているつもりですよ」
純「そ、そうっすか……」
純(一日十何時間の労働に対しての十数分のティータイムが、果たして“十二分”なくつろぎの時間と言えるのかどうか……)
純(今が中世だったらそういうこともありえるんだろうけどなあ。スケジュールだけ見れば最早、奴隷のそれだろ)
純「あー……でも、そうだなあ……。そんなハギヨシにピッタシな休みの使い方、か……」
純「あっ」ピコン
純「ああ! そうだよ、アイツがいるじゃねーか」
ハギヨシ「はい? アイツ……とは?」
純「清澄の雑用だよ。須賀京次郎……っていったっけか」
ハギヨシ「ああ。『須賀京太郎』くんですね」
純「そうそう、そいつ。その須賀を誘ってどっかに遊びに行きゃいいんじゃないっすかね?」
純「確かハギヨシ、アイツとかなり仲が良かっただろ?」
ハギヨシ「ええ。とても良くしてもらっております」
ハギヨシ「……実を言いますと、京太郎くんを誘って食事に行くというのは私も一度考えたのです。……しかし」
純「しかし、何だよ」
ハギヨシ「……迷惑になるかと思いまして」
純「はあっ? いやいや、迷惑になんて絶対なんねーって。何を遠慮することがあるんだよ」
ハギヨシ「もし、京太郎くんに既に用事があった場合、私の誘いを断らせてしまうことになります」
ハギヨシ「京太郎くんはきっとそれに心を痛めてしまうことだろうと考えると、どうにも気が進まなくてですね……」
純「え、ええ……?」
純(何かどこぞの乙女みてーな考え方だな……)
純「あー、まあ、多分大丈夫だろ。アイツ、いつも結構暇そうにしてるし」
ハギヨシ「そう、でしょうか?」
純「おう」
純(全然知らんけどな)
ハギヨシ「ならば……。いえ、でもやはり……」
純「あああぁぁ。じれってえなあもう」
純「そんなに断られるのが怖いってんなら、オレの方から連絡を取ってやるよ」
ハギヨシ「なっ!? いえ、これは私の問題です。井上さんにその様なことをさせる訳には……」
純「あー? いつもいつもお節介にオレたちのことを手伝ったりしてる癖に、いざ自分のこととなれば関わんなってか? 水臭いだろ、そんなん」
純「というか、もう遅い。既に須賀にメールは送ってある」
ハギヨシ「!?」
ハギヨシ(は、早い……。この私が全く知覚できなかった……)
ピロリン
ハギ純「!」
純「お、随分早い返信だな。どれどら……」
ハギヨシ「……」ドキドキ
純「おっ……」
ハギヨシ「……?」
純「喜んでオッケーでーす、だってよ」
ハギヨシ「!」パァ
ハギヨシ「そ、そうですか! それはよかった……」
純「ほら、言っただろ? そんなに心配するこたねえんだよ」
ハギヨシ「はい。その通りでしたね。少し、京太郎くんに対して臆病になりすぎて居たかも知れません」
純「で……、時間と待ち合わせ場所はどこにするかって聞いてるぜ」
純「『部活の朝練があるから午前は無理だけど、午後からならいつでも』……って書いてあんな。どうする?」
ハギヨシ「ええと、それならば――」
純(あー、良いことした後は気持ちが良いな、やっぱ)テクテク
純(にしても、須賀からオッケーのメールが返って来た時のハギヨシの顔……)
純(正に喜色満面って感じだったな)ハハッ
純(普段もニコニコしながら楽しそうに仕事をしてはいるけど……)
純(あんな、普通の男子高校生みたいにはしゃぐハギヨシを見るのは初めてだわ)
純(レアシーン、なんてもんじゃねえだろうなあ、あれ。正直、写真に収めときゃよかったって後悔してる――)
純「って、あ!」
純(そうだ、やべえやべえ。さっき届いた“アレ”、どこに設置すればいいのかってハギヨシに聞かなきゃいけねーんだった)
純(あんまりにも思いつめた顔してたもんだからそっちの方に気が行って、そのことすっかり忘れてたわ)
純(今は……休憩時間か。だったら、使用人用の休憩室か自室かのどっちかに居るってことになるが)
純(でもまあ、多分自室の方だろうな。後は自分の携帯で須賀と連絡を取り合うーっつってたし)
純(貴重な休憩時間&メールタイムをちっと削らせてもらうことになっちまうけど……。ま、取り次いでやった訳だし許してくれるだろ)
<ハギヨシの部屋>
コンコンコン
純「すみませーん。ハギヨシさーん? ちっと聞きたいことがあるんすけどー」
シーン
純「……あら? 居ないのかね」
純(何時もなら直ぐに返事してくれんだけどな)
純(……一応、もう一回)
コンコンコン
純「おーい、ハギヨシー? 居ないんっすかー?」
シーン
純「……っぱり駄目か」
純(休憩室の方に居るのかね? 案外直ぐにメールでのやりとりは終わったのかもな)
純(……それともまさか、須賀とのメールに夢中でノックに気付いて無いとかか?)
純(って、ハハハ。ないない。そりゃちょっと考えられねえわ。まさかあのハギヨシがそんな公私混同するだなんて)
純(……)
純(でも、気になるな……)
純(もし本当にメールに夢中になってんなら、そこをひっそりと写真に撮って、後でからかいの材料にしたりもできる訳だし)
純(居なかったら居なかったでかまわねえ。その場合休憩室に居るってことになるから、そっちの方行って普通に質問すりゃ済む話だ)
純(うん何の問題もねぇな。よし、覗こう)
純(んじゃま、失礼しまーす)
ガチャ
純(って、お?)
ハギヨシ「……」
純(おいおい、マジで居るじゃ――)
純「えっ?」
ハギヨシの部屋のドアをこっそりと開けた純。
ドアノブに手をかけ、そっと回し、押し出す……。その一連の行動を終えるまで純の中にあったのは、
きっとハギヨシはこの部屋には居ないだろうと言う予想と、「ハギヨシのお茶目な部分を見れるかもしれない」というごくわずかばかりの期待だった。
しかし、その次の瞬間に純の目に映ったのは、それらの予想も、期待も、全て裏切るものであった。
ハギヨシは確かに部屋に居た。それも、部屋のど真ん中に。誰にでもきちんと、その存在を確認できるようにと言わんばかりに、ドアを開けた瞬間目に入る位置に、ハギヨシは居たのだ。
それだけなら良かった。純の予想と期待の内、期待の方が真実に近かったというだけのことなのだから。
ただ、問題だったのは、彼の“状態”……いや、この部屋“全体”だった。
壁、床、天井……そして、カーテン。その全てに満遍なく、あるものが貼り付けられていた。
誰かの写真だ。ある一人の人物が収められた写真。
無限にあるのではと錯覚させられる程に夥しく、大量の写真がそこに存在していた。しかし、同じ写真は一つとしてなかった。その人物が写っているというのは全てに共通してはいるものの、正面から、横から、後ろから、遠くから、近くから等、その人物をどの角度・距離から撮っているかは一定していない。
当然写真によって、写されているその人物の表情も違う。笑った顔や、泣き顔、拗ねた様な顔まで、様々な表情が網羅されていた。
まるで、その人物の人生というものが、この小さな部屋で延々と再生させられているかのようだった。
一つ一つの写真が写す場面は全く違うはずなのに、こうして全体を眺めると、それら全てが連関して、一つの映像を紡ぎ出しているかのように見えた。
そしてその人物は、綺麗な金色の髪を持っていた。写真からも見て取れる、きめ細やかな金髪。またその所為か、部屋全体がキラキラと輝いているようにも見える。
……ハギヨシと関わりのある、金髪の人物。それは、ごく限られている。
そう、純はそれらの写真の被写体が誰であるのかを知っていた。
「龍門渕透華」
――ではなく、「天江衣」
――でも全然なく。
「須賀京太郎」だ。
これら全ては、須賀京太郎をおさめたものだった。
純にとっての須賀京太郎とは、そこまで親しくない他校の雑用係であるが、それでも(成り行きとは言え)メアドを交換した相手ではあるのだ。顔くらい、当然覚えている。
大量の京太郎の写真が蠢くこの光景を見て、純は説明の出来ない悪寒が体中を駆け巡るのを感じた。まるで心臓の中に直接氷でもブチ込まれたかのようだ、と純はその悪寒を比喩った。
だがこの異様な部屋の中で尚、飛びぬけて違う“匂い”を放っているものがあった。
それが、ハギヨシ自身だ。
体の正面を純のいる扉の方に向け、大きく上に上げられた右手には携帯を、胸の辺りに置かれた左手には京太郎の写真の内の一枚かと思われるものを、それぞれ握りしめながら、部屋の真ん中で涙を流している。
ただ、その涙が悲しみによるものでないことは直ぐに分かった。純が先ほど見た、ハギヨシのはしゃぐような笑顔……。それとは比べ物にならないほどの笑顔を、文字通り満面の笑みというものを、今のハギヨシが浮かべているからだ。
悲劇を経験した人間が、あのような顔をするわけが無い。あれは、真に純粋な喜びを手にした者の表情だ。
涙に濡れるその瞳はまるで何も映していないかのように、しかし星々の煌きの様な希望を宿しながら、ただ天井の方へと向けられていた。それ故か、ハギヨシが純の侵入に気付いた様子は無かった。
今のハギヨシを一言で表すなら、狂気の塊。決して常人の理解が及ぶことの無い領域に立つ、一人の狂人。
龍門渕のパーフェクト執事と呼ばれ、誰からにも尊敬され、信頼されるこのハギヨシという男の、知ってはならない一面を見た純の取った行動は――
純(見なかったことにしよ)バタン
逃げ、であった。
__________________
________________
___________
純(うん。絶対喜ぶわ。命かけても良い)ウンウン
透華「……純? どうしたんですの? そんなに意味ありげに頷いて……」
純「ん? いや……なんでもねえよ」
健夜「きょ、京くんがひい、ふう、みい……ろくじゅうぅ!? しゅ、しゅごいぃ!」
良子「イッツアパラダイス……。天上界はここにあったのですね」ジュルリ
咏「うーん、中々に壮観壮観……。ノヨリさんはどうです? 血沸き肉踊る感じ、しますかねぃ?」
理沙「……!?」Σ
理沙「あ……」
理沙「……」
理沙「愛してる!」プッスー
咏「!?」
はやり「うーん……うずうずしちゃいますねっ☆ あれだけの数の京太郎くんに私の歌を披露できたら……どんなにハッピーになれることか!」
健夜「うん。きっと、ものすごいハッピーになれるよ……。きっとね」
靖子「……」
京太郎クローン×60「……っぐ」ピクッ
京太郎クローン×60「ぐ……ググググ」
京太郎クローン×60「グォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
ウワアアアア
ヒィィィイイイイ
ギョエエエエ!?
久「あーもううっさいわねえ!? 一々叫び声あげるくらいならとっとと帰りなさいよぉ!!」
シーン……
久「畜生ォォ!!!!!」
久「こ、こうなればぁ……」
久「の、和!」
和「は、はい?」
久「もしかしたら、貴女のおっ○いなら須賀君クローンたちをどうにかできるかも知れない!」
和「え、ええっ!?」
久「貴女のおっ○いを須賀君クローンたちに押し付けて、動きを止めるのよ!」
久「その間に私は、彼らを捕らえる為の用意をするわ!」
和「ええええっ!?」ガビーン
久「お願い! 和! やってちょうだい!」
和「嫌ですよ、そんな……。私がそうしたからと言って、須賀君たちがおとなしくなるなんて保証はどこにも無いわけですし……」
和「それに、私はデジタル雀士なんです。オカルトに対抗する力は持っていますが、物理的な暴力には敵いません」
和「もし万が一にでも襲われてしまえば……一巻の終わりなんです」
和「正直、この先どうなろうと私には余り関係ありませんしね。絶対に嫌です」
久「和……」
久「ねえ、和?」
和「?」
久「私はこのステージの上で色々と喋ることしかできないわ」
久「でも貴女には、貴女にしかできない、貴女になら出来ることがある筈よ」
久「誰も貴女に強要はしないわ。自分で考え、自分で決めなさい」
久「自分が今、何をすべきなのか……」
和「ぶ、部長……」
和「……」
和「……!」キッ
和「帰って寝ます。今日はしんどいですから……」テクテク
久「……」
久「オラァ!!」ドゴォ!
和「くぴゃあっ!?」ドカッ
和「う、うう……。ぶ、部長!? 何か全然痛くなかったですけど……。まあそれは置いておくとして」
和「い、一体何をする――」
久「和ァ……」グイッ
和「ぐうっ……」
久「……誰も貴女に強要はしないわ。自分で考え、自分で決めなさい」
和「そ、そんな……。勝手な!」
久「お願いよ、和! もうこれしか道は無いの!」
和「だから、嫌だと言っているでしょう!?」
和「それに……」チラッ
和「私がそんなことをしないまでも、他の皆さんがそれぞれ上手く対応してくれているみたいですよ?」
久「え?」バッ
ここまでです
ありがとうございました!
また少し間をあけちゃいましたね
もうちょっとで終わる予定です。
投下しまーす
洋榎「皆様、ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます」
京太郎クローン×10 パチパチパチ
洋榎「えー、突然ですが。うちのおかんは非常に料理の上手いお人でして」
洋榎「そこらのレストランのものよりも数段ランクの高いようなものを、うちと妹の絹がちびの頃からずっと、毎日食卓に並べてくれとります」
洋榎「うちが小学生の時、偶々クラス会とやらでおかんがその腕前をよそ様に披露する機会があったんですが」
洋榎「その料理の余りの美味さに、周りの人らが次々とおかんのことを『聖』と呼び始めましたもんで」
洋榎「傍におったうちは幼いながらも、『おいおいうちのおかんは尼さんちゃうねんぞ』なんて思ったんをよく覚えとります」
京太郎クローン×20「アハハハハハハ!」ドッ
洋榎「さてそんなおかんですが、一つだけどうしても見逃せん欠点、というか『性質』を持っとりまして」
洋榎「それは、『摩訶不思議な創作料理を好んで作る』いうもんです」
洋榎「先にうちはおかんについて、美味い料理を毎日食卓に運んでくれとるお方や言いましたけど」
洋榎「実を言うと、稀にそうでない時もありまして」
洋榎「その場合っていうんが、この『摩訶不思議な創作料理』を作ってくる時なんですわ」
洋榎「詳細を申しますと、例えば『チョコソース焼きそば』やとか『コーンポタージュカレー』やとか、そんな感じです」
洋榎「特に『イナゴの佃煮入りストロベリーシェイク』は、今でもその味を忘れられんほど酷かったですわぁ」
京太郎クローン×20「うぇー」ザワザワ
洋榎「うちらが何度嫌や嫌や言うても聞こうとする気配すらありまへんし、もしもそれを食うのを拒もうものなら、その先一週間は拗ねて家事さえせえへんくなってまいます」
洋榎「まるでガキやな、とはガキの頃のうちの感想です」
洋榎「普段は完璧言うても言い過ぎや無い程の料理を拵えるあのおかんが、どないしたらあないゲテモノを作るに至るんか。その謎は恐らく迷宮入りですわな」
京太郎クローン×20「アハハ……」
洋榎「さて! 世の中は意外に狭いとは良く言われとることですけど、やはりどうにもある程度の広さはあるようでして。そういうゲテモノを好んで食す人もいるそうなんですわ」
洋榎「勿論人の好みに口出せる程うちも偉くはありまへんが、しかしそういう奇怪なもんを『通の食いもん』として食べて悦に浸る輩にはちょいと疑問を感じざるを得まへん」
洋榎「特に、良く知りもせんもんを人の評判だけ聞いて『通の食いもん』とするんは、こりゃーもう救いようの無い知ったかぶり!」
洋榎「ただそんな輩に限って、どうにも世辞の上手な傾向にありまして」
洋榎「んまー、大したことの無いもんも『美味い』と言って出されれば、本人も意味の分かってへんやろという美辞麗句並び立てて褒めちぎったりするんですわ」
洋榎「『あらこの魚の身は透き通ってて、まるで清い川の流れを見ているようですわ』やら『このたこ焼き、詰まっとる具がどれも煌いてて、まるで宝石箱やぁ』やら」
洋榎「挙句『いやあこの牛肉は途轍も無いなぁ! え? どこが? ってそりゃあ……この、血の滴る感じが……生臭さ……いや、猛々しさ! 猛々しいライオンを彷彿とさせ云々』」
洋榎「ってそこまで無理せんでもと此方が逆に心配してまうようなことを言う!」
洋榎「さてさてそんな輩に会った日にゃあ、あー、その鼻を明かしてやりたくなるんもしょうのないことで……」パチンッ!
京太郎クローン×20「!」
洋榎「えー……」
洋榎「あれ?」
洋榎「……」
洋榎「……」
洋榎「……あー」
京太郎クローン×20「?」
洋榎「すんません。演目の内容全部忘れたんで、別のやつやります」
京太郎クローン×20「!?」
洋榎「えー、流石にまたマクラから始めるんは面倒なんで、早速。『愛宕山』」
京太郎クローン×20「……!?」ザワザワ
洋榎「……えっと、なんやったかな……ああ、そうや」
洋榎「祇園町を出ますと、芸者、舞妓、御茶屋の女将さん、それに一八、重八の両名の太鼓持ちもお供をいたしまして」
洋榎「西へ西へ、鴨川を渡りまして、堀川も越えまして、二条のお城、こいつも尻目にころしまして、どんどんどんどん西へ出てまいりますと」
洋榎「野辺へかかって参ります。そこは春先のことで、空にはひばりがピーチクパーチクピーチクパーチクさえずっていようか陽炎が燃えていようかという」
洋榎「遠山にはパーっと霞の帯を引いたよう。麦が青々と伸びた中を菜種の花が彩っていようかというほん陽気、やかましゅうてやって参りますその道中の、よぉ気なことぉ!」
洋榎「……」
洋榎「あっ、こっから先もちょいと忘れたんで、唄のパートいきます」
京太郎クローン×20「!?!?」
洋榎「あたーご山坂♪ えーえぇぇ坂♪ 二十五丁目の茶屋のかかぁー♪ ばば旦那さん♪ ちと、休みなんんしぃぃー♪」
洋榎「あた……。あ」
洋榎「忘れた」
京太郎クローン×20「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」シュウウウウウウ
洋榎「うわっ!?」
洋榎「な、なんかよう分からんけど……」
洋榎「勝ったわ」ガッツポーズ
京太郎クローン「グルルルルルル」
霞「ああ……可哀想に。今の貴方はまるで、野生のケモノの様……」
霞「ギラギラとした眼差し、むき出した鋭い歯……とても、人間だとは思えない」
霞「でも、それは貴方の責任ではないわ」
霞「全ては貴方をそんな風に変えてしまった、竹井さんたちの所為なのよ」
霞「私は正直、貴方とは直接会ったこともないし、話したこともない」
霞「けれど、それは貴方を救わないことの理由にはならない」
霞「霧島神社の巫女として……貴方の邪を……」
霞「祓ってみせます!」ドタプーン
京太郎クローン「グゲ……!?」
霞「さあ、どうしたの? どこからでもかかってきなさい!」ドタプルン
京太郎クローン「ゲグ……」
霞「どんな攻撃を仕掛けてこようとも……私はそれを全て受け入れます! さあ!」ドタンプルルルン
京太郎クローン「グ」
霞「さあ!!」ドタタプルrrrrrrrrrン
京太郎クローン「ウッ」ブシュ
京太郎クローン「」ドサッ
霞「……あら?」
霞(は、鼻血を出して倒れてしまったわ……)
霞(とりあえず、介抱しておきましょうか)ソソクサ
京太郎クローン「ころ……すぅぅ! お前をぉぉををお!」
良子「殺す? 私をキルできると?」
京太郎クローン「お前、見たいなぁ! やつ、位! 俺でも殺せるだろぉぉぉ!?」
良子「フッ……ネガティブ」
良子「その考えは、君の身を滅ぼしますよ。余り私をなめない方がいい」
良子「はあああああぁぁぁ……」
良子「ハアッ!」カッ
京太郎クローン「!?」
良子「オン ベイシラマンダヤ ゼンキシャ ソワカ!(適当)」
京太郎クローン「お!?」
良子「オン ベイシラマンダヤ ゼンキシャ ソワカ!(GACKT)」
京太郎クローン「っグ……」
良子「オン ベイシラマンダヤ ゼンキシャ ソワカ!」
京太郎クローン「がああっ!?」
良子「オン ベイシラマンダヤ ゼンキシャ ソワカ!」
京太郎クローン「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」シュウウウウ
京太郎クローン「うぅ……」ドサッ
良子「ふう……。なんだか、神道にウェルインフォームドな人間として、使ってはならない手段を用いてしまった気はしますが、それはいいでしょう」
良子「兎に角、安心してください。君の中にあるイビルエネルギーは全て祓いました」
良子「イビルエネルギーは……」
バァーーーーーーーz_________ン 良子「祓いましたっ!」キリッ バァーーーーーーーz_________ン
京太郎クローン「ぐおおぉぉぉぉぉ!!!」ブンッ
理沙「冷静!」
京太郎クローン「うおぉぉぉぉ!!!」ブンッ
理沙「冷静!」
京太郎クローン「ぐぉぉぉぉ、お?」ピタッ
理沙「冷静!」
京太郎クローン「おおぉ?」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「お……」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「……」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「……れ」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「れ、い」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「れい、せ」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「れいせ」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「れいせい」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「冷静……」
京太郎クローン「冷静!」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「冷静!」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「冷静!」
理沙「冷静!」
京太郎クローン「冷静!」
理沙「……ん!」プンスコ
理沙「ゲット!」ニコッ
靖子(私は何をしているんだろうな……)
靖子(思い返せば、とても無駄な時間を過ごしてきた気がする)
靖子(中学生の時は高校に入れば何かが分かると思い、高校生の時は大学に入れば何かが見えてくるだろうと考え、大学生の時はプロになれば何かを掴めるだろうと信じ……)
靖子(でも結局、今に至るまで何一つとして成果は無し)
靖子(“まくりの女王”だなんて呼び称されるようになって、こうしてトッププロの一人に数えられるようになっても……)
靖子(なんにも掴めちゃいないじゃないかっっ!!)バンッ!
靖子(おかしいだろ、こんなん……)
靖子(こう見えて、人よりもずっと多くの努力はしてきたつもりだ。あと一歩踏み込んでいれば死んでいたというような修羅場だって、幾つも越えてきた)
靖子(それでも。それほどの積み重ねをしても、得られたのは僅かばかりの麻雀のスキルのみ)
靖子(ああ……どうしてなんだ。一体、何が私に足りていないと言うんだ?)
靖子(これ以上私に何をしろと言うんだ?)
靖子(私では決してその極みに到達できないということなのか)
靖子(なあ、だれか教えてくれよ……)
靖子(一体、どこにあると言うんだ……)
靖子(究極のカツ丼は……)
京太郎クローン「……」
京太郎クローン「……あの、すみません」
靖子「……ん? 何だ……。悪いんだけど生憎、私は今忙しい」
靖子「用なら後にしてくれ――」
スッ
靖子「えっ?」
京太郎クローン「カツ丼、いかがっすか?」
靖子「カツ、丼……?」チラッ
カツ丼「キラキラキラキラキラキラキラキラキラ」キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ
靖子「なっ……!?」
靖子(何だ、この輝きは。こんなの見たことが無い)
靖子(艶かしく煌く白銀の米の上で圧倒的な存在感を放っている、サクサク衣のジューシーなカツ。そして、その全体をまるで聖母の様に包み込んでいるのは、トロトロの玉子……)
靖子(これまで幾多のカツ丼を食べてきたからこそ、分かる。見るだけで“解る”)
靖子(これは究極のカツ丼だ……)
靖子「……どうやって」
京太郎クローン「?」
靖子「お前は一体どうやってこれを作ったんだ?」
靖子「ありえないんだよ……。私さえも未だ踏み込んだことのない領域に、どうして生まれて間もない筈のお前が到達できたというんだ?」
京太郎クローン「……」
靖子「そして、何故……?」
靖子「何故、私がカツ丼を求めていると分かった?」
京太郎クローン「……。えっと、何か難しい事は良く分からないっすけど……」
京太郎クローン「俺の細胞が叫んだ気がするんすよ。この人にカツ丼を作ってやれって……」
靖子「細胞、がか?」
京太郎クローン「はい。こう、ガーッときて全身沸き立つような……。そんな感覚でした」
靖子「へえ。そうなのか……。つまりはあれだな? 『俺の第六感が貴女の想いを聞き取ったー』とかいう」
京太郎クローン「? いや普通に細胞っすけど」
靖子「ん? 比喩じゃないのか。え? さい、ぼう……?」
靖子「細胞? 細胞組織?」
京太郎クローン「はい。ガーッとくるかんじで」
靖子「ああ、うん。え? 比喩じゃないのか?」
京太郎クローン「は? え、ええ。お姉さんが苦しんでいる姿を見た瞬間、俺の細胞が何かを伝えたそうにプルプルと振動を始めて……」
京太郎クローン「気付いた時にはもう、カツ丼を作り終えていたんです」
靖子「はあ……」
靖子「そう、か――」
靖子「まあいいんだそんなことは」
靖子「うん」
京太郎「……? お姉さん?」
靖子「いや、成る程な。よく分かったよ」
靖子「『想い』だったんだな。全ての決め手は」
京太郎クローン「え?」
靖子「お前の中にある『想い』が、このカツ丼を作り、そして私に届けてくれた」
靖子「そういうことだ」
靖子「――ありがとな。気付かせてくれて」
京太郎クローン「え? いや」
靖子「謙遜はするなよ。お前は間違いなく、私を救ってくれたんだからな」
靖子「よし。こんなに美味そうなカツ丼があるってのに、それを冷ましちまうのは勿体無い。早速、頂くとしようかな」
京太郎クローン「……あっ。は、はい。どうぞ!」
京太郎クローン「アアアアアァ!」ブンッ
健夜「……」ガシッ
京太郎クローン「……あ?」
健夜「やっと捕まえたよ、京くん」ニコッ
健夜「再会のハグといきたい所だけど、そうも言っていられないみたいだね」
健夜「だからちょっとの間だけ、眠ってて……」ゴッ
京太郎クローン「あ……」ドサッ
健夜「……」
健夜(ただで、ゲット……)
健夜(ただでゲットしちゃった)
健夜(タダでゲットしちゃったあぁぁぁぁぁぁ!)
健夜(竹井さんが私達プロ勢に事前に教えてくれていた『京くんクローン』の値段は確か8600万円……)
健夜(勿論、それだけのお金を払えないわけじゃない。私は腐ってもグランドマスター。人並みはずれた稼ぎは出来てるつもりだから、むしろかなりの余裕をもって払える金額ではあるよ)
健夜(でも、それはやっぱり安い買い物ではないわけで。幾ら日本女子麻雀界のトップを走っていた私でも、
別荘やらスーパーカーやらを日用品感覚で買っちゃうようなどこぞの大富豪やスーパーギャンブラー見たいにはいかない)
健夜(それでも、もし本物の京くんを……買える、んだったら、その数倍のお金を出してもいいんだけどね。いやどっちかって言うと、それくらいのお金は払わなきゃこっちの気がすまないよ)
健夜(でも、この子は本物じゃない。京くんの形をしてても、やっぱりクローンはクローン……偽者なんだよ)
健夜(だからタダで手に入るに越したことは無いよね、うん)
健夜(あ、そうだ。他の皆は……)チラッ
(牌)
はやり「もう百回、こっち向けや♪ 殺意の狭間愛のfuture♪ だーかーら、こっち向けや♪ 四角い宇宙はーいを乗せーて♪」キャピッ
京太郎クローン×20「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! L・O・V・E!! は、や、りーん!!」ワアアアアア
京太郎クローン「……あ?」ドサッ
咏「何が起きたか、全くわかんなかったろ?」
咏「そりゃそうだ。私にもわかんねー」
咏「何が起こったのか、全てがわかんねー」
咏「わからなさ過ぎる……どうなってんだ?」
咏「それが、私の能力だからねぃ」
健夜(うん。大丈夫そうだね)
健夜(それにしてもこのクローン、本当に京くんの細胞から作られてるのか怪しかったけど……)
健夜(……うん。こうして“きちんと”見ると、よく分かるね。遺伝子情報も細胞組織の形状も、全てが京くんのそれと一致してる)
健夜(間違いなく、正真正銘、この子は京くんのクローン……)
健夜(だから、この子については全く文句のつけようも無いんだけど……)
健夜(でも……)
健夜(やっぱり、本物の京くんに会いたい、かな……)
健夜(どこに居るの、京くん……)
健夜(京くん……)チラッ
京太郎クローン スヤスヤ
健夜「……」ウズ
健夜「あ、あははは……」
健夜「……」
健夜「だめだやっぱ可愛いぃぃぃぃぃ!!!」ナデナデナデナデ
ワーワー
ギャーギャー
久「……なんじゃこりゃ」
久「ねえ、のど――」
書置き『咲さんと食事に行ってきます。後のことは部長と染谷先輩に任せましたよ。 原村より』
久「……」
久「なんか、もうどうでもいいわ」
一方、その頃……
<清澄高校麻雀部 部室>
優希「なぁー、京太郎ー。どうして今日は皆来てないんだじぇ?」
京太郎「いや、だからよく分からんって言ってるだろ。部長達から『今日は休む』っていうメールが来たのはついさっきのことだし」
京太郎「俺もそのメールを見るまで、部長達が休むことなんて知らなかったんだからな」
優希「んー。まあ、私も全く同じだけどな……」
優希「なーんか、ハブられた気分だじぇー。もしかして皆、どっかに遊びに行ってたりするのかー?」
優希「……海水浴に行ってたり」
京太郎「ありえんありえん。俺を、ってんならともかく、皆がお前をハブってどっかに行ったりするわけねえって」
京太郎「ま、皆の都合が悪い日が、偶々今日に重なったってだけの話だろ……さて」
京太郎「そろそろ俺も行くわ。もうすぐ昼だしな」
優希「……え? お、お前まで裏切るのか京太郎!」
京太郎「裏切る、ってなんだよ。違う違う。このあと二時半から、ハギヨシさんと遊ぶ予定なんだよ。駅前の公園で待ち合わせ」
京太郎「まだ一時だけど、どうせ部活もまともにできない状況な分けだしな。ちょっと早めに出とこうかなって」
優希「ぶー。結局裏切ってることには変わりないじぇ」
優希「ずるいじぇずるいじぇえ! 私だって用事が欲しいんだじょ!」
京太郎「あー、うるせえなあ……」
京太郎「あっ、じゃあさ。お前も一緒に来るってのはどうだ?」
優希「……え?」
京太郎「俺とハギヨシさんと、一緒に遊ぼうぜってことだよ。人数が多い方が楽しいだろうしな」
優希「い……いいのか? 迷惑じゃないか?」
京太郎「おうっ。俺は構わねえし、ハギヨシさんだって喜ぶだろ、絶対」
優希「そ、そうか……!」パアアア
優希「なら、早速出発進行だじぇ! ○○駅まで、全速りょーーく!!」ダダダダッ
京太郎「お、おい! 優希って……ああもう」
京太郎「待てってば! 俺を置いて行くんじゃねー!!」ダダッ
優希「えへへー! ノロノロしてるそっちが悪いんだじぇー!」
京太郎「んだとー!? よーーし! 覚悟してろよ! 数秒後、お前は地獄を見ることになる!! 元ハンドボール部の実力みせてやるぜぇ!!」ダダダダダッ
優希「うぉっ、早い!? 捕まってやるもんかぁ!」ダダダダッ
アハハハハ……
実に、平和だった。
カンッ
>>216 修正
健夜(あ、そうだ。他の皆は……)チラッ
はやり「もう百回、こっち向けや♪ 殺意の狭間愛のfuture♪ だーかーら、こっち向けや♪ 四角い宇宙はーい(牌)を乗せーて♪」キャピッ
京太郎クローン×20「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! L・O・V・E!! は、や、りーん!!」ワアアアアア
京太郎クローン「……あ?」ドサッ
咏「何が起きたか、全くわかんなかったろ?」
咏「そりゃそうだ。私にもわかんねー」
咏「何が起こったのか、全てがわかんねー」
咏「わからなさ過ぎる……どうなってんだ?」
咏「それが、私の能力だからねぃ」
健夜(うん。大丈夫そうだね)
これで終わりです
思った以上のゴミに仕上がりましたけど、楽しかったです
ありがとうございました
早速依頼出してきます!
>>207
洋榎「えー、流石にまたマクラから始めるんは面倒なんで、早速。『愛宕山』」
京太郎クローン×20「……!?」ザワザワ
洋榎「……えっと、なんやったかな……ああ、そうや」
洋榎「祇園町を出ますと、芸者、舞妓、御茶屋の女将さん、それに一八、茂八の両名の太鼓持ちもお供をいたしまして」
洋榎「西へ西へ、鴨川を渡りまして、堀川も越えまして、二条のお城、こいつも尻目にころしまして、どんどんどんどん西へ出てまいりますと」
洋榎「野辺へかかって参ります。そこは春先のことで、空にはひばりがピーチクパーチクピーチクパーチクさえずっていようか陽炎が燃えていようかという」
洋榎「遠山にはパーっと霞の帯を引いたよう。麦が青々と伸びた中を菜種の花が彩っていようかというほん陽気、やかましゅうてやって参りますその道中の、よぉ気なことぉ!」
洋榎「……」
洋榎「あっ、こっから先もちょいと忘れたんで、唄のパートいきます」
京太郎クローン×20「!?!?」
洋榎「あたーご山坂♪ えーえぇぇ坂♪ 二十五丁目の茶屋のかかぁー♪ ばば旦那さん♪ ちと、休みなんんしぃぃー♪」
洋榎「あた……。あ」
洋榎「忘れた」
京太郎クローン×20「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」シュウウウウウウ
洋榎「うわっ!?」
洋榎「な、なんかよう分からんけど……」
洋榎「勝ったわ」ガッツポーズ
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